特許拒絶査定不服審判
2023-012465
太陽電池用熱交換器及びこの太陽電池用熱交換器を備えた太陽電池、並びに熱交換システム
- 審判番号
- 2023-012465
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-143282
- 請求日
- 2023年07月25日
- 審決日
- 2024年07月08日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社リビエラ
- 【請求人代理人】弁理士法人英知国際特許商標事務所
- 【請求人】今 喜代美
- 【請求人代理人】弁理士法人英知国際特許商標事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 波多江 進
- 審判官 野村 伸雄
- 審判官 松川 直樹
- 分類
- P18 .113-Z (H02S) / P18 .121-Z (H02S) / P18 .575-Z (H02S)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-143282「太陽電池用熱交換器及びこの太陽電池用熱交換器を備えた太陽電池、並びに熱交換システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 3月14日出願公開、特開2023- 36300〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年9月2日の出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 5年 2月21日付け:拒絶理由通知書
同年 3月29日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月13日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年7月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年7月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
流体流通路を備え、
前記流体流通路は、裏側板部と、前記裏側板部に対し厚さ方向に間隔を置いた表側板部を有し、
前記裏側板部と前記表側板部の間に熱媒体流体をとおすものであり、
前記熱媒体流体が、太陽電池セルの温度よりも低い温度のときに、前記熱媒体流体を流し、積雪があった場合、積雪の温度よりも高い温度の前記熱媒体流体を流すものであり、
前記裏側板部と前記表側板部は、太陽光を前記流体流通路に透過させ、前記裏側板部の裏側まで太陽光を照射する透光部を構成することを特徴とする太陽電池セルに対し後付けする太陽電池用熱交換器。」
(2) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の、令和5年3月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
流体流通路を備え、
前記流体流通路は、裏側板部と、前記裏側板部に対し厚さ方向に間隔を置いた表側板部を有し、
前記裏側板部と前記表側板部の間に熱媒流体をとおすものであり、
前記裏側板部と前記表側板部は、太陽光を前記流体流通路に透過させ、前記前記裏側板部の裏側まで太陽光を照射する透光部を構成することを特徴とする太陽電池用熱交換器。」
2 本件補正の適否
本件補正のうち請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「熱媒流体」との誤記を「熱媒体流体」と訂正する補正を行った上で、「熱媒体流体が、太陽電池セルの温度よりも低い温度のときに、前記熱媒体流体を流し、積雪があった場合、積雪の温度よりも高い温度の前記熱媒体流体を流すものであ[る]」と限定するとともに、「前記前記裏側板部」との誤記を「前記裏側板部」と訂正する補正を行い、「太陽電池用熱交換器」を「太陽電池セルに対し後付けする」と限定する補正を行うものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮及び同項第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載した事項により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1について
(ア) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に発行された特開2011-222824号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は、当合議体が付した。以下同じ。)。
a 「【0013】
(太陽電池モジュールの熱回収方法)
本願発明の太陽電池モジュールの排熱回収方法は、太陽エネルギーを受けた太陽電池モジュールからの放熱(排熱)を回収する方法において、太陽電池モジュールの表面に設けられた表面側通路(太陽電池モジュールの表面とほぼ同じ面積の面状通路)に液体を供給し、その液体を、表面側通路内を連続的又は間欠的に移動させ、この液体により太陽電池モジュールからの排熱を吸収して回収する方法である。
・・・略・・・
【0017】
(太陽電池モジュールの排熱回収装置)
本願発明の太陽電池モジュールの排熱回収装置は、太陽エネルギーを受けた太陽電池モジュールからの排熱を回収する回収装置において、透光カバーが太陽電池モジュールの表面から離してその表面に対向配置され、その表面と透光カバーカバーが密閉されて表面と透光カバーの間に液体を流すことのできる面状の表面側通路が形成され、表面側通路の一端側に液体供給口が、他端側に液体出口が形成されたものである。
・・・略・・・
【発明の効果】
【0021】
