特許拒絶査定不服審判
2023-015181
喫煙品用又はエアロゾル発生製品用のフィルター
- 審判番号
- 2023-015181
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-210526
- 請求日
- 2023年09月08日
- 審決日
- 2025年04月28日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ブリティッシュ アメリカン タバコ (インヴェストメンツ) リミテッド
- 【請求人代理人】轟木 哲
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 槙原 進
- 審判官 正木 裕也
- 分類
- P18 .121-WZ (A24D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-210526「喫煙品用又はエアロゾル発生製品用のフィルター」拒絶査定不服審判事件〔令和4年3月15日出願公開、特開2022-43220〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本件に係る特許出願(以下、「本願」という。)は、2018年(平成30年)10月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年10月25日(GB)グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)を国際出願日とする特許出願である特願2020-542696号の一部を、令和3年12月24日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和4年1月19日 :手続補正書及び上申書の提出
令和5年1月19日付け:拒絶理由の通知
令和5年4月18日 :意見書及び手続補正書の提出
令和5年5月1日付け :拒絶査定
令和5年9月 8日 :拒絶査定不服審判の請求及び手続補正書の提出
令和6年7月25日付け:当審における拒絶理由の通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)
令和7年1月30日 :意見書及び手続補正書の提出
2 本願発明
本願の請求項1~14に係る発明は、令和7年1月30日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
喫煙品またはエアロゾル発生製品用フィルターであって、前記フィルターは、
第1フィルターセクションであって、当該第1フィルターセクションはフィルター材と添加剤を含む約2mm~約6mmの直径を有する2つのカプセルとを含み、カプセルはフィルターの長手方向軸に隣接する軸方向領域に配置され、軸に沿った方向において連続して間隔が空けられており、使用時に前記添加剤が2つのカプセルから放出されるとき、当該添加剤の濃度が第1フィルターセクションのフィルター材の軸方向領域に増加しやすくしている第1フィルターセクションと、
前記第1フィルターセクションの上流に位置する第2フィルターセクションであって、当該第2フィルターセクションは、フィルターの長手方向軸に隣接する前記第2フィルターセクションの軸方向領域に位置する少なくとも1つの流路を含み、使用時にカプセルが配置された前記第1フィルターセクションの軸方向領域を介してエアロゾルを吸い込みやすくしている第2フィルターセクションと、を含み、
前記フィルター材は、約16mm~約19mmの円周を有し、約4.5dpf~約8dpfの繊維を有し、および約15,000~約25,000の総デニールを有する、又は
前記フィルター材は、約20mm~約22mmの円周を有し、約4.0dpf~約5.0dpfの繊維を有し、および約30,000~約35,000の総デニールを有する、又は
前記フィルター材は、約23mm~約25mmの円周を有し、約3.0dpf~約5.0dpfの繊維を有し、および約35,000~約40,000の総デニールを有するフィルター。」
3 当審拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知で当審が通知した拒絶理由の理由2(進歩性)のうち、本願の請求項1に係る発明に対して通知した拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。
本願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1~4に記載された発明ないし技術事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2014-90720号公報
引用文献2:特表2016-514472号公報
引用文献3:特表2012-519497号公報
引用文献4:特表2016-533764号公報
4 引用文献に記載された事項及び引用発明
(1)引用文献1について
ア 引用文献1の記載事項及び図示事項
引用文献1には、次の記載事項及び図示事項がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
(ア)「【0023】
ここで使用する「喫煙品」なる用語は、タバコ、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコまたはタバコ代替え品タバコをベースにしているかに関係なく紙巻きタバコ、シガーおよびシガリロなどの喫煙可能な製品および発熱するが燃焼しない製品および消費者に送出するためのエアロゾルを発生させることができる他のニコチン送出装置などを含む。このような喫煙品は、喫煙者が吸引する気体流用のフィルターが設けられている。」
(イ)「【0025】
また紙巻きタバコの円周によって名付けられ、「レギュラー」(約23~25mm)、「ワイド」(25mm超)、「スリム」(約22~23mm)、「デミ-スリム」(約19~22mm)、「スーパー-スリム」(約16~19mm)および「ミクロ-スリム」(約16mm未満)などと名付けられる。従ってキングサイズ、スーパー-スリムフォーマットの紙巻きタバコは、例えば、長さが約83mmで円周が約17mmとなる。レギュラー、キングサイズフォーマットの紙巻きタバコは、23~25mmの円周および75~91mmの全長を有し、よって多くの消費者に好まれている。」
(ウ)「【0027】
後述する喫煙品およびフィルターは、上記いずれのフォーマットにも製造することができる。喫煙品は、例えば、長さを70~100mmで、円周を14~25mmにすることができる。」
(エ)「【0029】
