特許拒絶査定不服審判
2023-012566
運行管理装置、運行管理システム、労務管理システム及び運行記録装置
- 審判番号
- 2023-012566
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-034410
- 請求日
- 2023年07月26日
- 審決日
- 2024年05月28日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】矢崎エナジーシステム株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人栄光事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 山本 信平
- 審判官 青木 良憲
- 分類
- P18 .121-WY (G08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-34410「運行管理装置、運行管理システム、労務管理システム及び運行記録装置」拒絶査定不服審判事件〔令和2年9月3日出願公開、特開2020-140356、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年2月27日の出願であって、その手続の経緯は、概略以下のとおりである。
令和 4年11月25日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 1月18日 :意見書、手続補正書の提出
同年 2月27日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年 4月 7日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月15日付け:補正の却下の決定、拒絶査定
同年 7月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年10月19日付け:前置報告書
同年11月30日 :上申書の提出
第2 令和5年6月15日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要
1 令和5年6月15日付けの補正の却下の決定の概要は以下のとおりである。
令和5年4月7日提出の手続補正書による補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるが、当該補正後の本願請求項1~6に係る発明は、引用文献1、3に記載された発明に基いてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、独立特許要件を満たさないから、令和5年4月7日付けの補正は却下すべきものである。
引用文献1:特開2005-32273号公報
引用文献2:自動運転日報、日本、株式会社オンラインコンサルタント、2015年6月15日、https://web.archive.org/web/20180615062254/https://doutaikanri.com/good_point/dayreport/
引用文献3:デジタコ支援ソフト「DTASS」でより高精度な運行管理を、運送業向け管理システム「Trasport」、日本、株式会社エコシステムズ、2016年3月4日、https://web.archive.org/web/20160304152621/https://www.transport-ecosystems.com/software.html
2 原査定(令和5年6月15日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりある。
本願請求項1~6に係る発明は、上記引用文献1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
第3 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」~「本願発明6」という。)は、令和5年7月26日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
乗務員が運転する第一車両の出庫から入庫までの一連の運行データを記録する運行管理装置であって、
前記第一車両に搭載され前記一連の運行データを収集する第一運行記録装置と、
第二車両に搭載された第二運行記録装置が収集した、前記第一車両の出庫から入庫までの間における、前記乗務員が運転する前記第二車両の運行データを、前記一連の運行データの一部として記録する記録部と、
前記第二車両の運行データを含む前記一連の運行データに基づいて、前記乗務員の労務時間を表す日報を生成する生成部と、を備え、
