特許拒絶査定不服審判
2023-005343
ファイルボックス
- 審判番号
- 2023-005343
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-007749
- 請求日
- 2023年04月04日
- 審決日
- 2024年03月19日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コクヨ株式会社
- 【請求人代理人】赤澤 一博
- 審判長/審判官
- 審判長 藤本 義仁
- 審判官 嵯峨根 多美
- 審判官 門 良成
- 分類
- P18 .113-Z (B42F) / P18 .121-Z (B42F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 7749「ファイルボックス」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月 6日出願公開、特開2020-116770〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年1月21日の出願であって、令和4年10月21日付けで拒絶理由が通知され、同年12月7日に意見書が提出され、令和5年1月6日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされたのに対し、同年4月4日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1乃至7に係る発明は、平成31年1月21日に出願された特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定され、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
底壁を構成する底面フラップを有したボックス本体と、このボックス本体の内側に固定され前記底面フラップを内側へ折り曲げることを阻害する本体固定部材と、底面フラップを内側に折り曲げることなく係合させるフラップ係合手段とを具備してなることを特徴とするファイルボックス。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の理由である、令和4年10月21日付け拒絶理由通知の理由は、次のものを含む。
理由1(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された特開2010-247431号公報に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された特開2010-247431号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 当審の判断
1 引用文献
(1)引用文献に記載された事項
本願の出願前である平成22年11月4日に頒布された刊行物である特開2010-247431号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付した。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、紙材(特に、段ボール材)により組み立てられ、内部に仕切りを有する組立体に関するものである。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1や特許文献2においては、仕切り自体を製造するものであり、製造された仕切りは、別体の箱体内に収納して使用するものであり、仕切りと仕切りの外側の箱体とを同時に製造することはできず、仕切りの製造工程と、外側の箱体の製造工程を別々に設ける必要がある。
【0005】
また、上記特許文献1や特許文献2においては、仕切り自体が複数のブランクにより形成されているので、該複数のブランクをそれぞれ製造する手間を要する。
【0006】
また、製造された仕切りの外側の部材を箱体とみなした場合でも、箱体は複数のブランクで製造されることになり、1つのブランクでは製造されず、箱体としての見栄えや強度は十分ではない。つまり、仕切りの外側は略筒状に形成されるのであるが、その筒状部分は1つのブランクで形成することはできない。
【0007】
そこで、仕切りと仕切りの外側の箱体(特に、筒状部分)を同時に製造することができ、該仕切りを1つのブランクで製造することができるとともに、該箱体(特に、筒状部分)を1つのブランクで形成することができる仕切りを有する組立体の製造方法を提供することを目的とするものである。」
ウ 「【0017】
