特許拒絶査定不服審判
2023-015485
自吸式ポンプ、及び自吸式ポンプのロータの製造方法
- 審判番号
- 2023-015485
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-171461外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年09月13日
- 審決日
- 2025年07月07日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【請求人代理人】森 太士
- 分類
- P18 .561-WZ (F04D) / P18 .55 -WZ (F04D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-171461「自吸式ポンプ、及び自吸式ポンプのロータの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月25日出願公開、特開2021- 46849〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年9月20日に出願された特願2019-171461号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和4年12月19日付け:拒絶理由通知
令和5年 3月 6日:意見書、手続補正書
令和5年 6月13日付け:拒絶査定
令和5年 9月13日:審判請求、手続補正書
令和6年10月16日付け:拒絶理由通知
令和6年12月16日:意見書、手続補正書
令和7年 1月24日付け:拒絶理由通知(最後)
令和7年 3月25日:意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
第2 令和7年3月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年3月25日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 羽根車と、
前記羽根車を駆動する電動機と、
前記羽根車を収容するケーシングと、を備え、
前記電動機は、
前記羽根車と一体に形成されるロータと、
前記ロータ及び前記羽根車を回転させるためのステータとを有し、
前記ロータは、
前記ステータの内周側に配置される円筒状のプラスチックマグネットと、
前記プラスチックマグネットを覆うマグネットカバーと、
前記プラスチックマグネットの内周側を被覆する部分及び前記羽根車に接続され且つ前記マグネットカバーに接合される接続部を含むモールド樹脂部とを有し、
前記マグネットカバーが、樹脂製であって、前記プラスチックマグネットの外周側を覆う円筒状の周壁を有し、前記周壁における前記モールド樹脂部の前記接続部と接合される側の一端部には、前記周壁よりも厚い厚肉部が形成され、前記厚肉部は、前記マグネットカバーの径方向外側へ向かって凸である、自吸式ポンプ。」
2 補正の適否について
(1)当初明細書等に記載された事項
本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等)という。)には、以下の記載がある(下線は、理解のために当審で付与した。)。
(ア)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自吸式ポンプ、及び自吸式ポンプのロータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の自吸式ポンプは、羽根車と、羽根車を駆動する電動機と、羽根車を収容するケーシングとを備える。電動機は、ステータと、ステータの内周側に配置されるマグネットと、マグネットの外周側を覆う金属製のマグネットカバーと、羽根車と一体に形成されて、マグネットの内周側を被覆するモールド樹脂部とを有する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-108024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の構成では、マグネットカバーが金属製であるため、羽根車の重量が比較的重くなることからアンバランス量(不釣り合い量)が大きくなり、その羽根車の回転に伴い比較的大きな振動が発生するという課題を有していた。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、羽根車の回転に伴い生じ得る振動を低減することができる自吸式ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の態様に係る自吸式ポンプは、羽根車と、羽根車を駆動する電動機と、羽根車を収容するケーシングと、を備え、電動機は、ステータと、ステータの内周側に配置される円筒状のマグネットと、マグネットの外周側を覆うマグネットカバーと、羽根車と一体に形成されて、マグネットの内周側を被覆するモールド樹脂部とを有し、マグネットカバーが、樹脂製である。
【0007】
