特許拒絶査定不服審判
2023-009475
映像データをデコードするための方法、電子デバイス、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体およびコンピュータプログラム
- 審判番号
- 2023-009475
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-540678
- 請求日
- 2023年06月07日
- 審決日
- 2024年04月23日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ベイジン ダジア インターネット インフォメーション テクノロジー カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】宮田 英毅
- 【請求人代理人】酒井 宏明
- 審判長/審判官
- 審判長 畑中 高行
- 審判官 川崎 優
- 審判官 高橋 宣博
- 分類
- P18 .113-Z (H04N) / P18 .121-Z (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第4項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-540678「映像データをデコードするための方法、電子デバイス、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体およびコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 7月 8日国際公開、WO2021/138354、令和 4年12月22日国内公表、特表2022-553444〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)12月29日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2019年12月30日 米国(US))とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 4年 8月31日 :手続補正書の提出
同年11月16日付け :拒絶理由通知書
令和 5年 1月20日 :手続補正書および意見書の提出
同年 1月31日付け :拒絶査定
同年 6月 7日 :審判請求書および手続補正書の提出
同年 6月30日付け :前置報告書
同年 8月29日 :上申書の提出
第2 令和5年6月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年6月7日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
令和5年6月7日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、令和5年1月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1から19を、本件補正による特許請求の範囲の請求項1から19に補正するものであって、本件補正前の請求項1を本件補正後の請求項1とする以下の補正を含むものである(下線は本件補正により補正された箇所を示す。また、記号A~Gは分説するために審判合議体が付したものであり、記号A~Gを用いて、以下、「構成A」~「構成G」と称する。)。
ア (本件補正前の請求項1)
「【請求項1】
A 映像データをデコードするための方法であって、
B ビットストリームから、映像フレーム内の複数のピクセルのための複数の輝度サンプルを取得し、前記複数のピクセルは、符号化ブロックに属するとともに前記符号化ブロックの内部に位置付けられる境界ピクセルを含み、前記境界ピクセルは前記符号化ブロックの境界に直接に隣ることと、
C 前記境界ピクセルの1つまたは複数の隣接ピクセルが利用できないことを決定し、前記1つまたは複数の隣接ピクセルの各ピクセルが前記符号化ブロックの外部にあることと、
D’ 前記境界ピクセルに対応する相応の輝度サンプルを、前記1つまたは複数の隣接ピクセルの各ピクセルに対応する輝度サンプルに割り当てることと、
E 事前定義された輝度補間スキームに従って少なくとも前記1つまたは複数の隣接ピクセル及び前記境界ピクセルの輝度サンプルに基づいて、境界輝度サンプルを決定することと、
F 線形マッピングモデルに従って前記境界輝度サンプルから境界彩度サンプルを決定することと、
を含み、
G 前記境界は、第1の境界と、前記第1の境界に直交する第2の境界とのうちの少なくとも1つを含む、
A 前記映像データをデコードするための方法。」
イ (本件補正後の請求項1)
「【請求項1】
A 映像データをデコードするための方法であって、
B ビットストリームから、映像フレーム内の複数のピクセルのための複数の輝度サンプルを取得し、前記複数のピクセルは、符号化ブロックに属するとともに前記符号化ブロックの内部に位置付けられる境界ピクセルを含み、前記境界ピクセルは前記符号化ブロックの境界に直接に隣ることと、
C 前記境界ピクセルの1つまたは複数の隣接ピクセルが利用できないことを決定し、前記1つまたは複数の隣接ピクセルの各ピクセルが前記符号化ブロックの外部にあることと、
D 前記境界ピクセルのそれぞれに対応する相応の輝度サンプルを、前記境界ピクセルのそれぞれの1つが利用可能であると決定することなく、前記1つまたは複数の隣接ピクセルの各ピクセルに対応する輝度サンプルに割り当てることと、
E 事前定義された輝度補間スキームに従って少なくとも前記1つまたは複数の隣接ピクセル及び前記境界ピクセルの輝度サンプルに基づいて、境界輝度サンプルを決定することと、
F 線形マッピングモデルに従って前記境界輝度サンプルから境界彩度サンプルを決定することと、
A を含む、前記映像データをデコードするための方法。」
2 補正の適否
請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1に係る発明における「映像データをデコードするための方法」を構成する、構成D’の「前記境界ピクセルに対応する相応の輝度サンプルを、前記1つまたは複数の隣接ピクセルの各ピクセルに対応する輝度サンプルに割り当てることと、」について、構成Dにより、「前記境界ピクセルのそれぞれに対応する相応の輝度サンプルを、前記境界ピクセルのそれぞれの1つが利用可能であると決定することなく、前記1つまたは複数の隣接ピクセルの各ピクセルに対応する輝度サンプルに割り当てることと、」と特定するとともに、構成Gの「前記境界は、第1の境界と、前記第1の境界に直交する第2の境界とのうちの少なくとも1つを含む、」という事項を削除するための補正である。
そして、構成D’に関する補正は、境界ピクセル「のそれぞれ」に対応する相応の輝度サンプルについて、「前記境界ピクセルのそれぞれの1つが利用可能であると決定することなく」前記1つまたは複数の隣接ピクセルの各ピクセルに対応する輝度サンプルに割り当てることで、当該割り当てを行うステップを特定するための補正であり、上記ステップに関する特許請求の範囲を限定するものということができる。
また、構成Gは、構成Bの「符号化ブロックの境界」を前提として、「前記境界は、第1の境界と、前記第1の境界に直交する第2の境界とのうちの少なくとも1つを含む、」と特定されている。
