特許拒絶査定不服審判
2022-008196
ビデオコーディングの方法、ビデオコーディングデバイス、コンピュータ可読記憶媒体およびコンピュータプログラム
- 審判番号
- 2022-008196
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-127431
- 請求日
- 2022年05月31日
- 審決日
- 2023年05月09日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ベイジン ダジア インターネット インフォメーション テクノロジー カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】宮田 英毅
- 【請求人代理人】酒井 宏明
- 審判長/審判官
- 審判長 畑中 高行
- 審判官 川崎 優
- 審判官 國分 直樹
- 分類
- P18 .161-WY (H04N) / P18 .113-WY (H04N) / P18 .121-WY (H04N) / P18 .537-WY (H04N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第184条の4第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-127431「ビデオコーディングの方法、ビデオコーディングデバイス、コンピュータ可読記憶媒体およびコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月16日出願公開、特開2021-192510、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)1月9日(優先権主張 平成31年1月9日)を国際出願日とする出願である特願2021-540266号の一部を令和3年8月3日に特願2021-127431号として新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年11月 5日付け :拒絶理由通知書
令和 4年 1月17日 :手続補正書、意見書の提出
同年 1月25日付け :拒絶査定
同年 5月31日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 8月 2日付け :前置報告書
同年 9月20日 :上申書の提出
令和 4年11月30日付け :当審拒絶理由通知書
令和 5年 3月 2日 :手続補正書、意見書の提出
同年 3月24日付け :当審拒絶理由通知書(最後)
同年 3月30日 :手続補正書、意見書の提出
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
●理由1(特許法第29条第1項第3号)について
・請求項 1~5、7、8、10~14、16、17、19、20
・引用文献等 1
引用文献1には、
現在のコーディングブロックに関連付けられる参照画像リスト内の参照画像を取得することと(第3.4.10.2欄;インター予測では当然のことである)、
現在の画像から前記参照画像への動きベクトルに基づいて、インター予測を生成することと(同上)、
前記現在のコーディングブロックに関連付けられるイントラ予測モードを取得することと(第3.4.10.1欄)、
前記イントラ予測モードに基づいて、前記現在のコーディングブロックのイントラ予測を生成することと(第3.4.10.2欄)、
前記インター予測と前記イントラ予測を加重平均することにより、前記現在のコーディングブロックの最終予測を生成することと(同上)、
前記現在のコーディングブロックが、最も可能性の高いモード(MPM)ベースのイントラモード予測に対して、インターモードまたはイントラモードのどちらとして扱われるかを特定することと(第3.4.10.1欄の第2パラグラフの第7~8行目の「block X is not predicted using CIIP mode or the intra mode」という記載に鑑みれば、CIIPのブロックは少なくともインターモードとして扱われているといえる。)、
を含むビデオコーディングの方法
が記載されている。
(1)請求項1の記載について
請求項1には、「隣接するコーディングブロックの最も可能性の高いモード(MPM)リストが構築される時に、前記現在のコーディングブロックがインターモードとして扱われると特定し、または、前記隣接するコーディングブロックのMPMリストが構築される時に、前記現在のコーディングブロックがイントラモードとして扱われると特定すること」と記載されている。
そして、当該記載は、以下の2つの発明を択一的に請求するものであると解される。
(発明1A)隣接するコーディングブロックの最も可能性の高いモード(MPM)リストが構築される時に、前記現在のコーディングブロックがインターモードとして扱われると特定する発明。
(発明1B)前記隣接するコーディングブロックのMPMリストが構築される時に、前記現在のコーディングブロックがイントラモードとして扱われると特定する発明。
よって、以下、発明1Aと発明1Bについて、個別に検討する。
(2)発明1Aについて
引用文献1の第3.4.10.1欄の第2パラグラフの第7~8行目には、「block X is not predicted using CIIP mode or the intra mode」と記載されており、当該記載に鑑みれば、CIIPのブロックはインターモードとして扱われているといえる。
また、その余の点は、先の拒絶理由通知書で述べたとおりである、すなわち、本願の請求項1に係る発明のうち、その余の点に関しては、引用文献1に記載されているといえる。
よって、発明1Aは、引用文献1に記載された発明である。
(3)発明1Bについて
引用文献1の第3.4.10.1欄によれば、隣接ブロックがCIIPである場合には、そのブロックのイントラ予測モードを用いてMPMが構築されるのであるから、CIIPのブロックはイントラモードとして扱われているともいい得るものである。
よって、発明1Bは、引用文献1に記載された発明である。
(4)まとめ
以上によれば、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明である。
また、本願の請求項10、19、20に係る発明も、引用文献1に記載された発明である。
また、本願の請求項2~5、7、8、11~14、16、17に係る発明も、引用文献1に記載された発明である。
●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 1~5、7、8、10~14、16、17、19、20
・引用文献等 1
上記理由1で述べたとおりであり、本願の上記各請求項に係る発明は、引用文献1により、進歩性も認められない。
・請求項 6、15
・引用文献等 1、2
現在の画像までのPOC距離がより小さい1つの参照画像を用いることは、引用文献2の段落0398、図51の「POC選択」に記載されている。
・請求項 9、18
・引用文献等 1、3
BDOFを無効にすることは、引用文献3のp.154の下から2行目のsps_bdof_enabled_flag、p.155の7行目のbdofFlagを参照。
<引用文献等一覧>
1.Jianle Chen et al., "Algorithm description for Versatile Video Coding and Test Model 3 (VTM 3)", Joint Video Experts Team (JVET), 2018-12-24, [JVET-L1002-v1] (version 2), pp.35-36
