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特許拒絶査定不服審判

2023-003750

バンドクランプ及びバンドクランプの装着方法

審判番号
2023-003750
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-178491
請求日
2023年03月06日
審決日
2023年09月26日
公報発行日
2023年12月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】矢崎総業株式会社
  • 【請求人代理人】三好 秀和
審判長/審判官
  • 審判長 須田 勝巳
  • 審判官 山崎 慎一
  • 審判官 吉田 美彦
分類
P18 .113-Z (H02G) / P18 .121-Z (H02G) / P18 .575-Z (H02G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第164条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
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特願2018-178491「バンドクランプ及びバンドクランプの装着方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月 2日出願公開、特開2020- 54032〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年9月25日の出願であって、令和4年8月1日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月12日に意見書とともに手続補正書が提出され、令和5年1月4日付けで拒絶査定(謄本送達日同年1月10日)がなされ、これに対して同年3月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、同年5月9日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。 第2 令和5年3月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年3月6日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。また、「A」~「G」の記号は、請求項に記載された各構成要件を識別するために当審で付した記号であり、それぞれを、「構成要件A」~「構成要件G」などということがある。) 「A 電線に巻き付けるバンドと、 B 前記バンドの基端が固定され、前記バンドが貫通するバンド貫通孔、及び前記バンド貫通孔を貫通した前記バンドを係止する係止部を有するバンド係止部と、 C 前記バンド係止部に固定され、被取付部材に係止するクリップ部とを備え、 D 前記バンド係止部には、前記バンド貫通孔の出口側の両外側位置より突出する2つの保護突起が設けられ、各保護突起は、先端面から外周面に亘ってアール面に形成され、 E 前記バンドの切断線の延長線上に前記保護突起が位置する状態で、前記バンドの切断位置は、前記バンドと共に切断可能な前記各保護突起の前記アール面とは反対側の内周面の間に位置する、前記バンドの長さ方向の範囲内となる突出位置となっており、 F 前記バンドの一方の面には、長さ方向の等間隔位置に係止溝が連続して形成され、 G 前記バンド係止部の内部に位置する、前記バンド貫通孔の内周面に設けられた前記係止部によって、前記バンド貫通孔を貫通した前記バンドの前記係止溝が係止されることを特徴とするバンドクランプ。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和4年9月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「 電線に巻き付けるバンドと、 前記バンドの基端が固定され、前記バンドが貫通するバンド貫通孔、及び前記バンド貫通孔を貫通した前記バンドを係止する係止部を有するバンド係止部と、 前記バンド係止部に固定され、被取付部材に係止するクリップ部とを備え、 前記バンド係止部には、前記バンド貫通孔の出口側の両外側位置より突出する2つの保護突起が設けられ、各保護突起は、先端面から外周面に亘ってアール面に形成され、 前記バンドの一方の面には、長さ方向の等間隔位置に係止溝が連続して形成され、 前記バンド係止部の内部に位置する、前記バンド貫通孔の内周面に設けられた前記係止部によって、前記バンド貫通孔を貫通した前記バンドの前記係止溝が係止されることを特徴とするバンドクランプ。