ここで、「符号化ブロック」について、本件明細書【0003】には、「電子デバイスは、・・・(HIGH EFFICIENCY Video Coding)(HEVC)および・・・(VERSATILE Video Coding)(VVC)標準で定義されている映像圧縮/解凍標準を実行することにより、デジタル映像データを送信し、受信し、エンコードし、デコードし、および/または記憶する・・・ブロックベースの映像符号化の場合、映像フレームは1つまたは複数のスライスに分割され、各スライスには複数の映像ブロックがあり、これらは符号化木ユニット(CTU)とも呼ばれてもよい。各CTUは、1つの符号化ユニット(CU)を含有し、又は事前定義された最小CUサイズに達するまで再帰的により小さいCUに分割されてもよい。」という記載があり、また、本件優先権主張日当時の技術水準を示す、
Jianle Chen, et al.," Algorithm description for Versatile Video Coding and Test Model 7 (VTM 7)", Joint Video Experts Team (JVET) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 16th Meeting: Geneva, CH, 1-11 Oct. 2019 Document: JVET-P2002-v1、2019年11月10日公開の
3.2.3 Partitioning of the CTUs using a tree structureの第2パラグラフには、"In the coding tree structure, a CU can have either a square or rectangular shape."(仮訳:符号化木構造では、CUは正方形または長方形となることができる)という記載があることから、当該「符号化ブロック」は正方形又は長方形になるといえる。
そうすると、ある境界に対して「第1の境界」又は「第1の境界に直交する第2の境界」という特定をしたことは、実質的に上記映像圧縮/解凍技術における正方形又は長方形である「符号化ブロック」の「境界」について何ら特定していないものであって、請求項1に係る補正ではこれを削除したものである。
以上を総合すると、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であって、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正といえ、また、請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。
3 本件補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は上記1のイの(本件補正後の請求項1)に記載されるとおりのものである。
4 引用文献及び引用発明
(1) 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である、特表2018-514119号公報には、以下の記載がある(下線を強調のために当審で付した。以下同様。)。
ア 「【0018】
いくつかの例では、再構成された、対応するルーマブロックのダウンサンプリングは、フィルタリングを含む。本開示は、そのようなフィルタリングを実行するための例示的な方法について説明する。本開示で説明する技法は、LM予測モードにおいて使用されるルーマサンプルが異なるタイルに位置する状況にも適用され得る。本開示で説明する技法は、ITU-T H.265高効率ビデオコーディング(HEVC)ビデオコーディング規格の拡張または次世代もしくは将来世代のビデオコーディング規格など、アドバンストビデオコーデックの文脈において使用され得る。
【0019】
図1は、本開示の技法を利用し得る例示的なビデオコーディングシステム10を示すブロック図である。本明細書で使用する「ビデオコーダ」という用語は、総称的に、ビデオエンコーダとビデオデコーダの両方を指す。
・・・
【0039】
ピクチャの符号化表現を生成するために、ビデオエンコーダ20は、コーディングツリーユニット(CTU)のセットを生成し得る。CTUの各々は、ルーマサンプルのコーディングツリーブロック、クロマサンプルの2つの対応するコーディングツリーブロック、およびコーディングツリーブロックのサンプルをコーディングするために使用されるシンタックス構造であり得る。コーディングツリーブロックは、サンプルのN× Nブロックであり得る。CTUは、「ツリーブロック」または「最大コーディングユニット」(LCU)と呼ばれることもある。HEVCのCTUは、H.264/AVCなどの他の規格のマクロブロックと概ね類似していることがある。しかしながら、CTUは必ずしも特定のサイズに限定されず、1つまたは複数のコーディングユニット(CU)を含み得る。スライスは、ラスタ走査において連続的に順序付けられた整数個のCTUを含み得る。
・・・
【0050】
ビデオデコーダ30は、ビデオエンコーダ20によって生成されたビットストリームを受信し得る。加えて、ビデオデコーダ30は、シンタックス要素をビットストリームから復号するために、ビットストリームをパースし得る。ビデオデコーダ30は、ビットストリームから復号されたシンタックス要素に少なくとも部分的に基づいて、ビデオデータのピクチャを再構成し得る。ビデオデータを再構成するプロセスは、一般に、ビデオエンコーダ20によって実行されるプロセスの逆であり得る。たとえば、ビデオデコーダ30は、現在のCUのPUに関する予測的ブロックを決定するために、PUのMVを使用し得る。別の例として、LM予測モードの場合、ビデオデコーダ30は、対応するルーマブロックの再構成されたサンプルに基づいて、クロマブロックに関する予測的ブロックを決定し得る。加えて、ビデオデコーダ30は、現在のCUのTUに関連付けられた変換係数ブロックを逆量子化し得る。ビデオデコーダ30は、現在のCUのTUに関連付けられた変換ブロックを再構成するために、変換係数ブロックに対して逆変換を実行し得る。
【0051】
ビデオデコーダ30は、現在のCUのPUに関する予測的ブロックのサンプルを、現在のCUのTUの変換ブロックの対応するサンプルに加算することによって、現在のCUのコーディングブロックを再構成し得る。ピクチャのCUごとにコーディングブロックを再構成することによって、ビデオデコーダ30は、ピクチャを再構成し得る。」
イ 「【0052】
いくつかの例では、ビデオエンコーダ20およびビデオデコーダ30は、線形モデル(LM)ベースのコーディングを実行するように構成され得る。以下は、LMベースの予測コーディングの説明である。たとえば、成分間冗長性はYCbCr色空間において著しく低減されるが、3つの色成分間の相関は依然として存在する。相関をさらに低減することによってビデオコーディング性能を改善するために、様々な方法が研究されている。
【0053】
4:2:0クロマビデオコーディングでは、線形モデル(LM)予測モードと称される方法が、HEVC規格の開発中によく研究された。・・・
【0054】
LM予測モードでは、クロマサンプルは、次のように線形モデルを使用することによって、同じブロックの再構成されたルーマサンプルに基づいて予測される。
predc(i,j)=α*recL(i,j)+β (1)
式中、predc(i,j)は、ブロックの中のクロマサンプルの予測を表し、recL(i,j)は、同じブロックのダウンサンプリングされた再構成されたルーマサンプルを表す。パラメータαおよびβは、現在のブロックの周囲の因果的な再構成されたサンプルから導出される。クロマブロックサイズがN×Nによって示される場合、iとjの両方は[0, N]の範囲内にある。
・・・
【0060】
図5は、ダウンサンプリングされた再構成されたルーマブロックのサンプルをスケーリングするために使用されるスケーリングパラメータが導出される元となる、例示的なロケーションを示す概念図である。たとえば、図5は4:2:0サンプリングの一例を示し、スケーリングパラメータはαおよびβである。
【0061】
