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特許拒絶査定不服審判

2023-004931

立体像結像装置

審判番号
2023-004931
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-238420
請求日
2023年03月24日
審決日
2024年06月10日
公報発行日
2024年08月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社アスカネット
  • 【請求人代理人】杉村 憲司
  • 【請求人代理人】杉村 光嗣
  • 【請求人代理人】結城 仁美
  • 【請求人】日本ゼオン株式会社
  • 【請求人代理人】杉村 憲司
  • 【請求人代理人】杉村 光嗣
  • 【請求人代理人】結城 仁美
審判長/審判官
  • 審判長 神谷 健一
  • 審判官 宮澤 浩
  • 審判官 関根 洋之
分類
P18 .537-WZ (G02B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特願2018-238420「立体像結像装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 7月 2日出願公開、特開2020-101614〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年12月20日の出願であって、令和4年8月25日付けの拒絶理由の通知に対し、同年10月27日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年12月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和5年3月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 その後、令和6年2月13日付けで、当審合議体より拒絶理由を通知し、これに対して同年4月19日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされた。 第2 本件発明 本願の請求項1~3に係る発明は、令和6年4月19日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。 「 相互に間隙を隔てて平行配置されてなる複数の光反射面を一方の表面に備える基材樹脂層と、前記基材樹脂層の前記複数の光反射面間の前記間隙の少なくとも一部を充填してなる充填樹脂層とを有する光制御パネルを含んでなる立体像結像装置であって、 前記基材樹脂層は、非晶性のノルボルネン系樹脂よりなり、 前記光反射面は、少なくとも一部が前記基材樹脂層の主面に対して垂直であり、且つ、前記表面上で、対応する斜面と共に凸条を形成してなり、 前記凸条は、鉛直方向最高点となる位置の近傍において、曲面を有する形状となっており、 前記凸条の整列方向にて、隣接する凸条同士の、一方の凸条の前記光反射面と他方の凸条の前記斜面とが、相互に交わるように配置されており、 前記光反射面について、前記平行配置の方向に沿う断面上にて、下記式(1)に従って算出した垂直性パラメータの値が0.70以上であるとともに、 前記間隙中の、前記充填樹脂層によって充填されなかった部分の比率を示す空隙率を下記式(2)に従って算出した場合に、前記空隙率が0.10以下である、立体像結像装置。 H1/H0・・・(1) (式(1)にて、H1は、前記光反射面が前記主面に対して垂直である前記一部の高さを示し、H0は、前記光反射面と共に凸条を形成する前記斜面が前記表面と結合する位置(P1)を通り、前記凸条の前記鉛直方向最高点となる位置の近傍における前記曲面を有する形状の端点にある位置(P2)を通る直線が、前記光反射面の位置における前記主面の法線と交差する位置の、高さを示す。) L1/L0・・・(2) (式(2)にて、L1は、前記充填樹脂層により充填されなかった部分の高さを、L0は、前記凸条の高さを示す。)」 第3 当審合議体より通知した拒絶の理由 令和6年2月13日付けで、当審合議体より通知した拒絶の理由の概要は、本願の請求項1~3に係る発明は、発明の詳細な説明において、発明が解決しようとする課題を解決できることを、当業者が理解できるように記載された範囲を超えているものであり、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。 第4 当審の判断 1 発明が解決しようとする課題 本願の段落【0005】の記載に基づけば、本件発明は、「輝度及び鮮明度の高いイメージを結像することができる、立体像結像装置を提供する」ことを発明が解決しようとする課題としていると理解できる。 