特許拒絶査定不服審判
2023-003893
錯触力覚を駆動する方法及び装置
- 審判番号
- 2023-003893
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-077597
- 請求日
- 2023年03月07日
- 審決日
- 2023年09月15日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】国立研究開発法人産業技術総合研究所
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】大貫 敏史
- 【請求人】株式会社村田製作所
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】大貫 敏史
- 審判長/審判官
- 審判長 山澤 宏
- 審判官 篠塚 隆
- 審判官 富澤 哲生
- 分類
- P18 .536-WY (G06F) / P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 77597「錯触力覚を駆動する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 7月29日出願公開、特開2021-108224、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成20年9月12日(優先権主張平成19年9月14日)を国際出願日とする出願である特願2009-532251号の一部を、平成25年3月25日に新たな特許出願(特願2013-62836号)とし、その一部を、平成27年4月23日に新たな特許出願(特願2015-88432号)とし、その一部を、平成29年5月1日に新たな特許出願(特願2017-91467号)とし、その一部を、令和元年12月27日に新たな特許出願(特願2019-238752号)とし、その一部を、令和3年4月30日に新たな特許出願(特願2021-77597号)としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和4年 6月29日付け:拒絶理由通知書
令和4年 9月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年11月30日付け:拒絶査定
令和5年 3月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和4年11月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
理由1(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
本願発明の錯触力覚デバイスは、刺激の量の変化やタイミングを適切に制御することで、刺激の程度に対する人間の感覚特性の差により錯触覚を誘起するものであるが、出願人の主張を考慮しても、依然として、異なる複数の粘弾性材料を介するのみで錯触力覚が誘起・増強されるものとは認められない。
粘弾性材料の性質としてヒステリシス特性の他に、振動等の刺激の量の変化(特に減衰すること)や、伝播の遅延が生じることが知られている。粘弾性材料を介して錯触力覚を誘起・増強させるには、これら複数の特性が、適切に錯触力覚を提起・増強するような、複数の粘弾性材料の組み合わせを選択しなければならない。
しかし、こうした複数の粘弾性材料について、具体的な材料の組み合わせは示されておらず、また、どのような制約の下に粘弾性材料の組を選択することで錯触力覚を誘起・増強できるのかについても、開示も示唆もされていない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
理由2(進歩性)本願請求項1-8に係る発明は、以下の引用文献1-7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特表2000-501033号公報
2.宮城 善一,山本 健太郎,粘着テープの保持力試験装置の試作及び粘弾性力学モデルの解析,精密工学会誌,1986年,52 巻,5 号,p. 894-899(周知技術を示す文献)
3.編集委員会,やさしいゴムの物理第2講 力学試験 (その2),日本ゴム協会誌,2007年,80 巻,3 号,p. 107-111(周知技術を示す文献)
4.特開2005-190465号公報
5.特開2000-319614号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2004-232286号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2003-253228号公報(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、令和5年3月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であって、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
錯触力覚デバイス又は錯触力インターフェースは、制御アルゴリズムにより駆動されて、前記錯触力覚デバイス又は前記錯触力インターフェースの駆動装置の物理量を変化させることにより、錯触力覚を誘起し、
前記錯触力覚は、異なる複数の粘弾性材料を介して、誘起され、
前記異なる複数の粘弾性材料は、前記錯触力覚デバイス又は錯触力インターフェースの表面の位相-90~90°領域及び 90~270°領域に設けられている、方法。」
なお、本願発明2-6の概要は以下のとおりである。
本願発明2-3は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明4は、本願発明1に対応する「装置」の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明5-6は、本願発明4を減縮した発明である。
第4 理由1(実施可能要件)について
異なる複数の粘弾性材料について、本願明細書には、図面とともに以下の記載がある。
ア「【0147】
図24は、異なる粘弾性材料を用いた制御アルゴリズムを示している。
【0148】
図24(g)のように、加えた力に対する応力特性が非線形特性(図24(c))を示す物性を有する材料(2403、2404)を振動・トルク・力といった駆動力を発生する装置と人間の皮膚・感覚器官との間に挟んだ時にも、同様な錯触力覚905が発生する。
【0149】