【図1】ファイルボックスの斜視図である(実施例1)。
【図2】ファイルボックスの底面図である。
【図3】ファイルボックスを畳んだ状態を示す斜視図である。
【図4】ファイルボックスを畳んだ状態からスリーブ状部を筒状にした状態を示す斜視図である。
【図5】図4の分解斜視図である。
【図6】外側構成部の展開図である。
【図7】仕切り部の展開図である。
・・・
【0019】
本発明に基づく仕切りを有する組立体としてのファイルボックス5は、図1~7に示すように構成され、外側構成部10と、外側構成部10の内側に設けられた仕切り部60とを有している。外側構成部10と、仕切り部60とは、ともに1枚のシート状のブランク(具体的には、段ボール材(好適には、薄型段ボール材)又は厚紙)により形成されている。
【0020】
外側構成部10は、図1、図3~図6に示すように、スリーブ状部(筒状部)20と、底面部40(カバー部)とを有している。外側構成部10の展開状態は、図6に示すようになる。」
エ 「【0028】
また、仕切り部60は、図5に示すように、正面部62と、正面部62から背面側に連設された右側仕切り本体部64と、正面部62から背面側に連設された左側仕切り本体部66と、右側仕切り本体部64と左側仕切り本体部66の背面側に連設された背面部68とを有している。ファイルボックス5を組み立てた際には、正面部62と背面部68とは互いに平行となり、右側仕切り本体部64と左側仕切り本体部66とは互いに平行となるとともに、正面部62や背面部68に対して直角となる。正面部62は、外側構成部10の正面部22の背面側に接着され、背面部68は、外側構成部10の背面部28の正面側に接着されている。」
オ 「【0035】
また、前側背面部68aは、左側仕切り本体部66の背面側の辺部から折れ線C8(第8折れ線)を介して連設され、略方形状を呈している。前側背面部68aの左右方向の長さ(折れ線C8と折れ線C9間の左右方向の長さ)B5は、後側背面部68bの左右方向の長さ(折れ線C9と折れ線C10間の左右方向の長さ)B6よりも短く形成され(B5<B6)、具体的には、背面部28の左右方向の長さA4の略1/3(丁度1/3としてもよい)の長さに形成されている。また、前側背面部68aの上下方向の長さは、左側仕切り本体部66の上下方向の長さよりも長く形成され、前側背面部68aの上辺は、左側仕切り本体部66の上辺と連続しているものの、前側背面部68aの下端は、左側仕切り本体部66の下辺よりも下方に突出している。前側背面部68aの背面側(展開状態では、前側正面部62aの接着剤塗布領域N1と同じ側の面)の接着剤塗布領域N2には、製造時に糊付けされる。接着剤塗布領域N2の代わりに、後側背面部68bの前側背面部68aと重なる領域に接着剤塗布領域を設けてもよい。」
カ 「【0047】
以上のようにして、ファイルボックス5が形成されるが、上記のように製造された段階では、図3に示すように、ファイルボックス5を平板状に折り畳んだ状態で形成される。なお、上記の製造は、組立て装置により自動で製造される。
【0048】
上記のように製造されたファイルボックス5の使用方法について説明する。ファイルボックス5を保管又は運搬する際には、図3に示すようにファイルボックス5を折り畳んだ状態としておく。ファイルボックス5を折り畳んだ状態では、右側面部24と背面部28とが1つの板状を呈するとともに、正面部22と左側面部26とが1つの板状を呈していて、右側面部24及び背面部28は、正面部22及び左側面部26と略平行となっている。また、仕切り部60においても、前側正面部62aと左側仕切り本体部66と前側背面部68aとが1つの板状を呈するとともに、後側正面部62bと右側仕切り本体部構成部64aと右側仕切り本体部構成部64bと後側背面部68bとが1つの板状を呈していて、全体に平板状に折り畳まれた状態となっている。
【0049】
次に、ファイルボックス5を使用する際には、外側構成部10のスリーブ状部20について、隣接する部材が互いに直角となるようにして筒状とし、底面部40を組み立てる。底面部40の組立てに際しては、片部46の外側に片部44と片部48とを配置させ、さらに、片部44、48の外側に片部42を配置させて片部42を内側に押し込むようにする。すると、図2に示すように、片部42~48が組み立てられて底面部40が構成される。」
キ 「【図1】 【図2】
[図:0001410924000001.jpg]
【図3】 【図4】
[図:0001410924000002.jpg]
【図5】 【図6】
[図:0001410924000003.jpg]
【図7】
[図:0001410924000004.jpg]
」
(2)引用文献の記載から把握できる事項
