2023-014966
建具
- 審判番号
- 2023-014966
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-034796外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年09月06日
- 審決日
- 2025年05月26日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .575-WZ (E06B) / P18 .121-WZ (E06B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
1 原査定まで
本願は、平成30年2月20日に出願された特願2018-27958号の一部を、令和4年3月7日に新たな特許出願としたものであって、同月22日に上申書及び手続補正書が提出され、令和5年1月18日付けで拒絶理由が通知され、同年3月24日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年5月31日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされたものである。
2 審判請求以降
原査定に対し、同年9月6日に審判請求がされるとともに手続補正書が提出された。
それ以降の経緯は、以下のとおりである。
・令和6年 9月30日付け: 拒絶理由通知(最後)
・ 同年11月19日 : 意見書及び手続補正書の提出
第2 令和6年11月19日に提出された手続補正書による補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年11月19日に提出された手続補正書による補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
令和6年11月19日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、下記(1)に示す本件補正前(令和5年9月6日に提出された手続補正書による補正後)の請求項1を、下記(2)に示す本件補正後のとおり補正するものである(下線は補正箇所を示す。)
(1)本件補正前
「同一レール上を移動する第1の障子と第2の障子を有し、前記第1の障子と前記第2の障子との突合せ框同士が突き合わされて閉じられるように構成され、前記第1の障子の前記突合せ框及び前記第2の障子の前記突合せ框は、スペーサによって間隔をあけて配置された複数のガラスをそれぞれ収容し、前記第1の障子の前記突合せ框は、前記第1の障子と前記第2の障子とが閉じられた状態で、前記第2の障子の前記突合せ框の見込み方向の一側の見付け面を覆うように配置される框被覆部を有し、前記框被覆部の屋内側の見付け面は、内部に仕切りのない中空構造を有する樹脂部材によって構成されており、前記第1の障子の前記突合せ框に収容された前記複数のガラスの前記スペーサ及び前記第2の障子の前記突合せ框に収容された前記複数のガラスの前記スペーサは、前記第1の障子と前記第2の障子とが閉じられた状態で、見込み方向において前記框被覆部の前記樹脂部材の前記中空構造と対向する位置に配置される、建具。」
(2)本件補正後
「同一レール上を移動する第1の障子と第2の障子を有し、前記第1の障子と前記第2の障子との突合せ框同士の突合せ面が、前記第1の障子及び前記第2の障子の少なくとも何れか一方の前記突合せ面から突出する壁部を介して突き合わされて閉じられるように構成され、前記第1の障子の前記突合せ框及び前記第2の障子の前記突合せ框は、スペーサによって間隔をあけて配置された複数のガラスをそれぞれ収容し、前記第1の障子の前記突合せ框は、前記第1の障子と前記第2の障子とが閉じられた状態で、前記第2の障子の前記突合せ框の見込み方向の一側の見付け面を覆うように配置される框被覆部を有し、前記框被覆部の屋内側の見付け面は、内部に仕切りのない中空構造を有する樹脂部材によって構成されており、前記第1の障子の前記突合せ框に収容された前記複数のガラスの前記スペーサ及び前記第2の障子の前記突合せ框に収容された前記複数のガラスの前記スペーサは、前記第1の障子と前記第2の障子とが閉じられた状態で、見込み方向において前記框被覆部の前記樹脂部材の前記中空構造と対向する位置に配置され、前記樹脂部材は、前記中空構造の見付け方向における各端部から前記各端部に対向する前記スペーサ側に延びる見込み面を有し、前記見込み面と前記スペーサの内周端とは略面一である、建具。」
2 補正目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明について、「突合せ框同士」が「突き合わされて閉じられる」構成、及び「樹脂部材」と「スペーサ」の配置について、限定を加える補正であって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではないから、特許法17条の2第5項2号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認める。
3 独立特許要件
本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができたか否かについて、以下に判断する。
(1)本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記1(2)に示した本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載により特定されるべきものである。
(2)引用文献の記載及び引用発明
ア 引用文献1
(ア)記載及び図示
当審が令和6年9月30日付け最後の拒絶理由通知書で通知した拒絶理由(以下、「拒絶理由」という。)で引用した、実願平4-80930号(実開平6-28169号公報)のCD-ROM(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載及び図示がある(下線は、当審において付した。以下、同様。)。
