特許拒絶査定不服審判
2023-014207
スーパースマートフォン及びスマートフォンシステム
- 審判番号
- 2023-014207
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-159135
- 請求日
- 2023年08月23日
- 審決日
- 2024年04月15日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】中松 義郎
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 高野 洋
- 審判官 衣鳩 文彦
- 分類
- P18 .121-Z (H04M) / P18 .56 -Z (H04M) / P18 .57 -Z (H04M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-159135「スーパースマートフォン及びスマートフォンシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月 1日出願公開、特開2021- 52397〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年9月23日(パリ条約による優先権主張 2019年9月24日 アメリカ合衆国、2020年9月21日 アメリカ合衆国)の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 4年 5月19日付け 拒絶理由通知書
7月29日 意見書・手続補正書
12月 2日付け 拒絶理由通知書(最後)
令和 5年 2月13日 意見書・手続補正書
5月15日付け 補正の却下の決定・拒絶査定
8月23日 審判請求書・手続補正書
以下では、令和5年5月15日付け拒絶査定を「原査定」といい、同年8月23日の手続補正書による補正を「本件補正」という。
第2 本件補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年7月29日に提出された手続補正書にて補正された特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
本体が2個を超え、スライドでなく連結した画面を有する事を特徴とするスーパースマートフォン。
【請求項2】
表面に第1の画面と第1のカメラを有する第1のスマートフォンと、表面に第2の画面と第2のカメラを有する第2のスマートフォンを、前記表面がともに同方向を向くように結合し、前記第1のカメラと前記第2のカメラは左右端に配置し、前記第1の画面と前記第2の画面が背中合わせになるように折り畳むことができるように蝶番で前記第1のスマートフォンと前記第2のスマートフォンを結合し、前記第1のカメラで撮影した画像が前記第1の画面で表示され、前記第2のカメラで撮影した画像が前記第2の画面で表示される請求項1のスーパースマートフォン。
【請求項3】
第1の画面と第2の画面が向き合うように折り畳むことが出来るように蝶番で第1のスマートフォンと第2のスマートフォンを結合し、前記第1の画面と第2の画面を保護し、また誤作動を防ぐ請求項1~2のスーパースマートフォン。
【請求項4】
請求項2に記載の前記蝶番は、第1のスマートフォンと接続された第1の蝶番と、第2のスマートフォンと接続された第2の蝶番とを有し、第1の蝶番と第2の蝶番はアームにより連結された機構を有することを特徴とする、スーパースマートフォン。
【請求項5】
第1の画面のマイクと第2の画面のマイクでひろった音が第1の画面のスピーカと第2の画面のスピーカによりステレオ音となる請求項2のスーパースマートフォン。
【請求項6】
2個を超え連結したスマートフォンにおいて、本体の裏の夫々の左右端に、カメラを設け、且つ、本体の裏の左端にスピーカと、連結したもう1つの本体の裏の右端にスピーカを設け、且つ、カメラで左右別々の画像で撮影でき、本体と連結した他の本体を扇状に開いて床上に自立でき、画面に左右画像を表示でき、セパレータと左右レンズを設けた三次元装置を有す、三次元画像とステレオ音機能を備える事を特徴とするスマートフォンシステム。
【請求項7】
請求項2に記載の前記蝶番は、拡開した第1の画面と第2の画面を固定する機能を有する、請求項2のスーパースマートフォン。
【請求項8】
請求項2に記載の前記蝶番は、任意の角度で止めることが出来る構造を有する請求項2のスーパースマートフォン。
【請求項9】
請求項1~2において、複数個のスマートフォンをベルトやバネ等腕取付具で結合し腕に装着し得る事を特徴とするスーパースマートフォン。
【請求項10】
請求項1~2において、複数個のスマートフォンの接続部分にカメラを設けた事を特徴とするスーパースマートフォン。
【請求項11】
請求項10において、腕に装着し得る事を特徴とするスーパースマートフォン。
(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。なお、下線は、本件補正の際に請求人が付したものである。