一般に、LM予測モードが適用されるとき、ビデオエンコーダ20およびビデオデコーダ30は、以下のステップを呼び出し得る。ビデオエンコーダ20およびビデオデコーダ30は、隣接ルーマサンプルをダウンサンプリングし得る。ビデオエンコーダ20およびビデオデコーダ30は、線形パラメータ(すなわち、αおよびβ)(スケーリングパラメータとも呼ばれる)を導出し得る。ビデオエンコーダ20およびビデオデコーダ30は、現在のルーマブロックをダウンサンプリングし、ダウンサンプリングされたルーマブロックおよび線形パラメータ(すなわち、スケーリングパラメータ)から予測(たとえば、予測的ブロック)を導出し得る。」
ウ 「【0065】
図6は、予測的ブロックを生成するためにルーマブロックのサンプルをダウンサンプリングするためのルーマ位置およびクロマ位置の一例を示す概念図である。図6に示すように、黒塗り三角形によって表されるクロマサンプルは、[1, 1]フィルタを適用することによって、2つの黒塗り円によって表される2つのルーマサンプルから予測される。[1, 1]フィルタは、2タップフィルタの一例である。言い換えれば、再構成されたルーマブロックをダウンサンプリングするために、式(5)は、一方のタップであるRecLOrig[2i, 2j]および他方のタップであるRecLOrig[2i, 2j+1]によって表されるように、ビルトイン[1, 1]2タップフィルタを含む。フィルタのタップは、ダウンサンプリングに使用される入力サンプルの値を表し、式(5)では、再構成されたルーマブロックからの2つの値は、ダウンサンプリングされたルーマブロックを生成するために合計され、右シフトされる。したがって、一例として、ビデオエンコーダ20またはビデオデコーダ30は、ダウンサンプリングされたルーマブロックを決定するために、式(5)の動作を実行し得る。
・・・
【0069】
他のダウンサンプリング技法も提案されている。・・・2タップフィルタを使用する代わりに、2次元6タップフィルタリングが現在のルーマブロックと隣接ルーマブロックの両方に適用される。
・・・
【0073】
・・・ダウンサンプリングされたルーマブロックを生成するために、再構成されたルーマブロックからの6つの値が使用される。
【0074】
図7は、予測的ブロックを生成するためにルーマブロックのサンプルをダウンサンプリングするためのルーマ位置およびクロマ位置の別の例を示す概念図である。図7に示すように、黒塗り三角形によって表されるクロマサンプルは、6タップフィルタを適用することによって、6つの黒塗り円によって表される6つのルーマサンプルから予測される。」
エ 「【0087】
異なるフィルタを使用することは、ビデオコーダが利用可能なサンプル値を適切に使用することを可能にする。たとえば、ピクチャ、CU、PU、またはTUの左境界にあるクロマサンプルに対応するルーマサンプルに対して6タップフィルタを使用することは、ビデオコーダがダウンサンプリングのためのルーマブロックの一部ではないルーマサンプル値を使用することを必要とすることになる場合があり、ルーマサンプルの欠如に対処するためにビデオコーダが何らかの追加の処理を実行しなければならなくなる(たとえば、ルーマブロックの一部ではないサンプルに関する値を生成するために、ルーマサンプル値をパディングする)場合がある。
・・・
【0092】
場合によっては、同じピクチャの中に対応するルーマサンプルがないことがある。以下は、そのような状況に対処するためのいくつかの例示的な技法について説明する。たとえば、パディングを回避することは場合によっては有益であり得るが、いくつかの事例では、パディングを回避することが可能ではないことがある。たとえば、いくつかのルーマサンプルが(たとえば、ピクチャのせいで)利用不可能であるので、ビデオコーダは、これらの利用不可能なサンプルの代わりにパディングサンプル値を使い、これらのパディングサンプル値を用いてダウンサンプリングを実行する(たとえば、利用可能なルーマサンプルに対して実際のルーマサンプル値を使用し、利用不可能なルーマサンプルに対してパディングサンプル値を使用してダウンサンプリングする)ことができる。・・・パディングサンプル値を加算することは、別個のフィルタを必要としないことがあるので、複雑性を低減し得る。
・・・
【0094】
一例として、クロマサンプルの対応するダウンサンプリングされたルーマサンプルの導出プロセスの間、ビデオコーダは、現在のピクチャの外に位置するルーマサンプル(たとえば、ルーマサンプルのみ)をパディングし得る。すべての他の位置の場合、再構成されたサンプルが使用される。一例として、クロマサンプルの対応するダウンサンプリングされたルーマサンプルの導出プロセスの間、ビデオコーダは、現在のCUの外に位置するルーマサンプルをパディングし得る。すべての他の位置の場合、再構成されたサンプルが使用される。一例として、クロマサンプルの対応するダウンサンプリングされたルーマサンプルの導出プロセスの間、ビデオコーダは、現在のPUの外に位置するルーマサンプルをパディングし得る。すべての他の位置の場合、再構成されたサンプルが使用される。一例として、クロマサンプルの対応するダウンサンプリングされたルーマサンプルの導出プロセスの間、ビデオコーダは、現在のTUの外に位置するルーマサンプルをパディングし得る。すべての他の位置の場合、再構成されたサンプルが使用される。パディングについての上記の例では、同じダウンサンプリングプロセスがすべての位置に適用される。
【0095】
LM予測モードにおいて使用される再構成されたルーマサンプルの位置が現在のスライスまたは現在のタイルの外に位置するとき、ビデオコーダは、そのようなサンプルを利用不可能としてマークし得る(たとえば、ビデオコーダは、そのようなサンプルを利用不可能として決定し得る)。サンプルが利用不可能としてマークされたとき、ビデオコーダは以下のうちの1つまたは複数を実行し得る。
【0096】
サンプル(たとえば、利用不可能なサンプル)は、隣接ルーマブロックに関するダウンサンプリングプロセスにおいて使用される場合、隣接ルーマブロックに関するダウンサンプリングプロセスにおいて使用されない。代替または追加として、フィルタは他のサンプルに使用されるフィルタとは異なり得る。サンプル(たとえば、利用不可能なサンプル)は、現在のルーマブロックに関するダウンサンプリングプロセスにおいて使用される場合、現在のルーマブロックに関するダウンサンプリングプロセスにおいて使用されない。代替または追加として、フィルタは他のサンプルに使用されるフィルタとは異なり得る。サンプル(たとえば、利用不可能なサンプル)は、利用可能として再マークされるが、サンプル値はパディングされたサンプル値またはデフォルト値になるように修正される。代替または追加として、フィルタは他のサンプルに使用されるフィルタと同じままである。一例では、デフォルト値はビット深度に依存する。別の例では、パディングは、利用可能としてマークされた左/右/上/下のサンプルからのものであり得る。」
オ 図7には以下の記載がある。
「【図7】
[図:0001414803000001.jpg]
」
(2)引用発明の認定
ア 上記(1)のアの記載から、引用文献1には、「ビデオコーダ」「は、」「ビデオエンコーダとビデオデコーダの両方を指す」ものであるところ、「ビデオデコーダ30は」「ビットストリームを受信し」、「ビットストリームをパースし」、「ビットストリームから復号されたシンタックス要素に少なくとも部分的に基づいて、ビデオデータのピクチャを再構成」するものであって「現在のCUのPUに関する予測的ブロックを決定する」ものであり、「LM予測モードの場合」、「対応するルーマブロックの再構成されたサンプルに基づいて、クロマブロックに関する予測的ブロックを決定し」、「現在のCUのTUに関連付けられた変換係数ブロックを逆量子化し」「変換係数ブロックに対して逆変換を実行し」、「現在のCUのPUに関する予測的ブロックのサンプルを、現在のCUのTUの変換ブロックの対応するサンプルに加算することによって、現在のCUのコーディングブロックを再構成」することが記載されているといえる。
