特許拒絶査定不服審判
2023-004380
改善されたピッチラグ推定を採用するACELP型封じ込めにおける適応型コードブックの改善された封じ込めのための装置および方法
- 審判番号
- 2023-004380
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-049334
- 請求日
- 2023年03月15日
- 審決日
- 2023年10月02日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】フラウンホーファーゲゼルシャフト ツール フォルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシユング エー.フアー.
- 【請求人代理人】松山 隆夫
- 審判長/審判官
- 審判長 五十嵐 努
- 審判官 樫本 剛
- 審判官 木方 庸輔
- 分類
- P18 .55 -Z (G10L) / P18 .4 -Z (G10L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法39条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第39条第2項、特許法第50条の2、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-49334「改善されたピッチラグ推定を採用するACELP型封じ込めにおける適応型コードブックの改善された封じ込めのための装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔令和3年7月15日出願公開、特開2021-103325〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)6月16日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2013年6月21日、欧州特許庁 2014年5月5日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願である特願2016-520421号の一部を平成30年12月6日に新たな特許出願(特願2018-228601号)とし、さらにその一部を令和3年3月24日に新たな特許出願(特願2021-49334号)としたものであって、その手続の経緯は次のとおりである。
令和3年 3月24日 :上申書の提出
4月21日 :手続補正書の提出
令和4年 4月27日付け:拒絶理由通知書(特許法第50条の2の
通知を伴う拒絶理由通知)
11月 9日 :意見書、手続補正書の提出
11月10日付け:補正の却下の決定、拒絶査定
令和5年 3月15日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年3月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年3月15日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
令和5年3月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、令和3年4月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~16を、本件補正による特許請求の範囲の請求項1~8に補正するものであり、本件補正は、本件補正前の請求項1を本件補正後の請求項1とする次のとおりの補正事項を含むものである。
なお、下線は補正箇所を示す。
〔本件補正前の請求項1〕
推定ピッチラグを決定するための装置であって、
複数のオリジナルピッチラグ値を受けるための入力インターフェース(110)と、
推定ピッチラグを推定するためのピッチラグ推定器(120)とを備え、
ピッチラグ推定器(120)が、複数のオリジナルピッチラグ値および複数の情報値に依拠して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
複数のオリジナルピッチラグ値の各々のオリジナルピッチラグ値について、複数の情報値のうちの1つの情報値が、前記オリジナルピッチラグ値に割り当てられる、装置。
〔本件補正後の請求項1〕
音声信号を生成するための装置であって、
複数のオリジナルピッチラグ値を受けるための入力インターフェース(110)と、
前記音声信号の推定ピッチラグを推定するためのピッチラグ推定器(120)とを備え、
ピッチラグ推定器(120)が、前記複数のオリジナルピッチラグ値および複数の情報値に依拠して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
複数のオリジナルピッチラグ値の各々のオリジナルピッチラグ値について、複数の情報値のうちの1つの情報値が、前記オリジナルピッチラグ値に割り当てられ、
前記装置は、前記推定ピッチラグを使用して前記音声信号を生成するよう構成され、
前記ピッチラグ推定器(120)が、以下の誤差関数errを最小化することにより、2つのパラメータa,bを決定して、前記推定ピッチラグを推定するよう構成され、
【数160】
[図:0001407572000001.jpg]
ここで、aは実数であり、bは実数であり、sは第1の整数であり、kは第2の整数であり、P(i)は、i番目のオリジナルピッチラグ値であり、gp(i)が、i番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目のピッチゲイン値である、装置。
2 補正の適否
上記請求項1に係る補正事項は、本件補正前の請求項1に記載されたピッチラグ推定器(120)について、用いられる誤差関数を
「
[図:0001407572000002.jpg]