前記日報に含まれる複数の行のうちの第1の行には、前記第一車両の運行データのみから算出された前記乗務員が前記第一車両を運転していない時間帯から前記第二車両の運行データのみから得られた前記乗務員が前記第二車両を運転した時間帯を除いた時間帯が、横方向の時刻の推移に対して、当該時間帯の開始時刻から終了時刻まで横方向に延びる帯状の表示を配置することによって表示され、前記日報に含まれる複数の行のうちの前記第1の行とは異なる第2の行には、前記第一車両及び前記第二車両の各速度の推移が、横方向の時刻の推移に対して、速度の大きさを表す縦方向に延びる棒グラフを横方向に並べることによって表示される
ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項2】
前記乗務員に対応付けられた認証用端末の前記第二運行記録装置への接近又は前記乗務員を識別する情報の入力を検知することにより、前記乗務員を認証する認証部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の運行管理装置。
【請求項3】
前記認証部は、前記第二運行記録装置に設けられた、作業の開始を示す操作を受け付ける操作部が操作されたことを検知して、前記乗務員の認証を完了する
ことを特徴とする請求項2に記載の運行管理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の運行管理装置と、
前記第二運行記録装置と、を備え、
前記記録部は、前記第一運行記録装置と別体に設けられ、
前記第一運行記録装置は、前記第一車両の運行データを前記記録部に逐次送信し、前記第二運行記録装置は、前記第二車両の運行データを前記記録部に逐次送信する
ことを特徴とする運行管理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の運行管理システムを備え、
前記運行管理装置は、前記第二車両の運行データを含む前記一連の運行データに基づいて、前記乗務員の労務時間を表す日報を生成する前記生成部を備える
ことを特徴とする労務管理システム。
【請求項6】
第一車両に搭載され、乗務員が運転する前記第一車両の出庫から入庫までの一連の運行データを収集して記録する運行記録装置であって、
第二車両に搭載された第二運行記録装置が収集した、前記第一車両の出庫から入庫までの間における、前記乗務員が運転する前記第二車両の運行データを、前記第二運行記録装置から受信する受信部と、
受信した前記第二車両の運行データを、前記一連の運行データの一部として記録する記録部と、
前記第二車両の運行データを含む前記一連の運行データに基づいて、前記乗務員の労務時間を表す日報を生成する生成部と、を備え、
前記日報に含まれる複数の行のうちの第1の行には、前記第一車両の運行データのみから算出された前記乗務員が前記第一車両を運転していない時間帯から前記第二車両の運行データのみから得られた前記乗務員が前記第二車両を運転した時間帯を除いた時間帯が、横方向の時刻の推移に対して、当該時間帯の開始時刻から終了時刻まで横方向に延びる帯状の表示を配置することによって表示され、前記日報に含まれる複数の行のうちの前記第1の行とは異なる第2の行には、前記第一車両及び前記第二車両の各速度の推移が、横方向の時刻の推移に対して、速度の大きさを表す縦方向に延びる棒グラフを横方向に並べることによって表示される
ことを特徴とする運行記録装置。」
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、車両等の移動体の運行管理を行う装置に関する。」
イ 「【0013】
本発明は、搭乗者が行うべき作業を的確に指示することにより、搭乗者の作業忘れ、作業間違いを防止することを目的とする。」
ウ 「【発明の効果】
【0016】
以上述べた通り、本発明によれば、位置情報と作業指示を対応付け、その場所に近づくと、搭乗者に対しての作業指示を通知するという構成を取ることにより、搭乗者の作業忘れ、誤作業を防止することが可能となる。」
エ 「【0033】
図4は、本発明による車両運行管理システムの実施例の構成を示す図面である。この運行管理システムは、例えば事業所に設置された上位装置であるコンピュータと、1乃至は複数の車載端末装置とで構成されている。」
オ 「【0035】
上位装置において、411は車両データベースであり、各車両固有の情報(ナンバー、積載量等)や、車両毎の運行状況に関する情報が記憶されるものである。また、412は運転手データベースであり、事業所に所属する運転手毎の情報(氏名、運転免許証の種類等)とともに、運転手毎の作業内容(日時と作業内容など)を記憶するものである。これらのデータベースに記録された情報は、車両の運行管理や運転手の労務管理などに使用される。」
