審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2023-003279

染髪方法及びヘアカラーリング剤特定システム

審判番号
2023-003279
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-199678外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年02月27日
審決日
2024年09月25日
公報発行日
2024年12月27日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A45D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-199678「染髪方法及びヘアカラーリング剤特定システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 7月 8日出願公開、特開2022-104555〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 20項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、令和3年12月 8日(優先権主張 令和2年12月28日)に出願された特願2021-199678号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和4年 2月 8日 :手続補正書の提出
令和4年 5月 9日付け:拒絶理由通知書
令和4年 9月16日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年12月15日付け:拒絶査定(令和4年12月20日発送)
令和5年 2月27日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和6年 4月24日付け:拒絶理由通知書
令和6年 7月 1日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1-6に係る発明は、令和6年7月1日の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1、5及び6に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」、「本願発明5」及び「本願発明6」という。)は、以下のとおりである。

(本願発明1)

「【請求項1】
少なくとも1のコンピュータ装置を備えるヘアカラーリング剤特定システムであって、
染髪後の色味及び/又は明るさと関連付けて、毛髪の頭皮近傍の部分を染髪するための第1ヘアカラーリング剤、及び、毛髪の頭皮近傍以外の部分を染髪するための第2ヘアカラーリング剤を記憶するヘアカラーリング剤記憶手段と、
入力された染髪後の色味及び/又は明るさに応じて、毛髪の頭皮近傍の部分を染髪するための第1ヘアカラーリング剤、及び、毛髪の頭皮近傍以外の部分を染髪するための第2ヘアカラーリング剤を特定するヘアカラーリング剤特定手段と
を備え、
ヘアカラーリング剤記憶手段において、所定の染髪後の色味及び/又は明るさと関連付けて記憶された第2ヘアカラーリング剤が、該所定の染髪後の色味及び/又は明るさと関連付けて記憶された第1ヘアカラーリング剤よりも、明るい色に染色が可能なものであり、毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部について、染髪前の色味及び明るさが同じ色味及び明るさである場合に、染髪後の色味及び明るさが同じ色味及び明るさとなるようにヘアカラーリングすることを可能とする、ヘアカラーリング剤特定システム。」

(本願発明5)

「【請求項5】
少なくとも1のコンピュータ装置を備えるヘアカラーリング剤特定システムにおいて実行されるヘアカラーリング剤特定方法であって、
染髪後の色味及び/又は明るさと関連付けて、毛髪の頭皮近傍の部分を染髪するための第1ヘアカラーリング剤、及び、毛髪の頭皮近傍以外の部分を染髪するための第2ヘアカラーリング剤を記憶するヘアカラーリング剤記憶ステップと、
入力された染髪後の色味及び/又は明るさに応じて、毛髪の頭皮近傍の部分を染髪するための第1ヘアカラーリング剤、及び、毛髪の頭皮近傍以外の部分を染髪するための第2ヘアカラーリング剤を特定するヘアカラーリング剤特定ステップと
を有し、
ヘアカラーリング剤記憶ステップにおいて、所定の染髪後の色味及び/又は明るさと関連付けて記憶された第2ヘアカラーリング剤が、該所定の染髪後の色味及び/又は明るさと関連付けて記憶された第1ヘアカラーリング剤よりも、明るい色に染色が可能なものであり、
毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部について、染髪前の色味及び明るさが同じ色味及び明るさである場合に、染髪後の色味及び明るさが同じ色味及び明るさとなるようにヘアカラーリングすることを可能とする、ヘアカラーリング剤特定方法。」

(本願発明6)

「【請求項6】
少なくとも1のコンピュータ装置を備えるヘアカラーリング剤特定システムにおけるコンピュータ装置にて実行されるヘアカラーリング剤特定プログラムであって、
コンピュータ装置を、
染髪後の色味及び/又は明るさと関連付けて、毛髪の頭皮近傍の部分を染髪するための第1ヘアカラーリング剤、及び、毛髪の頭皮近傍以外の部分を染髪するための第2ヘアカラーリング剤を記憶するヘアカラーリング剤記憶手段と、
入力された染髪後の色味及び/又は明るさに応じて、毛髪の頭皮近傍の部分を染髪するための第1ヘアカラーリング剤、及び、毛髪の頭皮近傍以外の部分を染髪するための第2ヘアカラーリング剤を特定するヘアカラーリング剤特定手段
として機能させ、
ヘアカラーリング剤記憶手段において、所定の染髪後の色味及び/又は明るさと関連付けて記憶された第2ヘアカラーリング剤が、該所定の染髪後の色味及び/又は明るさと関連付けて記憶された第1ヘアカラーリング剤よりも、明るい色に染色が可能なものであり、毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部について、染髪前の色味及び明るさが同じ色味及び明るさである場合に、染髪後の色味及び明るさが同じ色味及び明るさとなるようにヘアカラーリングすることを可能とする、ヘアカラーリング剤特定プログラム。」

第3 拒絶の理由

令和6年4月24日付けの当審が通知した拒絶理由は、次の理由を含むものである。すなわち、補正前の請求項1、6及び7に係る発明(本願発明1、5及び6)は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~5に記載された事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2016-212726号公報
引用文献2:ヘアカラーを速く均一に染める方法,[online],2016年06月09日,[検索日2021.08.19] ,インターネット<URL:https://www.hair-salon-wave.com/blog/20147.html>
引用文献3:新生毛と既染毛を塗り分けて均一の色味を叶える,[online],2015年09月

01日,[検索日 2021.08.19] ,インターネット<URL:https://www.rasysa.com/special/201509001/technique.html>

引用文献4:ヘアカラー/塗り分けと薬剤設定,[online],2014年12月26日,[検索日2021.08.19] ,インターネット<URL:https://ameblo.jp/fess-colorist-shingo/entry-11968958508.html>
引用文献5:Q_黒髪に初めてのヘアカラーは染まりにくいですか?初めてのカラーで気をつけるポイントは?,[online],2020年11月30日,[検索日 2024.04.05] ,インターネット<URL:https://kord.tokyo/diary/q_-3>

