特許拒絶査定不服審判
2023-007616
加熱調理器、及び、プログラム
- 審判番号
- 2023-007616
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-117294
- 請求日
- 2023年05月10日
- 審決日
- 2024年03月28日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】シロカ株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 水野 治彦
- 審判官 岩▲崎▼ 則昌
- 審判官 鈴木 充
- 分類
- P18 .113-WY (A47J) / P18 .121-WY (A47J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-117294「加熱調理器、及び、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和5年1月26日出願公開、特開2023-13258、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年7月15日の出願であって、その手続の主な経緯は、以下のとおりである。
令和 4年 8月17日付け:拒絶理由通知書
同 年10月18日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 2月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
同 年 5月10日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。
1.本願の請求項1、3、4に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.本願の請求項1~10に係る発明は、下記の引用文献1~3に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献については引用文献一覧参照)
<理由1>
・請求項1、3、4に係る発明に対して:引用文献1
<理由2>
・請求項1、3、4に係る発明に対して:引用文献1
・請求項2に係る発明に対して :引用文献1、2
・請求項5~7に係る発明に対して :引用文献1、3
・請求項8~10に係る発明に対して :引用文献1~3
<引用文献一覧>
1.特開2015-180289号公報
2.特開2018-29652号公報
3.特開2009-154026号公報
第3 本願発明
令和5年5月10日に提出された手続補正書による補正(以下「審判請求時の補正」という。)は、適法になされたものである。
よって、本願の請求項1~9に係る発明(以下「本願発明1」~「本願発明9」という。)は、審判請求時の補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される、以下のとおりである。
「【請求項1】
蓋部により密閉した内鍋を加熱することで前記内鍋内の食材を調理可能な加熱調理器であって、
前記内鍋を加熱する加熱部と、
前記内鍋内の気体を前記加熱調理器の外部へ排気する排気部と、
前記加熱部と前記排気部との動作を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記加熱部を制御して前記密閉された内鍋を加熱し、前記内鍋内の内部圧力を第1の圧力値まで上昇させることと、
前記内部圧力が前記第1の圧力値まで上昇した後、前記内部圧力を前記第1の圧力値で所定の期間において維持するように前記加熱部による前記内鍋の加熱を制御することと、
前記内部圧力を前記第1の圧力値で所定の期間において維持した後、前記内部圧力が第2の圧力値以下となるまで前記加熱部による前記内鍋の加熱を停止することと、
前記内部圧力が前記第2の圧力値以下に下がった後、前記排気部を制御して、前記内鍋内の気体を前記加熱調理器の外部に排出して前記内部圧力を大気圧まで下降させることと、
前記内鍋内の気体を前記加熱調理器の外部に排出により、前記内鍋内の温度が所定温度まで下降した場合に、前記内部圧力を前記大気圧に維持しつつ、前記加熱部により前記内鍋を加熱し、前記所定温度を維持することと
を実行するように構成され、
前記第1の圧力値は前記内鍋内の食材及び調理方法に応じて予め定められる圧力値であって、60kPaから100kPaの範囲に含まれる値であり、第2の圧力値は40kPaから45kPaの範囲に含まれる値である、加熱調理器。
【請求項2】
前記制御部は、前記内部圧力の値に基づいて、前記内部圧力が第2の圧力値以下となったかどうかを判定する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記制御部は、前記加熱部による前記内鍋の加熱を停止した期間が第1の期間に到達したかどうかに基づいて、前記内部圧力が第2の圧力値以下となったかどうかを判定する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記第1の期間は、前記内鍋内の食材及び調理方法に応じて予め定められた、前記内部圧力が前記第2の圧力値以下となるのに要する期間である、請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記制御部は、前記内鍋内の温度が第1の温度以下となったかどうかに基づいて、前記内部圧力が第2の圧力値以下となったかどうかを判定する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記第1の温度は、前記第2の圧力値に対応する飽和温度である、請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記第1の温度は、109度又は110度である、請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記第1の圧力値は95kPaであり、第2の圧力値は45kPaである、請求項1から7のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項9】
