特許拒絶査定不服審判
2023-016566
診断装置、診断システム、及び診断方法
- 審判番号
- 2023-016566
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-181788
- 請求日
- 2023年10月02日
- 審決日
- 2024年11月27日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三菱電機株式会社
- 【請求人代理人】山形 洋一
- 【請求人代理人】佐藤 賢改
- 【請求人代理人】篠原 昌彦
- 【請求人代理人】山口 力
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 中塚 直樹
- 審判官 小島 寛史
- 分類
- P18 .113-Z (G01R) / P18 .121-Z (G01R) / P18 .537-Z (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-181788「診断装置、診断システム、及び診断方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月 8日出願公開、特開2021- 56172〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年10月2日に出願された特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 3月27日付け:拒絶理由通知書
同年 5月15日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月31日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 8日 8日 :原査定の謄本の送達)
同年10月 2日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~18に係る発明は、令和5年5月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次に特定されるとおりである。
ここで、検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Aから構成Fまでに分説する。
「 【請求項1】
(構成A)接続線が接続された複数の種類の電気機器を含むシステムの前記接続線を診断する診断装置であって、
(構成B)前記複数の種類の電気機器のそれぞれのインピーダンスを記憶する記憶部と、
(構成C)種類毎の電気機器の数を取得する取得部と、
(構成D)予め定められた計測方法を用いて、前記システムのインピーダンスであるシステムインピーダンスを計測する計測部と、
(構成E)前記複数の種類の電気機器のそれぞれのインピーダンスと、前記数とを用いて、合成インピーダンスを算出する算出部と、
(構成F)前記システムインピーダンスと前記合成インピーダンスとを用いて、前記接続線が正常であるか否かを判定する判定部と、
を有する診断装置。」
第3 原査定の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由1、2の概要は、次のとおりである。
理由1(新規性欠如)
本願発明は、下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2(進歩性欠如)
本願発明は、下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:国際公開第2018/078790号
第4 当審の判断
1 引用文献等
(1) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(国際公開第2018/078790号)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付した。以下同様である。
ア [0001]~[0004]
「[0001] 本発明は、検査装置、制御システム、および、検査方法に関する。
背景技術
[0002] 従来より、ビルや工場に代表される建物内には、各種の制御システムが導入されている。例えば、照明システム(照明制御システム)では、マスタ機器(一例として、中央制御装置)と、スレーブ機器(一例として、壁スイッチやリレー端末)とが、通信線を介して接続されている。なお、マスタ機器は、給電を兼ねた伝送信号を通信線に供給し、スレーブ機器(一例として、壁スイッチ)は、この伝送信号を通信線を通じて受信することにより動作する。一般に、照明システム内には、複数の系が存在し、1つの系は、1つのマスタ機器と複数のスレーブ機器とから構成されている。そして、異なる系同士は、電気的に非接続な状態で稼働するようになっている。
