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特許拒絶査定不服審判

2023-004693

発光素子、光源装置及びプロジェクタ

審判番号
2023-004693
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-504831
請求日
2023年03月20日
審決日
2024年08月21日
公報発行日
2024年11月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ソニーグループ株式会社
  • 【請求人代理人】渡邊 薫
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 田辺 正樹
  • 審判官 小島 寛史
分類
P18 .121-WZ (G03B) / P18 .537-WZ (G03B) / P18 .55 -WZ (G03B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
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特願2020-504831「発光素子、光源装置及びプロジェクタ」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月12日国際公開、WO2019/171775〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(平成31年)1月17日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 平成30年3月6日)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。以下、平成30年3月6日を「優先日」という。 令和4年 6月21日付け:拒絶理由通知書 同年 7月12日 :意見書及び手続補正書の提出 同年 9月 7日付け:拒絶理由通知書(最後) 同月16日 :意見書及び手続補正書の提出 同年12月19日付け:補正の却下の決定 同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (令和5年 1月10日 :原査定の謄本の送達) 同年 3月20日 :審判請求書及び手続補正書の提出 同年 5月15日付け:前置報告書 同年 7月25日 :上申書の提出 令和6年 2月28日付け:審尋 同年 3月12日 :回答書の提出 同月27日付け:拒絶理由通知書 同年 4月12日 :意見書及び手続補正書の提出 なお、当審において通知した令和6年3月27日付け拒絶理由通知書を、以下「当審拒絶理由通知書」という。 第2 本願発明について 1 本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年4月12日に提出された手続補正書(以下、当該手続補正書による補正を「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 蛍光体及び光散乱体を含む蛍光体層と、 前記蛍光体層の一側に配され、該蛍光体層側から所定の入射角度で入射した光を出射する出射角度選択層と、 を少なくとも備え、 前記蛍光体層中の前記光散乱体の体積濃度を第1所定値超とすることにより、前記蛍光体の発光スポットの直径である第1蛍光発光スポット径を、前記蛍光体を含み且つ前記光散乱体を含まない蛍光体層の該蛍光体の発光スポットの直径である第2蛍光発光スポット径よりも小さい第2所定値未満とする、発光素子。」 2 本願発明の分説 本願発明の構成を便宜上次のように構成Xと構成A1、A2及びBに分説する。また、参考図として、本願の第1の実施形態(本願明細書【0031】~【0045】参照)に対応する図1に部材名を記入したものを掲載する。 <本願発明の分説> A1 蛍光体及び光散乱体を含む蛍光体層と、 A2 前記蛍光体層の一側に配され、該蛍光体層側から所定の入射角度で入射した光を出射する出射角度選択層と、 を少なくとも備え、 B 前記蛍光体層中の前記光散乱体の体積濃度を第1所定値超とすることにより、前記蛍光体の発光スポットの直径である第1蛍光発光スポット径を、前記蛍光体を含み且つ前記光散乱体を含まない蛍光体層の該蛍光体の発光スポットの直径である第2蛍光発光スポット径よりも小さい第2所定値未満とする、 X 発光素子。」 <参考図(図1)> [図:0001415865000001.jpg] 3 課題・作用効果に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、本願発明の技術上の意義の概略を理解するために、発明が解決しようとする課題及び作用効果に関連する記載等を一部抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は合議体が付したものである。 「【技術分野】 【0001】 本技術は、発光素子、光源装置及びプロジェクタに関する。 【背景技術】 【0002】 近年、照明器具、ディスプレイ、プロジェクタ等のような光学デバイスでは、様々な用途において、必要な方向に、かつ、効率的に光を出射することのニーズがある。 …(中略)… 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、特許文献1~3で提案された技術では、更なる、発光領域の広がり抑制や指向性の向上が図れないおそれがある。 【0008】 そこで、本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、発光領域の広がりの更なる抑制や指向性の更なる向上を実現することができる発光素子、並びに、この発光素子を備える光源装置及びプロジェクタを提供することを主目的とする。 …(中略)… 【発明の効果】 【0021】 本技術によれば、更なる、発光領域の広がり抑制や指向性の向上を実現することができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。 …(中略)… 【0025】 <1.本技術の概要> まず、本技術の概要について説明をする。 本技術は、発光素子、光源装置及びプロジェクタに関するものである。 【0026】 蛍光体光源は、蛍光体層内部の発光領域の広がり及び出射蛍光の発散角の広がりによって光源と結合させる光学系との結合効率が低下することがある。