特許拒絶査定不服審判
2023-016069
パッケージ
- 審判番号
- 2023-016069
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-509007
- 請求日
- 2023年09月22日
- 審決日
- 2025年07月17日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ブリティッシュ アメリカン タバコ (インヴェストメンツ) リミテッド
- 【請求人代理人】植田 晋一
- 【請求人代理人】中島 勝
- 【請求人代理人】轟木 哲
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 田口 傑
- 審判官 長清 吉範
- 分類
- P18 .113-Z (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-509007「パッケージ」拒絶査定不服審判事件〔令和3年2月18日国際公開、WO2021/028651、令和4年10月18日国内公表、特表2022-544403〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)7月30日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2019年8月15日 GB(英国))を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年1月 5日付け:拒絶理由の通知
令和5年4月10日 :意見書の提出
令和5年5月25日付け:拒絶査定(謄本送達日:同月30日)
令和5年9月22日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~24に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1~24に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
容器およびヒンジ線を中心に容器にヒンジ式に接続された蓋と、
容器から延び、蓋を閉じた際に蓋に収容される部分を有する側壁を含む内方フレームと、を含み、
容器から延びた側壁の前記部分は、摩擦係数が異なる少なくとも2つの領域を含む、1つ以上の送出システム用パッケージ。」
第3 原査定における拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
理由1 本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2 本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2に記載された発明に基づいて、又は引用文献1、2に記載された発明に基づいて、本願出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1:国際公開第2013/145076号
2:特表2012-510934号公報
第4 当審の判断
1 引用文献の記載事項及び引用発明等
(1) 引用文献2及び引用発明
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、次の事項が記載されている(・・・は省略を示す。下線は当審で付した。以下同様。)。
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は、紙巻きタバコなどの喫煙品用の包装(packaging)に関する。特に、本発明はヒンジ式に取り付けられた蓋を含むパケット内の喫煙品の包装に関する。」
(イ) 「【背景技術】
【0002】
容器の1つのパネルにヒンジ式に取り付けられた蓋を有した紙巻きタバコのパックが知られている。そのような紙巻きタバコの箱には、箱を最初に開封した後に適切に閉じた状態を維持することができない傾向があるという問題が認識されている。・・・」
(ウ) 「【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、収納部と、収納部にヒンジ式に連結された蓋と、蓋の開きにくくするためのラチェット機構とを含む喫煙品用の容器が供される。
【0011】
ラチェット機構は、第1の協働する部分と第2の協働する部分を含んでもよく、第1協働部分は、蓋を開きにくくするために第2協働部分と係合するために蓋に設けられている。
・・・
【0014】
第1協働部分または第2協働部分は、少なくとも1つのエンボス加工された部分を含んでもよく、第1協働部分または第2協働部分のもう一方の部分は、複数のエンボス加工された部分を含んでもよく、第1及び第2協働部分は、蓋を開きにくくするために摩擦係合するように構成されている。
・・・
【0016】
第1協働部分は、ヒンジに隣接する蓋の側面パネルの内側面に設けられてもよい。
・・・
【0019】
第2協働部分は、第1協働部分と係合し蓋を開きにくくするために、収納部のインナーフレームに設けられてもよい。
・・・
【0021】
容器は、喫煙品を収納するために構成されたパックを含む。」
(エ) 「【図面の簡単な説明】
・・・