例えば、図24(a)のように、錯触力覚デバイス表面の位相-90~90°領域及び90~270°領域に異なる応力-変形特性の材質(2403、2404)を貼り付けることにより、偏心回転子は定角速度で回転(図24(b))していても、粘弾性変形材料を通して伝わる力を非線形に伝達(図24(d))することができる。その結果、偏心回転子を加減速した時と同じように、位相-90~90°領域及び90~270°領域において異なる力(物理量)が提示され、偏った重心位置x(2402)の変化が発生され、感覚特性の非線形(図24(f))が加わって、一方向に錯触力覚の力905を感じる(図24g)ことができる。錯触力覚による力の方向は、異なる粘弾性変形材料を張り付ける位置によって定まる。これにより、回転数を加減速した方法に比べ、消費エネルギーを抑えることができる。また、回転数を一定にせずに加減速した場合、粘弾性材料(2403、2404)によって錯触力覚の効果が増すことができる。なお、図24(d)と図24(e)は同じ図である。
【0150】
図25は、図24において異なる2つの粘弾性変形材料の貼りつけた部位の方向と知覚される錯触力覚の方向を示している。
【0151】
図25(a)(b)(c)(d)は、図24(c)動作点A及び動作点Bで作用する粘弾性特性を有する材料A及びBを、図24(a)において(1)材料Aを位相180~360°領域及び材料Bを0~180°領域で使用した場合、(2)材料Aを位相90~270°領域及び材料Bを-90~90°領域で使用した場合、(3)材料Aを位相0~180°領域及び材料Bを180~360°領域で使用した場合、(4)材料Aを位相-90~90°領域及び材料Bを90~270°領域で使用した場合に対応している。図25(a)では、上向きの錯触力が働き、インタフェースが浮き上がる感覚を得ることができる。図25(b)では、左向きの錯触力が働き、インタフェースが左側に引っ張られる感覚を得ることができる。図25(c)では、下向きの錯触力が働き、インタフェースの重さが重くなったような感覚を得ることができる。図25(d)では、右向きの錯触力が働き、インタフェースが右側に引っ張られる感覚を得ることができる。」
イ【図24】「
[図:0001402673000001.jpg]
」
ウ【図25】「
[図:0001402673000002.jpg]
」
上記ア-ウの記載から、異なる粘弾性材料は、加えた力に対する応力-変形特性、すなわち、粘弾性変形特性が異なることが理解できる。そうすると、異なる粘弾性変形材料を介して提示される錯触力覚による力は、異なった態様で使用者に知覚されることは明らかである。したがって、粘弾性材料が異なれば、異なる錯触力覚が誘起・増強されると解される。そして、使用する錯触力覚デバイスの使用条件に応じて、最適な粘弾性材料を選定することに当業者が過度の試行錯誤を要するとは認められない。
よって、本願発明1-6の「異なる複数の粘弾性材料」に関して、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
第5 引用文献、引用発明
1 引用文献1、引用発明
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由2において引用された引用文献1には、図面とともに以下の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
ア「〔発明の概要〕
本発明の目的は、相互作用コンピュータアプリケーション、遠隔ロボット工学、ジェスチャー認識、音楽発生、娯楽、医療的応用などのような領域に用いることができる、人間/機械インターフェースである。本発明の他の目的は、使用者が感じることができる振動を発生する「マス運動アクチュエータ(mass-movingactuator」によって動かされるマスである。本発明の更に別の目的は、駆動信号を発生させて、使用者の仮想状態または物理的状態の結果として、または環境条件の結果として振動を発生させることである。本発明の更にもう一つの目的は、皮膚の物理的刺激受容体と同様に、検知する身体部分の骨格構造を振動させてフィードバックを与えることである。本発明の更に別の目的は、振動装置を複雑に駆動させることである。
使用者が感じる触覚感覚は、固定手段によって使用者の検知する身体部分の上に装着され、または機能的にこれと関連して装着された振動触覚ユニットによって発生される。一実施例において、振動触覚装置は、マス運動アクチュエータのシャフトに偏心して接続されたマス(即ち、マスの中心は回転軸から外れている)を具備している。マスアクチュエータに電圧を与えるとシャフトが回転し、これによって偏心マスが回転する。この回転するマスは、これに対応した回転する力ベクトルを生じる。遅く回転する力ベクトルは、一連の個々の刺激のように感じられる。少数の迅速な回転については、回転する力ベクトルは単一の衝撃のように感じられる。我々は、力ベクトルの変化(即ち、方向または大きさ)を言うために、「振動」の用語を用いる。振動の例には、単一の衝撃、サイン曲線の力の大きさ、および他の関数の力ベクターが含まれるが、これらに限定されない。使用者の検知する身体部分が振動触覚ユニットによって誘起される振動を受けるときに、使用者が受け取る感じを言うために、我々は「触覚感覚」の用語を用いる。」(第8頁第9行-第9頁第5行)
イ「図3は、指先に振動触覚ユニットを取り付けるための一つの固定手段を示している。この例では、振動触覚ユニット(300)が、固定手段(301)を用いて指先の手掌側に直接取り付けられている。この固定手段は、例えば布、ファブリック、テープ、べルクロRまたは軟質ポリマーのような可撓性材料で作製してもよく、或いは金属、硬質ポリマーまたは木のような剛性材料で作製してもよい。固定手段は指全体を取り囲む必要はなく、クランピングまたはピンチングによって指に把持させればよく、或いはそれを粘着剤またはテープで貼り付けてもよい。また、使用者が手袋を着用するときには、振動触覚ユニットをこの手袋に縫い付け、または結合してもよく、手に直接固定する必要はない。これは、人間の身体に振動触覚ユニットを配置する種々の方法を示した以下の図においても同様である。」(第20頁第9行-第18行)
ウ「図17は、本発明の好ましい実施例において、電気的および機械的信号が触覚フィードバック制御システムを介して伝達される仕方を示している。図示の実施例では、振動触覚ユニットのマス運動アクチュエータとして、d.c.サーボモータ(1701)を用いている。コンピュータ(1707)または他の信号処理手段が、所望の駆動入れべルの制御信号に対応したデジタル値を、デジタル/アナログ変換器D/A(1703)に送信する。次いで、該D/Aのアナログ出力は可変利得増幅器(1704)によって増幅されて、アナログ電圧駆動信号を生じる。この電圧はサーボモータに印加されて、所望の角速度でモータを駆動させる。該電圧信号は、所望のトルクで該モータを駆動させるために、交互に電流駆動信号に変換される。サーボ制御ループの速度減速は、タコメータフィードバック(図示せず)によって行えばよい。コンピュータ(1707)、デジタル/アナログ変換器(1703)、アナログ/デジタル変換器、A/D、(1702)、バス(1702)および可変利得増幅器(1704)は、信号処理装置の素子であってもよい。