イ 上記(1)のイの記載から、引用文献1には、「LM予測モードでは、クロマサンプルは、次のように線形モデルを使用することによって、同じブロックの再構成されたルーマサンプルに基づいて予測される」ものであって、「predc(i,j)=α*recL(i,j)+β
式中、predc(i,j)は、ブロックの中のクロマサンプルの予測を表し、recL(i,j)は、同じブロックのダウンサンプリングされた再構成されたルーマサンプルを表」し、「パラメータαおよびβは、現在のブロックの周囲の因果的な再構成されたサンプルから導出され」、「LM予測モードが適用されるとき、」、「ビデオデコーダ30は、」、「隣接ルーマサンプルをダウンサンプリングし」、「線形パラメータ(すなわち、αおよびβ)」「を導出し」、「現在のルーマブロックをダウンサンプリングし、ダウンサンプリングされたルーマブロックおよび線形パラメータ」「から予測(」「予測的ブロック)を導出し」ていることが記載されているといえる。
ウ 上記(1)のウの記載から、引用文献1には、「予測的ブロックを生成するためにルーマブロックのサンプルをダウンサンプリングする」にあたり、「再構成されたルーマブロックをダウンサンプリングするために」、「2次元6タップフィルタリングが現在のルーマブロックと隣接ルーマブロックの両方に適用され」、「ダウンサンプリングされたルーマブロックを生成するために、再構成されたルーマブロックからの6つの値が使用され」ることが記載されているといえる。
また、上記(1)のウには、「図7は、予測的ブロックを生成するためにルーマブロックのサンプルをダウンサンプリングするためのルーマ位置およびクロマ位置の別の例を示す」、「黒塗り三角形によって表されるクロマサンプルは、6タップフィルタを適用することによって、6つの黒塗り円によって表される6つのルーマサンプルから予測される。」という記載があり、この記載を踏まえた上記(1)のオの図7から、黒塗り三角形によって表されるクロマサンプルは、それぞれ当該クロマサンプルに最も近い左上、上、右上、左下、下、右下に位置する、黒塗りの丸である、ルーマサンプルから予測されることが見てとれる。
さらに、上記(1)のエの記載から、引用文献1には、「CUの左境界にあるクロマサンプルに対応するルーマサンプルに対して6タップフィルタを使用することは、ビデオコーダがダウンサンプリングのためのルーマブロックの一部ではないルーマサンプル値を使用することを必要とする」ものであることがいえる。
エ 上記(1)のエの記載から、引用文献1には「ルーマサンプルの欠如に対処するためにビデオコーダが」「ルーマブロックの一部ではないサンプルに関する値を生成するために、ルーマサンプル値をパディングする」ものであって、「いくつかのルーマサンプルが」「利用不可能であるので、ビデオコーダは、これらの利用不可能なサンプルの代わりにパディングサンプル値を使い、これらのパディングサンプル値を用いてダウンサンプリングを実行する」ものであり、「クロマサンプルの対応するダウンサンプリングされたルーマサンプルの導出プロセスの間、ビデオコーダは、現在のCUの外に位置するルーマサンプルをパディングし」、「LM予測モードにおいて使用される再構成されたルーマサンプルの位置が現在のスライス」「の外に位置するとき、ビデオコーダは、そのようなサンプルを利用不可能としてマークし」、「サンプルが利用不可能としてマークされたとき、ビデオコーダは以下のうちの1つまたは複数を実行」するものであって、「パディングは、利用可能としてマークされた左/右/上/下のサンプルからのものであ」ることから、ビデオコーダは、利用可能としてマークされた左/右/上/下のサンプルからパディングを行うといえる。
上記ア~エの記載から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。(記号「a」から「c4」は合議体が付した。以下、「構成a」~「構成c4」等という。)
a ビデオコーダは、ビデオエンコーダとビデオデコーダの両方をさすものであるところ、ビデオデコーダ30は、ビットストリームを受信し、ビットストリームをパースし、ビットストリームから復号されたシンタックス要素に少なくとも部分的に基づいて、ビデオデータのピクチャを再構成するものであって、現在のCUのPUに関する予測的ブロックを決定するものであり、(ア)
a1 LM予測モードの場合、対応するルーマブロックの再構成されたサンプルに基づいて、クロマブロックに関する予測的ブロックを決定し、(ア)
a2 現在のCUのTUに関連付けられた変換係数ブロックを逆量子化し、変換係数ブロックに対して逆変換を実行し、現在のCUのPUに関する予測的ブロックのサンプルを、現在のCUのTUの変換ブロックの対応するサンプルに加算することによって、現在のCUのコーディングブロックを再構成するものであり、(ア)
b LM予測モードでは、クロマサンプルは、次のように線形モデルを使用することによって、同じブロックの再構成されたルーマサンプルに基づいて予測されるものであって、(イ)
predc(i,j)=α*recL(i,j)+β
式中、predc(i,j)は、ブロックの中のクロマサンプルの予測を表し、recL(i,j)は、同じブロックのダウンサンプリングされた再構成されたルーマサンプルを表し、パラメータαおよびβは、現在のブロックの周囲の因果的な再構成されたサンプルから導出され、(イ)
b1 LM予測モードが適用されるとき、ビデオデコーダ30は、隣接ルーマサンプルをダウンサンプリングし、線形パラメータ(すなわち、αおよびβ)を導出し、現在のルーマブロックをダウンサンプリングし、ダウンサンプリングされたルーマブロックおよび線形パラメータから予測(予測ブロック)を導出し、(イ)
b11 予測的ブロックを生成するためにルーマブロックのサンプルをダウンサンプリングするにあたり、再構成されたルーマブロックをダウンサンプリングするために、2次元6タップフィルタリングが現在のルーマブロックと隣接ルーマブロックの両方に適用され、ダウンサンプリングされたルーマブロックを生成するために、再構成されたルーマブロックからの6つの値が使用されるものであって、(ウ)
b2 クロマサンプルは、それぞれ当該クロマサンプルに最も近い左上、上、右上、左下、下、右下に位置するルーマサンプルから予測され、(ウ)
c CUの左境界にあるクロマサンプルに対応するルーマサンプルに対して6タップフィルタを使用することは、ビデオコーダがダウンサンプリングのためのルーマブロックの一部ではないルーマサンプル値を使用することを必要とするものであり、(ウ)
c1 ルーマサンプルの欠如に対処するためにビデオコーダが、ルーマブロックの一部ではないサンプルに関する値を生成するために、ルーマサンプル値をパディングするものであって、いくつかのルーマサンプルが利用不可能であるので、ビデオコーダは、これらの利用不可能なサンプルの代わりにパディングサンプル値を使い、これらのパディングサンプル値を用いてダウンサンプリングを実行するものであり、(エ)
c2 クロマサンプルの対応するダウンサンプリングされたルーマサンプルの導出プロセスの間、ビデオコーダは、現在のCUの外に位置するルーマサンプルをパディングし、(エ)
c3 LM予測モードにおいて使用される再構成されたルーマサンプルの位置が現在のスライスの外に位置するとき、ビデオコーダは、そのようなサンプルを利用不可能としてマークし、(エ)
c4 サンプルが利用不可能としてマークされたとき、ビデオコーダは、利用可能としてマークされた左/右/上/下のサンプルからパディングを行う、(エ)