カ 「【0046】
車載端末装置52は、営業所(コンピュータ)から与えられるその日に行われるべき作業内容等を指示する作業指示情報を受け取るとともに、車両の運行中に発生する各種の作業報告情報を収集して、収集された作業報告情報をコンピュータに送る。コンピュータでは、車載端末装置から収集した各種の作業報告情報を車両毎、運転手毎に分類し、分類された情報に基づいて車両データベース、運転手データベースをそれぞれ更新し、必要に応じて作業日報等を出力する。
【0047】
この実施例の場合には、コンピュータから車載端末装置に対して作業指示情報を送る、あるいは車載端末装置から作業報告情報をコンピュータに送る方法が二通りある。
【0048】
一つ目の方法としては、運転手毎に配付されたICカードを介して行う方法である。もう一つの方法は、コンピュータと車載端末装置との間で無線通信を行う方法である。」
キ 「【0051】
無線によってコンピュータと車載端末装置との間の通信を行う場合には、コンピュータと車載端末装置との間で携帯電話、その他の無線通信手段を用いる。この場合には、車両にアンテナを設置する必要がある。そして、このような無線通信手段を用いて、コンピュータと端末装置との間の作業指示情報や作業報告情報の通信を行う。」
ク 「【0068】
車載端末装置の構成を示す情報が格納される欄には、それぞれの車両に搭載される車載端末装置の種別を示す情報が格納されている。例えば、車両ID番号が“1010”の車両には無線型の車載端末装置が搭載されており、営業所とは無線により各種情報の伝達を行うことがわかる。また、車両ID番号が“0101”の車両にはカード型の車載端末装置が搭載されており、コンピュータとの間の情報の伝達はICカードなどの媒体を用いて行う必要があることがわかる。コンピュータはこの車載端末装置の種別情報に基づいて、情報を伝達するための手段を選択する。」
ケ 「【0131】
・・・図16のように一人の運転手が複数の車両を乗り換える必要がある場合には、ICカードに複数車両に対応する車両ID番号と作業指示情報が格納されているが、この時には車載端末装置はそれぞれの車両ID番号を参照し、自身の車両ID番号と一致する車両ID番号がICカード内に存在するか否かを確認する。」
コ 「【0133】
一方、ICカードに格納された車両ID番号が自信の車両ID番号と一致した場合には、車載端末装置は車両のエンジンの始動を開始する。」
サ 「【0136】
一方、無線式車載端末装置172bを搭載した車両170bの場合には、ICカードで車載端末装置に渡されていた車両ID番号が、無線による作業指示情報に含まれてコンピュータから送信される。この場合には、車載端末装置は自身の車両ID番号と同じ車両ID番号を持つ情報を選択的に受信する。
【0137】
なお、無線式車載端末装置を用いる場合にも、車載端末装置にICカードを挿入するようにしている。
【0138】
また、作業指示情報や収集指示データを、ICカードを介してコンピュータから車載端末装置に送ることができる。」
シ 「【0159】
車両の運行が開始されると、車載端末装置によって各種の運行情報が収集され、これを基に作業報告情報が作成される。
【0160】
車載端末装置によって収集される運行情報としては、作業開始/終了時刻、車両走行(移動)距離、車両速度、走行ルートなどがあげられる。」
ス 「【0176】
このように収集された運行情報は、車載端末装置のメモリ領域内に設定された作業報告ファイル内に格納される。」
セ 「【0186】
図21の場合について説明する。例えば営業所の緯度がxx、経度がyyであったとする。図21の場合には、営業所を出発した後は、緯度・経度“xx、yy”と組となった収集指示データ211a、即ち車両速度は10分間隔、移動距離は15分間隔、車両位置は20分間隔で収集するように、収集指示データが車載端末装置に設定される。
【0187】
ここで、車両が緯度aa、経度bbの位置に到達した(あるいはその近辺に達した)場合、車載端末装置は収集指示の時間間隔を緯度・経度“aa、bb”と対となって格納されている収集指示データ211b、図21の場合には車両速度20分間隔、移動距離20分間隔、車両位置20分間隔での収集を指示するものを、それまで収集部に格納されていた収集指示データと入れ換える。」
ソ 「【0207】
車両が営業所に帰着した場合に、運転手がICカードを営業所のコンピュータに装着する。コンピュータはICカードの作業報告ファイルにアクセスし、記録されている収集データを読みだす。読みだされた収集データに基づいて、コンピュータは運転手データベース、車両データベースに記録されている作業内容をそれぞれ更新し、当日の作業内容が各データベースに反映されるようにする。」
タ 「【0218】