ここで、aは実数であり、bは実数であり、sは第1の整数であり、kは第2の整数であり、P(i)は、i番目のオリジナルピッチラグ値であり、gp(i)が、i番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目のピッチゲイン値である」
と特定する補正事項(以下「本件補正事項」という。)を含む。
そこで、本件補正事項が願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるかについて、以下検討する。
本件補正事項における誤差関数(【数160】)のiの範囲は、「i=s」(「sは第1の整数」)から「k」(「kは第2の整数」)とされていることから、iの個数の下限は2となる。
一方、当初明細書等には、ピッチラグを推定するための誤差関数について、次のとおり記載されている。
「【請求項1】
推定ピッチラグを決定するための装置であって、
複数のオリジナルピッチラグ値を受けるための入力インターフェース(110)と、
推定ピッチラグを推定するためのピッチラグ推定器(120)とを備え、
ピッチラグ推定器(120)が、複数のオリジナルピッチラグ値および複数の情報値に依拠して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
複数のオリジナルピッチラグ値の各々のオリジナルピッチラグ値について、複数の情報値のうちの1つの情報値が、前記オリジナルピッチラグ値に割り当てられる、装置。
【請求項2】
ピッチラグ推定器(120)が、複数のオリジナルピッチラグ値および複数の情報値としての複数のピッチゲイン値に依拠して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
複数のオリジナルピッチラグ値の各々のオリジナルピッチラグ値について、複数のピッチゲイン値のうちの1つのピッチゲイン値が、前記オリジナルピッチラグ値に割り当てられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
複数のピッチゲイン値の各々が適応型コードブックゲインである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
ピッチラグ推定器が、誤差関数を最小化することにより推定ピッチラグを推定するよう構成される、請求項2または請求項3に記載の装置。
【請求項5】
ピッチラグ推定器が、以下の誤差関数を最小化することにより、2つのパラメータa、bを決定して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
【数160】
[図:0001407572000003.jpg]
ここで、aは実数であり、bは実数であり、kは、k≧2の整数であり、P(i)は、i番目のオリジナルピッチラグ値であり、gp(i)が、i番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目のピッチゲイン値である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
ピッチラグ推定器が、以下の誤差関数を最小化することにより2つのパラメータa、bを決定して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
【数161】
[図:0001407572000004.jpg]
ここで、aは実数であり、bは実数であり、P(i)はi番目のオリジナルピッチラグ値であり、gp(i)は、i番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目のピッチゲイン値である、請求項4に記載の装置。」
「【請求項8】
ピッチラグ推定器(120)が、複数のオリジナルピッチラグ値および複数の情報値としての複数の時間値に依拠して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
複数のオリジナルピッチラグ値の各々のオリジナルピッチラグ値について、複数の時間値のうちの1つの時間値が前記オリジナルピッチラグ値に割り当てられる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
ピッチラグ推定器が、誤差関数を最小化することにより推定ピッチラグを推定するよう構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
ピッチラグ推定器が、以下の誤差関数を最小化することにより2つのパラメータa、bを決定して、推定ピッチラグを推定するよう構成され
【数162】
[図:0001407572000005.jpg]
ここで、aは実数であり、bは実数であり、kはk≧2の整数であり、P(i)はi番目のオリジナルピッチラグ値であり、timepassed(i)は、i番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目の時間値である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
ピッチラグ推定器が、以下の誤差関数を最小化することにより2つのパラメータa、bを決定して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
【数163】
[図:0001407572000006.jpg]
ここで、aは実数であり、bは実数であり、p(i)はi番目のオリジナルピッチラグ値であり、timepassed(i)は、i番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目の時間値である、請求項9に記載の装置。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ信号処理、詳細には、音声処理に関し、かつより詳細には、ACELP型封じ込め(ACELP(Algebraic Code Excited Linear Prediction)=代数符号励振線形予測)における適応型コードブックの改善された封じ込めのための装置および方法に関する。」
