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特許拒絶査定不服審判

2023-005463

複層型下敷きテープ

審判番号
2023-005463
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-191676外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年04月05日
審決日
2024年04月18日
公報発行日
2024年07月26日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (E04F) / P18 .575-Z (E04F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-191676「複層型下敷きテープ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月16日出願公開、特開2020- 60030〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成30年10月10日の出願であって、令和4年7月11日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月6日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年12月14日付け(謄本送達日:令和5年1月10日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年4月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、さらに同年10月13日に上申書が提出されたものである。 第2 令和5年4月5日に提出された手続補正書による補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年4月5日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲についてする補正であって、令和4年9月6日提出の手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1~5に、 「【請求項1】 下地材の表面に壁紙を貼付するに当たり、隣接する壁紙の端部同士を重ね合わせた状態で、壁紙重ね合わせ部を切断する際に、該下地材と該壁紙重ね合わせ部との間に一時的に設置し、下地材を保護するための複層型下敷きテープであって、 設置の際に該壁紙重ね合わせ部の側に位置する上層フィルムと、設置の際に該下地材の側に位置する下層フィルムとの間に、ネット状シートが挟まれた状態で、該上層フィルムと該下層フィルムとが、両端部のみにおいて該ネット状シートとともに接着固定されており、 該ネット状シートが、該複層型下敷きテープの長手方向に略平行な経糸と、該経糸と略直交し該複層型下敷きテープを幅方向に横断する緯糸とで構成されており、 該上層フィルムが、該壁紙の裏面と接触する側の面にエンボス凹部を有するものであり、 該エンボス凹部1つ当たりの平均面積が、0.04mm2以上1.96mm2以下であることを特徴とする複層型下敷きテープ。 【請求項2】 上記上層フィルムにおいて、上記エンボス凹部の占有率が20%以上90%以下である請求項1に記載の複層型下敷きテープ。 【請求項3】 上記上層フィルムにおける上記エンボス凹部の平均数密度が、9個/cm2以上494個/cm2以下である請求項1又は請求項2に記載の複層型下敷きテープ。 【請求項4】 エンボス加工後の上層フィルムの平均見掛け厚さが、50μm以上200μm以下である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の複層型下敷きテープ。 【請求項5】 請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の複層型下敷きテープの製造方法であって、原反をスリット加工し、スリット加工後の横に繋がった状態の複層型下敷きテープ同士を分割する工程を有することを特徴とする複層型下敷きテープの製造方法。」 