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載

引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。

(1)「【0001】
本発明は、毛髪を希望通りに染色するための染色材料の選定システム、選定方法、及びそのシステムに用いるコンピュータプログラムに関するものである。」
(2)「【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、希望色を実現する染色材料をユーザに迅速に提示することができる染色材料の選定システム等を提供することを目的とする。」
(3)「【0014】
(6) 本発明の選定方法は、本発明の選定システムが行う上述の処理を方法発明として捉えた発明である。従って、本発明の選定方法は、本発明の選定システムと同様の作用効果を奏する。
(7) 本発明のコンピュータプログラムは、本発明の選定システムが行う上述の処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。従って、本発明のコンピュータプログラムは、本発明の選定システムと同様の作用効果を奏する。」
(4)「【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る染色材料の選定システムの全体構成図である。
続きを表示(全11行)
図1に示すように、本実施形態の選定システムは、インターネット等の公衆通信網1を通じて通信可能に接続されたサーバコンピュータ2(以下、単に「サーバ2」という場合がある。)と、1又は複数のクライアント端末3とを備えている。
【0018】
サーバコンピュータ2は、染色材料の製造業者等が運営するウェブサーバよりなる。サーバコンピュータ2は、クライアント端末3と共通するウェブブラウザを通じてHTMLや画像などのオブジェクトを提供するサービスプログラムを有する。
本実施形態のサービスプログラムは、クライアント端末3がウェブブラウザを通じて入力した条件に応じて、所定の染色材料を用いて染色した場合の顔画像を提示するウェブアプリケーションプログラム(以下、単に「アプリケーション」という。)よりなる。
【0019】
クライアント端末3は、ヘアサロンに収容されたタブレット端末3A、デスクトップパソコン3B又はノートパソコン3C等よりなる。
これらのクライアント端末3は、無線又は有線LANを通じて公衆通信網1と通信可能に繋がっている。従って、クライアント端末3のユーザは、所定のURLを入力してサーバ2のアプリケーションにアクセスし、サーバ2の運営者から通知されたID番号とパスワードを入力することにより、当該アプリケーションを利用した所定のシミュレーションサービスを受けることができる。」
(5)「【0022】
制御部21は、記憶部25に格納された前記アプリケーションを読み出して実行することにより、所定のクライアント端末3から取得したHTTPリクエストに応じた処理を実行し、その処理結果であるHTTPレスポンスを通信部22に送信させる。
記憶部25は、前記アプリケーションを格納するプログラム格納領域と、使用するデータの一時的な格納領域と、当該アプリケーションのサービスに必要な画像ファイルFのデータベースDB1(図3)、染色材料のデータベースDB2(図4)及び塗布量の算出テーブルCT(図5)を備えている。」
(6)「【0025】
〔染色材料のデータベース〕
図4は、染色材料のデータベースDB2(おしゃれ染めの場合)の構造図である。
図4に示すように、染色材料のデータベースDB2は、ヘアサロンのユーザが使用可能な染色材料の種別が行方向に並び、毛髪の下地色(アンダーカラー)が列方向に並ぶデータ構造になっている。本実施形態では、毛髪のアンダーカラーとして、染色前の毛髪の「明度レベル」が採用されている。
【0026】
行と列が交差する1つのデータボックスに含まれる数値は、当該列で特定される明度レベルの毛髪を当該行で特定される染色材料により染色した場合の、染色後のヘアカラーのRGB空間における座標データ(以下、「RGBデータ」という。)である。
なお、図4に示すデータベースDB2では、図示を簡略化するため、混合色データ列Ri(i=1,2,……n)に対応するデータボックスのRGBデータの数値が省略されている。」
(7)「【0036】
図4では、「おしゃれ染め」の場合のデータベースDB2を例示している。もっとも、記憶部25に記憶させる染色材料のデータベースDB2には、「白髪染め」の場合のデータベース(図示省略)も含まれる。
白髪染めの染色材料のデータベースは、アンダーカラーの明度が10LVの白髪量の存在比率ごとに3段階(10%、30%、50%)に区分されている。この点で、明度レベルが5段階に区分されている「おしゃれ染め」の場合と異なるが、染色材料a1~a24と混合割合のバリエーションは「おしゃれ染め」の場合と同様である。」
(8)「【0041】
薬剤選択処理とは、染色対象者の毛髪のアンダーカラーと希望色に基づいて、ヘアサロンのユーザが使用可能な染色材料(薬剤)の中から、希望色に染め上げるのに必要となる非混合材料又は混合材料を選択し、選択した材料の塗布量を算出する処理のことをいう。
図6に示すように、制御部21の薬剤選択処理には、アンダーカラーの設定処理(ステップST11)と希望色の設定処理(ステップST12)が含まれる。これらの設定処理は、クライアント端末3から受信した設定情報に基づいて行われる。」
(9)「【0042】
アンダーカラーの設定処理(ステップST11)には、染色対象者の毛髪に対する塗布部位の設定、おしゃれ染め又は白髪染めの染め方法の設定、塗布方法の設定、及び塗布部位の長さと明度の設定などが含まれる。
希望色の設定処理(ステップST12)は、染色対象者が希望する髪色をHSV値により設定する処理である。本実施形態では、色調で16段階、彩度で10段階、明度で5段階ごとに希望色が指定される。」
(10)「【0060】
図10(a)の塗布方法の操作画面には、6種類の塗布方法の選択アイコンC9~C14が含まれる。各選択アイコンC9~C14には、毛髪の明るさが1つから3つの範囲で区分された三角形状の毛髪図柄が含まれる。
選択アイコンC9は、毛髪全体が新生部(非染色の部分)であるパターン1のアイコンである。選択アイコンC10は、根元部分が新生部であり、新生部から先端までの大半が既染部(過去の染色材料が抜けていない部分)であるパターン2のアイコンである。
【0061】
続きを表示(全14行)
選択アイコンC11は、根元部分が新生部であり、中央部分が比較的暗い既染部であり、中央部分から先端までが比較的明るい既染部であるパターン3のアイコンである。選択アイコンC12は、毛髪全体が既染部であるパターン4のアイコンである。
選択アイコンC13は、根元部分が比較的暗い既染部であり、既染部から先端までが比較的明るい既染部であるパターン5のアイコンである。選択アイコンC14は、根元部分が比較的暗い既染部であり、中央部分が中程度の明るさの既染部であり、中央部分から先端までが比較的明るい既染部であるパターン6のアイコンである。
【0062】
毛髪全体が新生部であり1種類のカラーレシピのみが必要と判断される場合には、ユーザは、パターン1の選択アイコンC9を選択すればよい。
根元側の新生部と先端側の既染部とに毛髪の明るさが概ね2分割されている場合には、ユーザは、パターン2の選択アイコンC10を選択すればよい。
同様に、根元側の新生部、中央の暗めの既染部及び先端側の明るめの既染部に毛髪の明るさが概ね3分割されている場合には、ユーザは、パターン3の選択アイコンC11を選択すればよい。
【0063】
毛髪全体がほぼ均一な既染部であり1種類のカラーレシピのみが必要と判断した場合には、ユーザは、パターン4の選択アイコンC12を選択すればよい。
根元側の既染部と先端側の既染部とに毛髪の明るさが概ね2分割されている場合には、ユーザは、パターン5の選択アイコンC13を選択すればよい。
同様に、根元側の既染部、中央の暗めの既染部及び先端側の明るめの既染部に毛髪の明るさが概ね3分割されている場合には、ユーザは、パターン6の選択アイコンC14を選択すればよい。」
(11)「【0086】
〔その他の変形例〕
今回開示した上述の実施形態は例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内での全ての変更が含まれる。
例えば、上述の実施形態では、アンダーカラーとして染色前の毛髪の明度レベルを採用しているが、その他に、染色前の毛髪のメラニンタイプなどをアンダーカラーとして考慮することにしてもよい。」
(12)「図10a
[図:0001417069000001.jpg]
」