ア 前記(1)ウに示した【0020】には、外側構成部10が底面部40(カバー部)を有することが記載され、前記(1)カに示した【0049】には、片部42~48が組み立てられて底面部40が構成されることが記載されているので、外側構成部10は片部42~48を有していると認められる。
イ 前記(1)キに示した【図3】、【図4】、前記(1)エに示した【0028】と前記(1)カに示した【0048】、【0049】から、ファイルボックス5を畳んだ状態からスリーブ状部20を筒状にした状態において、当該スリーブ状部20の内面に仕切り部60の正面部62と背面部68が既に接着されていると認められる。
ウ 前記(1)キに示した【図6】から、片部42、44、48の先端には、スリーブ状部20側の幅(【図6】で示されるA1、A2、A4)よりも狭い部分(以下、「先端凸部」という。)が形成されている一方で、片部46の先端側の辺は、真ん中が凹んだ形状(以下、「先端凹部」という。)となっているいることが看取できる。そして、前記(1)カに示した【0049】には、片部46の外側に片部44と片部48とを配置させ、さらに、片部44、48の外側に片部42を配置させて片部42を内側に押し込むようにすると、図2に示すように、片部42~48が組み立てられて底面部40が構成されることが記載されている。前記(1)キに示した【図2】の底面図のように組み立てられた状態において、ファイルボックス内にファイルを入れた際に片部42~48で構成される底面部40が抜けないようにしないといけないという技術常識からして、前記(1)キに示した【図2】のような構成の底面部40は、片部46の先端凹部に片部44と片部48の先端凸部を嵌めた上で、前片部42を内側に押し込むようにして、片部46の先端凹部に片部42の先端凸部も差し込むことで、片部42~48が相互に係合するように組み立てられていると認められる。
エ 前記(1)オに示した【0035】の「前側背面部68aの下端は、左側仕切り本体部66の下辺よりも下方に突出している。」との記載、前記(1)エに示した【0028】の「正面部62と背面部68とは互いに平行となり、右側仕切り本体部64と左側仕切り本体部66とは互いに平行となる」との記載や前記(1)キに示した【図5】【図7】から、正面部62と背面部68の下端は、右側仕切り本体部64と左側仕切り本体部66の下辺よりも下方に突出していると認められる。
(3)引用文献に記載された発明
前記(1)及び(2)から、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「底面部40を構成する片部42~48を有する外側構成部10と、
正面部62、右側仕切り本体部64、左側仕切り本体部66と、背面部68を有する仕切り部60を具備し、
前記外側構成部10のスリーブ状部20を筒状として、前記スリーブ状部20の内面に前記仕切り部60の前記正面部62と前記背面部68とが既に接着されている状態において、前記片部46の先端凹部に前記片部44と前記片部48の先端凸部を嵌めた上で、前記片部42を内側に押し込むようにして前記片部46の先端凹部に前記片部42の先端凸部を差し込むことで、前記片部42~48が相互に係合するように組み立てられて前記底面部40が構成され、
前記正面部62と前記背面部68の下端は、前記右側仕切り本体部64と前記左側仕切り本体部66の下辺よりも下方に突出している、
段ボール材又は厚紙により組み立てられるファイルボックス5。」
2 理由1(新規性)について
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「底面部40」、「片部42~48」、「外側構成部10」、及び「ファイルボックス5」は、それぞれ、本願発明の「底壁」「底面フラップ」「ボックス本体」、及び「ファイルボックス」に相当する。
イ 「内側」とは「中心に近い側。仕切りや囲いの中側。内面。内部。」(広辞苑第六版)を意味して用いられるところ、本願の発明の詳細な説明の【0004】の「ボックス本体内に仕切板等の障害物が固定されている場合には底面フラップを内側に折り込むことができず」との記載や、ボックス本体1の幅(側壁13と側壁14の間隔)方向の中心に仕切り2があることが示される図1、12を踏まえると、本願の請求項1に記載の「内側」は、ボックス本体の内部を意味し、仕切板等の障害物が固定されているエリアは、当然、内側に包含される。
ウ そうすると、引用発明の「仕切り部60の前記正面部62と前記背面部68」は「外側構成部10」が有する「スリーブ状部20の内面」に接着されていることで、スリーブ状部20の内面に固定されているので、本願発明の「本体固定部材」と引用発明の「仕切り部60」は、「このボックス本体の内側に固定され」ている点で一致する。