本願発明の太陽電池モジュールの排熱回収方法は次のような効果がある。
(1)太陽電池モジュールからの熱を、裏面よりも発熱割合が多く、これまで回収されずに排出されていた表面側から回収するため、回収効率が良い。
(2)太陽電池モジュールからの熱を、裏面側の吸熱装置によっても回収するので回収効率が良い。
(3)熱回収により発電効率低下の一因である太陽電池モジュールの高温化を防ぐことができるので、太陽電池モジュールで効率のよい発電ができる。ちなみに太陽電池モジュールは1度の温度上昇で0.5%の発電効率の低下が知られている。
(4)太陽電池モジュールで発電と温水の両方を得ることができる。
【0022】
本願発明の太陽電池モジュールの排熱回収装置は次のような効果がある。
(1)太陽電池モジュールの表面側に、表面と間隔をあけて透光カバーを設けて面状の表面側通路を設けたので、表面側通路の構成が簡潔であり、表面側通路を発熱割合の多い表面側に設けるので吸熱効率のよい排熱回収装置となる。
(2)透光カバーの上にそとカバーを設けて、透光カバーとの間に空気層を設けるので、透光カバーからの放熱が抑制される。
(3)太陽電池モジュールの裏面側に吸熱装置を設けて熱交換面積を拡大した場合は熱回収量が増大し、裏面側の昇温を防止できるので、昇温に起因する太陽電池モジュールの発電能力の低減を抑制できる。
(4)発電器と温水器の両方の機能を備えた太陽電池モジュールとなる。」
b 「【発明を実施するための形態】
【0024】
(太陽電池モジュールの排熱回収方法)
本願発明の太陽電池モジュールの排熱回収方法は、太陽エネルギーを受けた太陽電池モジュールから放出される排熱を回収する方法であり、太陽電池モジュールの表面側に設けた面状の表面側通路に液体を流し、この液体により太陽電池モジュールからの排熱を表面側で吸収して回収する方法である。通常、太陽電池モジュールは屋根の上に約30度の傾斜で太陽に向けて設置されているので、液体を太陽電池モジュールの下方から上方へ流すと表面通路内を流れる液体の流速、流量を調整し易くなるので、本願発明でも下方から上方へ流すのが望ましい。水道水の水圧では下方から上方へ送ることが難しい場合は、給水装置で加圧して供給するのがよい。表面側通路に供給する液体の流量を減少させることにより表面側通路から出る液体温度が高まり、流量を増加させることにより液体温度が低くなる。
・・・略・・・
【0028】
前記液体は水道水や井戸水等の水が適するが、北海道、東北、他の寒い地域等で使用する場合は、凍結し難い液体、例えば透明な不凍液(油)を使用することもでき、それ以外の透明な液体とすることもできる。供給する液体は表面側通路内或いは裏面の吸熱装置内に常時充満する量を供給することもできるが、それら内部の一部を充満できる量だけ供給することもできる。液体は表面側通路内や吸熱装置内を常時流れるようにすることも、一時的に滞留させて、所定温度まで昇温してから流す(間欠的に流す)ようにすることもできる。
【0029】
(太陽電池モジュール排熱回収装置)
本願発明の太陽電池モジュールの排熱回収装置(以下「排熱回収装置」という)について図面を参照して説明する。図1(a)、(b)では排熱回収装置1に給液側に圧力調整装置2を介して給液設備3が、熱湯排出側に貯留設備4が接続されている。
【0030】
排熱回収装置1は図1(b)に示すように透光性の透光カバー5が太陽電池モジュール6の表面に間隔をあけて対向配置され、透光カバー5の周囲と太陽電池モジュール6の周囲が密閉されて、透光カバー5と太陽電池モジュール6の表面の間に平面状の表面側空間(通路)7が形成されている。この表面側通路7内に給液設備(例えば水道)3から圧力調整装置2を通して液体(例えば水道水)を供給すると、その液体が表面側通路7内を通過する間に太陽電池モジュール6からの排熱で加熱されて(液体が排熱を吸収して)湯になり、その湯が表面側通路7から貯留設備4(例えば貯湯槽や温水利用設備等)に送出されるようにしてある。排熱回収装置1の背面には電源ターミナル8があり、そこから電源コード8aが引き出され、それに電源プラグ8bが接続されている。
【0031】
以下の説明においては、排熱回収装置1を30度前後傾斜させて建物の屋根などに設置した場合に、太陽電池モジュール6の太陽光受光面を表面、反対側を裏面とし、下側に位置する方を下方、上側に位置する方を上方として説明する。
【0032】
図1(a)、(b)に示す排熱回収装置1は、図2に示すように太陽電池モジュール6の下方に下延長板9が、上方部に上延長板10が連結されて延長板連結モジュール11が形成され、その延長板連結モジュール11の裏面側に断熱材12が、表面側に方形枠状のフレーム13が、フレーム13の上に透光カバー5が配置され、それらがケース14内に収納されている。下延長板9、上延長板10は接着剤や他の固定手段で固定することがきる。
【0033】
本願発明の太陽電池モジュール6には既存の又は新規のものを使用することができる。既存の太陽電池モジュール6は一般に太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する薄板状のセル15と、セル15の外周を囲った透明な合成樹脂16と、合成樹脂16の表面に設けた透明なガラス板(通常は白板ガラス板)17を備えている。
【0034】
下延長板9と上延長板10は樹脂製とか他の材質製とすることができる。下延長板9には供給孔9aが、上延長板10には送出孔10aが開口されている。この供給孔9aには図1に示すように給水管18が連結され、給水管18に圧力調整装置2、給液設備3が連結されており、給液設備3から供給される液体が圧力調整装置2で圧力調整されて給水管18に給水されて前記供給孔9aから前記表面側通路7内に送り込まれるようにしてある。前記送出孔10aには送出管19が連結されており、表面側通路7内で吸熱して昇温した液体がその送出管19から図1に示すように貯留設備4に送出されるようにしてある。
【0035】