【請求項1】
本体が2個を超え、スライドでなく連結した画面を1枚の有機ELにして複数の本体間に隙間を設けて結合し、且つ前記有機ELをヒンジとして兼用し、畳むときに折れ曲がる部分の前記有機ELを覆う保護キャップを着脱自在に設ける事を特徴とするスーパースマートフォン。
【請求項2】
本体が2個であり、スライドでなく連結した画面を1枚の有機ELにして前記本体間に隙間を設けて結合し、且つ前記有機ELをヒンジとして兼用し、2つの裏面が向かい合った本体の裏面に長辺と並行で腕が通せるよう接続ゴムバンドを固定し、前記2つの本体の間に、腕を通し腕首に装着し得る事を特徴とするスーパースマートフォン。
2 本件補正の目的
(1)最初に、特許法17条の2第5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものといえるかについて検討する。
ア 本件補正後の請求項2は、本件補正前の独立請求項1又は6のうち、請求項1に記載された「スライドでなく連結した画面」との発明特定事項を備え、かつ、補正前の請求項6に記載された「三次元装置」についての発明特定事項を備えていないから、補正前の請求項1又は、請求項1を引用する従属請求項2~5、7~11のいずれかに対応すると認められる。
イ 本件補正により、本件補正後の請求項2は、「本体が2個であり」との発明特定事項を備えることになった。
他方、本件補正前の請求項1~5、7~11は、いずれも「本体が2個を超え」という発明特定事項を備えており、「本体が2個」であることを含まない。
そうすると、本件補正後の請求項2が、本件補正前の請求項1~5、7~11のいずれに対応していても、本件補正は、本件補正前に「本体が2個を超え」として「本体が2個」であることを含まない構成を、「本体が2個であり」として「本体が2個」である構成に補正することになるから、「特許請求の範囲の減縮」には該当しない補正を含む。
ウ 前記ア及びイより、本件補正の内、本件補正後の請求項2に係る補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものとは認められない。
(2)前記(1)で示した本件補正前の「本体が2個を超え」という発明特定事項を「本体が2個であり」と補正することは、特許法17条の2第5項1号に掲げる「請求項の削除」にも、同項3号に掲げる「誤記の訂正」にも、同項4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明」にも該当しない。
3 本件補正の適否
前記2のとおりであるから、本件補正には、特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの目的にも該当しないものが含まれる。
したがって、本件補正は同項の規定に違反するものであるから、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は前記第2のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)に示した請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
【請求項1】
本体が2個を超え、スライドでなく連結した画面を有する事を特徴とするスーパースマートフォン。
第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、「この出願については、令和4年12月2日付け拒絶理由通知書に記載した理由1-6によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、そのうち理由4は、概略、以下のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
・請求項 1
・引用文献等 1-3
・備考
本願発明は、引用文献1~3の何れかに記載された発明に基づき、当業者が容易に想到し得たものである。
・請求項 2
・引用文献等 1-5
・請求項 3
・引用文献等 2
・請求項 4
・引用文献等 1-6
・請求項 7-8
・引用文献等 2-3
・請求項 9
・引用文献等 1-7
・請求項 10
・引用文献等 1-3、7-9
<引用文献等一覧>
引用文献1.特開2015-5786号公報
引用文献2.特開2014-68287号公報
引用文献3.国際公開第2014/122512号
引用文献4.米国特許出願公開第2013/0021265号明細書
引用文献5.米国特許出願公開第2019/0007619号明細書
引用文献6.特開2018-112835号公報
引用文献7.特開2017-97345号公報
引用文献8.米国特許出願公開第2018/0095504号明細書
引用文献9.国際公開第2015/053188号
第5 文献の記載事項
原査定で引用した特開2015-5786号公報(以下「引用文献1」という。)及び原査定で引用した特開2014-68287号公報(以下「引用文献2」という。)の記載内容は、それぞれ以下の1及び2のとおりである。
