2023-002212
染髪方法及びヘアカラーリング剤特定システム
- 審判番号
- 2023-002212
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-018271外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年02月08日
- 審決日
- 2025年01月15日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ソフトブレイン
- 【請求人代理人】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (A45D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
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本願は、令和3年12月8日(優先権主張 令和2年12月28日)に出願された特願2021-199678号の一部を、令和4年2月8日に新たな特許出願としたものであり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、令和6年10月18日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
(本願発明)
「【請求項1】少なくとも1のコンピュータ装置を備えるヘアカラーリング剤特定システムにおいて、記憶手段において記憶された、染髪後の色味及び/又は明るさと、毛髪の頭皮近傍の部分に塗布する第1ヘアカラーリング剤、及び、毛髪の頭皮近傍以外の部分に塗布する第2ヘアカラーリング剤との対応関係に基いて、入力された染髪後の色味及び/又は明るさに応じて、第1ヘアカラーリング剤、及び、第2ヘアカラーリング剤を特定するヘアカラーリング剤特定ステップと、毛髪の頭皮近傍の部分に、特定された第1ヘアカラーリング剤を塗布する第1塗布ステップと、第1塗布ステップを実施した後すぐに、所定の時間をおくことなく、毛髪の頭皮近傍以外の部分に、特定された第2ヘアカラーリング剤を塗布する第2塗布ステップとを有し、ヘアカラーリング剤特定ステップにて特定される第2ヘアカラーリング剤が、ヘアカラーリング剤特定ステップにて特定される第1ヘアカラーリング剤よりも、明るい色に染色が可能なものであることにより、毛髪の頭皮近傍部分の染髪前の色味及び明るさが、毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部の染髪前の色味及び明るさと同じである場合に、特定された第1ヘアカラーリング剤及び第2ヘアカラーリング剤で、第1塗布ステップ及び第2塗布ステップを含むヘアカラーリングをした結果、前記毛髪の頭皮近傍部分と前記毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部が、同じ色味及び明るさに染髪される、ヘアカラーリング方法。」
第3 拒絶の理由
当審にて、令和6年8月19日付けで通知した拒絶理由は、概略、次のとおりである。すなわち、補正前の請求項1~4に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~3に記載された事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.ヘアカラーを速く均一に染める方法,[online],2016年06月09日,[検索日2021.08.19],インターネット<URL:https://www.hair-salon-wave.com/blog/20147.html>
引用文献2.特開2016-212726号公報
引用文献3.Q_黒髪に初めてのヘアカラーは染まりにくいですか?初めてのカラーで気をつけるポイントは?,[online],2020年11月30日,[検索日 2024.04.05],インターネット<URL:https://kord.tokyo/diary/q_-3>
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1(特に、「ロングヘアは3段階にわけて薬剤でトーン調整」参照)には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。
(1)「速くキレイに(ワンタッチ)で染める手順時間差でヘアカラーをコントロールするのではなく、薬剤の調合でコントロールする方法です。時間差でヘアカラーをコントロールすると、仕事の合間に何度もテストで抜けないといけない状態に。薬剤の調合することでお客さまから抜けることなく、1度のヘアカラー施術で流すことも可能でスピードアップにつながります。」