前記フレーム13(図2)は延長板連結モジュール11の表面外周縁よりも多少小さいサイズの方形枠状であり、延長板連結モジュール11の表面外周縁上に配置固定されている。フレーム13は表面側通路7の高さ(太陽電池モジュール6表面の白色ガラス板とその上に重ねる透光カバー5の間の空間)を確保するためのものであり、その厚さは任意寸法とすることができるが0.5mm~5mm程度が好ましい。フレーム13の形状や寸法は延長板連結モジュール11の形状や大きさ等に対応させることができる。フレーム13は樹脂製のものが軽量化の面から好ましいが他の材質製とすることもできる。フレーム13は延長板連結モジュール11の表面に接着剤、ネジ、ボルトとナットといった各種固定手段で固定することがきる。
【0036】
前記透光カバー5は太陽光が透過可能な透明であり、前記フレーム13の上に配置されて接着剤で固定されている。透光カバー5は延長板連結モジュール11の表面全体を覆うことのできる大きさであり、厚さ3mm程度のものである。厚さはそれよりも厚くても薄くてもよく、例えば、5mm程度とすることもできる。透光カバー5には透明なガラス板、樹脂板、樹脂フィルムといった各種材質製のものを使用することができる。透光カバー5が変形しにくい剛性であれば表面側通路7の容積を一定に確保できるが、場合によっては可撓性のあるもの(フレキシブルなもの)であっても差し支えない。透光カバー5には強度の面から強化ガラスを用いることもできる。強化ガラスを用いると圧力調整装置(圧力調整バルブ)2で減圧することなく給液設備3から直接水を送り込むことができる。透光カバー5の厚さや形状は延長板連結モジュール11の形状や大きさ等に合わせて選定することができる。透光カバー5はフレーム13に接着剤、ネジ、ボルトとナットといった各種固定手段で固定することがきる。
【0037】
延長板連結モジュール11、フレーム13、透光カバー5の三者の外周はシーリング材とか他の防水材で防水処理されて密閉され、それら三者で囲われた内側に延長板連結モジュール11の表面と同サイズの面状の表面側通路7が形成されている。シーリング材としては例えばシリコンあるいはブチル系シーラントのような既存のものを用いることができる。
【0038】
前記表面側通路7内にはフレーム13の上に配置固定された透光カバー5の撓みを防止するための支持材20(図1)が上下方向に間隔をあけて2つ設けられている。図1の支持材20はブロック状であるが撓みを防止できれば他の形状、サイズとすることもできる。その材料は太陽光を透過可能な透明材であり、太陽電池モジュール6の表面(表面ガラス)と透光カバー5の間隔が均一となるようにフレーム13と同じ厚さ(高さ)にしてある。フレーム13及び支持材20は接着剤、ネジ、ボルトとナットといった各種固定手段により固定することができる。
【0039】
前記延長板連結モジュール11の裏面に設けた断熱材12は、太陽電池モジュール6の裏面側の熱が大気中に逃げる(排出される)のを防止するものである。断熱材12としては例えばスタイロフォームとか他の断熱材を用いることができる。断熱材12の下部には図1のように給水管18を配管できる下開口部12aが開口され、上部には図1のように送出管19を配管できる上開口部12bが設けられている。断熱材12のうち電源ターミナル8及び電源コード8aの位置する箇所には貫通孔21が開口されて、そこから電源ターミナル8、電源コード8aを外部に引き出すことができるようにしてある。
【0040】
前記ケース14は図2に示すように底面が底板22で閉塞され、上面は上外周縁23の内側が開口され、両側面と下端面の三方が周壁24a、24b、24cで閉塞され、上周面25が開口されて、前記底板22、上外周縁23、三方の周壁24a、24b、24cの内側に収容空間29を備えた上周開口の箱状であり、一方の側壁(図2では左側の側壁)24bに給水管貫通孔26と、送出管貫通孔27が開口され、底板22に太陽電池モジュール6の背面に設けられている電源ターミナル8及び電源コード8aをケース14の外側に出すための引出し口28が開口されている。前記収容空間29内には前記断熱材12、太陽電池モジュール6、フレーム13、透光カバー5を前記上周面25から差し込んで収容することができ、収容後に前記上周面25は閉塞されて、収容空間29内の断熱材12、太陽電池モジュール6、フレーム13、透光カバー5が脱落しないようにする。」
c 図1及び図2は、以下のとおりである。
「【図1】
[図:0001413949000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001413949000002.jpg]
」
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)で摘記した引用文献1の記載事項から、引用文献1の図1及び図2に係る太陽電池モジュールの排熱回収装置1として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(以下、引用発明の認定に用いた箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。
<引用発明>
「太陽電池モジュールの排熱回収装置1であって、(【0029】)
透光性の透光カバー5が太陽電池モジュール6の表面に間隔をあけて対向配置され、透光カバー5の周囲と太陽電池モジュール6の周囲が密閉されて、透光カバー5と太陽電池モジュール6の表面の間に平面状の表面側空間(通路)7が形成されており、(【0030】)
この表面側通路7内に給液設備(例えば水道)3から液体(例えば水道水)を供給すると、その液体が表面側通路7内を通過する間に太陽電池モジュール6からの排熱で加熱されて(液体が排熱を吸収して)湯になり、その湯が表面側通路7から貯留設備4(例えば貯湯槽や温水利用設備等)に送出されるようにしてあり、(【0030】)