図27は、一日の勤務中に同じ運転手が車両を乗り換える場合について説明した図面である。ここでは、車両ID番号が1010の車両と0101の車両が利用される場合を説明している。【0219】
ICカード内には、既に述べた通り車両ID番号1010の車両と0101の車両とのそれぞれに対応した作業指示情報が、それぞれの車両ID番号と対応して格納されている。それぞれの車載端末装置は、ICカードが装着されたときに、ICカードに書き込まれた車両ID番号を読み取り、自身の車両IDと一致する車両ID番号がICカードに書き込まれているかどうかを判定する。自身の車両ID番号と一致する車両ID番号がICカードに書き込まれていた場合には、一致した車両ID番号とともにICカードに格納されている作業指示情報をICカードのメモリ領域から読み出し、作業指示ファイルに格納する。
【0220】
一方、作業報告ファイルはそれぞれの車両ID番号毎に設定されており、車両ID番号1010の車両による作業報告情報と、車両ID番号0101の車両による作業報告情報とは、それぞれの車両ID番号に対応付けられてICカードの作業報告ファイルに格納される。
【0221】
営業所に車両が帰着したときには、運転手がICカードをコンピュータに装着したときに、コンピュータはそれぞれの車両ID番号に対応する作業報告情報をICカードから読み出し、車両データベースのそれぞれの車両ID番号に対応する欄の作業内容を更新する。」
チ 「【0267】
エンジンを停止動作した後、車載端末装置からICカードか抜かれた場合には、車載端末装置はセンサ出力によりこれを検出し、またGPSにより車両が営業所に到着している場合には車両が“終業”の状態にあるものと判断する。
【0268】
“終業”の後に車載端末装置から排出されたICカードには、車両運行時に車載端末装置から収集された作業報告情報が格納されている。この情報が営業所コンピュータに送られ、コンピュータはこの送られてきた情報に基づいて車両データベース、運転手データベースの内容を更新する。」
ツ 「【0270】
図32は、運転手個人別および車両別に作成した業務日報の一例を示す図面である。ここで、図32aは個人別日報、図32bは車両別日報をそれぞれ示している。この実施例では、営業所のコンピュータに運転手データベース、車両データベースを作成しているため、個人別の作業内容や車両別の運行状況を記した個人別・車両別業務日報も非常に容易に出力することができる。
【0271】
個人別日報の場合には、各々の運転手が車両に乗務していた時間帯が、その運転手が乗務した車両毎に出力される。図32aを例に取ると、運転手“星野”は9時から11時まで大型車両である、車両ID番号“1010”の車両に乗務している。そして、12時から14時まで小型車両である車両ID番号“0101”の車両に、続いて15時から17時まで再び大型車両である車両ID番号が“1010”の車両に乗務している。
【0272】
このような個人日報を、その日乗務した運転手毎に出力することによって、各運転手の乗務の状況を確認できる。
【0273】
このように、個人別日報では、その運転手が乗務した車両と、乗務した時間帯が出力されるため、個人毎の勤務状況を容易に把握することができる。そして、個人別日報は前述の通り、運転手データベースに記録された情報に基づいて出力することができるため、日報の出力が非常に容易となる。」
テ 「【0277】
上記の運転手別、車両別日報を出力する場合には、営業所コンピュータに作業日報を出力しようとする運転手ID番号、あるいは車両ID番号を入力する。これに応じて、コンピュータは運転手データベース、車両データベースを検索し、必要とする作業報告情報等を日報の形式に編集し、印字出力する。」
ト 図4
「
[図:0001411102000001.jpg]
」
ナ 図5
「
[図:0001411102000002.jpg]
」
ニ 図16
「
[図:0001411102000003.jpg]
」
ヌ 図27
「
[図:0001411102000004.jpg]
」
ネ 図32
「
[図:0001411102000005.jpg]
」
(2)認定事項
ア 上記セ、ソ、ツ(特に【0270】、【0271】)の下線部の記載及び上記ネの図32(a)の個人別日報の図示内容からみて、「運転手“星野”が運転する車両ID番号“1010”の車両の営業所の出発から帰着までの運行状況を記録する営業所のコンピュータ51」が理解できる。
イ 上記オ、シ、ツ(特に【0270】、【0271】)の下線部の記載及び上記ネの図32(a)の個人別日報の図示内容からみて、「車両ID番号“1010”の車両に搭載され各種の運行情報を収集する車載端末装置」と、「車両ID番号“0101”の車両に搭載された車載端末装置が収集した、車両ID番号“1010”の車両の出発から帰着までの間における、運転手“星野”が運転する前記車両ID番号“0101”の車両の各種の運行情報を、運行情報の一部として記録する運転手データベース」が理解できる。