図1は、一般的には円筒形状であり、レギュラー、キングサイズフォーマット、即ち75~91mmの範囲の長さおよび23~25mmの範囲の円周を有する喫煙品1の略図である。喫煙品1は、包装材3、この例ではシガレットペーパーに包まれたタバコロッド2を含み、これはフィルター4に、このフィルター4を覆い包装材3を部分的に覆うチッピング材5によって長手方向に接続され、これによりフィルター4をタバコロッド2に接続する。フィルター4は、フィルター4のタバコロッド端部に第1セクション6を含み、これはそのフィルター材の軸方向領域に配されたカプセル8を有する吸収材7を含む。この軸方向領域は、この例では喫煙品1の軸「a」の中心に位置し、約3mmの半径を有する領域である。これとは別の実施態様では、軸方向領域の半径は、1mm~4mmまたは1mm~3mmのいずれでもよく、または1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mmまたは3.5mmであってもよい。カプセル8または他の添加剤材料を、第1フィルターセクション6のフィルター材の軸方向領域のみに配してもよく、または第1フィルターセクション6のフィルター材の非軸方向領域より軸方向領域に多く配置してもよい。第1セクションは、第1プラグラッパー9に巻かれている。
【0030】
フィルター4は、フィルター4の吸い口端に第2セクション10をさらに含み、これは管状に形成された繊維性フィルター材11を含み、このフィルター材11の中央を通って延びた溝12を有する。フィルター材11の中央を通って延びた空のまたは中空の溝12は、1mm~6mmの直径、例えば2mm~5mmの直径を有する。フィルター材11の中央を通って延びた溝12は、この例では空の中空の経路である。いくつかの実施態様では溝は、第2フィルターセクション10のフィルター材の軸方向領域を通って延びている。第2フィルターセクション10の軸方向領域は、この例では、喫煙品1の軸「a」の中央に位置する領域であり、約2.5mmの半径を有する。これとは別の実施態様では軸方向領域の半径は、1mm~4mmまたは1mm~3mmのいずれであってもよく、約1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mmまたは3.5mmであってもよい。この例では管状のフィルターセクションは、セルロースアセテートトウから形成され、第2のプラグラッパー13に巻かれている。管状フィルターの壁厚は、約1.5mmである。これとは別の実施態様では壁厚は、1mm~4mmまたは1mm~3mmのいずれであってもよく、または約1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mmまたは3.5mmであってもよい。しかしながら特定の寸法は、管を形成するフィルター材の密度およびこれに塗布される可塑剤の量に基づいて選択してもよく、これにより所望の剛性、多孔度または他の特性を有する管となる。管状のフィルターセクション10は、既存の方法および機器を使用して製造することができる。
【0031】
第1セグメント6は、連続したセルロースアセテート繊維および可塑剤を使用して形成されたセルロースアセテートセグメントである。カプセル8は、球体であり、3.5mmの直径を有するが、他の形状および大きさのカプセルを使用することができ、喫煙品1を通過する主流煙の特性を変性する流体添加剤を含む。カプセル8は、既存の方法および機器を使用して製造し、第1フィルターセクション6内に挿入することができる。この例ではカプセル8は、メンソール風味剤を含むが、他の流体または粒状添加剤をカプセル8内に含有させることも可能である。カプセルは、消費者がつぶすことができ、流体添加剤を吸収フィルター材11内に解放することができる。
【0032】
タバコロッド2および第1および第2フィルターセクション6、10が位置合わせされる際の喫煙品の軸1を図1の「a」で表す。」
(オ)「【0035】
使用の際、喫煙品1のタバコロッド2に従来の方法で消費者が火を付けると、タバコの煙がタバコロッド2の燃えている燃えさしからフィルター4を介して吸引される。第2フィルターセクション10の溝12は、管状フィルター材11の周囲より主流煙がフィルター4を通過しやすく、従ってより多くの主流煙が溝12を介して案内される。これによりカプセル8が位置する第1フィルターセクション6の軸「a」の周囲の軸方向領域により多く主流煙が流れることになる。消費者が喫煙品1の喫煙前または喫煙中にカプセル8をつぶすと、その中に含まれている煙変性剤、この場合メンソールが、第1フィルターセクション6の軸方向領域内に多量に放出され、それを通って多くの主流煙の流れが第2フィルターセクション10により案内される。従ってこの増大した主流煙の流れが消費者への煙変性剤の送出を向上させ、従って喫煙品1は、従来の喫煙品と比べて消費者に煙変性剤を良好に送出することができる。」
(カ)「【0041】
図3は、さらに別の本発明の実施態様によるフィルターを有する喫煙品41の略図である。喫煙品41の特徴は、特に下記に記載しないかぎり図1を参照して説明した喫煙品1と同じである。喫煙品41は、包装材43、この例ではシガレットペーパーに包まれたタバコロッド42を含み、これはフィルター44に、フィルター44を覆い包装材43を部分的に覆うチッピング材45によって長手方向に接続される。フィルター44は、フィルター44のタバコロッド端部で吸収材47を含む第1セクション46を含む。この場合第1フィルターセクションに配されたカプセル8を有するのではなく、吸収材47は、その軸方向領域に配された複数のマイクロカプセルを有し、ここでこの軸方向領域は、上述の喫煙品1の第1フィルターセクション6について定義されたものである。第1セクション46は、第1プラグラッパー49に包まれている。
【0042】
フィルター44は、図1の溝12を参照して上述したようにフィルター44の吸い口端に管状に形成された繊維性フィルター材51を含み、フィルター材51の中央またはその軸方向領域を介して延びた溝52を有する第2セクション50をさらに含む。この例では管状のフィルターセクションは、セルロースアセテートトウから形成され、第2のプラグラッパー53に包まれている。
【0043】
使用の際、図3に示した喫煙品41は、図1に示した喫煙品1と同様に機能する。しかしながら、1つのカプセル8をつぶして変性剤を放出させるのではなく、消費者は、喫煙品41の喫煙前または喫煙中に複数のマイクロカプセル48をつぶす。そうすることによって、第2フィルターセクション50によって多くの多くの主流煙の流れがマイクロカプセルから放出された煙変性剤が位置する第1フィルターセクション46の軸方向領域を介して案内される。従って、喫煙品を喫煙した際に、増大した主流煙の流れが消費者への煙変性剤の送出を向上させ、喫煙品41は、従来の喫煙品と比べて消費者に煙変性剤を良好に送出することができる。」
(キ)「【0060】