(13)上記(5)の記載から、染色材料の選択システムが行う選定方法において、染色材料のデータベースDB2を記憶部25に記憶させる処理を行うことが理解できる。

(14)上記(8)の記載から、染色材料の選択システムは、薬剤選択処理を行うための、薬剤を選択する手段を備えていると理解できる。

(15)上記(8)、(10)及び(12)から、染色材料の選択システムは、毛髪全体が新生部である場合やほぼ均一な既染部である場合であっても、希望色に染め上げられるように薬剤を選択することから、毛髪全体が新生部やほぼ均一な既染部である場合に、希望色に染め上がるようにヘアカラーリングすることを可能とすると理解できる。

2 引用発明

上記1(1)~(15)及び図1~12の記載を総合すると、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明1-1」、「引用発明1-2」及び「引用発明1-3」という。)。

(引用発明1-1)

「インターネット等の公衆通信網1を通じて通信可能に接続されたサーバコンピュータ2と、タブレット端末3A、デスクトップパソコン3B又はノートパソコン3C等よりなる1又は複数のクライアント端末3を備える染色材料の選定システムであって、
染色材料の種別と毛髪のアンダーカラーと染色後のヘアカラーのRGBデータとが関連付けて記憶された染色材料のデータベースDB2と、
染色対象者の毛髪のアンダーカラーと希望色に基づいて、ヘアサロンのユーザが使用可能な染色材料(薬剤)の中から、希望色に染め上げるのに必要となる非混合材料又は混合材料を選択し、選択した材料の塗布量を算出するという、薬剤を選択する手段と
を備え、
毛髪全体が新生部やほぼ均一な既染部である場合に、希望色に染め上がるようにヘアカラーリングすることを可能とする、
染色材料の選択システム。」

(引用発明1-2)

「インターネット等の公衆通信網1を通じて通信可能に接続されたサーバコンピュータ2と、タブレット端末3A、デスクトップパソコン3B又はノートパソコン3C等よりなる1又は複数のクライアント端末3を備える染色材料の選定システムが行う選定方法であって、
染色材料の種別と毛髪のアンダーカラーと染色後のヘアカラーのRGBデータとが関連付けて記憶された染色材料のデータベースDB2を記憶部25に記憶させる処理と、
染色対象者の毛髪のアンダーカラーと希望色に基づいて、ヘアサロンのユーザが使用可能な染色材料(薬剤)の中から、希望色に染め上げるのに必要となる非混合材料又は混合材料を選択し、選択した材料の塗布量を算出する処理と
を有し、
毛髪全体が新生部やほぼ均一な既染部である場合に、希望色に染め上がるようにヘアカラーリングすることを可能とする、
染色材料の選択方法。」

(引用発明1-3)

「インターネット等の公衆通信網1を通じて通信可能に接続されたサーバコンピュータ2と、タブレット端末3A、デスクトップパソコン3B又はノートパソコン3C等よりなる1又は複数のクライアント端末3を備える染色材料の選定システムに用いるコンピュータプログラムであって、
サーバコンピュータ2を、
染色材料の種別と毛髪のアンダーカラーと染色後のヘアカラーのRGBデータとが関連付けて記憶された染色材料のデータベースDB2を記憶部25に記憶する手段と、
染色対象者の毛髪のアンダーカラーと希望色に基づいて、ヘアサロンのユーザが使用可能な染色材料(薬剤)の中から、希望色に染め上げるのに必要となる非混合材料又は混合材料を選択し、選択した材料の塗布量を算出するという、薬剤を選択する手段
として機能させ、
毛髪全体が新生部やほぼ均一な既染部である場合に、希望色に染め上がるようにヘアカラーリングすることを可能とする、
染色材料の選定システムに用いるコンピュータプログラム。」