エ 引用発明の「底面部40を構成する片部42~48」は「前記片部46の先端凹部に前記片部44と前記片部48の先端凸部を嵌めた上で、前記片部42を内側に押し込むようにして前記片部46の先端凹部に前記片部42の先端凸部を差し込むことで、前記片部42~48が相互に係合するように組み立てられて前記底面部40」を構成するので、本願発明の「ファイルボックス」と引用発明の「ファイルボックス5」は「底面フラップを係合させるフラップ係合手段」を具備している点で一致する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
<一致点>
「底壁を構成する底面フラップを有したボックス本体と、このボックス本体の内側に固定される本体固定部材と、底面フラップを係合させるフラップ係合手段とを具備してなることを特徴とするファイルボックス。」
で一致し、以下の点で一応相違する。
<一応の相違点>
本願発明の「本体固定部材」が「底面フラップを内側へ折り曲げることを阻害する」ように作用し、「フラップ係合手段」が「底面フラップを内側に折り曲げることなく」底面フラップを係合させるのに対し、引用発明の「仕切り部60」が片部42~48を内側へ折り曲げることを阻害するように作用しているものの、片部42を内側に押し込むようにして組み立てられており、「片部42~48」は内側に折り曲げることなく組み立てられてるのか否か明らかでない点。
(2)判断
前記一応の相違点について検討する。
ア 本願の発明の詳細な説明の【0004】の「ボックス本体内に仕切板等の障害物が固定されている場合には底面フラップを内側に折り込むことができず」との記載と前記(1)イを踏まえると、本願の請求項1に記載の「底面フラップを内側へ折り曲げることを阻害する」とは「ボックス本体の内側」に「本体固定部材」が「固定されている」構造に付随して生じる作用であって、「本体固定部材」が「固定される」「ボックス本体の内側」の位置は問わないものと認められる。
イ そうすると、引用発明の「仕切り部60の前記正面部62と前記背面部68」は、片部42~48を組み立てる際に「外側構成部10」が有する「スリーブ状部20の内面」に既に接着されている構造であるので、該構造に付随して「仕切り部60」は片部42~48をファイルボックス5の内側へ折り曲げることを阻害するように作用すると認められる。
ウ 前記イに示したとおり作用する「仕切り部60」が存在するにも関わらず、引用発明の「片部42~48」は、「前記片部42を内側に押し込むようにして前記片部42先端の幅狭部分が前記片部46上に位置するように、」「組み立てられて前記底面部40」を構成するので、引用発明の「片部42~48」は内側に折り曲げることなく組み立てられると認められる。
エ 前記ア乃至ウから、前記一応の相違点は、実質的な相違点とは認められないから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
3 理由2(進歩性)について
「内側」とは「中心に近い側。仕切りや囲いの中側。内面。内部。」(広辞苑第六版)を意味して用いられるところ、前記2(1)イとは異なり、請求項1に記載の「内側」は、ファイルボックスの本体(筒状部やスリーブ状部と同義)の中側全域を意味すると解することもできるので、「内側」の定義がファイルボックス本体(筒状部やスリーブ状部と同義)の中側全域であるとして、以下において判断する。
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「底面部40」、「片部42~48」、「外側構成部10」、及び「ファイルボックス5」は、それぞれ、本願発明の「底壁」「底面フラップ」「ボックス本体」、及び「ファイルボックス」に相当する。
イ 引用発明の「仕切り部60の前記正面部62と前記背面部68」は「外側構成部10」が有する「スリーブ状部20の内面」に接着されていることで、スリーブ状部20の内部に固定されているので、本願発明の「本体固定部材」と引用発明の「仕切り部60」は、「このボックス本体の内側に固定され」ている点で一致する。
ウ 引用発明の「底面部40を構成する片部42~48」は「前記片部46の先端凹部に前記片部44と前記片部48の先端凸部を嵌めた上で、前記片部42を内側に押し込むようにして前記片部46の先端凹部に前記片部42の先端凸部を差し込むことで、前記片部42~48が相互に係合するように組み立てられて前記底面部40」を構成するので、本願発明の「ファイルボックス」と引用発明の「ファイルボックス5」は「底面フラップを係合させるフラップ係合手段」を具備している点で一致する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