アナログ関節角度センサ(1705)に由来するA/D(1702)からのデジタル化された値は、物理状態信号として指の位置情報(測定された身体部分)をコンピュータに与える。仮想環境の応用において、物理状態信号は仮想の手に対応した動作を生じることができる。仮想の手の一つの指が仮想物体と交差することが分かったら、コンピュータは、仮想物体の形状および従順性の知識を用いて、仮想指に適用すべき仮想の力を計算する。次いで、コンピュータは使用者の指(検知する身体部分)に装着された振動触覚ユニットに駆動信号を送り、仮想の力に関する触覚情報を伝達する。歪みゲージ、光ファイバー、電位計または他の角度センサを、アナログ関節角度センサ(1705)として使用することができる。歪みゲージ角度センサは、クラマー等(Kramer et al.)の米国特許第5、047、952号および第5,280,265号に開示されており、これらの特許は本願明細書の一部をなす参照文献として本願に組み込まれる」(第25頁第13行-第26頁第7行)
(当審注:上記記載中の「所望の駆動入れべルの制御信号」は、「所望の駆動レべルの制御信号」の誤記と認められる。)
エ【図3】「
[図:0001402673000003.jpg]
」
オ【図17】「
[図:0001402673000004.jpg]
」
カ 上記イには「振動触覚ユニット(300)が、固定手段(301)を用いて指先の手掌側に直接取り付けられている。」「固定手段は指全体を取り囲む必要はなく、」「それを粘着剤」「で貼り付けてもよい。」と記載されている。粘着剤で何を何に貼り付けるのか明記されていないが、上記エの【図3】の記載と文脈から、「振動触覚ユニット(300)を粘着剤で指先の手の掌側に貼り付けてもよい」ことが記載されていると認められる。
(2)引用発明
上記(1)から引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「振動触覚ユニットのマス運動アクチュエータとして、d.c.サーボモータ(1701)を用い、
振動触覚ユニット(300)を粘着剤で指先の手の掌側に貼り付けてもよく、
アナログ関節角度センサ(1705)に由来するA/D(1702)からのデジタル化された値は、物理状態信号として指の位置情報(測定された身体部分)をコンピュータに与え、
コンピュータは、仮想物体の形状の知識を用いて、仮想指に適用すべき仮想の力を計算し、
コンピュータ(1707)が、所望の駆動レべルの制御信号に対応したデジタル値を、デジタル/アナログ変換器D/A(1703)に送信し、
次いで、該D/Aのアナログ出力は可変利得増幅器(1704)によって増幅されて、アナログ電圧駆動信号を生じ、この電圧はサーボモータに印加されて、所望の角速度でモータを駆動させ、
回転するマスは、これに対応した回転する力ベクトルを生じ、
遅く回転する力ベクトルは、一連の個々の刺激のように感じられ、少数の迅速な回転については、回転する力ベクトルは単一の衝撃のように感じられる、方法。」
2 引用文献2-7
(1)引用文献2
引用文献2の「1.緒言」には、以下の記載がある。
「1.緒 言
粘着テープを平面上に貼り付けてその平面と平行な力を加えた場合,粘着剤にはせん断力が働き粘着剤内部にせん断ひずみを生じ,同時に被着体と粘着剤面との界面すべりが生じる.粘着剤は粘弾性物質であるので,このせん断ひずみの経時変化を測定すれば粘着剤の粘弾性的な性質を定量的に求めることができる.この粘弾性的性質は一般に粘着剤の凝集力と呼んでいる.また粘着テープの粘着力は時間の経過とともに増加し,この現象は粘着剤と被着体の間の真の接触面積の増加,あるいはぬれ1)の進行として説明が試みられている.しかし,せん断荷重下での粘着テープのせん断ひずみや界面すべりの精密な測定方法の開発が遅れており,この現象の解明はまだ十分にはなされていない。
そこで,せん断力による粘着テープの微小なすべり量を高感度で連続測定が可能な装置を試作し,粘着剤内部の凝集すべりと界面すべりの現象を粘弾性力学モデルにより解明することを試みた.」
(2)引用文献3
引用文献3には、以下の記載がある。
「4. 動的粘弾性特性
4.1 動的粘弾性
ゴムは繰返し変形を受けるような使われ方をします.変形させるには仕事をする(力学的エネルギーを入れる)必要があります.その仕事は分子鎖が位置を変える際に発生する粘性に抗することにも使われます.その分は熱に変換され材料中に留まり,変形が除かれ元の状態に復元しても,力学的エネルギーとしては回収できません.力学的エネルギーが粘性により熱に変換される現象を粘性損失といいます.熱に変換されることなく,復元する際に回収されるエネルギーを弾性エネルギーといい,これが復元のために使われるのです.
粘性損失は製品を運転する際のエネルギー効率を低下させます.また,速い速度で繰返し変形をさせると,蓄熱のため顕著に温度が上昇し熱劣化を速めることにもなります.逆に,防音,防振,摩擦などのように粘性損失を高めることが求められる楊合もあります.そのため,繰返し変形下での粘弾性特性を評価する必要があります.繰返し変形を受けるときの粘弾性は動的粘弾性と呼ばれ,クリーブや応力緩和のような静的な粘弾性と区別されます.得られる情報は同質ですが,測定が迅速であるという利点があります.
4.2 動的粘弾性試験
動的粘弾性試験では試験片に振動を与えて測定を行います。振動には自由振動と強制振動があります.自由振動法では最初に試験片に刺激を与えて振動の減衰を観測します.強制振動法では所定の振幅と周波数で強制的に振動を与えます.前者は,試験機は簡単な構造で簡使で安価ですが,測定条件や得られる情報量が制限されます.後者は.駆動系や周波数および振幅の精密な制御・測定を行うため高価になりますが,測定条件の自由度が大きい,情報量が多いという利点があります.製品の高機能化が求められる昨今は,材科の動的粘弾性特性を細かく制御する必要があるため,強制振動による試験が主流となっています.ここでは強制振動による動的粘弾性試験について述べることにします.
強制振動による動的粘弾性試験機の主要部品は,加振機,試験片の変位(変形量)および力を検知するセンサーです.図10に強制振動による動的弾性試験機の例を示します.振動の波形は,制御が容易で誘導される特性を簡単な形で定義できることから,正弦波(サインカープ)が用いられます.変形様式としては引張りあるいはせん断が一般的ですが,変形の均一性という点で引張りがよく用いられます.ただ,引張り型の振動ではひずみ振幅より大きな静的な引張りひずみ(初期ひずみ)を試験片に与えて,ひずみが最小となっても試験片が引張られた状態を保っている必要があります.そうでないと,最小ひずみに近づくにつれ,試験片がたるんで変形の均一性を保てません.せん断型の変形様式では初期ひずみを与える必要はありません.ここでは,引張型の変形様式をもとに説明しますが,初期ひずみと応力があるかないかの違いだけで基本的にはせん断変形でも同じことがいえます.