3 引用文献2の記載

引用文献2(特に、「ロングヘアは3段階にわけて薬剤でトーン調整」参照)には、以下の事項が記載されている。

(1)「速くキレイに(ワンタッチ)で染める手順
時間差でヘアカラーをコントロールするのではなく、薬剤の調合でコントロールする方法です。
時間差でヘアカラーをコントロールすると、仕事の合間に何度もテストで抜けないといけない状態に。
薬剤の調合することでお客さまから抜けることなく、1度のヘアカラー施術で流すことも可能でスピードアップにつながります。」
(2)「薬剤の調合
簡単に説明すると 1.根本 2.中間部 3..毛先の部分と、三段階に分けて薬剤を調合します。(例:10レベル全体)
1.根本は8-9レベルの薬剤調合 2.9-10レベルにクリア剤を10%ミックス 3.9-10レベルにクリア剤を10%ミックス
毛先は(既存毛の退色がある)にはクリア剤をミックスすることで暗くなるのを防ぎます。*ダメージが強いため
新生毛や中間部と毛先と髪の状態や、アンダーの状態も変化するため。
毛髪の状態を把握し薬剤調合をすすめ、ヘアカラーを速く均一に染める方法を行います。銀座カロンさんの「西海 洋」を参考にしました。」
(3)「根本・中間部・毛先と一気に染め上げます
新生毛・中間部(既存部)・毛先(残留ティント)と3段階を順に一気に塗布します。
3段階のトーンを一度(ワンタッチ)の薬剤の種類を変えて染める施術です。そうすることで均一にキレイに染め上がります。
簡単に説明すると 1.根本 2.中間部 3..毛先の部分と、三段階に分けて薬剤を調合します。(例:10レベル全体)
1.根本は8-9レベルの薬剤調合 2.中間部は9-10レベルにクリア剤を10%ミックス 3.9-10レベルにクリア剤を10%ミックス
毛先は(既存毛の退色がある)にはクリア剤をミックスすることで暗くなるのを防ぎます。*ダメージが強い」
(4)「ポイント
メーカーのヘアカラー剤は15分-20分が発色がよくなるよう開発されています。
従来のヘアカラーの染毛技術ですと時間もかかり、ヘアカラー剤の発色も悪くムラもでやすくなります。
速く均一に染める方法はヘアカラー剤を調合しコントロールし、一気に染めることで均一にキレイに染めることが可能です。
また、アンダー部分の髪の状態と希望の色出すために、薬剤の調合(補色)を計算することも大切です。
根元・中間・毛先とロングヘアなどは、毛髪診断の時に色を予想し、目的の色が出るようにしましょう。」

(5)上記(3)の記載から、新生毛は根本と同一の部位を指す用語として使用されていることが理解できる。

4 引用文献2に記載された事項

上記3からみて、引用文献2には、以下の事項が記載されている。

「毛髪の状態を把握し薬剤調合をすすめ、ヘアカラーを速く均一に染めること」、「根本、中間部、毛先と、三段階に分けて薬剤を調合すること」、「薬剤は、根本は8-9レベル、中間部は9-10レベルにクリア剤を10%ミックス、毛先は9-10レベルにクリア剤を10%ミックスとすること」及び「新生毛(根本)、中間部、毛先と三段階を順に一気に塗布すること」

5 引用文献3の記載

引用文献3(特に、「新生毛と既染毛を塗り分けて均一の色味を叶える」参照)には、以下の事項が記載されている。

(1)「カラーリングで大切なことは事前のカウンセリングとカラー剤の選択です。新生部分の根元、既染部分の中間、さらに毛先と部位によって髪の状態は異なります。そこで、均一の色味と発色を叶えるテクニックをご紹介します。」

(2)「アンヴィエカラーは従来のカラー剤より染まる時間が早いのでお客様にとって時間短縮のカラーをご提案できます。その反面、カラーリングはスピーディーに塗布することが大切です。ここでは根元の新生毛と中間から毛先までの既染毛を2タッチで塗り分けて均一の色味を表現しています。レシピは、根元をアンヴィエNB-9とPB-8(全体の10%)でブルーオキシは6%。中間から毛先はPB-8とチョイスブラウン(全体の5%)でブルーオキシは3%です。」

6 引用文献3に記載された事項

上記5からみて、引用文献3には、以下の事項が記載されている。

「新生部分の根元、既染部分の中間、さらに毛先と部位によって髪の状態は異なること」

7 引用文献4の記載

引用文献4(特に、本文5-30行目参照)には、以下の事項が記載されている。

(1)「的確な塗り分けを選定することも薬剤を選定する事と同じように大切です。
例えば、トーンアップの場合、
根元~毛先まで同明度で塗布するとどうなるでしょうか。
根元が明るく毛先になるにつれて暗く感じると思います。」
(2)「根元…明るくなりやすい(頭皮熱の影響が出る部分は特に明るくなりやすい)
中間…明るくなりやすいが浸透しにくい
毛先…明るくなりにくいが浸透しやすい」
(3)「仮にロングスタイルを10レベルに仕上げる場合は
根元付近を8レベル
中間を目標の明るさである10レベル
毛先を12レベル
というふうに仕上げると
ストランド(毛束)で見ると8~12レベルのグラデーションに仕上がってしまうが、
ヘアスタイル全体で見ると均一な10レベルに仕上がります。」

(4)「One Makeに仕上げるためにしっかりと薬剤を塗り分けましょう。」

8 引用文献4に記載された事項

上記7からみて、引用文献4には、以下の事項が記載されている。

「根元~毛先まで同明度で塗布すると、根元が明るく毛先になるにつれて暗く感じること」、「ロングスタイルを10レベルに仕上げる場合は、根元付近を8レベル、中間を目標の明るさである10レベル、毛先を12レベルというふうに仕上げるとヘアスタイル全体で見ると均一な10レベルに仕上がること」及び「One Make に仕上げるためにしっかりと薬剤を塗り分けること」

9 引用文献5の記載

引用文献5(特に、本文6-30行目参照)には、以下の事項が記載されている。

(1)「一方で、体温の影響を受けやすい髪の根元1センチ部分(頭皮の近く)は、
毛先よりも明るくなりやすい特徴もあります
美容室では根元と毛先の塗り分けを行って、逆プリン状態にならないように染めていきます…」
(2)「こういったリスクへの対処法として、私たち美容師はバージンヘアに対して
・根元部分はトーンを抑えたカラー剤でカラーリングする
・毛先部分はトーンを明るくする力の強いカラー剤を使う
といった塗り分けを行って、均一になるようにカラーリングしていきます…」