蛍光体光源では回折構造を用いて出射蛍光の発散角を抑制している例があるが、出射面に対し1つまたは2つの垂直面内の発散角のみ制御可能という制約がある。しかしながら、この例では、発光領域の広がり抑制対策は適用されていない。また、金属ナノ粒子とバルク媒質の表面プラズモン現象による蛍光発光増強を行う例がある。しかしながら、励起光が多重反射する環境下で使用していないため、励起効率が低い状態のままである。 【0027】 本技術は、エタンデュ(Etendue)(=発光領域の大きさ×出射発散角)を小さくすることができる。さらに、本技術は、発光量減少を最小限にとどめることができる。 【0028】 エタンデュ(Etendue)に関しては、 A.散乱構造によって蛍光体層内における蛍光発光領域の広がりを抑制する(発光領域の広がり抑制)、 B.出射角依存の出射角度選択層(例えば、誘電体膜)によって出射角が小さい蛍光のみ出射されるようにし、臨界角より大きい角度で蛍光体層側から出射角度選択層(誘電体膜)に入射した蛍光は反射され、臨界角未満の角度で入射するまで層内部で散乱を繰り返す(指向性の向上)、 以上のA及びBの技術を組み合わせることによって、エタンデュ(Etendue)を低減することができる。」 第3 当審拒絶理由通知書において指摘した拒絶理由の概要 当審拒絶理由通知書において通知した、本件補正前の請求項1に係る発明に対する進歩性欠如の拒絶の理由のうち、特開2017-191280号公報(以下「引用文献11」という。)に記載された発明を主たる引用発明とした拒絶の理由の要旨は、次のとおりである。 (進歩性の欠如)本件補正前の請求項1に係る発明は、その優先日前に発行された引用文献11に記載された発明及び周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第4 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 1 引用文献11に記載された事項及び引用発明の認定 (1) 引用文献11に記載された事項 前記引用文献11には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したもので、引用発明の認定に直接用いる記載に付した。 ア 【0001】~【0014】 「【技術分野】 【0001】 本発明は、波長変換素子、照明装置およびプロジェクターに関する。 【背景技術】 【0002】 近年、プロジェクター用の照明装置として、蛍光体を利用した照明装置が提案されている。この種の照明装置は、光源から射出された励起光を蛍光体に照射して蛍光光を発生させることにより、蛍光光を含む照明光を生成する。下記の特許文献1には、複数の気孔を含有させた蛍光体セラミックスと、励起光を射出する固体光源と、を備えた光源装置が開示されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開2012-64484号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 蛍光光は、蛍光体の内部を等方的に伝播した後に外部に射出されるため、発光領域(蛍光光の射出領域)は、励起光の入射領域よりも大きくなる。発光領域が大きくなると、エテンデューが大きくなり、蛍光体の後段の集光レンズで呑み込めない成分が生じる。これにより、蛍光光の利用効率が低下する。 【0005】 特許文献1の光源装置では、蛍光体層に複数の気泡を含有させることによって、蛍光体層に散乱性を持たせ、発光領域の拡大を低減している。ところが、蛍光体層に複数の気泡を含有させると、蛍光光だけでなく、蛍光体層に入射した励起光も散乱される。そのため、励起光の一部は、蛍光体に吸収されずに後方散乱し、蛍光体層の外部へ射出される。これにより、励起光の利用効率が低下する。 【0006】 本発明の一つの態様は、上記の課題を解決するためになされたものであって、励起光の利用効率が高く、発光領域の拡大を低減できる波長変換素子を提供することを目的の一つとする。また、本発明の一つの態様は、上記の波長変換素子を備えた照明装置を提供することを目的の一つとする。また、本発明の一つの態様は、上記の照明装置を備えたプロジェクターを提供することを目的の一つとする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上記の目的を達成するために、本発明の一つの態様の波長変換素子は、第1の部材と第2の部材とを含む蛍光体層を備え、前記蛍光体層を励起させる励起光の波長帯における前記第1の部材の屈折率と前記第2の部材の屈折率との差が、前記蛍光体層で生成された蛍光光の波長帯における前記第1の部材の屈折率と前記第2の部材の屈折率との差よりも小さい。 【0008】 上記の課題を解決するために、波長変換素子は、励起光に対して散乱性が低く、蛍光光に対しては散乱性が高い特性を有する蛍光体層を備えればよい。蛍光体層が第1の部材と第2の部材とを含む場合、スネルの法則から、第1の部材と第2の部材との屈折率差が大きい程、光が第1の部材と第2の部材との界面を通過するときの角度変化、すなわち屈折が大きく、散乱性が高くなる。逆に第1の部材と第2の部材との屈折率差が小さい程、光が第1の部材と第2の部材との界面を通過するときの角度変化が小さく、散乱性が低くなる。 【0009】 本発明の一つの態様の波長変換素子においては、励起光の波長帯における第1の部材の屈折率と第2の部材の屈折率との差は、蛍光光の波長帯における第1の部材の屈折率と第2の部材の屈折率との差よりも小さい。そのため、励起光に対する散乱性は相対的に低くなり、蛍光光に対する散乱性は相対的に高くなる。したがって、励起光の後方散乱が減少するとともに、蛍光光が光入射面の法線方向と交差する方向へ伝播しにくくなる。これにより、励起光の利用効率が高く、発光領域の拡大を低減できる波長変換素子を実現することができる。 【0010】 本発明の一つの態様の波長変換素子において、前記第2の部材は蛍光体を含んでもよい。 この構成によれば、蛍光体層を第1の部材と第2の部材の2種類の部材で構成できるため、簡易な構成とすることができる。 【0011】 本発明の一つの態様の波長変換素子において、前記蛍光体層が第3の部材をさらに含み、前記励起光の波長帯における前記第1の部材の屈折率と前記第3の部材の屈折率との差が、前記蛍光光の波長帯における前記第1の部材の屈折率と前記第3の部材の屈折率との差よりも小さくてもよい。 