「【背景技術】
(中略)
【0043】
ここで、ピッチ再構成技術に基づく外挿の他の例を示すため、G.729.1を考える(非特許文献6[ITU06b]を参照)。
【0044】
G.729.1は、復号化可能な前方誤り封じ込め情報(フェーズ情報等)がない場合のピッチ外挿アプローチ(特許文献1[Gaо]を参照)を特徴とする。これは、たとえば、2つの連続するフレームが失われた場合に起こる(1つのスーパーフレームが、ACELPまたはTCX20いずれかが可能な4つのフレームからなる)。また、可能なTCX40またはTCX80フレームおよびそのほとんどすべての組み合わせが存在する。
【0045】
有声領域で1以上のフレームが失われた場合、つねに前のピッチ情報を使用して現在失われているフレームを再構成する。現在の推定されるピッチの精度は、オリジナル信号の位相整合に直接影響を与える可能性があり、現在の損失フレームおよび損失フレーム後に受信されたフレームの再構成品質には決定的である。前のピッチラグを単にコピーするのではなく、いくつかの過去のピッチラグを使うことで、統計的により良いピッチ推定が得られると考えられる。G.729.1のコーダにおいて、FEC(FEC=前方誤り訂正)のためのピッチ外挿は、過去の5つのピッチ値に基づく線形外挿から構成される。過去の5つのピッチ値は、P(i)(i=0、1、2、3、4)で、P(4)が最も最近のピッチ値である。外挿モデルは、以下のとおり規定される。
【0046】
【数14】
[図:0001407572000007.jpg]
【0047】
損失フレームにおける、第1のサブフレームについての外挿されたピッチ値は、以下のとおり規定される。
【0048】
【数15】
[図:0001407572000008.jpg]
【0049】 係数aおよびbを決定するために、誤差Eを最小化する。誤差Eは、以下のとおり規定される。
【0050】
【数16】
[図:0001407572000009.jpg]
」
「【発明の概要】
【0105】
本発明の目的は、オーディオ信号処理についての改善されたコンセプトを提供することであり、特に、音声処理についての改善されたコンセプトを提供することであり、かつより詳細には、改善された封じ込めのコンセプトを提供することである。」
「 【0111】
ある実施形態によれば、ピッチラグ推定器が、たとえば以下の誤差関数を最小化することにより、2つのパラメータa、bを決定して、推定ピッチラグを推定するよう構成されることが可能で、
【0112】
【数34】
[図:0001407572000010.jpg]
【0113】
ここで、aは実数であり、bは実数であり、kは、k≧2の整数であり、P(i)は、i番目のオリジナルピッチラグ値であり、gp(i)が、i番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目のピッチゲイン値である。
【0114】
ある実施形態において、ピッチラグ推定器を、たとえば以下の誤差関数を最小化することにより2つのパラメータa、bを決定して、推定ピッチラグを推定するよう構成することが可能で、
【0115】
【数35】
[図:0001407572000011.jpg]
【0116】
ここで、aは実数であり、bは実数であり、P(i)はi番目のオリジナルピッチラグ値であり、gp(i)は、i番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目のピッチゲイン値である。」
「 【0120】
ある実施形態において、ピッチラグ推定器を、たとえば以下の誤差関数を最小化することにより2つのパラメータa、bを決定して、推定ピッチラグを推定するよう構成することが可能で、
【0121】
【数36】
[図:0001407572000012.jpg]
【0122】
ここで、aは実数であり、bは実数であり、kはk≧2の整数であり、かつp(i)はi番目のオリジナルピッチラグ値であり、timepassed(i)は、i番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられたi番目の時間値である。
【0123】
ある実施形態によれば、ピッチラグ推定器は、たとえば以下の誤差関数を最小化することにより2つのパラメータa、bを決定して、推定ピッチラグを推定するよう構成することが可能で、
【0124】
【数37】
[図:0001407572000013.jpg]
【0125】
ここで、aは実数であり、bは実数であり、p(i)はi番目のオリジナルピッチラグ値であり、timepassed(i)が、i番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目の時間値である。」
「 【0166】
本発明の実施形態により、より正確なピッチラグ再構成が提供される。この目的で、G.718およびG.729.1とは対照的に、いくつかの実施形態では、ピッチ情報の信頼性に関する情報を考慮する。
【0167】
先行技術では、外挿が基礎とするピッチ情報は、最後に正確に受信された8つのピッチラグを含み、これらについては、符号化モードは「無声」とは異なっていた。しかしながら、先行技術では、低いピッチゲイン(低い予測ゲインに対応する)により示される有声特性が非常に弱いかもしれない。先行技術では、外挿が、異なるピッチゲインを有するピッチラグに基づく場合、外挿が、妥当な結果をもたらさないか、または、全くうまくいかず、再び単純なピッチラグ繰り返しのアプローチに戻ることになる。
【0168】