本発明の態様に係る自吸式ポンプのロータの製造方法は、自吸式ポンプの羽根車と一体に形成されるロータを製造する方法であって、マグネットカバーを樹脂成形する工程と、マグネットをマグネットカバーに挿入する工程と、マグネットカバー及びマグネットを金型内に配置し、樹脂を金型内に流し込んで、マグネットカバーを羽根車及びロータのモールド樹脂部と一体に樹脂成形する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、羽根車の回転に伴い生じ得る振動を低減することができる自吸式ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る自吸式ポンプの側断面図である。
【図2】実施形態に係る自吸式ポンプの分解斜視図である。
【図3】ケーシングカバーの斜視図である。」
(イ)「【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態を図面と共に詳述する。
【0011】
本実施形態に係る自吸式ポンプは、給湯機器及び暖房機器の循環用ポンプ、食器洗浄機及び洗濯機の給水ポンプ等の用途に適用することができる。
【0012】
図1及び図2に示すように、自吸式ポンプ1は、羽根車2と、羽根車2を駆動する電動機3と、羽根車2を収容するケーシング4とを備える。なお、本実施形態では、図1中の左側を「正面」又は「前面」と称し、図1中の右側を「背面」又は「後面」と称する。
【0013】
羽根車2は、羽根車2の周方向に間隔をおいて複数配置される羽根(ブレード)2aと、羽根2aの一端側(前端側)を覆う前面シュラウド2bと、羽根2aの他端側(後端側)を覆う後面シュラウド2cとを有する。
【0014】
電動機3は、羽根車2を回転駆動するためのステータ5と、ステータ5及び制御基板6をモールド樹脂部7によって被覆するステータモールド8とを有する。また、電動機3は、羽根車2と一体に形成されるロータ10と、ロータ10を支持する軸11とを有する。
【0015】
ステータモールド8は、複数の金属板が積層されて形成されるステータコア12と、ステータコア12を覆う絶縁板13と、絶縁板13にコイル14が巻き回されて形成されるステータ5と、コイル14に流れる電流を制御する制御基板6とを有する。
【0016】
また、ステータモールド8の前面(図1中の左側)に、分離板15が配置され、分離板15には、羽根車2の軸11の一端側(後端側)を支持する円筒状の第一軸支持部(ボス)16が配設される。
【0017】
ロータ10は、ステータ5の内周側に配置される円筒状のマグネット17と、マグネット17の外周側を覆うマグネットカバー18と、マグネット17の内周側を被覆するモールド樹脂部20とを有する。マグネットカバー18は、モールド樹脂部20とは別体で樹脂成形される。ロータ10(モールド樹脂部20)は、首部(接続部)9を介して羽根車2(後面シュラウド2c)に接続されている。ロータ10は、軸受21を介して軸11に支持されており、ロータ10及び羽根車2が、軸11を回転中心として回転できるようになっている。
【0018】
マグネット17は、例えば、マグネット材料に樹脂材が混合されて成形されるプラスチックマグネットから構成され、マグネットカバー18及びモールド樹脂部20は、例えば、PPE樹脂(ポリフェニレンエーテル樹脂)から成形される。
【0019】
図2に示すように、マグネットカバー18は、円筒状の周壁22を有し、周壁22の一端側には、周壁22よりも厚くなるように厚肉部23が形成されている。周壁22の厚さは、例えば、0.3mmである。」
(ウ)「【0031】
次に、自吸式ポンプ1の羽根車2と一体に形成されるロータ10を製造する方法の一例を説明する。
【0032】
先ず、マグネットカバー18を、金型を用いて樹脂成形する。次いで、マグネット17を、マグネットカバー18に挿入する。そして、マグネットカバー18及びマグネット17を金型内に配置し、樹脂を金型内に流し込んで、マグネットカバー18を羽根車2及びモールド樹脂部20と一体に樹脂成形する。このようにすることにより、ロータ10と一体に形成された羽根車2を得ることができる。なお、図2中の符号24は、マグネットカバー18とモールド樹脂部20との接合部である。
【0033】
なお、上述のロータ10の製造方法はあくまでも一例である。例えば、羽根2aを備えた前面シュラウド2bを後面シュラウド2cとは別体で樹脂成形し、羽根2aを備えた前面シュラウド2bを後面シュラウド2cに溶着して、ロータ10と一体に羽根車2を形成する工程が追加されてもよい。」
(エ)「【0045】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0046】
(1)自吸式ポンプ1は、羽根車2と、羽根車2を駆動する電動機3と、羽根車2を収容するケーシング4と、を備える。電動機3は、ステータ5と、ステータ5の内周側に配置される円筒状のマグネット17と、マグネット17の外周側を覆うマグネットカバー18と、羽根車2と一体に形成されて、マグネット17の内周側を被覆するモールド樹脂部20とを有する。マグネットカバー18が、樹脂製である。
【0047】