a ビデオコーダであるビデオデコーダ30によるビデオデータのピクチャを再構成する方法。
5 引用発明における技術的前提または技術水準
(1)スライスについて
引用文献1は、上記4(1)アの【0018】に「本開示で説明する技法は、ITU-T H.265高効率ビデオコーディング(HEVC)ビデオコーディング規格の拡張または次世代もしくは将来世代のビデオコーディング規格など、アドバンストビデオコーデックの文脈において使用され得る。」と記載されるように、動画像符号化の国際規格HEVCをその前提とするものといい得るところ、HEVCに関する技術水準として、大久保ほか、インプレス標準教科書シリーズ H.265/HEVC教科書、株式会社インプレスジャパン、2013年10月21日発行、第198頁
には以下の記載がある。
[図:0001414803000002.jpg]
上記箇所のうち、とりわけ第198頁の下から2行から最下位行の「CTUの切れ目であれば、始点、終点ともに任意の位置でスライスに分割することができます」という記載、図7-3の囲み内の「スライスはCTUの切れ目ならどこで分割できます」という記載があり、この記載と上記4(1)アの【0039】における「CTUは必ずしも特定のサイズに限定されず、1つまたは複数のコーディングユニット(CU)を含み得る。」という記載から、
・CTUは1つまたは複数のコーディングユニット(CU)を含むものであって、CTUの切れ目でスライスが分割できること
(以下、これを「引用発明における技術的前提」という。)
がいえる。
(2)ルーマサンプルを用いたフィルタ処理に用いられる「パディング」について
(2-1)引用文献1に係る国際出願と同一出願人により国際出願された、特表2016-524878号公報の【0203】、【0205】、図5Bには、以下の記載がある。
「【0203】
フィルタパラメータシグナリングおよびパディング(Filter Parameter Signaling and Padding)
[00160] 図5Bに、シグナリングされたフィルタパラメータ530の構成を含む、(図5Aに関して説明したように1つの4分木リーフおよび/またはサブリーフの1つの部分を表し得る)例示的な区分構成500中の例示的なクロマおよびルーマ構成を示す。上記で説明したように、正方形アイコンの各々はルーマピクセル510を表し、別個の円アイコンは、Cbクロマピクセルおよび/またはCrクロマピクセルを備え得るクロマピクセル520を表す。ルーマピクセル510内にあるパターン付き円アイコンは、クロマピクセル520の周りに構成されたシグナリングされたフィルタパラメータ530の配置を表す。」
「【0205】
[00162] 上記で説明したように、クロマピクセル520は4分木リーフの境界の近くにあり得る。たとえば、「タイル(tile)」などの並列処理が使用可能にされたとき、クロマピクセル520の左または上のルーマピクセルが近隣4分木リーフ中にあり得る場合、たとえば、それらは「境界横断(cross-boundary)」または「利用不可能(unavailable)」ルーマピクセルであり得る。そのような場合、一実施形態では、ビデオエンコーダ20は、境界内(in-boundary)ルーマピクセルの値を使用して、境界横断(たとえば、「利用不可能」)ルーマピクセルの値を置き換える(たとえば、「パディング(padding)」する)ことによってコンポーネント間フィルタ処理を実行し得る。たとえば、クロマピクセル520のすぐ左のルーマピクセルが近隣4分木中にある(たとえば、それが境界横断である)場合、ビデオエンコーダ20は、クロマピクセル520の右の最も近いルーマピクセル(たとえば、境界内にあるルーマピクセル)の値を使用して、そのルーマピクセルの値をパディングし得る。」
[図:0001414803000003.jpg]
(2-2)引用文献1に係る国際出願と同一出願人により国際出願された、国際公開2018/118940号(特表2020-502925号公報参照)の[0107]、[0108]、Fig.12Bには、以下の記載がある。
「[0107] In one example, the filters for deriving the corresponding downsampled luma sample of a chroma sample are the same, regardless of whether the filtering process involves luma samples with coordinate (x,y), where x<x0 and y < yO or not. However, when the filtering process involves luma samples with coordinate (x,y), where x<x0 and y < yO, these luma samples are padded by adjacent luma samples instead of being fetched from the corresponding locations.
[0108] FIGS. 12A and 12B are conceptual diagrams illustrating filtering with padded samples. In FIGS. 12A and 12B, the downsampling filter proposed in JCTVC-F502 is always used, regardless of whether a luma sample with coordinate (x,y), where x<x0 and y < yO, is involved in the filtering process or not. But when luma samples with coordinate (x,y), where x<x0 and y < yO, are involved, these samples are padded instead of being fetched as shown in FIG. 12B. Eq.(l 1) shows the padding process in a formula way.」
[図:0001414803000004.jpg]
(仮訳:[0107]一例では、クロマサンプルに対応するダウンサンプリングされたルーマサンプルを導出するためのフィルタは、フィルタリングプロセスが、座標(x,y)、ここで、x<x0およびy<y0、を有するルーマサンプルを伴うか否かにかかわらず、同じである。しかしながら、フィルタリングプロセスが、座標(x,y)、ここで、x<x0およびy<y0、を有するルーマサンプルを伴うとき、これらのルーマサンプルは、対応するロケーションからフェッチされる代わりに、隣り合うルーマサンプルによってパディングされる。
[0108]図12Aおよび図12Bは、パディングされたサンプルを用いたフィルタリングを例示する概念図である。図12Aおよび図12Bでは、座標(x,y)、ここで、x<x0およびy<y0、を有するルーマサンプルがフィルタリングプロセスに関与するか否かにかかわらず、JCTVC-F502において提案されるダウンサンプリングフィルタが常に使用される。しかし、座標(x,y)、ここで、x<x0およびy<y0、を有するルーマサンプルが関与するとき、これらのサンプルは、図12Bに示されるように、フェッチされる代わりに、パディングされる。)
また、図12Bより、ダウンサンプリングされたルーマサンプルを導出するためのフィルタは、ダウンサンプルされたルーマサンプルの周囲の6つのルーマサンプルを用いるものであり、点線の左隣にある2つのルーマサンプルは、点線の右隣にある2つのルーマサンプルからパディングされることで得られることが見てとれる。