2 課題を解決するための手段 本願の段落【0012】には、「このように、所定の構造の光制御パネルについて、所定の方法で算出した垂直性パラメータの値が所定の値以上となるようにすることで、かかる光制御パネルを含んでなる立体像結像装置によって空中結像することができるイメージの輝度及び鮮明度を効果的に高めることができる。」と記載されている。当該記載に基づけば、本件発明は、「式(1)に従って算出した垂直性パラメータの値」が、「0.70以上」であるという構成要件によって、課題を解決できると説明されているといえる。 3 垂直性パラメータ 本願における「垂直性パラメータの値」は、下記式(1)に従って算出されるものである。 H1/H0・・・(1) (H1は、前記光反射面が前記主面に対して垂直である前記一部の高さを示し、H0は、前記光反射面と共に凸条を形成する前記斜面が前記表面と結合する位置(P1)を通り、前記凸条の前記鉛直方向最高点となる位置の近傍における前記曲面を有する形状の端点にある位置(P2)を通る直線が、前記光反射面の位置における前記主面の法線と交差する位置の、高さを示す。) そこで、「式(1)に従って算出した垂直性パラメータの値」が、「0.70以上」であることによって、上記課題を解決できることが、当業者に理解できるように記載されていたかについて検討する。 光反射面が主面に対して垂直である一部の高さである「H1」は、光反射面のうち、「立体像結像装置」が立体像を結像するのに寄与する部分の高さであると理解できる。 一方、「垂直性パラメータ」の算出に用いられる「H0」は、「前記光反射面と共に凸条を形成する前記斜面が前記表面と結合する位置(P1)を通り、前記凸条の前記鉛直方向最高点となる位置の近傍における前記曲面を有する形状の端点にある位置(P2)を通る直線が、前記光反射面の位置における前記主面の法線と交差する位置の、高さ」を示すものである。 以下に本願の【図2】を示す。 [図:0001412855000001.jpg] P2の位置は、「前記凸条の前記鉛直方向最高点となる位置の近傍」における「曲面を有する形状」の「端点」となる位置によって変化するものであり、H0の値も、この位置によって変動する。この「曲面を有する形状」の「端点」となる位置は、曲率や幅等の「曲面」の形状により変化することは明らかである。また、段落【0016】に記載されているように、「基材樹脂層の成形時の成形精度の限界、及び/又は、充填樹脂層の充填時に、充填樹脂層の形成材料の樹脂だけでなく、基材樹脂層も加熱及び加圧されること等により、仮に、断面直角三角形の凸条16を形成しようとしたとしても、成形時に、斜面15と光反射面13の垂直部分とにより鋭角の頂点が形成されないか、或いは、仮に成形時にかかる頂点が形成されたとしても、充填時の加熱及び加圧により頂点及びその近傍で樹脂が溶解又は軟化することにより頂点が潰れてしまう、という現象」によって形成される「多少湾曲した面」の「端点」の位置は、凸条16を形成する斜面上に存在することになり、「H0」は、凸条16を形成する斜面の傾きに依存することも明らかである。 そうすると、「H1」の高さが同一であっても、「前記凸条の前記鉛直方向最高点となる位置の近傍」に形成された「曲面」の形状、あるいは、曲面が形成される凸条の斜面の傾きによって、「垂直性パラメータの値」が変化すると理解できる。 また、段落【0028】には、「また、充填樹脂層を構成する熱可塑性充填樹脂の屈折率が、基材樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の屈折率の0.8倍以上1.2倍以下であることが好ましく、0.9倍以上1.1倍以下であることがより好ましい。屈折率が上記関係を満たしていれば、得られる立体像結像装置を用いて、より歪みの少ないイメージを結像することが可能となる。」と記載されている。そうすると、そもそも、「曲面」や「斜面」は、ゆがみの少ないイメージを結像するように、屈折率が近似した樹脂により形成されるものであるから、「曲面」の形状や「斜面」の傾きによって変化する「H0」の高さが、「立体像結像装置」の何らかの光学特性に影響を及ぼすものとは考えられない。 以上から、本願における「垂直性パラメータの値」について、当業者が、「立体像結像装置によって空中結像することができるイメージの輝度及び鮮明度」を示す値であると理解することはない。 請求人は、令和6年4月19日に提出した意見書において、「H0の位置は、いわば、凸条の先端部分が本来の理想的な形状、すなわち、プレス工程で押しつぶされて曲面とならなかった場合の形状における光反射面の上端の高さを意味します。そしてかかるH0に対して、実際の光反射面の垂直部分の高さH1がどの程度の割合であるかということを表す「H1/H0」の値が、「立体像結像装置によって空中結像することができるイメージの輝度及び鮮明度」を示す値であることは当業者には理解可能と思料します。」