とあったものを、 「【請求項1】 下地材の表面に壁紙を貼付するに当たり、隣接する壁紙の端部同士を重ね合わせた状態で、壁紙重ね合わせ部を切断する際に、該下地材と該壁紙重ね合わせ部との間に一時的に設置し、下地材を保護するためのテープ幅が20mm以上100mm以下の複層型下敷きテープであって、 設置の際に該壁紙重ね合わせ部の側に位置するポリオレフィンの上層フィルムと、設置の際に該下地材の側に位置するポリオレフィンの下層フィルムとの間に、ネット状シートが挟まれた状態で、該上層フィルムと該下層フィルムとが、幅がそれぞれ1mm以上10mm以下である両端部のみにおいて該ネット状シートとともに、アクリル系接着剤により接着固定されており、 該ネット状シートが、該複層型下敷きテープの長手方向に略平行な経糸と、該経糸と略直交し該複層型下敷きテープを幅方向に横断する緯糸とで構成されており、 該上層フィルムが、該壁紙の裏面と接触する側の面にエンボス凹部を有するものであり、 該エンボス凹部1つ当たりの平均面積が、0.04mm2以上1.96mm2以下であることを特徴とする複層型下敷きテープ。 【請求項2】 上記上層フィルムにおいて、上記エンボス凹部の占有率が20%以上90%以下である請求項1に記載の複層型下敷きテープ。 【請求項3】 上記上層フィルムにおける上記エンボス凹部の平均数密度が、9個/cm2以上494個/cm2以下である請求項1又は請求項2に記載の複層型下敷きテープ。 【請求項4】 エンボス加工後の上層フィルムの平均見掛け厚さが、50μm以上200μm以下である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の複層型下敷きテープ。 【請求項5】 請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の複層型下敷きテープの製造方法であって、原反をスリット加工し、スリット加工後の横に繋がった状態の複層型下敷きテープ同士を分割する工程を有することを特徴とする複層型下敷きテープの製造方法。」 とする補正である(なお、下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。 2 補正の適否について (1)補正の目的について 本件補正における請求項1の補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複層型下敷きテープ」に関し、「テープ幅が20mm以上100mm以下」であることを限定し、同「上層フィルム」及び「下層フィルム」に関し、それらのフィルムが「ポリオレフィン」であることを限定し、同「該上層フィルムと該下層フィルムとが、」「接着固定され」る「両端部」に関し、「幅がそれぞれ1mm以上10mm以下である」であることを限定し、同「両端部のみにおいて該ネット状シートとともに、接着固定され」ることが「アクリル系接着材によ」るものであることを限定するものである。 そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)新規事項について 本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面における【0030】、【0032】、【0034】、【0043】及び【0051】の記載に基づくものであり、新たな技術事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。 3 独立特許要件について そこで、本件補正後の請求項1~5に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下、検討する。 (1)本願補正発明 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)を再掲すると、次のとおりのものである(なお、AからFについては、分説するため合議体が付した。以下A等を付した事項を「特定事項A」等という。)。 「 【請求項1】 A 下地材の表面に壁紙を貼付するに当たり、隣接する壁紙の端部同士を重ね合わせた状態で、壁紙重ね合わせ部を切断する際に、該下地材と該壁紙重ね合わせ部との間に一時的に設置し、下地材を保護するためのテープ幅が20mm以上100mm以下の複層型下敷きテープであって、 B 設置の際に該壁紙重ね合わせ部の側に位置するポリオレフィンの上層フィルムと、設置の際に該下地材の側に位置するポリオレフィンの下層フィルムとの間に、ネット状シートが挟まれた状態で、該上層フィルムと該下層フィルムとが、幅がそれぞれ1mm以上10mm以下である両端部のみにおいて該ネット状シートとともに、アクリル系接着剤により接着固定されており、 C 該ネット状シートが、該複層型下敷きテープの長手方向に略平行な経糸と、該経糸と略直交し該複層型下敷きテープを幅方向に横断する緯糸とで構成されており、 D 該上層フィルムが、該壁紙の裏面と接触する側の面にエンボス凹部を有するものであり、 E 該エンボス凹部1つ当たりの平均面積が、0.04mm2以上1.96mm2以下である F ことを特徴とする複層型下敷きテープ。」 (2)引用文献 ア 引用文献1に記載された事項 原査定で引用文献1として引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2004-19411号公報(平成16年1月22日公開、以下「引用文献1」という。)には、クロス切断用下敷きテープ(発明の名称)に関し、次の事項が図面とともに記載されている。なお、下線は合議体が付した。以下同じ。 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、建物の壁面にクロス、壁紙等を貼り付ける際に、該クロス等の継ぎ合わせ部(ジョイント部)と下地ボードとの間に挿入して、クロスの切断時に下地ボードに傷がつかないように保護する下敷きテープに関するものである。」 「【0008】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の好ましい実施形態について具体的に説明する。 図1は本発明の下敷きテープの外観図であり、この下敷きテープ1は合成樹脂繊維の糸(合成糸)2を編んで作った網状シート(ネット)3と、該ネットの両面側に被せられた合成樹脂フィルム5,5からなる。このテープ1の幅は、クロスのジョイント部切断時に当該ジョイント部の下側をカバーできる大きさであればよく、一般的には20~100mmとするのが好ましく、30~50mmとするのがより好ましい。この幅が小さ過ぎると、施工時のずれにより切断線上の下地ボードが露出するおそれがあり、大き過ぎると取扱上不便であるとともに不経済である。また、このテープ1の厚みは、1mm以下としておくのが好ましい。この厚みが厚過ぎると使用しにくく、コストも高くなる。この下敷きテープは、図2に示すように、長尺品をロールに巻いておき、施工現場で必要な長さに切り出して使用するようにするのが便利である。 【0009】 図3はこの下敷きテープ1のネット3を例示するもので、縦糸2aと横糸2bが交互に上下した状態でネットを構成している。ネット3の網目は概略四角形であり、その網目の大きさdは、2~5mm程度とするのが好ましい。網目の大きさdが小さ過ぎると、しなやかさや軽量性の点で好ましくない。逆に網目が開き過ぎていると、ボードに連続傷がつきやすい。なお、網目の間隔は、横糸同士の間隔(d)が縦糸同士の間隔(d’)よりも短くなっている(例えば同じ距離内では、横糸5本に対し縦糸3本程度)。このネット3は、縦方向及び横方向に共に伸度があるので、使い勝手がよい。素材である合成糸の材質としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等が使用可能であるが、強度、価格等の見地からナイロンを使用するのが最も好ましい。場合によっては、天然繊維を用いることもできる。糸はマルチフィラメントやステープルの構造のものが一般的であり、糸の太さは数十デニールから数百デニールのものが好ましく、150~500デニールのものがより好ましい。場合によっては合成糸としてモノフィラメントの使用も可能である。 【0010】 合成樹脂フィルム5は、例えばポリプロピレンフィルムであり、少なくとも上側フィルム(切断時に上側になるフィルム)の表面には、エンボス加工により、微細な凹凸(深さ1mm以下)4,…が形成されている。これは、その上にクロスが重ねられたとき、該クロスの裏面に塗布されている糊を取らないためである。ポリプロピレンフィルム自体が糊を転写しにくいが、このように微細なエンボス加工を施しておくと、フィルムが平面でクロスに密着しないので、糊の転写量が少なくてすみ、クロスの接着強度をそれほど低下させなくてすむのである。 【0011】 上記ネット3と合成樹脂フィルム5,5は、ネット3を合成樹脂フィルム5,5で挟んだ状態で、その両側縁部のみで接着一体化されている。この接着部1aの幅は片側5mm程度であり、該接着部の間隔部すなわちテープ1の中央部では、ネット3と合成樹脂フィルム5,5とが互いに分離している。換言すれば、ネット3の中央部は、合成樹脂フィルムの鞘もしくは袋に収納されている状態となっている。このため、ネット3は合成樹脂フィルムに対し自由に変形することができる。 【0012】 図4は、この下敷きテープ1の使用法を例示するもので、石膏の下地ボード10の表面に貼られるクロス11,12のジョイント部Jの下側に、該クロスの端縁に沿ってこの下敷きテープ1を敷く。この下敷きテープ1の上に両側のクロス11,12の端部を重ね合わせ、両者が重なり合った部分をクロスの端縁に沿う切断線Lでカッターナイフ等を用いて切断する。