(2)「薬剤の調合簡単に説明すると 1.根本 2.中間部 3..毛先の部分と、三段階に分けて薬剤を調合します。(例:10レベル全体)1.根本は8-9レベルの薬剤調合 2.9-10レベルにクリア剤を10%ミックス 3.9-10レベルにクリア剤を10%ミックス毛先は(既存毛の退色がある)にはクリア剤をミックスすることで暗くなるのを防ぎます。*ダメージが強いため新生毛や中間部と毛先と髪の状態や、アンダーの状態も変化するため。毛髪の状態を把握し薬剤調合をすすめ、ヘアカラーを速く均一に染める方法を行います。銀座カロンさんの「西海 洋」を参考にしました。」
(3)「根本・中間部・毛先と一気に染め上げます新生毛・中間部(既存部)・毛先(残留ティント)と3段階を順に一気に塗布します。3段階のトーンを一度(ワンタッチ)の薬剤の種類を変えて染める施術です。そうすることで均一にキレイに染め上がります。簡単に説明すると 1.根本 2.中間部 3..毛先の部分と、三段階に分けて薬剤を調合します。(例:10レベル全体)1.根本は8-9レベルの薬剤調合 2.中間部は9-10レベルにクリア剤を10%ミックス 3.9-10レベルにクリア剤を10%ミックス毛先は(既存毛の退色がある)にはクリア剤をミックスすることで暗くなるのを防ぎます。*ダメージが強い」
(4)「ポイントメーカーのヘアカラー剤は15分-20分が発色がよくなるよう開発されています。従来のヘアカラーの染毛技術ですと時間もかかり、ヘアカラー剤の発色も悪くムラもでやすくなります。速く均一に染める方法はヘアカラー剤を調合しコントロールし、一気に染めることで均一にキレイに染めることが可能です。また、アンダー部分の髪の状態と希望の色出すために、薬剤の調合(補色)を計算することも大切です。根元・中間・毛先とロングヘアなどは、毛髪診断の時に色を予想し、目的の色が出るようにしましょう。」
(5)「■ヘアカラーの詳細説明新生毛・・・水分や油分が豊富で傷みが少なく、色の発色が早く鮮やかさが出る部位です。色も暗いので薬剤をためず一番にまず染めていきます。中間部・・・既存部のアンダーは明るく発色しているので調整します。全体のレベルに合わせ薬剤を塗布し2番に染めていきます。毛先・・・残留ティントがあり傷みも出ている部位ですが、発色が時間がすすむにつれ暗くなる傾向があります。クリア剤を毛先につけるか薬剤と混ぜて調整を図ります。最後に塗布します。*一部に根本に近い部位で体温の熱によって発色がよいとされていますが、間違った考えで水分や油分が健康に保たれているため発色が早いとされています。」
(6)上記(3)の記載から、新生毛は根本と同一の部位を指す用語として使用されていることが理解できる。
2 引用発明
上記1(1)~(6)の記載を総合すると、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「毛髪の状態を把握して薬剤調合をすすめ、根本、中間部、毛先と三段階に分けて薬剤を調合し、新生毛(根本)、中間部(既存部)、毛先(残留ティント)と三段階を順に一気に塗布し、薬剤は、根本は8-9レベル、中間部は9-10レベルにクリア剤を10%ミックス、毛先は9-10レベルにクリア剤を10%ミックスとする、ヘアカラーを速く均一に染める方法。」
3 引用文献2の記載
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】本発明は、毛髪を希望通りに染色するための染色材料の選定システム、選定方法、及びそのシステムに用いるコンピュータプログラムに関するものである。【0002】美容室又は理髪店(以下、「ヘアサロン」と総称する。)において髪染めを行う場合、多彩なヘアカラーを顧客に提供するため、サロン店員が複数の染色材料を混合して所望色の混合材料を作製し、作製した混合材料で染色を行う場合がある。しかし、比較的ベテランのサロン店員でも、所望色の混合材料が得られる色の組み合わせ(レシピ)をそれほど多くは把握していない。このため、混合材料を用いた染色を顧客に提案する場合に、ワンパターンの提案になることがあり、多彩な嗜好に沿った提案を行うのが困難であった。」
(2)「【0006】本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、希望色を実現する染色材料をユーザに迅速に提示することができる染色材料の選定システム等を提供することを目的とする。」
(3)「【0014】(6) 本発明の選定方法は、本発明の選定システムが行う上述の処理を方法発明として捉えた発明である。従って、本発明の選定方法は、本発明の選定システムと同様の作用効果を奏する。(7) 本発明のコンピュータプログラムは、本発明の選定システムが行う上述の処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。従って、本発明のコンピュータプログラムは、本発明の選定システムと同様の作用効果を奏する。」