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「バンドクランプ」について、上記のとおり構成要件Eの限定をするものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用例 ア 引用例1の記載事項及び引用発明 (ア)原査定の拒絶の理由において「引用文献1」として引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2012-137145号公報(平成24年7月19日公開。以下、これを「引用例1」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。) a 「【0009】 以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。 実施の形態1 図1~図4で示すベルトクランプは樹脂材による一体成形品であって、その構成はベルト10、バックル12およびアンカー20に大別される。このベルトクランプは、ベルト10とバックル12とによって例えばワイヤーハーネスW(図5)を結束し、アンカー20によって車体パネルなどの配線箇所(図示省略)にワイヤーハーネスWを留めることができる。 【0010】 ベルト10は、一定の幅で真っ直ぐに延びる帯状をしており、その基端部10aはバックル12と一体に結合され、先端部10bは自由端になっている。ベルト10における一方の面(図1あるいは図2の上面)には、係合歯列10cがベルト10の長さ方向に沿って一定のピッチで成形されている。また、ベルト10における他方の面には、ベルトクランプで結束したワイヤーハーネスWが長さ方向へずれ動くのを防止するためのリブ10d(図5)が成形されている。 【0011】 バックル12は、その内部がベルト10を通すための挿通路14となった箱形状であって、挿通路14の両端は開放されている。このバックル12の一側面にベルト10の基端部10aが結合され、他側面にアンカー20が結合されている。バックル12において、アンカー20が結合されている側面には、樹脂材の弾性によってバックル12の内外方向へ撓む係合片16が成形されている。この係合片16は、ベルト10の係合歯列10cに係合する爪16a(図5)を備えている。バックル12の挿通路14には、その入口14aから出口14bに向けてベルト10を通すことができる。 なお、バックル12とアンカー20との間には、皿形状のスタビライザ22が位置している。」 b 「【0013】 バックル12における挿通路14の出口14b側には、図3および図4の左右両側に保護部18がそれぞれ設けられている。すなわち、これらの保護部18は、挿通路14に通されて出口14bから引き出されたベルト10の幅方向の両側に位置し、このベルト10を両側から被うようになっている。挿通路14の出口14b側におけるバックル12の端面からの両保護部18の張出し量は、後述のように結束後にベルト10の余剰部分が切断されたとき、出口14bから引き出されているベルト10の遊び代S(図4および図5)の長さ以上に設定されている。 また、両保護部18の外側面は、滑らかな曲面に仕上げられ、作業者の指先が触れても不快感を与えないように配慮されている。 【0014】 ベルトクランプによる結束作業は、図5で示すようにベルト10をワイヤーハーネスWの外周に巻き付けるとともに、該ベルト10をその先端部10bからバックル12の挿通路14に挿通させて引き締める。この引き締めに伴ってベルト10の係合歯列10cとバックル12における係合片16の爪16aとが摺動しており、所定の引き締め状態において相互が係合し、ベルト10とバックル12とがロックされる。挿通路14の出口14bから引き出されたベルト10は、余剰部分を取り除くために所定の箇所で切断される。 この後、前述のように車体パネルなどの取付け孔にアンカー20を差し込むことで、ベルトクランプを通じてワイヤーハーネスWが配線箇所に留め付けられる。 【0015】 ベルト10の余剰部分が切断されるとき、このベルト10には図4の仮想線および図5で示すように挿通路14の出口14bから引き出されている遊び代Sが残っている。既に説明したように、この遊び代Sはベルトクランプによる結束において避けられないものである。 図4および図5で示すように遊び代Sになっているベルト10は、この遊び代Sよりも大きく張り出した保護部18によって両側から被われている。このため、ベルト10における切断部のエッジがカバーされ、ワイヤーハーネスWを取り扱う作業者の指先が切断部のエッジに触れて痛みなどの不快感を受けることが防止される。」 