(2-3)引用文献1に係る出願の出願人により特定されている、ルーマサンプルを用いたフィルタ処理に用いられる「パディング」という事項に関する技術水準として、(2-1)から、
・クロマピクセルの左又は上のルーマピクセルが境界横断または利用不可能ルーマピクセルである場合、境界内ルーマピクセルの値を使用して、利用不可能ルーマピクセルの値を置き換える(たとえばパディングする)ものであり、たとえば、クロマピクセルのすぐ左のルーマピクセルが境界横断すなわち利用不可能である場合、クロマピクセルの右の最も近いルーマピクセル(境界内にあるルーマピクセル)の値を使用してそのルーマピクセルの値をパディングし得ること、これにより、クロマピクセルの周囲の6つのルーマピクセルを用いてフィルタ処理を行うこと、
(以下、これを「引用発明の技術水準1」という。)がいえる。
また、同様に、(2-2)から、
・クロマサンプルに対応するダウンサンプリングされたルーマサンプルを導出するための、当該ルーマサンプルの周囲の6つのサンプルを用いる6タップフィルタリングプロセスは、境界の外側の座標にあるルーマサンプルを伴うとき、これらのルーマサンプルは、隣り合って境界の内側で最も近い位置にあるルーマサンプルからパディングされること、
(以下、これを「引用発明の技術水準2」という。)がいえる。
6 対比及び判断
引用発明を把握するにあたっての上記の技術水準を踏まえて、本件補正発明と上記引用発明とを対比する。
(1)構成Aについて
引用発明は、構成aに特定されるように「ビデオデコーダ30は、ビットストリームを受信し、ビットストリームをパースし、ビットストリームから復号されたシンタックス要素に少なくとも部分的に基づいて、ビデオデータのピクチャを再構成する方法」に関するものであり、構成Aと同様に「映像データをデコードするための方法」に関するものといえる。
(2)構成Bについて
引用発明は、構成a、a1に特定されるように、「ビットストリームを受信し、ビットストリームをパースし、ビットストリームから復号されたシンタックス要素に少なくとも部分的に基づいて、ビデオデータのピクチャを再構成する」ものであって、「ルーマブロックの再構成されたサンプルに基づいて、クロマブロックに関する予測的ブロックを決定する」ものであり、「ブロック」とは複数のピクセルから構成されていることから、ピクチャ内のルーマブロックのサンプル、すなわちフレーム内の複数の輝度サンプルを得るといえ、構成Bと同様に「ビットストリームから、映像フレーム内の複数のピクセルのための複数の輝度サンプルを取得」するものといえる。
ここで、構成aの「現在のCUのPUに関する予測ブロックを決定する」ことの一例として、構成a1に特定される「ルーマブロック」「のサンプルに基づいて」「予測的ブロックを決定」することから、当該「ルーマブロック」「のサンプル」はCUすなわち構成Bの「符号化ブロックに属するとともに前記符号化ブロックの内部に位置づけられる」「ピクセル」に相当する。
また、構成a1の当該「ルーマブロック」は、CUの境界に直接隣るピクセルであって、CUの内部に位置付けられるピクセルを含むことは明らかであるが、このピクセルを構成Bでは「符号化ブロックの境界に直接に隣る」「境界ピクセル」と称しているといえる、すなわち、構成a1の「ルーマブロック」は構成Bの「符号化ブロックの境界に直接に隣る」「境界ピクセル」を含む。
そうすると、引用発明の構成a、a1は、構成Bを具備するものといえる。
(3)構成C、Dについて
(3-1)引用発明は、構成b11を踏まえた構成cに特定されるように、「ビデオコーダ」すなわち「ビデオデコーダ」が、「CUの左境界にあるルーマサンプルに対して」、ダウンサンプルするための「フィルタを使用する」にあたり、「ルーマブロックの一部ではないルーマサンプル値を使用することを必要とするものであり」、構成c1に特定されるように、「ルーマサンプルの欠如に対処するために」「ルーマブロックの一部ではないサンプルに関する値を生成するために」「ルーマサンプル値をパディングする」ものであって、「いくつかのルーマサンプルが利用不可能であるので」「これらの利用不可能なサンプルの代わりにパディングサンプル値を使」う、すなわち構成c2に特定される「現在のCUの外に位置するルーマサンプルをパディングする」、ものといえる。
(3-2)ここで、構成cの「CUの左境界にあるクロマサンプルに対応するルーマサンプルに対して」ダウンサンプルするための「フィルタを使用する」場合に、構成c1のように「ルーマサンプルの欠如」がある、すなわち、「いくつかのルーマサンプルが利用不可能である」場合にルーマサンプル値をパディングするものであって、構成c2における「現在のCUの外に位置するルーマサンプルをパディングする」ことについて検討する。
上記5(2-3)の「引用発明における技術水準1」や「引用発明における技術水準2」を踏まえると、上記と同様の状況における「ルーマサンプルをパディングする」とは、現在のCUの境界のすぐ隣であってCUの外側にあるルーマサンプルが利用不可能なので、現在のCUの境界のすぐ隣であってCUの内側にあるルーマサンプルを用いてパディングすることを意味するといえる。
(3-3)さらに、構成c2に特定される「現在のCUの外に位置するルーマサンプルをパディングする」場合に、構成c3に特定される「ルーマサンプルの位置が現在のスライスの外に位置するとき」、「そのようなサンプルを利用不可能としてマーク」することについて検討する。
上記5(1)の「引用発明における技術的前提」にあるように、CTUは1つまたは複数のコーディングユニット(CU)を含むものであって、CTUの切れ目でスライスが分割できることから、「スライスの外に位置する」とは、1つまたは複数のCUを含むCTUの切れ目で分割されたスライスの外、すなわち当該ルーマブロックに対応するCUを含むCTUの外に位置するといえ、当該ルーマブロックに対応するCUの外に位置することを含むといえる。
上記技術的前提を踏まえると、上記構成c3に特定される「現在のスライスの外に位置する」場合とは、構成cに特定される「CUの左境界にある」「ルーマサンプルに対して」「フィルタを使用する」場合であって、構成c2に特定される「現在のCUの外に位置する」場合を含み、構成c3はこの場合に「そのようなサンプルを利用不可能としてマークする」ことを含むものであるといえる。
(3-4)(3-3)を踏まえると、引用発明の構成c1、c3、c4における「ルーマサンプルが利用不可能」であることがわかるとは、現在のCUの境界のすぐ隣であってCUの外側にあるルーマサンプルが利用不可能であることがわかることに他ならないが、これは本件補正発明の構成Cの「前記境界ピクセルの1つまたは複数の隣接ピクセルが利用できないことを決定し、前記1つまたは複数の隣接ピクセルの各ピクセルが前記符号化ブロックの外部にあること」に相当する。
(3-5)また、(3-2)を踏まえると、引用発明における構成c1の「ルーマサンプルの欠如」がある、すなわち、「いくつかのルーマサンプルが利用不可能である」場合にルーマサンプル値をパディングするものであって、構成c2の「現在のCUの外に位置するルーマサンプルをパディングする」場合において、構成c4の「サンプルが利用不可能としてマークされたとき、ビデオコーダは、利用可能としてマークされた左/右/上/下のサンプルからパディングを行う」とは、本件補正発明の構成Dのうち、「前記境界ピクセルのそれぞれに対応する相応の輝度サンプルを」、「前記1つまたは複数の隣接ピクセルの各ピクセルに対応する輝度サンプルに割り当てること」に対応する。