変位が時間tの正弦関数となる変形を,試験片に対する刺激として与えると,応答として時間とともに変化する力が発生します.変位と力をを別のセンサーで測定し,それぞれひずみε(t)と応力σ(t)に換算し,時間に関してプロットすると,図11-aの上部のような一対の正弦曲線が得られます.両曲線は周期が同じですが,刺激ε(t)に応答σ(t)が先行する形となります.角速度ωで変化するこれらの刺激と応答の時間変化を簡単な数式で表すと,
ε(t)=ε0sinωt+εs (6)
σ(t)=σ0sin〔ω(t+Δt)〕+σs (7)
となります.εとσの添字0およびsは,それぞれの振幅と初期値を表します.ここで,ωΔt=δ(位相角)とおくと,
σ(t)=σ0sin(ωt+δ)+σs (8)
となります.
σ(t)の値をε(t)に対して同期させてプロットし,S-S曲線を描いたのが図11-bです.引張り側で応力は収縮側より大きく,引張・収縮サイクルのS-S曲線は傾いた楕円となります.これをヒステリシスループあるいはリサジューと呼びます.力学エネルギーは力と変形量の積で,応力とひずみが変化している場合は,応力-ひずみ曲線の下の面積です.つまり,引張り側の曲線の下の面積が変形のために材料に入力したエネルギーで,斜線で示した収縮側の曲線の下の面積が収縮のためのエネルギーとして回収できた分になります.引張りに費やされたエネルギーのうち,楕円の面積に相当するエネルギーが収縮するときに回収できず,熱として失われてしまったのです.この現象をエネルギー損失といいます.」(p.107左欄第1行-p.108左欄第35行)
(3)引用文献4
引用文献4には、図面とともに以下の記載がある。
ア「【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の形態は、2つの偏心回転子を有する触力覚提示手段と、前記2つの偏心回転子における回転方向と位相関係と回転速度とを制御することにより、振動および/または振動感覚の周波数と強度を独立して変化させる制御手段とを備えた触力覚情報提示システムである。
【0012】
本発明に係る第2の形態は、2つの偏心回転子を有する触力覚提示手段と、前記2つの偏心回転子における回転方向を反転させることにより、力および/または力感覚の周波数と強度を独立して変化させる制御手段とを備えた触力覚情報提示システムである。
【0013】
本発明に係る第3の形態は、単一の偏心回転子、および/または2つの偏心回転子からなるツイン偏心回転子、および/または3次元空間上に配置されたツイン偏心回転子を、2次元的または3次元的に複数個配置した偏心回転子アレイを有する触力覚提示手段と、前記触力覚提示手段に含まれている各偏心回転子の回転状態を制御する制御手段とを備えた触力覚情報提示システムである。
【0014】
本発明に係る第4の形態は、3次元的に複数個配置した回転子を有する触力覚提示手段と、前記触力覚提示手段の合成角運動量ベクトルの時間変化を制御するための制御手段を備えた触力覚情報提示システムであって、前記制御手段は、前記合成角運動量ベクトルをゼロの近傍で急激に変化させることにより既定値のトルクを発生させると共に、プリセッショントルクを所定値以下に制御する触力覚情報提示システムである。
【0015】
本発明に係る第5の形態は、2つの偏心回転子を有する触力覚提示手段を制御するに際して、前記2つの偏心回転子における回転方向と位相関係と回転速度とを制御することにより、振動および/または振動感覚の周波数と強度を独立して変化させる触力覚情報提示方法である。
【0016】
本発明に係る第6の形態は、2つの偏心回転子を有する触力覚提示手段を制御するに際して、前記2つの偏心回転子における回転方向を反転させることにより、力および/または力感覚の周波数と強度を独立して変化させる触力覚情報提示方法である。
【0017】
本発明に係る第7の形態は、単一の偏心回転子、および/または同一の回転軸上に配設された2つの偏心回転子からなるツイン偏心回転子、および/または3次元空間上に配置されたツイン偏心回転子を、2次元的または3次元的に複数個配置した偏心回転子アレイを有する触力覚提示手段を制御するに際して、前記触力覚提示手段に含まれている各偏心回転子の回転状態を個別に制御する触力覚情報提示方法である。
【0018】
本発明に係る第8の形態は、3次元的に複数個配置した回転子を有する触力覚提示手段を制御するに際して、前記触力覚提示手段の合成角運動量ベクトルの時間変化を制御する触力覚情報提示方法であって、前記合成角運動量ベクトルをゼロの近傍で急激に変化させることにより既定値のトルクを発生させると共に、プリセッショントルクを所定値以下に制御する触力覚情報提示方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る触力覚情報提示システムおよび触力覚情報提示方法を実施することにより、以下に列挙する格別な効果を得ることができる。
【0020】
(1)非接地型で身体内にベースがないマンマシンインタフェースでは従来困難だった、トルクおよび力などの触力覚情報を同一方向に連続的または断続的
に提示することが可能になる。
【0021】
(2)人間の感覚特性および錯覚を利用することにより、物理的には存在し得ないトルクあるいは力などの触力覚的感覚物理特性を人に提示することが可能になる。
【0022】
(3)人間の感覚特性を利用することにより触力覚情報を省エネルギーで効率良く提示することが可能となり、小型化した触力覚提示システムを実現することができる。
【0023】
(4)振動感覚,トルク感覚,力感覚を提示するために、従来はそれぞれに対応した装置が必要であったが、本発明によれば、偏心回転子という1つの機構で振動感覚,トルク感覚,力感覚のいずれか1つ以上を同時に提示することが可能となり、多様な触力覚情報を提示することができ、且つ、その提示システムを小型化することができる。
【0024】
(5)本発明を実施することにより、VR(Virtual Reality)の分野において用いられる機器,ゲームの分野において用いられる機器,携帯電話機,携帯型ナビゲーション機器,PDA(携帯情報端末)などに搭載され得る、有用なマンマシンインタフェース・ロボットとマシンとの間のインタフェース・動物とマシンとの間のインタフェース等を実現することができる。例えばVRの分野においては、上記マンマシンインタフェースを介して人に力を提示したり、抗力あるいは反力などを与えて人の動きを制限することにより、仮想空間における物体の存在や衝突による衝撃を提示することができる。また、携帯電話機,携帯型ナビゲーション機器,PDAなどに上記インタフェースを搭載することにより、操作者の皮膚を介して、従来には見られなかった各種多様な指示・案内等を実現することができる。