ウ 上記認定事項イを踏まえ、上記ツ(特に【0273】)、上記テの下線部の記載事項及び上記ネの図32(a)の個人別日報の図示内容からみて、「前記車両ID番号“0101”の車両の各種の運行情報を含む前記運行状況に基づいて、運転手“星野”の勤務状況を把握することができる個人別日報を編集、印字出力する営業所のコンピュータ51」が理解できる。
エ 上記シ、ス、セ、ソ、ツ(特に【0270】、【0271】)の下線部の記載及び上記ネの図32(a)の個人別日報の図示内容からみて、「車両ID番号“1010”の車両に搭載され、運転手“星野”が運転する前記車両ID番号“1010”の車両の営業所の出発から帰着までの運行情報を収集して格納する車載端末装置」が理解できる。
(3)引用発明
ア 上記(1)(2)ア~ウによれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「運転手“星野”が運転する車両ID番号“1010”の車両の営業所の出発から帰着までの運行状況を記録する営業所のコンピュータ51であって、
前記車両ID番号“1010”の車両に搭載され各種の運行情報を収集する車載端末装置と、
車両ID番号“0101”の車両に搭載された車載端末装置が収集した、前記車両ID番号“1010”の車両の営業所の出発から帰着までの間における、前記運転手“星野”が運転する前記車両ID番号“0101”の車両の各種の運行情報を、運行情報の一部として記録する運転手データベースと、
前記車両ID番号“0101”の車両の各種の運行情報を含む前記運行状況に基づいて、運転手“星野”の勤務状況を把握することができる個人別日報を編集、印字出力する営業所のコンピュータ51とを、備える、
営業所のコンピュータ51。」
イ 上記(1)(2)エ、イ、ウによれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明2」
という。)が記載されていると認められる。
「車両ID番号“1010”の車両に搭載され、運転手“星野”が運転する前記車両ID番号“1010”の車両の営業所の出発から帰着までの運行情報を収集して格納する車載端末装置と、
車両ID番号“0101”の車両に搭載された車載端末装置が収集した、車両ID番号“1010”の車両の営業所の出発から帰着までの間における、運転手“星野”が運転する前記車両ID番号“0101”の車両の各種の運行情報を、運行情報の一部として記録する運転手データベースと、
前記車両ID番号“0101”の車両の各種の運行情報を含む前記運行状況に基づいて、運転手“星野”の勤務状況を把握することができる個人別日報を編集、印字出力する営業所のコンピュータ51とを、備える、
車両ID番号“1010”の車両の車載端末装置と営業所のコンピュータ51。」
2 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア「スマートフォンと連動した自動運転日報機能
スマートフォンのGPS、Wifiの位置情報を利用して、自動的に運転日報を作成
・スマートフォンの位置情報記録機能を利用し、運転日報が自動的に記録されるので、ドライバーが戻ってきてから、事務員さんが手書きやExcelの日報を書く必要はありません。
・日報の記録は1年間システムで保存します。
・法律で定められた項目を記載できる形式です。(貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条にて定められている項目)」(1欄1~7行)
イ「ドライバーの休憩時間は足りていますか?要チェック
・ドライバーの休憩不足や睡眠不足が原因で、大変な事故を起こしてしまう…なんとしても避けたい事態
・Smart動態管理では、リアルタイムに休憩時間を集計できるので、適切に休憩が取られているか、事務所の管理者もすぐに把握できます。ドライバーも把握ができます。」(4欄)
ウ 「
[図:0001411102000006.jpg]
」(1欄)
3 引用文献3の記載事項
令和5年6月15日付けの補正の却下の決定で引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。
ア 「デジタコ支援ソフト「DTASS」でより高精度な運行管理を
「DTASS」とは、矢崎エナジーシステム(株)社製のデジタルタコグラフ(デジタコ)から速度・距離・急発進・位置情報などさまざまなデータ(※)を取り込み、解析できるソフトウェアです。単品でも扱えますが、「Transport」と組み合わせることでより管理業務の合理化が図れます。