10 引用文献5に記載された事項

上記9からみて、引用文献5には、以下の事項が記載されている。

「体温の影響を受けやすい髪の根元1センチ部分(頭皮の近く)は、毛先よりも明るくなりやすいこと」、「美容室では根元と毛先の塗り分けを行うこと」及び「美容師はバージンヘアに対して、根元部分はトーンを抑えたカラー剤でカラーリングし、毛先部分はトーンを明るくする力の強いカラー剤を使うといった塗り分けを行って、均一になるようにカラーリングすること」

第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明1-1とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。

ア 引用発明1-1の「インターネット等の公衆通信網1を通じて通信可能に接続されたサーバコンピュータ2と、タブレット端末3A、デスクトップパソコン3B又はノートパソコン3C等よりなる1又は複数のクライアント端末3」は、本願発明1の「少なくとも1のコンピュータ装置」に相当する。

イ 引用発明1-1の「染色材料の選択システム」は、ヘアカラーリングのための染色材料を選択することから、本願発明1の「ヘアカラーリング剤特定システム」に相当する。

ウ 引用発明1-1の「染色材料のデータベースDB2」は、「染色材料の種別と」「染色後のヘアカラーのRGBデータとが関連付けて記憶され」ていることから、本願発明1の「ヘアカラーリング剤記憶手段」と、「染髪後の色味及び/又は明るさと関連付けて」、染髪するためのヘアカラーリング剤を記憶する「ヘアカラーリング剤記憶手段」である点で共通する。

エ 引用発明1-1の「薬剤を選択する手段」は、「希望色に基づいて、ヘアサロンのユーザが使用可能な染色材料(薬剤)の中から、希望色に染め上げるのに必要となる非混合材料又は混合材料を選択」することから、本願発明1の「ヘアカラーリング剤特定手段」と、「入力された染髪後の色味及び/又は明るさに応じて」、染髪するためのヘアカラーリング剤を特定する「ヘアカラーリング剤特定手段」である点で共通する。

オ 引用発明1-1の「毛髪全体が新生部やほぼ均一な既染部である場合に、希望色に染め上がるようにヘアカラーリングすることを可能とする」ことに関し、「毛髪全体」は、本願発明1の「毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部」に対応し、「新生部やほぼ均一な既染部である場合」は、本願発明1の「染髪前の色味及び明るさが同じ色味及び明るさである場合」に対応し、「希望色に染め上がるようにヘアカラーリングすること」は、本願発明1の「染髪後の色味及び明るさが同じ色味及び明るさとなるようにヘアカラーリングすること」に対応することから、引用発明1-1の「毛髪全体が新生部やほぼ均一な既染部である場合に、希望色に染め上がるようにヘアカラーリングすることを可能とする」ことは、本願発明1の「毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部について、染髪前の色味及び明るさが同じ色味及び明るさである場合に、染髪後の色味及び明るさが同じ色味及び明るさとなるようにヘアカラーリングすることを可能とする」ことに相当する。

カ そうすると、両者は以下の点で一致し、相違するものと認められる。

(一致点)

「少なくとも1のコンピュータ装置を備えるヘアカラーリング剤特定システムであって、
染髪後の色味及び/又は明るさと関連付けて、染髪するためのヘアカラーリング剤を記憶するヘアカラーリング剤記憶手段と、
入力された染髪後の色味及び/又は明るさに応じて、染髪するためのヘアカラーリング剤を特定するヘアカラーリング剤特定手段と
を備え、
毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部について、染髪前の色味及び明るさが同じ色味及び明るさである場合に、染髪後の色味及び明るさが同じ色味及び明るさとなるようにヘアカラーリングすることを可能とする、
ヘアカラーリング剤特定システム。」

(相違点1)

ヘアカラーリング剤に関し、本願発明1は、「毛髪の頭皮近傍の部分を染髪するための第1ヘアカラーリング剤」と「毛髪の頭皮近傍以外の部分を染髪するための第2ヘアカラーリング剤」であり、「第2ヘアカラーリング剤が、」「第1ヘアカラーリング剤よりも、明るい色に染色が可能」であるのに対し、引用発明1-1は、その点が明らかでない点。

(2)判断

以下、相違点1について検討する。

ア 上記「第4 4」に記載したとおり、引用文献2には、毛髪の状態を把握し薬剤調合をすすめ、ヘアカラーを速く均一に染めること、根本、中間部、毛先と、三段階に分けて薬剤を調合すること、薬剤は、根本は8-9レベル、中間部は9-10レベルにクリア剤を10%ミックス、毛先は9-10レベルにクリア剤を10%ミックスとすること、新生毛(根本)、中間部、毛先と三段階を順に一気に塗布することが記載されている。

上記「第4 6」に記載したとおり、引用文献3には、新生部分の根元、既染部分の中間、さらに毛先と部位によって髪の状態は異なることが記載されている。

上記「第4 8」に記載したとおり、引用文献4には、根元~毛先まで同明度で塗布すると、根元が明るく毛先になるにつれて暗く感じること、ロングスタイルを10レベルに仕上げる場合は、根元付近を8レベル、中間を目標の明るさである10レベル、毛先を12レベルというふうに仕上げるとヘアスタイル全体で見ると均一な10レベルに仕上がること、One Make に仕上げるためにしっかりと薬剤を塗り分けることが記載されている。

上記「第4 10」に記載したとおり、引用文献5には、体温の影響を受けやすい髪の根元1センチ部分(頭皮の近く)は、毛先よりも明るくなりやすいこと、美容室では根元と毛先の塗り分けを行うこと、美容師はバージンヘアに対して、根元部分はトーンを抑えたカラー剤でカラーリングし、毛先部分はトーンを明るくする力の強いカラー剤を使うといった塗り分けを行って、均一になるようにカラーリングすることが記載されている。

そうすると、引用文献2~5に示されるように、ヘアカラーリングを行うに際して、希望のヘアカラーを全体で均一に行うために、根元と毛先とで、塗布する薬剤を異ならせ、毛先に塗布する薬剤のほうが、根元に塗布する薬剤よりも、明るい色に仕上がる薬剤とすることは、本願の優先日前に周知の技術であったといえる。