太陽電池モジュール6の下方に下延長板9が、上方部に上延長板10が連結されて延長板連結モジュール11が形成され、その延長板連結モジュール11の裏面側に断熱材12が、表面側に方形枠状のフレーム13が、フレーム13の上に透光カバー5が配置され、(【0032】)
太陽電池モジュール6には既存のものを使用することができ、既存の太陽電池モジュール6は一般に太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する薄板状のセル15と、セル15の外周を囲った透明な合成樹脂16と、合成樹脂16の表面に設けた透明なガラス板(通常は白板ガラス板)17を備え、(【0033】)
前記透光カバー5は太陽光が透過可能な透明である、(【0036】)
排熱回収装置1。」
イ 引用文献2について
(ア) 引用文献2の記載事項
本審決で新たに引用され、本願の出願前に発行された特開2008-151490号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
a 「【0015】
図1は、本発明の太陽光発電集熱ユニットの基本構成を模式的に示す斜視図である。また、図2は、図1に示す太陽光発電集熱ユニットのA-A線における断面図である。本発明の太陽光発電集熱ユニット(以下、ハイブリッドパネルと称する)10は、色素増感型太陽電池11と、この色素増感型太陽電池11に重ねて設けられる集熱パネル12とから構成されている。このハイブリッドパネル10は、集熱パネル12の上面12aから太陽光が入射する。
・・・略・・・
【0048】
以上、詳細に説明したような構成の太陽光発電集熱ユニット(ハイブリッドパネル)10によれば、太陽光Nに含まれる赤外線域(熱線)の光によって集熱パネル12を流れる熱媒体15を加熱し、主に紫外線域の光Uによって色素増感型太陽電池11で光電変換により発電を行う。これにより、太陽光を幅広い波長域に渡って、有効に利用でき、熱、および電力を取り出すことができる。
【0049】
また、色素増感型太陽電池11に重ねて集熱パネル12を形成することによって、集熱パネル12を流れる熱媒体15に色素増感型太陽電池11の熱を吸収させ、色素増感型太陽電池11を、例えば60℃以下になるように冷却することができる。色素増感型太陽電池11は、高温になると電解液の劣化、蒸発、および発電効率の低下等が生じるが、色素増感型太陽電池11に接して集熱パネル12を形成することによって、こうした電解液の温度上昇を防止して、発電効率を良好に維持するとともに、色素増感型太陽電池11の劣化を防止することができる。」
b 「【0051】
以下、本発明の太陽光発電集熱ユニット(ハイブリッドパネル)の様々な実施形態を例示する。図3に示すハイブリッドパネル31のように、集熱パネル32の上に重ねて色素増感型太陽電池33を設置し、色素増感型太陽電池33を裏面側から集熱パネル31によって冷却しつつ、色素増感型太陽電池32を透過した赤外線によって集熱パネル31を加熱してもよい。また、図4に示すハイブリッドパネル35のように、色素増感型太陽電池36を挟んで上下それぞれに集熱パネル37を重ねて設置し、色素増感型太陽電池36の冷却能力を一層高めるとともに、熱の取り出しをより効率的に行なえる構成であっても良い。
【0052】
集熱パネルの構成例としては、図5に示すように、集熱パネル41の枠体42の面に沿って、一方の側面から他方の側面に向けて蛇腹状に媒体パイプ43を配管したり、図6に示すように、集熱パネル45の枠体46の面に沿って、複数に枝分かれした柵状に媒体パイプ47を配管し、傾斜させて配置した際に全体的に上から下、あるいは下から上に向けて熱媒体が流れるようにしてもよい。
【0053】
他にも、集熱パネルの構成として、集熱パネルの枠体の中に熱媒体を流す媒体パイプなど独立して設けずに、集熱パネルに重ねて設けられる色素増感型太陽電池の支持基板に直接、接するように熱媒体が流される構成であっても良い。例えば、図7に示すように、集熱パネル51の枠体を構成する上部プレート52と、色素増感型太陽電池53の電極を構成する支持基板54との間で熱媒体55の流路(媒体パイプ)56を形成してもよい。また、図8に示すように、集熱パネル61の枠体を構成する上部プレート62と下部プレート63との間で熱媒体64の流路(媒体パイプ)65を形成し、下部プレート63に対して、色素増感型太陽電池66の支持基板67が接する構成であってもよい。
【0054】
集熱パネルの内部を流れる熱媒体は、これを直接利用する形態、即ち、熱媒体として冷水を流し、熱交換によって温水としてそのまま利用する形態であっても良い。また、集熱パネルの内部を流れる熱媒体を一次熱媒体として閉鎖系の流路に流し、この一次熱媒体で吸収した熱を、外部に備えた別な熱交換器において二次熱媒体と熱交換を行なうといった、間接的な利用形態であっても良い。この二次熱媒体としては、熱貯蓄槽に貯めた水などが挙げられる。この際、場合によっては一次熱媒体から熱交換器を通じて水等の二次熱媒体に熱量を放出させるのではなく、建造物の床や壁等に循環式のパイプを敷設して、このパイプに通して床や壁を暖めても良い。熱の回収方法としては、自然回収とポンプを用いた強制回収の二通りがあるが、本発明では限定されるものではない。」
c 図1、図7及び図8は、以下のとおりである。
「
[図:0001413949000003.jpg]
」
「
[図:0001413949000004.jpg]
」
(イ) 引用文献2の記載事項から当業者が把握できる事項
引用文献2には、図1に係る太陽光発電集熱ユニット(ハイブリッドパネル)についての【0015】及び【0049】等の記載に続けて、「以下、本発明の太陽光発電集熱ユニット(ハイブリッドパネル)の様々な実施形態を例示する。」(【0051】)と記載され、さらに、様々な実施形態の一つとして、図7及び8に係るハイブリットパネルについて【0053】に記載されている。