このような自吸式ポンプ1によれば、マグネットカバー18が樹脂製であるため、羽根車2の重量を軽減できることからアンバランス量を小さくできて、羽根車2の回転に伴い生じ得る振動を低減することが可能になる。
【0048】
実験において測定を行った結果として、本実施形態のようにマグネットカバー18が樹脂製である場合には、マグネットカバー18がSUS材製である場合と比較して、羽根車2の回転に伴い生じる振動(振動加速度)が0.37m/sec2低減された。
【0049】
また、マグネット17の外周側をマグネットカバー18によって覆う構造としてロータ10を構成することにより、マグネット17とステータ5との間隔(エアギャップ)を狭く維持し、且つ、マグネット17の飛散防止構造を形成することができる。
【0050】
(2)マグネットカバー18は、円筒状の周壁22を有し、周壁22の厚さが、0.3mmである。
【0051】
このようにマグネットカバー18を構成することにより、マグネット17とステータ5との間隔を狭く維持することができて、電動機3のモータ効率を高い状態で維持することが可能になる。
【0052】
(3)マグネットカバー18は、周壁22の一端側に形成される厚肉部23を有する。
【0053】
このようにマグネットカバー18を構成することにより、薄肉樹脂成形した周壁22を厚肉部23によって補強することができて、部品状態での周壁22の強度向上を図ることが可能になる。
【0054】
(4)マグネットカバー18は、ポリフェニレンエーテル樹脂から成形される。
【0055】
このような材料を採用することにより、薄肉でも強度の高いマグネットカバー18の成形を良好に実現することができる。
【0056】
(5)自吸式ポンプ1のロータ10の製造方法は、マグネットカバー18を樹脂成形する工程と、マグネット17をマグネットカバー18に挿入する工程と、を備える。また、自吸式ポンプ1のロータ10の製造方法は、マグネットカバー18及びマグネット17を金型内に配置し、樹脂を金型内に流し込んで、マグネットカバー18を羽根車2及びロータ10のモールド樹脂部20と一体に樹脂成形する工程と、を備える。
【0057】
このような製造方法によれば、マグネットカバー18とマグネット17との間に隙間が生じるため、自吸式ポンプ1の使用時の循環水による膨潤によって、マグネット17に寸法変化及び機械的強度の低下等が生じるのを抑制することが可能になる。」
(オ)
図1
[図:0001426288000001.jpg]
(カ)
図2
[図:0001426288000002.jpg]
(2)本件補正に対する当審の判断
以下、当初明細書等において、「前記厚肉部は、前記マグネットカバーの径方向外側へ向かって凸である」ことが記載されているのかについて検討する。まず、(サ)~(ソ)で、図面を除く明細書の記載から把握できる事項を認定し、その後、図面の図示事項を含めて検討する。
(サ)上記(1)(ア)~(エ)(特に、(イ)の段落【0017】、(ウ)の段落【0032】及び(エ)の段落【0056】)によると、マグネットカバー18がマグネット17の外周側を覆うこと、モールド樹脂部20がマグネット17の内周側を被覆すること、モールド樹脂部20が首部9を介して羽根車2の後面シュラウド2cに接続されていること、マグネットカバー18を羽根車2及びロータ10のモールド樹脂部20と一体に樹脂成形することは記載されている。しかしながら、マグネットカバー18とモールド樹脂部20との接合部の具体的な位置は記載されておらず、接合部の具体的な位置を示唆するモールド樹脂部20の形状等の記載はない。
(シ)上記(1)(ア)~(エ)(特に、(イ)の段落【0019】)によると、出願当初の明細書には、マグネットカバー18は、円筒状の周壁22を有し、周壁22の一端側には、周壁22よりも厚くなるように厚肉部23が形成されていること、周壁22の厚さは、例えば、0.3mmであることは記載されている。しかしながら、厚肉部23が「径方向外側へ向かって凸である」ことは、出願当初の明細書には記載されていない。
(ス)上記(1)(ア)~(エ)(特に、(イ)の段落【0019】及び(エ)の段落【0053】)によると、厚肉部23が周壁22よりも厚くなるように形成されていることは記載されているものの、周壁22に対してどの程度厚く形成されているのかは明記されていない(段落【0053】には、「薄肉樹脂成形した周壁22を厚肉部23によって補強することができて、部品状態での周壁22の強度向上を図ることが可能になる。」との効果は記載されているものの、当該効果は、周壁22よりも厚い厚肉部23が存在すれば発揮する効果であって、当該効果から周壁22に対してどの程度厚く形成されているのかは把握できない。)。
(セ)上記(1)(エ)の段落【0049】~【0051】の記載から、マグネット17とステータ5との間隔(エアギャップ)を狭く維持することが、電動機3のモータ効率を高い状態で維持する点で望ましいことが把握できる。
(ソ)上記(1)(エ)の段落【0057】の記載から、マグネットカバー18とマグネット17との間に隙間があることが把握できる。
次に、上記(サ)~(ソ)で認定した事項をもとに、図1及び図2から「前記厚肉部は、前記マグネットカバーの径方向外側へ向かって凸である」ことが記載されているのかについて検討する。