この時、カッターナイフは重なり合った両方のクロスを同時に直線状に切断するが、クロスの下側には下敷きテープ1が敷かれているので、カッターナイフの刃先は、このテープ1に当接することになり、下地ボード10の表面に傷がつきにくい。」 「【図1】 [図:0001411933000001.jpg] 」 イ 引用文献1の記載より認定できる事項 (ア) 認定事項1 図1(a)及び(b)を参照すると、合成樹脂フィルム5,5には、上側と下側のフィルムが存在することが看取でき、【0010】において「上側フィルム(切断時に上側になるフィルム)」に関して、「その上にクロスが重ねられたとき」と記載されていることから、上側フィルムにはクロスが重ねられることが認定でき、【0012】において「石膏の下地ボード10の表面に貼られるクロス11,12のジョイント部Jの下側に、該クロスの端縁に沿ってこの下敷きテープ1を敷く。」と記載されていることから、下側のフィルムが下地ボード10側になることが認定でき、「合成樹脂フィルム5,5が、切断時に上側になり、クロスが重ねられる上側フィルムと、下地ボード10側に配置される下側フィルムからなる点」(以下「認定事項1」という。)が認定できる。 (イ) 認定事項2 図1(a)を参照すると、「ネット3を構成する縦糸2aと横糸2bの一方は下敷きテープ1の幅方向に沿って配置され、他方は下敷きテープ1の長さ方向に沿って配置される点」(以下「認定事項2」という。)が認定できる。 ウ 引用発明 上記ア及びイからみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、aからfについては本願補正発明の特定事項AからFに対応させて付与し、引用箇所の段落番号を併記した。 「a 合成樹脂繊維の糸(合成糸)2を編んで作った網状シートであるネット3と、該ネットの両面側に被せられた合成樹脂フィルム5,5からなり、建物の壁面にクロス、壁紙等を貼り付ける際に、該クロス等の継ぎ合わせ部(ジョイント部)と下地ボードとの間に挿入して、クロスの切断時に下地ボードに傷がつかないように保護する下敷きテープ1であって(【0001】、【0008】)、下敷きテープ1の幅は、20~100mmとするのが好ましく(【0008】)、 b 合成樹脂フィルム5,5は、ポリプロピレンフィルムであり、切断時に上側になり、クロスが重ねられる上側フィルムと、下地ボード10側に配置される下側フィルムからなり(【0008】、【0010】、認定事項1)、 上記ネット3と上側フィルムと下側フィルムからなる合成樹脂フィルム5,5は、ネット3を上側フィルムと下側フィルムで挟んだ状態で、その両側縁部のみで接着一体化され、この接着部1aの幅は片側5mm程度であり(【0011】、認定事項1)、 c ネット3は縦糸2aと横糸2bが交互に上下した状態で構成され、ネット3の網目は概略四角形であり(【0009】)、縦糸2aと横糸2bの一方は下敷きテープ1の幅方向に沿って配置され、他方は下敷きテープ1の長さ方向に沿って配置され(認定事項2)、 d 上側フィルムの表面には、その上にクロスが重ねられたとき、該クロスの裏面に塗布されている糊を取らないために、エンボス加工により、微細な凹凸(深さ1mm以下)4が形成されている(【0010】)、 f 下敷きテープ1(【0008】)。」 (3)対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 ア 特定事項Aについて 引用発明のaにおける「建物の壁面にクロス、壁紙等を貼り付ける際に、該クロス等の継ぎ合わせ部(ジョイント部)と下地ボードとの間に挿入」することにおいて、この「挿入」は、「下地ボードに傷がつかないように保護する」ために「クロスの切断時」という限られた時間において「挿入」されるものであって、恒久的に「挿入」されるものではないと認められることから、引用発明のaにおける「建物の壁面にクロス、壁紙等を貼り付ける際に、該クロス等の継ぎ合わせ部(ジョイント部)と下地ボードとの間に挿入」することは、本願補正発明の特定事項Aにおける「下地材の表面に壁紙を貼付するに当たり、隣接する壁紙の端部同士を重ね合わせた状態で、壁紙重ね合わせ部を切断する際に、該下地材と該壁紙重ね合わせ部との間に一時的に設置」することに相当する。 また、引用発明のaにおける「クロスの切断時に下地ボードに傷がつかないように保護する」「下敷きテープ1」は、本願補正発明の特定事項Aにおける「下地材を保護する」「複層型下敷きテープ」に相当する。 そして、引用発明のaにおける「下敷きテープ1の幅は、20~100mmとするのが好まし」いことは、本願補正発明の特定事項Aにおける「テープ幅が20mm以上100mm以下」であることに相当する。 よって、引用発明は、本願補正発明の特定事項Aを備える。 