2.国際公開第2013/047811号
3.Benjamin Bross et al., "Versatile Video Coding (Draft 3)", Joint Video Experts Team (JVET), 2019-01-08, [JVET-L1001-v9] (version 13), pp.154-157
●理由3(特許法第36条第6項第2号)について
・請求項 1~20
請求項1には、「隣接するコーディングブロックの最も可能性の高いモード(MPM)リストが構築される時に、前記現在のコーディングブロックがインターモードとして扱われると特定し、または、前記隣接するコーディングブロックのMPMリストが構築される時に、前記現在のコーディングブロックがイントラモードとして扱われると特定すること」と記載されているが、該記載では、依然として、MPMリストの構築と、現在のコーディングブロックをインターモードとして扱うこと、または、現在のコーディングブロックをイントラモードとして扱うことの間の技術的関係が不明確である。
そのため、隣接するコーディングブロックのMPMリストが構築される時に、現在のコーディングブロックがインターモードとして扱われる、とは、どのようなことであるのかが不明確である。
同様に、隣接するコーディングブロックのMPMリストが構築される時に、現在のコーディングブロックがイントラモードとして扱われる、とは、どのようなことであるのかが不明確である。
また、以上の点は、請求項2~20においても明らかにされておらず、同様に不明確である。
第3 当審拒絶理由の概要
令和4年11月30日付けの当審が通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。
(拡大先願)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた下記の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。
記
請求項1-7、9-15、17-18に対して:
先願.PCT/CN2019/123845号(国際公開2020/114513号;当該国際出願は特表2022-511850号として公表)
上記請求項に記載された発明は先願明細書等に記載されている発明と同一の発明であって、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
第4 本件補正発明
本件の請求項1に係る発明は、令和5年3月30日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本件補正発明1」という。)であり、以下のとおりのものである。
なお、各構成の符号A~Hは、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A~構成Hと称する。
【請求項1】
A 現在のコーディングブロックに関連付けられる参照画像リスト内の参照画像を取得することと、
B 現在の画像から前記参照画像への動きベクトルに基づいて、インター予測を生成することと、
C 前記現在のコーディングブロックに関連付けられるイントラ予測モードを取得することと、
D 前記イントラ予測モードに基づいて、前記現在のコーディングブロックのイントラ予測を生成することと、
E 前記インター予測と前記イントラ予測を加重平均することにより、前記現在のコーディングブロックの最終予測を生成することと、
F 隣接するコーディングブロックの最も可能性の高いモード(MPM)リストが構築される時に、前記現在のコーディングブロックがインターモードとして扱われると特定し、F1 且つ、前記現在のコーディングブロックのイントラモードを使用不可としてマークすることと、
G を含むビデオコーディングの方法であって、
H 双方向オプティカルフロー(BDOF)動作は、前記現在のコーディングブロックに対して、無効にされている、
G ビデオコーディングの方法。
また、本件の上記手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2ないし16に記載された事項により特定される発明(以下、「本件補正発明2ないし16」といい、本件補正発明1と本件補正発明2ないし16を合わせて「本件補正発明」という。)は以下のとおりのものである。
【請求項2】
前記現在のコーディングブロックが前記参照画像リストL0内の1つの参照画像から予測されるときに、前記参照画像リストはL0である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記現在のコーディングブロックが前記参照画像リストL1内の1つの参照画像から予測されるときに、前記参照画像リストはL1である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記現在のコーディングブロックが、前記参照画像リストL0内の1つの第1の参照画像と前記参照画像リストL1内の1つの第2の参照画像から予測されるときに、前記参照画像リストはL0である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記現在のコーディングブロックが、前記参照画像リストL0内の1つの第1の参照画像と前記参照画像リストL1内の1つの第2の参照画像から予測されるときに、前記参照画像リストはL1である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記参照画像リストは、前記現在のコーディングブロックが、前記参照画像リストL0内の1つの第1の参照画像と前記参照画像リストL1内の1つの第2の参照画像から予測されるときに、前記現在の画像までの画像順序カウント(POC)距離がより小さい1つの参照画像に関連付けられるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記現在のコーディングブロックは、MPMベースのイントラモード予測に対して、インターモードとして扱われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1つまたは複数のプロセッサと、前記1つまたは複数のプロセッサに結合される1つまたは複数の記憶装置とを含むビデオコーディングデバイスであって、
現在のコーディングブロックに関連付けられる参照画像リスト内の参照画像を取得することと、
現在の画像から前記参照画像への動きベクトルに基づいて、インター予測を生成することと、
前記現在のコーディングブロックに関連付けられるイントラ予測モードを取得することと、
前記イントラ予測モードに基づいて、前記現在のコーディングブロックのイントラ予測を生成することと、
前記インター予測と前記イントラ予測を加重平均することにより、前記現在のコーディングブロックの最終予測を生成することと、
隣接するコーディングブロックの最も可能性の高いモード(MPM)リストが構築される時に、前記現在のコーディングブロックがインターモードとして扱われると特定し、且つ、前記現在のコーディングブロックのイントラモードを使用不可としてマークすることと、
を含む動作が実行するように構成されるビデオコーディングデバイスであって、
双方向オプティカルフロー(BDOF)動作は、前記現在のコーディングブロックに対して、無効にされている、ビデオコーディングデバイス。
【請求項9】
前記現在のコーディングブロックが前記参照画像リストL0内の1つの参照画像から予測されるときに、前記参照画像リストはL0である、請求項8に記載のビデオコーディングデバイス。
【請求項10】