[0003] このような照明システムにおいて、例えば、施工時に作業者が誤って系同士を接続してしまうこともある。この状態で照明システムに電源を投入してしまうと、双方のマスタ機器の電源が短絡状態となり、出力部分のデバイスが破壊されたり、あるいは、電気的なストレスを受けて運用後に故障し易くなり、結果として、通信不良が生じることとなる。
[0004] なお、誤接続(誤結線)に対応するための先行技術として、特許文献1には、直流電源と負荷との間の給電路に挿入される回路遮断器の発明が開示されている。」
イ [0013]~[0020]、[図1]~[図2]
「[0013](実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る照明システム1の全体構成の一例を示す模式図である。この照明システム1は、複数の系(一例として、A系,B系)に分かれており、系単位に1つのマスタ機器10と複数のスレーブ機器20とが、通信線30を介して接続されている。そして、1つの系(一例として、B系)の通信線30に検査装置40が接続されている。
[0014] なお、A系の通信線30とB系の通信線30とは、電気的に非接続な状態で稼働すべきであるが、点線Lにて示すように、系同士が誤接続(誤配線)されてしまうことも起こり得る。
[0015] また、図1では省略しているが、幾つかのスレーブ機器20(一例として、リレー端末)には、照明器具が接続されているものとする。
[0016] マスタ機器10は、例えば、各スレーブ機器20のアドレスを記憶した中央制御装置であり、通信線30を介してスレーブ機器20を制御する。一例として、通信線30には、図2に示すような伝送信号が流れ、マスタ機器10とスレーブ機器20との間でデータのやり取りが行われる。具体的に、マスタ機器10は、±24Vの電圧モードで、スレーブ機器20(一例として、壁スイッチ)への電源供給と信号送信とを同時に行う。つまり、マスタ機器10は、給電を兼ねた伝送信号を通信線30に供給する。また、この伝送信号には、アドレスや制御データが含まれており(制御モードの場合)、アドレス先のスレーブ機器20は、受信した制御データに応じて動作するようになっている。」
「[図1]
[図:0001418864000001.jpg]
」
「[0017] スレーブ機器20は、例えば、壁スイッチやリレー端末であり、通信線30を介して、マスタ機器10から送られる図2の伝送信号を受信して動作する。なお、上述したように、スレーブ機器20が壁スイッチである場合に、この伝送信号によって、電源供給もなされる。また、スレーブ機器20がリレー端末である場合に、受信した伝送信号における制御データに従って、図示せぬ照明器具と電源との接続をオン・オフする。
[0018] 通信線30は、例えば、2線式の伝送線であり、上述した図2に示すような伝送信号が流れる。具体的に、マスタ機器10からスレーブ機器20(一例として、壁スイッチ)へは、電圧モードにて、電源供給と信号送信とが同時に行われる。また、スレーブ機器20からマスタ機器10へは、電流モードにて、返信が行われる。
[0019] 検査装置40は、照明システム1の電源投入前(稼働前)に、系同士の誤接続の有無を検査する。例えば、照明システム1の施工時に作業者が誤って、点線Lにて示すように、A系の通信線30とB系の通信線30とを誤接続してしまうことも起こり得る。この状態で照明システム1に電源を投入してしまうと、双方のマスタ機器10の電源が短絡状態となり、出力部分のデバイスが破壊されたり、あるいは、電気的なストレスを受けて、運用後に故障し易くなり、結果として、通信不良が生じることとなる。
[0020] そのため、検査装置40は、照明システム1における電源投入前に、接続された系(一例として、B系)について、通信線30の電気特性(一例として、交流インピーダンス)を計測し、その計測値に応じて誤接続の有無を検査する。」
「[図2]
[図:0001418864000002.jpg]
」
ウ [0021]~[0037]、[図3]~[図8]
「[0021] このような検査装置40の詳細について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施形態1に係る検査装置40の構成の一例を示すブロック図である。図示するように、検査装置40は、入力部41と、閾値生成部42と、計測部43と、判定部44と、表示部45とを備える。なお、閾値生成部42及び判定部44は、一例として、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及び、RAM(Random Access Memory)を備えたマイコンにより実現される。つまり、CPUが、RAMをワークメモリとして用い、ROMに記憶されている各種プログラムを適宜実行することにより、閾値生成部42及び判定部44の機能が実現される。