イ 特定事項Bについて 引用発明のbにおける「ポリプロピレンフィルムであり、切断時に上側になり、クロスが重ねられる上側フィルム」は、本願補正発明の特定事項Bにおける「設置の際に該壁紙重ね合わせ部の側に位置するポリオレフィンの上層フィルム」に相当する。 引用発明のbにおける「ポリプロピレンフィルムであり、」「下地ボード10側に配置される下側フィルム」は、本願補正発明の特定事項Bにおける「設置の際に該下地材の側に位置するポリオレフィンの下層フィルム」に相当する。 また、引用発明のa及びbにおける「網状シートであるネット3」は、本願補正発明の特定事項Bにおける「ネット状シート」に相当する。 そして、引用発明のbにおける「接着一体化され」る「片側5mm程度であ」る「両端縁部」は、本願補正発明の特定事項Bにおける「接着固定され」る「幅がそれぞれ1mm以上10mm以下である両端部」に相当し、引用発明のa及びbにおける「網状シートである」「ネット3を上側フィルムと下側フィルムで挟んだ状態で、その両側縁部のみで接着一体化され」ることは、本願補正発明の特定事項Bにおける「上層フィルムと、」「下層フィルムとの間に、ネット状シートが挟まれた状態で、該上層フィルムと該下層フィルムとが、」「両端部のみにおいて該ネット状シートとともに、」「接着固定されて」いることに相当する。 してみると、引用発明のbと、本願補正発明の特定事項Bとは、「設置の際に該壁紙重ね合わせ部の側に位置するポリオレフィンの上層フィルムと、設置の際に該下地材の側に位置するポリオレフィンの下層フィルムとの間に、ネット状シートが挟まれた状態で、該上層フィルムと該下層フィルムとが、幅がそれぞれ1mm以上10mm以下である両端部のみにおいて該ネット状シートとともに、」「接着固定されて」いる点で一致する。 ウ 特定事項Cについて 引用発明のa及びcにおける「網状シートである」「ネット3は縦糸2aと横糸2bが交互に上下した状態で構成され、ネット3の網目は概略四角形であり」、「縦糸2aと横糸2bの一方は下敷きテープ1の幅方向に沿って配置され、他方は下敷きテープ1の長さ方向に沿って配置され」ることは、本願補正発明の特定事項Cにおける「該ネット状シートが、該複層型下敷きテープの長手方向に略平行な経糸と、該経糸と略直交し該複層型下敷きテープを幅方向に横断する緯糸とで構成されて」いることに相当する。 よって、引用発明は、本願補正発明の特定事項Cを備える。 エ 特定事項Dについて 引用発明のdにおける「エンボス加工によ」る「微細な凹凸」の「凹」となる部位は、本願補正発明における「エンボス凹部」に相当する。 よって、引用発明のdにおける「上側フィルムの表面には、その上にクロスが重ねられたとき、該クロスの裏面に塗布されている糊を取らないために、エンボス加工により、微細な凹凸」「が形成されている」ことは、本願補正発明の特定事項Dにおける「該上層フィルムが、該壁紙の裏面と接触する側の面にエンボス凹部を有する」ことに相当する。 よって、引用発明は、本願補正発明の特定事項Dを備える。 オ 特定事項Fについて 引用発明のfにおける「下敷きテープ1」は、本願補正発明の特定事項Fにおける「複層型下敷きテープ」に相当する。 よって、引用発明は、本願補正発明の特定事項Fを備える。 カ 上記アからオからみて、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> A 下地材の表面に壁紙を貼付するに当たり、隣接する壁紙の端部同士を重ね合わせた状態で、壁紙重ね合わせ部を切断する際に、該下地材と該壁紙重ね合わせ部との間に一時的に設置し、下地材を保護するためのテープ幅が20mm以上100mm以下の複層型下敷きテープであって、 B’設置の際に該壁紙重ね合わせ部の側に位置するポリオレフィンの上層フィルムと、設置の際に該下地材の側に位置するポリオレフィンの下層フィルムとの間に、ネット状シートが挟まれた状態で、該上層フィルムと該下層フィルムとが、幅がそれぞれ1mm以上10mm以下である両端部のみにおいて該ネット状シートとともに、接着固定されており、 C 該ネット状シートが、該複層型下敷きテープの長手方向に略平行な経糸と、該経糸と略直交し該複層型下敷きテープを幅方向に横断する緯糸とで構成されており、 D 該上層フィルムが、該壁紙の裏面と接触する側の面にエンボス凹部を有するものであり、 F 複層型下敷きテープ。 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点1> (特定事項Bに関して) 接着固定に関して、本願補正発明は、アクリル系接着剤により接着固定されている点が特定されているのに対して、引用発明は、どのような手段により接着一体化されたのか特定されていない点。 <相違点2> (特定事項Eに関して) エンボス凹部に関して、本願補正発明は、エンボス凹部1つ当たりの平均面積が、0.04mm2以上1.96mm2以下であることが特定されているのに対して、引用発明は、「エンボス加工によ」る「微細な凹凸」の「凹」となる部位の1つ当たりの平均面積が不明である点。 (4)判断 上記各相違点について検討する。 ア 相違点1について 接着固定に用いられる接着剤は、接着対象の材質や必要とされる接着強度に応じて当業者が適宜選択するものであり、ポリオレフィンの接着において、アクリル系接着剤が適することは例示するまでもなく周知の事項であるから、引用発明において、ポリプロピレンフィルムからなる上側フィルム及び下側フィルムを接着一体化をするにあたって、アクリル系接着剤による接着固定を採用し、相違点1に係る本願補正発明の構成を成すことは、当業者が容易に想到し得ることである。 イ 相違点2について 本願の発明の詳細な説明の【0038】に、「本発明の複層型下敷きテープ1は、上層フィルム2にエンボス加工を施すことにより、壁紙11の裏面に付着した糊が、上層フィルムに移行し難くすることができ、糊の掻取量を低減することができる。」と記載されているように、本願補正発明のエンボス凹部は、糊の掻取量を低減効果を期待して設けられたものである。 そして、引用発明も、「クロスの裏面に塗布されている糊を取らないために、エンボス加工により、微細な凹凸(深さ1mm以下)4が形成されている」ものであるから、糊の掻取量を低減することを意図するものであり、同様の課題の解決できる程度に、微細な凹凸(深さ1mm以下)4の「凹」となる部位の面積を適宜な範囲に設計することは、当業者の通常の能力の範囲でなし得る程度のことである。 してみると、引用発明において、クロスの裏面に塗布されている糊を取らないために、「エンボス加工によ」る「微細な凹凸」の「凹」となる部位の1つ当たりの平均面積の数値範囲を適宜規定し、相違点2に係る本願補正発明の構成を成すことは、当業者が容易に想到し得ることである。 なお、エンボス凹部の平均面積が0.04mm2以上1.96mm2以下であることは、エンボス凹部を正方形と仮定すると一辺が0.2mm~1.4mmとなり、エンボス凹部を円形と仮定すると直径が0.23mm~1.58mm程度となることから、当業者が通常用いる方法で引用発明の下敷きテープ1を製造した場合においても、図1(a)に図示された「微細な凹凸(深さ1mm以下)4」の「凹」となる部位の平均面積が、上記の数値範囲に含まれる蓋然性が高い点にも留意されたい。 (5)本願補正発明の奏する効果について 本願の発明の詳細な説明の【0024】には、「通常、原反(例えば、幅1m程度)をスリット加工し、スリット加工後の横に繋がった状態のテープ同士を手作業等で分割することにより、複層型下敷きテープ(幅数10mm程度)を製造する。エンボス加工のされていないフィルムを使用した複層型下敷きテープの場合、フィルム同士の咬みこみが発生し、分割が容易でない(分割するのに大きな力を要する)場合がある。本発明の複層型下敷きテープでは、上層フィルムに施したエンボス加工の影響により、複層型下敷きテープのフィルム間に空気層が生じるため、巻硬さが軽減されて、スリット切断面においてフィルム同士の咬みこみが生じても分割しやすくなる。」との記載があるが、この記載における作用効果は、複層型下敷きテープを製造する過程における作用効果であることから、「複層型下敷きテープの製造方法」の発明が奏し得る作用効果であって、物品の発明である「複層型下敷きテープ」が奏する作用効果であるとは認められない。 してみると、本願補正発明の奏する効果は「糊の掻取量を低減することができる」ことであって、当該作用効果は、引用発明の奏する効果から、当業者が予測することができた程度のものである。 (6)令和5年10月13日提出の上申書について ア 請求人の主張 請求人は、審査官による前置報告書の報告内容を検討し、令和5年10月13日に提出した上申書において以下のように主張している。 「本願発明の下敷きテープのように、上層フィルムにエンボス加工を施すことにより、接着剤(糊)の下敷きテープへの移行量を低減できる、という効果を奏します(本願明細書の[0019])。 それだけでなく、上層フィルムに特定の条件でエンボス加工を施すことにより、複層型下敷きテープのフィルム間に空気層が生じるため、巻硬さが軽減されて、下敷きテープの製造の段階で、スリット切断面においてフィルム同士の咬みこみが生じても分割がしやすくなります(本願明細書の[0024])。フィルム同士の咬みこみが生じることや、特定の条件でのエンボス加工により、フィルム同士の咬みこみが生じてもテープの分割がしやすいことは、本願発明者が初めて見出したことです。」 