【図8】インナーフレーム及びヒンジ式の蓋を有する箱の斜視図であり、インナーフレームの対向する両側面パネルの外側表面には、複数の細長いエンボス加工された部分が設けられ、該部分と、外側の蓋の対向する両側面パネルの内側表面に設けられた複数の細長いエンボス加工された部分とが、外側蓋が閉じられた時に摩擦係合する。」
(オ) 「【発明を実施するための形態】
・・・
【0050】
エンボス加工部分は、「あくび」を防ぐために従来の紙巻きタバコのパックにも同じように適用可能である。例えば、図7を参照すると、従来の紙巻きタバコのパック3は、ヒンジ式の蓋100及びインナーフレーム90を有する収納部を含む。インナーフレーム90は、蓋100を開いたときに露出する前面パネル91及び対向する側面パネル92、93を含む。図7に示すように、複数の平行で細長いエンボス加工部分110が、蓋100の前面パネル101の内側表面に形成された対応する細長いエンボス加工部分120と相互作用するインナーフレーム90の前面パネル91の外側表面に形成される。
【0051】
図8を参照すると、インナーフレーム90の前面パネル91及び蓋100の前面パネル101のエンボス加工部分110、120とは別に、またはそれに加えて、従来のパック3は、インナーフレーム90の対向する側面パネル92、93の外側表面に形成されたエンボス加工部分130を含んでもよい。これらエンボス加工部分130は、蓋100の対向する側面パネル102、103の内側表面に形成された対応するエンボス加工部分140と係合できる。図8は、互いに平行に配置されているエンボス加工部分130、140を示す。しかし当然のことながら、蓋100を適度に開きにくくするどのような形態のエンボス加工部分も用いることができる。・・・」
(カ) 「【図7】
[図:0001429338000001.jpg]
【図8】
[図:0001429338000002.jpg]
」
イ 引用文献2の図から認定できる事項
上記ア(カ)の【図8】からは、収容部から延びたインナーフレーム90の側面パネルであって、外側表面が看取できる側の側面パネルの外表面に、エンボス加工部分130の領域とエンボス加工がない領域(130の周囲の領域)があることが、看取できる。
ウ 引用発明
上記ア及びイからみて、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「収納部と、収納部にヒンジ式に連結された蓋と、
収容部から延び、蓋を開いたときに露出する側面パネルを含むインナーフレームと、を含み、
側面パネルの外側表面は、エンボス加工部分の領域と、エンボス加工部分でない領域とを含む、紙巻きタバコのパック。」
(2) 技術常識
ア 本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2011-530459号公報(平成23年(2011年)12月22日公表。以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい表面テクスチャを有する容器に関する。容器は、例えば、シガレットのような細長い喫煙物品を収容するのに特に適している。」
「【0007】
用語「摩擦係数」は、本明細書を通して本発明による容器の高摩擦表面領域の表面と別の実質的に同一の表面との間の静的摩擦係数(μ)を指して用いられる。換言すれば、意味される摩擦係数は、高摩擦表面領域の表面のそれ自体との摩擦係数である。2つの固体表面間の静的摩擦係数(μ)は、摺動を生じるのに必要な接線力(F)を表面(N)間の垂直力で除した比として定められる。
μ=F/N
【0008】
2つの表面間の摩擦係数は、例えば、ISO規格ISO 15359:1999に基づく水平面法により実験的に測定される。」
「【0020】
高摩擦表面領域のコーティング層は、高摩擦表面領域の最終外観及びテクスチャを変えるために、重ね印刷、エンボス、デボス、又は別様の処理をすることができる。デボス及びエンボスは、容器の摩擦係数を更に大きくすることができる。高摩擦表面領域のコーティング層が印刷される場合、印刷物は、好ましくは高い耐摩耗性を有する。それによって高摩擦表面領域と、容器の製造中に高摩擦表面領域が直接接触する機械部品の表面との間のより高い摩擦によって印刷物が擦られることを防止する。」
イ 上記アからみて、以下の事項は当業者にとって技術常識(以下「技術常識」という。)である。
「エンボスにより摩擦係数が変化すること」
2 対比
(1) 本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「収納部」、「収納部にヒンジ式に連結された蓋」、「外側表面」、「側面パネル」、「インナーフレーム」及び「紙巻きタバコのパック」はそれぞれ、本願発明の「容器」、「ヒンジ線を中心に容器にヒンジ式に接続された蓋」、「部分」、「側壁」、「内方フレーム」及び「1つ以上の送出システム用パッケージ」に相当する。
イ 引用発明の「収容部から延び、蓋を開いたときに露出する側面パネルを含むインナーフレーム」において、「側面パネル」が「蓋を開いたときに露出する」ためには蓋を閉じた際には露出していない状態、すなわち、蓋に収容される状態となることを意味するから、引用発明の「側面パネル」は「側面パネルの外側表面」を含めて「蓋を閉じた際に収容される」ものである。そうすると、引用発明における「収容部から延び、蓋を開いたときに露出する側面パネルを含むインナーフレーム」は、本願発明における「容器から延び、蓋を閉じた際に蓋に収容される部分を有する側壁を含む内方フレーム」に相当する。