[0022] 入力部41は、例えば、スイッチや操作キーであり、ユーザ(一例として、作業者や検査者)が、検査装置40に接続された系(一例として、B系)を構成する機器の種類(機種)や台数といった機器情報を入力する。なお、機種の代わりに、入力部41は、RS485規格といった物理層を規定する情報を入力してもよい。この他にも、入力部41は、検査の開始を指示する開始情報を入力してもよい。この場合、入力された開始情報に応答して、計測部43が、電気特性の計測を開始する。なお、入力部41に機器情報が入力されたことに応答して、計測部43が、電気特性の計測を開始してもよい。
[0023] 閾値生成部42は、入力部41から入力された機器情報に応じて、誤接続の有無を判定するための閾値を生成する。具体的に、閾値生成部42は、予め、図4に示すような各機種(一例として、機種F及び機種M)の機器(マスタ機器10及びスレーブ機器20)のインピーダンスをそれぞれ計測した情報を記憶している。この図4に示す各機器のインピーダンスは、一例として、10KHzの交流信号を流して計測した値である。なお、10KHzに限られず、他の周波数の交流信号を生成させてインピーダンスを計測しても良いが、通信線30の伝送特性への影響を考慮すると、1~10KHz程度の範囲が望ましい。」
「[図3]
[図:0001418864000003.jpg]
」
「[図4]
[図:0001418864000004.jpg]
」
「[0024] 閾値生成部42は、このような各機器のインピーダンスを基に、図5に示すような並列回路モデルを生成する。具体的には、以下の式1により、閾値生成部42は、1つの系を構成する機器情報(一例として、機種及び台数)に応じた合成インピーダンスを求めておく。
[0025] Zc=(Zs×Zp/N)/(Zs+(Zp/N))・・・(式1)
Zc:合成インピーダンス
Zs:マスタ機器のインピーダンス
Zp:スレーブ機器のインピーダンス
N:スレーブ機器の台数」
「[図5]
[図:0001418864000005.jpg]
」
「[0026] 図6は、一例として、機種Fの機器から構成される系(正常の系及び誤接続の系)における合成インピーダンスの特性を示すグラフである。図6において、曲線C1は、正常の系における合成インピーダンスの変化(台数に応じた変化)を示している。また、図6におけるその他の曲線は、誤接続の系における合成インピーダンスの変化を示している。図示するように、曲線C1は、台数が50台まで増えても、合成インピーダンスが1500Ωを下回らず、誤接続の系における合成インピーダンスの最大値(1080Ω程度)とは大きく離れている。これにより、機種Fの機器から構成される系の場合、構成する台数に依らず、一例として、インピーダンスが1200Ω以上であれば、誤接続がないと判定可能となる。逆に、インピーダンスが1200Ω未満であれば、誤接続があると判定可能となる。そのため、閾値生成部42は、機種Fと対応付けて、1200Ωを閾値として記憶しておく。
[0027] また、図7は、一例として、機種Mの機器から構成される系(正常の系及び誤接続の系)における合成インピーダンスの特性を示すグラフである。図7において、曲線C2は、正常の系における合成インピーダンスの変化(台数に応じた変化)を示している。また、図7におけるその他の曲線は、誤接続の系における合成インピーダンスの変化を示している。図示するように、曲線C2は、台数が増えると、合成インピーダンスが誤接続の系における合成インピーダンスの最大値を下回ってしまうため、上記の機種Fと異なり、台数に依存した閾値が必要となる。そのため、閾値生成部42は、図8に示すように、曲線C2に近似する曲線C3(近似曲線)を求め、その曲線C3のオフセット値を調整して、正常の系の合成インピーダンス(つまり、曲線C2)と、誤接続の系の合成インピーダンスとの間となる曲線C4を求めておく。具体的に、曲線C3は、以下の式2にて表され、また、曲線C4は、以下の式3にて表される。
[0028] Z=5.92X2-627.1X+28248・・・(式2)
Z=5.92X2-627.1X+25500・・・(式3)
Z:合成インピーダンス
X:台数
[0029] これにより、機種Mの機器から構成される系の場合、一例として、インピーダンスが、数式3から求められた値(台数を式3に当てはめて求められた値)以上であれば、誤接続がないと判定可能となる。逆に、インピーダンスが、数式3から求められた値未満であれば、誤接続があると判定可能となる。そのため、閾値生成部42は、閾値を生成するために、機種Mと対応付けて、数式3を記憶しておく。
[0030] これらのような閾値や数式3を記憶している閾値生成部42は、入力部41から入力された機器情報(一例として、機種や台数)に応じて、誤接続の有無を判定するための閾値を生成する。例えば、入力部41から、機種Fが入力された場合に、台数に依らず(台数の入力を省略してもよい)、閾値生成部42は、閾値として、1200Ωを生成する。また、入力部41から、機種Mが入力され、30台の台数が入力された場合に、閾値生成部42は、数式3から閾値として、12060Ωを生成する。」