ただし、「境界ピクセルのそれぞれに対応する相応の輝度サンプルを」「割り当てる」場合、本件補正発明の構成Dは「境界ピクセルのそれぞれの1つが利用可能であると決定することなく」割り当てるのに対して、引用発明では「利用可能としてマークされたサンプル」からパディングを行う点で、一応相違する。
(4)構成E、Fについて
引用発明は、構成cにおいて特定されるように、「CUの左境界にあるルーマサンプルに対して6タップフィルタを使用する」ことから、構成E同様に「事前定義された輝度補間スキームに従って境界輝度サンプルを決定する」ものであって、「境界ピクセルの輝度サンプルに基づいて、境界輝度サンプルを決定する」といえる。
また、引用発明は、構成cにおいて特定されるように、「ビデオコーダがダウンサンプリングのためのルーマブロックの一部ではないルーマサンプル値を使用する」ものであるが、上記(3-1)、(3-2)を踏まえた(3-5)で説示したように、当該「ルーマブロックの一部ではないルーマサンプル値」は、現在のCUの境界のすぐ隣であってCUの内側にあるルーマサンプルを用いてパディングされたものであって、構成Eの「1つまたは複数の隣接ピクセル」の「輝度サンプル」に相当する。
さらに、引用発明は、構成b、b1に特定されるように、クロマサンプルは、LM予測モードにおいて線形モデルを使用することによってルーマサンプルに基づいて予測されるものといえるが、これは、構成Fの「線形マッピングモデルに従って、前記境界輝度サンプルから境界彩度サンプルを決定する」ことに相当する。
(5)以上、(1)~(4)を踏まえて、本件補正発明と引用発明とを対比すると、両者の一致点、一応の相違点は以下のとおりである。
(一致点)
A 映像データをデコードするための方法であって、
B ビットストリームから、映像フレーム内の複数のピクセルのための複数の輝度サンプルを取得し、前記複数のピクセルは、符号化ブロックに属するとともに前記符号化ブロックの内部に位置付けられるピクセルを含み、
C 1つまたは複数のピクセルが利用できないことを決定し、前記1つまたは複数のピクセルの各ピクセルが前記符号化ブロックの外部にあることと、
D” 前記映像フレーム内の輝度サンプルを、前記1つまたは複数の隣接ピクセルの各ピクセルに対応する輝度サンプルに割り当てることと、
E 事前定義された輝度補間スキームに従って少なくとも前記1つまたは複数の隣接ピクセル及び前記境界ピクセルの輝度サンプルに基づいて、境界輝度サンプルを決定することと、
F 線形マッピングモデルに従って前記境界輝度サンプルから境界彩度サンプルを決定することと、
A を含む、前記映像データをデコードするための方法。
(一応の相違点)
本件補正発明は、境界ピクセルのそれぞれに対応する相応の輝度サンプルを、「境界ピクセルのそれぞれの1つが利用可能であると決定することなく」隣接ピクセルの各サンプルに対応する輝度サンプルに割り当てるのに対して、
引用発明は「境界ピクセルのそれぞれの1つが利用可能であると決定することなく」パディングすることは特定されていない点。
(6)一応の相違点に対する判断
上記一応の相違点について検討する。
引用発明は、構成c3において特定されるように、現在のスライスの外に位置するルーマサンプルを利用不可能としてマークするところ、上記(3-3)を踏まえると、現在のCUの外に位置するルーマサンプルを利用不可能としてマークするものである。
ここで、あるサンプルが利用可能であるか、あるいは利用不可能であるかといった2つの相反する状態のどちらにあるかをマークするには、1ビットのフラグを用いればよく、例えば利用不可能であるサンプルに対してフラグの値として1を設定して、当該サンプルを利用不可能なものとしてマークすれば、それ以外(フラグの値が0のまま)のサンプルは利用可能として取り扱われることになるが、このような技術自体は2つの相反する状態を表す情報を設定する手法として引用発明を理解する上での技術的前提又は周知慣用技術にすぎないといえる。
このような技術的前提又は周知慣用技術を踏まえると、現在のCUの外に位置するルーマサンプルを利用不可能としてマークされた場合、その他のサンプル、すなわち現在のCUの内側に位置するルーマサンプルは利用可能なものとして取り扱われることになる。
すなわち、引用発明における「利用可能としてマーク」するという事項は、上記の現在のCUの内側に位置するルーマサンプルを利用可能なサンプルとして取り扱うことにすぎず、現在のCUの内側に位置するルーマサンプルのそれぞれを、例えば復号エラーがなく、正しく復号された部分を検査した上で「利用可能としてマーク」する、例えば新たにフラグを設定するというものではない。
してみると、引用発明における「利用可能としてマークされた」「サンプル」とは、本件補正発明の「境界ピクセル」であり、「境界ピクセルのそれぞれの1つが利用可能であると決定することなく」得られたものといえ、実質的な差異はない、または引用発明の「利用可能としてマークされた」「サンプル」を本件補正発明の「境界ピクセル」であって「境界ピクセルのそれぞれの1つが利用可能であると決定することなく」得られたものとすることは、当業者が本件補正発明における発明特定事項を特定するにあたって適宜なし得た事項であるといえる。
したがって、本件補正発明は上記の技術的前提を踏まえた引用発明と実質的に同一の発明であるか、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の「5.拒絶理由について」において、以下のとおり主張している。
(1)「出願人は、補正後の請求項1に係る発明は上記各引用文献1-2に対して新規性及び進歩性があると思料します。
具体的には、引用文献1-2には、補正後の請求項1が有する少なくとも以下の技術的特徴(1)-(3)について何ら開示されておりません。
(1)ビットストリームから、映像フレーム内の複数のピクセルのための複数の輝度サンプルを取得し、前記複数のピクセルは、符号化ブロックに属するとともに前記符号化ブロックの内部に位置付けられる境界ピクセルを含み、前記境界ピクセルは前記符号化ブロックの境界に直接に隣ること
(2)前記境界ピクセルの1つまたは複数の隣接ピクセルが利用できないことを決定し、前記1つまたは複数の隣接ピクセルの各ピクセルが前記符号化ブロックの外部にあることと、前記境界ピクセルのそれぞれに対応する相応の輝度サンプルを、前記境界ピクセルのそれぞれの1つが利用可能であると決定することなく、前記1つまたは複数の隣接ピクセルの各ピクセルに対応する輝度サンプルに割り当てること、
(3)事前定義された輝度補間スキームに従って少なくとも前記1つまたは複数の隣接ピクセル及び前記境界ピクセルの輝度サンプルに基づいて、境界輝度サンプルを決定すること
ここで、引用文献1の段落[0096]には、(中略)と記載されています。
(中略)
一方、補正後の請求項1では、符号化ブロック内の境界ピクセルの境界彩度サンプルを予測する前に、符号化ブロック内の境界ピクセルの符号化ブロック外の隣接ピクセルが利用できないことを判断した後、境界ピクセルの輝度サンプルを利用できない隣接ピクセルに充填することを行います。
すなわち、補正後の請求項1では、境界ピクセルの利用できない隣接ピクセルについて、利用できない隣接ピクセルの周囲の隣接ピクセルが利用できるかどうかを判断してマークする必要はなく、境界ピクセルの輝度サンプルをパディングソースとして直接利用して、利用できない隣接ピクセルの輝度サンプルをパディングする構成となっています。
具体的には、補正後の請求項1は「境界ピクセルのそれぞれの1つが利用可能かどうかを決定することなく」、すなわち境界ピクセル(つまり、パディング元)がパディング処理中に利用可能かどうかを判断する必要がないことを明確に表しています。これにより、補正後の請求項1では、予測に関与する境界ピクセルの隣接ピクセル数の減少を回避することができます。また、境界ピクセルと当該境界ピクセルの隣接ピクセルの輝度サンプルを用いることで、境界ピクセルの境界彩度サンプルを予測する効果に影響を与えることが可能となります。