<一致点>
「底壁を構成する底面フラップを有したボックス本体と、このボックス本体の内側に固定される本体固定部材と、底面フラップを係合させるフラップ係合手段とを具備してなることを特徴とするファイルボックス。」
で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
本願発明の「本体固定部材」が「底面フラップを内側へ折り曲げることを阻害する」ように作用し、「フラップ係合手段」が「底面フラップを内側に折り曲げることなく」底面フラップを係合させるのに対し、引用発明の「仕切り部60」が片部42~48を内側へ折り曲げることを阻害するように作用しているものの、片部42を内側に押し込むようにして組み立てられており、「片部42~48」は内側に折り曲げることなく組み立てられてるのか否か明らかでない点。
(2)判断
ア 引用発明のファイルボックス5は「段ボール材又は厚紙により組み立てられる」ものであり、段ボール材又は厚紙は弾性変形可能なので、片部42を弾性変形させることで、内側に折り曲げることなく「前記片部42を内側に押し込むようにして前記片部46の先端凹部に前記片部42の先端凸部を差し込むことで」、片部42~48を組み立てることは可能である。
イ 特許出願に添付される図面は、特許を受けようとする発明に係る技術内容を当業者に理解させるための説明図であって、図面に示される寸法は必ずしも正確でないところ、引用文献には、前記正面部62と前記背面部68の下端を前記右側仕切り本体部64と前記左側仕切り本体部66の下辺よりも下方に突出させる意義は記載されていないことからすれば、当該突出させる寸法は、当業者が適宜設定し得る事項であると認める。
ウ そうすると、前記突出させる寸法を、片部42を内側に折り曲げることを阻害する程の極僅かな寸法として、片部42を内側に折り曲げることなく弾性変形により前記片部46の先端凹部に前記片部42の先端凸部を差し込んで前記片部42~48を組み立てることは、技術の具体的適用に伴う設計的事項である。
エ 前記ア乃至ウから、本願発明は、引用発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
4 審判請求人の主張
(1)審判請求人は、審判請求書において、次のとおり主張している。
ア 「(1)引用文献1における仕切り部60の認定について
審査官殿が、引用文献1に開示された「仕切り部60」を、本願発明の本体固定部材に相当する構成であると認定された点については、失当であるものと思料いたします。
[1]仕切り部60の構造について
引用文献1に開示された仕切り部60は、図5及び図7において明示されているように、左右両側の仕切り本体部64、66における下方に隙間が形成されたものとなっております。
換言すれば、仕切り部60を構成する正面部62及び背面部68の下端部は、右側仕切り本体部64及び左側仕切り本体部66よりも下方に延出したものとなっております。
すなわち、右側仕切り本体部64及び左側仕切り本体部66の下端縁は、正面部62及び背面部68の下端縁よりも上に位置しているものであることは明らかです。
また、右側仕切り本体部64及び左側仕切り本体部66よりも下方に延出した正面部62の下端縁は、外側構成部10を構成する正面部22及び片部44の境界部分に当接又は近接するように配設されるものであります。
同様に、右側仕切り本体部64及び左側仕切り本体部66よりも下方に延出した背面部68の下端縁は、背面部28及び片部48の境界部分に当接又は近接するように配設されるものであります。
そうすると、引用文献1に開示された仕切り部60は、右側仕切り本体部64及び左側仕切り本体部66の下端縁が、正面部62及び背面部68の下端縁よりも上に位置するように構成されているため、底面部40及び片部42、46、48を内側へ折り曲げることを阻害することができないものであります。
したがいまして、「引用文献1に開示された仕切り部60が本願発明における 本体固定部材に相当する構成である」と認定された、審査官殿の御判断は誤ったものであると確信いたします。」
イ 「(2)引用文献1におけるフラップ係合手段の認定について
審査官殿が、引用文献1における段落0049の記載を根拠として、本願発明のフラップ係合手段に相当する構成を有すると認定された点については、失当であるものと思料いたします。
[1]引用文献1の段落0049の記載について
引用文献1の「片部42」は、審査官殿によって、底面部40及び片部46、48とともに、本願発明における底面フラップに相当する構成であると御認定されたものであります。