c 「図1 [図:0001404627000001.jpg] 」 (当審注:図中、「10a」とあるのは「10b」の、「10b」とあるのは「10a」の誤記と認められる。) d 「図3 [図:0001404627000002.jpg] 」 e 「図4 [図:0001404627000003.jpg] 」 f 「図5 [図:0001404627000004.jpg] 」 (イ)上記記載から、引用例1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 上記(ア)aの「ベルトクランプは樹脂材による一体成形品…(中略)…ベルトクランプは、ベルト10とバックル12とによってワイヤーハーネスW(図5)を結束し、アンカー20によって車体パネル…(中略)…にワイヤーハーネスWを留めることができる」(【0009】)との記載及び上記(ア)f(図5)から、引用例1には、“ベルト10とバックル12とによってワイヤーハーネスWを結束し、アンカー20によって車体パネルにワイヤーハーネスWを留めることができるベルトクランプであって、ベルトクランプは樹脂材による一体成形品であ”ることが記載されているといえる。 b 上記(ア)aの「ベルト10…(中略)…の基端部10aはバックル12と一体に結合され…(中略)…ベルト10における一方の面(図1あるいは図2の上面)には、係合歯列10cがベルト10の長さ方向に沿って一定のピッチで成形されている」(【0010】)との記載及び上記(ア)c(図1)から、引用例1には、“ベルト10の基端部10aはバックル12と一体に結合され、ベルト10における一方の面には、係合歯列10cがベルト10の長さ方向に沿って一定のピッチで成形され”ることが記載されているといえる。 c 上記(ア)aの「バックル12は、その内部がベルト10を通すための挿通路14となった箱形状であって、挿通路14の両端は開放されている…(中略)…バックル12において、アンカー20が結合されている側面には、樹脂材の弾性によってバックル12の内外方向へ撓む係合片16が成形されている。この係合片16は、ベルト10の係合歯列10cに係合する爪16a(図5)を備えている。バックル12の挿通路14には、その入口14aから出口14bに向けてベルト10を通すことができる」(【0011】)との記載及び(ア)f(図5)から、引用例1には、“バックル12は、その内部がベルト10を通すための挿通路14となった箱形状であって、挿通路14の両端は開放されており、バックル12において、アンカー20が結合されている側面には、樹脂材の弾性によってバックル12の内外方向へ撓む係合片16が成形され、この係合片16は、ベルト10の係合歯列10cに係合する爪16aを備え、バックル12の挿通路14には、その入口14aから出口14bに向けてベルト10を通すことができ”ることが記載されているといえる。 d 上記(ア)d(図3)~f(図5)を参照すると、挿通路14の出口14b付近には、係合片16の先端が臨み、当該係合片16に成形される爪16aは、ベルト10の係合歯列10cと係合するよう複数設けられた態様を読取ることができる。 そのうち、特に(ア)f(図5)を参照して明らかなように、図示された2つの爪16aのうち入口14aに近い方に位置する爪16aは、その位置関係からして挿通路14内の面に設けられているといえるから、引用例1には、“係合片16の爪16aは、挿通路14内の面に設けられ”ることが記載されているといえる。 e 上記(ア)bの「バックル12における挿通路14の出口14b側には、図3および図4の左右両側に保護部18がそれぞれ設けられている…保護部18は…中略…ベルト10を両側から被うようになっている…中略…両保護部18の張出し量は…結束後にベルト10の余剰部分が切断されたとき、出口14bから引き出されているベルト10の遊び代S…の長さ以上に設定されている…中略…両保護部18の外側面は、滑らかな曲面に仕上げられ、作業者の指先が触れても不快感を与えない」(【0013】)との記載並びに上記(ア)d(図3)及びe(図4)から、引用例1には、“バックル12における挿通路14の出口14b側には、左右両側に保護部18がそれぞれ設けられており、保護部18はベルト10を両側から被うようになっていて、両保護部18の張出し量は結束後にベルト10の余剰部分が切断されたとき、出口14bから引き出されているベルト10の遊び代Sの長さ以上に設定され、両保護部18の外側面は、滑らかな曲面に仕上げられ、作業者の指先が触れても不快感を与え”ないことが記載されているといえる。 f 上記(ア)bの「ベルトクランプによる結束作業は、図5で示すようにベルト10をワイヤーハーネスWの外周に巻き付けるとともに、該ベルト10をその先端部10bからバックル12の挿通路14に挿通させて引き締め…この引き締めに伴ってベルト10の係合歯列10cとバックル12における係合片16の爪16aとが摺動して…(中略)…相互が係合し、ベルト10とバックル12とがロックされる。