コンピュータを請求項1から8のいずれか1項に記載の加熱調理器の制御部として動作させるためのプログラム。」
第4 引用文献
1 引用文献1
(1) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、以下の記載及び図面がある。(下線は、当審が付した。以下同様。)
ア 「【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る加圧加熱調理器100の構成の一例を概略的に示す断面模式図である。以下、図1に基づいて加圧加熱調理器100について説明する。
加圧加熱調理器100は、被加熱物(本実施の形態1では肉・野菜200及び煮汁201)を入れた鍋状容器5を加熱コイル3で加熱することで、被加熱物を調理するものである。図1に示すように、加圧加熱調理器100は、例えば外観が有底筒状の本体1と、本体1に取り付けられ、本体1の上部に形成された上部開口部を開閉する蓋体10とを備えている。
【0013】
(本体1)
本体1は、容器カバー2と、加熱手段としての加熱コイル3と、鍋底温度センサー4と、蓋体10を開閉自在に支持するヒンジ部6と、時間計測手段7と、各部及び各装置を駆動制御して調理工程を実行する制御手段8とを備えている。
【0014】
容器カバー2は、有底筒状に形成されていて、その内部に鍋状容器5が着脱自在に収容される。容器カバー2の底部中央には、鍋底温度センサー4が挿入される孔部2aが設けられている。
なお、鍋状容器5は、誘導加熱により発熱する磁性体金属を含む材料で構成され、有底円筒形状である。鍋状容器5の上端部外周には、フランジ部5aが形成されている。また、鍋状容器5に樹脂性の取っ手を設けてもよい(図示省略)。取っ手があれば、調理直後で熱い状態の鍋状容器5を食卓に移動させたいとき、ミトンなどを用意しなくても素手で移動させることができる。
【0015】
加熱コイル3は、制御手段8により通電制御され、鍋状容器5を誘導加熱するものである。なお、加熱手段として、加熱コイル3に代えてシーズヒーター等の電気ヒーターを設けてもよい。また、図1の例では、鍋状容器5の底面近傍に加熱コイル3を配置しているが、加熱コイル3の配置は図示のものに限定されず、例えば鍋状容器5の底面近傍に加えて鍋状容器5の側面に沿って加熱コイル3を設けてもよい。
【0016】
鍋底温度センサー4は、例えばサーミスタで構成され、鍋状容器5の温度を検知する。本実施の形態1の鍋底温度センサー4は、バネ等の弾性手段によって上方に付勢されており、容器カバー2に収容された鍋状容器5の底面に接する。鍋底温度センサー4が検知した鍋状容器5の温度に関する情報は、制御手段8に出力される。なお、鍋底温度センサー4の具体的構成はサーミスタに限定されず、鍋状容器5に接触して温度を検知する接触式温度センサーのほか、例えば赤外線センサー等の鍋状容器5の温度を非接触で検知する非接触式温度センサーを採用してもよい。」
イ 「【0018】
時間計測手段7は、制御手段8からの指示信号に基づいて経過時間tをカウントする。時間計測手段7がカウントした経過時間tは、制御手段8に出力される。
【0019】
制御手段8は、鍋底温度センサー4、並びに蓋体10に設けられた操作表示部(操作部)15及び内部温度センサー16からの出力に基づいて、加熱コイル3に通電する高周波電流及び後述する調圧装置24の動作を制御する。そのほか、制御手段8は、加圧加熱調理器100の動作全般を制御する。制御手段8は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、マイコンやCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。
【0020】
(蓋体10)
蓋体10は、外蓋11と、内蓋12とを有している。外蓋11には、着脱自在のカートリッジ14が設けられ、外蓋11の上面には操作表示部15が設けられている。また、蓋体10には、鍋状容器5内の圧力を調整する圧力調整手段を構成する調圧装置24及び調圧弁27が設けられている。
【0021】
外蓋11は、蓋体10の上部及び側部を構成し、外蓋11の下面(鍋状容器5に対向する面)には、内蓋12が着脱自在に取り付けられている。内蓋12は、例えばステンレスなどの金属で構成されており、外蓋11の本体1側の面に係止材13を介して取り付けられている。内蓋12の周縁部には、鍋状容器5の上端部外周に形成されたフランジ部5aとの密閉性を確保するシール材である蓋パッキン9が取り付けられている。また、内蓋12と外蓋11との間には、内部温度センサー16が設けられている。
【0022】
(圧力調整手段)
次に、実施の形態1に係る加圧加熱調理器100の圧力調整手段を説明する。