【0025】
(6)従来から知られている携帯電話のマナーモードなどで用いられている偏心回転子は、回転速度を増加させることで振動強度を増加させており、振動周波数と振動強度を独立に制御することはできなかったが、本発明を適用した偏心回転子では、回転速度を変化させることなしに、偏心振動の振動強度を変化させることができる。これによって、振動周波数と振動強度を独立に制御することが可能になる。
【0026】
(7)本発明を適用したシート状偏心回転子アレイによれば、それぞれの偏心回転子の回転を適切に制御することで掌上に空間・時間的に様々なパターンの、振動感覚、トルク感覚、力感覚を提示することができる。また、シート状偏心回転子アレイは、手袋もしくは衣類もしくはその他ウェアラブルな形態を有するものに応用することができる。
【0027】
(8)本発明を適用したシート状偏心回転子アレイによれば、掌などの動きに合わせて力感覚の空間部分を適切に変化させることにより、仮想的な物体の存在、形状、弾性、テクスチャーなどの物体に関する様々な触力覚情報を提示することができる。
【0028】
(9)慣性座標系において、合成角運動量ベクトルの時間変化を制御する場合、その制御の容易さは大きな利点となる。すなわち、合成角運動量ベクトルをゼロの近傍で急激に変化させることによって、大きなトルクを発生させながらも、プリセッション・トルクを小さく抑え込むことが可能になる。また、ユーザの動きに伴ってトルク提示機が揺れて困る場合には、適度な大きさの合成角運動量ベクトルの近傍で合成角運動量ベクトルを時間変化させることにより、トルク提示機の揺れを抑えながら所定のトルクを提示することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明による実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
(動作原理1)
図1は、本発明の一実施形態における触力覚情報提示システムの概略構成を示す図である。
【0031】
触力覚提示機112は、制御装置111を用いて、触力覚提示機112中の1個以上からなる回転子の回転速度が制御され、その物理特性である振動、力、トルクが制御されることによって、ユーザ110にその振動、力、トルクなどの様々な触力覚情報を知覚させる。
【0032】
上述の図1と合わせて、以下では図2~40を参照し本実施形態の触力覚情報提示システムを説明するが、それに先立ち、図面として最後に添付されている図41の本実施形態の触力覚情報提示システムのブロック図を参照して、そのシステムのブロック構成の概要を説明する。
【0033】
図41において、触力覚情報提示システム4101は、触力覚提示機4110、制御装置4120及び入力装置4130から構成される。触力覚提示機4110は、中にモータによって回転される1個以上の回転子4180を有し、制御装置4120からの制御によって回転する。回転子4180の駆動には、ステッピングモータやサーボモータ等を適用可能である。制御装置4120は、CPU(central processing unit)4160、RAM(random access memory)4170、ROM(read only memory)4140等を有する。」
イ【図1】「
[図:0001402673000005.jpg]
」
ウ【図41】「
[図:0001402673000006.jpg]
」
(4)引用文献5
引用文献5には、図面とともに以下の記載がある。
ア「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、両面粘着テープの支持体として特定の素材を用いて、リサイクルの分別作業時に製品の部品からちぎれることなく、円滑に剥がすことができ、しかも剥がしたあとに粘着剤が残存しないような両面粘着テープを提供することを目的とする。」
イ「【0007】
【発明の実施の形態】図1は本発明の両面粘着テープの一例の断面図である。1は基材となるポリエステル繊維不織布、2は粘着剤層、3は剥離紙層である。基材となるポリエステル繊維不織布は、抄紙法によって作成され且つ繊維相互を接着させるバインダー(接着剤)が使用されていない不織布、すなわちバインダーで繊維同士が接着されていない不織布である。この特定の不織布を用いることによって後述する作用効果がある。ポリエステル繊維としてはポリエチレンテレフタレート繊維が好ましく用いられる。不織布の目付は坪数25~50g/m2で、この不織布のテープ強度は縦方向及び横方向共に1.0kgf/cm以上が好ましい。また、引張強度の縦横比率が80~120%であるものが用いられる。このような引張強度の縦横比率がほぼ同じ不織布を基材とすることによって、引張強度の縦横比率がほぼ同じ両面粘着テープが得られる。このように引張強度の縦横比率がほぼ同じ両面粘着テープは、方向性が小さいのでテープを剥離するときちぎれ難い利点がある。
【0008】本発明において、基材のポリエステル繊維不織布の両面に形成させる粘着剤は、天然ゴム系粘着剤、ブタジエン-スチレン共重合体ゴム、ポリイソブチレンなどの合成ゴム系粘着剤、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラールなどの合成樹脂系粘着剤である。これらは溶剤に溶解して使用する。溶剤には酢酸エチル/トルエンなどが用いられる。この溶剤溶液には粘着付与剤、充填剤、顔料、老化防止剤、安定剤などを添加配合してもよい。粘着付与剤としてはロジン、ロジンエステル、重合ロジンエステル、クマロン酸、テルペン樹脂などが用いられる。
【0009】また、上記の粘着剤としてアクリル系粘着剤も好ましく用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステルを主成分単量体とし、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミドなどの官能基を有する単量体、及び酢酸ビニル、アクリル酸メチル、スチレンなどの凝集力を付与する単量体との共重合体に、ポリイソシアネート、金属キレート、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの架橋剤を添加し、反応させたものが用いられる。ポリイソシアネートにはトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、トリジンイソシアネート(TODI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイシシアネート(XDI)、水添XDIなどが用いられる。