この構成によれば、蛍光光に対する散乱性をより高めることができるため、発光領域の拡大をさらに低減できる。 【0012】 本発明の一つの態様の波長変換素子において、前記蛍光体層が、蛍光体を含む第3の部材をさらに含んでいてもよい。 この構成によれば、第1の部材および第2の部材は蛍光体を含まなくてよいため、第1の部材および第2の部材の材料選択の自由度を高めることができる。 【0013】 本発明の一つの態様の照明装置は、本発明の一つの態様の波長変換素子と、前記蛍光体を励起させる励起光を射出する光源と、を備える。 この構成によれば、励起光の利用効率に優れ、エテンデューが小さい照明装置を実現することができる。 【0014】 本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の一つの態様の照明装置と、前記照明装置から射出された光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学系と、を備えている。 この構成によれば、光の利用効率が高いプロジェクターを実現することができる。」 イ 【0016】~【0031】、図1 「【発明を実施するための形態】 【0016】 [第1実施形態] 以下、本発明の第1実施形態について、図1~図7を用いて説明する。 なお、以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。 【0017】 [プロジェクター] 本実施形態に係るプロジェクターの一例について説明する。 本実施形態のプロジェクターは、スクリーン(被投射面)上にカラー映像を表示する投射型画像表示装置である。プロジェクターは、赤色光、緑色光、青色光の各色光に対応した3つの液晶光変調装置を備えている。プロジェクターは、照明装置の光源として、高輝度・高出力な光が得られる半導体レーザーを備えている。 【0018】 図1は、本実施形態に係るプロジェクターの光学系を示す概略図である。 図1に示すように、プロジェクター1は、第1照明装置100と、第2照明装置102と、色分離導光光学系200と、液晶光変調装置400Rと、液晶光変調装置400Gと、液晶光変調装置400Bと、クロスダイクロイックプリズム500と、投射光学系600と、を備える。 本実施形態の第1照明装置100は、特許請求の範囲の照明装置に対応する。」 「図1 [図:0001415865000002.jpg] 」 「【0019】 第1照明装置100は、第1光源10と、コリメート光学系70と、ダイクロイックミラー80と、コリメート集光光学系90と、回転蛍光板30と、モーター50と、第1レンズアレイ120と、第2レンズアレイ130と、偏光変換素子140と、重畳レンズ150と、を備える。 …(中略)… 【0028】 第2照明装置102から射出された青色光Bは、ダイクロイックミラー80により反射され、回転蛍光板30から射出されダイクロイックミラー80を透過した蛍光光Yと合成されて白色光Wとなる。白色光Wは、第1レンズアレイ120に入射する。 【0029】 回転蛍光板30は、モーター50と、基材40と、反射層41と、蛍光体層42と、を備える。回転蛍光板30は、青色光からなる励起光Eが入射する側と同じ側に向けて蛍光光Yを射出する。すなわち、回転蛍光板30は、反射型の回転蛍光板である。 【0030】 基材40は、例えばアルミニウム、銅等の放熱性に優れた金属製の基材から構成される。基材40は、モーター50により回転軸の周りに回転可能とされている。基材40は、平面形状が円形の板体であり、例えば直径が50mm~60mm程度に設定され、厚さが1mm~2mm程度に設定される。 【0031】 蛍光体層42は、平面形状が円環状の無機蛍光体材料を含んで構成されている。蛍光体層42は、基材40の一面40a側において、回転軸の周りに設けられている。」 ウ 【0032】~【0041】、図2 「【0032】 図2は、本実施形態の波長変換素子43の断面図である。 図2に示すように、波長変換素子43は、蛍光体層42と、反射層41と、を備えている。蛍光体層42は、励起光Eが入射する光入射面42aと、光入射面42aと反対側の対向面42bと、を有する。反射防止層44は、蛍光体層42の光入射面42aに設けられている。反射層41は、蛍光体層42の対向面42bに設けられている。波長変換素子43は、反射層41に設けられた接着材層45によって基材40に貼り付けられている。接着材層45としては、例えばシリコーン樹脂が用いられる。」 「図2 [図:0001415865000003.jpg] 」 「【0033】 蛍光体層42は、バインダー46と、複数の蛍光体粒子47と、複数の散乱体粒子48と、を含む。複数の蛍光体粒子47は、バインダー46の内部に略均一に分散している。複数の散乱体粒子48は、バインダー46の内部に略均一に分散している。バインダー46、蛍光体粒子47、および散乱体粒子48は、それぞれ異なる屈折率を有する。 本実施形態のバインダー46は、特許請求の範囲の第1の部材に相当する。本実施形態の蛍光体粒子47は、特許請求の範囲の第2の部材に相当する。本実施形態の散乱体粒子48は、特許請求の範囲の第3の部材に相当する。 【0034】 バインダー46は、透光性を有する無機材料もしくは有機材料で構成される。具体的には、無機材料として、例えば各種のガラス、アルミナ等の透光性酸化物セラミックスなどが用いられる。有機材料としては、例えばポリエステル樹脂などの樹脂材料が用いられる。 【0035】 蛍光体粒子47は、例えば黄色の蛍光光を発する無機蛍光体で構成される。具体的には、無機蛍光体として、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット(Y3Al5O12:Ce3+(YAG))系蛍光体、(Sr,Ba)2SiO4:Eu2+系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu2+系蛍光体、等が用いられる。もしくは、黄色光を発光する無機蛍光体として、緑色蛍光体と赤色蛍光体とを混合した蛍光体を用いてもよい。その場合、緑色蛍光体として、Lu3Al5O12:Ce3+系蛍光体、Y3O4:Eu2+系蛍光体、(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+系蛍光体、Ba3Si6O12N2:Eu2+系蛍光体、(Si,Al)6(O,N)8:Eu2+系蛍光体等を用いることができる。