イ 引用文献1に、薬剤を選択する手段において、アンダーカラーを設定する際、染色対象者の毛髪に対する塗布部位の設定及び塗布部位の長さと明度を設定する点が記載されているように(上記「第4 1(9)」)、引用発明1-1は、毛髪を希望通りの色に染色するために、毛髪に対する塗布部位の違いを考慮するものである上、更に、希望のヘアカラーを全体で均一に行うといった課題も当然内在するものである。そして、引用発明1-1と上記周知の技術とは、ともにヘアカラーに関する点で技術分野が関連し、毛髪を希望通りの色に染色するという点で課題、及び作用・機能が共通するから、引用発明1-1に上記周知の技術を適用する動機は十分に認められる。

そうすると、引用発明1-1において、希望のヘアカラーを全体で均一に行い、毛髪を希望通りの色に染色するために、根元と毛先とで、塗布する薬剤を異ならせ、毛先に塗布する薬剤の方が、根元に塗布する薬剤よりも、明るい色に仕上がる薬剤とすること、すなわち、相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

また、顧客の要望に応じたヘアカラーリングを行うことができるという本願発明1の効果をみても、引用発明1-1及び引用文献2~5に記載された事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別なものとは認められない。

よって、本願発明1は、引用発明1-1及び引用文献2~5に記載された周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 請求人は、令和6年7月1日付けの意見書(C-1)(ア)(イ)において、概略、次の(ア)~(ウ)のような主張をしている。

(ア)引用文献1の課題と引用文献2~5の課題は、共通するものではない。

(イ)引用文献1の作用・機能と引用文献2~5の作用・機能は、共通するものでない。

(ウ)引用文献1に記載の発明は、染髪前の色味及び明るさが同じ色味及び明るさ(アンダーカラー)である場合に、1種類のカラーレシピのみで希望色を実現することを前提とするものであり、アンダーカラーが同じ場合でも、頭皮近傍部分と頭皮近傍以外の部分にわけて染色するという技術的思想を採用する動機付けはない。

しかしながら、上記「イ」に記載したとおり、引用発明1-1は、希望のヘアカラーを全体で均一に行うといった課題も当然内在するものである。そして、引用発明1-1と引用文献2~5に記載された周知の技術とは、ともにヘアカラーに関する点で技術分野が関連し、毛髪を希望通りの色に染色するという点で課題、及び作用・機能が共通するものである。また、引用発明1-1は、毛髪を希望通りの色に染色するために、毛髪に対する塗布部位の違いを考慮し、塗布部位に応じて色を塗り分けたものであるから、1種類のカラーレシピのみで希望色を実現することを前提とするものではない。そして、引用発明1-1において、希望のヘアカラーを全体で均一に行い、毛髪を希望通りの色に染色することが最も優先されるべきことであり、用意する薬剤の数は、希望のヘアカラーを全体で均一に行い、毛髪を希望通りの色に染色すること以上に優先されるべき事情とも解されず、必要に応じて適宜設定すべき設計事項にすぎない。したがって、引用発明1-1に引用文献2~5に記載された周知の技術を適用することに格別の困難性を有しないといえる。

エ 請求人は、上記意見書(C-1)(ウ)において、概略、次の(ア)~(ウ)のような主張もしている。

(ア)引用文献1に記載の発明において、染髪前において、毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の部分の色味及び明るさ(アンダーカラー)が同じであり、かつ、染髪後において、毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の部分の色味及び明るさ(希望色)が同じとなるようにしつつ、かつ、第2ヘアカラーリング剤が、第1ヘアカラーリング剤よりも、明るい色に染色が可能なものであるものとした場合、アンダーカラーが同じ部位を、2つに分割することとなる。カラーレシピは、毛髪の部位ごとに調整されるため、カラーレシピの種類は、少なくとも2つ以上となる。つまり、引用文献1に記載の発明において、カラーレシピの種類が、増加する。

(イ)引用文献1に記載の発明は、染色材料の調整作業をより簡便に迅速に行い、ユーザが顧客に対し、迅速に染髪作業を開始できるようにすることを課題としており、染色材料を調整する手間を軽減することをより重視している。

(ウ)よって、引用文献1に記載の発明において、本願請求項1に係る発明の構成を適用するには阻害要因がある。

しかしながら、上記「ウ」に記載したとおり、引用発明1-1は、毛髪を希望通りの色に染色するために、毛髪に対する塗布部位の違いを考慮し、塗布部位に応じて色を塗り分けたものであるから、1種類のカラーレシピのみで希望色を実現することを前提とするものではない。そして、引用発明1-1において、希望のヘアカラーを全体で均一に行い、毛髪を希望通りの色に染色することが最も優先されるべきことであり、用意する薬剤の数は、希望のヘアカラーを全体で均一に行い、毛髪を希望通りの色に染色すること以上に優先されるべき事情とも解されず、必要に応じて適宜設定すべき設計事項にすぎない。したがって、引用発明1-1に引用文献2~5に記載された周知の技術を適用することに格別の困難性を有しないといえる。

オ また、請求人は、上記意見書(C-1)(エ)において、概略、次の(ア)~(ウ)のような主張もしている。

(ア)引用文献1に記載の発明において、アンダーカラーが同じであり、かつ、希望色が同じとなるようにしつつ、かつ、第2ヘアカラーリング剤が、第1ヘアカラーリング剤よりも、明るい色に染色が可能なものであることを実現するためには、毛髪の頭皮近傍の部分に塗布するためのデータベースと、毛髪の頭皮近傍部分以外の部分に塗布するためのデータベースとの、異なる2種類のデータベースDBが必要となる。

(イ)しかし、引用文献1には、異なる2種類のDBを設けることについての記載も示唆もなく、異なる2種類のDBを設ける動機付けもない。

(ウ)よって、引用文献1において、「第2ヘアカラーリング剤が、第1ヘアカラーリング剤よりも、明るい色に染色が可能なもの」であること、及び「毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部について、染髪前の色味及び明るさが同じ色味及び明るさであり、かつ、毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部について、染髪後の色味及び明るさが同じ色味及び明るさである」という構成を採用する動機づけはない。