【0010】また、本発明で用いる剥離紙としては、例えばグラシン紙或はこれにポリエチレンをラミネートしたものをベースとし、その両面をシリコーン加工したものなどが用いられる。本発明の両面粘着テープは、例えば次の如くして製造する。すなわち、粘着剤を溶剤に溶解し、粘着付与剤、充填剤、顔料、老化防止剤、安定剤などを添加配合して粘着剤組成物を調製する。この粘着剤組成物を剥離紙にコンマコータなどでコーティングし、乾燥炉で乾燥した後、ポリエステル繊維不織布の片面にラミネートしてロールに巻き上げる。次に、他の剥離紙に粘着剤組成物をコンマコータなどでコーティングし、上記ロールに巻き上げたポリエステル繊維不織布の粘着剤層を施さない面にラミネートする。これによって、剥離紙/粘着剤/不織布/粘着剤/剥離紙の構造体が得られる。この構造体から剥離紙を一層のみ剥離してロールに巻き上げ、箇れを1週間常温で熟成して両面粘着テープを製造する。
【0011】本発明においては両面粘着テープの基材として、ポリエステル繊維を抄紙して作成され且つバインダーを使用しないと言う特定の不織布を用いる。両面粘着テープの基材には、従来レーヨン不織布、麻不織布、レーヨン/麻不織布が用いられていた。しかし、これら従来の不織布は強度が低く、しかも経時的劣化し、リサイクルの剥離作業時にちぎれることが多い。そこで、本発明では強度が高く、また耐候性、耐薬品性に優れ経時的劣化も少ないポリエステル繊維の不織布に注目し、これを採用した。
【0012】そして、このポリエステル繊維不織布には、抄紙によって製造し、且つバインダーを使用しないものを用いた。両面粘着テープが引張強度に方向性を有すると、リサイクルの剥離作業時に引張強度が弱い方向で切れる不都合があるので、本発明ではこの不都合を少なくするため、基材となる不織布について、単網方式で傾斜ワイヤーを使用して抄紙するなどして引張強度の縦方向(機械方向)と横方向(幅方向)の比率が80~120%である不織布を用いる。また、抄紙法を採用することによってバインダーを使用することなく不織布が製造できる。本発明ではこのバインダーを使用しない不織布を用いるが、このバインダーを使用しない不織布は、繊維間にバインダーが存在しないので、粘着剤層を付与したとき粘着剤が繊維間に浸透し、粘着剤が不織布に強固に結合する。そのため、リサイクルの剥離作業時に粘着剤が不織布から剥がれて糊残りを生じることが少ないと言う格別の作用効果を発揮する。また、粘着剤が不織布の繊維同士を結合するため不織布自体の強度が向上する。
【0013】不織布の両面粘着テープの粘着剤の凝集力を該両面粘着テープの剥離強度よりも大くする。このようにすることによって、リサイクル時に両面粘着テープを剥がしたとき、粘着剤の部品表面への残存が減少する。凝集力が剥離強度よりも大きいか否かは剥離後の糊残りの有無によって確認できる。また、本発明の両面粘着テープの剥離強度(粘着力)は0.6~1.2kgf/cmであり、好ましくは0.8~1.1kgf/cmである。剥離強度が0.6kgf/cm以下では部品同士を接着させるときの接着力が不充分であり、1.2kgf/cm以上ではリサイクル時の剥離作業に労力を要する。」
ウ【図1】「
[図:0001402673000007.jpg]
」
(5)引用文献6
引用文献6には、以下の記載がある。
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、床材の配置変更や汚れた床材のみの交換を容易とし、使用済みタイルのリサイクルを容易とする両面粘着テープの提供、該両面粘着テープを貼着した床材および該両面粘着テープを用いた床材施工方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、床材を床下地に施工する際に使用する両面粘着テープが、下記の要件を満足するものであることを特徴とする床材施工用両面粘着テープに関する。
床材側粘着剤層強度<下地側粘着剤層強度
本発明の第2は、床材の片面に請求項1記載の両面粘着テープを該両面粘着テープの床材側の粘着剤層を介して貼着し下地側粘着剤層には剥離紙が粘着されたものであることを特徴とする床材に関する。
本発明の第3は、床材を両面粘着テープで床下地に施工する床材施工方法において、両面粘着テープとして請求項1記載の両面粘着テープを使用することを特徴とする床材施工方法に関する。
本発明の第4は、床材を両面粘着テープで床下地に施工する床材施工方法において、床材として請求項2記載の床材を使用することを特徴とする床材施工方法に関する。
本発明の第5は、あらかじめ両面粘着テープを下地側に貼着し、次いで、その上に床材を配置する床材施工方法において、両面粘着テープとして請求項1記載の両面粘着テープを使用することを特徴とする床材施工方法に関する。
【0006】
前記下地側粘着剤層強度とは、本発明の両面粘着テープを下地に接着させ固定し、該粘着テープを床下地から剥離するときの粘着強度をいい、また床材側粘着剤層強度とは、前記粘着テープを床材に貼着し、粘着テープを床材から剥離するときの粘着強度をいう。
前記下地側粘着剤層強度は通常1500~5000g/2.5cm程度、又、床材側粘着剤層強度は通常250~800g/2.5cm程度であり、更には床材側粘着剤層強度が下地側粘着剤層強度の20~80%のものが好ましい。
前記床材側粘着剤層強度および下地側粘着剤層強度の測定は、幅2.5cm、長さ20cmの両面粘着テープを試験資料としてJISA5536に規定される引張試験機を用い20℃、RH60%において引張速度20cm/minで180゜剥離試験を行い、剥離荷重の最高値を求めて行った。
【0007】
本発明で使用する両面粘着テープは、クラフト紙、布(不織布を含む)、セロファン、ビニル、ポリエステル、ガラスクロス等の幅広いシートを基材として、該基材の両面に下記のような粘着剤を前記のような特性を満足するように塗布乾燥し、その後に前記シートを適切な幅、例えば2~5cm程度に切断して、離型紙を挟んでロール状に巻き取って製造される。
通常、前記ロール状物は床材を床下地に施工する際に適当な形状あるいはサイズに加工して用いることができる。
また、粘着剤透過性の基材を使用し、床下地側粘着剤層を形成する側の基材片面より粘着剤を含浸させ該側に粘着剤をより多く付着させることにより、粘着強度に差をもたせることができる。
【0008】