a 「 【0008】第1図及び第2図は引き違い窓を示す。この引き違い窓は、上枠1、下枠2、縦枠3によって枠組みされたサッシ枠内に設けられた2本の摺動レール4a、4bに、それぞれ2枚の引き違いガラス障子5a、5bと2枚の引き違いガラス障子6a、6bとを摺動自在に収容してなるもので、窓閉鎖時に、上記引き違いガラス障子のうち左右両側の隣り合う2枚の引き違いガラス障子5a、6a(5b、6b)が召合せ状態となり、中央の2枚の引き違いガラス障子6a、6bが突合せ状態となるように構成されている。【0009】上記左右の2枚の引き違いガラス障子5a、6a(5b、6b)の召合せ框7、8の見付け幅Lはほぼ同幅に形成され、召合せ部Pにおいて、屋内側ガラス障子6a(6b)の内召合せ框7と屋外側ガラス障子5a(5b)の外召合せ框8とは屋内外に重合している。続きを表示(全18行)【0010】中央の隣り合う2枚の引き違いガラス障子6a、6bのうち一方の引き違いガラス障子6aの突合せ框9は、ガラス10の嵌込み溝11aを開口した略方形のガラス嵌込み部11の屋内側に補強用中空部12を形成したもので、ガラス嵌込み部11の見付け幅L1は上記召合せ框7、8の見付け幅の約1/2に形成され、また上記中空部12の見付け幅L2は上記召合せ框7、8の見付け幅Lとほぼ同じに設定されている。【0011】これに対し、他方の引き違いガラス障子6bの突合せ框13は、上記一方の突合せ框9のガラス嵌込み部11とほぼ同寸、同形状のガラス嵌込み部14を有し、該ガラス嵌込み部14の背面14bと屋内面には連続して緩衝材15を取付けてなるもので、ガラス嵌込み部14には緩衝材15の取付け部16が設けられている。【0012】そして、上記両引き違いガラス障子6a、6bは突合せ時に、突合せ部Qにおいて、突合せ框9、13を突合せ状とし、突合せ状態における両突合せ框9、13全体の見付け幅L2を上記召合せ框7、8の見付け幅Lと同幅とするとともに、突合せ部の一方の突合せ框9の補強用中空部12が他方の突合せ框13の屋内側に延長して他方の突合せ框13を隠すように形成されている。【0013】以上の構成において、窓閉鎖時には、上記両側の引き違いガラス障子5a、6a(5b、6b)の召合せ部Pは、同幅の内召合せ框7と外召合せ框8とが屋内外に重合されるので、屋内側及び屋外側からはそれぞれ一本の召合せ框のみが見える。また、中央の2枚の引き違いガラス障子6a、6bの突合せ部Qは、一方の突合せ框9の補強用中空部12が他方の突合せ框13の屋内側に延長して他方の突合せ框13を隠すように形成されているので、屋内側からは一本の突合せ框9のみが見える。・・・・【0015】【考案の効果】本考案に係る引き違い窓によれば、窓閉鎖時には、上記両側の引き違いガラス障子の召合せ部は、同幅の内召合せ框と外召合せ框とが屋内外に重合されるので、屋内側及び屋外側からはそれぞれ一本の召合せ框が見える。また、中央の2枚の引き違いガラス障子の突合せ部は、一方の突合せ部の一部が他方の突合せ框の屋内側に延長しているので、内観上他方の突合せ框が隠れ、屋内側からは一本の突合せ框のみが見える。【0016】したがって、召合せ部及び突合せ部において屋内側からはそれぞれ一本の框が見えるだけであるから、引き違い窓の閉鎖時における全体的統一性を得ることができ、窓の内観を向上させることができる。」
b 【図2】
「[図:0001425086000001.jpg]」
(イ)看取される事項
a 段落【0008】の記載を踏まえると、【図2】より、左右の2枚の引き違いガラス障子5a、5bを摺動自在に収容するのは、摺動レール4aであり、中央の2枚の引き違いガラス障子6a、6bを摺動自在に収容するのは、摺動レール4bであることが、看取される。
b 【図2】において、左右両側のガラス障子5a、5bのガラス板10の両端部で、四角内に×が付された部材は、2枚のガラス板10を隔てるスペーサであることが明らかであるから、段落【0008】及び【0010】の記載を踏まえると、【図2】より、左右両側のガラス障子5a、5bが有する外召合せ框8は、スペーサによって見込み方向に間隔をあけて配置された2枚のガラス10を嵌め込む嵌込み部を有し、2枚のガラス10間のスペーサは見付け方向において外召合せ框8の嵌込み部内に配置されることが、看取される。
c 各框が有するガラス10の嵌め込み部に着目すると、【図2】より、屋内外に重合される見付け方向に同幅Lである内召合せ框7と外召合せ框8とにおいて、2枚のガラス10を嵌め込む外召合せ框8の嵌込み部と、内召合せ框7のガラス嵌込み部とは、見付け方向に重複せず、2枚のガラス10を嵌め込む外召合せ框8の嵌込み部の見付け方向の幅は、召合せ框7、8の各見付け幅Lの1/2以下であることが、看取される。
d 段落【0011】及び【0012】の記載を踏まえると、【図2】より、一方の突合せ框9の突合せ面と他方の突合せ框13の突合せ面の間には緩衝材15が設けられ、他方の突合せ框13が有する緩衝材15の取付け部16は突合せ框13の突合せ面から突出して、突合せ時に突合せ部Qを閉じる様子が、看取される。
(ウ)記載された発明
上記(ア)及び(イ)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。なお、認定の根拠を括弧書きで付した。
<引用発明1>
摺動レール4aに左右の2枚の引き違いガラス障子5a、5bを摺動自在に収容し、摺動レール4bに中央の2枚の引き違いガラス障子6a、6bを摺動自在に収容した、引き違い窓であって、(【0008】、【図2】)
窓閉鎖時に、左右両側の隣り合う2枚の引き違いガラス障子5a、6a(5b、6b)が召合せ状態となり、中央の2枚の引き違いガラス障子6a、6bが突合せ状態となるように構成され、(【0008】)
左右の2枚の引き違いガラス障子5a、6a(5b、6b)の召合せ框7、8の見付け幅Lはほぼ同幅に形成され、(【0009】)
中央の隣り合う2枚の引き違いガラス障子6a、6bのうち一方の引き違いガラス障子6aの突合せ框9は、ガラス10の嵌込み溝11aを開口した略方形のガラス嵌込み部11の屋内側に補強用中空部12を形成したもので、ガラス嵌込み部11の見付け幅L1は上記召合せ框7、8の見付け幅の約1/2に形成され、また上記中空部12の見付け幅L2は上記召合せ框7、8の見付け幅Lとほぼ同じに設定され、他方の引き違いガラス障子6bの突合せ框13は、上記一方の突合せ框9のガラス嵌込み部11とほぼ同寸、同形状のガラス嵌込み部14を有し、(【0010】、【0011】)
両引き違いガラス障子6a、6bは突合せ時に、突合せ部Qにおいて、突合せ框9、13を突合せ状とし、突合せ状態における両突合せ框9、13全体の見付け幅L2を上記召合せ框7、8の見付け幅Lと同幅とするとともに、突合せ部の一方の突合せ框9の補強用中空部12が他方の突合せ框13の屋内側に延長して他方の突合せ框13を隠すように形成されているので、屋内側からは一本の突合せ框9のみが見え、窓の閉鎖時における全体的統一性を得ることができ、窓の内観を向上させることができ、(【0012】、【0013】、【0016】)
左右両側のガラス障子5a、5bが有する外召合せ框8は、スペーサによって見込み方向に間隔をあけて配置された2枚のガラス10を嵌め込む嵌込み部を有し、2枚のガラス10間のスペーサは見付け方向において外召合せ框8の嵌込み部内に配置され、(【図2】)