前記現在のコーディングブロックが前記参照画像リストL1内の1つの参照画像から予測されるときに、前記参照画像リストはL1である、請求項8に記載のビデオコーディングデバイス。
【請求項11】
前記現在のコーディングブロックが、前記参照画像リストL0内の1つの第1の参照画像と前記参照画像リストL1内の1つの第2の参照画像から予測されるときに、前記参照画像リストはL0である、請求項8に記載のビデオコーディングデバイス。
【請求項12】
前記現在のコーディングブロックが、前記参照画像リストL0内の1つの第1の参照画像と前記参照画像リストL1内の1つの第2の参照画像から予測されるときに、前記参照画像リストはL1である、請求項8に記載のビデオコーディングデバイス。
【請求項13】
前記参照画像リストは、前記現在のコーディングブロックが、前記参照画像リストL0内の1つの第1の参照画像と前記参照画像リストL1内の1つの第2の参照画像から予測されるときに、前記現在の画像までの画像順序カウント(POC)距離がより小さい1つの参照画像に関連付けられるものである、請求項8に記載のビデオコーディングデバイス。
【請求項14】
前記現在のコーディングブロックは、MPMベースのイントラモード予測に対して、インターモードとして扱われる、請求項8に記載のビデオコーディングデバイス。
【請求項15】
1つまたは複数のプロセッサを有するコンピューティングデバイスによって実行される複数のプログラムを格納する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記複数のプログラムは、前記1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、請求項1~7のいずれかに記載の方法を、前記コンピューティングデバイスに実行させる、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
プロセッサによって実行されるときに、請求項1~7のいずれかに記載の方法のステップを実施するインストラクションを含むコンピュータプログラム。」
第5 先願の記載、先願発明、先願発明の前提技術事項について
(1)上記第3のとおり、先願である(PCT/CN2019/123845号)は、本件出願の優先日前の優先権を主張する外国語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた外国語特許出願である。
先願の優先権主張の基礎となる出願である、米国特許仮出願62/776491号(以下、「先願の優先権基礎出願」という。)は、本件出願の優先日である2019年1月9日以前の2018年12月7日を出願日とする特許出願である。
そして、先願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲、又は図面(以下、「先願明細書等」という。)と、先願の優先権基礎出願の出願日における出願の明細書、特許請求の範囲、又は図面(以下、「先願の優先権基礎の明細書等」という。)とを比較すると、少なくとも先願の優先権基礎出願の明細書等の
・第9頁下から4行~第10頁第3行、
・第28頁下から3行~第29頁第5行、
・第30頁下から10行~第31頁第6行、
・第46頁第14行~第47頁第5行、は、
先願明細書等に係る国際公開の
・第13頁下から6行~最終行、
・第38頁第13行~20行、
・第41頁第2行~第16行、
・第60頁第3行~最終行と共通の記載がなされている。
ここで、先願明細書等と先願の優先権基礎出願の明細書等に共通して記載された事項から、先願に記載された発明を認定し、特許法第29条の2の規定の適用に関しては、先願は、先願の優先権基礎出願の出願日である、2018年12月7日に出願がなされたものとして扱う。各摘記記載の末尾の頁数及び行数は、先願明細書等に係る国際公開のものである。また、仮訳として先願に対応する日本語のファミリである特表2022-511850号における対応する記載(【】付き数字は段落番号である。)を示す。)
(2)先願には以下の記載がある。
「For convenience of description, embodiments of the invention are described herein, for example, by reference to High-Efficiency Video Coding (HEVC) or to the reference software of Versatile Video coding (VVC) , the next generation video coding standard developed by the Joint Collaboration Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T Video Coding Experts Group (VCEG) and ISO/IEC Motion Picture Experts Group (MPEG) . One of ordinary skill in the art will understand that embodiments of the invention are not limited to HEVC or VVC.」(第13頁下から6行~最下行)
(仮訳:【0045】
説明の便宜上、本発明の実施形態は、ここで、例えば高効率ビデオ符号化(High-Efficiency Video Coding (HEVC))、又はバーサタイルビデオ符号化(Versatile Video coding(VVC))のリファレンスソフトウェア、ITU-Tビデオ符号化専門家グループ(ITU-T Video Coding Experts Group (VCEG))及びISO/IEC動画専門家グループ(Motion Picture Experts Group (MPEG))のビデオ符号化に関する共同作業部会(Joint Collaboration Team on Video Coding (JCT-VC))により開発された次世代ビデオ符号化標準を参照して説明される。当業者は、本発明の実施形態がHEVC又はVVCに限定されないことを理解するだろう。)
「Conventionally, a coding unit is either intra-predicted (i.e. using the reference samples in the same picture) or inter-predicted (i.e. using the reference samples in other pictures) . The multi-hypothesis prediction combines these two prediction approaches. Therefore, it is sometimes also called as combined inter-intra prediction (CIIP) . When combined inter-intra prediction is enabled, the intra-predicted and inter-predicted samples are applied by weights, and the final prediction is derived as the weighted average samples.
A flag, multi-hypothesis prediction (CIIP) flag, is used to indicate when a block is applied with combined inter-intra prediction.