鍋状容器5内の圧力を調整する圧力調整手段は、調圧口20が形成された弁座21、弁座21の上に載置されるボール状の弁体22、及び弁体22を収容する弁室を形成するフレーム23を備えた調圧弁27と、この調圧弁27を駆動する調圧装置24とを有する。
【0023】
(調圧弁27)
調圧弁27は、弁座21、弁体22、及びフレーム23で構成され、調圧口20が形成された弁座21は、内蓋12の略中央部に形成された開口に取り付けられている。蓋体10が閉じられた状態においては、調圧口20を介して鍋状容器5の内部と外部とが連通し、鍋状容器5内の蒸気は調圧口20を通って外部へ流出する。ボール状の弁体22は、弁座21の上に載置され、その位置に応じて調圧口20を開閉する。調圧口20の上に弁体22が位置している状態においては、弁体22はその重量を利用して調圧口20を封止し、鍋状容器5内を予め設定された圧力に保つ。また、弁体22は、調圧装置24からの力を受けて移動して調圧口20を開放し、鍋状容器5内の圧力を低下させる。弁体22の周囲はフレーム23で囲まれており、弁体22は弁座21から脱落しないようになっている。
【0024】
この調圧弁27は、内蓋12の上面に、上方に向かって突出して設けられている。内蓋12が外蓋11に取り付けられた状態においては、外蓋11の下面に設けられた調圧室26に調圧弁27が挿入される。外蓋11の下面には、調圧室26の外側を囲み、調圧室26内の蒸気が調圧室26の外部(外蓋11と内蓋12との間に形成される空間)に漏れ出すのを防ぐ調圧空間パッキン25が取り付けられている。
【0025】
(調圧装置24)
調圧装置24は、制御手段8に制御され、調圧弁27の動作を制御する。調圧装置24は、ソレノイドと、ソレノイドに駆動されるプランジャと、プランジャに固定され弁体22と対向する位置に設けられた作動体と、作動体を突出方向に付勢するバネとを備える(いずれも図示省略)。ソレノイドは制御手段8によって通電制御され、ソレノイドへの通電状態(オン又はオフ)に応じてプランジャ及び作動体の突出状態が切り替わる。
【0026】
ソレノイドへの通電状態がオフ状態である場合、プランジャ及び作動体はバネに付勢されて突出状態となり、作動体に押されて弁体22は調圧口20から外れ、鍋状容器5内の空気と外気とが流通可能となって鍋状容器5内に圧力は印加されない。一方、ソレノイドへの通電状態がオン状態である場合、プランジャ及び作動体は吸引されて弁体22を押さず、弁体22は調圧口20を塞いで鍋状容器5の空気及び外気の流通を遮断する。」
ウ 「【0032】
(内部温度センサー16)
内部温度センサー16は、鍋状容器5内の温度を検知する温度検知手段であり、外蓋11の下面に取り付けられている。内部温度センサー16の一部は内蓋12に接するように配置されており、内部温度センサー16は内蓋12を介して鍋状容器5内の温度を検知する。内部温度センサー16は、例えばサーミスタで構成することができる。内部温度センサー16が検知した鍋状容器5内の温度に関する情報は、制御手段8に出力される。」
エ 「【0035】
まず、使用者が、肉・野菜200などの食材と、水や酒、醤油などの調味料(煮汁201)を入れた鍋状容器5を、本体1内の容器カバー2に収納し、外蓋11を閉じ、操作表示部15の加熱時間設定キーで「加熱時間10分」と設定し、調理開始スイッチを押して調理開始の動作指示を行うと、制御手段8は調理工程を開始する。
【0036】
調理が開始されると、制御手段8は、調圧装置24のソレノイドへの通電状態をオンにし(S1)、弁体22が調圧口20を塞ぐようにして電力P1で加熱コイル3に通電して鍋状容器5を加熱し(S2)、被加熱物から発生する蒸気を利用して鍋状容器5内に加圧する(第一圧力状態)。
【0037】
次に、内部温度センサー16が検知した温度情報に基づいて鍋状容器5内の圧力を算出する。具体的には、鍋状容器5内の内部温度Tが、鍋状容器5内が所望の高圧状態となるときの内部温度Ta(たとえば120℃)以上であることを内部温度センサー16が検知すると(S3;Yes)、ステップS4に進む。そして、制御手段8は時間計測手段7で経過時間tの計測を開始させ(S4)、所望の高圧状態が保持できるような電力P2で加熱コイル3に通電して鍋状容器5を加熱する(S5)。
【0038】
時間計測手段7が計測した経過時間tが予め設定された時間t1(たとえば3分)に達すると(S6;Yes)、制御手段8は、加熱コイル3への通電を遮断する(S7)。そして、時間計測手段7が計測した経過時間tが予め設定された時間t2(たとえば4分)に達するまでの間に(S8;No)、徐々に鍋状容器5及び被加熱物の温度が徐々に低下し、圧力も低下する。
【0039】
そして、時間計測手段7が計測した経過時間tが予め設定された時間t2に達すると(S8;Yes)、制御手段8は、調圧装置24のソレノイドへの通電を遮断して弁体22に調圧口20を開放させ(S9)、鍋状容器5内の蒸気を排出する(第二圧力状態)。
ステップS7及びステップS8を実行することで、これらステップの間で鍋状容器5内の圧力が低下するため、ステップS9で調圧口20を開放したときに、蒸気が勢いよく噴出することを抑えることができる。ここで、第二圧力は例えば大気圧と同じ圧力である。」
オ 「【0054】
次に、本実施の形態2に係る加圧加熱調理器100の調理工程を、図4及び図5を参照して説明する。なお、調理開始からステップS9までは前述の実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