赤色蛍光体として、CaAlSiN3:Eu2+系蛍光体、Ca2Si5N8:Eu2+系蛍光体、(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+系蛍光体、Ba3Si6O12N2:Eu2+系蛍光体、KSiF6:Mn4+系蛍光体、KTiF6:Mn4+系蛍光体等を用いることができる。 【0036】 散乱体粒子48は、例えば透光性を有する無機材料で構成される。具体的には、無機材料として、例えば各種のガラス、アルミナ等の透光性酸化物セラミックスなどが用いられる。 【0037】 バインダー46と蛍光体粒子47とに着目したとき、励起光の波長帯におけるバインダー46と蛍光体粒子47との屈折率差が、蛍光光の波長帯におけるバインダー46と蛍光体粒子47との屈折率差よりも小さくなるように、バインダー46の材料と蛍光体粒子47の材料とが選定される。もしくは、バインダー46と散乱体粒子48とに着目したとき、励起光の波長帯におけるバインダー46と散乱体粒子48との屈折率差が、蛍光光の波長帯におけるバインダー46と散乱体粒子48との屈折率差よりも小さくなるように、バインダー46の材料と散乱体粒子48の材料とが選定される。本実施形態の場合、少なくとも上記のいずれか一方の条件を満たせばよい。これにより、励起光に対する散乱性を低くし、蛍光光に対する散乱性を高くすることができる。 【0038】 蛍光体層42の内部には、バインダー46、蛍光体粒子47、散乱体粒子48の3つの部材が存在する。光は屈折率が互いに異なる2つの物質の界面で屈折するため、上述したように、バインダー46と蛍光体粒子47との屈折率の組合せ、およびバインダー46と散乱体粒子48との屈折率の組合せを考慮すればよい。蛍光体粒子47と散乱体粒子48とは互いに接触して界面を構成することが十分に少ないと考えられる。そのため、蛍光体粒子47と散乱体粒子48との屈折率の組合せについては無視できる。 【0039】 反射防止層44は、蛍光体層42の光入射面42aに入射する励起光Eの反射を低減させるための膜である。反射防止層44の具体例としては、例えば蛍光体層42の光入射面42aを鏡面研磨し、その表面に誘電体多層膜を成膜したものなどが挙げられる。 【0040】 反射層41は、蛍光体層42と接着材層45との間に設けられている。反射層41は、蛍光光Yを高い反射率で反射するように設計されている。反射層41の具体例としては、例えばアルミニウム、銀等の反射率の高い金属反射膜が挙げられる。これにより、反射層41は、基材40側に向かう蛍光光Yの多くを図2の上方(基材40とは反対側)に向けて反射する。 【0041】 波長変換素子43にはレーザー光からなる励起光Eが入射するため、波長変換素子43において熱が発生する。本実施形態では、基材40を回転させることで、波長変換素子42における励起光Eの入射位置を時間的に変化させている。これにより、波長変換素子42の同じ部分に励起光Eが常時照射され、波長変換素子42が局所的に加熱されて劣化することを低減している。」 エ 【0052】 「【0052】 本実施形態の波長変換素子43においては、励起光Eの波長帯におけるバインダー46と蛍光体粒子47との間の屈折率差は、蛍光光Yの波長帯におけるバインダー46と蛍光体粒子47との間の屈折率差よりも小さい。また、励起光Eの波長帯におけるバインダー46と散乱体粒子48との間の屈折率差は、蛍光光Yの波長帯におけるバインダー46と散乱体粒子48との間の屈折率差よりも小さい。そのため、励起光Eに対する散乱性は蛍光光Yに対する散乱性よりも小さい。そのため、励起光Eの後方散乱が減少するとともに、蛍光光Yが光入射面の法線方向と交差する方向に伝播しにくくなる。これにより、励起光Eの利用効率が高く、発光領域の拡大を低減できる波長変換素子43を実現することができる。」 (2) 引用文献11の記載から認定した事項 ア 認定事項1の認定 引用文献11の段落【0004】、【0029】、【0032】、【0037】~【0041】の記載を参照しつつ図1、図2を見ると、次の事項が見て取れる(以下「認定事項1」という。)。 <認定事項1> 「蛍光体層42は、光入射面42aから蛍光光Yを射出するものであること。」 イ 認定事項2の認定 (ア) 前記アにおいて示したとおり、蛍光体層42は、光入射面42aから蛍光光Yを射出するものである。 (イ) 引用文献11の段落【0004】には、次の記載がある。 「【0004】 蛍光光は、蛍光体の内部を等方的に伝播した後に外部に射出されるため、発光領域(蛍光光の射出領域)は、励起光の入射領域よりも大きくなる。発光領域が大きくなると、エテンデューが大きくなり、蛍光体の後段の集光レンズで呑み込めない成分が生じる。これにより、蛍光光の利用効率が低下する。」 (ウ) したがって、引用文献11には、次の事項が記載されていると認められる(以下「認定事項2」という。)。 <認定事項2> 「蛍光体層42の光入射面42aにおいて蛍光光Yを射出する領域が発光領域であること。」 (3) 引用発明の認定 前記(1)において摘記した事項及び前記(2)において認定した事項を総合すると、引用文献11には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、参考図として引用文献11の図2に部材名を記入したものを掲載する。 <引用発明> 「蛍光体層42と、反射層41と、を備えている波長変換素子43であって、(【0032】) 励起光の利用効率が高く、発光領域の拡大を低減できる波長変換素子43であり、(【0006】) 波長変換素子43と、前記蛍光体を励起させる励起光を射出する光源と、を備える構成によれば、励起光の利用効率に優れ、エテンデューが小さい照明装置を実現することができるものであり、(【0013】) 蛍光体層42は、励起光Eが入射する光入射面42aと、光入射面42aと反対側の対向面42bと、を有し、(【0032】) 蛍光体層42の光入射面42aに、反射防止層44が設けられており、(【0032】) 反射層41は、蛍光体層42の対向面42bに設けられており、(【0032】) 蛍光体層42は、光入射面42aから蛍光光Yを射出するものであり、(認定事項1) 蛍光体層42の光入射面42aにおいて蛍光光Yを射出する領域が発光領域であり、(認定事項2) 蛍光体層42は、バインダー46と、複数の蛍光体粒子47と、複数の散乱体粒子48と、を含み、複数の蛍光体粒子47は、バインダー46の内部に略均一に分散しており、複数の散乱体粒子48は、バインダー46の内部に略均一に分散しており、バインダー46、蛍光体粒子47、および散乱体粒子48は、それぞれ異なる屈折率を有し、(【0033】) 励起光の波長帯におけるバインダー46と散乱体粒子48との屈折率差が、蛍光光の波長帯におけるバインダー46と散乱体粒子48との屈折率差よりも小さくなるようにバインダー46の材料と散乱体粒子48の材料とが選定されており、これにより、励起光に対する散乱性を低くし、蛍光光に対する散乱性を高くした、(【0037】 波長変換素子43。」 <参考図(図2)> [図:0001415865000004.jpg] 2 引用文献10、12に記載された事項及び周知技術1の認定 (1) 引用文献10に記載された事項 当審拒絶理由通知書において引用された、優先日前に発行された文献である中国特許出願公開第101539270号明細書(以下「引用文献10」という。)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付したもので、以下同様である。 ア 第9ページ第6~21行、図1 「 [図:0001415865000005.jpg] 」 (本発明に係る光源は、少なくとも励起光と、波長変換材料を含む波長変換層とを備える。励起光は、LED、レーザ源、又は従来の光源(例えば、アークランプ)等であるが、それらに限定されない、種々の形態の発光源から生じてもよい。前記波長変換材料は蛍光粉、染料又はナノ発光材料を含み,二種類又は二種類以上のこれらの材料の混合物であってもよい。波長変換層は、波長変換材料を内包するコロイドから構成されていてもよい。説明の便宜上,他の説明がない限り本発明の実施例において蛍光粉を例として前記波長変換材料を指す。図1は本発明に係る前記光源の光波長変換方法の動作原理を示す。) 「 [図:0001415865000006.jpg] 」 ( 励起光40は、蛍光体を励起して所定の波長の励起光41~44を生成するために、波長変換層1に向けられる。前記波長変換層1に第一誘電体膜/シート3が設置され、該誘電体膜/シートの屈折率n2は前記波長変換層の屈折率n1より小さく、このように、前記波長変換層1における大角度の出射光線は全反射されて該波長変換層1に戻り、小角度の出射光線41、42は該誘電体膜/シート3を屈折して透過することができる。高角度出射光は、arcsin(n2/n1)よりも大きい出射角を有する励起光又は誘導光を含む。励起光である場合、再び蛍光粉に吸収されて利用される機会を提供することができる;励起発光である場合、蛍光粉の乱反射作用により、光線の進行方向を変化させて低角度の出射光線(例えば光線43)の形式で前記誘電体膜/シート3を屈折して透過する可能性がある。本発明はさらに前記第一誘電体膜/シート3に角度選択フィルタ膜/シート2が設置され、所定の出射角度より小さい励起発光を指向して透過方式で該角度選択フィルタ膜/シートを通過させ、同時に該所定の出射角度より大きい励起発光を反射する;さらに光源の光出力輝度を向上させることができる。) 「図1 [図:0001415865000007.jpg] 」 イ 第9ページ第22行~第10ページ第7行、図6 「 [図:0001415865000008.jpg] [図:0001415865000009.jpg] 」 ( 図6に示す実施例を例として、図において横軸は光の波長を示し、ナノメートルを単位とする;縦軸は透過率の百分率を示す。励起光が青色光であると仮定すると、適切な蛍光体を選択して励起発光を図中の太い黒実線で示す緑色光にさせる。残りの曲線は前記角度選択フィルタ膜/シート2の異なる角度の入射光線に対する選択特性を示し、該図の右辺から左へ、それぞれ0度、10度、20度……80度の入射光線の状況に対応する。異なる角度で、該角度選択フィルタ膜/シート2は入射光線に対して異なる短波長通過又は帯域通過特性を有することが分かる:30度より小さい場合、帯域通過特性を有し、前記励起発光は該帯域通過範囲に完全に入るため該角度選択フィルタ膜/シート2を完全に透過することができ、基本的に反射されない;40度の場合、前記励起発光は一部が帯域通過範囲から逸脱するため一部が反射される;50~60度の場合、前記励起発光は相当部分が反射される;70度の場合、前記励起発光は大部分が反射される;80度の場合、前記励起発光は基本的に全て反射される。これにより、光源の出射光をより集中させることができる;該図に示される角度選択フィルタ膜/シート2の特性に応じて、誘電体膜/シート3から出射された様々な出射角度の励起光は常に一部が該角度選択フィルタ膜/シート2により反射されて前記波長変換層1に戻り、誘電体膜/シート3の作用を加え、光源の励起光に対する利用率を向上させ、それにより光源の光出射輝度を向上させることができる。) 「図6 [図:0001415865000010.jpg] 」 ウ 第10ページ第8~13行 「 [図:0001415865000011.jpg] 」 ( 図1に示すように、上記分析に基づき、本発明の方法はさらに以下のステップで前記第一誘電体膜/シート3を設置するステップを代替又は補充することができる:前記波長変換層1の下に屈折率が前記屈折率n1より小さい第二誘電体膜/シート3'を設置し、同様に光源の励起光に対する利用率をさらに向上させることができる。前記波長変換層1の下又は前記第二誘電体膜/シート3'の下に光反射膜/シート5を増設して励起光、例えば光線44を反射し、光源の励起光に対する利用率を向上させ、かつ前記光源の一方向光出力の輝度を向上させることにも有利である。特定の光源の場合、前記光反射膜/シート5は金属膜/シート又は表面に金属がコーティングされた誘電体膜/シートであり、それにより光線に対する反射率を向上させることができる。) エ 第10ページ第14~19行 [図:0001415865000012.jpg] 」 ( 第一誘電体膜/シート3又は第二誘電体膜/シート3'と波長変換層1との間の界面は、好ましくは光学的に滑らかである。前記角度選択フィルタ膜/シート2又は光反射膜/シート5は異なる屈折率(2層又は2層以上)の異なる屈折率材料で構成される誘電体膜であってもよく、それにより全体的に所定の短波長、長波長又は帯域通過特性を有し、本発明の方法の具体的な光源実施例における応用を満たす。