1 引用文献1の記載内容
(1)引用文献1の記載
引用文献1には以下の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付した(以下同様)。
ア「【0001】
本発明は、画像表示装置に関し、特に、携帯用情報端末等の小型電子機器に好適に用いることができる折り畳み及び/又はスライド方式の画像表示装置に関する。」
イ 「【0020】
図1に、本発明の実施形態に係る画像表示装置を略平面に展開配置した状態を示す正面図を示す。画像表示装置1は表示部2を有する少なくとも3つの略板状の筐体(表示装置ユニット、即ち単位表示装置)4から構成されており、筐体4と筐体4との間はヒンジ部6a、6bで連結されている。
【0021】
個々の筐体4は、例えば一般的なスマートフォンと同等の寸法及び形態を有している。筐体4の表示部2は可撓性を有していても有していなくてもよく、従来用いられている汎用の液晶ディスプレイ等をそのまま用いることができる。また、個々の筐体4を個々に機能させることも可能である。例えば、一つの筐体4を一般的なスマートフォンやカメラとして機能させて使用し、残りの筐体4をディスプレイとして機能させて使用することもできる。
【0022】
複数の筐体4を略平面に配置することで、複数の表示部2が統合的(一体的)になって略同一面を形成し、大きな1つの平面状の表示部として用いることができる。この結果、表示部2が小さい場合であっても、表示部2を統合することで大きな画面として情報を表示させることができる。」
ウ 図1
「
[図:0001412128000001.jpg]
」
(2)引用発明1の認定
前記(1)の記載から、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明1を1a~1iに分説し、「分説1a」のようにして参照する。
「1a 折り畳み方式の画像表示装置1であって、(【0001】、【0020】)
1b 画像表示装置1は表示部2を有する少なくとも3つの略板状の筐体4から構成され、(【0020】)
1c 筐体4と筐体4との間はヒンジ部6a、6bで連結され、(【0020】)
1d 個々の筐体4は、一般的なスマートフォンと同等の寸法及び形態を有し、(【0021】)
1e 個々の筐体4を個々に機能させることも可能であり、(【0021】)
1f 一つの筐体4を一般的なスマートフォンとして機能させて使用することもでき、(【0021】)
1g 複数の筐体4を略平面に配置することで、複数の表示部2が統合的(一体的)になって略同一面を形成し、大きな1つの平面状の表示部として用いることができ、(【0022】)
1h この結果、表示部2が小さい場合であっても、表示部2を統合することで大きな画面として情報を表示させることができる、(【0022】)
1i 画像表示装置1。(【0020】)」
2 引用文献2の記載内容
(1)引用文献2の記載
引用文献2には以下の記載がある。
ア 「【0001】
本発明は、スマートフォン等の携帯電子機器に関する。」
イ 「【0018】
図1に示すように、携帯電子機器100は、第1筐体102と、第2筐体104と、第3筐体106とを有する。図1に示す折畳状態では、携帯電子機器100は、第1筐体102と、第2筐体104と、第3筐体106とが重ねられた状態となる。携帯電子機器100は、図2に示すようにその折畳を解除し、図3に示すように展開状態にすることができる。
【0019】
図3に示すように、携帯電子機器100が折畳状態と展開状態とを取ることができるのは、第1ヒンジ114と第2ヒンジ116とを有するためである。第1ヒンジ114は、第1筐体102の長辺102aと第2筐体104の長辺104aとを回動可能に連結する。第2ヒンジ116は、第2筐体104の長辺104bと第3筐体106の長辺106aとを回動可能に連結する。」
ウ 「【0021】
図3に示すように、第1筐体102はタッチパネルディスプレイ108を備える。第2筐体104はタッチパネルディスプレイ110を備える。第3筐体106はタッチパネルディスプレイ112を備える。それぞれのタッチパネルディスプレイ108、110、112は、第1ヒンジ114及び第2ヒンジ116が展開されることで一面に並ぶ。
【0022】
これより、携帯電子機器100では、一面に並んだ3つのタッチパネルディスプレイ108、110、112を1つの画面として使用することができ、大画面化を図ることができる。また携帯電子機器100は折畳状態を取ることが可能であり、持ち運びやすく使用しやすい構造にもなる。さらにこのような構造とすることで、後述するような機能を持たせることができ、高機能化をより後押しすることができる。」
エ 「【0037】
図5は、第1筐体102、第2筐体104、第3筐体106それぞれに制御部122a、122b、122cを設ける場合の概略構成を示すブロック図である。図5に示すように、第1筐体102、第2筐体104、第3筐体106それぞれにCPU(Central Processing Unit)を含んで構成される制御部122a、122b、122cを設けてもよい。これにより、携帯電子機器100の処理能力を向上することができる。