図4は、実施の形態2に係る加圧加熱調理器100が実行する調理工程と、被加熱物温度、鍋状容器温度、加熱コイル3への通電電力、及び調圧装置24の動作の推移を示す図、図5は、実施の形態2に係る加圧加熱調理器100の調理工程を説明するフローチャートである。
【0055】
ステップS9において、調圧装置24のソレノイドへの通電を遮断して弁体22に調圧口20を開放させると、ステップS91に進む。ステップS91において、鍋底温度センサー4の検知する鍋温度θが、予め設定された鍋温度θ1以下であると判定されれば(S91;Yes)、加熱コイル3への通電を行い(S92)、ステップS10に進む。ステップS91で鍋底温度センサー4の検知する鍋温度θが、予め設定された鍋温度θ1よりも高いと判定されれば(S91;No)、さらにステップS93で予め設定された鍋温度θ2(θ1<θ2)よりも高いかどうかを判定し、予め設定された鍋温度θ2以下であると判定されれば(S93;Yes)、ステップS10に進む。一方、予め設定された鍋温度θ2よりも高いと判定されれば(S93;No)、加熱コイル3への電力を遮断し(S94)、ステップS10に進む。
【0056】
このように、制御手段8は、時間計測手段7が計測した経過時間tが予め設定された時間t3に達するまでの間に(S10;No)、鍋底温度センサー4の検知温度が予め設定された鍋温度θ1からθ2の範囲内の温度帯を維持するように、予め設定された所定の電力での加熱コイル3への通電と電力遮断とを繰り返し、鍋状容器5の温度調節を行う(図4参照)。
【0057】
ステップS10で時間計測手段7が計測した時間が予め設定された時間t3に達すると、ステップS11に進み、調理終了までは前述の実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。」
カ 「【0063】
図6は、実施の形態2に係る加圧加熱調理器100が実行する調理工程の変形例と、被加熱物温度、鍋状容器温度、加熱コイル3への通電電力、及び調圧装置24の動作の推移を示す図である。
焼き物メニューのように、調理開始の時点で鍋状容器5内に入っている水分が少ないメニューの場合、再度加圧するときに水分が少なすぎて焦げついてしまう可能性があるが、ステップS91からステップS10の温調加熱後に調理終了とすることで焦げを防ぐことができる。また、照り焼きや煮っころがしのように調理終了時に煮詰めた調味液・煮汁で食材がコーティングされているようなメニューの場合は、減圧した工程で加熱をすることで調味液・煮汁をほど良く煮詰めることができる。また、減圧した工程での加熱が鍋底温度センサー4に基づき温調して加熱する制御であるため、焦げを防ぎつつ煮詰めることができる。」
キ 「【図6】
[図:0001408876000001.jpg]
」
ク 上記アの段落【0014】の記載事項及び上記イの段落【0021】の記載事項から、蓋体10は、外蓋11と、外蓋11の下面に取り付けられている内蓋12とを有し、内蓋12の周縁部には、鍋状容器5の上端部外周に形成されたフランジ部5aとの密閉性を確保するシール材である蓋パッキン9が取り付けられることが把握されるから、蓋体10は、鍋状容器5を密閉するものであると認められる。
ケ 上記イの段落【0023】、【0025】の記載事項及び上記エの段落【0039】の記載事項から、調圧装置24は、調圧弁27の動作を制御して、鍋状容器5内の蒸気を外部へ流出させる機能を有することが把握される。
(2) 引用文献1に記載された発明
上記(1)から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「蓋体10により密閉した鍋状容器5を加熱コイル3で加熱することで、肉・野菜200及び煮汁201を調理する加圧加熱調理器100であって、
鍋状容器5を誘導加熱する加熱コイル3と、
調圧弁27の動作を制御して、鍋状容器5内の蒸気を外部へ流出させる調圧装置24と、
加熱コイル3に通電する高周波電流及び調圧装置24の動作を制御する制御手段8と
を備え、
制御手段8は、
調圧装置24のソレノイドへの通電状態をオンにし(S1)、弁体22が調圧口20を塞ぐようにして電力P1で加熱コイル3に通電して鍋状容器5を加熱し(S2)、
鍋状容器5内の内部温度Tが、鍋状容器5内が所望の高圧状態となるときの内部温度Ta以上であることを内部温度センサー16が検知すると(S3;Yes)、時間計測手段7で経過時間tの計測を開始させ(S4)、所望の高圧状態が保持できるような電力P2で加熱コイル3に通電して鍋状容器5を加熱し(S5)、
時間計測手段7が計測した経過時間tが予め設定された時間t1に達すると(S6;Yes)、加熱コイル3への通電を遮断し(S7)、時間計測手段7が計測した経過時間tが予め設定された時間t2に達すると(S8;Yes)、調圧装置24のソレノイドへの通電を遮断して弁体22に調圧口20を開放させ(S9)、鍋状容器5内の蒸気を排出して大気圧と同じ圧力である第二圧力状態にし、
時間計測手段7が計測した経過時間tが予め設定された時間t3に達するまでの間に(S10;No)、鍋底温度センサー4の検知温度が予め設定された鍋温度θ1からθ2の範囲内の温度帯を維持するように、予め設定された所定の電力での加熱コイル3への通電と電力遮断とを繰り返し、鍋状容器5の温度調節を行う、加圧加熱調理器100。」
2 引用文献2
(1) 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、以下の記載がある。