※「DTASS」がデジタコから取得するデータ:速度・距離・時間・急発進・急加速・アイドリング・エンジン回転・バック・位置情報・温度など。機器構成により異なります。」(1欄)
イ 「「DTASS」の特徴
デジタコのデータをもとに乗務日報を生成
デジタコから取り込んだ各種データ(速度・位置情報・高速料金・燃料など)にもとづいて、乗務日報を自動的に生成します。」(2欄)
ウ 「
[図:0001411102000007.jpg]
」(2欄)
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明1とを対比すると、後者の「運転手“星野”」は前者の「乗務員」に相当し、以下同様に、「車両ID番号“1010”の車両」は「第一車両」に、「営業所の出発から帰着まで」は「出庫から入庫まで」に、「運行状況」は「一連の運行データ」に、「営業所のコンピュータ51」は「運行管理装置」に、「各種の運行情報」は「前記一連の運行データ」に、「車両ID番号“1010”の車両」に搭載された「車載端末装置」は「第一運行記録装置」に、「車両ID番号“0101”の車両」は「第二車両」に、「車両ID番号“0101”の車両に搭載された車載端末装置」は「第二車両に搭載された第二運行記録装置」に、「各種の運行情報」は「運行データ」に、「運転手データベース」は「記録部」に、「勤務状況を把握することができる」ことは「労務時間を表す」ことに、「個人別日報」は「日報」に、「編集、印字出力する営業所のコンピュータ51」は「生成する生成部」に、それぞれ相当する。
これらの相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
イ 後者の「運転手“星野”が運転する車両ID番号“1010”の車両の営業所の出発から帰着までの運行状況を記録する営業所のコンピュータ51」は、前者の「乗務員が運転する第一車両の出庫から入庫までの一連の運行データを記録する運行管理装置」に相当する。
ウ 後者の「前記車両ID番号“1010”の車両に搭載され各種の運行情報を収集する車載端末装置」は、前者の「前記第一車両に搭載され前記一連の運行データを収集する第一運行記録装置」に相当する。
エ 後者の「車両ID番号“0101”の車両に搭載された車載端末装置が収集した、前記車両ID番号“1010”の車両の営業所の出発から帰着までの間における、前記運転手“星野”が運転する前記車両ID番号“0101”の車両の各種の運行情報を、運行状況の一部として記録する運転手データベース」は、前者の「第二車両に搭載された第二運行記録装置が収集した、前記第一車両の出庫から入庫までの間における、前記乗務員が運転する前記第二車両の運行データを、前記一連の運行データの一部として記録する記録部」に相当する。
オ 後者の「前記車両ID番号“0101”の車両の各種の運行情報を含む前記運行状況に基づいて、運転手“星野”の勤務状況を把握することができる個人別日報を編集、印字出力する営業所のコンピュータ51」は、前者の「前記第二車両の運行データを含む前記一連の運行データに基づいて、前記乗務員の労務時間を表す日報を生成する生成部」に相当する。
カ そうすると、両者は、
「乗務員が運転する第一車両の出庫から入庫までの一連の運行データを記録する運行管理装置であって、
前記第一車両に搭載され前記一連の運行データを収集する第一運行記録装置と、
第二車両に搭載された第二運行記録装置が収集した、前記第一車両の出庫から入庫までの間における、前記乗務員が運転する前記第二車両の運行データを、前記一連の運行データの一部として記録する記録部と、
前記第二車両の運行データを含む前記一連の運行データに基づいて、前記乗務員の労務時間を表す日報を生成する生成部と、を備えた
運行管理装置。」
において、一致し、以下の点で相違すると認められる。
<相違点1>
本願発明1では、「前記日報に含まれる複数の行のうちの第1の行には、前記第一車両の運行データのみから算出された前記乗務員が前記第一車両を運転していない時間帯から前記第二車両の運行データのみから得られた前記乗務員が前記第二車両を運転した時間帯を除いた時間帯が、横方向の時刻の推移に対して、当該時間帯の開始時刻から終了時刻まで横方向に延びる帯状の表示を配置することによって表示され、前記日報に含まれる複数の行のうちの前記第1の行とは異なる第2の行には、前記第一車両及び前記第二車両の各速度の推移が、横方向の時刻の推移に対して、速度の大きさを表す縦方向に延びる棒グラフを横方向に並べることによって表示される」のに対して、引用発明1では、そのような特定はされていない点。
(2)判断
引用文献2には、貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条にて定められている項目を記載できる形式であるとして、休憩や睡眠をした場合にあっては、その地点の日時の記録を1年間保存しなければならないとされており、休憩や睡眠の地点や日時を日報として記録することが記載されている。