屋内外に重合される見付け方向に同幅Lである内召合せ框7と外召合せ框8とにおいて、2枚のガラス10を嵌め込む外召合せ框8の嵌込み部と、内召合せ框7のガラス嵌込み部とは、見付け方向に重複せず、2枚のガラス10を嵌め込む外召合せ框8の嵌込み部の見付け方向の幅は、召合せ框7、8の各見付け幅Lの1/2以下である(【図2】)、
引き違い窓。
(エ)記載された事項
上記(イ)dより、引用文献1には、次の事項(以下、「引用文献1記載事項」という。)も記載されている。
<引用文献1記載事項>
一方の突合せ框9の突合せ面と他方の突合せ框13の突合せ面の間には緩衝材15が設けられ、他方の突合せ框13が有する緩衝材15の取付け部16は突合せ框13の突合せ面から突出して、突合せ時に突合せ部Qを閉じること。
イ 引用文献2について
(ア)記載及び図示
当審が拒絶理由で引用した、特開2009-299441号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載及び図示がある。
a 「【発明が解決しようとする課題】【0003】近年、障子の框は幅細のものがデザイン的に求められているが、方立を用いて障子を連結すると、連結部分の幅が大きくなってしまい、框を幅細に見せることが困難であった。また、障子を構成する框体について断熱性及び意匠性を高めるため、金属框の室内側に樹脂框を配設した複合サッシが知られているが、複合サッシの場合には金属部分と樹脂部分とがあるために、縦框同士の連結部分がより複雑な構造となり、框を幅細に見せることがより一層困難となっていた。【0004】本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、固定障子を横方向に連設する場合において、縦框の連結部分を幅細として意匠性を高めたサッシを提供することを目的とする。」
b 「【0011】本発明の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態におけるサッシの正面図を示している。この図に示すように、本実施形態におけるサッシは、建物開口部に設けられる枠体1内に3枚の固定障子2を横方向に連設し納めて構成されている。3枚の固定障子2は、左右の枠側障子3と、中央の中央障子4とからなっている。なお、図1はサッシを室外側から見たものである。また、図6にはサッシの斜視図を示している。【0012】枠体1は、上枠10と下枠11及び左右の縦枠12、12を方形状に枠組みして構成される。枠側障子3は、上框20と下框21、枠側縦框22及び連結縦框23を方形状に框組みしてなる框体5内にガラス板からなるパネル体6を納めて構成される。また、中央障子4は、上框30と下框31、及び左右の連結縦框32、32を方形状に框組みしてなる框体5内にガラス板からなるパネル体6を納めて構成される。なお、図1ではサッシを室外側から見ていることに伴い、枠側障子3と中央障子4との間に設けられる框は、中央障子4の連結縦框32のみが露出している。その構成については後で詳述する。」
c 「【0021】枠側障子3を構成する第1連結縦框23は、枠側障子3のパネル体6の周縁部を保持するパネル体保持部23aを備えている。パネル体保持部23aは、断面略コ字状に形成され、その底面部分が室内側に延出されて連結部23bを構成している。連結部23bの室内側は、第2連結縦框32よりも室内側に延出されて断面中空状の中空部23cが形成されている。【0022】第1連結縦框23の中空部23cには、その室内側露出面を覆うように樹脂縦カバー体25が設けられる。樹脂縦カバー体25は、断面略コ字状に形成されて中空部23cの室外側両側部にそれぞれ係合し固定される。また、樹脂縦カバー体25の室外端部は、それぞれ枠側障子3のパネル体6近傍及び中央障子4のパネル体6近傍まで伸びており、第1連結縦框23及び第2連結縦框32の中空部23cよりも室外側部分についても、室内側に露出しないように被覆している。【0023】一方、中央障子4を構成する第2連結縦框32は、中央障子4のパネル体6の周縁部を保持するパネル体保持部32aを備えている。第1連結縦框23のパネル体保持部23aと第2連結縦框32のパネル体保持部32aは、底面同士が互いに近接対向して配置される。また、パネル体保持部32aの底面部分は室内側に延出されて連結部32bを構成している。」
d 「【0026】また、第1連結縦框23の中空部23cは、第1連結縦框23のパネル体保持部23aの開口端部から第2連結縦框32のパネル体保持部32aの開口端部に渡る幅を有するように形成されている。また、中空部23cの室内露出面を覆う樹脂縦カバー体25は、第1連結縦框23側と第2連結縦框32側の各内周面がいずれも平面状に形成されており、障子が連結される縦辺の室内端部からパネル体保持部23a、32aに至るまでの内周面を面一状とすることができ、すっきりした内観とすることができる。」
e 【図4】
「[図:0001425086000002.jpg]」
f 【図5】
「[図:0001425086000003.jpg]」
(イ)看取される事項
a ガラス板からなるパネル体6について、【図4】において、四角内に×印が付された部材は、2枚のガラス板を隔てるスペーサであることが明らかであるから、段落【0012】の記載を踏まえると、【図4】より、枠側障子3のガラス板からなるパネル体6、及び中央障子4のガラス板からなるパネル体6は、スペーサを挟んで間隔をあけて配置された2枚のガラス板からなることが、看取される。
b 段落【0021】及び【0023】の記載を踏まえると、【図4】より、第1連結縦框23のパネル体保持部23aは、見付け方向において開口内に2枚のガラス板を隔てるスペーサを納め、第2連結縦框32のパネル体保持部32aは、見付け方向において開口内に2枚のガラス板を隔てるスペーサを納めることが、看取される。
c 【図4】及び【図5】より、樹脂縦カバー体25の室内側の見付け面は、内部に仕切りのない中空形状の部分の室内側面で形成されることが、看取される。
d 段落【0022】及び【0026】の記載を踏まえると、【図4】より、樹脂縦カバー体25の室内側の見付け面を形成する中空形状の部分は、第1連結縦框23のパネル体保持部23aの開口端部から第2連結縦框32のパネル体保持部32aの開口端部に渡る幅を有する第1連結縦框23の中空部23cの室内露出面を、見付け方向の全体に渡って覆い、パネル体保持部23a及びパネル体保持部32aの各開口内に納められた2枚のガラス板を隔てるスペーサと、見付け方向において重複していることが、看取される。