」(第38頁第13~20行)
(仮訳:「【0117】
・・・従来、符号化単位は、イントラ予測されるか(つまり、同じピクチャ内の参照サンプルを用いて)、又はインター予測されるか(つまり、他のピクチャの中の参照サンプルを用いて)のいずれかである。多仮説予測は、これらの2つの予測アプローチを結合する。従って、それは、時に結合インターイントラ予測(combined inter-intra prediction (CIIP))とも呼ばれる。結合インターイントラ予測が有効にされると、イントラ予測及びインター予測されたサンプルは重みにより適用され、最終的な予測は、加重平均サンプルとして導出される。
【0118】
フラグ、多仮説予測(CIIP)フラグは、ブロックが結合インターイントラ予測を適用されるときを示すために使用される。」)
「Most Probable Mode (MPM) list is used in intra mode coding to improve coding efficiency. Due to the large number of intra modes (e.g. 35 in HEVC and 67 in VVC) , the intra mode of current block is not signaled directly. Instead, a Most Probable Mode list of current block is constructed based on its neighboring blocks’ intra prediction modes. As current block’s intra mode is relevant to its neighbors’, the MPM list usually provides a good prediction as its name (Most Probable Mode list) indicates, thus the intra mode of current block has a high chance falling into its MPM list. In this way, to derive the intra mode of current block, only the index of MPM list is signaled. Compared to the number of total intra modes, the length of MPM list is much smaller (e.g. 3-MPM list is used in HEVC and 6-MPM list is used in VVC) , thus less bits are required to code the intra mode. A flag (mpm_flag) is used to indicate whether current block’s intra mode belongs to its MPM list or not. If it is true, the intra mode of current block can be indexed using MPM list. Otherwise, the intra mode is directly signaled using a binarized code. In both VVC and HEVC, the MPM list is constructed based on its neighboring left and top blocks. When the left neighbor block and top neighbor block of the current block are unavailable for prediction, a default mode list is used.」(第41頁第2~16行)
(仮訳:「【0130】
・・・
最確モード(Most Probable Mode (MPM))リストは、符号化効率を向上するためにイントラモード符号化で使用される。多数のイントラモード(例えば、HEVCでは35、VVCでは67)により、現在ブロックのイントラモードは、直接シグナリングされない。代わりに、現在ブロックの最確モードリストは、その近隣ブロックのイントラ予測モードに基づき構築される。現在ブロックのイントラモードはその近隣のものに関連するので、MPMリストは、通常、その名称(最確モードリスト)が示すように、良好な予測を提供する。従って、現在ブロックのイントラモードはそのMPMリストに包含される高い可能性を有する。この方法では、現在ブロックのイントラモードを導出するために、MPMリストのインデックスのみがシグナリングされる。全部のイントラモードの数に比べて、MPMリストの長さは遙かに小さく(例えば、HEVCでは3-MPMリストが使用され、VVCでは6-MPMリストが使用される)、従って、イントラモードを符号化するために少ないビットしか必要ない。フラグ(mpm_flag)は、現在ブロックのイントラモードがそのMPMリストに属するか否かを示すために使用される。属する場合、現在ブロックのイントラモードは、MPMリストを用いてインデックス付けできる。その他の場合、イントラモードは、2値化コードを用いて直接シグナリングされる。VVC及びHEVCの両方で、MPMリストは、その近隣の左及び上のブロックに基づき構築される。現在ブロックの左近隣ブロック及び上近隣ブロックが予測のために利用不可能であるとき、規定モードリストが使用される。」)
「In addition to above six embodiments, one additional feature of MH blocks can be that MH blocks do not have to be considered as intra blocks consistently. In one example, when searching for motion vector predictors of the current block, if its neighboring blocks are MH block then these MH blocks’ motion vector can be considered as motion vector predictors. In this case, the inter-prediction information of MH blocks is used and hence MH blocks are not considered as intra blocks anymore. In another example, when constructing MPM list for intra blocks, the neighboring MH blocks of the current block can be considered as including no intra information. Therefore, when checking those MH blocks’ availability for current block’s MPM list construction, they are labeled as NOT available. Note that the MH blocks mentioned in this paragraph is not only limited to the MH blocks that are used to determine the Bs value of the deblocking filter.