(タ)図1には、マグネットカバーを示す符号18及びモールド樹脂部を示す符号20は示されているものの、周壁を示す符号22、厚肉部を示す符号23は示されていない。
(チ)図1には、羽根車2の後面シュラウド2c、首部9、モールド樹脂部20、マグネットカバー18(特に、符号18が付されている右端部分参照。)について、左上から右下への斜線が付されて図示されている。また、図1からは、後面シュラウド2c、首部9、モールド樹脂部20、マグネットカバー18について、各部品で左上から右下への斜線の間隔が異なることも視認できないから、各部品の境界は読み取れず、各部品個別の形状は視認できない。これは、上記(サ)で認定したとおり、マグネットカバー18を羽根車2及びロータ10のモールド樹脂部20と一体に樹脂成形した状態を示していると理解できる。
(ツ)図1からは、マグネット17とステータ5との間隔(エアギャップ)は、一定である点が視認でき、マグネット17とステータ5との間に配置される部材(マグネットカバー18あるいはモールド樹脂部20)において径方向外側に凸である部分があることは視認できない。
(テ)図1には、上記(ソ)で認定したマグネットカバー18とマグネット17との間の隙間が視認できない。
(ト)図2には、マグネットカバーを示す符号18、周壁を示す符号22、厚肉部を示す符号23、マグネットカバー18とモールド樹脂部20との接合部を示す符号24が示されている。他方、図2には、仕切板34の吸込穴53に面取りと推認される小さな段差を示す線が二本で図示されている。仮に、図2の記載において、厚肉部が外側へ向かっての凸であるならば、周壁を示す符号22と、厚肉部を示す符号23は、単一の直線では表されず、上述した吸込穴53の周りの図示と同様に段差を示す二本線が図示されるところ、そのような線は図示されていない。
してみると、符号22及び符号23の間の線と、符号24で示される線が、(A)単に周壁22、厚肉部23の位置、及びマグネットカバー18あるいはモールド樹脂部20との境界の位置を示すものであるのか、(B)マグネットカバー18及びモールド樹脂部20を視認した際の物品の形状や外観を示す線を意味しているのか、多義的に解釈できる図示となっている。仮に(B)の意味だったとしても、段差が図示されていないことから、厚肉部23が、周壁22に対して径方向外側に凸であることを示しているのか、マグネットカバー18とマグネット17との間の隙間がある径方向内側に凸であることを示しているのか、あるいは、厚肉部23と周壁22、厚肉部23とモールド樹脂部20とが色合い等の外観が異なることを示している(段差があるか否かは不明)かは、把握できない。そうすると、図2が、厚肉部23が周壁22に対して径方向外側に凸であることを示していると、一義的に読み取ることはできない。
(ナ)また、図1と図2を合わせてみても、上記(チ)のとおり、図1において、どの部分がマグネットカバー18とモールド樹脂部20との接合部24であるのか、厚肉部23であるのかは判然としない。
(ニ)上記(テ)のとおり、図1からは、マグネットカバー18とマグネット17との間の隙間が視認できず、図1から微小な寸法について認定することは妥当といえない。仮に、認定するとしても、上記(チ)のとおり図1においてマグネットカバー18とモールド樹脂部20との境界が把握できず、厚肉部23がどの部分を意味しているのかが把握できない。また、上記(ツ)のとおり、マグネットカバー18あるいはモールド樹脂部20に径方向外側に凸である部分があることは視認できない。
(ヌ)また、上記(セ)のとおり、マグネット17とステータ5との間隔は狭く維持した方が望ましいところ、図1を参照した当業者が、厚み部分を径方向外側に凸とした構成であると積極的に解する理由もない。
上記(サ)~(ヌ)を考慮し、また当初明細書等の全ての記載を総合して考慮しても、「前記厚肉部は、前記マグネットカバーの径方向外側へ向かって凸である」との事項は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明な事項でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
(3)請求人の主張について
(ハ)請求人は、厚肉部について、令和6年12月16日に提出した意見書において、図1の拡大図を示し、径方向外側に凸であると主張している。
令和6年12月16日に提出した意見書において示された図
[図:0001426288000003.jpg]
しかしながら、上記(ニ)のとおり、微小な寸法を図1から認定することは妥当といえず、上記(ナ)のとおり、厚肉部23がどの部分であるのかも明確でない。むしろ、図1からは、径方向内側に凸であって周壁よりも厚肉である部分(当審にて追記した以下の図に示す部分参照。)が図1を拡大することなく看取できるから、当該部分を厚肉部と解釈する方が自然といえる。よって、請求人が径方向外側に凸であると主張する部分を厚肉部と解することはできない。
令和6年12月16日に提出した意見書において示された図に当審が追記した図
[図:0001426288000004.jpg]