(4)「【0017】以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。〔システムの全体構成〕図1は、本発明の実施形態に係る染色材料の選定システムの全体構成図である。図1に示すように、本実施形態の選定システムは、インターネット等の公衆通信網1を通じて通信可能に接続されたサーバコンピュータ2(以下、単に「サーバ2」という場合がある。)と、1又は複数のクライアント端末3とを備えている。」
(5)「【0019】クライアント端末3は、ヘアサロンに収容されたタブレット端末3A、デスクトップパソコン3B又はノートパソコン3C等よりなる。これらのクライアント端末3は、無線又は有線LANを通じて公衆通信網1と通信可能に繋がっている。従って、クライアント端末3のユーザは、所定のURLを入力してサーバ2のアプリケーションにアクセスし、サーバ2の運営者から通知されたID番号とパスワードを入力することにより、当該アプリケーションを利用した所定のシミュレーションサービスを受けることができる。」
(6)「【0025】〔染色材料のデータベース〕図4は、染色材料のデータベースDB2(おしゃれ染めの場合)の構造図である。図4に示すように、染色材料のデータベースDB2は、ヘアサロンのユーザが使用可能な染色材料の種別が行方向に並び、毛髪の下地色(アンダーカラー)が列方向に並ぶデータ構造になっている。本実施形態では、毛髪のアンダーカラーとして、染色前の毛髪の「明度レベル」が採用されている。【0026】行と列が交差する1つのデータボックスに含まれる数値は、当該列で特定される明度レベルの毛髪を当該行で特定される染色材料により染色した場合の、染色後のヘアカラーのRGB空間における座標データ(以下、「RGBデータ」という。)である。なお、図4に示すデータベースDB2では、図示を簡略化するため、混合色データ列Ri(i=1,2,……n)に対応するデータボックスのRGBデータの数値が省略されている。」
(7)「【0041】薬剤選択処理とは、染色対象者の毛髪のアンダーカラーと希望色に基づいて、ヘアサロンのユーザが使用可能な染色材料(薬剤)の中から、希望色に染め上げるのに必要となる非混合材料又は混合材料を選択し、選択した材料の塗布量を算出する処理のことをいう。図6に示すように、制御部21の薬剤選択処理には、アンダーカラーの設定処理(ステップST11)と希望色の設定処理(ステップST12)が含まれる。これらの設定処理は、クライアント端末3から受信した設定情報に基づいて行われる。」
(8)「【0042】アンダーカラーの設定処理(ステップST11)には、染色対象者の毛髪に対する塗布部位の設定、おしゃれ染め又は白髪染めの染め方法の設定、塗布方法の設定、及び塗布部位の長さと明度の設定などが含まれる。希望色の設定処理(ステップST12)は、染色対象者が希望する髪色をHSV値により設定する処理である。本実施形態では、色調で16段階、彩度で10段階、明度で5段階ごとに希望色が指定される。」
(9)上記(7)の記載から、染色材料の選択システムは、薬剤選択処理を行うための、薬剤を選択する手段を備えていると理解できる。
4 引用文献2に記載された事項
上記3からみて、引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「少なくとも1つのコンピュータ装置を備える染色材料の選定システムにおいて、染色材料の種別と毛髪の下地色(アンダーカラー)と染色後のヘアカラーのRGBデータとが関連付けて記憶されたデータベースDB2を有し、染色対象者の毛髪のアンダーカラーと希望色に基づいて、ヘアサロンのユーザが使用可能な染色材料(薬剤)の中から、希望色に染め上げるのに必要となる非混合材料又は混合材料を選択し、選択した材料の塗布量を算出する処理(薬剤選択処理)を行うこと」
5 引用文献3の記載
引用文献3(特に、本文6-30行目参照)には、以下の事項が記載されている。
(1)「一方で、体温の影響を受けやすい髪の根元1センチ部分(頭皮の近く)は、毛先よりも明るくなりやすい特徴もあります美容室では根元と毛先の塗り分けを行って、逆プリン状態にならないように染めていきます…」
(2)「こういったリスクへの対処法として、私たち美容師はバージンヘアに対して・根元部分はトーンを抑えたカラー剤でカラーリングする・毛先部分はトーンを明るくする力の強いカラー剤を使うといった塗り分けを行って、均一になるようにカラーリングしていきます…」
6 引用文献3に記載された事項
上記5からみて、引用文献3には、以下の事項が記載されている。