「[図6]
[図:0001418864000006.jpg]
」
「[図7]
[図:0001418864000007.jpg]
」
「[図8]
[図:0001418864000008.jpg]
」
「[0031] 図3に戻って、計測部43は、接続された系(一例として、B系)について、通信線30の電気特性を計測する。なお、計測部43は、信号発生部431と、電圧計測部432と、電流計測部433とを備えている。
[0032] 信号発生部431は、一例として、10KHzの交流信号を発生させる。なお、発生させる交流信号は、10KHzに限られないが、上述したように、通信線30の伝送特性への影響を考慮すると、1~10KHz程度の範囲が望ましい。発生させた交流信号は、端子Tを通じて、B系の通信線30に供給される。
[0033] 電圧計測部432は、信号発生部431が交流信号を発生させている状態で、通信線30の電圧を計測する。
[0034] 電流計測部433は、信号発生部431が交流信号を発生させている状態で、変流器CTを通じて、通信線30の電流を計測する。
[0035] このような構成の計測部43は、電圧計測部432が計測した電圧、及び、電流計測部433が計測した電流から、通信線30の交流インピーダンスを計測する。このようにして、交流インピーダンスの計測を終えると、信号発生部431は、交流信号の発生を停止し、また、電圧計測部432及び電流計測部433は、計測を終了する。
[0036] 判定部44は、計測部43が計測した交流インピーダンスと、閾値生成部42が生成した閾値とに基づいて、誤接続の有無を判定する。つまり、計測された交流インピーダンスが、閾値以上であれば、判定部44は、誤接続がないと判定する。一方、計測された交流インピーダンスが、閾値未満であれば、判定部44は、誤接続があると判定する。
[0037] 表示部45は、一例として、液晶表示デバイスからなり、判定部44による判定結果を表示する。つまり、誤接続の有無を表示する。なお、表示部45の代わりに、若しくは、表示部45に加えて、ブザーやスピーカからなる発音部を備えている場合に、判定部44による判定結果に応じた報知音を出力するようにしてもよい。」
エ [0038]~[0045]、[図9]
「[0038] 以下、このような構成の検査装置40の動作について、図9を参照して説明する。図9は、本発明の実施形態1に係る検査処理の一例を示すフローチャートである。この検査処理は、照明システム1への電源投入前に開始される。
[0039] まず、検査装置40は、ユーザの入力操作に従って、機器情報を取得する(ステップS101)。つまり、入力部41は、ユーザによるスイッチや操作キーの操作に従って、検査装置40に接続された系(一例として、B系)を構成する機器の種類(機種)や台数といった機器情報を入力する。
[0040] 検査装置40は、閾値を生成する(ステップS102)。すなわち、閾値生成部42は、入力部41から入力された機器情報(一例として、機種や台数)に応じて、誤接続の有無を判定するための閾値を生成する。例えば、入力部41から、機種Fが入力された場合に、台数に依らず(台数の入力を省略してもよい)、閾値生成部42は、閾値として、1200Ωを生成する。また、入力部41から、機種Mが入力され、30台の台数が入力された場合に、閾値生成部42は、上述した数式3から閾値として、12060Ωを生成する。
[0041] 検査装置40は、小振幅交流信号を出力する(ステップS103)。すなわち、信号発生部431は、一例として、10KHzの交流信号を発生させ、B系の通信線30に供給する。
[0042] 検査装置40は、インピーダンス計測を行う(ステップS104)。すなわち、信号発生部431が交流信号を発生させている状態で、電圧計測部432は、通信線30の電圧を計測し、また、電流計測部433は、変流器CTを通じて、通信線30の電流を計測する。そして、計測部43は、計測された電圧及び電流から、通信線30の交流インピーダンスを計測する。
[0043] 検査装置40は、計測されたインピーダンスに応じて、誤接続の有無を判定する(ステップS105)。すなわち、判定部44は、計測部43が計測した交流インピーダンスと、閾値生成部42が生成した閾値とに基づいて、誤接続の有無を判定する。つまり、計測された交流インピーダンスが、閾値以上であれば、判定部44は、誤接続がないと判定する。一方、計測された交流インピーダンスが、閾値未満であれば、判定部44は、誤接続があると判定する。
[0044] 検査装置40は、判定結果を表示する(ステップS106)。すなわち、表示部45は、判定部44による判定結果を表示する。つまり、誤接続の有無を表示する。