e 段落【0022】の記載を踏まえると、【図4】より、断面略コ字状に形成された樹脂縦カバー体25の両側部は、樹脂縦カバー体25の中空形状の部分の見付け方向の各端部から、それぞれ枠側障子3のパネル体6及び同パネル体6が有するスペーサの近傍、並びに中央障子4のパネル体6及び同パネル体6が有するスペーサの近傍まで、見込み方向に向かって伸びる面を有していることが、看取される。
(ウ)記載された発明
上記(ア)及び(イ)より、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。なお、認定の根拠を括弧書きで付した。
<引用発明2>
障子を構成する框体について断熱性及び意匠性を高めるため、金属框の室内側に樹脂を配設するとともに、障子を横方向に連設する場合において、縦框の連結部分を幅細として意匠性を高めたサッシを提供することを目的とし、(【0003】、【0004】)
枠側障子3と、中央の中央障子4とを、横方向に連設するサッシにおいて、(【0011】)
枠側障子3を構成する第1連結縦框23は、枠側障子3のパネル体6の周縁部を保持するパネル体保持部23aを備え、(【0021】)
中央障子4を構成する第2連結縦框32は、中央障子4のパネル体6の周縁部を保持するパネル体保持部32aを備え、(【0023】)
枠側障子3のガラス板からなるパネル体6、及び中央障子4のガラス板からなるパネル体6は、スペーサを挟んで間隔をあけて配置された2枚のガラス板からなり、(【0012】、【図4】)
第1連結縦框23のパネル体保持部23aは、見付け方向において開口内に2枚のガラス板を隔てるスペーサを納め、第2連結縦框32のパネル体保持部32aは、見付け方向において開口内に2枚のガラス板を隔てるスペーサを納め(【0021】、【0023】、【図4】)、
第1連結縦框23の室内側に延出された連結部23bには、第2連結縦框32よりも室内側に延出されて断面中空状の中空部23cが形成され、第1連結縦框23の中空部23cは、第1連結縦框23のパネル体保持部23aの開口端部から第2連結縦框32のパネル体保持部32aの開口端部に渡る幅を有するように形成され、(【0021】、【0026】)
第1連結縦框23の中空部23cには、その室内側露出面を覆うように樹脂縦カバー体25が設けられ、(【0022】)
樹脂縦カバー体25は、断面略コ字状に形成されて中空部23cの両側部にそれぞれ係合し固定され、樹脂縦カバー体25の室外端部は、それぞれ枠側障子3のパネル体6近傍及び中央障子4のパネル体6近傍まで伸びており、(【0022】)
樹脂縦カバー体25の室内側の見付け面は、内部に仕切りのない中空形状の部分の室内側面で形成され、樹脂縦カバー体25の室内側の見付け面を形成する中空形状の部分は、第1連結縦框23のパネル体保持部23aの開口端部から第2連結縦框32のパネル体保持部32aの開口端部に渡る幅を有する第1連結縦框23の中空部23cの室内露出面を、見付け方向の全体に渡って覆い、パネル体保持部23a及びパネル体保持部32aの各開口内に納められた2枚のガラス板を隔てるスペーサと、見付け方向において重複しており、(【0022】、【0026】、【図4】、【図5】)
断面略コ字状に形成された樹脂縦カバー体25の両側部は、樹脂縦カバー体25の中空形状の部分の見付け方向の各端部から、それぞれ枠側障子3のパネル体6及び同パネル体6が有するスペーサの近傍、並びに中央障子4のパネル体6及び同パネル体6が有するスペーサの近傍まで、見込み方向に向かって伸びる面を有している、(【0022】、【図4】)
サッシ。
ウ 特開2016-30955号公報
本願の原出願前に公開された特開2016-30955号公報には、【背景技術】の欄に、次の記載がある。
「【背景技術】【0002】開口を形成する枠体が有する単一のレールに案内されて移動可能で有り、前記開口を閉塞する際に互いに突き合わされる2枚の障子を備えた建具としては、例えば、2枚の突合せ障子と両袖障子とからなる4枚建の建具が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような建具のなかには、断熱性を高めるために、金属製の部材の室内側に合成樹脂製の部材を結合させて各框を形成しているものがある。また、互いに突き合わされる突合せ障子の突合せ框は、金属製の部材と合成樹脂製の部材とから各々、互いに対向する方向にヒレ状の部位を突出させ、金属製のヒレ状の部位同士および合成樹脂製の部位同士がそれぞれ見込み方向に重なるように配置されているものもある。さらに、火災等により加熱されたときに、突き合わせ部分が変形して隙間が生じないように、金属製のヒレ状の部位の室内に向く面に、加熱されて発泡する加熱発泡材を設けたものもある。」
(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを、対比する。
ア 引用発明1における「摺動レール4b」、「引き違いガラス障子6a」及び「引き違いガラス障子6b」は、本願補正発明における「同一レール」、「第1の障子」及び「第2の障子」に、それぞれ相当する。
引用発明1において、「摺動レール4b」に「摺動自在に収容」される「中央の2枚の引き違いガラス障子6a、6b」は、本願補正発明において、「同一レール上を移動する第1の障子と第2の障子」に、相当する。
イ 引用発明1において「両引き違いガラス障子6a、6b」が有する「突合せ框9、13」は、本願補正発明における「前記第1の障子と前記第2の障子との突合せ框同士」に相当する。
引用発明1において、「窓閉鎖時に、・・・、中央の2枚の引き違いガラス障子6a、6bが突合せ状態となるように構成され」ており、「両引き違いガラス障子6a、6bは突合せ時に、突合せ部Qにおいて、突合せ框9、13を突合せ状」とすることは、本願補正発明において、「前記第1の障子と前記第2の障子との突合せ框同士」が「突き合わされて閉じられるように構成され」ていることに、相当する。
ウ 本願補正発明において、「前記第1の障子の前記突合せ框及び前記第2の障子の前記突合せ框は、スペーサによって間隔をあけて配置された複数のガラスをそれぞれ収容」する構成と、引用発明1において、「中央の隣り合う2枚の引き違いガラス障子6a、6bのうち一方の引き違いガラス障子6aの突合せ框9が、ガラス10の嵌込み溝11aを開口した略方形のガラス嵌込み部11」を有し、「他方の引き違いガラス障子6bの突合せ框13は、上記一方の突合せ框9のガラス嵌込み部11とほぼ同寸、同形状のガラス嵌込み部14を有」する構成とは、引用発明1の「ガラス嵌込み部11」及び「ガラス嵌込み部14」にそれぞれ「ガラス10」が嵌込まれることが明らかであることを踏まえると、「前記第1の障子の前記突合せ框及び前記第2の障子の前記突合せ框は、ガラスをそれぞれ収容」する点で、共通する。