「本願明細書の実施例(本願明細書の[0079]表1)において、上層フィルムのエンボス凹部1つ当たりの平均面積が、本願請求項1で規定されたように0.04mm2以上1.96mm2以下であるテープ(テープT3~T9)は、テープ分割性の結果が全て良好となっています。 また、表1から、テープ分割性が良好となる条件と、糊掻取量が良好となる(糊掻取量が少なくなる)条件は、一致していないことがわかります。 本願発明は、テープ分割性の効果の方に焦点を当て、上層フィルムのエンボス凹部1つ当たりの平均面積を、テープ分割性が良好となる範囲に限定した発明です。」 「引用文献1に記載の発明の効果は、引用文献1の[0016]に記載された効果(上層フィルム、下層フィルム、ネット状シートという構成の複層型下敷きテープの有する一般的な効果)や、上側フィルムのエンボス加工により糊の転写量が少なくなるという効果(引用文献1の[0010])であり、効果A(合議体注:「テープ分割性が良好となるという効果」のこと)は、明らかに引用発明の効果とは異質なものです。」 イ 請求人の主張についての検討 請求人の主張について以下に検討する。 上記(5)において検討したように、請求人が主張する「上層フィルムに特定の条件でエンボス加工を施すことにより、複層型下敷きテープのフィルム間に空気層が生じるため、巻硬さが軽減されて、下敷きテープの製造の段階で、スリット切断面においてフィルム同士の咬みこみが生じても分割がしやすくな」るという作用効果は、「複層型下敷きテープの製造方法」の発明が奏し得る作用効果であって、物品の発明である「複層型下敷きテープ」が奏する作用効果であるとは認められない。 したがって、請求人が主張する作用効果は、「複層型下敷きテープ」である本願補正発明の作用効果ではなく、請求人の主張は採用できない また、本願の発明の詳細な説明の記載を参照すると、本願補正発明の「該エンボス凹部1つ当たりの平均面積が、0.04mm2以上1.96mm2以下である」とした数値限定は、【0079】の以下に掲げる表1に示された結果に基づくものである。 [図:0001411933000002.jpg] そして、【0076】~【0077】には、 「[テープ分割性] 1015mm幅の原反から、スリッターで、図3に示すような長尺のテープ(幅35mm、長さ100m、直径165mm)を29巻作製し、横に繋がった状態のテープを手で分割した。 以下の基準で、テープ分割性を評価した。」 「○:連結されたテープを手で紙管方向に引っ張ることにより容易に分割できた。 △:連結されたテープを手で巻上げ方向に押すことにより分割できた。 ×:連結されたテープの紙管内に棒を差し入れてテコの原理で分割できた。」 と記載されている。 しかしながら、【0064】には、 「厚さ20μm・幅35mmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムに対して、両面エンボス加工(図5(a))を施し、図6に示すような規則的に配列されたエンボス凹部2Aを形成した。エンボス凹部2Aの形状は3mm×3mmの正方形で、深さは140μmとした。非エンボス部2Bの幅dは、0.25mmとした。すなわち、規則的な配列の単位構造は、3.25mm×3.25mmの正方形である。」 と記載され、【0065】には、 「上記のようにエンボス加工した二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムを上層フィルム、厚さ20μm・幅35mmの低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム(エンボス加工なし)を下層フィルムとしてそれぞれ使用し、前記ネット状シートを、上層フィルムと下層フィルムで挟んだ状態で、両フィルムの両端部のそれぞれ4mmを、アクリル系接着剤により接着することにより、テープT1を作製し、テープT1の厚さや質量を測定した。」 と記載されていることから、テープ1は、【0076】に記載された「1015mm幅の原反から、スリッターで、図3に示すような長尺のテープ(幅35mm、長さ100m、直径165mm)を29巻作製し」たものではなく、あらかじめ切断されている幅35mmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムを用いて製造されたものである。 そして、【0066】~【0074】においても、テープT2~テープT10に関して、「例1と同様にして、」「作成した。」と記載されていることから明らかなように、表1に示されたテープT1~テープ10は、いずれも、【0076】に記載された、1015mm幅の原反から、スリッターで、図3に示すような長尺のテープ(幅35mm、長さ100m、直径165mm)を29巻作製し、横に繋がった状態のテープを手で分割して作られたものではない。 