挿通路14の出口14bから引き出されたベルト10は、余剰部分を取り除くために所定の箇所で切断される…中略…車体パネルなどの取付け孔にアンカー20を差し込むことで、ベルトクランプを通じてワイヤーハーネスWが配線箇所に留め付けられる」(【0014】)との記載及び(ア)f(図5)から、引用例1には、“ベルトクランプによる結束作業は、ベルト10をワイヤーハーネスWの外周に巻き付けるとともに、該ベルト10をその先端部10bからバックル12の挿通路14に挿通させて引き締め、この引き締めに伴ってベルト10の係合歯列10cとバックル12における係合片16の爪16aとが摺動して相互が係合し、ベルト10とバックル12とがロックされ、挿通路14の出口14bから引き出されたベルト10は、余剰部分を取り除くために所定の箇所で切断され、車体パネルなどの取付け孔にアンカー20を差し込むことで、ベルトクランプを通じてワイヤーハーネスWが配線箇所に留め付けられ”ることが記載されているといえる。 g 上記(ア)bの「ベルト10の余剰部分が切断されるとき、このベルト10には図4の仮想線および図5で示すように挿通路14の出口14bから引き出されている遊び代Sが残っている…(中略)…ベルト10は、この遊び代Sよりも大きく張り出した保護部18によって両側から被われている…ため、ベルト10における切断部のエッジがカバーされ、ワイヤーハーネスWを取り扱う作業者の指先が切断部のエッジに触れて痛みなどの不快感を受けることが防止される」(【0015】)との記載並びに(ア)e(図4)及びf(図5)から、引用例1には、“ベルト10の余剰部分が切断されるとき、このベルト10には挿通路14の出口14bから引き出されている遊び代Sが残っており、ベルト10は、この遊び代Sよりも大きく張り出した保護部18によって両側から被われているため、ベルト10における切断部のエッジがカバーされ、ワイヤーハーネスWを取り扱う作業者の指先が切断部のエッジに触れて痛みなどの不快感を受けることが防止される”ことが記載されているといえる。 (ウ)上記(ア)及び(イ)より、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ベルト10とバックル12とによってワイヤーハーネスWを結束し、アンカー20によって車体パネルにワイヤーハーネスWを留めることができるベルトクランプであって、ベルトクランプは樹脂材による一体成形品であり、 ベルト10の基端部10aはバックル12と一体に結合され、ベルト10における一方の面には、係合歯列10cがベルト10の長さ方向に沿って一定のピッチで成形され、 バックル12は、その内部がベルト10を通すための挿通路14となった箱形状であって、挿通路14の両端は開放されており、バックル12において、アンカー20が結合されている側面には、樹脂材の弾性によってバックル12の内外方向へ撓む係合片16が成形され、この係合片16は、ベルト10の係合歯列10cに係合する爪16aを備え、バックル12の挿通路14には、その入口14aから出口14bに向けてベルト10を通すことができ、 係合片16の爪16aは、挿通路14内の面に設けられ、 バックル12における挿通路14の出口14b側には、左右両側に保護部18がそれぞれ設けられており、保護部18はベルト10を両側から被うようになっていて、両保護部18の張出し量は結束後にベルト10の余剰部分が切断されたとき、出口14bから引き出されているベルト10の遊び代Sの長さ以上に設定され、両保護部18の外側面は、滑らかな曲面に仕上げられ、作業者の指先が触れても不快感を与えず、 ベルトクランプによる結束作業は、ベルト10をワイヤーハーネスWの外周に巻き付けるとともに、該ベルト10をその先端部10bからバックル12の挿通路14に挿通させて引き締め、この引き締めに伴ってベルト10の係合歯列10cとバックル12における係合片16の爪16aとが摺動して相互が係合し、ベルト10とバックル12とがロックされ、挿通路14の出口14bから引き出されたベルト10は、余剰部分を取り除くために所定の箇所で切断され、車体パネルなどの取付け孔にアンカー20を差し込むことで、ベルトクランプを通じてワイヤーハーネスWが配線箇所に留め付けられ、 ベルト10の余剰部分が切断されるとき、このベルト10には挿通路14の出口14bから引き出されている遊び代Sが残っており、ベルト10は、この遊び代Sよりも大きく張り出した保護部18によって両側から被われているため、ベルト10における切断部のエッジがカバーされ、ワイヤーハーネスWを取り扱う作業者の指先が切断部のエッジに触れて痛みなどの不快感を受けることが防止される ベルトクランプ。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 構成要件Aについて 引用発明の「ワイヤーハーネスW」及び「ベルト10」は、それぞれ本件補正発明の「電線」及び「バンド」に相当する。 