図7は、さらに別の本発明の実施態様によるフィルターを有する喫煙品121の略図である。喫煙品121の特徴は、特に下記に記載しないかぎり図1を参照して説明した喫煙品1と同じである。喫煙品121は、包装材123、この例ではシガレットペーパーに包まれたタバコロッド122を含み、これはフィルター124に、フィルター124を覆い包装材123を部分的に覆うチッピング材125によって長手方向に接続される。フィルター124は、フィルター124のタバコ端部ではなく、フィルターの吸い口端で第1セクション126を含み、これはその軸方向領域に配された吸収材127およびカプセル128を含み、ここで軸方向領域は、上述の喫煙品1の第1フィルターセクション6について定義されたものである。第1セクション126は、第1プラグラッパー129に包まれている。カプセル128は、フィルター124を通過する主流煙を変性することができる添加剤、この場合メンソール風味剤を含む。
【0061】
フィルター124は、フィルター124の吸い口端ではなく、フィルター124のタバコロッド端部で、図1の溝12を参照して上述したように管状に形成された繊維性フィルター材131を含み、フィルター材131の中央またはその軸方向領域を介して延びた溝132を有する第2セクション130をさらに含む。この例では管状のフィルターセクションは、セルロースアセテートトウから形成され、第2のプラグラッパー133に包まれている。」
(ク)「【0064】
使用の際、図7に示した喫煙品121は、図1に示した喫煙品1と同様に機能する。カプセル128をつぶして変性剤を放出させると、第2フィルターセクション130によって多くの主流煙の流れが、カプセル128の内容物が放出された第1フィルターセクション126の軸方向領域を介して案内される。従って、喫煙品を喫煙した際に、増大した主流煙の流れが消費者への煙変性剤の送出を向上させ、喫煙品121は、従来の喫煙品と比べて消費者に煙変性剤を良好に送出することができる。」
(ケ)「【図1】
[図:0001427248000001.jpg]
」
(コ)「【図3】
[図:0001427248000002.jpg]
」
(サ)「【図7】
[図:0001427248000003.jpg]
」
イ 上記アから認められること
上記アから、引用文献1には、次の事項が認められる。
(ア)上記ア(ア)の「ここで使用する「喫煙品」なる用語は、タバコ、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコまたはタバコ代替え品タバコをベースにしているかに関係なく紙巻きタバコ、シガーおよびシガリロなどの喫煙可能な製品および発熱するが燃焼しない製品および消費者に送出するためのエアロゾルを発生させることができる他のニコチン送出装置などを含む。」なる記載から、喫煙品は、消費者に送出するためのエアロゾルを発生させることができる他のニコチン送出装置などを含むと認められる。
してみると、上記ア(キ)及び(サ)記載の引用文献1の「喫煙品121」の「フィルター124」は、「消費者に送出するためのエアロゾルを発生させることができる他のニコチン送出装置などを含む喫煙品121用のフィルター124」であると認められる。
(イ)上記ア(エ)の段落【0031】、上記ア(キ)及び(サ)からみて、引用文献1の「フィルター124」の「第1フィルターセクション126」は、吸収材127と流体添加剤を含む約3.5mmの直径を有するカプセル128とを含むものと認められる
(ウ)上記ア(エ)の段落【0029】及び【0032】並びに(ケ)の図1からみて、引用文献1の「カプセル8」は、第1および第2フィルターセクション6、10が位置合わせされる喫煙品1の軸「a」から半径約3mmの軸方向領域に配される。
そして、「軸方向領域」は、喫煙品1の軸「a」から半径約3mmの領域であるから、喫煙品1の軸「a」に隣接する領域を含む。そうすると、引用文献1の「カプセル8」は、喫煙品1の軸「a」に隣接する軸方向領域に配されると認められる。
同様に、上記ア(キ)及び(サ)の図7からみて、引用文献1の「カプセル128」は、喫煙品121の軸「a」に隣接する軸方向領域に配されると認められる。
ここで、喫煙品121の軸「a」は、第1および第2フィルターセクション126、130が位置合わせされる軸であるから、フィルター124の長手方向軸である。
(エ)上記ア(エ)の段落【0031】、(オ)からみて、引用文献1の「フィルター4」の使用の際、流体添加剤がカプセル8から放出されることが認められる。
ここで、上記ア(オ)の段落【0035】には、「第2フィルターセクション10の溝12は、管状フィルター材11の周囲より主流煙がフィルター4を通過しやすく、従ってより多くの主流煙が溝12を介して案内される。これによりカプセル8が位置する第1フィルターセクション6の軸「a」の周囲の軸方向領域により多く主流煙が流れることになる。消費者が喫煙品1の喫煙前または喫煙中にカプセル8をつぶすと、その中に含まれている煙変性剤、この場合メンソールが、第1フィルターセクション6の軸方向領域内に多量に放出され、それを通って多くの主流煙の流れが第2フィルターセクション10により案内される。」と記載されており、引用文献1の「フィルター4」の使用の際、流体添加剤がカプセル8から放出されるとき、第1フィルターセクション6の軸方向領域により多く主流煙が流れ、流体添加剤が第1フィルターセクション6の軸方向領域内に多量に放出されることから、当該流体添加剤の濃度が第1フィルターセクション6の軸方向領域内に増加しやすくしていると認められる。
そして、上記ア(キ)、(ク)及び(サ)からみて、引用文献1の「フィルター124」の使用の際、流体添加剤がカプセル128から放出されるとき、当該流体添加剤の濃度が第1フィルターセクション126の軸方向領域内に増加しやすくしていると認められる。
(オ)上記ア(エ)の段落【0030】からみて、引用文献1の「第2フィルターセクション10」は、喫煙品1の軸「a」から半径約2.5mmの第2フィルターセクションの軸方向領域を通って延びる、空の中空の経路である溝12を有する。
そして、「軸方向領域」は、喫煙品1の軸「a」から半径約2.5mmの領域であるから、喫煙品1の軸「a」に隣接する領域を含む。そうすると、引用文献1の「第2フィルターセクション10」は、喫煙品1の軸「a」に隣接する第2フィルターセクション10の軸方向領域を通って延びる、空の中空の経路である溝12を有すると認められる。
同様に、上記ア(キ)及び(サ)からみて、引用文献1の「第2フィルターセクション130」は、喫煙品121の軸「a」に隣接する第2フィルターセクション130の軸方向領域を通って延びる、空の中空の経路である溝132を有すると認められる。
そして、喫煙品121の軸「a」は、フィルター124の長手方向軸である。
(カ)上記ア(キ)、(ク)及び(サ)からみて、引用文献1の「フィルター124」の使用の際、第2フィルターセクション130の溝132により、カプセル128が位置する第1フィルターセクション126の軸方向領域により多く主流煙が流れるようになるが、その際、カプセル128が配置された第1フィルターセクション126の軸方向領域を介して案内される主流煙を吸い込みやすくなっていることは自明であるから、「第2フィルターセクション130」は、引用文献1の「フィルター124」の使用の際、カプセル128が配置された第1フィルターセクション126の軸方向領域を介して案内される主流煙を吸い込みやすくしていると認められる。