【0038】
また第1筐体102、第2筐体104、第3筐体106それぞれに、さらに、ROMやRAM、フラッシュメモリ等を含んで構成される記憶部124a、124b、124cを設けてもよい。これにより、各筐体の独立性を高めることができる。このようにすることで、各筐体ごとに1つの携帯電子機器として振舞うことが可能となるため、各筐体で個別にアプリケーション等の処理を完了することができる。」
オ 「【0047】
図7は、携帯電子機器100の展開状態における表示の切替を示す図である。図7(a)が3つのタッチパネルディスプレイ108、110、112それぞれに別々の表示を行わせた状態を示す図であり、図7(b)が3つのタッチパネルディスプレイ108、110、112それぞれに一体的な表示を行わせた状態を示す図である。
【0048】
図7(a)に示すように、制御部122は、異なる3つのアプリケーションを3つのタッチパネルディスプレイ108、110、112にそれぞれ表示させることができる。また図7(b)に示すように、制御部122は、1つのアプリケーションを3つのタッチパネルディスプレイ108、110、112を使って大きく表示することもできる。制御部122は、タッチパネルディスプレイ108、110、112への特定の入力操作に応じて、3つのタッチパネルディスプレイ108、110、112に別々の表示を行わせるか、一体的な表示を行わせるかを切り替える。」
カ 「【0062】
このように携帯電子機器100によれば、第1ヒンジ114、第2ヒンジ116によって連結される第1筐体102、第2筐体104、第3筐体106の形状に基いてアプリケーションを起動することができる。また携帯電子機器100によれば、紙芝居アプリケーション等の従来の携帯電子機器では端末構造上実行することができないアプリケーションについても実行することができる。したがって、さらなる高機能化を実現することができる。」
キ 図3
「
[図:0001412128000002.jpg]
」
ク 図7
「
[図:0001412128000003.jpg]
」
(2)引用発明2の認定
前記(1)の記載から、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明2を2a~2nに分説し、「分説2a」のようにして参照する。
「2a スマートフォン等の携帯電子機器であって、(【0001】)
2b 携帯電子機器100は、第1筐体102と、第2筐体104と、第3筐体106とを有し、(【0018】)
2c 第1ヒンジ114と第2ヒンジ116とを有し、(【0019】)
2d 第1ヒンジ114は、第1筐体102の長辺102aと第2筐体104の長辺104aとを回動可能に連結し、(【0019】)
2e 第2ヒンジ116は、第2筐体104の長辺104bと第3筐体106の長辺106aとを回動可能に連結し、(【0019】)
2f 第1筐体102はタッチパネルディスプレイ108を備え、第2筐体104はタッチパネルディスプレイ110を備え、第3筐体106はタッチパネルディスプレイ112を備え、(【0021】)
2g 第1筐体102、第2筐体104、第3筐体106それぞれに制御部122a、122b、122cを設け、(【0037】)
2h 第1筐体102、第2筐体104、第3筐体106それぞれに、さらに、ROMやRAM、フラッシュメモリ等を含んで構成される記憶部124a、124b、124cを設け、(【0038】)
2i このようにすることで、各筐体ごとに1つの携帯電子機器として振舞うことが可能となり、(【0038】)
2j 第1ヒンジ114、第2ヒンジ116によって連結される第1筐体102、第2筐体104、第3筐体106の形状に基いてアプリケーションを起動することができ、(【0062】)
2k 制御部122は、1つのアプリケーションを3つのタッチパネルディスプレイ108、110、112を使って大きく表示することもでき、(【0048】)
2l 一面に並んだ3つのタッチパネルディスプレイ108、110、112を1つの画面として使用することができ、大画面化を図ることができ、(【0022】)
2m 折畳状態を取ることが可能であり、持ち運びやすく使用しやすい構造にもなる、(【0022】)
2n 携帯電子機器。(【0001】)」
第6 当審の判断
1 本願発明と引用発明1との対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、以下の(1)~(4)のとおりである。
(1)「スーパースマートフォン」について
本願発明は「スーパースマートフォン」であり、引用発明1は「画像表示装置」(分説1i)であるから、両者は「装置」である点で共通する。
(2)「本体が2個を超え」について
引用発明1では、「表示部2を有する少なくとも3つの略板状の筐体4から構成され」(分説1b)るから、引用発明1の「表示部2を有する」「筐体4」は「2個を超え」る。
他方、引用発明1の「表示部2を有する」「筐体4」は「本体」ではない。
(3)「スライドでなく連結した画面を有する事」について