引用発明は、「ベルトクランプによる結束作業」において、「ベルト10をワイヤーハーネスWの外周に巻き付ける」ものであるから、引用発明は構成要件Aの「電線に巻き付けるバンド」との構成を有する。 イ 構成要件Bについて 引用発明の「ベルト10の基端部10a」、及び「バックル12」の「ベルト10を通すための挿通路14」は、それぞれ本件補正発明の「バンドの基端」及び「バンドが貫通するバンド貫通孔」に相当する。 引用発明の「バックル12の内外方向へ撓む係合片16」は、「ベルト10の係合歯列10cに係合する爪16aを備え」るものであるところ、「バックル12の挿通路14には、その入口14aから出口14bに向けてベルト10を通すことができ」るとともに、「ベルト10をその先端部10bからバックル12の挿通路14に挿通させて引き締め、この引き締めに伴ってベルト10の係合歯列10cとバックル12における係合片16の爪16aとが摺動して相互が係合し、ベルト10とバックル12とがロックされ」ることから、引用発明の「バックル12」、及び「係合片16」が備える「ベルト10の係合歯列10cに係合する爪16a」は、それぞれ本件補正発明の「バンド係止部」及び「前記バンド貫通孔を貫通した前記バンドを係止する係止部」に相当する。 したがって、上記アの認定を踏まえると、引用発明は構成要件Bの「前記バンドの基端が固定され、前記バンドが貫通するバンド貫通孔、及び前記バンド貫通孔を貫通した前記バンドを係止する係止部を有するバンド係止部」との構成を有する。 ウ 構成要件Cについて 引用発明の「バックル12」は、「アンカー20が結合されている」ことから、引用発明の「アンカー20」は、本件補正発明の「前記バンド係止部に固定され」るところの、「クリップ部」に相当する。 引用発明は、「アンカー20によって車体パネルにワイヤーハーネスWを留めることができるベルトクランプ」であるところ、「車体パネルなどの取付け孔にアンカー20を差し込むことで、ベルトクランプを通じてワイヤーハーネスWが配線箇所に留め付けられ」るものであり、当該「車体パネル」は、本件補正発明の「被取付部材」に相当する。 したがって、引用発明は、本件補正発明の構成要件Cの「前記バンド係止部に固定され、被取付部材に係止するクリップ部」との構成を有する。 エ 構成要件Dについて 引用発明の「バックル12における挿通路14の出口14b側には、左右両側に保護部18がそれぞれ設けられて」いることから、当該「保護部18」は、上記イの“バンド貫通孔”に関する認定を踏まえると、本件補正発明の「前記バンド貫通孔の出口側の両外側位置より突出する2つの保護突起」に相当し、上記アの“バンド”に関する認定を踏まえると、引用発明は、本件補正発明の「前記バンド係止部には、前記バンド貫通孔の出口側の両外側位置より突出する2つの保護突起が設けられ」との構成を有するといえる。 また、引用発明の「両保護部18の外側面は、滑らかな曲面に仕上げられ」ることから、本件補正発明の「各保護突起は、先端面から外周面に亘ってアール面に形成され」との構成を有するといえる。 したがって、引用発明は、本件補正発明の構成要件Dの「前記バンド係止部には、前記バンド貫通孔の出口側の両外側位置より突出する2つの保護突起が設けられ、各保護突起は、先端面から外周面に亘ってアール面に形成され」との構成を有する。 オ 構成要件Fについて 引用発明の「ベルト10」の「一方の面に」「長さ方向に沿って一定のピッチで成形され」ている、「係合歯列10c」は、本件補正発明の「長さ方向の等間隔位置に」「形成され」る「係止溝」に相当する。 したがって、引用発明は、本件補正発明の構成要件Fの「前記バンドの一方の面には、長さ方向の等間隔位置に係止溝が連続して形成され」との構成を有する。 カ 構成要件Gについて 引用発明の「係合片16の爪16a」は、「挿通路14内の面に設けられ」るところ、上記イの認定を踏まえると、当該「爪16a」は、本件補正発明の「前記バンド係止部の内部に位置する、前記バンド貫通孔の内周面に設けられた」ものであるということができる。 また、引用発明の「バックル12」には、「樹脂材の弾性によってバックル12の内外方向へ撓む係合片16が成形され、この係合片16は、ベルト10の係合歯列10cに係合する爪16aを備え」るところ、上記イ及びオの認定を踏まえると、引用発明は、本件補正発明の「前記係止部によって、前記バンド貫通孔を貫通した前記バンドの前記係止溝が係止される」構成を有する。 さらに、引用発明の「ベルトクランプ」は、上記ア~オの各構成要件を備える、“バンドクランプ”であるといえることから、引用発明は、本件補正発明の構成要件Gの「前記バンド係止部の内部に位置する、前記バンド貫通孔の内周面に設けられた前記係止部によって、前記バンド貫通孔を貫通した前記バンドの前記係止溝が係止されることを特徴とするバンドクランプ」との構成を有する。 