そうすると、引用文献2の図1に係る太陽光発電集熱ユニットについての【0015】及び【0049】の記載は、図7及び8に示すハイブリットパネルにも該当することを、当業者は把握することができる。
(ウ) 引用文献2に記載された技術的事項の認定
前記(ア)で摘記した引用文献2の記載事項及び前記(イ)の引用文献2の記載事項から当業者が把握できる事項から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
<引用文献2に記載された技術的事項>
「色素増感型太陽電池と、この色素増感型太陽電池に重ねて設けられる集熱パネルとから構成された太陽光発電集熱ユニットにおいて、(【0015】)
色素増感型太陽電池に重ねて集熱パネルを形成することによって、集熱パネルを流れる熱媒体に色素増感型太陽電池の熱を吸収させ、色素増感型太陽電池を冷却し、(【0049】)
集熱パネルの内部を流れる熱媒体として冷水を流し、熱交換によって温水としてそのまま利用するに際し、(【0054】)
集熱パネル51の枠体を構成する上部プレート52と、色素増感型太陽電池53の電極を構成する支持基板54との間で熱媒体55の流路(媒体パイプ)56を形成してもよいこと、又は集熱パネル61の枠体を構成する上部プレート62と下部プレート63との間で熱媒体64の流路(媒体パイプ)65を形成し、下部プレート63に対して、色素増感型太陽電池66の支持基板67が接する構成であってもよいこと。(【0053】)」
(3) 本件補正発明と引用発明との対比・判断
ア 対比分析
(ア) 本件補正発明の「流体流通路を備え、前記流体流通路は、裏側板部と、前記裏側板部に対し厚さ方向に間隔を置いた表側板部を有し、前記裏側板部と前記表側板部の間に熱媒体流体をとおすものであり、」の発明特定事項について
引用発明の「透明なガラス板(通常は白板ガラス板)17」は、本願発明の「裏側板部」に、引用発明の「透光カバー5」は、本件補正発明の「表面板部」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「液体(例えば水道水)」は、「表面側通路7内を通過する間に太陽電池モジュール6からの排熱で加熱されて(液体が排熱を吸収して)湯になり、その湯が表面側通路7から貯留設備4(例えば貯湯槽や温水利用設備等)に送出される」ものであることから、本件補正発明の「熱媒体流体」に相当する。
そして、引用発明は、「太陽電池モジュール6」は、「セル15の外周を囲った透明な合成樹脂16」の「表面に」「透明なガラス板(通常は白板ガラス板)17」を「設け」たものであり、「透光カバー5と太陽電池モジュール6の表面の間に平面状の表面側空間(通路)7が形成され[る]」ものであるから、「透光カバー5」と「透明なガラス板(通常は白板ガラス板)17」の間に「表面側空間(通路)7」が形成されることが理解できる。さらに、引用発明は、「この表面側通路7内に給液設備(例えば水道)3から液体(例えば水道水)を供給する」ものであるから、引用発明の「透明なガラス板(通常は白板ガラス板)17」、「透光カバー5」及び「表面側空間(通路)7」は、本件補正発明の「裏側板部と、前記裏側板部に対し厚さ方向に間隔を置いた表側板部を有し、前記裏側板部と前記表側板部の間に熱媒体流体をとおす」「流体流通路」に相当する。
したがって、引用発明は、上記発明特定事項を満たす。
(イ) 本件補正発明の「前記熱媒体流体が、太陽電池セルの温度よりも低い温度のときに、前記熱媒体流体を流し、積雪があった場合、積雪の温度よりも高い温度の前記熱媒体流体を流すものであり、」の発明特定事項について
引用発明の「液体(例えば水道水)」は、「表面側通路7内を通過する間に太陽電池モジュール6からの排熱で加熱されて(液体が排熱を吸収して)湯になり、その湯が表面側通路7から貯留設備4(例えば貯湯槽や温水利用設備等)に送出される」ものであることから、液体(例えば水道水)の温度が、太陽電池モジュール6よりも低い温度であることは当業者には自明である。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記熱媒体流体が、太陽電池セルの温度よりも低い温度のときに、前記熱媒体流体を流」「すものであ[る]」点で共通する。
(ウ) 本件補正発明の「前記裏側板部と前記表側板部は、太陽光を前記流体流通路に透過させ、前記裏側板部の裏側まで太陽光を照射する透光部を構成する」の発明特定事項について
引用発明の「透光性の透光カバー5」及び「透明なガラス板(通常は白板ガラス板)17」は、薄板状のセル15が太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することからして、太陽光を表面側空間(通路)に透過させ、透明なガラス板(通常は白板ガラス板)17の裏側に位置するセル15まで太陽エネルギーを照射する透光部を構成するといえる。
したがって、引用発明は、上記発明特定事項を満たす。
(エ) 本件補正発明の「太陽電池セルに対し後付けする太陽電池用熱交換器。」の発明特定事項について
まず、「熱交換」という用語は、流体間の熱の交換を意味することが一般的であるところ、本願明細書の【0001】の、「本発明は、太陽電池セルと熱交換を行う太陽電池用熱交換器、及びこの太陽電池用熱交換器を備えた太陽電池、並びに熱交換システムに関するものである。」との記載からみて、本件補正発明の「太陽電池用熱交換器」における「熱交換」は、太陽電池セルと熱交換を行うことを意味すると解するのが相当である。なお、本願明細書には、流体間の熱の交換という通常の意味での「熱交換器24」が記載されているが、熱交換器24は熱交換流路3が具備するものであり(【0025】)、熱交換流路3は太陽電池用熱交換器2とともに熱交換システムAが具備するものであり(【請求項7】、【0016】)、太陽電池用熱交換器2を構成するものではない。このことからも、本件補正発明の「太陽電池用熱交換器」における「熱交換」は、流体間で熱の交換を行うこと意味するのではなく、太陽電池セルと熱交換を行うことを意味すると解することを首肯できる。