しかしながら、上記「第4 1(6)」及び「(7)」に記載したとおり、引用文献1には、おしゃれ染めの場合のデータベースDB2以外に、白髪染めのデータベースも含まれることも記載されており、条件に合わせて複数のデータベースを用意することが記載されている。してみると、引用発明1-1において、希望のヘアカラーを全体で均一に行い、毛髪を希望通りの色に染色することが最も優先されるべきことであり、用意するデータベースの数は、希望のヘアカラーを全体で均一に行い、毛髪を希望通りの色に染色すること以上に優先されるべき事情とも解されず、必要に応じて適宜設定すべき設計事項にすぎない。したがって、引用発明1-1において、引用発明1-1に引用文献2~5に記載された周知の技術を適用することに格別の困難性を有しないといえる。

また、上記「(1)カ」に記載したとおり、「毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部について、染髪前の色味及び明るさが同じ色味及び明るさである場合に、染髪後の色味及び明るさが同じ色味及び明るさとなるようにヘアカラーリングすることを可能とする」ことについては、本願発明1と引用発明1-1との一致点である。また、「第2ヘアカラーリング剤が、」「第1ヘアカラーリング剤よりも、明るい色に染色が可能」であることについては、相違点1として示し、上記「イ」~「エ」に記載したとおり、引用発明1-1に引用文献2~5に記載された周知の技術を適用することに格別の困難性は有しないといえる。

カ よって、請求人の上記意見書における主張は採用できない。

2 本願発明5について

(1)対比

本願発明5と引用発明1-2とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。

ア 引用発明1-2の「インターネット等の公衆通信網1を通じて通信可能に接続されたサーバコンピュータ2と、タブレット端末3A、デスクトップパソコン3B又はノートパソコン3C等よりなる1又は複数のクライアント端末3」は、本願発明5の「少なくとも1のコンピュータ装置」に相当する。

イ 引用発明1-2の「染色材料の選定システムが行う選定方法」は、ヘアカラーリングのための染色材料を選択するシステムが選定を行うことから、本願発明5の「ヘアカラーリング剤特定システムにおいて実行されるヘアカラーリング剤特定方法」に相当する。

ウ 引用発明1-2の「染色材料のデータベースDB2を記憶部25に記憶させる処理」は、「染色材料の種別と」「染色後のヘアカラーのRGBデータとが関連付けて記憶された染色材料のデータベースDB2を記憶部25に記憶させ」ていることから、本願発明5の「ヘアカラーリング剤記憶ステップ」と、「染髪後の色味及び/又は明るさと関連付けて」、染髪するためのヘアカラーリング剤を記憶する「ヘアカラーリング剤記憶ステップ」である点で共通する。

エ 引用発明1-2の「選択した材料の塗布量を算出する処理」は、「希望色に基づいて、ヘアサロンのユーザが使用可能な染色材料(薬剤)の中から、希望色に染め上げるのに必要となる非混合材料又は混合材料を選択」することから、本願発明5の「ヘアカラーリング剤特定ステップ」と、「入力された染髪後の色味及び/又は明るさに応じて」、染髪するためのヘアカラーリング剤を特定する「ヘアカラーリング剤特定ステップ」である点で共通する。

オ 引用発明1-2の「毛髪全体が新生部やほぼ均一な既染部である場合に、希望色に染め上がるようにヘアカラーリングすることを可能とする」ことに関し、「毛髪全体」は、本願発明5の「毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部」に対応し、「新生部やほぼ均一な既染部である場合」は、本願発明5の「染髪前の色味及び明るさが同じ色味及び明るさである場合」に対応し、「希望色に染め上がるようにヘアカラーリングすること」は、本願発明5の「染髪後の色味及び明るさが同じ色味及び明るさとなるようにヘアカラーリングすること」に対応することから、引用発明1-2の「毛髪全体が新生部やほぼ均一な既染部である場合に、希望色に染め上がるようにヘアカラーリングすることを可能とする」ことは、本願発明5の「毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部について、染髪前の色味及び明るさが同じ色味及び明るさである場合に、染髪後の色味及び明るさが同じ色味及び明るさとなるようにヘアカラーリングすることを可能とする」ことに相当する。

カ そうすると、両者は以下の点で一致し、相違するものと認められる。

(一致点)

「少なくとも1のコンピュータ装置を備えるヘアカラーリング剤特定システムにおいて実行されるヘアカラーリング剤特定方法であって、
染髪後の色味及び/又は明るさと関連付けて、染髪するためのヘアカラーリング剤を記憶するヘアカラーリング剤記憶ステップと、
入力された染髪後の色味及び/又は明るさに応じて、染髪するためのヘアカラーリング剤を特定するヘアカラーリング剤特定ステップと
を有し、
毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部について、染髪前の色味及び明るさが同じ色味及び明るさである場合に、染髪後の色味及び明るさが同じ色味及び明るさとなるようにヘアカラーリングすることを可能とする、
ヘアカラーリング剤特定方法。」

(相違点2)

ヘアカラーリング剤に関し、本願発明5は、「毛髪の頭皮近傍の部分を染髪するための第1ヘアカラーリング剤」と「毛髪の頭皮近傍以外の部分を染髪するための第2ヘアカラーリング剤」であり、「第2ヘアカラーリング剤が、」「第1ヘアカラーリング剤よりも、明るい色に染色が可能」であるのに対し、引用発明1-2は、その点が明らかでない点。

(2)判断

以下、相違点2について検討する。

相違点2について検討すると、実質的に本願発明1に関する上記相違点1(上記「1(1)(カ)」)と同じであるから、同様の理由により(上記「1(2)」を参照されたい。)、本願発明5は、引用発明1-2及び引用文献2~5に記載された周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 本願発明6について

(1)対比

本願発明6と引用発明1-3とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。

ア 引用発明1-3「インターネット等の公衆通信網1を通じて通信可能に接続されたサーバコンピュータ2と、タブレット端末3A、デスクトップパソコン3B又はノートパソコン3C等よりなる1又は複数のクライアント端末3」は、本願発明6の「少なくとも1のコンピュータ装置」に相当する。