(ヒ)請求人は、令和7年3月25日に提出した意見書において、「[図1]において、「マグネットカバー」に付されたハッチングと、「モールド樹脂部」に付されたハッチングとの間隔が異なっており、「図1」を参照しますと、「マグネットカバー」に付されたハッチングの方が「モールド樹脂部」に付されたハッチングよりも間隔が若干狭く、ハッチングの間隔が変わっている接合部が「マグネットカバーとモールド樹脂部との境界」を示しています。」と主張しているものの、「マグネットカバー」に付されたハッチングと「モールド樹脂部」に付されたハッチングとの違いを視認できないことは、上記(チ)のとおりである。
また、以下に示す請求人が令和7年3月25日に提出した意見書において示した図において、請求人はマグネットカバー18の全体の輪郭を示しているものの、マグネットカバー18の右側(図1(上記(オ))の符号10付近)に、輪郭線と推認される線は視認できるが、マグネットカバー18の左側の輪郭線は視認できない。そして、上記(チ)で上述したとおり、マグネットカバー18の右側に示される線は「マグネットカバー18を羽根車2及びロータ10のモールド樹脂部20と一体に樹脂成形した状態」における右側の輪郭線を示していると解釈でき、マグネットカバー18の右側に示される線が存在することをもって、マグネットカバー18の輪郭の左側を示す線があるとは認められない。さらに、仮に請求人が主張する部分が「マグネットカバーとモールド樹脂部との境界」であったとしても、上記(ニ)で上述したとおり、図1から視認することが難しい程度の微小な寸法について認定することは妥当といえない。
令和7年3月25日に提出した意見書において示された図
[図:0001426288000005.jpg]
よって、請求人の主張は採用できない。
(4)結論
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
3 本件補正に関する結論
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明
1 本願発明及び明細書
令和7年3月25日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、本件補正前の、令和6年12月16日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(下線部は、補正箇所である。)
(本願発明)
「 羽根車と、
前記羽根車を駆動する電動機と、
前記羽根車を収容するケーシングと、を備え、
前記電動機は、
前記羽根車と一体に形成されるロータと、
前記ロータ及び前記羽根車を回転させるためのステータとを有し、
前記ロータは、
前記ステータの内周側に配置される円筒状のプラスチックマグネットと、
前記プラスチックマグネットを覆うマグネットカバーと、
前記プラスチックマグネットの内周側を被覆する部分及び前記羽根車に接続され且つ前記マグネットカバーに接合される接続部を含むモールド樹脂部とを有し、
前記マグネットカバーが、樹脂製であって、前記プラスチックマグネットの外周側を覆う円筒状の周壁を有し、前記周壁における前記モールド樹脂部の前記接続部と接合される側の端部には、前記マグネットカバーの径方向外側へ向かって凸となり前記周壁の他の部分よりも厚い厚肉部が形成される、自吸式ポンプ。」
2 拒絶の理由
当審が通知した令和7年1月24日付け拒絶理由(最後)通知書は、以下の拒絶理由を含むものである。以下では、その概要を示す。
理由1.(新規事項)令和6年12月16日付け手続補正書でした補正により、請求項1が「前記マグネットカバーが、樹脂製であって、前記プラスチックマグネットの外周側を覆う円筒状の周壁を有し、前記周壁における前記モールド樹脂部の前記接続部と接合される側の端部には、前記マグネットカバーの径方向外側へ向かって凸となり前記周壁の他の部分よりも厚い厚肉部が形成される」との事項を含むように補正されたが、当該補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
第4 令和7年1月24日付け拒絶理由に対する当審の判断
1 請求項1の補正について
令和6年12月16日付け手続補正書でした補正により特定された「前記マグネットカバーが、樹脂製であって、前記プラスチックマグネットの外周側を覆う円筒状の周壁を有し、前記周壁における前記モールド樹脂部の前記接続部と接合される側の端部には、前記マグネットカバーの径方向外側へ向かって凸となり前記周壁の他の部分よりも厚い厚肉部が形成される」との事項のうち、「前記マグネットカバーの径方向外側へ向かって凸となり」とする補正が新たな技術的事項を導入する補正であることは、前記「第2 2 補正の適否について」で述べたとおりであり、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
2 まとめ
したがって、請求項1の補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
第5 むすび
以上のとおり、令和6年12月16日付け手続補正書でした補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-015485