また、表に、日報として、休憩のトータル時間が記載されている。
しかしながら、引用文献2には、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項である「日報に含まれる複数の行のうちの第1の行には、前記第一車両の運行データのみから算出された前記乗務員が前記第一車両を運転していない時間帯から前記第二車両の運行データのみから得られた前記乗務員が前記第二車両を運転した時間帯を除いた時間帯が、横方向の時刻の推移に対して、当該時間帯の開始時刻から終了時刻まで横方向に延びる帯状の表示を配置することによって表示され、前記日報に含まれる複数の行のうちの前記第1の行とは異なる第2の行には、前記第一車両及び前記第二車両の各速度の推移が、横方向の時刻の推移に対して、速度の大きさを表す縦方向に延びる棒グラフを横方向に並べることによって表示される」ことは記載も示唆もされていない。
また、引用文献3には、運転日報として、運転手“安長”(乗務員)が車番0000002(第1車両)について、1つの行(第1の行)に、休憩の欄に横方向に延びる帯状の表示を配置することが可能とされ、別の行(前記第1の行とは異なる第2の行)には、前記第一車両の速度の推移が、横方向の時刻の推移に対して、速度の大きさを表す折れ線グラフによって表示されるものが記載されている。
しかしながら、引用文献3に記載された事項は、乗務員(安長)に関して、第二車両を含む複数の車両にまたがる記録をした日報ではないから、当然、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を記載又は示唆するものではない。
したがって、本願発明1は、引用発明1、引用文献2に記載された事項又は引用文献3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2~5について
本願発明2~5は、本願発明1の発明特定事項をすべて含み、更に限定を加えた発明であるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明1、引用文献2に記載された事項又は引用文献3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3 本願発明6について
(1)対比
ア 本願発明6と引用発明2とを対比すると、後者の「車両ID番号“1010”の車両」は前者の「第一車両」に相当し、以下同様に、「運転手“星野”」は「乗務員」に、「営業所の出発から帰着」は「出庫から入庫まで」に、「運行情報」は「一連の運行データ」又は「運行データ」に、「格納」は「記録」に、「車両ID番号“1010”の車両に搭載され」た「車載端末装置」は「運行記録装置」に、「車両ID番号“0101”の車両」は「第二車両」に、「車両ID番号“0101”の車両に搭載された車載端末装置」は「第二車両に搭載された第二運行記録装置」に、「運転手データベース」は「記録部」に、「運行状況」は「一連の運行データ」に、「勤務状況を把握することができる」ことは「労務時間を表す」ことに、「個人別日報」は「日報」に、「編集、印字出力する営業所のコンピュータ51」は「生成する生成部」に、それぞれ相当する。
これらの相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
イ 後者の「車両ID番号“1010”の車両に搭載され、運転手“星野”が運転する前記車両ID番号“1010”の車両の営業所の出発から帰着までの運行情報を収集して格納する車載端末装置」は、前者の「第一車両に搭載され、乗務員が運転する前記第一車両の出庫から入庫までの一連の運行データを収集して記録する運行記録装置」に相当する。
ウ 後者の「車両ID番号“0101”の車両に搭載された車載端末装置が収集した、車両ID番号“1010”の車両の営業所の出発から帰着までの間における、運転手“星野”が運転する前記車両ID番号“0101”の車両の各種の運行情報を、運行情報の一部として記録する運転手データベース」は運行情報を受信する必要があることは明らかであるから、前者の「第二車両に搭載された第二運行記録装置が収集した、前記第一車両の出庫から入庫までの間における、前記乗務員が運転する前記第二車両の運行データを、前記第二運行記録装置から受信する受信部」に相当する。
エ 後者の「前記車両ID番号“0101”の車両の各種の運行情報を、運行情報の一部として記録する運転手データベース」は、前者の「受信した前記第二車両の運行データを、前記一連の運行データの一部として記録する記録部」に相当する。