前記角度選択フィルタ膜/シート2又は反射膜/シート5は規則的に配列されたフォトニック結晶を含む光学フィルムであってもよく又はそれを含み、前記フォトニック結晶の周期的な分布を利用して所定の波通過特性を生成する。) (2) 引用文献12に記載された事項 当審拒絶理由通知書において周知技術を示す文献として引用された、優先日前に発行された文献である特開2013-47736号公報(以下「引用文献12」という。)には、次の事項が記載されている。 ア 【0017】~【0020】、図2 「【0017】 図2は、回転体の断面概略構成を示す図である。回転体32は、蛍光体層110、基材120および光学多層膜130を有する。蛍光体層110は、光源100から入射する光101を励起光として色光を発生させる。蛍光体層110は、基材120のうち光101が入射する側の面に塗布されている。基材120は、ガラス等からなる透明な板部材である。 【0018】 光学多層膜130は、基材120のうち蛍光体層110が塗布された側とは反対側の面に形成されている。光学多層膜130は、誘電体の薄膜を積層させた構成をなしている。光学多層膜130は、光学特性に応じて光を透過および反射させる。光学多層膜130は、回転体32のうち、蛍光体層110で発生した色光を射出させる界面に設けられている。 【0019】 蛍光体層110で発生した色光は、蛍光体層110の内部で散乱し、広い角度範囲において進行する。蛍光体層110から基材120へ入射した色光は、基材120を透過して光学多層膜130へ入射する。 【0020】 ここで、蛍光体層110で散乱した色光のうち、0°、θ1°、θ2°およびθ3°の各方向へ進行する成分に着目して、光学多層膜130の光学特性について説明する。0°、θ1°、θ2°およびθ3°は、いずれも、光源100から蛍光体層110へ入射する光101の主光線に対する角度とする。0°の方向へ進行する成分は、光101の主光線と同じ方向へ進行する。なお、θ1°、θ2°およびθ3°は、0°<θ1°<θ2°<θ3°<90°を満たす角度とする。」 「図2 [図:0001415865000013.jpg] 」 イ 【0021】、図3 「【0021】 図3は、光学多層膜への入射角と透過率との関係を説明する図である。光学多層膜130は、所定の波長より低い波長の光を透過させるローパスフィルタの特性を有している。光学多層膜130の透過特性は、一般に、光の入射角によって変化する。光学多層膜130へ垂直に入射する0°の場合からθ1°、θ2°、θ3°と入射角が大きくなるにつれて、光学多層膜130の透過特性は短波長側へシフトする。」 「図3 [図:0001415865000014.jpg] 」 ウ 【0022】~【0026】、図4 「【0022】 図4は、蛍光体層で発生する色光と光学多層膜の透過特性とを説明する図である。蛍光体層110で発生する色光のスペクトル250は、θ2°の入射角において光学多層膜130を透過し得る上限の波長と、θ3°の入射角において光学多層膜130を透過し得る上限の波長との間に位置する。 【0023】 光学多層膜130は、蛍光体層110にて散乱した色光のうち、0°、θ1°、θ2°(第1の角度)の方向へ進行する成分を透過させ、θ3°(第2の角度)の方向へ進行する成分を反射する。光学多層膜130は、蛍光体層110から入射した色光のうち透過可能とする成分の最大角度が、θ2°およびθ3°の間に設定されている。第1の角度は、かかる最大角度より小さい角度とする。第2の角度は、かかる最大角度より大きい角度とする。 【0024】 蛍光体層110にて散乱した色光のうち光学多層膜130を透過した成分は、回転体32から射出する。蛍光体層110にて散乱した色光のうち光学多層膜130で反射した成分は、基材120を透過し、蛍光体層110へ入射する。光学多層膜130での反射を経て蛍光体層110へ入射した色光は、蛍光体層110で発生した色光とともに再度散乱する。 【0025】 カラーホイール300は、蛍光体層110で散乱した色光のうち小さい角度範囲の成分を光学多層膜130にて透過させることで、進行方向が揃えられた色光を射出可能とする。カラーホイール300からの色光の進行方向が揃えられることで、カラーホイール300は、ライトパイプ40へ効率良く色光を入射させることができる。 【0026】 投写型表示装置は、カラーホイール300において各色光が散乱する角度範囲を狭めることで、光学部品を小型化しても効率良く光を使用可能とする。投写型表示装置は、光学部品の小型化により、光学システム全体の小型化や製造コストの低減が可能となる。カラーホイール300は、蛍光体層110で散乱した色光のうち大きい角度範囲の成分を、光学多層膜130にて反射した後、蛍光体層110で再度散乱させる。カラーホイール300は、光学多層膜130から戻される光を蛍光体層110で再度散乱させることで、有効に利用することができる。これにより、光源装置および投写型表示装置は、蛍光体層110から発せられた光を使用し、光学システムの小型化および低コスト化を実現することができる。」 「図4 [図:0001415865000015.jpg] 」 エ 【0037】~【0041】、図7 「【0037】 図7は、変形例にかかる回転体の断面概略構成を示す図である。変形例にかかる回転体33は、蛍光体層110に関して、光源100からの光101が入射する側と同じ側に光学多層膜130が設けられている。光学多層膜130は、基材120のうち光101が入射する側の面に形成されている。光学多層膜130は、回転体33のうち、蛍光体層110で発生した色光を射出させる界面に設けられている。 【0038】 蛍光体層110は、基材120のうち光学多層膜130が形成された側とは反対側の面に塗布されている。反射膜140は、蛍光体層110のうち基材120に接合された側とは反対側に設けられている。反射膜140は、蛍光体層110からの色光を反射する。 【0039】 光源100からの光101は、光学多層膜130および基材120を透過して、蛍光体層110へ入射する。光学多層膜130には、光101が入射する側へ蛍光体層110から反射および散乱した色光が入射する。光学多層膜130は、蛍光体層110にて散乱した色光のうち、0°、θ1°、θ2°(第1の角度)の方向へ進行する成分を透過させ、θ3°(第2の角度)の方向へ進行する成分を反射する。 【0040】 反射膜140は、光101が入射する側とは反対側へ蛍光体層110を透過した色光を反射する。反射膜140での反射を経て蛍光体層110へ入射した色光は、蛍光体層110で発生した色光とともに再度散乱する。