ア 引用発明1は、「筐体4と筐体4との間はヒンジ部6a、6bで連結され」(分説1c)、「複数の筐体4を略平面に配置することで、複数の表示部2が統合的(一体的)になって略同一面を形成し、大きな1つの平面状の表示部として用いることができ(分説1g)」、「この結果、表示部2が小さい場合であっても、表示部2を統合することで大きな画面として情報を表示させることができる」(分説1h)から、「連結した画面を有する」といえる。
イ 引用発明1は、「折り畳み方式の画像表示装置1であって」(分説1a)、「筐体4と筐体4との間はヒンジ部6a、6bで連結され」(分説1c)るから、その「連結」は「ヒンジ」によるものであって「スライド」ではない。
ウ 前記ア及びイによれば、本願発明と引用発明1とは「スライドでなく連結した画面を有する事」で共通する。
(4)前記(1)~(3)によれば、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「スライドでなく連結した画面を有する事を特徴とする装置。」
〈相違点1〉
本願発明は、「本体が2個を超え」るのに対して、引用発明1は、「表示部2を有する」「筐体4」が「2個を超え」るものの、該「表示部2を有する」「筐体4」が「本体」ではない点。
〈相違点2〉
装置(前記(1))について、本願発明は「スーパースマートフォン」であるのに対して、引用発明1は、「画像表示装置」であって、「スーパースマートフォン」ではない点。
2 本願発明と引用発明1との相違点についての判断
(1)相違点1及び2についての判断
引用発明1の「表示部2を有する」「筐体4」は、「一般的なスマートフォンと同等の寸法及び形態を有し」(分説1d)、「個々の筐体4を個々に機能させることも可能」(分説1e)であって、その「機能」には「スマートフォン」(分説1f)が想定されるから、引用発明1における「個々の筐体4」のそれぞれを「スマートフォン」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。ここで、「スーパー」の語義が「超…、上の、より優れた」(広辞苑)であることに鑑みれば、引用発明1において、「個々の筐体4」のそれぞれを「スマートフォン」としたものを「スーパースマートフォン」と称することは、任意である。
そして、引用発明1において、「個々の筐体4」のそれぞれを「スマートフォン」とした構成は、いずれの「スマートフォン」も個々に機能する「本体」であるといえる。
以上より、引用発明1において、「表示部2を有する」「筐体4」を「本体」とし、「スーパースマートフォン」と称することで、本願発明のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。
(2)効果についての判断
引用発明1において、「表示部2を有する」「筐体4」を「本体」としたものは、本願発明と同一の効果を奏することが明らかであるため、本願発明の効果は格別のものではない。
(3)請求人の主張についての判断
ア 請求人は、本願発明について、次の(ア)~(ウ)のように主張している。
(ア)審判請求書5頁8行~18行
「(3-1)補正の却下の決定における引用文献1は、1枚の有機ELにして複数の本体間に隙間を設けて結合し、且つ前記有機ELをヒンジとして兼用することは記載されている。
しかし本願発明請求項1に記載の、保護キャップを着脱自在に設ける構成は、開示も示唆もない。
即ち、引用文献1の接続部103は、[Fig2](a)を見れば明白なように、折り畳み部のフレキシブルデバイスを保護補強する単なる外装であり、本願発明の如くキャップ構造すなわち着脱自在で折り畳んだ時に保護することを意図する構成ではない。
そして、本願請求項1には、上記の如く顕著な効果もあり、引用文献1より容易に想到するものではない。」
(イ)審判請求書5頁19行~24行
「(3-2)補正の却下の決定の引用文献2は、本体を腕に設ける開示がある。
本願請求項2の如く、2つの裏面が向かい合った本体の裏面に長辺と並行で腕が通せるよう接続ゴムバンドを固定する構成を開示や示唆をするものではないし、周知な技術でもない。
そして、本発明では、掌側、手の甲側、及び側面から画面を見ることができるユニークな効果がある。」
(ウ)審判請求書5頁25行~6頁1行
「(3-3)令和4年12月2日付け拒絶理由通知書に記載された、理由に関しては令和5年2月13日付の意見書で述べた事項と同様に解消している。」
イ 前記アの請求人の主張について検討する。
(ア)前記ア(ア)の主張は、前記第2で却下された本件補正後の請求項1に記載された発明特定事項に基づくものであって、本願発明の発明特定事項に基づくものではないから、該主張は採用できない。
(イ)前記ア(イ)の主張は、前記第2で却下された本件補正後の請求項2に記載された発明特定事項に基づくものであって、本願発明の発明特定事項に基づくものではないから、該主張は採用できない。
(ウ)前記ア(ウ)において引用されている「令和5年2月13日付の意見書」の主張は、令和5年5月15日付けで却下された補正後の請求項に記載された発明特定事項に基づくものであって、本願発明の発明特定事項に基づくものではないから、該主張は採用できない。