In addition to above six embodiments, one additional feature of MH blocks can be that MH blocks are considered as intra blocks consistently. In one example, when searching for motion vector predictors of the current block, if its neighboring blocks are MH block then these MH blocks’ motion vector are excluded from motion vector predictors. In this case, the inter-prediction information of MH blocks is NOT used and hence MH blocks are considered as intra blocks. In another example, when constructing MPM list for intra blocks, the neighboring MH blocks of the current block can be considered as including intra information. Therefore, when checking those MH blocks’ availability for current block’s MPM list construction, they are labeled as available. Note that the MH blocks mentioned in this paragraph is not only limited to the MH blocks that are used to determine the Bs value of the deblocking filter.」(第60頁第3行~最終行)
(仮訳:【0250】
上述の6個の実施形態に加えて、MHブロックの1つの更なる特徴は、MHブロックが一貫してイントラブロックと考えられる必要がないことであり得る。一例では、現在ブロックの動きベクトル予測子を検索するとき、その近隣ブロックがMHブロックである場合、これらのMHブロックの動きベクトルは、動きベクトル予測子と考えることができる。この場合、HMブロックのインター予測情報が使用され、従って、HMブロックはもはやイントラブロックと考えられない。別の例では、イントラブロックのMPMリストを構築するとき、現在ブロックの近隣MHブロックは、イントラ情報を含まないと考えることができる。従って、現在ブロックのMPMリスト構築のために、それらのMHブロックの利用可能性をチェックするとき、それらは利用不可能とラベル付けされる。この段落で言及されるMHブロックは、デブロッキングフィルタのBs値を決定するために使用されるMHブロックにのみ限定されないことに留意する。
【0251】
上述の6個の実施形態に加えて、MHブロックの1つの更なる特徴は、MHブロックが一貫してイントラブロックと考えられることであり得る。一例では、現在ブロックの動きベクトル予測子を検索するとき、その近隣ブロックがMHブロックである場合、これらのMHブロックの動きベクトルは、動きベクトル予測子から除外される。この場合、HMブロックのインター予測情報が使用されず、従って、HMブロックはイントラブロックと考えられる。別の例では、イントラブロックのMPMリストを構築するとき、現在ブロックの近隣MHブロックは、イントラ情報を含むと考えることができる。従って、現在ブロックのMPMリスト構築のために、それらのMHブロックの利用可能性をチェックするとき、それらは利用可能とラベル付けされる。この段落で言及されるMHブロックは、デブロッキングフィルタのBs値を決定するために使用されるMHブロックにのみ限定されない。」)
上記先願明細書等の記載から、上記先願明細書等には以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。
(先願発明)
現在ブロックに隣接するMH(多仮説予測(結合インターイントラ予測))ブロックに関して、(第60頁第9行(【0250】)、第38頁第14~16行(【0117】))
結合インターイントラ予測が有効にされると、イントラ予測及びインター予測されたサンプルは重みにより適用され、最終的な予測は、加重平均サンプルとして導出され、(第38頁第13~20行(【0117】)
現在ブロックのMPM(最確モード)リスト構築のために、MHブロックはイントラ情報を含まないと考えることで、現在ブロックに隣接するMHブロックの利用可能性をチェックするとき、それらは利用不可能とされる処理を行う、(第60頁第8~11行(【0250】)、第41頁第2~9行(【0130】))
HEVCまたはVVCのリファレンスソフトウェアを参照して説明される(第13頁下から6行~最下行(【0045】))、
現在ブロックのMPM構築方法。
(3)また、先願発明はVVCのリファレンスソフトウェアを参照して説明されるところ、VVCに関する本件優先権主張日当時の技術水準を示す文献であり、原査定における引用文献3である、Benjamin Bross et al., "Versatile Video Coding (Draft 3)", Joint Video Experts Team (JVET) of ITU-T SG 16 WP3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG11 12th Meeting: Macao, CN,3-12 Oct. 2018 Document JVET-L1009-v9(version13)、2019年1月8日、 [JVET-L1001-v9], pp.53の第27~28行には、pp.154のsps_bdof_enabled_flagに関連して、以下の記載がある。
sps_bdof_enabled_flag equal to 0 specifies that the bidirectional optical flow inter prediction is disabled. sps_bdof_enabled_flag equal to 1 specifies that the bidirectional optical flow inter prediction is enabled.
(仮訳:sps_bdof_enabled_flagが0であることは、双方向オプティカルフローインター予測が無効化されることを示し、sps_bdof_enabled_flag equalが1であることは双方向オプティカルフローインター予測が有効化されることを示す。)
以上の記載から、先願発明に関するVVCの前提とする技術事項として、以下の技術事項(以下、「VVCの前提技術事項」という。)があるといえる。
「VVCにおいて、双方向オプティカルフローインター予測が無効化されうること」
第6 当審拒絶理由が解消したかどうかについての判断
1 本件補正発明1と先願発明との対比
(1)先願発明の「現在ブロックに隣接するMH(多仮説予測(結合インターイントラ結合))ブロック」に対して、「結合インターイントラ予測が有効にされると、イントラ予測及びインター予測されたサンプルは重みにより適用され、最終的な予測は、加重平均サンプルとして導出され」るという処理は、本件補正発明1の「現在のコーディングブロック」に対して、構成A~Eの処理を行い、「現在のコーディングブロックの最終予想を生成すること」に相当する。
(2-1)まず、先願発明の「現在ブロックのMPMリスト」は、本件発明1の構成Fのうち「隣接するコーディングブロックの最も可能性の高いモード(MPM)リスト」に相当する。
次に、先願発明において「現在ブロックのMPM(最確モード)リスト構築のために、MHブロックはイントラ情報を含まないと考えられる」ことについて、元々「MHブロック」は「インター予測及びイントラ予測されたサンプル」を含むことから、イントラ情報を含まないと考えられたMHブロックは、インターモードとして扱われるものといえる。
そうすると、先願発明の「現在ブロックのMPM(最確モード)リスト構築のために、MHブロックはイントラ情報を含まないと考えられることで、現在ブロックに隣接するMHブロックの利用可能性をチェックする」ことは、本件補正発明1の構成Fと同様に、「隣接するコーディングブロックの最も可能性の高いモード(MPM)リストが構築される時に、前記現在のコーディングブロックがインターモードとして扱われると特定」されるものといえる。
(2-2)ここで、本件補正発明1の構成Fにおける「隣接するコーディングブロック」のMPMリストの構築にあたっては、当該隣接するコーディングブロックがイントラ予測を含む予測を行う場合に、イントラ予測モードの情報だけが用いられうるのであって、その他の情報、例えばインター予測により得られた情報、が用いられうるわけではないことが前提とされているといえる。
そうすると、この構成Fを前提とする、構成F1の「且つ、現在のコーディングブロックのイントラモードを使用不可としてマークする」のであれば、現在のコーディングブロックのその他の情報、例えばインター予測において得られる情報は、隣接するコーディングブロックのイントラ予測には利用されないといえる。