キ 以上、ア~カの検討から、引用発明と本件補正発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 〈一致点〉 A 電線に巻き付けるバンドと、 B 前記バンドの基端が固定され、前記バンドが貫通するバンド貫通孔、及び前記バンド貫通孔を貫通した前記バンドを係止する係止部を有するバンド係止部と、 C 前記バンド係止部に固定され、被取付部材に係止するクリップ部とを備え、 D 前記バンド係止部には、前記バンド貫通孔の出口側の両外側位置より突出する2つの保護突起が設けられ、各保護突起は、先端面から外周面に亘ってアール面に形成され、 F 前記バンドの一方の面には、長さ方向の等間隔位置に係止溝が連続して形成され、 G 前記バンド係止部の内部に位置する、前記バンド貫通孔の内周面に設けられた前記係止部によって、前記バンド貫通孔を貫通した前記バンドの前記係止溝が係止されることを特徴とするバンドクランプ。 〈相違点〉 本件補正発明が、「前記バンドの切断線の延長線上に前記保護突起が位置する状態で、前記バンドの切断位置は、前記バンドと共に切断可能な前記各保護突起の前記アール面とは反対側の内周面の間に位置する、前記バンドの長さ方向の範囲内となる突出位置となって」いるのに対し、引用発明の「保護部18」と「ベルト10」の切断位置との関係がそのようになっていることが特定されていない点。 (4)当審の判断 上記相違点について検討する。 ア 「バンドの切断線」及び「バンドの切断位置」について 引用発明の「保護部18」が、「ベルト10を両側から被うようになっていて、両保護部18の張出し量は結束後にベルト10の余剰部分が切断されたとき、出口14bから引き出されているベルト10の遊び代Sの長さ以上に設定され」ているところ、「結束後にベルト10の余剰部分が切断され」る予定の位置を、両「保護部18」方向へ延長した延長線は、「保護部18」と重なることは自明である。 そうすると、引用発明において、「結束後にベルト10の余剰部分が切断され」る予定の位置を、両「保護部18」方向へ延長した延長線は、本件補正発明の「前記バンドの切断線の延長線」に相当するものといえるから、引用発明は、本件補正発明の「前記バンドの切断線の延長線上に前記保護突起が位置する状態」を生じるものといえる。 引用発明は、「ベルトクランプによる結束作業」において、「ベルト10をワイヤーハーネスWの外周に巻き付けるとともに、該ベルト10をその先端部10bからバックル12の挿通路14に挿通させて引き締め、この引き締めに伴ってベルト10の係合歯列10cとバックル12における係合片16の爪16aとが摺動して相互が係合し、ベルト10とバックル12とがロックされ、挿通路14の出口14bから引き出されたベルト10は、余剰部分を取り除くために所定の箇所で切断され」るところ、当該「余剰部分を取り除くために所定の箇所で切断され」る「ベルト10」の位置は、本件補正発明の「バンドの切断位置」に対応する位置といえる。 そして、引用発明の「余剰部分を取り除くために所定の箇所で切断され」る「ベルト10」の位置は、「両保護部18」の「外側面」に形成された「滑らかな曲面」の反対側の内周面の間に位置することになるから、引用発明は、“前記バンドの切断位置”が“前記各保護突起の前記アール面とは反対側の内周面の間に位置する”ものといえる。 イ 「保護突起」について 引用発明の「ベルトクランプ」は、「ベルト10とバックル12と」で構成されると共に、「樹脂材による一体成形品であ」るから、「ベルト10」と「保護部18」とは、同じ「樹脂材」によって形成されるものである。 そうすると、「ベルト10」が「所定の箇所で切断され」るものであれば、同じ「樹脂材」によって形成される「保護部18」も、「ベルト10」とともに“切断可能な”ものであるといえる。 ウ 相違点に係る構成の技術的意義について 相違点に係る、「前記バンドの長さ方向の範囲内となる突出位置となっており」との事項(以下、「補正事項」という。)について、当該補正事項以外の上記ア及びイで検討した事項を参酌しても、必ずしもその意味するところは明確とはいえないので、本件明細書の記載を参酌して以下検討を行う。 本件補正発明は、電線を結束して被取付部材に固定するバンドクランプに関するものであって(【0001】)、従来のバンドクランプは、電線に巻き付けるバンドと、バンドの基端が固定されたバンド係止部と、バンド係止部に固定された車体係止用のクリップ部とを備え、バンド係止部は、バンドが貫通するバンド貫通孔と、バンド貫通孔に貫通されたバンドを係止する係止部とを有し(【0002】)、バンドクランプの装着作業は、先ず、バンドを電線の外周に巻き付け、そのバンドの先端側をバンド貫通孔に通し、バンド貫通孔を貫通したバンドがバンド係止部で係止され、次に、バンド貫通孔の出口側より突出したバンドの余剰箇所を切断して完了し、クリップ部を車体に係止することにより、電線を車体に固定できるものであったことを背景とし(【0003】)、当該従来例のバンドクランプでは、バンドの切断箇所がバンド係止部のバンド貫通孔より外部に突出した状態で露出し、バンドの切断面の角は、鋭利な角度(例えば90度)であり、作業者の作業性に支障を来す恐れがあったことを解決しようとする課題とするものである(【0005】)。 