(キ)上記ア(イ)の「また紙巻きタバコの円周によって名付けられ、「レギュラー」(約23~25mm)、「ワイド」(25mm超)、「スリム」(約22~23mm)、「デミ-スリム」(約19~22mm)、「スーパー-スリム」(約16~19mm)および「ミクロ-スリム」(約16mm未満)などと名付けられる。従ってキングサイズ、スーパー-スリムフォーマットの紙巻きタバコは、例えば、長さが約83mmで円周が約17mmとなる。レギュラー、キングサイズフォーマットの紙巻きタバコは、23~25mmの円周および75~91mmの全長を有し、よって多くの消費者に好まれている。」なる記載、上記ア(ウ)の「後述する喫煙品およびフィルターは、上記いずれのフォーマットにも製造することができる。喫煙品は、例えば、長さを70~100mmで、円周を14~25mmにすることができる。」なる記載から、上記ア(エ)及び(オ)の「フィルター4」における吸収材7は、約16~19mm、約19~22mm、約23~25mmの円周を有すると認められる。
そして、上記ア(キ)及び(ク)によると、喫煙品121は、喫煙品1と特徴が同じであり、同様に機能するから、「フィルター124」における吸収材127は、約16~19mm、約19~22mm、約23~25mmの円周を有すると認められる。
ウ 引用発明
上記ア及びイによると、引用文献1には、次の事項からなる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「消費者に送出するためのエアロゾルを発生させることができる他のニコチン送出装置などを含む喫煙品121用のフィルター124であって、前記フィルター124は、
第1フィルターセクション126であって、当該第1フィルターセクション126は吸収材127と流体添加剤を含む約3.5mmの直径を有するカプセル128とを含み、カプセル128は、喫煙品121の軸「a」に隣接する軸方向領域に配され、使用の際、前記流体添加剤がカプセル128から放出されるとき、当該流体添加剤の濃度が第1フィルターセクション126の軸方向領域内に増加しやすくしている第1フィルターセクション126と、
前記第1フィルターセクション126の上流に位置する第2フィルターセクション130であって、当該第2フィルターセクション130は、喫煙品121の軸「a」に隣接する前記第2フィルターセクション130の軸方向領域を通って延びる、空の中空の経路である溝132を有し、使用の際、カプセル128が配置された第1フィルターセクション126の軸方向領域を介して案内される主流煙を吸い込みやすくしている第2フィルターセクション130と、を含み、
前記吸収材127は、約16~19mm、約19~22mm、約23~25mmの円周を有するフィルター124。」
(2)引用文献2について
ア 引用文献2の記載事項
引用文献2には、次の記載事項がある。
(ア)「【0001】
本発明は、喫煙物品用のフィルター、およびフィルターを備えた喫煙物品に関連する。」
(イ)「【0009】
風味送達部材の断面積は、フィルターセグメントの断面積と比較して、先行技術のフィルターよりも広い。風味送達部材の断面積は、フィルターセグメントの断面積の約30%以上であるため、フィルターセグメントの断面積の約70%未満は空気および煙に対して浸透性のままである。こうして、本発明のフィルターでは、風味送達部材は先行技術のフィルターよりも高い遮断効果を持つ。これは、先行技術のフィルターで見られるものと異なるいくつかの効果につながり、有利でありうる。まず、フィルターは、風味送達部材が液体風味剤を放出する前に、先行技術のフィルターよりも高い引き出し抵抗(RTD)を持つことができる。これはフィルターセグメントを通した空気および煙の流れが、風味送達部材の周りのフィルター材料の比較的小さな領域を強制的に通過させられるためである。こうした高いRTDは、消費者にとって新しく一風変わった感覚的経験を創り出しうる。第二に、フィルターが外力に晒され、風味送達部材が(例えば、風味送達部材が破壊されたときに)液体風味剤を放出すると、ガス流れに対して浸透性であるフィルターセグメントの断面積が増大し、その結果、フィルターを通した空気および煙の急激な流れが発生する。すなわち、RTDの(比較的高い開始RTDからの)低下があり、また液体風味剤によって風味に目立った変化もある。この場合も、消費者にとって気分を高める刺激的な感覚的経験が創出される。」
(ウ)「【0011】
本発明によれば、フィルターセグメントのフィルター材料は、望ましいRTDのバランス(液体風味剤が放出される前後のRTDを含む)、風味送達部材をフィルターセグメント内に適切に保持するための適切な材料の量、およびフィルター材料が風味送達部材の周辺で変形するのを防止するための適切な材料の量を達成するために、適切に選択される。
【0012】
特に、フィルターセグメントのフィルター材料は、フィラメント当たり約5.0~約12.0デニール、合計約10000および約35000デニールの繊維を含む。こうしたフィルター材料の合計密度は、先行技術で風味送達部材が埋め込まれているフィルター材料よりも低い。これによって望ましいRTDを提供できるが、その一方で風味送達部材を支持しながらも、風味送達部材の周辺のフィルター材料の膨れを回避する適切な量の材料を提供できる。」
(エ)「【0029】
「風味送達部材」という用語は、風味を送達する任意の送達システムを意味するが、この場合には、液体風味剤を封じ込めた構造材料を含む。フィルターが外力に晒された時に液体風味剤を放出する風味送達部材を提供することで、消費者によって管理される形で液体風味剤が放出されるようになる。喫煙物品の使用前または使用中に外力をかけることができ、それによって液体風味剤が放出される。風味送達部材に対する外力により、液体風味剤が風味送達部材から逃れ、喫煙物品と相互作用してその特性を変化させることができ、こうしてそこから煙が導き出される。液体風味剤は外力がフィルターにかけられたときにのみ放出されるため、これによって、例えば保管中に、液体風味剤が拡散や分解をする可能性が低減される。
【0030】
フィルターの長軸方向に直角に測定した風味送達部材の断面積がフィルターセグメントの断面積の約30%以上である限り、風味送達部材は望ましい任意の大きさとしうる。例えば、風味送達部材は直径が約2.5 mm~約4.5 mmの球状としうるが、約3.0 mm~約3.5 mmであることが好ましい。あるいは、風味送達部材は直径が約3.4 mm未満の球状であるが、約3.2 mmであることが好ましい。
【0031】