エ 引用発明1における「一方の突合せ框9」、「他方の突合せ框13」及び「補強用中空部12」は、本願補正発明における「第1の障子の前記突合せ框」、「第2の障子の前記突合せ框」及び「框被覆部」に、それぞれ相当する。
引用発明1において、「両引き違いガラス障子6a、6bは・・・突合せ状態における両突合せ框9、13全体の見付け幅L2を上記召合せ框7、8の見付け幅Lと同幅とするとともに、突合せ部の一方の突合せ框9の補強用中空部12が他方の突合せ框13の屋内側に延長して他方の突合せ框13を隠すように形成されているので、屋内側からは一本の突合せ框9のみが見え」る構成は、「突合わせ状態」において「他方の突合せ框13を隠す」ように「屋内側に延長」されている「一方の突合せ框9の補強用中空部12」が、「他方の突合わせ框13」の屋内側の見付け面を覆うように配置されることで「他方の突合せ框13を隠す」ことが明らかであることを踏まえると、本願補正発明において、「前記第1の障子の前記突合せ框は、前記第1の障子と前記第2の障子とが閉じられた状態で、前記第2の障子の前記突合せ框の見込み方向の一側の見付け面を覆うように配置される框被覆部を有」する構成に、相当する。
オ 引用発明1において、「引き違い窓」であることは、本願補正発明において、「建具」であることに、相当する。
カ 以上を整理すると、本願補正発明と引用発明1とは、次の点で一致する。
「 同一レール上を移動する第1の障子と第2の障子を有し、前記第1の障子と前記第2の障子との突合せ框同士が突き合わされて閉じられるように構成され、前記第1の障子の前記突合せ框及び前記第2の障子の前記突合せ框は、ガラスをそれぞれ収容し、前記第1の障子の前記突合せ框は、前記第1の障子と前記第2の障子とが閉じられた状態で、前記第2の障子の前記突合せ框の見込み方向の一側の見付け面を覆うように配置される框被覆部を有する、建具。」
キ そして両者は、以下の点で相違する。
<相違点1>
「突合せ框同士」が「突き合わされて閉じられる」構成に関し、
本願補正発明においては、「突合せ框同士の突合せ面が、前記第1の障子及び前記第2の障子の少なくとも何れか一方の前記突合せ面から突出する壁部を介して突き合わされて閉じられる」と特定されているのに対し、
引用発明1においては、そのように特定されていない点。
<相違点2>
「第1の障子の前記突合せ框」及び「第2の障子の前記突合せ框」が「それぞれ収容」する「ガラス」に関し、
本願補正発明においては、「スペーサによって間隔をあけて配置された複数のガラス」と特定されているのに対し、
引用発明1においては、「中央の2枚の引き違いガラス障子6a、6b」に収容されるガラスについて、そのように特定されていない点。
<相違点3>
「框被覆部」の構成及び他の部材との配置に関し、
本願補正発明においては、下記の相違点3-1~相違点3-4に係る構成が特定されているのに対し、
引用発明1においては、そのように特定されていない点。
(相違点3-1)
「前記框被覆部の屋内側の見付け面は、内部に仕切りのない中空構造を有する樹脂部材によって構成されて」いること。
(相違点3-2)
「前記第1の障子の前記突合せ框に収容された前記複数のガラスの前記スペーサ及び前記第2の障子の前記突合せ框に収容された前記複数のガラスの前記スペーサは、前記第1の障子と前記第2の障子とが閉じられた状態で、見込み方向において前記框被覆部の前記樹脂部材の前記中空構造と対向する位置に配置され」ること。
(相違点3-3)
「前記樹脂部材は、前記中空構造の見付け方向における各端部から前記各端部に対向する前記スペーサ側に延びる見込み面を有」すること。
(相違点3-4)
「前記見込み面と前記スペーサの内周端とは略面一である」こと。
(4)相違点についての判断
ア 相違点1について
上記相違点1について、判断する。
(ア)引用文献1には、上記(2)ア(エ)に認定した引用文献1記載事項が記載されており、引用文献1記載事項が有する「突合せ框13の突合せ面から突出して、突合せ時に突合せ部Qを閉じる」「他方の突合せ框13が有する緩衝材15の取付け部16」は、上記相違点1に係る本願補正発明の構成における、「突合せ框同士の突合せ面が、・・・を介して突き合わされて閉じられる」こととなる「前記第1の障子及び前記第2の障子の少なくとも何れか一方の前記突合せ面から突出する壁部」に相当する。
引用文献1記載事項は、引用発明1と同じ実施例から認定される構成であり、引用発明1に係る実施例は、実質的に引用文献1記載事項の構成を有している。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。
また、引用発明1において、引用文献1記載事項の構成をとり、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が適宜になし得た設計事項程度である。
(イ)また、上記(2)ウに摘記した特開2016-30955号公報の【背景技術】の欄に記載されるように、互いに突き合わされる突合せ障子の突合せ框において、金属製の部材と合成樹脂製の部材とから各々、互いに対向する方向にヒレ状の部位を突出させ、金属製のヒレ状の部位同士および合成樹脂製の部位同士がそれぞれ見込み方向に重なるように配置することは、周知技術である。
引用発明1において、框の突合せ部をしっかり閉じるという一般的な観点から、突合せ框9及び/又は突合せ框13の突合せ面から突出するヒレ状の部位を設け、ヒレ状の部位同士がそれぞれ見込み方向に重なるようにするとともに、当該ヒレ状の部位を介して突合せ部Qが適宜に閉じられるようにし、もって上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば想到容易である。
その際、引用文献1記載事項における緩衝材15等を適宜に配置し、ヒレ状の部位と緩衝材とを介して、突合せ部Qが適宜に閉じられるようにすることも、当業者であれば適宜になし得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる効果は、引用発明1、引用文献1記載事項及び上記周知技術から事前に予測される範囲を超える格別のものではない。
イ 相違点2について
上記相違点2について、判断する。
たとえば引用文献2の段落【0003】で、「断熱性」について言及されているように、断熱性は、窓やサッシにおいて通常考慮される事項であるから、引用発明1においても、断熱性について考慮する自明な動機付けがある。
また、引用発明1において「左右両側のガラス障子5a、5b」に「スペーサによって見込み方向に間隔をあけて配置された2枚のガラス10」を用いており、引用発明2において「枠側障子3のガラス板からなるパネル体6、及び中央障子4のガラス板からなるパネル体6」に「スペーサを挟んで間隔をあけて配置された2枚のガラス板」を用いているように、スペーサを挟んで間隔をあけた複数のガラスを用いることは、断熱性を高めるうえで広く採用されている周知技術である。