ア 「【0021】
調圧弁12は、通気孔10を塞ぐことにより、通気経路を遮断する。また調圧弁12は、通気孔10を開けることにより、鍋状容器2内の空間と加熱調理器100の外部の空間とを連通させる。一例として、鍋状容器2内で発生した蒸気は、通気孔10及び調圧弁12を通過して、蒸気孔11から外部へ排出される。」
イ 「【0037】
本実施の形態において加熱調理器100は、味染み工程、調理工程及び仕上げ工程の3つの工程を順に実行する。ここで本実施の形態では、肉、魚、野菜等の被調理物を食材と呼称する。また調味料及び水等の被調理物を、調味液と呼称する。調理工程とは、食材及び調味液を含む被調理物を加熱調理する工程である。味染み工程とは、調理工程の前に食材に調味液を浸透させる工程である。仕上げ工程とは、調理工程の後に、食材に調味液を浸透させる工程である。以下では、味染み工程、調理工程及び仕上げ工程についてより詳細に説明する。」
ウ 「【0048】
制御装置16は、インバータ17に、加熱コイル4へ電流の供給を開始させてから一定時間経過後に、電流の供給を停止される。加熱コイル4へ電流の供給が停止することにより、加熱装置の一例である加熱コイル4及びインバータ17による鍋状容器2の加熱が終了する。これにより、加圧状態での被調理物の加熱調理が終了する(ステップS6)。また、インバータ17による加熱コイル4への電流の供給が停止することにより、調理工程が終了する。」
エ 「【0065】
加熱調理器100は、例えば図1に示すように、圧力センサ18を備えてもよい。圧力センサ18は、鍋状容器2内の圧力を検出する圧力検出手段の一例である。圧力センサ18は、例えば内蓋7に取り付けられる。また圧力センサ18は、例えば図2に示すように、制御装置16に接続される。
【0066】
圧力センサ18が接続された制御装置16には、例えば大気圧未満の一定圧力が予め記憶される。仕上げ工程において制御装置16は、例えば圧力センサ18によって検出された圧力がこの一定圧力以下になると調圧弁12に通気経路を開放させてもよい。圧力センサ18を備えた加熱調理器100は、例えば気候などの使用環境に依らず、仕上げ工程における鍋状容器2内の減圧をより確実に行うことができる。」
(2) 引用文献2に記載された技術
上記(1)から、引用文献2には、以下の技術(以下「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献2に記載された技術>
「加熱調理器100の制御装置16は、インバータ17に、加熱コイル4へ電流の供給を開始させてから一定時間経過後に、電流の供給を停止させて調理工程を終了し、仕上げ工程において、圧力センサ18によって検出された鍋状容器2内の圧力が大気圧未満の一定圧力以下になると調圧弁12に通気経路を開放させて、鍋状容器2内の空間と加熱調理器100の外部の空間とを連通させること。」
3 引用文献3
(1) 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、以下の記載がある。
ア 「【0001】
本発明は、鍋内を加圧状態にして炊飯を行うことにより、短時間で美味しいご飯を炊き上げる圧力式の炊飯器に関する。」
イ 「【0063】
次に炊飯工程について、主に図4~図7を参照して説明する。本実施例では炊飯コースの中で「白米・ふつう」コースを選択した場合について説明する。
【0064】
図1の選択手段(16)により、「白米・ふつう」の炊飯コースが選択されると、加熱手段(4)により鍋(2)が発熱し鍋内の米と水からなる被炊飯物が加熱される。この時、プランジャー(17)のロッド(17a)が図2の右側の位置にあってボール(11)を押して圧力弁(14)が開放状態にあり、この状態で米の吸水工程が実行される(S2~S4)。
【0065】
この吸水工程では、鍋底温度が約55度に維持されるように制御手段(20)により加熱手段(4)の加熱量をコントロールし、図8に示すように、15分間この工程を維持する(S5)。
【0066】
15分間の吸水工程(S5)が終了すると、加熱手段(4)をフルパワーにして、図8に示すように、被炊飯物を急激に加熱する立上り工程に移行する(S6)。この立上り工程ではロッド(17a)がボール(11)から離れ圧力弁(14)を閉成すると共に、急激な加熱の段階で炊飯量を判定し、その炊飯量データを炊飯量記憶手段(27)に記憶する(S7~S8)。そして、圧力弁(14)を閉成する(S9)。
【0067】
この立上り工程では、圧力弁(14)の閉成(S9)と共にフルパワー加熱により鍋底(鍋内)温度と蒸気温度が上昇すると共に鍋内圧力が急激に上昇し1.2気圧となる。そして、蒸気センサー(19a)が被炊飯物の沸騰温度(大)となる75度(温度センサー(19b)による鍋底温度が105度)に達したことを検出すると(S10~S11)、図8に示すように、沸騰維持工程に移行して加熱手段(4)を断続的に作動させて鍋内圧力を1.2気圧に維持する(S12~S13)。但し、ここで述べる1.2気圧とは、実験的に最も良好な結果が得られた圧力であって、鍋内圧力は1.2気圧に限定されず、例えば1.1気圧~1.4気圧の範囲内で変えても実質的に1.2気圧の場合と同等の良好な効果を得ることができる。
【0068】
ここで沸騰維持工程での動作を図8、図9を参照して更に詳細に説明する。
【0069】