「体温の影響を受けやすい髪の根元1センチ部分(頭皮の近く)は、毛先よりも明るくなりやすいこと」、「美容室では根元と毛先の塗り分けを行うこと」及び「美容師はバージンヘアに対して、根元部分はトーンを抑えたカラー剤でカラーリングし、毛先部分はトーンを明るくする力の強いカラー剤を使うといった塗り分けを行って、均一になるようにカラーリングすること」
第5 対比
本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
1 引用発明において、染髪後の色味や明るさが顧客の希望する色味や明るさになるように塗布する薬剤を調合することが明らかであることを踏まえると、引用発明の「毛髪の状態を把握して薬剤調合をすすめ、根本、中間部、毛先と三段階に分けて薬剤を調合」することは、染髪後の色味や明るさが顧客の希望どおりになるように、根本に塗布する薬剤と根本以外の部分に塗布する薬剤とを分けて特定すると解釈することができるので、その意味において、本願発明の「ヘアカラーリング剤特定ステップ」と、「染髪後の色味及び/又は明るさと、毛髪の頭皮近傍の部分に塗布する第1ヘアカラーリング剤、及び、毛髪の頭皮近傍以外の部分に塗布する第2ヘアカラーリング剤との対応関係に基いて、」「染髪後の色味及び/又は明るさに応じて、第1ヘアカラーリング剤、及び、第2ヘアカラーリング剤を特定する」点で共通する。
2 引用発明の「新生毛(根本)、中間部(既存部)、毛先(残留ティント)と三段階を順に一気に塗布」することは、新生毛(根本)に薬剤を塗布することと、中間部(既存部)(根本以外の部分)に薬剤を塗布することを、順に、かつ、一気に行うことから、本願発明の「毛髪の頭皮近傍の部分に、特定された第1ヘアカラーリング剤を塗布する第1塗布ステップと、第1塗布ステップを実施した後すぐに、所定の時間をおくことなく、毛髪の頭皮近傍以外の部分に、特定された第2ヘアカラーリング剤を塗布する第2塗布ステップとを有」することに相当する。
3 引用発明の「薬剤は、根本は8-9レベル、中間部は9-10レベルにクリア剤を10%ミックス、毛先は9-10レベルにクリア剤を10%ミックスとする 」ことは、レベルが高いほうが明るい色に染色できる薬剤であることから、本願発明の「ヘアカラーリング剤特定ステップにて特定される第2ヘアカラーリング剤が、ヘアカラーリング剤特定ステップにて特定される第1ヘアカラーリング剤よりも、明るい色に染色が可能なものであること」に相当する。
4 上記1~3を総合すると、引用発明の「ヘアカラーを速く均一に染める方法」は、本願発明の「特定された第1ヘアカラーリング剤及び第2ヘアカラーリング剤で、第1塗布ステップ及び第2塗布ステップを含むヘアカラーリングをした結果、前記毛髪の頭皮近傍部分と前記毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部が、同じ色味及び明るさに染髪される、ヘアカラーリング方法」に相当する。
5 そうすると、両者は以下の点で一致し、相違するものと認められる。
(一致点)
「染髪後の色味及び/又は明るさと、毛髪の頭皮近傍の部分に塗布する第1ヘアカラーリング剤、及び、毛髪の頭皮近傍以外の部分に塗布する第2ヘアカラーリング剤との対応関係に基いて、染髪後の色味及び/又は明るさに応じて、第1ヘアカラーリング剤、及び、第2ヘアカラーリング剤を特定するヘアカラーリング剤特定ステップと、毛髪の頭皮近傍の部分に、特定された第1ヘアカラーリング剤を塗布する第1塗布ステップと、第1塗布ステップを実施した後すぐに、所定の時間をおくことなく、毛髪の頭皮近傍以外の部分に、特定された第2ヘアカラーリング剤を塗布する第2塗布ステップとを有し、ヘアカラーリング剤特定ステップにて特定される第2ヘアカラーリング剤が、ヘアカラーリング剤特定ステップにて特定される第1ヘアカラーリング剤よりも、明るい色に染色が可能なものであることにより、特定された第1ヘアカラーリング剤及び第2ヘアカラーリング剤で、第1塗布ステップ及び第2塗布ステップを含むヘアカラーリングをした結果、前記毛髪の頭皮近傍部分と前記毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部が、同じ色味及び明るさに染髪される、ヘアカラーリング方法。」
(相違点1)
本願発明は、ヘアカラーリング剤特定ステップが、「少なくとも1のコンピュータ装置を備えるヘアカラーリング剤特定システム」を用いており、「記憶手段において記憶された」染髪後の色味及び/又は明るさと、毛髪の頭皮近傍の部分に塗布する第1ヘアカラーリング剤、及び、毛髪の頭皮近傍以外の部分に塗布する第2ヘアカラーリング剤との対応関係に基いて、「入力された」染髪後の色味及び/又は明るさに応じて、第1ヘアカラーリング剤、及び、第2ヘアカラーリング剤を特定するのに対し、引用発明は、薬剤を特定するためのシステムを用いていない点。