本発明で使用する粘着剤層としては、天然ゴム、SBR、ブチルゴム等を主成分とするゴム系粘着剤層、アクリル系粘着剤(溶剤型、エマルジョン型)層あるいはホットメルト系粘着剤層などが挙げられるが、中でも環境上、被着体汚染防止等の理由からアクリルエマルジョン系粘着剤層が好ましい。
床材は、通常表面仕上げ層とバッキング層とからなり、表面仕上げ層は、合成樹脂製であってもカーペット製であっても良い。通常の床仕上げ材の表面層として使用されているものであれば特に制限は無い。合成樹脂製シートは表面に透明層や、裏面に発泡層を積層したものでも良い。
カーペット製の表面仕上げ層としては、基布に繊維性のパイルを植設したカーペット原反そのままで、あるいはその裏面に合成樹脂層の目止めや裏打ち層を設けたものが挙げられる。
バッキング層は、通常天然または合成ゴム層あるいは合成樹脂層からなる。
床材の大きさは、寸法が30~100cm角、好ましくは40~60cm角、厚みが2~12mm、好ましくは4~8mmのものが一般的である。ただし、これらの数値は本発明を何ら限定するものではない。
【0009】
この床材施工用両面粘着テープは、あらかじめ床材のバッキング層側に床材側粘着剤層が接するように貼着し、下地床材側粘着剤層側には離型紙を貼ることにより、梱包、輸送等の間に床材同士の接合を阻止することができる。
施工時にはこの床材の離型紙を除去しつつ、基準線(部屋の中心線に沿って床タイルを並べたときの床タイルと余り寸法を調整するために中心線からずらして引かれた床タイルを敷き始めるときの基準とする線)から順次敷き詰めていくことができる。
又、基準線に沿って一部この両面粘着テープを有する床材を貼着固定し、他の部分を置き敷き用床材で敷き詰めることができる。
【0010】
他の方法として、あらかじめ、両面粘着テープを床下地に下地側粘着剤層を持って貼着し、次いで床材側粘着剤層上の剥離紙を除去して床材を貼着固定化する方法がある。
具体的には、両面粘着テープを基準線に沿って貼着し、その上に配置されるべき床材を貼着する。この両面粘着テープは、例えば、5~10cmの幅を有するテープ状物とする。粘着剤を付与された両面粘着テープの両面を、あらかじめ、例えばポリエチレンフィルム、又はシリコーン離型紙のような剥離性テープでもって保護しておき、施工時に剥離性テープを除去しつつ基準線に沿って配置されるべき床材を固定し得る位置に両面粘着テープを貼着することが好ましい。次いで、両面粘着テープ上に床材を固定し、他の床材を室内部分全面にわたり置き敷きにより敷設することができる。
施工現場において、前記ロール状物を例えばテープ形状に切断し、該切断両面粘着テープを使用して床材の裏面に適宜間隔のストライプ形状に貼り、離型紙を剥がして床下地に貼着し、床材を固定する。ただし、床材に両面粘着テープを貼着する場合前記ストライプ形状に限られるものではなく、点線形状、格子形状等であっても良い。
なお、壁際周囲は両面粘着テープを用いて壁際周囲の床材を貼着固定することが好ましい。」
(6)引用文献7
引用文献7には、以下の記載がある。
ア「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題とするところは、金属やプラスチックの被着体より剥離する際に、粘着剤が被着体に残留せず、且つ両面粘着テープが切れたり、不織布層間で破壊したりしない不織布を支持体とする再剥離型両面粘着テープを提供するものである。」
イ「【0019】2.粘着剤
本発明に用いる粘着剤は、70℃での貯蔵弾性率G'が3.0×104~1.0×105Paであり、且つ130℃での損失正接tanδが1未満である。不織布の強度によって若干異なるが、70℃での貯蔵弾性率G'が3.0×104Pa未満の場合は接着力が強くなりすぎ、剥離時に不織布層間破壊やテープの切れが発生する。また1.0×105Paを越える場合は接着性が低下する。130℃でのtanδが1以上の場合は再剥離性が低下する。また、定荷重剥離性など耐剥がれ性を考慮する場合は、130℃での損失正接tanδは0.5以上が好ましい。詳しくは、本発明に使用する不織布のなかで、引張強度および層間強度が強い不織布にあたる不織布の引張強度が20N~30N/20mmであり、且つ層間強度係数が0.25~0.6の場合は、70℃での貯蔵弾性率G'が3.0×104~1.0×105Paであり、且つ130℃での損失正接 tanδが1未満の粘着剤が適している。一方、本発明に使用する不織布のなかで、引張強度および層間強度が弱い不織布にあたる不織布の引張強度が15N~20N/20mmであり、且つ層間強度係数が0.15~0.25の場合は、70℃での貯蔵弾性率G'が5.0×104~1.0×105Paであり、且つ130℃での損失正接tanδが0.8未満の粘着剤が適している。
(粘着剤の種類)粘着剤の種類としては、公知のアクリル系やゴム系の粘着剤が使用できる。更に、必要に応じ粘着付与樹脂や架橋剤を添加してもよい。
(貯蔵弾性率G'と損失正接 tanδ測定法)本発明における貯蔵弾性率G'と損失正接tanδは、5mm厚にまで重ね合わせ粘着剤を試験片とし、レオメトリックス社製粘弾性試験機アレス2kSTDに直径7.9mmのパラレルプレートを装着し、試験片を挟み込み周波数1Hzで測定した値である。
【0020】(厚み)両面粘着テープの片面の粘着剤層の厚みは、好ましくは10μm~100μm、さらに好ましくは30μm~80μm以下である。10μm未満では接着性が低下する。また100μmを超えると、再剥離性が低下する。
(塗布方法)粘着剤の塗布方法としては、ロールコーター等で直接不織布に塗布する方法や、剥離紙上にいったん粘着剤層を形成後、不織布に転写する方法が用いられる。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「振動触覚ユニット」により、使用者は「回転するマスは、これに対応した回転する力ベクトルを生じ、遅く回転する力ベクトルは、一連の個々の刺激のように感じられ、少数の迅速な回転については、回転する力ベクトルは単一の衝撃のように感じられる」といえるから、「振動触覚ユニット」が使用者に力覚も与えていることは、明らかである。引用発明の「振動触覚ユニット」は、本願発明1の「錯触力覚デバイス」と、「触力覚デバイス」の点で共通するといえる。
イ 本願発明1の「錯触力インターフェース」に関連して、本願明細書には、以下の記載がある。
「【0043】