したがって、補正後の請求項1と引用文献1とを比較すると、請求項1は、発明目的、技術的ステップ、達成可能な技術的効果が異なる技術的解決策を有しています。具体的には、補正後の請求項1の技術的特徴は、上述した(1)-(3)で特定することができます。」
(2)「なお、審査官は、引用文献1で引用された実施形態について、当業者にとって明らかであり、本願の技術的解決に対応するものであると認定していますが、出願人はこれに同意することはできません。
具体的には、引用文献1の解決策では「別の例では、パディングは、利用可能としてマークされた左/右/上/下のサンプルからのものであり得る。」(段落[0096]の最終文参照)とありますが、パディングするサンプルの方向が特定されておらず、不明瞭なお記載となってあります。
したがって、当業者は、上述した引用文献1の記載が、本願請求項1の技術的特徴(2)、すなわち、符号化ブロック内の境界ピクセルの輝度サンプルが符号化ブロック外に位置する利用できない隣接するピクセルに割り当てられることと、明確に同一視することはできないものと思料します。
また、出願人は、不明瞭な技術的解決策を、請求項の技術的解決策の検討に使用すべきではないと思料します。」
(3)「また、審査官は、令和5年1月20日付で提出した意見書の(1)エントリーポイントが異なる、(2)処理ロジックが異なる、点に関する出願人の主張は、特許請求の範囲に基づくものではないと判断していますが、出願人はこれに同意することはできません。上述した本願請求項1の技術的特徴(1)及び(2)の記載から、出願人の(1)及び(2)の主張が特許請求の範囲に基づくものであることは明らかであります。
(中略)
なお、引用文献1には、文字通り「パディングは、利用可能としてマークされた左/右/上/下のサンプルからのものであり得る。」(段落[0096]の最終文参照)と記載されており、「左/右/上/下のサンプル」は、パディングソースに対応します。字義通りの記載によれば、パディングソースには利用可能性を示すマークが付されており、当業者であれば、利用可能性マークに基づいてパディングソースの選択が決定されること、すなわち、左/右/上/下サンプルの利用可能性を判断するステップが必要であることを理解できると思料します。
しかしながら、本願発明の解決策では、パディングソースが利用可能であるか否かを判断する必要はありません。そこで、本願発明のこの特徴を明らかにするために、補正後の請求項1に「前記境界ピクセルのそれぞれの1つが利用可能であると決定することなく」を追加することで、パディングソースが利用可能であるかどうかを判断する必要がなく、直接それを利用することを明確にしました。
これにより、補正後の請求項(特許請求の範囲)に基づき技術的特徴を特定することができるとともに、当該技術的特徴が引用文献1に記載されていないことが明確になったと思料します。
以上のように、引用文献1は,補正後の請求項1の技術的解決手段を開示又は教示するものではありません。また、補正後の請求項1の構成は引用文献2にも記載も示唆もされていません。したがって、補正後の請求項1は、新規性及び進歩性を有すると思料します。」
上記(1)(3)の主張は、結局のところ、本件補正発明は、構成Dに関して、「境界ピクセルのそれぞれの1つが利用可能であると決定することなく」という事項を含むのに対して、引用発明はこのような事項を含まない点で異なるというものであるが、上記6(6)の一応の相違点に対する判断のとおり、実質的なものではない、又は当業者が適宜なし得た事項であるといえる。
また、上記(2)の主張について、引用発明の構成c3の「利用可能としてマークされた左/右/上/下のサンプルからパディングを行う」というのは、上記6(3)のように、現在のCUの外にある利用不可能としてマークされたルーマサンプルに対して、境界をまたいで隣接し、境界の内側にある、最も近いルーマピクセルによってパディングされるというものであって、例えばパディングに用いられるルーマサンプルが右にあれば右の、左や上や下にあれば左や上や下のサンプルを用いてパディングすることを、上下左右の全方向について特定しているものであり、構成c3においてパディングするサンプルの方向が特定されていないことは、何ら引用発明が不明確であることを裏付けるものではなく、引用発明は明確である。
そして、本件補正発明は、上記の技術水準についての理解を踏まえた引用発明と実質的に同一であるか、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。
以上のとおり、審判請求人の主張は採用できない。
また、令和5年8月29日付け上申書における補正案については、これを採用する合理的な理由は見当たらない。
7 小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明である、又は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3項に該当する、又は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。
8 補正の却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本件発明について
1 本件発明
令和5年6月7日にされた手続補正は上記第2のとおり却下されたので、本件の請求項に係る発明は、令和5年1月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記第2の1のア(本件補正前の請求項1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。
「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特表2018-514119号公報」
3 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1に記載された発明は上記第2の4(2)の「引用発明の認定」に示したとおりである。
4 対比、判断
本件発明は、本件補正発明から、構成Dの「前記境界ピクセルのそれぞれに対応する相応の輝度サンプルを、前記境界ピクセルのそれぞれの1つが利用可能であると決定することなく、前記1つまたは複数の隣接ピクセルの各ピクセルに対応する輝度サンプルに割り当てること」について、輝度サンプルが境界ピクセル「のそれぞれ」対応すること、及び「前記境界ピクセルのそれぞれの1つが利用可能であると決定することなく」という事項を取り除くとともに、「境界は、第1の境界と、前記第1の境界に直交する第2の境界とのうちの少なくとも1つを含む、」という発明特定事項を構成Gとして加えたものである。
ところで、当該構成Gは、上記第2の「2 補正の適否」において示したように、実質的に「境界」が存在すること以上の事項を特定したものでなく、特定を除くものでもないといえる。
ところで、上記第2の6の「対比及び判断」の「(6)一応の相違点に対する判断」のとおり、本件補正発明は、引用発明であるといえる、又は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうすると、本件補正発明から上記下線の事項を除き、さらに「境界」に対して何ら特定するものでなく、特定を除くものでもない、本件発明も同様の理由により、引用発明であるといえる、又は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明であるか、又は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-009475