以上から、本件発明の構成Fを前提とする、構成F1の「且つ、前記現在のコーディングブロックのイントラモードを使用不可としてマークすること」においては、現在のコーディングブロックがインターモードとして扱われると特定し、且つ、MPMリストの構築において、現在のコーディングブロックのイントラ予測モードに関する情報も、その他の情報、例えばインター予測より得られた情報、も使用されないことになる。
これは、先願発明の「MHブロックはイントラ情報を含まないと考えることで、現在ブロックに隣接するMHブロックの利用可能性をチェックするとき、それらは利用不可能とされる処理を行う」ことに他ならない。
(2-3)なお、審判請求人は令和5年3月2日付け意見書の(1)において、以下のとおり主張している。
「引用文献1は、「別の例では、イントラブロックのMPMリストを構築するとき、現在ブロックの近隣MHブロックは、イントラ情報を含まないと考えることができる」、すなわち、現在ブロックの近隣MHブロックは、インター予測ブロックだと考えられる、ことを開示している。出願人はこれに同意いたしません。引用文献1は、上記開示の後に、「従って、現在ブロックのMPMリスト構築のために、それらのMHブロックの利用可能性をチェックするとき、それらは利用不可能とラベル付けされる」と明記しています。
MHブロックがインター予測としてマークされることを示す記載および実施形態はなく、当業者であれば、MHブロックを利用不可能としてマークすることと、MHブロックのイントラ予測を利用不可能として単にマークすることとは、概念が全体的に異なると理解するはずです。よって、出願人は前回応答書で提示した反論を主張いたします。」
しかしながら、MHブロックとは結合インターイントラ予測ブロックであることから、インター予測及びイントラ予測の双方の予測に用いられた情報を含むものである。
そして、上記の性質を有するMHブロックについて、そのうちのイントラ予測に用いられた情報を含まないと考えることで、イントラ予測に利用不可能とする処理を行うのであるから、当該MHブロックはインター予測ブロックとして考えられるようにするものといえる。
以上より、本件補正発明1と先願発明との対比において、審判請求人の上記主張を採用するものではない。
(3)先願発明における「現在ブロックのMPM構築方法」は、先願発明がビデオ符号化に関する標準である、HEVCまたはVVCのリファレンスソフトウェアを参照して説明されるもの、すなわちこれらの標準を前提とする以上、ビデオ符号化の一つの工程であり、本件補正発明1の構成Gの「ビデオコーディングの方法」に相当するといえる。
(4)一方、本件補正発明1の構成F、F1における「隣接するコーディングブロックのMPMリストが構築される時に」「現在のコーディングブロックがインターモードとして扱われると特定」され、「且つ、前記現在のコーディングブロックのイントラモードを使用不可としてマーク」された、「現在のコーディングブロック」に対して、双方向オプティカルフロー動作が現在のコーディングブロックに対して有効または無効とされているかどうかについて、本件補正発明1は構成Hに特定されるように、「双方向オプティカルフロー(BDOF)動作は、前記現在のコーディングブロックに対して、無効にされている」のに対して、先願発明は、双方向オプティカルフロー動作が現在のコーディングブロックに対して有効または無効とされているかどうかについては何ら特定していない。
また、VVCにおいて、双方向オプティカルフロー動作を、現在のコーディングブロックのインター予測に対して無効化されうること自体は、上記第5の(3)から、先願発明に関するVVCの前提技術事項であるといえる
しかしながら、当該前提技術事項は、本件補正発明1の構成F、F1において特定される「現在ブロックに隣接する」「隣接するコーディングブロックのMPMリストが構築される時に」「現在のコーディングブロックがインターモードとして扱われると特定」され、「且つ、前記現在のコーディングブロックのイントラモードを使用不可としてマーク」された、「現在のコーディングブロック」に対して無効化することを意図したものではない。
(5)以上のとおりであるから、本件補正発明1と先願発明とは同一の発明であるということはできない。
2 本件補正発明2ないし16について
請求項1を引用する本件補正発明2ないし7、本件補正発明1をビデオコーディングデバイスという物の発明として特定した本件補正発明8、請求項8を引用する本件補正発明9ないし14、請求項1~7のいずれかに記載の方法を、1つまたは複数のプロセッサを有するコンピューティングデバイスによって実行される複数のプログラムを有する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を請求する本件補正発明15、プロセッサによって実行されるときに、請求項1~7のいずれかに記載の方法のステップを実行するインストラクションを含むコンピュータプログラムを請求する本件補正発明16についても、上記1と同様に、先願発明と同一の発明であるということはできない。
3 小括
以上1、2のとおり、本件補正発明は、当審拒絶理由を解消したものといえる。
第6 原査定についての判断
次に、本件補正発明が、上記第2の原査定の理由を解消したかについて、以下に検討する。
1 理由3(発明の明確性)について
原査定の拒絶の理由3において、解消していない拒絶理由として、
「請求項1には、「隣接するコーディングブロックの最も可能性の高いモード(MPM)リストが構築される時に、前記現在のコーディングブロックがインターモードとして扱われると特定し、または、前記隣接するコーディングブロックのMPMリストが構築される時に、前記現在のコーディングブロックがイントラモードとして扱われると特定すること」と記載されているが、該記載では、依然として、MPMリストの構築と、現在のコーディングブロックをインターモードとして扱うこと、または、現在のコーディングブロックをイントラモードとして扱うことの間の技術的関係が不明確である。
そのため、隣接するコーディングブロックのMPMリストが構築される時に、現在のコーディングブロックがインターモードとして扱われる、とは、どのようなことであるのかが不明確である。
同様に、隣接するコーディングブロックのMPMリストが構築される時に、現在のコーディングブロックがイントラモードとして扱われる、とは、どのようなことであるのかが不明確である。」という理由が示されている。
これに対して、令和5年3月30日付け手続補正書により補正された本件補正発明1の構成Eのように、「前記インター予測と前記イントラ予測を加重平均することにより、前記現在のコーディングブロックの最終予測を生成する」もの、すなわち、インター予測とイントラ予測を加重平均することにより最終予測を生成することで得られる現在の統合インターイントラ予測された(CIIP)コーディングブロックに関して、構成F、F1のように、「隣接するコーディングブロックの最も可能性の高いモード(MPM)リストが構築される時に、前記現在のコーディングブロックがインターモードとして扱われると特定し、且つ、前記現在のコーディングブロックのイントラモードを使用不可としてマークする」、すなわち、隣接するコーディングブロックのMPMリストが構築されるときに、現在のCIIPコーディングブロックをインターモードとして扱い、イントラモードが使用不可としてマークされることが特定された。
上記補正により、MPMリストの構築と、現在のコーディングブロックをインターモードとして扱うこととの技術的関係が明確であるといえ、本件補正発明1については、上記理由3は解消された。
2 理由1、2(新規性、進歩性)について
(1)引用文献の記載及び引用発明について
原査定の引用文献1は、そのタイトルが”Algorithm description for Versatile Video Coding and Test Model 3 (VTM 3)”であり、VVCに関するテストモデルVTM3に関するものであるところ、引用文献1には、以下の記載がある。
ア 「3.4.10 Combined inter and intra prediction (CIIP)
In VTM3, when a CU is coded in merge mode, and if the CU contains at least 64 luma samples (that is, CU width times CU height is equal to or larger than 64), an additional flag is signalled to indicate if the combined inter/intra prediction (CIIP) mode is applied to the current CU.