してみると、幅35mmのテープに対してエンボスを施したものを上層フィルムとして用い、これと下層フィルムとを両端部の接着によりテープとしてなすものと、一の原反からスリッターにより当該幅のものとなるように切断してテープとするものとでは、製造方法が異なる以上、幅が同じであったとしても、エンボス凹部1つ当たりの平均面積、エンボス凹部の占有率及びエンボス凹部の数密度とテープ分割性の間に、同一の評価結果が生じるものであるとは認められない。 仮に、【0076】において「テープ」とされているものが、【0062】における「複層型下敷きテープ(以下、単に「テープ」という場合がある。)」ではなくて、上層フィルムとして用いられる「幅35mmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム」のことを示すのであるとしても、テープの分割性の評価ではなくて、当該上層フィルムの分割性についてのものに留まり、「テープ分割性」を評価したことにはならず、請求人の主張は失当である。 さらに、【0076】の記載に関して、原反からスリッターで35mmのテープを作製するにあたり、各々のテープにおける接着がいかになされるのかについても何も示されていないことを勘案すると、【0079】の表1に示された「テープ分割性」の評価が実際に行われたか否かに疑義があり、本願の発明の詳細な説明の記載を精査しても、上申書に記載された「フィルム同士の咬みこみが生じることや、特定の条件でのエンボス加工により、フィルム同士の咬みこみが生じてもテープの分割がしやすいことは、本願発明者が初めて見出した」との請求人の主張を採用するに足る根拠が見いだせない。 (7)むすび 以上のとおり、本願補正発明は、当業者が、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4 小括 本願補正発明は、上記3のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和4年9月6日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものであり、本願補正発明の特定事項AからFに対応させて符号を付し、再掲すると、以下のとおりである。 「【請求項1】 A 下地材の表面に壁紙を貼付するに当たり、隣接する壁紙の端部同士を重ね合わせた状態で、壁紙重ね合わせ部を切断する際に、該下地材と該壁紙重ね合わせ部との間に一時的に設置し、下地材を保護するための複層型下敷きテープであって、 B’設置の際に該壁紙重ね合わせ部の側に位置する上層フィルムと、設置の際に該下地材の側に位置する下層フィルムとの間に、ネット状シートが挟まれた状態で、該上層フィルムと該下層フィルムとが、両端部のみにおいて該ネット状シートとともに接着固定されており、 C 該ネット状シートが、該複層型下敷きテープの長手方向に略平行な経糸と、該経糸と略直交し該複層型下敷きテープを幅方向に横断する緯糸とで構成されており、 D 該上層フィルムが、該壁紙の裏面と接触する側の面にエンボス凹部を有するものであり、 E 該エンボス凹部1つ当たりの平均面積が、0.04mm2以上1.96mm2以下であること F を特徴とする複層型下敷きテープ。」 2 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由は、以下の拒絶理由を含むものである。 この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特開2004-19411号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由における引用文献1は、上記第2[理由]3における「引用文献1」に相当する。 したがって、引用文献1記載された内容は、上記第2[理由]3(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本願補正発明(上記第2[理由]3(1))から、本件補正により限定された事項(上記第2[理由]2(1)で述べた限定事項)を削除したものである。 そうすると、本願発明と引用発明とは、上記第2[理由]3(3)カで検討した上記相違点2でのみ相違し、その余の点で一致するから、上記第2[理由]3(4)イで述べた理由と同様な理由により、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-005463

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