小型の風味送達部材では、数多くの製造上の難題が提起されうる。フィルターセグメントの断面積の約30%以上の断面積を持つ風味送達部材を使用することにより、一部の実施形態において、こうした製造上の難題は回避しうる。フィルターセグメントに対して大きめの風味送達部材は、風味送達部材内に封じ込められる液体風味剤の量を最大化し、消費者は望ましい風味レベルを達成しうる。外側シェルおよび内部コアを備えた風味送達部材の場合には、大きめの風味送達部材はそれに比例して厚みのある外側シェルをも含む。こうしたシェルは、一貫性のある製造のために、および望ましい破裂強度を持たせて製造するために、比較的単純なものである。
【0032】
風味送達部材は、構造材料が液体風味剤を封じ込める適切な任意の構造を持ちうる。風味送達部材は多数の領域を規定する基質構造を備えうるが、液体風味剤は、フィルターに外力がかけられた時に放出されるまで領域内に閉じ込められる。ただし、風味送達部材はカプセルを備えることがより好ましい。カプセルは、外部シェルと、液体風味剤を含む内部コアとを備えることが好ましい。外部シェルは実質的に連続的であることが好ましい。外部シェルは、外力がかけられる前にシールされることが好ましいが、外力がかけられた時に液体風味剤が放出されるように脆く壊れやすい。カプセルは、物理的な様々な形成物で形成されうるが、これには、単一部分から成るカプセル、複数部分から成るカプセル、単一壁から成るカプセル、複数壁から成るカプセル、大型カプセル、および小型カプセルなどが含まれるが、これに限定されない。
【0033】
風味送達部材が液体風味剤を封じ込める複数の領域を規定する基質構造を備える場合、風味送達部材はフィルターが少なくとも力の範囲5 Nを超える外力に晒されるときに、液体風味剤を放出しうる。圧縮曲線に対する風味送達部材の力は約5 N~約24 Nのピークを持ちうる。別の方法として、フィルターが外力に晒された時に(例えば、カプセルがシェルおよび内部コアを備える場合であるが、これに限定されない)風味送達部材が破裂または破壊して液体風味剤を放出するよう配列されているカプセルである場合、カプセルは望ましいいくらかの破裂強度を持ちうる。破裂強度は、(フィルター外側からカプセルに作用する)カプセルが破裂する力である。破裂強度は圧縮曲線に対するカプセルの力におけるピークとしうる。カプセルは約5 N(0.5 kgf)~約24 N(2.4 kgf)の破裂強度を持つことが好ましい。カプセルは約8 N(0.8 kgf)~約20 N(2.0 kgf)の破裂強度 を持つことがより好ましい。カプセルは約12 N(1.2 kgf)~約16 N(1.6 kgf)の破裂強度を持つことがさらに好ましい。」
(オ)「【0036】
フィルター内には唯一の風味送達部材のみが埋め込まれることが好ましい。ただし、追加的な風味送達部材は、フィルターの長軸方向に提供されうる。追加的な風味送達部材が、同一のフィルターセグメントまたは追加的なフィルターセグメントに提供されうる。追加的な風味送達部材がフィルター内に提供される場合、互いに同一のまたは異なる属性を持たせうる。」
イ 引用文献2の技術事項
上記アから、引用文献2には、以下の事項(以下、「引用文献2の技術事項A」及び「引用文献2の技術事項B」という。)が記載されていると認められる。
(ア)引用文献2の技術事項A
「喫煙物品用のフィルターにおいて、風味送達部材は、約2.5mm~約4.5mmの直径を有するカプセルを備え、フィルター内の風味送達部材に加え、同一のフィルターセグメントに、追加的な風味送達部材がフィルターの長軸方向に提供され、フィルター内の風味送達部材と、追加的な風味送達部材とは、互いに異なる属性を持つこと。」
(イ)引用文献2の技術事項B
「喫煙物品用のフィルターにおいて、約2.5mm~約4.5mmの直径を有するカプセルを備える風味送達部材が埋め込まれるフィルターセグメントのフィルター材料は、望ましい引き出し抵抗RTDのバランス(液体風味剤が放出される前後のRTDを含む)、風味送達部材をフィルターセグメント内に適切に保持するための適切な材料の量、およびフィルター材料が風味送達部材の周辺で変形するのを防止するための適切な材料の量を達成するために、適切に選択され、フィルターセグメントのフィルター材料は、フィラメント当たり約5.0~約12.0デニール、合計約10000および約35000デニールの繊維を含むこと。」
(3)引用文献3について
ア 引用文献3の記載事項及び図示事項
引用文献3には、次の記載事項及び図事項がある。
(ア)「【0001】
本発明は喫煙品のフィルターロッドの製造時にフィルターロッド材内に流体含有カプセルなどの物を導入するための装置に関する。」
(イ)「【0004】
本発明は壊れやすいカプセルのような物をフィルターロッドに導入するための別の手段を提供する。」
(ウ)「【0074】
図20(b)は中に2つのカプセル75、76を有するフィルターロッド74を示している。カプセル75、76は同じ風味剤を含んでもよく、または異なる風味剤を含んでもよい。」
(エ)「【図20(b)】
[図:0001427248000004.jpg]
」
イ 上記アから認められること
上記ア(エ)の2つのカプセル75、76の配置からみて、当該カプセル75、76は、フィルターロッド74の長手方向軸に沿った方向において連続して間隔が空けられて配置されていると認められる。
ウ 引用文献3の技術事項
上記ア及びイによると、引用文献3には、次の事項(以下、「引用文献3の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「喫煙品のフィルターロッド74は、その長手方向軸に沿った方向において連続して間隔が空けられて2つのカプセル75、76が配置され、2つのカプセル75、76は異なる風味剤を含むこと。」
(4)引用文献4について
ア 引用文献4の記載事項
引用文献4には、次の記載事項がある。
(ア)「【0003】
典型的には、約25mm~約14mmの様々な異なる円周を有するシガレットフィルタの提供も既知である。フィルタの円周がこの範囲内(例えば、それぞれ約24.5mm~約23mm、約24.5mm~約16-17mm、または約24.5mm~約14-15mm)で減少すると、これらは、「スタンダード」、「スリム」、「スーパースリム」、および「マイクロスリム」製品として知られる。しかしながら、今日まで、スーパースリム(円周が約16-17mm)およびマイクロスリム(円周が約14-15mm)型において、カプセルを含むフィルタは商業的に実施されていない。問題点の1つとして、カプセルは、スーパースリムまたはマイクロスリム製品のフィルタの断面積の比較的高い割合を占めやすく、結果として、許容できないほど圧力損失が高くなる(なぜなら、煙はカプセルの周囲のより狭い導管を通過することとなるからである)。
【発明の概要】
【0004】