(4)以上より、本願発明は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 本願発明と引用発明2との対比
本願発明と引用発明2とを対比すると、以下の(1)~(4)のとおりである。
(1)「スーパースマートフォン」について
本願発明は「スーパースマートフォン」であり、引用発明2は「携帯電子機器」(分説2n)であるから、両者は「電子機器」である点で共通する。
(2)「本体が2個を超え」について
引用発明2は、「第1筐体102と、第2筐体104と、第3筐体106とを有」(分説2b)するから、2個を超える「筐体」を有する。
また、引用発明2の「第1筐体102」、「第2筐体104」及び「第3筐体106」は、いずれもタッチパネルディスプレイを備える(分説2f)。
したがって、引用発明2の「タッチパネルディスプレイを備える」「筐体」は、「2個を超え」る。
他方、引用発明2の「タッチパネルディスプレイを備える」「筐体」は「本体」ではない。
(3)「スライドでなく連結した画面を有する事」について
ア 引用発明2は、「第1筐体102」、「第2筐体104」及び「第3筐体106」が「第1ヒンジ114、第2ヒンジ116によって連結され」(分説2j)、「連結される第1筐体102、第2筐体104、第3筐体106の形状に基いてアプリケーションを起動することができ」(分説2j)、「1つのアプリケーションを3つのタッチパネルディスプレイ108、110、112を使って大きく表示することもでき」(分説2k)るから、連結したタッチパネルディスプレイを有するといえる。
イ 引用発明2は、「第1筐体102、第2筐体104、第3筐体106」が「第1ヒンジ114、第2ヒンジ116によって連結される」(分説2j)から、その「連結」は「ヒンジ」によるものであって「スライド」ではない。
ウ 前記ア及びイによれば、引用発明2の「タッチパネルディスプレイ」は本願発明の「画面」に相当し、本願発明と引用発明2とは「スライドでなく連結した画面を有する事」で共通する。
(4)前記(1)~(3)によれば、本願発明と引用発明2との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「スライドでなく連結した画面を有する事を特徴とする電子機器。」
〈相違点3〉
本願発明は「本体が2個を超え」るのに対して、引用発明2は、「タッチパネルディスプレイを備える」「筐体」が「2個を超え」るものの、該「タッチパネルディスプレイを備える」「筐体」が「本体」ではない点。
〈相違点4〉
「電子機器」(前記(1))について、本願発明は「スーパースマートフォン」であるのに対して、引用発明2は、「携帯電子機器」であって、「スーパースマートフォン」ではない点。
4 本願発明と引用発明2との相違点についての判断
(1)相違点3及び4についての判断
引用発明2の「タッチパネルディスプレイを備える」「筐体」は、「各筐体毎に1つの携帯電子機器として振舞うことが可能」(分説2i)であり、引用発明2において、「携帯電子機器」は「スマートフォン」(分説2a)が想定されるから、引用発明2における「第1筐体」、「第2筐体」及び「第3筐体」のそれぞれを「スマートフォン」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。ここで、「スーパー」の語義が「超…、上の、より優れた」(広辞苑)であることに鑑みれば、引用発明2において、「第1筐体」、「第2筐体」及び「第3筐体」のそれぞれを「スマートフォン」としたものを「スーパースマートフォン」と称することは任意である。
そして、引用発明2において、「第1筐体」、「第2筐体」及び「第3筐体」のそれぞれを「スマートフォン」とした構成は、いずれの「スマートフォン」も個々に振る舞う「本体」であるといえる。
以上より、引用発明2において、「タッチパネルディスプレイを備える」「筐体」を「本体」とし、「スーパースマートフォン」と称することで、本願発明のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。
(3)効果についての判断
引用発明2において、「タッチパネルディスプレイを備える」「筐体」を「本体」としたものは、本願発明と同一の効果を奏することが明らかであるため、本願発明の効果は格別のものではない。
(4)請求人の主張についての判断
前記2(4)で示したとおり、請求人の主張は採用できない。
(5)以上より、本願発明は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
前記第6、2のとおり、本願発明は、当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
また、前記第6、4のとおり、本願発明は、当業者が引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-014207