[0045] このような検査処理によって、照明システム1に電源が投入されていない状態で、検査装置40が接続されている系(一例として、B系)における通信線30の交流インピーダンスが計測され、この交流インピーダンスと機器情報に応じた閾値とに基づいて、系同士の誤接続の有無が判定される。この結果、稼働前に、誤接続の有無を適切に検査することができる。」
「[図9]
[図:0001418864000009.jpg]
」
(2) 引用発明の認定
前記(1)において摘記した事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「A系とB系の複数の系に分かれており、系単位に1つのマスタ機器10と複数のスレーブ機器20とが、通信線30を介して接続されている照明システム1において、B系の通信線30に接続される検査装置40であって、([0013])
スレーブ機器20は、壁スイッチやリレー端末であり、通信線30を介して、マスタ機器10から送られる伝送信号を受信して動作するものであり、([0017])
幾つかのスレーブ機器20には、照明器具が接続されており、([0015])
マスタ機器10は、各スレーブ機器20のアドレスを記憶した中央制御装置であり、通信線30を介してスレーブ機器20を制御するものであり、([0016])
通信線30は、2線式の伝送線であり、マスタ機器10からスレーブ機器20(一例として、壁スイッチ)へは、電圧モードにて、電源供給と信号送信とが同時に行われ、スレーブ機器20からマスタ機器10へは、電流モードにて、返信が行われるものであり、([0018])
検査装置40は、照明システム1の電源投入前(稼働前)に、系同士の誤接続の有無を検査するものであり、([0019])
検査装置40は、照明システム1における電源投入前に、接続されたB系について、通信線30の電気特性(交流インピーダンス)を計測し、その計測値に応じて誤接続の有無を検査するものであり、([0020])
検査装置40は、入力部41と、閾値生成部42と、計測部43と、判定部44と、表示部45とを備え、([0021])
入力部41は、スイッチや操作キーであり、ユーザが、検査装置40に接続されたB系を構成する機器の種類(機種)や台数といった機器情報を入力し、([0022])
閾値生成部42は、予め、各機種(一例として、機種F及び機種M)の機器(マスタ機器10及びスレーブ機器20)のインピーダンスをそれぞれ計測した情報を記憶しており、([0023])
閾値生成部42は、このような各機器のインピーダンスを基に、並列回路モデルを生成し、1つの系を構成する機器情報(一例として、機種及び台数)に応じた合成インピーダンスを求めておき、([0024])
閾値生成部42は、入力部41から入力された機器情報(一例として、機種や台数)に応じて、誤接続の有無を判定するための閾値を生成し、([0030])
計測部43は、接続されたB系について、通信線30の電気特性を計測し、([0031])
計測部43は、信号発生部431と、電圧計測部432と、電流計測部433とを備えており、([0031])
信号発生部431は、一例として、10KHzの交流信号を発生させるものであり、発生させた交流信号は、端子Tを通じて、B系の通信線30に供給され、([0032])
電圧計測部432は、信号発生部431が交流信号を発生させている状態で、通信線30の電圧を計測するものであり、([0033])
電流計測部433は、信号発生部431が交流信号を発生させている状態で、変流器CTを通じて、通信線30の電流を計測するものであり、([0034])
計測部43は、電圧計測部432が計測した電圧、及び、電流計測部433が計測した電流から、通信線30の交流インピーダンスを計測するものであり、([0035])
判定部44は、計測部43が計測した交流インピーダンスと、閾値生成部42が生成した閾値とに基づいて、系同士の誤接続の有無を判定する、([0036]、[0045])
検査装置40。」
2 対比・判断
(1) 対比検討
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Aの観点
(ア) 「システム」について
a 引用発明の「スレーブ機器20」及び「マスタ機器10」は、いずれも本願発明の「電気機器」に相当する。
b 引用発明において、「スレーブ機器20」は「壁スイッチやリレー端末」であり、「マスタ機器10」は「各スレーブ機器20のアドレスを記憶した中央制御装置」であるから、これらは「電気機器」としての「種類」が異なるものである。
c そうすると、引用発明の「スレーブ機器20」及び「マスタ機器10」は、本願発明の「複数の種類の電気機器」に相当する。
d 引用発明の「通信線30」は、「系単位に1つのマスタ機器10と複数のスレーブ機器20と」を「接続」するものであるから、本願発明の「複数の種類の電気機器」を「接続」する「接続線」に相当する。