そして、引用発明1において、「左右両側のガラス障子5a、5b」に「スペーサによって見込み方向に間隔をあけて配置された2枚のガラス10」を用いているのであるから、「中央の2枚の引き違いガラス障子6a、6b」に収容するガラスについて、断熱性を高めるうえで広く採用されている周知技術である、スペーサを挟んで間隔をあけた複数のガラスを用いることについて、技術常識を考慮しても着想し得ないような特段の事情や、採用することに支障を生じるような阻害要因があるとは認められない。
したがって、引用発明1において、断熱性に考慮して、「中央の2枚の引き違いガラス障子6a、6b」に収容するガラスについて、上記周知技術を採用して、スペーサを挟んで間隔をあけた複数のガラスとし、もって上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
そして、そうしたことによる効果は、引用発明1及び上記周知技術から事前に予測される範囲を超える格別のものではない。
ウ 相違点3について
(ア)引用発明2は、「第1連結縦框23の中空部23cには、その室内側露出面を覆うように樹脂縦カバー体25」を設けている。
(イ)引用発明2における「樹脂縦カバー体25」は、「室内側の見付け面は、内部に仕切りのない中空形状の部分の室内側面で形成され、樹脂縦カバー体25の室内側の見付け面を形成する中空形状の部分は、第1連結縦框23のパネル体保持部23aの開口端部から第2連結縦框32のパネル体保持部32aの開口端部に渡る幅を有する第1連結縦框23の中空部23cの室内露出面を、見付け方向の全体に渡って覆」うから、上記相違点3に係る本願補正発明の構成のうち、「前記框被覆部の屋内側の見付け面は、内部に仕切りのない中空構造を有する樹脂部材によって構成されて」いる、上記相違点3-1に相当する構成を有する。
(ウ)引用発明2における「樹脂縦カバー体25」は、「第1連結縦框23のパネル体保持部23aの開口端部から第2連結縦框32のパネル体保持部32aの開口端部に渡る幅を有する第1連結縦框23の中空部23cの室内露出面を、見付け方向の全体に渡って覆い、パネル体保持部23a及びパネル体保持部32aの各開口内に納められた2枚のガラス板を隔てるスペーサと、見付け方向において重複して」いるから、障子に格納する複層ガラスを隔てるスペーサとの関係において、上記相違点3に係る本願補正発明の構成のうち、「前記第1の障子の前記突合せ框に収容された前記複数のガラスの前記スペーサ及び前記第2の障子の前記突合せ框に収容された前記複数のガラスの前記スペーサは、前記第1の障子と前記第2の障子とが閉じられた状態で、見込み方向において前記框被覆部の前記樹脂部材の前記中空構造と対向する位置に配置され」るという、上記相違点3-2に相当する構成を有する。
(エ)引用発明2における「樹脂縦カバー体25」は、「断面略コ字状に形成された樹脂縦カバー体25の両側部は、樹脂縦カバー体25の中空形状の部分の見付け方向の各端部から、それぞれ枠側障子3のパネル体6及び同パネル体6が有するスペーサの近傍、並びに中央障子4のパネル体6及び同パネル体6が有するスペーサの近傍まで、見込み方向に向かって伸びる面を有している」から、上記相違点3に係る本願補正発明の構成のうち、「前記樹脂部材は、前記中空構造の見付け方向における各端部から前記各端部に対向する前記スペーサ側に延びる見込み面を有」するという、上記相違点3-3に相当する構成を有する。
(オ)引用発明2における「樹脂縦カバー体25」は、「障子を構成する框体について断熱性及び意匠性を高める」ために、「障子を横方向に連設する場合において、縦框の連結部分を幅細として意匠性を高めたサッシ」に設けられるものであるから、框に納めた「2枚のガラス板を隔てるスペーサ」が室内側から見て露出しないよう、「パネル体保持部23a及びパネル体保持部32aの各開口内に納められた2枚のガラス板を隔てるスペーサと、見付け方向において重複」する範囲で、框及び「樹脂縦カバー体25」を細幅とすることが適宜に想定されているといえる。
したがって、引用発明2における「樹脂縦カバー体25」について、「断面略コ字状に形成された両側部」が「枠側障子3のパネル体6及び同パネル体6が有するスペーサの近傍、並びに中央障子4のパネル体6及び同パネル体6が有するスペーサの近傍まで、見込み方向に向かって伸びる面」を、室内側から見て各スペーサの端部まで覆う位置と略一致させ、もって「前記見込み面と前記スペーサの内周端とは略面一」である上記相違点3-4に相当する構成とすることは、当業者が適宜に選択し得た設計事項程度であり、後記(カ)のとおり引用発明1にガラスを複層化する周知技術及び引用発明2の「樹脂縦カバー体25」を採用する場合にも、前述した点が設計事項程度であることが変わるものではない。また、そうしたことによる意匠上の効果、及び断熱性について特段の支障がないという効果は、いずれも事前に予測される範囲を超えるものではない。
(カ)引用発明1は、上記イに指摘したとおり断熱性について考慮する自明な動機付けがあるとともに、「窓の閉鎖時における全体的統一性を得ることができ、窓の内観を向上させることができ」ることを意図しているから、引用発明1において、ガラスを複層化する周知技術と併せて、引用発明2における「樹脂縦カバー体25」を採用する動機付けがあるものである。
また、引用発明2における「樹脂縦カバー体25」は、「第1連結縦框23のパネル体保持部23aの開口端部から第2連結縦框32のパネル体保持部32aの開口端部に渡る幅を有するように形成され」た「第1連結縦框23の中空部23c」の「両側部にそれぞれ係合し固定され」るものであるから、引用発明1において「他方の突合せ框13の屋内側に延長して他方の突合せ框13を隠すように形成されて」いる「一方の突合せ框9の補強用中空部12」の両側に係合して固定することに、何ら阻害要因があるものではない。
そして、引用発明1において、断熱性という一般的な観点から、ガラスを複層化する周知技術を採用して上記相違点2に係る構成を採用するとともに、断熱性及び意匠性という観点から、引用発明2における「樹脂縦カバー体25」を採用し、上記相違点3-1~相違点3-4に係る本願補正発明の構成に至ることは、上記(イ)~(オ)に示したとおり、当業者であれば容易に想到し得た事項である。
また、引用発明1において引用発明2における「樹脂縦カバー体25」を採用したことによる効果は、断熱性及び意匠性について上記(オ)で言及したように、引用発明1、引用発明2及び周知技術から事前に予測される範囲を超える格別のものではない。