実施形態は、先行技術のこれらの欠点の原因が、エンコーダ側で、適応型コードブックの符号化ゲインを最大化するため、ピッチゲインを最大化することに関してピッチラグを選択するが、音声特性が弱い場合には、音声信号における雑音でピッチラグ推定が不正確になるため、ピッチラグが基本周波数を正確に表示しない可能性があると言う点にあるとする所見に基づく。
【0169】
したがって、実施形態によれば、封じ込め中に、ピッチラグ外挿の適用は、この外挿について使用した前に受信したラグの信頼性に依拠して重み付けが行われる。
【0170】
いくつかの実施形態によれば、過去の適応型コードブックゲイン(ピッチゲイン)を、信頼性の尺度として採用し得る。
【0171】
本発明の他のいくつかの実施形態によれば、ピッチラグがどこまで過去に受信されたかによる重み付けが信頼性の尺度として使用される。たとえば、より最近のラグには高い重み付けがされ、より後に受けられたラグにはより低い重み付けがされる。」
「【発明を実施するための形態】
【0207】
図1は、実施形態による推定ピッチラグを決定するための装置を示す。この装置は、複数のオリジナルピッチラグ値を受けるための入力インターフェース110と、推定ピッチラグを推定するためのピッチラグ推定器120とを含む。ピッチラグ推定器120は、複数のオリジナルピッチラグ値および複数の情報値に依拠して推定ピッチラグを推定するよう構成され、複数のオリジナルピッチラグ値の各オリジナルピッチラグ値について、複数の情報値のうちの1つの情報値が前記オリジナルピッチラグ値に割り当てられる。
【0208】
実施形態によれば、ピッチラグ推定器120は、たとえば、複数のオリジナルピッチラグ値と、複数の情報値としての複数のピッチゲイン値とに依拠して推定ピッチラグを推定するよう構成することが可能で、複数のオリジナルピッチラグ値の各オリジナルピッチラグ値について、複数のピッチゲイン値のうちの1つのピッチゲイン値が前記オリジナルピッチラグ値に割り当てられる。
【0209】
特定の実施形態において、複数のピッチゲイン値の各々は、たとえば、適応型コードブックゲインでもよい。
【0210】
ある実施形態において、ピッチラグ推定器120は、たとえば、誤差関数を最小化することにより推定ピッチラグを推定するよう構成され得る。
【0211】
ある実施形態によれば、ピッチラグ推定器120は、たとえば、以下の誤差関数を最小化して、2つのパラメータa,bを決定することにより推定ピッチラグを推定するよう構成され得る。
【0212】
【数44】
[図:0001407572000014.jpg]
【0213】
ここで、aは実数であり、bは実数であり、kはk≧2の整数であり、P(i)はi番目のオリジナルピッチラグ値であり、gp(i)はi番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目のピッチゲイン値である。
【0214】
ある実施形態において、ピッチラグ推定器120は、たとえば、以下の誤差関数を最小化して、2つのパラメータa、bを決定することにより、推定ピッチラグを推定するよう構成され得る。
【0215】
【数45】
[図:0001407572000015.jpg]
【0216】
ここで、aは実数であり、bは実数であり、P(i)はi番目のオリジナルピッチラグ値であり、gp(i)はi番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目のピッチゲイン値である。
【0217】
ある実施形態によれば、ピッチラグ推定器120は、たとえば、p=a・i+bに従って推定ピッチラグpを決定するよう構成され得る。
【0218】
ある実施形態において、ピッチラグ推定器120は、たとえば、複数のオリジナルピッチラグ値と、複数の情報値としての複数の時間値とに依拠して推定ピッチラグを推定するよう構成されることが可能で、複数のオリジナルピッチラグ値のうちの各オリジナルピッチラグ値について、複数の時間値のうちの1つの時間値が前記オリジナルピッチラグ値に割り当てられる。
【0219】
ある実施形態によれば、ピッチラグ推定器120は、たとえば、誤差関数を最小化することにより推定ピッチラグを推定するよう構成され得る。
【0220】
ある実施形態において、ピッチラグ推定器120は、たとえば、以下の誤差関数を最小化して、2つのパラメータa、bを決定することにより、推定ピッチラグを推定するよう構成され得る。
【0221】
【数46】
[図:0001407572000016.jpg]
【0222】
ここで、aは実数であり、bは実数であり、kは、k≧2の整数であり、かつP(i)はi番目のオリジナルピッチラグ値であり、timepassed(i)は、i番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目の時間値である。
【0223】
ある実施形態によれば、ピッチラグ推定器120は、たとえば、以下の誤差関数を最小化して、2つのパラメータa、bを決定することにより、推定ピッチラグを推定するよう構成され得る。
【0224】
【数47】
[図:0001407572000017.jpg]
【0225】
ここで、aは、実数であり、bは実数であり、P(i)は、i番目のオリジナルピッチラグ値であり、timepassed(i)は、i番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目の時間値である。」
「 【0246】
いくつかの実施形態によれば、目標は、以下の誤差関数を最小化することである。
【0247】
【数52】
[図:0001407572000018.jpg]
【0248】
ここで、gp(i)は、過去のサブフレームからのピッチゲインを保持し、かつ、P(i)は、対応のピッチラグを保持する。」
「 【0270】 先行技術の欠点を克服するため、いくつかの実施形態は、ピッチ予測を行う前に、ピッチラグに対し時間重み付けを適用する。時間重み付けの適用は、以下の誤差関数を最小化することにより実行され得る。
【0271】