e 前記a~dを踏まえると、引用発明の「A系とB系の複数の系に分かれて」いる「照明システム1」において、「1つのマスタ機器10と複数のスレーブ機器20とが、通信線30を介して接続されている」「B系」は、本願発明の「接続線が接続された複数の種類の電気機器を含むシステム」に相当する。
(イ) 「診断装置」について
a 引用発明の「B系」に「接続」された「検査装置40」は、本願発明の「診断装置」に相当する。
b 引用発明において「検査装置40」の「判定部44」が判定する「系同士の誤接続」とは、本来は互いに非接続な状態にあるべきA系とB系において、「B系」の通信線30に「A系」の通信線30が誤って接続されている状態にあることであって、これは電気的には、A系の回路系とB系の回路系とが、中間に電気回路を介することなく非常に低いインピーダンスで電気的に接続された状態にあり、誤接続されたB系の通信線30の接続箇所における電位が、A系の通信線30の電位にほぼ等しくなることを意味する。
c すなわち、引用発明において「系同士の誤接続」が生じると、「B系の通信線30」が他の回路と短絡してしまい、誤接続のない正常状態にあったB系の通信線30の電位が、誤接続により変動してしまうという異常が生じることになる。
d この点に関し、短絡が本願発明の判定対象に含まれることは、本願明細書の段落【0028】の「なお、Kは、短絡が発生しているかを判定するための値である。Kは、判定値とも言う。…“Z<K”である場合、判定部160は、短絡が発生していると判定する。」との記載からも明らかである。
e したがって、引用発明の「検査装置40」の「判定部44」が行う「系同士の誤接続」の判定は、「B系」の「通信線30」の電位の変動という異常の有無を診断するものであり、B系の通信線30が正常であるか否かを判定するものであるといえるから、これは本願発明において「接続線を診断する」(「接続線が正常であるか否かを判定する」)ことに相当する。
f 前記a~eを踏まえると、引用発明の「検査装置40」は、本願発明の「前記接続線を診断する診断装置」に相当する。
(ウ) 構成Aの検討のまとめ
前記(ア)及び(イ)をまとめると、本願発明と引用発明は「接続線が接続された複数の種類の電気機器を含むシステムの前記接続線を診断する診断装置」の発明である点で一致する。
イ 構成Bの観点
前記ア(ア)において検討したとおり、引用発明の「スレーブ機器20」及び「マスタ機器10」は、本願発明の「複数の種類の電気機器」に相当するところ、引用発明の「予め、各機種(一例として、機種F及び機種M)の機器(マスタ機器10及びスレーブ機器20)のインピーダンスをそれぞれ計測した情報を記憶して[いる]」「閾値生成部42」は、本願発明の「前記複数の種類の電気機器のそれぞれのインピーダンスを記憶する記憶部」に相当する。
ウ 構成Cの観点
引用発明の「ユーザが、検査装置40に接続されたB系を構成する機器の種類(機種)や台数といった機器情報を入力[する]」「入力部41」は、本願発明の「種類毎の電気機器の数を取得する取得部」に相当する。
エ 構成Dの観点
(ア) 引用発明の「接続されたB系について、通信線30の電気特性を計測[する]」「計測部43」は、「信号発生部431と、電圧計測部432と、電流計測部433とを備えて」いるところ、「電圧計測部432」は「信号発生部431が交流信号を発生させている状態で、通信線30の電圧を計測」し、「電流計測部433」は「信号発生部431が交流信号を発生させている状態で、変流器CTを通じて、通信線30の電流を計測」し、「計測部43は、電圧計測部432が計測した電圧、及び、電流計測部433が計測した電流から、通信線30の交流インピーダンスを計測するもの」である。
(イ) ここで、引用発明の「通信線30の交流インピーダンス」は、「通信線30」のみではなく、「B系」の「1つのマスタ機器10と複数のスレーブ機器20」も含めたシステムのインピーダンスであるから、本願発明の「システムインピーダンス」に相当する。
(ウ) また、引用発明の「電圧計測部432が計測した電圧、及び、電流計測部433が計測した電流から、通信線30の交流インピーダンスを計測する」ことは、本願発明の「予め定められた計測方法を用いて」「インピーダンスを計測する」ことに相当する。
(エ) 前記(ア)~(ウ)を踏まえると、引用発明の「接続されたB系について、通信線30の電気特性を計測[する]」「計測部43」は、本願発明の「予め定められた計測方法を用いて、前記システムのインピーダンスであるシステムインピーダンスを計測する計測部」に相当する。
オ 構成Eの観点
引用発明の「各機器のインピーダンスを基に、並列回路モデルを生成し、1つの系を構成する機器情報(一例として、機種及び台数)に応じた合成インピーダンスを求め[る]」「閾値生成部42」は、本願発明の「前記複数の種類の電気機器のそれぞれのインピーダンスと、前記数とを用いて、合成インピーダンスを算出する算出部」にも相当する。
カ 構成Fの観点