本発明によれば、第一の態様においては、長手方向に延在する(例えば、実質的に円筒形である)、外周(例えば、円周)が14~17mm(例えば、16~17mm)のタバコ煙フィルタ材料からなるコアと、該コア内に完全に封入された添加剤放出容器(例えば、カプセル)とを含むタバコ煙フィルタまたはフィルタエレメントであって、フィルタ材料は、5.3以上の単糸デニールおよび18,000以下の総デニールを有するフィラメント材料(例えば、フィラメントのフィルタトウ)であるタバコ煙フィルタまたはフィルタエレメントを提供する。」
イ 引用文献4の技術事項
上記アによると、引用文献4には、次の事項(以下、「引用文献4の技術事項」、という。)が記載されていると認められる。
「カプセルは、スーパースリムまたはマイクロスリム製品のフィルタの断面積の比較的高い割合を占めやすく、結果として、許容できないほど圧力損失が高くなるという問題点を解決する手段として、円周が16~17mmのタバコ煙フィルタ材料からなるコアと、該コア内に完全に封入された添加剤放出容器であるカプセルとを含むフィルタエレメントであって、フィルタ材料は、5.3以上の単糸デニールおよび18,000以下の総デニールを有するフィラメント材料であるフィルタエレメントを提供すること。」
5 対比
本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
後者の「消費者に送出するためのエアロゾルを発生させることができる他のニコチン送出装置などを含む喫煙品121」は、エアロゾルを発生させる製品、であるから、前者の「喫煙品またはエアロゾル発生製品」に相当する。
してみると、後者の「消費者に送出するためのエアロゾルを発生させることができる他のニコチン送出装置などを含む喫煙品121用のフィルター124」は、前者の「喫煙品またはエアロゾル発生製品用フィルター」に相当する。
後者の「吸収剤127」は、前者の「フィルター材」に相当し、同様に、「流体添加剤」は「添加剤」に相当する。
また、後者の「約3.5mmの直径を有する」ことは、直径が約2mm~約6mmの範囲に含まれるから、前者の「約2mm~約6mmの直径を有する」ことに相当する。
してみると、後者の「当該第1フィルターセクション126は吸収材127と流体添加剤を含む約3.5mmの直径を有するカプセル128とを含み」と、前者の「当該第1フィルターセクションはフィルター材と添加剤を含む約2mm~約6mmの直径を有する2つのカプセルとを含み」とは、「当該第1フィルターセクションはフィルター材と添加剤を含む約2mm~約6mmの直径を有するカプセルとを含み」との限りにおいて一致する。
後者の「カプセル128は、喫煙品121の軸「a」に隣接する軸方向領域に配され」は、「喫煙品121の軸「a」」がフィルター124の長手方向軸であるから(上記4(1)イ(ウ)参照。)、前者の「カプセルはフィルターの長手方向軸に隣接する軸方向領域に配置され」に相当する。
後者の「使用の際、前記流体添加剤がカプセル128から放出されるとき、当該流体添加剤の濃度が第1フィルターセクション126の軸方向領域内に増加しやすくしている」ことと、
前者の「使用時に前記添加剤が2つのカプセルから放出されるとき、当該添加剤の濃度が第1フィルターセクションのフィルター材の軸方向領域に増加しやすくしている」こととは、
「使用時に前記添加剤がカプセルから放出されるとき、当該添加剤の濃度が第1フィルターセクションのフィルター材の軸方向領域に増加しやすくしている」ことの限りにおいて一致する。
後者の「前記第1フィルターセクション126の上流に位置する第2フィルターセクション130であって、当該第2フィルターセクション130は、喫煙品121の軸「a」に隣接する前記第2フィルターセクション130の軸方向領域を通って延びる、空の中空の経路である溝132を有し」は、「喫煙品121の軸「a」」がフィルター124の長手方向軸であるから(上記4(1)ウ(エ)参照。)、前者の「前記第1フィルターセクションの上流に位置する第2フィルターセクションであって、当該第2フィルターセクションは、フィルターの長手方向軸に隣接する前記第2フィルターセクションの軸方向領域に位置する少なくとも1つの流路を含み」に相当する。
後者の「使用の際、カプセル128が配置された第1フィルターセクション126の軸方向領域を介して案内される主流煙を吸い込みやすくしている第2フィルターセクション130と、を含み」は、前者の「使用時にカプセルが配置された前記第1フィルターセクションの軸方向領域を介してエアロゾルを吸い込みやすくしている」に相当する。
以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「喫煙品またはエアロゾル発生製品用フィルターであって、前記フィルターは、
第1フィルターセクションであって、当該第1フィルターセクションはフィルター材と添加剤を含む約2mm~約6mmの直径を有するカプセルとを含み、カプセルはフィルターの長手方向軸に隣接する軸方向領域に配置され、使用時に前記添加剤がカプセルから放出されるとき、当該添加剤の濃度が第1フィルターセクションのフィルター材の軸方向領域に増加しやすくしている第1フィルターセクションと、
前記第1フィルターセクションの上流に位置する第2フィルターセクションであって、当該第2フィルターセクションは、フィルターの長手方向軸に隣接する前記第2フィルターセクションの軸方向領域に位置する少なくとも1つの流路を含み、使用時にカプセルが配置された前記第1フィルターセクションの軸方向領域を介してエアロゾルを吸い込みやすくしている第2フィルターセクションと、を含む、
フィルター。」
[相違点1]
「カプセル」について
本願発明は、
「約2mm~約6mmの直径を有する2つのカプセル」が、「軸に沿った方向において連続して間隔が空けられて」いるのに対し、
引用発明は、
「約3.5mmの直径を有するカプセル128」である点。
[相違点2]
本願発明は、
「前記フィルター材は、約16mm~約19mmの円周を有し、約4.5dpf~約8dpfの繊維を有し、および約15,000~約25,000の総デニールを有する、又は
前記フィルター材は、約20mm~約22mmの円周を有し、約4.0dpf~約5.0dpfの繊維を有し、および約30,000~約35,000の総デニールを有する、又は
前記フィルター材は、約23mm~約25mmの円周を有し、約3.0dpf~約5.0dpfの繊維を有し、および約35,000~約40,000の総デニールを有する」のに対し、
引用発明は、
「前記吸収材127は、約16~19mm、約19~22mm、約23~25mmの円周」を有する点。
6 判断
(1)相違点1の検討
喫煙品またはエアロゾル発生製品において、フィルターに、2つのカプセルをフィルターの長手方向軸に沿った方向において連続して間隔を空けて設けることは、例えば、引用文献2の技術事項A、引用文献3の技術事項に示されているように、本願の優先日前に周知の技術である(以下、「周知技術」という。)。