エ 請求人の主張について
(ア)令和6年11月19日提出の意見書における主張について
a 相違点1について
請求人は令和6年11月19日提出の意見書において、相違点1に関し、引用文献1の突合わせ部には、左右の障子の突合わせ面間の空間全体に亘って緩衝材15が充填されているため、この突合わせ面間に壁部を介在させることは動機づけられないし、相違点1に係る構成は想到容易でない旨を主張している。
相違点1に係る本願補正発明の構成に関し、本願における実施形態の図示は、次のとおりである。
「[図:0001425086000004.jpg]」
上記【図3】に示されるとおり、本願補正発明に関する実施形態は、「立壁部431」(壁部)が存在する箇所で、「突合せ框43」の「突合せ面43a」と「突合せ框53」の「突合せ面53a」とが直接接触しているわけではなく、間に「第2気密材536」等を介在したうえで、「突合せ框43」と「突合せ框53」とが閉じられるものである。
そして、相違点1に係る本願補正発明の構成について、「突出する壁部」が存在する箇所で「突合せ面」同士が直接接触することを要するものではなく、適宜の介在物を介して突合せ框同士の突合わせ面が閉じられれば足りる、という解釈は、「突合せ框同士の突合せ面が、前記第1の障子及び前記第2の障子の少なくとも何れか一方の前記突合せ面から突出する壁部を介して突き合わされて閉じられる」という請求項の記載とも整合する。
ここで、相違点1に係る本願補正発明1の構成が、「突出する壁部」が存在する箇所で「突合せ面」同士が直接接することを要する構成ではないから、上記ア(ア)に指摘したとおり、引用文献1記載事項が有する「突合せ框13の突合せ面から突出して、突合せ時に突合せ部Qを閉じる」「他方の突合せ框13が有する緩衝材15の取付け部16」は、上記相違点1に係る本願補正発明の構成における、「突合せ框同士の突合せ面が、・・・を介して突き合わされて閉じられる」こととなる「前記第1の障子及び前記第2の障子の少なくとも何れか一方の前記突合せ面から突出する壁部」に相当する。そして、引用文献1において突合せ部Qに緩衝材15が配置されていることが、相違点1に係る本願補正発明の構成に至るうえでの阻害要因となるものではない。
また、上記ア(イ)に指摘したとおり、引用発明1において、框の突合せ部をしっかり閉じるという一般的な観点から、突合せ障子の突合せ框において、互いに対向する方向にヒレ状の部位を突出させ、ヒレ状の部位同士がそれぞれ見込み方向に重なるように配置して、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることも、当業者であれば想到容易である。その際にも、緩衝材15の配置はヒレ状の部位の配置に応じて適宜に設計し得るものであり、その点について本願補正発明の実施例において「第2気密材536」が介在していることと事情が変わるものではないから、緩衝材15の存在が相違点1に係る本願補正発明の構成に至るうえでの阻害要因となるものではない。
したがって、上記請求人の主張について考慮しても、本願補正発明の容易想到性について、上記ア~ウの判断を変更すべき事情はない。
b 引用発明1に引用発明2の「樹脂縦カバー体25」を適用することについて
請求人は令和6年11月19日提出の意見書において、引用文献2は同一レール上を移動しない固定障子に関するから、同一レール上を移動する障子の突合わせ框に関する引用文献1とは相違し、引用発明2が有する「樹脂縦カバー体25」を引用発明1に組み合わることはできない旨を主張している。
しかしながら、上記ウ(カ)に指摘したとおり、引用発明1には引用発明2における「樹脂縦カバー体25」を採用する動機付けがあり、また框の屋内側に係合して固定されるという固定形態より、「樹脂縦カバー体25」を引用発明1の「一方の突合せ框9の補強用中空部12」に係合して固定することに何らの阻害要因もないから、請求人の上記の主張は採用することができない。
c 相違点3-4について
請求人は令和6年11月19日提出の意見書において、たとえ引用発明1に引用発明2の「樹脂縦カバー体25」を適用したとしても、引用文献2において樹脂縦カバー体25の見込み面はスペーサの内周端よりもガラス内周側に位置しているから、相違点3-4に係る本願補正発明の構成に至ることはない旨を主張している。
しかしながら、引用文献2の【図4】の図示において、樹脂縦カバー体25の断面略コ字状の両側部がスペーサの端部より若干外側に位置する例が示されていても、引用文献2において樹脂縦カバー体25の端部をスペーサの端部と大きくずらす必要があるわけではなく、上記ウ(オ)に指摘したとおりスペーサを隠す範囲で框及び樹脂縦カバー体25を細幅とすることは適宜に想定されているといえるから、樹脂縦カバー体25の端部をスペーサの端部と略一致させることは当業者が適宜になし得た設計事項程度である。
そして、そうしたことによる意匠上の効果、及び断熱性について特段の支障がないという効果は、いずれも事前に予測される範囲を超えるものではない。
したがって、上記請求人の主張について考慮しても、本願補正発明の容易想到性について、上記ア~ウの判断を変更すべき事情はない。
d 相違点1を採用したことによる阻害要因について
請求人は令和6年11月19日提出の意見書において、相違点1に係る構成を採用すれば突合わせ框の突合わせ面同士を近づけることに制約が生じるところ、突合わせ面同士を近づけることに制約が生じた状態で、引用発明2における「樹脂縦カバー体25」を適用したり、相違点3-4に係る構成とすることは容易ではない旨を主張している。
しかしながら、引用発明1に係る引き違い窓の突合せ部Qにおいて、突合せ框9と突合せ框13とは、なんらの介在物も介在させず直接接触させることが必須のものではなく、引用文献1記載事項に示されるように、緩衝材15を介在させたり突出する部材(取付け部16)を設けることが予定されている。そして、緩衝材15や突出する部材(取付け部16)を設けるからといって、突合せ部Qの幅を、機能上または意匠上の不都合を生じる程に大きなものとする必要はないことが明らかである。
また引用発明1において、上記ア(イ)に説示したとおり、互いに対向する方向に突出するヒレ状の部位を設けることは想到容易であるところ、ヒレ状の部位の大きさに関し、突合せ部Qの幅を機能上または意匠上の不都合を生じる程に大きなものとする必要はないことも、明らかである。
そして、引用発明1において、突合せ部Qの幅を機能上または意匠上の不都合を生じる程に大きなものとしない状態において、相違点1ないし3に係る本願補正発明の構成とすることは、上記ア~ウに指摘したとおり想到容易であり、請求人が主張する想到困難性はない。