In order to form the CIIP prediction, an intra prediction mode is first derived from two additional syntax elements. Up to four possible intra prediction modes can be used: DC, planar, horizontal, or vertical.
Then, the inter prediction and intra prediction signals are derived using regular intra and inter decoding processes. Finally, weighted averaging of the inter and intra prediction signals is performed to obtain the CIIP prediction.」(pp.35第2~10行)
(仮訳:
3.4.10 CIIP(複合インター・イントラ予測)
VTM3では、CUがマージモードで符号化され、CUが少なくとも64個のルマサンプルを含む場合(すなわち、CU幅×CU高さが64以上)、現在のCUに複合インター/イントラ予測(CIIP)モードが適用されているかどうかを示す追加フラグがシグナリングされる。
CIIP予測を形成するために、イントラ予測モードは、最初に2つの追加シンタックス要素から導出される。最大で4つの可能なイントラ予測モードを使用することができる:それらはDC、PLANAR、水平、垂直である。
次に、通常のイントラおよびインター復号化処理を用いて、インター予測信号およびイントラ予測信号を導出する。最後に、インター予測信号とイントラ予測信号の重み付け平均を行い、CIIP予測値を得る。)
イ 「3.4.10.1 Intra prediction mode derivation
Up to 4 intra prediction modes, including DC, PLANAR, HORIZONTAL, and VERTICAL modes, can be used to predict the luma component in the CIIP mode. If the CU shape is very wide (that is, width is more than two times of height), then the HORIZONTAL mode is not allowed. If the CU shape is very narrow (that is, height is more than two times of width), then the VERTICAL mode is not allowed. In these cases, only 3 intra prediction modes are allowed.
The CIIP mode uses 3 most probable modes (MPM) for intra prediction.The CIIP MPM candidate list is formed as follows:
- The left and top neighbouring blocks are set as A and B, respectively
- The intra prediction modes of block A and block B, denoted as intraModeA and intraModeB, respectively, are derived as follows:
o Let X be either A or B
o intraModeX is set to DC if 1) block X is not available; or 2) block X is not predicted using the CIIP mode or the intra mode; 3) block B is outside of the current CTU.」(pp.35第11~24行)
(仮訳:
3.4.10.1 イントラ予測モードの導出
CIIPモードでは、DCモード、PLANARモード、水平モード、垂直モードの最大4つのイントラ予測モードを使用して、ルマ成分を予測することができる。CU形状が非常に広い場合(すなわち、幅が高さの2倍以上)、HORIZONTALモードは許可されない。CUの形状が非常に狭い場合(つまり、高さが幅の2倍以上)、VERTICALモードは許可されない。このような場合、3つのイントラ予測モードのみが許可される。
CIIPモードでは、イントラ予測に3つの最確モード(MPM)を使用する。CIIPMPM候補リストは、以下のように形成される:
- 左隣と上隣のブロックをそれぞれA、Bとする。
- ブロックAとブロックBのイントラ予測モードは,それぞれ intraModeA,intraModeB と表記し,以下のように導出する:
・XをAまたはBのいずれかとする
・intraModeXは、1)ブロックXが利用できない、2)CIIPモードまたはイントラモードを使用してブロックXが予測できない、3)ブロックBが現在のCTUの外側にある場合にDCに設定される。)
ウ 「3.4.10.2 Combining the inter and intra prediction signals
The inter prediction signal in the CIIP mode Pinteris derived using the same inter prediction process applied to regular merge mode; and the intra prediction signal Pintrais derived using the CIIP intra prediction mode following the regular intra prediction process. Then, the intra and inter prediction signals are combined using weighted averaging」(pp.36第3~7行)
(仮訳:
3.4.10.2 複合インターイントラ予測信号
CIIPモードにおけるインター予測信号Pinterは、通常のマージモードに適用されるのと同じインター予測処理を用いて導出され、イントラ予測信号Pintraは、通常のイントラ予測処理の後にCIIPイントラ予測モードを使用して導出される。次に、イントラ予測信号及びインター予測信号は、重み付け平均を用いて結合される。)