【数58】
[図:0001407572000019.jpg]
【0272】
ここで、timepassed(i)は、ピッチラグを正しく受信した後に経過した時間の量の逆数を表し、かつ、P(i)は、対応するピッチラグを保持する。」
以上の記載によれば、誤差関数の式におけるiの範囲は、背景技術であるG.729.1では「0」から「4」とされており(【数16】)、「先行技術では、外挿が基礎とするピッチ情報は、最後に正確に受信された8つのピッチラグを含み」とされており(【0167】)、本願発明では「0」から「k」(「kはk≧2の整数」)とされており(【数34】、【数36】、【数44】、【数46】、【数160】、【数162】)、さらに具体例では「0」から「4」とされている(【数35】、【数37】、【数45】、【数47】、【数52】、【数58】、【数161】、【数163】)。
これらの記載は、いずれもiの個数が3以上とされており、iの個数を2とすることについての示唆も見あたらない。
そうすると、本件補正事項において、誤差関数(【数160】)のiの範囲が「i=s」(「sは第1の整数」)から「k」(「kは第2の整数」)とされることで、iの個数の下限が2となっているところ、当初明細書等にはiの個数の下限を3から2へと拡張することについて記載も示唆もされていないから、本件補正事項は、出願時の技術常識に照らしても当初明細書等の記載から自明な事項とはいえない。
なお、審判請求人は、審判請求書において、「当業者は、特定のピッチラグ値および特定のピッチゲイン値に関連する式において特定の制限的な定義が提供されていないので、所望の開始インデックスを特別に使用できることを実際に理解している。従って、「i=0」を「i=s」に置き換えることは、当業者が当業者をして元の開示から容易に得ることができ、新しい技術事項の導入に基づくものではない。」と主張している。
しかしながら、本願当初明細書において、推定ピッチラグを推定する式(誤差関数)は全てi=0からk(k≧2)の範囲とされており、それ以外の値を取り得る旨の記載も一切ないことから、当業者といえども、「特定の制限的な定義が提供されていないので、所望の開始インデックスを特別に使用できることを実際に理解している」こととは認められない。
以上のとおりであるから、本件補正事項を含む本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願の請求項に係る発明について
1 本願の請求項1~6に係る発明
令和5年3月15日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年4月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1~6に係る発明は、その請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
推定ピッチラグを決定するための装置であって、
複数のオリジナルピッチラグ値を受けるための入力インターフェース(110)と、
推定ピッチラグを推定するためのピッチラグ推定器(120)とを備え、
ピッチラグ推定器(120)が、複数のオリジナルピッチラグ値および複数の情報値に依拠して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
複数のオリジナルピッチラグ値の各々のオリジナルピッチラグ値について、複数の情報値のうちの1つの情報値が、前記オリジナルピッチラグ値に割り当てられる、装置。
【請求項2】
ピッチラグ推定器(120)が、複数のオリジナルピッチラグ値および複数の情報値としての複数のピッチゲイン値に依拠して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
複数のオリジナルピッチラグ値の各々のオリジナルピッチラグ値について、複数のピッチゲイン値のうちの1つのピッチゲイン値が、前記オリジナルピッチラグ値に割り当てられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
複数のピッチゲイン値の各々が適応型コードブックゲインである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
ピッチラグ推定器が、誤差関数を最小化することにより推定ピッチラグを推定するよう構成される、請求項2または請求項3に記載の装置。
【請求項5】
ピッチラグ推定器が、以下の誤差関数を最小化することにより、2つのパラメータa、bを決定して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
【数160】
[図:0001407572000020.jpg]
ここで、aは実数であり、bは実数であり、kは、k≧2の整数であり、P(i)は、i番目のオリジナルピッチラグ値であり、gp(i)が、i番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目のピッチゲイン値である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
ピッチラグ推定器が、以下の誤差関数を最小化することにより2つのパラメータa、bを決定して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
【数161】
[図:0001407572000021.jpg]
ここで、aは実数であり、bは実数であり、P(i)はi番目のオリジナルピッチラグ値であり、gp(i)は、i番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目のピッチゲイン値である、請求項4に記載の装置。
2 原査定の拒絶の理由
本願の請求項に係る発明に対する原査定の拒絶の理由は、次のものを含む。