イ 引用発明1-3の「染色材料の選定システムに用いるコンピュータプログラム」は、ヘアカラーリングのための染色材料を選択するシステムに関する、染色材料を選択するためのコンピュータプログラムであることから、本願発明6の「ヘアカラーリング剤特定システムにおけるコンピュータ装置にて実行されるヘアカラーリング剤特定プログラム」に相当する。

ウ 引用発明1-3の「サーバコンピュータ2」は、本願発明6の「コンピュータ装置」に相当する。

エ 引用発明1-3の「染色材料のデータベースDB2を記憶部25に記憶する手段」は、「染色材料の種別と」「染色後のヘアカラーのRGBデータとが関連付けて記憶された染色材料のデータベースDB2を記憶部25に記憶」させていることから、本願発明6の「ヘアカラーリング剤記憶手段」と、「染髪後の色味及び/又は明るさと関連付けて」、染髪するためのヘアカラーリング剤を記憶する「ヘアカラーリング剤記憶手段」である点で共通する。

オ 引用発明1-3の「薬剤を選択する手段」は、「希望色に基づいて、ヘアサロンのユーザが使用可能な染色材料(薬剤)の中から、希望色に染め上げるのに必要となる非混合材料又は混合材料を選択」することから、本願発明6の「ヘアカラーリング剤特定手段」と、「入力された染髪後の色味及び/又は明るさに応じて」、染髪するためのヘアカラーリング剤を特定する「ヘアカラーリング剤特定手段」である点で共通する。

カ 引用発明1-3の「毛髪全体が新生部やほぼ均一な既染部である場合に、希望色に染め上がるようにヘアカラーリングすることを可能とする」ことに関し、「毛髪全体」は、本願発明6の「毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部」に対応し、「新生部やほぼ均一な既染部である場合」は、本願発明6の「染髪前の色味及び明るさが同じ色味及び明るさである場合」に対応し、「希望色に染め上がるようにヘアカラーリングすること」は、本願発明6の「染髪後の色味及び明るさが同じ色味及び明るさとなるようにヘアカラーリングすること」に対応することから、引用発明1-3の「毛髪全体が新生部やほぼ均一な既染部である場合に、希望色に染め上がるようにヘアカラーリングすることを可能とする」ことは、本願発明6の「毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部について、染髪前の色味及び明るさが同じ色味及び明るさである場合に、染髪後の色味及び明るさが同じ色味及び明るさとなるようにヘアカラーリングすることを可能とする」ことに相当する。

キ そうすると、両者は以下の点で一致し、相違するものと認められる。

(一致点)

「少なくとも1のコンピュータ装置を備えるヘアカラーリング剤特定システムにおけるコンピュータ装置にて実行されるヘアカラーリング剤特定プログラムであって、
コンピュータ装置を、
染髪後の色味及び/又は明るさと関連付けて、染髪するためのヘアカラーリング剤を記憶するヘアカラーリング剤記憶手段と、
入力された染髪後の色味及び/又は明るさに応じて、染髪するためのヘアカラーリング剤を特定するヘアカラーリング剤特定手段
として機能させ、
毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部について、染髪前の色味及び明るさが同じ色味及び明るさである場合に、染髪後の色味及び明るさが同じ色味及び明るさとなるようにヘアカラーリングすることを可能とする、
ヘアカラーリング剤特定プログラム。」

(相違点3)

ヘアカラーリング剤に関し、本願発明6は、「毛髪の頭皮近傍の部分を染髪するための第1ヘアカラーリング剤」と「毛髪の頭皮近傍以外の部分を染髪するための第2ヘアカラーリング剤」であり、「第2ヘアカラーリング剤が、」「第1ヘアカラーリング剤よりも、明るい色に染色が可能」であるのに対し、引用発明1-3は、その点が明らかでない点。

(2)判断

以下、相違点3について検討する。

相違点3について検討すると、実質的に本願発明1に関する上記相違点1(上記「1(1)(カ)」)と同じであるから、同様の理由により(上記「1(2)」を参照されたい。)、本願発明5は、引用発明1-3及び引用文献2~5に記載された周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 小括

したがって、本願発明1は、引用発明1-1及び引用文献2~5に記載された周知の技術に基いて、本願発明5は、引用発明1-2及び引用文献2~5に記載された周知の技術に基いて、また、本願発明6は、引用発明1-3及び引用文献2~5に記載された周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明1は、引用発明1-1及び引用文献2~5に記載された周知の技術に基いて、本願発明5は、引用発明1-2及び引用文献2~5に記載された周知の技術に基いて、また、本願発明6は、引用発明1-3及び引用文献2~5に記載された周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、いずれも、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-003279

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決3件(株式会社ソフトブレイン)
  • 2023-002212拒絶査定不服審判 / 2025-01-15 / 請求不成立染髪方法及びヘアカラーリング剤特定システム
    同じ当事者: 株式会社ソフトブレイン
  • 2022-020654拒絶査定不服審判 / 2023-08-16 / 原査定取消(特許/登録すべき)コンピュータ装置、プログラム及びシステム
    同じ当事者: 株式会社ソフトブレイン
  • 2021-016871拒絶査定不服審判 / 2023-07-19 / 請求不成立パッチテストキットのネット申込システム
    同じ当事者: 株式会社ソフトブレイン
同じ論点・分野の審決(審決分類)253件(121・A45D)
  • 2025-004288拒絶査定不服審判 / 2026-08-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)シゴキ部材、流動性化粧料用容器及びその製造方法
    共通の審決分類: 121・A45D
  • 2024-016354拒絶査定不服審判 / 2026-07-22 / 原査定取消(特許/登録すべき)電気パーソナルケア装置
    共通の審決分類: 121・A45D
  • 2024-019288拒絶査定不服審判 / 2026-07-22 / 原査定取消(特許/登録すべき)美容マスク
    共通の審決分類: 121・A45D
  • 2024-020221拒絶査定不服審判 / 2026-07-15 / 原査定取消(特許/登録すべき)芳香部材
    共通の審決分類: 121・A45D
  • 2024-009175拒絶査定不服審判 / 2026-06-29 / 原査定取消(特許/登録すべき)カラーチャートおよびそのようなカラーチャートの製造のための方法
    共通の審決分類: 121・A45D

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存