上記引用文献1の記載から、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
VTM3では、現在のCUに複合インター/イントラ予測(CIIP)モードが適用されるものであって、(ア)
CIIPモードにおけるインター予測信号は、インター予測処理を用いて導出され、イントラ予測信号は、通常のイントラ予測処理の後にCIIPイントラ予測モードを使用して導出され、イントラ予測信号及びインター予測信号は、重み付け平均を用いて結合され、(ウ)
CIIPモードでは、イントラ予測に3つの最確(MPM)モードを使用し、CIIP MPM候補リストは、以下のように形成される;
-左隣と上隣のブロックをそれぞれA、Bとする。
-ブロックAとブロックBのイントラ予測モードは,それぞれ intraModeA,intraModeB と表記し,以下のように導出する:
-XをAまたはBのいずれかとする
-intraModeXは、CIIPモードまたはイントラモードを使用してブロックXが予測できない場合にDCに設定されること。(イ)
また、原査定の引用文献2である国際公開2013/047811号には、[0398]に以下の記載がある。
「図51は、単予測への変換の方法(双予測変換方法)の例を説明する図である。L0選択は、予測リスト利用フラグpredFlagL1を0に変更する。L1選択は、予測リスト利用フラグpredFlagL0を0に変更する。参照インデックス番号選択は、参照インデックス番号refIdxL0、参照インデックス番号refIdxL1の内、値が大きい方のリストの予測リスト利用フラグを0に変更する。式としては、X = (ref_idx_L1 < ref_idx_L0) ? 0 : 1、predFlagLX = 0。これにより、参照インデックス番号が小さい方のリストが使用される。POC選択は、現ピクチャのPOC(POC_curr)と、参照インデックス番号refIdxL0で示される参照ピクチャのPOC(POC_L0)の差分と、現ピクチャのPOCと、参照インデックス番号refIdxL1で示される参照ピクチャのPOC(POC_L1)の絶対値差分との内、値が大きい方のリストの予測リスト利用フラグを0に変更する。X = (|POC_L1 ‐ POC_curr| < |POC_L0 ‐ POC_curr| ) ? 0 : 1、predFlagLX = 0。これにより現ピクチャに対してPOCが近い参照ピクチャが用いられる。」
そうすると、引用文献2には以下の技術事項(以下、「引用文献2記載の技術事項」という)が記載されているものと認められる。
「現ピクチャに対してPOCが近い参照ピクチャが用いられること」
また、原査定における引用文献3である、Benjamin Bross et al., "Versatile Video Coding (Draft 3)", Joint Video Experts Team (JVET) of ITU-T SG 16 WP3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG11 12th Meeting: Macao, CN,3-12 Oct. 2018 Document JVET-L1009-v9(version13)、2019年1月8日、 [JVET-L1001-v9], pp.154-157には、同文献のpp.53の第27~28行を踏まえると、上記第5の(3)と同様に、「VVCの前提技術事項」、すなわち、「VVCにおいて、双方向オプティカルフローインター予測が無効化されうること」が示されているといえる。
(2)本件補正発明1と引用発明1との対比及び判断
本件補正発明1と引用発明1とを比較すると、少なくとも本件補正発明の構成F、F1の「隣接するコーディングブロックの最も可能性の高いモード(MPM)リストが構築される時に、前記現在のコーディングブロックがインターモードとして扱われると特定し、且つ、前記現在のコーディングブロックのイントラモードを使用不可としてマークすること」を前提とした構成Hの「双方向オプティカルフロー(BDOF)動作は、前記現在のコーディングブロックに対して、無効にされている」ことは記載されていない。
したがって、本件補正発明1と引用発明1とは同一の発明ではない。
また、上記第5の(4)と同様に、上記第3の(5)から、VVCにおいて双方向オプティカルフロー動作を、現在のコーディングブロックのインター予測に対して無効化されうること自体は、上記のとおりVVCの前提技術事項であることから、引用発明1のVVCのテストモデルであるVTM3の前提技術事項でもあるといえる。
しかしながら、当該前提技術事項は、本件補正発明1の構成F、F1において特定される「現在ブロックに隣接する」「隣接するコーディングブロックのMPMリストが構築される時に」「現在のコーディングブロックがインターモードとして扱われると特定」され、「且つ、前記現在のコーディングブロックのイントラモードを使用不可としてマーク」された、「現在のコーディングブロック」に対して無効化することを意図したものではない、
したがって、引用発明1に、上記のVVCの前提技術事項を適用しても、本件補正発明1は、当業者にとって容易になしえたものということはできない。
3 本件補正発明2ないし16について
請求項1を引用する本件補正発明2ないし7、本件補正発明1をビデオコーディングデバイスという物の発明として特定した本件補正発明8、請求項8を引用する本件補正発明9ないし14、請求項1~7のいずれかに記載の方法を、1つまたは複数のプロセッサを有するコンピューティングデバイスによって実行される複数のプログラムを有する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を請求する本件補正発明15、プロセッサによって実行されるときに、請求項1~7のいずれかに記載の方法のステップを実行するインストラクションを含むコンピュータプログラムを請求する本件補正発明16についても、上記1と同様に、その記載不備は解消されたものといえ、上記2と同様に、引用発明1と同一の発明ではなく、引用発明1及び引用文献3に記載される、VVCの前提技術事項に基づいて当業者が容易になしえたものということはできない。
さらに、引用文献2記載の技術事項を考慮しても、上記の判断に変わりはない。
4 小括
上記2、3のとおり、本件補正発明は、原査定の理由を解消したといえる。
第7 むすび
上記第5のとおり、令和4年11月30日付け当審拒絶理由は令和5年3月30日付け手続補正により解消した。
また、上記第6のとおり、本件補正発明については、原査定の理由は解消した。
さらに、他に拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-008196