蒸気センサー(19a)が沸騰温度((K)=75度)を検出した時点で加熱手段(4)のIHパワーを「0」(図8、図9参照)にすると共に(S14)、第1タイマー(22)が所定時間(t1=12秒)のカウントを開始し(S16)、同時に第2タイマー(23)は第1タイマー(22)の所定時間に圧力弁(14)の開放時間(T)(=4秒)を加算した時間(t2=16秒)を設定する。即ち、第2タイマー(23)が16秒のカウント開始と同時に、第1タイマー(22)は第2タイマー(23)がカウントを開始した直後の12秒間をカウントする(S17~S18)。また、第2タイマー(23)と共に圧力弁(14)の開閉周期を設定する第3タイマー(24)を32秒に設定する(S19)。
【0070】
この結果、蒸気センサー(19a)が沸騰温度検出後の第1タイマー(22)が12秒間をカウントする間は圧力弁(14)を閉成状態とし、12秒のカウント後はロッド(17a)を作動し、開放時間の4秒間は圧力弁(14)を開放する(図8、図9参照)。
【0071】
前述のように、沸騰検出時点では鍋内圧力が1.2気圧となっており、沸騰検出後の12秒間はこの圧力を維持し、12秒を経過すると圧力弁(14)を4秒間開放し一気に鍋内圧力を抜く。前述の12秒を経過した時点の圧力弁(14)の開放時には、加熱手段(4)による加熱が行われるので、鍋(2)内の被炊飯物をより激しく攪拌できる。」
(2) 引用文献3に記載された技術
上記(1)から、引用文献3には、以下の技術(以下「引用文献3に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献3に記載された技術>
「圧力式の炊飯器の炊飯工程における立上り工程において、鍋内圧力が急激に上昇し1.2気圧になり、蒸気センサー(19a)が被炊飯物の沸騰温度(大)となる75度に達したことを検出すると(S10~S11)、沸騰検出後の12秒間は鍋内圧力を1.2気圧に維持し、12秒を経過すると圧力弁(14)を4秒間開放し一気に鍋内圧力を抜くこと。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「蓋体10」、「鍋状容器5」、「肉・野菜200及び煮汁201」及び「加圧加熱調理器100」は、それぞれ、本願発明1の「蓋部」、「内鍋」、「前記内鍋内の食材」及び「加熱調理器」に相当する。
そうすると、引用発明の「蓋体10により密閉した鍋状容器5を加熱コイル3で加熱することで、肉・野菜200及び煮汁201を調理する加圧加熱調理器100」は、本願発明1の「蓋部により密閉した内鍋を加熱することで前記内鍋内の食材を調理可能な加熱調理器」に相当する。
イ 引用発明の「加熱コイル3」は、本願発明1の「加熱部」に相当する。
そうすると、引用発明の「鍋状容器5を誘導加熱する加熱コイル3」は、本願発明1の「前記内鍋を加熱する加熱部」に相当する。
ウ 引用発明の「蒸気」及び「調圧装置24」は、それぞれ、本願発明1の「気体」及び「排気部」に相当する。
そうすると、引用発明の「調圧弁27の動作を制御して、鍋状容器5内の蒸気を外部へ流出させる調圧装置24」は、本願発明1の「前記内鍋内の気体を前記加熱調理器の外部へ排気する排気部」に相当する。
エ 引用発明の「制御手段8」は、本願発明1の「制御部」に相当する。
そうすると、引用発明の「加熱コイル3に通電する高周波電流及び調圧装置24の動作を制御する制御手段8」は、本願発明1の「前記加熱部と前記排気部との動作を制御する制御部」に相当する。
オ 上記第4の1(1)イの段落【0026】の記載事項から、引用発明において、「調圧装置24のソレノイドへの通電状態をオンにし(S1)、弁体22が調圧口20を塞ぐ」と、鍋状容器5の空気及び外気の流通が遮断されるのであるから、鍋状容器5が密閉されることになると認められる。
そうすると、引用発明の「調圧装置24のソレノイドへの通電状態をオンにし(S1)、弁体22が調圧口20を塞ぐようにして電力P1で加熱コイル3に通電して鍋状容器5を加熱し(S2)、鍋状容器5内の内部温度Tが、鍋状容器5内が所望の高圧状態となるときの内部温度Ta以上であることを内部温度センサー16が検知する」ことは、本願発明1の「前記加熱部を制御して前記密閉された内鍋を加熱し、前記内鍋内の内部圧力を第1の圧力値まで上昇させること」に相当する。
カ 引用発明の「時間計測手段7で経過時間tの計測を開始させ(S4)、所望の高圧状態が保持できるような電力P2で加熱コイル3に通電して鍋状容器5を加熱し(S5)、時間計測手段7が計測した経過時間tが予め設定された時間t1に達すると(S6;Yes)、加熱コイル3への通電を遮断」することは、これにより、「時間計測手段7が計測した経過時間tが予め設定された時間t1に達する」まで「所望の高圧状態が保持」されることになるといえる。
そうすると、引用発明の「時間計測手段7で経過時間tの計測を開始させ(S4)、所望の高圧状態が保持できるような電力P2で加熱コイル3に通電して鍋状容器5を加熱し(S5)、時間計測手段7が計測した経過時間tが予め設定された時間t1に達すると(S6;Yes)、加熱コイル3への通電を遮断」することは、本願発明1の「前記内部圧力が前記第1の圧力値まで上昇した後、前記内部圧力を前記第1の圧力値で所定の期間において維持するように前記加熱部による前記内鍋の加熱を制御すること」に相当する。
キ 引用発明の「調圧装置24のソレノイドへの通電を遮断して弁体22に調圧口20を開放させ(S9)、鍋状容器5内の蒸気を排出して大気圧と同じ圧力である第二圧力状態に」することは、本願発明1の「前記排気部を制御して、前記内鍋内の気体を前記加熱調理器の外部に排出して前記内部圧力を大気圧まで下降させること」に相当する。