(ア) 「システムインピーダンス」を用いた「判定」について
前記エ(イ)において検討したとおり、引用発明の「通信線30の交流インピーダンス」は、本願発明の「システムインピーダンス」に相当するから、引用発明において、「計測部43が計測した交流インピーダンス」に基づいて「系同士の誤接続の有無を判定する」ことは、前記ア(イ)の検討結果も踏まえると、本願発明の「前記システムインピーダンス」を用いて「前記接続線が正常であるか否かを判定する」ことに相当する。
(イ) 「合成インピーダンス」を用いた「判定」について
引用発明の「閾値生成部42」は、「1つの系を構成する機器情報(一例として、機種及び台数)に応じた合成インピーダンスを求めて」いるから、機種や台数が変化すると、合成インピーダンスも変化することになるため、「誤接続の有無を判定するための閾値」も、変化する合成インピーダンスに応じて生成されることになり、「閾値生成部42が生成した閾値」に基づいて「系同士の誤接続の有無を判定する」ことは、結局のところ「合成インピーダンス」を用いて行われるといえる。
そうすると、引用発明において、「閾値生成部42が生成した閾値」に基づいて「系同士の誤接続の有無を判定する」ことは、前記ア(イ)の検討結果も踏まえると、本願発明の「前記合成インピーダンス」を用いて「前記接続線が正常であるか否かを判定する」ことに相当する。
(ウ) 構成Fの検討のまとめ
前記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明の「計測部43が計測した交流インピーダンスと、閾値生成部42が生成した閾値とに基づいて、系同士の誤接続の有無を判定する」「判定部44」は、本願発明の「前記システムインピーダンスと前記合成インピーダンスとを用いて、前記接続線が正常であるか否かを判定する判定部」に相当する。
キ 小括
前記ア~カの対比結果をまとめると、本願発明の構成は、全て引用発明に含まれるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。
また、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 請求人の主張について
ア 請求人の主張1について
(ア) 主張1の概要
引用文献1では、「閾値」を用いているが、本願発明では、「閾値」を用いておらず、引用文献1には、請求項1に記載の「前記システムインピーダンスと前記合成インピーダンスとを用いて、前記接続線が正常であるか否かを判定する」という処理について、開示も示唆もされていない。
(イ) 主張1に対する当審の判断
前記(1)カで説示したように、引用発明の「閾値」は、変化する「合成インピーダンス」に応じて生成された値であるといえるから、「閾値生成部42が生成した閾値」に基づいて「系同士の誤接続の有無を判定する」ことは、結局のところ「合成インピーダンス」を用いて行われることになり、引用発明の「判定部44」は、本願発明の「前記システムインピーダンスと前記合成インピーダンスとを用いて、前記接続線が正常であるか否かを判定する判定部」に相当する。
したがって、前記主張1を採用することはできない。
イ 請求人の主張2について
(ア) 主張2の概要
引用文献1では、「誤接続の有無を判定」しており、「誤接続」とは「誤配線」のことであって、一方、本願発明では、「前記接続線が正常であるか否かを判定」している。本願の請求項1には、「前記接続線を診断する診断装置」と記載があり、「診断」なので、本願発明の「前記接続線が正常であるか否かを判定する」とは、「前記接続線」の状態を判定するという意味であって、「前記接続線」の接続状態が正常であるか否かを判定するという意味ではない。
(イ) 主張2に対する当審の判断
前記(1)ア(イ)で説示したように、引用発明の「検査装置40」の「判定部44」が行う「系同士の誤接続」の判定は、電気的には「B系」が他の回路と短絡することによる「通信線30」の電位の変動という異常の有無を診断することであり、「B系」の「通信線30」が正常であるか否かを判定するものであるといえるから、これは本願発明において「接続線を診断する」(「接続線が正常であるか否かを判定する」)ことに相当する。
したがって、前記主張2を採用することはできない。
仮に本願発明の「前記接続線が正常であるか否かを判定」することが、接続線の「断線」の有無のみの判定であるとしても、そのような断線によっても引用発明における合成インピーダンスが変化することは、合成インピーダンスの定義から自明であり、また断線の有無の検知という課題は特に例を示すまでもなく周知な課題であることを考慮すれば、引用発明の判定事項として「通信線30」の断線を含めるようにする程度のことは、当業者が容易に想到し得たものであるから、請求人の主張はいずれにしても採用されない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-016566