(同日出願)この出願の請求項2~6に係る発明は、同日に出願された特願2016-520421号(特許第6482540号)(以下「同日出願」という。)に係る発明と同一と認められ、かつ、同日出願に係る発明は特許されており協議を行うことができないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 同日出願
上記同日出願である特願2016-520421号は特許第6482540号として特許されており、その特許請求の範囲の請求項1~5は次のとおりである。
【請求項1】
推定ピッチラグを決定するための装置であって、
複数のオリジナルピッチラグ値を受けるための入力インターフェース(110)と、
推定ピッチラグを推定するためのピッチラグ推定器(120)とを備え、
ピッチラグ推定器(120)が、複数のオリジナルピッチラグ値に依拠して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
ピッチラグ推定器(120)が、複数のオリジナルピッチラグ値および複数のピッチゲイン値に依拠して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
複数のオリジナルピッチラグ値の各々のオリジナルピッチラグ値について、複数のピッチゲイン値のうちの1つのピッチゲイン値が、前記オリジナルピッチラグ値に割り当てられる、装置。
【請求項2】
複数のピッチゲイン値の各々が適応型コードブックゲインである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ピッチラグ推定器が、誤差関数を最小化することにより推定ピッチラグを推定するよう構成される、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
ピッチラグ推定器が、以下の誤差関数を最小化することにより、2つのパラメータa、bを決定して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
【数160】
[図:0001407572000022.jpg]
ここで、aは実数であり、bは実数であり、kは、k≧2の整数であり、P(i)は、i番目のオリジナルピッチラグ値であり、gp(i)が、i番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目のピッチゲイン値である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
ピッチラグ推定器が、以下の誤差関数を最小化することにより2つのパラメータa、bを決定して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
【数161】
[図:0001407572000023.jpg]
ここで、aは実数であり、bは実数であり、P(i)はi番目のオリジナルピッチラグ値であり、gp(i)は、i番目のピッチラグ値P(i)に割り当てられるi番目のピッチゲイン値である、請求項3に記載の装置。
4 対比
本願の請求項2に係る発明は、引用する請求項1に係る発明である
「 推定ピッチラグを決定するための装置であって、
複数のオリジナルピッチラグ値を受けるための入力インターフェース(110)と、
推定ピッチラグを推定するためのピッチラグ推定器(120)とを備え、
ピッチラグ推定器(120)が、複数のオリジナルピッチラグ値および複数の情報値に依拠して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
複数のオリジナルピッチラグ値の各々のオリジナルピッチラグ値について、複数の情報値のうちの1つの情報値が、前記オリジナルピッチラグ値に割り当てられる、装置。」
において、さらに請求項2の
「 ピッチラグ推定器(120)が、複数のオリジナルピッチラグ値および複数の情報値としての複数のピッチゲイン値に依拠して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
複数のオリジナルピッチラグ値の各々のオリジナルピッチラグ値について、複数のピッチゲイン値のうちの1つのピッチゲイン値が、前記オリジナルピッチラグ値に割り当てられる、」
との特定を加えるものである。
そうすると、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明における「情報値」を「ピッチゲイン値」に特定するものである。
他方、同日出願の請求項1の
「 ピッチラグ推定器(120)が、複数のオリジナルピッチラグ値に依拠して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、
ピッチラグ推定器(120)が、複数のオリジナルピッチラグ値および複数のピッチゲイン値に依拠して、推定ピッチラグを推定するよう構成され、」
は、「ピッチラグ推定器(120)が、複数のオリジナルピッチラグ値および複数のピッチゲイン値に依拠して、推定ピッチラグを推定するよう構成され」ることを特定しているものと認められる。
以上から、本願の請求項2に係る発明と、同日出願の請求項1に係る発明は、全ての発明特定事項について一致するから、両者は同一である。
また、本願の請求項3~6により特定される事項は、それぞれ同日出願の請求項2~5により特定される事項と同一である。
したがって、本願の請求項2~6に係る発明は、同日出願の請求項1~5に係る発明と同一である。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項2~6に係る発明は、同日出願の請求項1~5に係る発明と同一であり、かつ、同日出願に係る発明は特許されており協議を行うことができないから、本願発明は、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-004380