(下線は合議体が付した。)と主張している。 しかし、「理想的な形状」であった場合の「光反射面の上端の高さ」、つまり、立体像結像装置に実在しない幾何形状が、イメージの輝度及び鮮明度に影響を与えることについて、請求人は、何ら説明しておらず、本願の明細書にも記載がない。そして、立体像結像装置の実在しない幾何形状が、イメージの輝度及び鮮明度に影響を与えることが、技術常識であったともいえない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 4 実施例 本願の段落【0048】~【0067】には、実施例1~9及び比較例1~5として、熱可塑性樹脂が異なる3種類の熱可塑性樹脂シートを用い、シート加温温度Hs、基材加温温度Hb、圧力条件及び工程順序を変化させて、得られた立体像結像装置について各種評価を行ったことが記載されている。そして、段落【0067】に「垂直性パラメータの値が0.70以上且つ空隙率が0.10以下である実施例1~9では、立体像結像装置によって空中結像することができるイメージの輝度及び鮮明度を効果的に高めることができたことが分かる。一方、垂直性パラメータ及び空隙率の少なくとも一方が上記範囲外である比較例1~5に係る立体像結像装置によっては、輝度及び鮮明度の高いイメージを空中結像することができなかったことが分かる。」と記載している。 しかし、実施例1~9及び比較例1~5は、段落【0054】に記載された、同じ「寸法の凹凸パターンを有する基材」を用いている。このため、いずれの実験例においても、本来の理想的な形状における光反射面の上端の高さを意味する「H0」の値は、同じ値に固定されていたと理解できる。そうすると、実施例1~9及び比較例1~5は、熱可塑性樹脂シートの熱可塑性樹脂の違い、及び、シート加温温度Hs、基材加温温度Hb、圧力条件及び工程順序の違いにより変化した「H1」の値が、ある値より小さい場合に、輝度及び鮮明度の評価が劣ることを示すものにとどまるものであり、「垂直製パラメータの値」の値が0.70以上であっても、「H1」の値が小さければ輝度及び鮮明度の評価が劣ることになるから、「垂直性パラメータの値」が「0.70以上」であるという構成要件によって、課題を解決できることを示すものとはいえない。 請求人は、令和6年4月19日に提出した意見書において、「用意した基材が同じであってもその後の真空プレス時の条件に応じて基材側の凹凸の形状も変化しうるため、H0の値は、実施例を通じて『一定』ではなく、いくつかの値について検証しておりました。」、「本願実施例、比較例は、製造工程における諸条件の違いにより変化した「H0」、「H1」…の値が輝度及び鮮明度に与える影響を検証したものであり、H1/H0の値が0.70以上であるときに課題を解決できることを示すものといえます。」(下線は合議体が付した。)と主張している。 しかし、請求人の主張は、「H0」の値について、「真空プレス時の条件」あるいは「製造工程における諸条件」で変化すると主張する一方で、「プレス工程で押しつぶされて曲面とならなかった場合の形状における光反射面の上端の高さを意味します」とも主張しており、明らかに矛盾している。また、真空プレス等の製造工程における諸条件により、基材側の凹凸の形状が変化した場合、段落【0016】に記載されているとおり、「斜面15と光反射面13の垂直部分とにより鋭角の頂点が形成されないか、或いは、仮に成形時にかかる頂点が形成されたとしても、充填時の加熱及び加圧により頂点及びその近傍で樹脂が溶解又は軟化することにより頂点が潰れてしまう、という現象」によって、上記【図2】に示されるような「多少湾曲した面」が形成されることになる。本願の明細書の記載を参酌すれば、真空プレス等の製造工程によって基材側の凹凸の形状が変化したとしても、「H0」の値が変化することになるとは考えがたい。また、請求人は、各実施例及び比較例において「H0」の値がどのように変化したかを開示していない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 5 小括 以上より、本件発明は、発明の詳細な説明において、発明が解決しようとする課題を解決できることを、当業者が理解できるように記載された範囲を超えているものであり、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 本件発明の記載を引用する請求項2及び請求項3に係る発明についても同様である。 第5 むすび(結論) 上記のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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