なお、本願補正発明においても、相違点1に係る「突出する壁部」の大きさや配置について、本願補正発明における他の構成と同時に採用することが困難となるような大きさや配置とすることが、特許請求の範囲において具体的に特定されているものではない。
したがって、上記請求人の主張について考慮しても、本願補正発明の容易想到性について、上記ア~ウの判断を変更すべき事情はない。
e 効果について
請求人は令和6年11月19日提出の意見書において、本願補正発明は相違点1~3に係る構成により、断熱性、意匠性及び突合わせ部の強度について、格別の効果を奏する旨を主張している。
しかしながら、断熱性については、上記イに指摘したとおり、引用発明1においても考慮する自明な動機付けがあり、上記ア~ウのとおり相違点1~3に係る想到容易な構成をとったこと依拠して生じる、断熱性についての効果は、引用発明1、引用発明2及び周知技術から事前に予測される範囲を超える格別顕著なものとはいえない。
また、意匠性については、引用発明1及び引用発明2のいずれでも考慮されている事項であり、上記ア~ウのとおり相違点1~3に係る想到容易な構成をとったこと依拠して生じる、意匠性についての効果は、採用した構成の外観から事前に十分に予測される範囲を超えるものではない。
さらに、突合わせ部の強度については、引用文献1記載事項における突出した取付け部16、及び周知技術である突出したヒレ状の部位を採用したことにより、当該突出した構造に依拠して生じるものとして、事前に十分に予測される範囲を超えるものではない。
したがって、効果に関する上記請求人の主張について考慮しても、本願補正発明の容易想到性について、上記ア~ウの判断を変更すべき事情はない。
(イ)審判請求書における主張について
請求人は審判請求書において、引用文献1には、本願補正発明のように、突合わせ部における見込み幅を大きくしてでも見付け幅を小さくして、突合わせ部をスリム化するという着想がないから、引用発明1を出発点として本願補正発明に至ることはない旨を主張している。
しかしながら、引用発明1は、「中央の隣り合う2枚の引き違いガラス障子6a、6bのうち一方の引き違いガラス障子6aの突合せ框9」について、「ガラス10の嵌込み溝11aを開口した略方形のガラス嵌込み部11の屋内側に補強用中空部12を形成」しているから、突合わせ框の見込み幅を大きくしているし、「ガラス嵌込み部11の見付け幅L1は上記召合せ框7、8の見付け幅の約1/2に形成」しているから、各突合わせ框の見付け幅を小さくしている。
したがって、上記請求人の主張を考慮しても、本願補正発明の容易想到性について、上記ア~ウの判断を変更すべき事情はない。
(ウ)令和5年3月24日提出の意見書における主張について
請求人は令和5年3月24日提出の意見書において、引用発明1の(中央の)引き違いガラス障子6a、6bには、スペーサによって間隔をあけて配置される複数のガラスを収容する構成とする動機付けは存在しない旨、及び、複数のガラスをスペーサによって間隔をあけて配置することは、それだけ突合わせ部の見込み幅が増大するから、引用発明1の設計思想に反し、想到容易でない旨を、主張している。
しかしながら、引用発明1において、断熱性に考慮して、スペーサを挟んで間隔をあけた複数のガラスを用いることは、上記イで指摘したとおり、動機付けがあり、かつ周知技術から想到容易である。
また、上記(イ)で指摘したとおり、引用発明1は、突合せ框の見込み幅を大きくするとともに、各突合せ框の見付け幅を小さくしているから、突合せ框の見込み幅が若干大きくなることが、引用発明1の設計思想に反するというものではない。
なお、突合せ框の見付け幅について検討しても、引用発明1において、「中央の隣り合う2枚の引き違いガラス障子6a、6b」が有する「突合せ框9」の「ガラス嵌込み部11の見付け幅L1」が、「上記召合せ框7、8の見付け幅」である「L」の「約1/2に形成され」ているのに対し、「スペーサによって見込み方向に間隔をあけて配置された2枚のガラス10を嵌め込む嵌込み部」を有する「外召合せ框8の嵌込み部の見付け方向の幅」は、「Lの1/2以下」であるから、「スペーサによって見込み方向に間隔をあけて配置された2枚のガラス10を嵌め込む嵌込み部」について、見付け幅が増大するような事情はない。
したがって、上記請求人の主張を考慮しても、本願補正発明の容易想到性について、上記ア~ウの判断を変更すべき事情はない。
(5)独立特許要件の小括
よって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができたものではない。
4 補正の却下の決定の小括
上記2及び3のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願について
1 本願発明
上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正前の令和5年9月6日に提出された手続補正書によって補正された、特許請求の範囲の請求項1の記載により特定されるべきものである。
本願発明を特定する、特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記第2の1(1)に摘記したとおりである。
2 拒絶の理由の概要
当審において、令和6年9月30日付けの拒絶理由通知書で通知した最後の拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
・進歩性欠如
本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、引用文献1及び2は、上記第2の3(2)で本願補正発明の進歩性について検討した引用文献1及び2と同じである。
3 当審の判断
本願発明は、本願補正発明から一部の構成を削除したものであり、本願補正発明から削除した構成には、上記第2の3(3)に示した相違点1に係る構成、及び相違点3-4に係る構成が含まれる。
本願補正発明から、相違点1に係る構成、及び相違点3-4に係る構成を除いた構成は、上記第2の3(2)ア(エ)に認定した引用文献1記載事項、及び上記第2の3(2)ウに示した特開2016-30955号公報を考慮する必要なく、引用発明1、引用発明2及びガラスの複層化という周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。
したがって、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
4 むすび
上記3のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2023-014966