一方、引用発明の「液体(例えば水道水)」は、「表面側通路7内を通過する間に太陽電池モジュール6からの排熱で加熱されて(液体が排熱を吸収して)湯になり、その湯が表面側通路7から貯留設備4(例えば貯湯槽や温水利用設備等)に送出される」ものであることから、「液体(例えば水道水)」は、「太陽電池モジュール6」と熱交換をしているといえる。
そうすると、本件補正発明の「流体流通路」に相当する、引用発明の「透明なガラス板(通常は白板ガラス板)17」、「表面側空間(通路)7」及び「透光カバー5」(前記(ア))を備える構成は、本件補正発明の「太陽電池用熱交換器」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「太陽電池用熱交換器」の発明である点で共通する。
イ 一致点及び相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(ア) 一致点
【一致点】
「流体流通路を備え、
前記流体流通路は、裏側板部と、前記裏側板部に対し厚さ方向に間隔を置いた表側板部を有し、
前記裏側板部と前記表側板部の間に熱媒体流体をとおすものであり、
前記熱媒体流体が、太陽電池セルの温度よりも低い温度のときに、前記熱媒体流体を流すものであり、
前記裏側板部と前記表側板部は、太陽光を前記流体流通路に透過させ、前記裏側板部の裏側まで太陽光を照射する透光部を構成する太陽電池用熱交換器。」
(イ) 相違点
【相違点1】
本件補正発明は、「積雪があった場合、積雪の温度よりも高い温度の前記熱媒体流体を流すものであ」るのに対し、引用発明は、液体が表面側通路7内を通過する間に太陽電池モジュール6からの排熱で加熱されて(液体が排熱を吸収して)湯になり、その湯が表面側通路7から貯留設備4(例えば貯湯槽や温水利用設備等)に送出されるようにしてあるものの、積雪があった場合に流す液体の温度は明らかでない点。
【相違点2】
太陽電池用熱交換器について、本件補正発明は、「太陽電池セルに対し後付けする」ものであるのに対し、引用発明は、透光カバー5と太陽電池モジュール6の表面の間に平面状の表面側空間(通路)7が形成されるものであり、後付けするものかどうか明らかでない点。
ウ 相違点に対する判断
以下、上記相違点について検討する。
(ア) 相違点1について
a 引用発明は、「太陽電池モジュールの排熱回収装置1」であるところ、太陽電池モジュールに積雪があれば、発電効率が落ちることは技術常識である。そうすると、引用発明においても、太陽電池モジュール6から積雪を除くという自明な課題を有することを、当業者は認識できるといえる
b ここで、太陽電池に関する技術において、太陽電池パネルに積雪が発生した場合、太陽電池パネルを冷却する又は温度上昇を抑えるための熱媒体を流す配管に高温の熱媒体を流して融雪させることは、周知技術(必要ならば、特開2014-25648号公報(特に、【0057】の「しかも、化粧カバー10を取り付けた状態では、カバー本体25と太陽電池パネル1とが伝熱可能となるので、熱媒配管26により間カバー21(化粧カバー10)の面積以上の集熱が可能になると共に、太陽電池パネル1を冷却することができ、熱媒配管26の集熱効率と太陽電池パネル1の発電効率の両方を向上させることができる。冬季に寒冷地等で太陽電池パネル1に積雪が発生した場合、熱媒配管26に高温の熱媒体を流すことで、カバー本体25を介して太陽電池パネル1に伝熱して融雪することもできる。」)及び本願明細書【0003】に記載された先行技術文献である特開平8-94189号公報(特に、【0004】の「太陽電池の温度上昇を抑え変換効率を高く維持しつつ同時に熱エネルギーを収集し、積雪があった場合にはこれを融解除去するための安価で設置工事や保守管理が容易な屋根融雪兼用太陽エネルギー収集装置を提案することを目的とするものである。」、【0005】の「太陽電池から空気を介して集(放)熱管へと効率良く熱伝導が成される。又、積雪があった場合には集(放)熱管に温水を循環させて太陽電池モジュールを加温することにより融雪することができる。」、【0016】の「太陽電池5及び縦、横モジュールフレーム6、7の熱で暖まり浮力を生じた空間24内の一部の空気は、太陽電池5の裏面に沿って上方へ移動しつつ集(放)熱管3内を循環する熱媒体に熱を奪われ冷やされて重くなり屋根下地17の表面に沿って下方へ移動するため、空間24内には空気の自然対流が生じる。この空気の自然対流により空間24内の熱移動が円滑に進行すると共に、太陽電池5の裏面並びに集(放)熱管3表面の熱伝導抵抗が小さくなるために、太陽電池5から空気を介して集(放)熱管3へと効率よく熱伝導が成される。」及び【0017】の「ヒートポンプ20の切り替え運転により低温蓄熱槽18内の熱媒体を加熱し、帯熱した熱媒体を集(放)熱管3に循環させて太陽電池モジュール4を裏面から暖める。このとき高温蓄熱槽19へは補助ボイラー22から熱供給がなされている。太陽電池5の表面はガラスで出来ていて摩擦力が極めて小さいために、太陽電池5表面を融雪が流れ始めると積雪は滑落し、僅かなエネルギーで素早い雪降ろしが可能となる。」)を参照されたい。)である。
c そして、aの自明な課題を認識した当業者は、当該自明な課題を解決するために引用発明において上記周知技術を採用する動機があるといえるから、引用発明に上記周知技術を採用し、太陽電池モジュール6に積雪が発生した場合、引用発明の「表面側空間(通路)7」に「供給する」「液体」を、高温(当然に、積雪の温度よりも高い温度である)の熱媒体として融雪させるようにすること、すなわち、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
(イ) 相違点2について