図1は、バーチャルリアリティ環境生成装置(VR環境生成装置)100において用いられる錯触力覚インタフェース装置101のハードウェア・ブロック図を示している。ここでは指先533に錯触力覚インタフェース装置101を装着した場合を例にとって説明するが、錯触力覚インタフェース装置101の装着場所は指先に限られない。また、図には、加速度センサ108、圧力センサ109、筋電センサ110が、錯触力覚デバイス107と一体となって、指先533に装着された錯触力覚インタフェース装置101内に配置された例を示しているが、これらのセンサは錯触力覚デバイス107とは別の身体位置に装着されていてもよい。本明細書では、錯触力覚デバイス107とセンサとが別体となってそれぞれ身体の別の部位に装着された場合でも、それらを合わせて錯触力覚インタフェース装置101という。
【0044】
各種センサからの情報及びコンテンツデータ104をもとにコンテンツが作成され、このコンテンツに合わせた錯触力覚誘起関数1713が錯触力覚誘起関数生成器115において錯触力覚データ106を用いて生成され、錯触力覚デバイス駆動制御装置112によって錯触力覚デバイス107が制御される。」
上記の記載を参酌すると、本願発明1の「錯触力インターフェース」は、「錯触力覚デバイス」と「センサ」とを合わせた構成を指していると解される。
一方、引用発明は、「アナログ関節角度センサ(1705)」からの入力を基に「振動触覚ユニット」を駆動するものであり、引用発明の「アナログ関節角度センサ(1705)」が、「センサ」であることは明らかであるから、上記アでの検討も踏まえると、引用発明も、「触力覚デバイス」と「センサ」とを合わせた構成を含むものであって、引用発明の「振動触覚ユニット」及び「アナログ関節角度センサ(1705)」は、本願発明1の「錯触力インタフェ-ス」と、「触力インタフェース」の点で共通するといえる。
ウ 引用発明の「回転するマス」は、本願発明1の「錯触力覚デバイス又は錯触力インターフェースの駆動装置」と、「触力覚デバイス又は触力インターフェースの駆動装置」の点で共通するといえる。
エ 引用発明の「回転するマスは、これに対応した回転する力ベクトルを生じ、遅く回転する力ベクトルは、一連の個々の刺激のように感じられ、少数の迅速な回転については、回転する力ベクトルは単一の衝撃のように感じられる」ことは、本願発明1の「錯触力覚デバイス又は錯触力インターフェースの駆動装置の物理量を変化させることにより、錯触力覚を誘起」することと、「触力覚デバイス又は触力インターフェースの駆動装置の物理量を変化させることにより、触力覚を誘起」することである点で共通するといえる。
オ 引用発明では、「コンピュータは、仮想物体の形状の知識を用いて、仮想指に適用すべき仮想の力を計算し、コンピュータ(1707)が、所望の駆動レべルの制御信号に対応したデジタル値を、デジタル/アナログ変換器D/A(1703)に送信し、」「所望の角速度でモータを駆動させ」ているから、引用発明において、「振動触覚ユニット」が、制御アルゴリズムにより駆動されることは明らかである。
カ 引用発明の「粘着剤」は、「粘性材料」であることは明らかである。引用発明では、「振動触覚ユニット(300)を粘着剤で指先の手の掌側に貼り付け」ており、「振動触覚ユニット」と「指先」との間に「粘着剤」が介在しているから、上記エの検討も踏まえると、引用発明の「振動触覚ユニット(300)を粘着剤で指先の手の掌側に貼り付け」て、「力ベクトル」が「一連の個々の刺激のように感じられ、」又は「単一の衝撃のように感じられる」ことは、本願発明1の「錯触力覚は、異なる複数の粘弾性材料を介して、誘起され」ることと、「触力覚は、粘性材料を介して、誘起され」ることである点で共通しているといえる。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「触力覚デバイス又は触力インターフェースは、制御アルゴリズムにより駆動されて、前記触力覚デバイス又は前記触力インターフェースの駆動装置の物理量を変化させることにより、触力覚を誘起し、
前記触力覚は、粘性材料を介して、誘起される、方法。」
(相違点1)
本願発明1では、「錯触力覚デバイス又は錯触力インターフェース」は「錯触力覚」を誘起するのに対し、引用発明では、「触力覚デバイス又は触力インターフェース」が「触力覚」を誘起するとはいえるものの、「錯触力覚」を誘起することについては特定されていない点。
(相違点2)
本願発明1では、「錯触力覚は、異なる複数の粘弾性材料を介して、誘起され」るのに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。
(相違点3)
本願発明1では、「異なる複数の粘弾性材料」は、「錯触力覚デバイス又は錯触力インターフェースの表面の位相-90~90°領域及び 90~270°領域に設けられ」るのに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2、3について先に検討する。
それを介して触力覚を誘起するための「異なる複数の粘弾性材料」が、「触力覚デバイス又は触力インターフェースの表面の位相-90~90°領域及び 90~270°領域に設けられ」る構成については、引用文献2-7には、記載されておらず、周知技術であるともいえない。
よって、当業者といえども、引用発明及び引用文献2-7に記載された技術的事項から、本願発明1の上記相違点2、3に係る構成を容易に想到することはできない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2-6について
(1)本願発明2-3
本願発明2-3は、本願発明1を減縮した発明である。したがって、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
(2)本願発明4
本願発明4は、本願発明1に対応する「装置」の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。したがって、本願発明1と実質的に同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
(3)本願発明5-6
本願発明5-6は、本願発明4を減縮した発明である。したがって、本願発明1と実質的に同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定について
上記第4で説示したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
また、上記第6で説示したとおり、本願発明1-6は、当業者であっても引用発明及び引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-003893