そして、本件補正発明は、当該課題に対し、バンド1の切断線の延長線上に各保護突起4が位置する位置でバンド1を切断する場合に、2つの保護突起4も同時に切断すると、バンド1の切断面1bの角は、鋭利な角(90度以下の角度を有する角)e1であるが、その鋭利な角e1は、その両外側位置に配置される2つの保護突起4で保護され、又、各保護突起4には切断面4bによって角bが形成されるものの、その角bは、保護突起4の外周面がアール面4aであり、鈍角の角となるため、この場合にも鋭利な角が外部に突出した状態とならないため作業者の作業の支障にならない(【0021】)ものであることを理解することができる。 上記本件明細書の記載によれば、上記補正事項は、バンドの長さ方向の、当該バンドの切断位置が、保護突起のアール面が形成されている位置、すなわち本件明細書の図面の図3における、「E」の範囲内の位置であることをいうものであると解される。 一方、上記イで検討したとおり、引用発明の「保護部18」は、「ベルト10」とともに切断可能なものであって、「両保護部18の外側面は、滑らかな曲面に仕上げられ、作業者の指先が触れても不快感を与え」ないものであることに鑑みれば、引用発明においても「ベルト10」とともに「保護部18」も切断する場合には、その切断位置は当該「滑らかな曲面」が形成されている位置とならざるを得ず、そうすると、引用発明においても「ベルト10」の切断位置は、上記補正事項が特定する、“前記バンドの長さ方向の範囲内となる突出位置”とならざるを得ない。 そうすると、上記ア及びイで検討した事項も踏まえると、引用発明は、本件補正発明の構成要件Eに係る構成、すなわち上記相違点に係る構成を有するともいえるから、上記相違点は実質的なものではなく、また当該相違点は、引用発明の「保護部18」が奏する「作業者の指先が触れても不快感を与え」ないとの効果や、「ワイヤーハーネスWを取り扱う作業者の指先が切断部のエッジに触れて痛みなどの不快感を受けることが防止される」効果に鑑みれば、当業者が容易に想到し得る構成というべきである。 エ むすび 以上検討したとおり、上記相違点は実質的なものではなく、また相違点に係る構成の奏する効果も、引用発明と同等のものと当業者が認識し得るものである。 したがって、本件補正発明は引用発明と同一であり、特許法29条1項3号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 また、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもあるから、同法同条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和5年3月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年9月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができず、また引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法同条2項の規定により特許を受けることができず、請求項2に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法同条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2012-137145号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、上記第2の[理由]2(2)において、引用例1として記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、構成要件Eを削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明は、上記第2の[理由]の2(3)、(4)において対比及び判断したとおり、引用例1に記載された引用発明と同一であるから、本願発明も、同様に、引用発明と同一である。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された引用例1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-003750

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