そして、周知技術は、引用発明とは、カプセルから流体添加剤を放出することにより、ユーザーの嗜好に合ったエアロゾルの送達を可能とするという機能において共通し、よりユーザーの嗜好に合ったエアロゾルの送達が可能となることから、引用発明に周知技術を適用する動機付けが認められる。
また、引用文献1には、上記4(1)ア(カ)及び(コ)において、引用発明の別態様として、複数の流体添加剤を含むカプセルを有するものが示されている。そして、周知技術は、例えば引用文献2の技術事項Aに示されているように、約2mm~約6mmの範囲内の直径を有するカプセルを複数位置することも含むものであるから、引用発明に周知技術を適用することが技術的に困難であるとする事情は見当たらない。
そうすると、引用発明に周知技術を適用し、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(2)相違点2の検討
ア 検討1(引用文献4の技術事項による検討)
引用文献4の技術事項は、フィルタエレメントのフィラメント材料が、5.3以上の単糸デニールおよび18,000以下の総デニールを有するものであり、本願発明において、「フィルター材は、約16mm~約19mmの円周を有」する場合の「約4.5dpf~約8dpfの繊維を有し、および約15,000~約25,000の総デニールを有する」ことに、その範囲の一部が含まれるものである。
そして、引用文献4の技術事項は、「カプセルは、スーパースリムまたはマイクロスリム製品のフィルタの断面積の比較的高い割合を占めやすく、結果として、許容できないほど圧力損失が高くなるという問題点を解決する」もの(上記4(4)ア(ア)を参照)である。
そうすると、カプセルにより許容できないほど圧力損失が高くなるという問題点は、引用発明において、約16~19mmの円周を有するフィルター材を選択したものについても内在する課題であるから、引用発明において、約16~19mmの円周を有するフィルター材を選択したものについて、引用文献4の技術事項を参照し、フィルター材として、5.3以上の単糸デニール、すなわち、5.3dpf以上の繊維、および、18,000以下の総デニールを有するフィラメント材料を用いることにより、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 検討2(引用文献2の技術事項Bによる検討)
引用文献2の技術事項Bは、フィルターセグメントのフィルター材料は、フィラメント当たり約5.0~約12.0デニール、合計約10000および約35000デニールの繊維を含むものであり、本願発明における、「フィルター材は、約16mm~約19mmの円周を有」する場合の「約4.5dpf~約8dpfの繊維を有し、および約15,000~約25,000の総デニールを有する」こと、又は、「フィルター材は、約20mm~約22mmの円周を有」する場合の「約4.0dpf~約5.0dpfの繊維を有し、および約30,000~約35,000の総デニールを有する」こと、又は、「フィルター材は、約23mm~約25mmの円周を有」する場合の「約3.0dpf~約5.0dpfの繊維を有し、および約35,000~約40,000の総デニールを有する」ことに、その範囲の一部が含まれるものである。
また、相違点1の検討で指摘したとおり、周知技術の例証として用いた引用文献2の技術事項Aは、引用発明に適用する動機付けが認められるものであるから、同様に、引用文献2の技術事項Bも引用発明に適用する動機付けが認められる。
そして、引用文献2の技術事項Bに示される、カプセルを含むフィルターのフィルター材について、フィルター材の繊維の繊維デニール(フィラメント当たりのデニール)及び総デニールの数値範囲は、カプセル内の添加剤が放出される前後の引き出し抵抗(吸引抵抗)RTDを含む、望ましいRTDのバランス、カプセルをフィルター内に適切に保持するための適切な材料の量、およびフィルター材がカプセルの周辺で変形するのを防止するための適切な材料の量等を考慮したものといえる。
そうすると、引用発明に引用文献2の技術事項Bを適用し、その際に引用文献2の技術事項Bに示された繊維のフィラメント当たりのデニール、総デニールの数値範囲を約16~19mmの円周を有するフィルター材を選択したものについて、フィルター材として、約4.5dpf~約8dpfの繊維を有し、および約15,000~約25,000の総デニールを有するものを選択すること、又は、約20~22mmの円周を有するフィルター材を選択したものについて、フィルター材として、約4.0dpf~約5.0dpfの繊維を有し、および約30,000~約35,000の総デニールを有するものを選択すること、又は、約23~25mmの円周を有するフィルター材を選択したものについて、フィルター材として、約3.0dpf~約5.0dpfの繊維を有し、および約35,000~約40,000の総デニールを有するものを選択することにより、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(3)効果について
本願発明の奏する効果は、全体をみても、引用発明、引用文献2の技術事項B及び周知技術から、又は、引用発明、引用文献4の技術事項及び周知技術から、当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。
(4)請求人の主張について
請求人の主張について以下に検討する。
ア 相違点1について
(ア)主張の内容
請求人は、令和7年1月30日に提出された意見書の2.(5)の「相違点1について」において、次の主張をする。
「しかし、上記のように、周知技術1から、本願で規定されているような態様で2つのカプセルを配置できることを知ることができたとしても、実際に本願発明で採用しているような比較的大きな直径約2mm~約6mmの2つのカプセルを第1フィルターセクションのフィルター材中にその軸方向領域に当該軸に沿って連続して間隔を空けて設けることは容易とは言えません。それは、本願発明において、吸い口側に第1フィルターセクションを有する態様であって、当該フィルターセクションのフィルター材に2つのカプセルを含ませる場合に解決されるべき問題点で述べていますように、本願発明のフィルターは、単にカプセルの潰れやフィルターの変形(必要な剛性)の問題、更にフィルター自体の性能の問題だけではなく、第1フィルターセクションの2つのカプセルから放出される添加剤が第2フィルターセクションからの主流煙の流れに伴って第1フィルターセクションのその軸に沿った中央部付近の領域に案内され、それによってユーザーにより高濃度の添加剤の吸引を可能にするような構成を有するフィルターであることも求められるからであります。このような要請及びそれに対処するための方法は、単に2つのカプセルを配置した例の引用例があるからといって当業者であっても思いつくものではないものと考えます。