そして、引用文献1の段落0049には、「・・・片部42を内側に押し込むようにする。」と明確に記載されています。
そうすると、片部42が内側に押し込まれない限り、当該片部42、底面部40、及び、片部46、48は係合することができないことは明らかであります。
したがいまして、「引用文献1の段落0049において『・・・片部42を内側に押し込むようにする。』という記載があるにもかかわらず、引用文献1に係る発明に本願発明のフラップ係合手段に相当する構成が設けられている」と認定された、審査官殿の御判断は誤ったものであると確信いたします。」
ウ 「4.むすび
先に述べた理由により、本願請求項1~7に係る発明は、特許されるべきものであると思料致します。」
(2)審判請求人の主張の検討
ア まず、審判請求人の主張する前記3(1)アについて検討する。
審判請求人の主張する前記3(1)アにおける「引用文献1に開示された仕切り部60は、右側仕切り本体部64及び左側仕切り本体部66の下端縁が、正面部62及び背面部68の下端縁よりも上に位置する」という構成は、引用発明の「前記正面部62と前記背面部68の下端は、前記右側仕切り本体部64と前記左側仕切り本体部66の下辺よりも下方に突出している」という構成と同義である。
イ 前記2(1)イに示したとおり、本願の請求項1に記載の「内側」はボックス本体の内部を意味すると解され、本願発明の「本体固定部材」は、「このボックス本体の内側に固定され前記底面フラップを内側へ折り曲げることを阻害する」と特定されるまでであって、底壁との間に隙間があるものを排除してはいないので、前記アに示した構成があるからといって、前記2(2)アに示した事項に変わりはない。
ウ 前記3(1)イに示したように、請求項1に記載の「内側」をファイルボックスの本体(筒状部やスリーブ状部と同義)の中側全域を意味すると解すれば、審判請求人の主張する前記3(1)アのとおり、引用発明のファイルボックス5は前記アに示した構成により、「前記右側仕切り本体部64と前記左側仕切り本体部66の下辺」と「底面部40」との間に隙間が存在し、当該隙間の存在する部分では、「片部42~48」を「外側構成部10」が有する「スリーブ状部20」の内側に折り曲げることは可能であるので、本願発明は新規性を有すると認められる。しかし、進歩性については、前記3(2)に示したとおりである。
エ 次に、審判請求人の主張する前記(1)イについて検討する。
前記2(1)イに示したとおり、本願の請求項1に記載の「内側」は仕切板等の障害物が固定されているエリアを含むボックス本体の内部を意味すると解され、引用発明のファイルボックス5を「前記片部42を内側に押し込むようにして前記片部46の先端凹部に前記片部42の先端凸部を差し込むことで、前記片部42~48が相互に係合するように組み立て」ることは、「前記外側構成部10のスリーブ状部20を筒状として、前記スリーブ状部20の内面に前記仕切り部60の前記正面部62と前記背面部68とが接着されている状態において」行われるので、前記片部42を、「前記スリーブ状部20の内面に」前記仕切り部60が接着されているエリアまで押し曲げることはできない。したがって、前記2(2)イに示したとおりである。
オ また、引用発明のファイルボックス5は、前記アに示した構成により、「前記右側仕切り本体部64と前記左側仕切り本体部66の下辺」と「底面部40」との間に隙間が生じるので、前記3(1)イに示したように、請求項1に記載の「内側」をファイルボックスの本体(筒状部やスリーブ状部と同義)の中側全域を意味すると解すれば、当該隙間の存在の存在する部分では「片部42~48」を内側に折り曲げられて組み立てることが可能である。しかし、引用発明のファイルボックス5は「段ボール材又は厚紙により組み立てられる」ものであるからして、前記3(2)アに示したとおり、片部42を弾性変形させて内側に折り曲げることなく組み立てることも可能であり、そうすることは前記3(2)イ及びウに示したとおり、技術の具体的適用に伴う設計的事項である。
カ したがって、前記3(1)に示した審判請求人の主張はいずれも採用することができない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、原査定で引用された引用文献に記載されたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、仮に特許法第29条第1項第3号に該当しないとしても原査定で引用された引用文献の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-005343