ウ 引用発明の「側面パネルの外側表面」にある「エンボス加工部分の領域」及び「エンボス加工部分でない領域」は2つの領域であるから、引用発明における「側面パネルの外側表面は、エンボス加工部分の領域と、エンボス加工部分でない領域とを含む」事項は、本願発明における「容器から延びた側壁の前記部分は、摩擦係数が異なる少なくとも2つの領域を含む」事項と、摩擦係数はさておき、「容器から延びた側壁の前記部分は、少なくとも2つの領域を含む」に限り一致する。
エ 上記ア~ウを踏まえると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「容器およびヒンジ線を中心に容器にヒンジ式に接続された蓋と、
容器から延び、蓋を閉じた際に蓋に収容される部分を有する側壁を含む内方フレームと、を含み、
容器から延びた側壁の前記部分は、少なくとも2つの領域を含む、1つ以上の送出システム用パッケージ。」
<相違点>
「側壁の前記部分」の「少なくとも2つの領域」に関し、本願発明は「少なくとも2つの領域」で「摩擦係数が異なる」ものであるのに対し、引用発明は「エンボス加工部分の領域」と「エンボス加工部分でない領域」の摩擦係数が異なるかどうかが特定されていない点。
3 判断
(1) 上記相違点について検討する。
エンボス加工は、例えば、シート状の平らな素材に凹凸を付ける加工であり、特に凸部を付ける加工のことをいうから、引用発明の「エンボス加工部分の領域」と「エンボス加工部分でない領域」は、その表面形状が異なる。そして、摩擦係数は、摩擦が生じる表面の材質のみならず、その表面形状の影響も受けるから、上記1(2)の技術常識のとおり、「エンボス加工部分の領域」と「エンボス加工部分でない領域」で摩擦係数が異なることは明らかである。
そうすると、引用発明も「エンボス加工部分の領域」と「エンボス加工部分でない領域」という摩擦係数が異なる2つの領域を有しているといえるから、上記相違点は表現上の相違にすぎず、実質的な相違点ではない。
(2) 請求人の主張について
ア 請求人は審判請求書【請求の理由】3.において「一般に非弾性材料の場合、その摩擦係数は、2つの材料が接触する領域によって決まるものではなく、または少なくとも、接触する領域による影響はごく僅かです。したがって、エンボス加工がインナーフレームに凹凸を設けるという原査定での見解は、エンボス加工部分が非エンボス加工部分とは異なる摩擦係数を有する主張の根拠にはなり得ません。」と主張する。
イ しかしながら、摩擦係数の計測は、上記1(2)ア【0007】にあるように、2つの材料を接触させ、摺動させるから、2つの材料において摺動に関係する部分、すなわち、2つの材料が接触する領域によって決まるものであるといえる。そして、この計測方法は上記1(2)ア【0008】にもあるように、国際規格であるISOでも定義されているから、当業者にとって技術常識であるといえる。一方、請求人のいう「その摩擦係数は、2つの材料が接触する領域によって決まるものではなく」という主張はこの技術常識に反するが、請求人はその具体的根拠を何ら示してない。また、請求人は続けて「または少なくとも、接触する領域による影響はごく僅かです。」と述べているが、これは、わずかではあっても、接触する領域の影響があり、摩擦係数は同じにならない、ということにほかならない。そうすると、上記アの主張はその前提を欠く。
ウ また、請求人は、引用発明が記載された引用文献2において、エンボス加工部分と非エンボス加工部分とで摩擦係数が異なることについて明示的な記載がない旨、主張するが、明示的な記載がないことをもって、直ちに、エンボス加工部分と非エンボス加工部分の摩擦係数が等しいとはいえない。そして、エンボス加工で摩擦係数が変化することは、上記(1)のとおりである。
エ 請求人は「さらに言えば、引用文献2のエンボス加工部分(130)のような表面にエンボス加工された追加の質感を持たない単に隆起させただけのエンボス加工部分は、引用文献2の非エンボス加工部分のような平坦な表面と比較しても異なる摩擦係数にはなりません。」とも主張するが、引用発明において「エンボス加工」により摩擦係数が異なるものとなることは、上記(1)のとおりである。
オ 請求人は「引用文献2は、本発明で行われているような内方フレームと蓋との間の摩擦係数を増加させるのではなく、パックの蓋を開けにくくするために摩擦力(抵抗力)を増加させることに着目しています。」とも主張しているが、引用文献2には「摩擦係数を増加させない」ということは記載されていないし、引用発明のエンボス加工部分における摩擦係数が増加することは、パックの蓋を開けにくくするために摩擦力を増加させるという引用発明の目的に反しない。ここで、本願明細書【0045】には、「本出願において摩擦係数なる用語は各領域と特定の表面との摩擦力の値を意味すると理解されてもよい。」とあり、本願発明は、摩擦係数なる用語を摩擦力の値と同等の意味で用いているから、この点に照らしても、摩擦力を増加させる引用発明は、摩擦係数を異ならせる本願発明と実質的に差が生じない。
カ 上記ア~オのとおりであるから、請求人の主張はいずれも採用できない。
4 小括
したがって、引用発明は本願発明であるから、本願発明は引用文献2に記載された発明である。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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