かかる回転体33を適用する場合も、カラーホイール300は、蛍光体層110で散乱した色光のうち小さい角度範囲の成分を光学多層膜130にて透過させ、進行方向が揃えられた色光を射出可能とする。 【0041】 カラーホイール300は、反射膜140で反射した色光を再度散乱させることで、光101が入射する側とは反対側へ蛍光体層110を透過する光を有効に利用することができる。なお、反射膜140は、適宜省略しても良い。」 「図7 [図:0001415865000016.jpg] 」 (3) 周知技術1の認定 前記(1)及び(2)で示した摘記事項に例示されるように、次に示す事項は、優先日前において、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。 <周知技術1> 「蛍光体を有する発光層において発生する蛍光を利用する光源装置において、蛍光光の利用効率を向上させるために、発光層側から所定の入射角度内で入射した光を出射する誘電多層膜からなる光学フィルターを発光層の一側に配すること。」 第5 対比・判断 1 対比 (1) 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 ア 構成Xの観点(「発光素子」) (ア) 本願の図1の「発光素子1000-1」を参酌すると、本願発明において「発光素子」とは、「外部の励起光によって励起されて蛍光光などを発光するもの」を指しているといえる。 (イ) 引用発明における「蛍光体層42」は、「複数の蛍光体粒子47」「を含[む]」ものであって、「励起光E」を受けて「光入射面42aから蛍光光Yを射出する」ものであることは明らかであるから、引用発明の「波長変換素子43」は、「外部の励起光によって励起されて蛍光光などを発光するもの」であるといえる。 すなわち、引用発明における「蛍光体層42」は、本願発明にいうところの「発光素子」に相当する。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は、「発光素子」の発明である点において一致する。 イ 構成A1の観点(「蛍光体層」) (ア) 次の引用発明の欄に記載した引用発明の各構成は、それぞれ、対応する本願発明の欄に記載した本願発明の構成に相当する。 <引用発明> <本願発明> 蛍光体粒子47 蛍光体 散乱体粒子48 光散乱体 蛍光体層42 蛍光体層 (イ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「蛍光体及び光散乱体を含む蛍光体層」を少なくとも備える点。 ウ 構成A2の観点(「出射角度選択層」) 引用発明においては、「蛍光体層42」の光入射面42aには、「反射防止層44」が設けられているところ、「反射防止層44」は「出射角度選択層」に相当するものではない。 したがって、本願発明と引用発明は、次の点において相違する。 本願発明は、「前記蛍光体層の一側に配され、該蛍光体層側から所定の入射角度で入射した光を出射する出射角度選択層」を備えるのに対して、 引用発明は、このような「出射角度選択層」を備えておらず、「反射防止層44」を備える点。 エ 構成Bの観点 (ア)a 前記第2の3に摘記した本願明細書の段落【0027】及び【0028】の記載を参酌すると、本願発明は、「エタンデュ(Etendue)(=発光領域の大きさ×出射発散角)を小さくすることができる」ところ、「エタンデュ」を小さくするために、「散乱構造によって蛍光体層内における蛍光発光領域の広がりを抑制する(発光領域の広がり抑制)」をしている。 b 構成Bは、「前記蛍光体層中の前記光散乱体の体積濃度を第1所定値超とすることにより、前記蛍光体の発光スポットの直径である第1蛍光発光スポット径を、前記蛍光体を含み且つ前記光散乱体を含まない蛍光体層の該蛍光体の発光スポットの直径である第2蛍光発光スポット径よりも小さい第2所定値未満とする」ということであり、「発光スポットの直径」である「発光スポット径」という用語が用いられているところ、これは、前記aにおける「(蛍光)発光領域の広がり」を表すものである。 (イ)a 引用発明も、「発光領域の拡大を低減できる波長変換素子43」であって、「波長変換素子43と、前記蛍光体を励起させる励起光を射出する光源と、を備える構成によれば、励起光の利用効率に優れ、エテンデューが小さい照明装置を実現することができるもの」である。 b そして、引用発明においては、「蛍光体層42は、バインダー46と、複数の蛍光体粒子47と、複数の散乱体粒子48と、を含み、複数の蛍光体粒子47は、バインダー46の内部に略均一に分散しており、複数の散乱体粒子48は、バインダー46の内部に略均一に分散しており、バインダー46、蛍光体粒子47、および散乱体粒子48は、それぞれ異なる屈折率を有し」、「励起光の波長帯におけるバインダー46と散乱体粒子48との屈折率差が、蛍光光の波長帯におけるバインダー46と散乱体粒子48との屈折率差よりも小さくなるようにバインダー46の材料と散乱体粒子48の材料とが選定されており、これにより、励起光に対する散乱性を低くし、蛍光光に対する散乱性を高くした」のであるから、「「エタンデュ」を小さくするために、「散乱構造によって蛍光体層内における蛍光発光領域の広がりを抑制する(発光領域の広がり抑制)」をしている」といえる。 c そして、引用文献11の段落【0005】の「特許文献1の光源装置では、蛍光体層に複数の気泡を含有させることによって、蛍光体層に散乱性を持たせ、発光領域の拡大を低減している。」と記載されていることを参酌するまでもないことであるが、引用発明において「散乱体粒子48」は、それが全く存在しないときに比較して、「発光領域の拡大を低減できる」程度の数(濃度)であることは、あまりにも当然のことである。 d すなわち、引用発明は、次の構成を備えているといえる。 「蛍光体層42中の散乱体粒子48の体積濃度は、蛍光体粒子47の発光領域の大きさ(発光スポット径)が、前記蛍光体粒子47を含みかつ前記散乱体粒子48を含まない蛍光体層42の発光領域の大きさ(発光スポット径)よりも小さい値となる程度の濃度であること。」 e そして、次の表現は、上記dの構成を言い換えたものにすぎず、表現上の相違しかない。 「蛍光体層42中の散乱体粒子48の体積濃度を第1所定値超とすることにとにより、蛍光体粒子47の発光スポット径の直径である第1蛍光発光スポット径を、前記蛍光体粒子47を含みかつ前記散乱体粒子48を含まない蛍光体層42の発光スポット径の直径である第2蛍光発光スポット径よりも小さい第2所定値未満とすること。」 (ウ) 以上のとおりであるから、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「前記蛍光体層中の前記光散乱体の体積濃度を第1所定値超とすることにより、前記蛍光体の発光スポットの直径である第1蛍光発光スポット径を、前記蛍光体を含み且つ前記光散乱体を含まない蛍光体層の該蛍光体の発光スポットの直径である第2蛍光発光スポット径よりも小さい第2所定値未満とする」ものである点。 (2) 一致点及び相違点の認定 前記(1)の対比分析の結果を総合すると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ、次のア及びイに示すとおりである。 ア 一致点 「蛍光体及び光散乱体を含む蛍光体層、 を少なくとも備え、 前記蛍光体層中の前記光散乱体の体積濃度を第1所定値超とすることにより、前記蛍光体の発光スポットの直径である第1蛍光発光スポット径を、前記蛍光体を含み且つ前記光散乱体を含まない蛍光体層の該蛍光体の発光スポットの直径である第2蛍光発光スポット径よりも小さい第2所定値未満とする、発光素子」である点。 イ 相違点 本願発明は、「前記蛍光体層の一側に配され、該蛍光体層側から所定の入射角度で入射した光を出射する出射角度選択層」を備えるのに対して、 引用発明は、このような「出射角度選択層」を備えておらず、「反射防止層44」を備える点。 2 判断 (1) 相違点について ア 引用文献11の段落【0004】の記載を踏まえると、引用発明は、次の課題を有していると認められる。 「蛍光体において発生した蛍光光のエテンデューが大きくなり、蛍光体の後段の集光レンズで呑み込めない成分が生じることにより、蛍光光の利用効率が低下するという課題」 イ 前記第4の2(4)において周知技術1として認定したとおり、次に示す事項は、優先日前において、周知の技術事項である。 「蛍光体を有する発光層において発生する蛍光を利用する光源装置において、蛍光光の利用効率を向上させるために、発光層側から所定の入射角度内で入射した光を出射する誘電多層膜からなる光学フィルターを発光層の一側に配すること。」 ウ そうすると、引用発明において、蛍光光の利用効率を向上するために、「反射防止層44」に代えて前記周知技術1を採用して、「発光層側から所定の入射角度内で入射した光を出射する誘電多層膜からなる光学フィルター」を備えるものとし、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとっては、適宜選択できる設計上の事項にすぎない。 (2) 本願発明の進歩性の評価 前記(1)において検討したとおり、前記相違点は、周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願発明の奏する効果としては、当業者にとって予測困難であり、かつ、格別顕著なものを認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 請求人の主張について 請求人は令和6年4月12日提出の意見書において、いずれの引用文献にも、本願発明の構成B及び本願発明の課題について開示も示唆もされていない旨主張する。 しかしながら、本願発明の構成Bが相違点といえないことは、前記1(1)エにおいて検討したとおりであるから、請求人の上記主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-004693

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決173件(ソニーグループ株式会社)
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    同じ当事者: ソニーグループ株式会社
  • 2024-005641拒絶査定不服審判 / 2026-06-15 / 請求不成立蛍光シグナルを増強するための二価金属の使用
    同じ当事者: ソニーグループ株式会社
  • 2024-019674拒絶査定不服審判 / 2026-04-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)画像処理装置および係数データ生成方法
    同じ当事者: ソニーグループ株式会社
  • 2025-004396拒絶査定不服審判 / 2026-04-06 / 請求不成立通信装置及び通信方法、並びにコンピュータプログラム
    同じ当事者: ソニーグループ株式会社
  • 2024-001585拒絶査定不服審判 / 2026-03-11 / 請求不成立生物学的に活性な化合物を含むイオン性ポリマー
    同じ当事者: ソニーグループ株式会社
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同じ論点・分野の審決(審決分類)195件(121・G03B、537・G03B、55・G03B)
  • 2022-017490拒絶査定不服審判 / 2024-01-11 / 原査定取消(特許/登録すべき)車載機器
    共通の審決分類: 121・G03B、537・G03B、55・G03B
  • 2021-002639拒絶査定不服審判 / 2022-02-17 / 原査定取消(特許/登録すべき)光源装置および画像投射装置
    共通の審決分類: 121・G03B、537・G03B、55・G03B
  • 2019-011226拒絶査定不服審判 / 2020-10-07 / 原査定取消(特許/登録すべき)撮像装置
    共通の審決分類: 121・G03B、537・G03B、55・G03B
  • 2017-015660拒絶査定不服審判 / 2019-12-19 / 原査定取消(特許/登録すべき)光学機器の筐体構造
    共通の審決分類: 121・G03B、537・G03B、55・G03B
  • 2018-007829拒絶査定不服審判 / 2019-11-11 / 原査定取消(特許/登録すべき)カメラモジュール及びOIS(手振れ補正)駆動ユニット
    共通の審決分類: 121・G03B、537・G03B、55・G03B

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