オ 後者の「前記車両ID番号“0101”の車両の各種の運行情報を含む前記運行状況に基づいて、運転手“星野”の勤務状況を把握することができる個人別日報を編集、印字出力する営業所のコンピュータ51」は、前者の「前記第二車両の運行データを含む前記一連の運行データに基づいて、前記乗務員の労務時間を表す日報を生成する生成部」に相当する。
カ 上記ウ~オを踏まえると、後者の「車両ID番号“0101”の車両に搭載された車載端末装置が収集した、車両ID番号“1010”の車両の営業所の出発から帰着までの間における、運転手“星野”が運転する前記車両ID番号“0101”の車両の各種の運行情報を、運行情報の一部として記録する運転手データベースと、前記車両ID番号“0101”の車両の各種の運行情報を含む前記運行状況に基づいて、運転手“星野”の勤務状況を把握することができる個人別日報を編集、印字出力する営業所のコンピュータ51とを、備える、車両ID番号“1010”の車両の車載端末装置と営業所のコンピュータ51」と、前者の「第二車両に搭載された第二運行記録装置が収集した、前記第一車両の出庫から入庫までの間における、前記乗務員が運転する前記第二車両の運行データを、前記第二運行記録装置から受信する受信部と、受信した前記第二車両の運行データを、前記一連の運行データの一部として記録する記録部と、前記第二車両の運行データを含む前記一連の運行データに基づいて、前記乗務員の労務時間を表す日報を生成する生成部と、を備え、」た「運行記録装置」とは、「第二車両に搭載された第二運行記録装置が収集した、前記第一車両の出庫から入庫までの間における、前記乗務員が運転する前記第二車両の運行データを、前記第二運行記録装置から受信する受信部と、受信した前記第二車両の運行データを、前記一連の運行データの一部として記録する記録部と、前記第二車両の運行データを含む前記一連の運行データに基づいて、前記乗務員の労務時間を表す日報を生成する生成部と」を有することにおいて共通する。
キ そうすると、両者は、
「第一車両に搭載され、乗務員が運転する前記第一車両の出庫から入庫までの一連の運行データを収集して記録する運行記録装置。」
において、一致し、以下の各点において相違すると認められる。
<相違点2>
本願発明6では、「運行記録装置」が、「第二車両に搭載された第二運行記録装置が収集した、前記第一車両の出庫から入庫までの間における、前記乗務員が運転する前記第二車両の運行データを、前記第二運行記録装置から受信する受信部と、受信した前記第二車両の運行データを、前記一連の運行データの一部として記録する記録部と、前記第二車両の運行データを含む前記一連の運行データに基づいて、前記乗務員の労務時間を表す日報を生成する生成部と、を備え、」ているのに対して、引用発明2では、営業所のコンピュータ51がそれに相当する事項を備える点(車両ID番号“0101”の車両に搭載された車載端末装置が収集した、車両ID番号“1010”の車両の営業所の出発から帰着までの間における、運転手“星野”が運転する前記車両ID番号“0101”の車両の各種の運行情報を、運行情報の一部として記録する運転手データベースと、前記車両ID番号“0101”の車両の各種の運行情報を含む前記運行状況に基づいて、運転手“星野”の勤務状況を把握することができる個人別日報を編集、印字出力する営業所のコンピュータ51とを、備える点。)。
<相違点3>
本願発明6では、「前記日報に含まれる複数の行のうちの第1の行には、前記第一車両の運行データのみから算出された前記乗務員が前記第一車両を運転していない時間帯から前記第二車両の運行データのみから得られた前記乗務員が前記第二車両を運転した時間帯を除いた時間帯が、横方向の時刻の推移に対して、当該時間帯の開始時刻から終了時刻まで横方向に延びる帯状の表示を配置することによって表示され、前記日報に含まれる複数の行のうちの前記第1の行とは異なる第2の行には、前記第一車両及び前記第二車両の各速度の推移が、横方向の時刻の推移に対して、速度の大きさを表す縦方向に延びる棒グラフを横方向に並べることによって表示される」のに対して、引用発明2では、そのような特定はされていない点。
(2)判断
事案に鑑みて、まず、相違点3から検討する。
相違点3は、本願発明1と引用発明1との対比における相違点1と同じである。
そうすると、相違点3に係る本願発明6の発明特定事項は、本願発明1と同じ理由により、当業者が、容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、本願発明6は、相違点2を検討するまでもなく、本願発明1と同じ理由により、引用発明2、引用文献2に記載された事項又は引用文献3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-012566