a(a) 引用発明は、「透光性の透光カバー5が太陽電池モジュール6の表面に間隔をあけて対向配置され、透光カバー5の周囲と太陽電池モジュール6の周囲が密閉されて、透光カバー5と太陽電池モジュール6の表面の間に平面状の表面側空間(通路)7が形成され」「この表面側通路7内に給液設備(例えば水道)3から液体(例えば水道水)を供給する」ものである。
(b) 一方、引用文献2に記載された技術的事項は、「色素増感型太陽電池と、この色素増感型太陽電池に重ねて設けられる集熱パネルとから構成された太陽光発電集熱ユニットにおいて、色素増感型太陽電池11に重ねて集熱パネル12を形成することによって、集熱パネル12を流れる熱媒体15に色素増感型太陽電池11の熱を吸収させ、色素増感型太陽電池11を冷却し、集熱パネルの内部を流れる熱媒体として冷水を流し、熱交換によって温水としてそのまま利用するに際し、」「集熱パネル51の枠体を構成する上部プレート52と、色素増感型太陽電池53の電極を構成する支持基板54との間で熱媒体55の流路(媒体パイプ)56を形成してもよいこと」の代替手段として、「集熱パネル61の枠体を構成する上部プレート62と下部プレート63との間で熱媒体64の流路(媒体パイプ)65を形成し、下部プレート63に対して、色素増感型太陽電池66の支持基板67が接する構成であってもよいこと」が開示されている。
(c) ここで、引用発明と引用文献2に記載された技術的事項はいずれも、太陽電池モジュールの表面の流路に液体を供給し、太陽電池からの熱で加熱された液体を温水として利用するものであることから、引用発明の表面側空間(通路)7を形成する太陽電池モジュール6の表面を構成するガラス板(通常は白板ガラス板)17と、引用文献2に記載された技術的事項の熱媒体55の流路(媒体パイプ)56を形成する支持基板54とは作用、機能が一致する。
そして、上記引用文献2に記載された技術的事項においては、支持基板54を用いて流路(媒体パイプ)56を形成することの代替手段として、下部プレート63を用いて流路(媒体パイプ)65を形成することを開示するものであるから、引用発明においてこれを採用して、ガラス板(通常は白板ガラス板)17により表面側空間(通路)7を形成することに代えて、「下部プレート」を用いて表面側空間(通路)7を形成すること、すなわち、「下部プレート」を設けて、透光性の透光カバー5を「下部プレート」の表面に対向配置し、さらに、透光カバー5と「下部プレート」との間に平面状の表面側空間(通路)7が形成されるようにし、この表面側通路7内に液体(例えば水道水)を供給するようにし、透光カバー5と「下部プレート」が、「下部プレート」の裏側まで太陽光を照射する透光部を構成するようになすことは、当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎない。
b そして、上記a(c)のように引用発明に引用文献2に記載された技術的事項に係る下部プレートが採用された構成(以下「容易想到構成」という。)は、以下のとおり、本件補正発明の構成に至っているといえる。
(a) 一致点が維持されることについて
まず、引用発明の「透明なガラス板(通常は白板ガラス板)17」に代わり、容易想到構成の「下部プレート」が、本件補正発明の「裏側板部」に相当することとなる。そして、容易想到構成では、透光性の透光カバー5が下部プレートに間隔をあけて対向配置され、透光カバー5の周囲と下部プレートの周囲が密閉されて、透光カバー5と下部プレートの間に平面状の表面側空間(通路)7が形成されるものとなり、透光カバー5、平面状の表面側空間(通路)7及び下部プレートを備える構成が太陽電池用熱交換器に相当することとなるから、容易想到構成においても前記イ(ア)の一致点は維持されることとなる。
(b) 相違点2に係る本件補正発明の構成に至っていることについて
i) 本件補正発明の「太陽電池用熱交換器」が「太陽電池セルに対し後付けする」ものであることは、「太陽電池用熱交換器」の物の構成としては、太陽電池用熱交換器が太陽電池セルに対し後付けすることが可能であれば足りる。言い換えれば、「太陽電池用熱交換器」が「太陽電池セルに対し後付けする」ものであるとの発明特定事項は、太陽電池1と太陽電池用熱交換器2とが独立して構成され得、太陽電池1に、太陽電池用熱交換器2を後付けすることが可能である構成であれば足りる。
そして、容易想到構成の透光カバー5、平面状の表面側空間(通路)7及び下部プレートを備える太陽電池用熱交換器に相当する構成は、下部プレートを備えることによって、太陽電池モジュールとは独立して構成され得、太陽電池モジュール6に対し後付けすることが可能であるものとなることから、相違点2に係る本件補正発明の構成に至っているといえる。
ii) なお、仮に、本件補正発明の「太陽電池セルに対し後付けする」ことが、本願明細書【0035】に記載されているように「既設の」「太陽電池1に対し後付けする」ことを意味していたとしても、以下で示すとおり、容易想到構成は相違点2に係る本件補正発明の構成に至っているといえる。
すなわち、本願の明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、本件補正発明の「太陽電池用熱交換器」が、太陽電池セルに対し後付けするに際し、その太陽電池セルが「既設」のものであることに特に適した形状、構造、組成等を有する太陽電池用熱交換器を意味しているとは認められない。
したがって、太陽電池セルに対し後付けするに際し、その太陽電池セルが「既設」のものであるとの用途限定は、「太陽電池用熱交換器」を特定するための意味を有しているとは解されない。
したがって、前記i)と同様の理由により、容易想到構成は、既設の太陽電池モジュール6に対し後付けすることが可能といえ、相違点2に係る本件補正発明の構成に至っているといえる。
c 以上からすれば、当業者は、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用することにより、相違点2に係る本件補正発明の構成に容易に至るといえる。
(ウ) 総合検討