そして、引用発明は、「時間計測手段7が計測した経過時間tが予め設定された時間t1に達すると(S6;Yes)、加熱コイル3への通電を遮断し(S7)、時間計測手段7が計測した経過時間tが予め設定された時間t2に達すると(S8;Yes)、調圧装置24のソレノイドへの通電を遮断して弁体22に調圧口20を開放させ(S9)、鍋状容器5内の蒸気を排出して大気圧と同じ圧力である第二圧力状態にし、時間計測手段7が計測した経過時間tが予め設定された時間t3に達するまでの間に(S10;No)、鍋底温度センサー4の検知温度が予め設定された鍋温度θ1からθ2の範囲内の温度帯を維持するように、予め設定された所定の電力での加熱コイル3への通電と電力遮断とを繰り返し、鍋状容器5の温度調節を行う」ものであるから、上記第4の1(1)キ(引用文献1の【図6】)を参酌しつつ、「時間計測手段7が計測した経過時間t」と「加熱コイル3への通電と電力遮断」との関係を整理すると、「予め設定された時間t1に達すると(S6;Yes)、加熱コイル3への通電を遮断し(S7)」て、「予め設定された時間t1に達」してから「予め設定された時間t2に達する」までの間は、「加熱コイル3への通電を遮断し(S7)」た状態を保持して、「予め設定された時間t2に達」した後「予め設定された時間t3に達するまでの間」は、「鍋底温度センサー4の検知温度が予め設定された鍋温度θ1からθ2の範囲内の温度帯を維持するように、予め設定された所定の電力での加熱コイル3への通電と電力遮断とを繰り返」すものであるといえる。
そうすると、引用発明の「時間計測手段7が計測した経過時間tが予め設定された時間t2に達すると(S8;Yes)、調圧装置24のソレノイドへの通電を遮断して弁体22に調圧口20を開放させ(S9)、鍋状容器5内の蒸気を排出して大気圧と同じ圧力である第二圧力状態に」することと、本願発明1の「前記内部圧力を前記第1の圧力値で所定の期間において維持した後、前記内部圧力が第2の圧力値以下となるまで前記加熱部による前記内鍋の加熱を停止することと、前記内部圧力が前記第2の圧力値以下に下がった後、前記排気部を制御して、前記内鍋内の気体を前記加熱調理器の外部に排出して前記内部圧力を大気圧まで下降させること」とは、「前記内部圧力を前記第1の圧力値で所定の期間において維持した後、前記加熱部による前記内鍋の加熱を停止することと、前記排気部を制御して、前記内鍋内の気体を前記加熱調理器の外部に排出して前記内部圧力を大気圧まで下降させること」の限りにおいて一致する。
ク 上記第4の1(1)キ(引用文献1の【図6】)を参酌すると、引用発明において、「鍋底温度センサー4の検知温度が予め設定された鍋温度θ1からθ2の範囲内の温度帯を維持するように、予め設定された所定の電力での加熱コイル3への通電と電力遮断とを繰り返し、鍋状容器5の温度調節を行う」際には、「調圧装置24のソレノイドへの通電を遮断して弁体22に調圧口20を開放させ(S9)」た状態を保持するから、鍋状容器5内圧力は、「大気圧と同じ圧力である第二圧力状態に」保持されるものと認められる。
そうすると、引用発明の「時間計測手段7が計測した経過時間tが予め設定された時間t3に達するまでの間に(S10;No)、鍋底温度センサー4の検知温度が予め設定された鍋温度θ1からθ2の範囲内の温度帯を維持するように、予め設定された所定の電力での加熱コイル3への通電と電力遮断とを繰り返し、鍋状容器5の温度調節を行う」ことと、本願発明1の「前記内鍋内の気体を前記加熱調理器の外部に排出により、前記内鍋内の温度が所定温度まで下降した場合に、前記内部圧力を前記大気圧に維持しつつ、前記加熱部により前記内鍋を加熱し、前記所定温度を維持すること」とは、「前記内部圧力を前記大気圧に維持しつつ、前記加熱部により前記内鍋を加熱し、前記所定温度を維持すること」の限りにおいて一致する。
以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「蓋部により密閉した内鍋を加熱することで前記内鍋内の食材を調理可能な加熱調理器であって、
前記内鍋を加熱する加熱部と、
前記内鍋内の気体を前記加熱調理器の外部へ排気する排気部と、
前記加熱部と前記排気部との動作を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記加熱部を制御して前記密閉された内鍋を加熱し、前記内鍋内の内部圧力を第1の圧力値まで上昇させることと、
前記内部圧力が前記第1の圧力値まで上昇した後、前記内部圧力を前記第1の圧力値で所定の期間において維持するように前記加熱部による前記内鍋の加熱を制御することと、
前記内部圧力を前記第1の圧力値で所定の期間において維持した後、前記加熱部による前記内鍋の加熱を停止することと、
前記排気部を制御して、前記内鍋内の気体を前記加熱調理器の外部に排出して前記内部圧力を大気圧まで下降させることと、
前記内部圧力を前記大気圧に維持しつつ、前記加熱部により前記内鍋を加熱し、前記所定温度を維持することと
を実行するように構成される、加熱調理器。」
<相違点1>
「制御部」の構成に関して、本願発明1は、加熱部による内鍋の加熱を「前記内部圧力が第2の圧力値以下となるまで」停止し、「前記内部圧力が前記第2の圧力値以下に下がった後」に排気部を制御して内部圧力を大気圧まで下降させるものであるのに対して、引用発明は、当該条件を特定していない点。
<相違点2>