特に、引用発明1の図7には、本願発明1の態様に似た構成のフィルターを開示するものでありますが、2つのカプセルを配置するものではありません。そのため、このようなフィルターに比較的大きな2つのカプセルを含ませる場合の問題点は、引用文献1からは想起されないものと考えます。更に2つのカプセルの導入による問題を解決するためのフィルター材の選択やその構成などについても示唆はないものであり、単にこれらについて一般的な記載事項に留まるものであります。そのため、引用文献1には、本願発明1のフィルター構成を設計する際のヒントとなるような示唆は一切されていません。加えて、少なくとも引用文献2-4のいずれにも、本願発明1のフィルターのように、流路を有する第2フィルターセクションが比較的大きな特定の粒径の2つのカプセルを連続した間隔で含む第1フィルターセクションの上流に位置した構成のフィルターについては一切触れられていません。従って、引用発明1及びその他の引用例、更に周知技術等を組み合わせて検討したとしても相違点1に到達することは容易ではないものと考えます。」(5頁6~31行)
「このように、本願発明1と引用発明1との対比において、特定粒径のカプセルが2つ含まれる点及びそれらのカプセルが軸に沿った方向において連続して間隔が空けられて配置されている点に関する相違点1について、引用発明1では、第2フィルターセクションが第1フィルターセクションの上流に配置されたフィルターの構成を示すものの、相違点1の構成についての具体的な開示は一切ありません。このため、この構成において、特定径の2つのカプセルをフィルター材中に含ませる場合に生じると予測される問題点を見出し、更にその問題点を解決しようという動機を見出すことは困難であります。また、相違点1を満たすために引用文献2-3を挙げていますがこれらにも本願所定の粒径を有するカプセルを使用するというような具体的な開示はありません。従って、引用文献1-3からは、またその他の周知技術等を加えたとしても、相違点1を補完することはできないものと考えます。」(6頁30行~40行)
(イ)検討
引用発明1において、特定径の2つのカプセルをフィルター材中に含ませる場合に生じると予測される問題点を見出せないとしても、引用発明1に周知技術を適用する動機付けは、課題の共通性だけでなく、相違点1の検討で示したとおり、機能の共通性等の他の観点からも認めることができる。
したがって、請求人の(ア)に係る主張は採用することができない。
イ 相違点2について
(ア)主張の内容
請求人は、令和7年1月30日に提出された意見書の2.(5)の「相違点2について」において、次の主張をする。
「一般に、カプセルをフィルター材に導入する場合に許容できないほど圧力損失が高くなるという問題に対処しなければならないことは技術常識であると考えられます。特に多くのカプセルを含ませる場合には必要になります。そのため、本願発明1のフィルター材の採用に際しても、引用文献4から得られる知見は参考になると思われます。しかし、引用文献4のフィルター材は、カプセルを1つ含むものであり、本願発明1のように2つのカプセルを含むものではありません。また製品サイズ毎のフィルター材の構成を具体的に開示するものでもありません。本願発明1は、2つのカプセルを含ませる場合に生じる上述した諸問題に対処しようとするものであり、特に本願発明の目的を達成させるために引用文献4の教えが相違点2を埋め合わせることができるほど参考になるものとは思われません。引用文献4に開示されたフィルター材の構成例が、たまたま本願発明1のフィルター材の例に該当したとしてもそのことから、本願発明1のフィルター材の選択が容易になったとは言えないものと考えます。」(5頁末行~6頁11行)
「しかし、「引用文献2記載事項B」もカプセルをフィルター材内に配置させる場合にカプセルを保護等するための一般的に必要とされるフィルター材の性能などについて教示するものであります。そのため、それらの教示を参考にすることは有効であるとしても、実際、本願所定の大きさの2つのカプセルをフィルター材に配置させる場合に、製造時等のカプセルの適切な保持及び保護、フィター材料の変形防止、標準的なタール送達レベルの達成、更に圧力降下や濾過性能といった一定のフィルター材の性能の確保に加えて、上記のように、製品のサイズ毎に、できるだけ高濃度の添加剤をユーザーに送達するという本願発明の所期の目的を達成するために必要なフィルター材の性能及びそのために適した材料の選択は、例え当業者であったとしても、引用文献2の教示からは容易に導き出せるとは言えないものと考えます。」(6頁20行~29行)
「またフィルタ―材の3つの円周(約16~19mm、約19~22mm、約23~25mmの円周)のサイズに応じた特定のデニールの選択に関する相違点2についても、特に引用文献2や4には当該フィルター材のサイズに応じた具体的な組み合わせを示す態様の開示はありません。もっとも引用文献1を含めて、いずれの引用文献も2つのカプセルを第1フィルターセクションのフィルター材に含ませた場合の上記問題点の提起はないので、仮にそれらの問題点の改良に有効な示唆が含まれていたとしても、相違点1と相違点2との関係から相違点2を補完のために有効な示唆であるという認識を得ることまでは当業者であっても容易ではないものと考えます。従って、引用文献1、2及び4からは、またその他の周知技術等を加えたとしても、相違点2を充足することはできず、本願発明1に到達することは困難であると考えます。」(6頁41行~末行)
(イ)検討
本願明細書の段落【0028】~【0042】における、フィルター材の繊維の繊維デニール及びフィルター材の総デニールに関する記載によると、本願発明において、フィルター材の繊維の繊維デニール(フィラメント当たりのデニール)及び総デニールの数値範囲は、吸引抵抗RTDを最適な範囲に設定する技術的意義を有し、また、総デニールの数値範囲は、フィルターの特定の円周と特定の総デニールの組み合わせにおいて、特定の組み合わせが許容できるレベルのタール送出量を供し、同時にフィルター材にカプセルを組み入れるために採用される工程中にカプセルが潰れるのを妨げるという技術的意義を有することまでは認めることができる。
しかし、カプセルの円周と、フィルター材の繊維の繊維デニールと、フィルター材の繊維の総デニールとの技術的関係については、本願明細書に何ら記載も示唆もない。
すなわち、本願発明におけるフィルター材の繊維の繊維デニール及び総デニールの数値範囲は、カプセルの円周と格別な技術的関係を有することなく特定されるものといえる。
そうすると、請求人の上記(ア)に係る主張を検討しても、相違点2についての上記(2)アの検討1及び上記(2)イの検討2を覆すべき理由を見出すことができない。
(5)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2の技術事項B及び周知技術に基いて、又は、引用発明、引用文献4の技術事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-015181