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の作用効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 審判請求人の主張について
(ア) 審判請求人の主張内容
審判請求人は、以下の旨を主張している。
a 引用発明は、太陽電池モジュールの透明ガラス板17を表面側流路の一部に利用しているのに、透明ガラス板17の上に、「裏側板部」を設ける動機付けが全くない。さらに、引用発明の透明ガラス板17のさらに上に「裏側板部」を設けるとは、冷却効率が悪くなる。(審判請求書5頁下から11行~6頁9行)
b 一般的な太陽電池モジュールに、引用発明の排熱回収装置を後付けすることはできない(審判請求書6頁10行~7頁下から11行)。
c 本件補正発明は、太陽電池セルに積雪が無く「前記熱媒体流体が、太陽電池セルの温度よりも高いとき」は熱媒体流体を流さず、積雪がある場合は、融雪させる為に、熱媒体流体が流され、積雪が溶け太陽電池セルに陽光が届くことで、発電効率が向上するという主目的があり、副次的に、特に夏場で得られる二次熱媒体流体を温水として用いるという目的の発明である。しかしながら、引用発明は太陽電池モジュールからの排熱の回収を主とし、発電効率に注目した発明ではないことから、引用発明の目的と本件補正発明の目的とは異なっている。(審判請求書7頁下から10行~11頁5行)
(イ) 審判請求人の主張についての検討
上記主張は、以下に説示するとおり、上記ウ(ア)~(ウ)の判断を左右するものではない。
a 引用発明に引用文献2に記載された技術的事項の下部プレートを適用することは当業者が容易になし得たことであることについては、上記ウ(イ)aで説示したとおりである。
b 審決で説示しているのは、引用発明の排熱回収装置自体を後付けすることではなく、容易想到構成の透光カバー5、平面状の表面側空間(通路)7及び下部プレートは、既存の太陽電池モジュール6に対し後付けすることが可能というものであるから、審判請求人の主張は前記ウ(イ)の判断を左右するものではない。
c 太陽電池セルに積雪が無く「前記熱媒体流体が、太陽電池セルの温度よりも高いとき」は熱媒体流体を流さないことは、本件補正発明の発明特定事項ではなく、本願の明細書にも記載がないから、審判請求人の主張は請求項1又は明細書の記載に基づく主張ではない。また、前記ア(イ)でも説示したように、引用発明の「液体(例えば水道水)」は、「表面側通路7内を通過する間に太陽電池モジュール6からの排熱で加熱されて(液体が排熱を吸収して)湯になり、その湯が表面側通路7から貯留設備4(例えば貯湯槽や温水利用設備等)に送出される」ものであることから、液体(例えば水道水)の温度が太陽電池モジュール6よりも低い温度であることは当業者には自明であるし、また、液体(例えば水道水)の温度を太陽電池モジュール6よりも低い温度とすることは当然の設計事項である(さもなければ、排熱を回収することはできない。)。
また、引用文献1の【0021】には、「熱回収により発電効率低下の一因である太陽電池モジュールの高温化を防ぐことができるので、太陽電池モジュールで効率のよい発電ができる。ちなみに太陽電池モジュールは1度の温度上昇で0.5%の発電効率の低下が知られている。」と記載されており、引用発明においても発電効率が考慮されているから、審判請求人の主張は引用文献1の内容を正解しないものである。
よって、審判請求人の上記主張は、採用することができない。
オ 小括
以上によれば、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正の却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~7に係る発明は、令和5年3月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、当該請求項1の記載は前記第2の[理由]1(2)に示したとおりである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の本願発明に対する拒絶の理由の概略は、以下の理由を含むものである。
理由1.(新規性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.(進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2011-222824号公報
3 引用文献の記載事項及び引用発明の認定
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)イで記載したとおりである。
4 本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]1(1)に記載した本件補正発明から、「熱媒体流体が、太陽電池セルの温度よりも低い温度のときに、前記熱媒体流体を流し、積雪があった場合、積雪の温度よりも高い温度の前記熱媒体流体を流すものであ[る]」との限定及び「太陽電池セルに対し後付けする」との限定を削除し、さらに、本願発明は、本件補正発明の「熱媒体流体」及び「前記裏側板部」を、「熱媒流体」及び「前記前記裏側板部」としたものである。
そうすると、本願発明は、第2の2(3)イ(イ)の相違点1及び2に係る本件補正発明の構成を削除したものに相当するから、本願発明と引用発明との間に相違点はなく、引用発明は本願発明の構成をすべて備えている。
よって、本願発明は引用発明である。
また、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえる。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、本願発明は、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-012465