「制御部」の構成に関して、本願発明1は、「前記内鍋内の気体を前記加熱調理器の外部に排出により、前記内鍋内の温度が所定温度まで下降した場合」に内部圧力を大気圧に維持しつつ、加熱部により内鍋を加熱し、所定温度を維持するものであるのに対して、引用発明は、当該条件を特定していない点。
<相違点3>
本願発明1は、「前記第1の圧力値は前記内鍋内の食材及び調理方法に応じて予め定められる圧力値であって、60kPaから100kPaの範囲に含まれる値であり、第2の圧力値は40kPaから45kPaの範囲に含まれる値である」のに対して、引用発明は、具体的な圧力値を特定していない点。
(2) 判断
ア 相違点1~3は、いずれも実質的な相違点であるから、本願発明1は、引用文献1に記載された発明ではない。
イ 相違点1について検討する。
上記(1)キのとおり、引用発明は、「時間計測手段7が計測した経過時間tが予め設定された時間t2に達する」まで「加熱コイル3への通電を遮断し(S7)」た状態を保持するものであるところ、時間計測手段7による判定を鍋状容器5内の圧力による判定に変更し、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を容易になし得たとする根拠は、引用文献1の記載から見出すことはできない。また、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項が本願出願前の周知技術であったとの証拠もない。
ここで、引用文献2に記載された技術は、「圧力センサ18によって検出された鍋状容器2内の圧力が大気圧未満の一定圧力以下になると調圧弁12に通気経路を開放させて、鍋状容器2内の空間と加熱調理器100の外部の空間とを連通させる」ものであるから、「調圧弁12に通気経路を開放させて」鍋状容器2内の圧力を大気圧まで上昇させるものであって、相違点1に係る本願発明1の構成のように「前記内部圧力が前記第2の圧力値以下に下がった後」に排気部を制御して内部圧力を大気圧まで下降させるものではない。
同様に、引用文献3に記載された技術は、「鍋内圧力が急激に上昇し1.2気圧にな」ると、「12秒間は鍋内圧力を1.2気圧に維持し、12秒を経過すると圧力弁(14)を4秒間開放し一気に鍋内圧力を抜く」ものであるから、「一気に鍋内圧力を抜く」前に「鍋内圧力が急激に上昇」するものであって、相違点1に係る本願発明1の構成のように「前記内部圧力が前記第2の圧力値以下に下がった後」に排気部を制御して内部圧力を大気圧まで下降させるものではない。
以上のことから、引用発明において、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることはできない。また、引用発明に対して引用文献2に記載された技術又は引用文献3に記載された技術を適用しても、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることはできない。
そして、本願発明1は、相違点1に係る本願発明1の構成によって、「この第1の減圧工程を行うことにより、素材の形状を壊すことなく嚥下食に加工することが可能となる。」(本願明細書の段落【0027】)、「野菜、特には根菜類のように煮崩れしやすい材料であっても煮崩れを防ぐことができる。」(本願明細書の段落【0036】)及び「加熱調理器において嚥下食を作ろうとする場合に、排気弁を開いて強制的に内鍋3内の圧力を下げる第2の減圧工程に移行する際に、予め第1の減圧工程において内部圧力を下げているので、減圧時に発生する調理内容物へのダメージ軽減することができる。」(本願明細書の段落【0037】)という格別の効果を奏するものである。
したがって、相違点2及び相違点3について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に記載された技術に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明2~9について
本願発明2~9も、本願発明1の「制御部」が「前記内部圧力が第2の圧力値以下となるまで前記加熱部による前記内鍋の加熱を停止することと、前記内部圧力が前記第2の圧力値以下に下がった後、前記排気部を制御して、前記内鍋内の気体を前記加熱調理器の外部に排出して前記内部圧力を大気圧まで下降させることと」を「実行するように構成され」ると同一の発明特定事項を有するものである。
したがって、本願発明2~9は、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に記載された技術に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1~9は、「制御部」が「前記内部圧力が第2の圧力値以下となるまで前記加熱部による前記内鍋の加熱を停止することと、前記内部圧力が前記第2の圧力値以下に下がった後、前記排気部を制御して、前記内鍋内の気体を前記加熱調理器の外部に排出して前記内部圧力を大気圧まで下降させることと」を「実行するように構成され」るという発明特定事項を有するものとなった。
したがって、本願発明1~9は、引用文献1に記載された発明ではない。
また、本願発明1~9は、当業者であっても、原査定において引用された引用文献1~3に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、原査定の理由1及び理由2を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-007616