(相違点2)
毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部が、同じ色味及び明るさに染髪されることについて、本願発明は、「毛髪の頭皮近傍部分の染髪前の色味及び明るさが、毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部の染髪前の色味及び明るさと同じである場合」であるのに対し、引用発明は、新生毛(根本)、中間部(既存部)、毛先(残留ティント)を染めるものであるが、毛髪の頭皮近傍部分と毛髪の頭皮近傍以外の少なくとも一部の染髪前の色味及び明るさが、同じ色味及び明るさであるか明らかでない点。
第6 判断
以下、上記各相違点について検討する。
1 相違点1について
(1)上記「第4 4」に記載したとおり、引用文献2には、少なくとも1つのコンピュータ装置を備える染色材料の選定システムにおいて、染色材料の種別と毛髪の下地色(アンダーカラー)と染色後のヘアカラーのRGBデータとが関連付けて記憶されたデータベースDB2を有し、染色対象者の毛髪のアンダーカラーと希望色に基づいて、ヘアサロンのユーザが使用可能な染色材料(薬剤)の中から、希望色に染め上げるのに必要となる非混合材料又は混合材料を選択し、選択した材料の塗布量を算出する処理(薬剤選択処理)を行うことが記載されている。
ここで、引用文献1に、根本、中間部、毛先の部分と、三段階に分けて薬剤を調合する点、毛髪の状態を把握し薬剤調合をすすめ、ヘアカラーを速く均一に染める方法である点が記載されているように(上記「第4 1(2)」)、引用発明は、毛髪を希望通りの色に染色するために、毛髪に対する塗布部位の違いを考慮するものである上、更に、希望のヘアカラーを全体で均一に行うことを課題としているところ、引用文献2には、薬剤を選択する手段において、アンダーカラーを設定する際、染色対象者の毛髪に対する塗布部位の設定及び塗布部位の長さと明度を設定する点が記載されており(上記「第4 3(8)」)、引用文献2に記載された事項にも、毛髪を希望通りの色に染色するために、毛髪に対する塗布部位の違いを考慮し、希望のヘアカラーを全体で均一に行うといった課題が当然内在するものである。
また、引用文献2に、ベテランのサロン店員でも、所望色の混合材料が得られる色の組み合わせ(レシピ)をそれほど多くは把握しておらず、混合材料を用いた染色を顧客に提案する場合に、ワンパターンの提案になることがあり、多彩な嗜好に沿った提案を行うことが困難である点が記載されており(上記「第4 3(1)」)、希望色を実現する染色材料をユーザに迅速に提示するために、染色材料の選定システムを用いることが記載されている(上記「第4 3(2)」)。そして、引用発明においても、多彩な嗜好に沿った提案を行うことが困難となることも想定され得るといえ、ヘアカラーを速く均一に染めるためには、希望色を実現する薬剤を迅速に提示することも必要である上、作業者の経験不足、作業効率等を考慮して、システムの支援を受けるといった手法は、一般的に行われていることと解される。
そして、引用発明と引用文献2に記載された事項とは、ともにヘアカラーに関する点で技術分野が関連し、希望のヘアカラーを全体で均一に行うという点で課題、及び作用・機能が共通するから、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用する動機は十分に認められる。
そうすると、引用発明において引用文献2に記載の事項を適用し、薬剤を特定するために染色材料の選定システムを採用すること、すなわち、相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(2)請求人は、令和6年10月18日付けの意見書(C)(ア)において、「引用文献1と、引用文献2とは、課題の共通性もなく、作用・機能の共通性もありません。」と主張する。
しかしながら、上記(1)に記載したとおり、引用発明は、毛髪を希望通りの色に染色するために、毛髪に対する塗布部位の違いを考慮するものである上、更に、希望のヘアカラーを全体で均一に行うことを課題としており、引用文献2に記載された事項にも、希望のヘアカラーを全体で均一に行うといった課題も当然内在するものである。そして、引用発明と引用文献2に記載された事項とは、ともにヘアカラーに関する点で技術分野が関連し、希望のヘアカラーを全体で均一に行うという点で課題、及び作用・機能が共通するものである。
したがって、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用することに格別の困難性を有しないといえる。
よって、請求人の上記主張は採用することができない。
2 相違点2について
(1)上記「第4 6」に記載したとおり、引用文献3には、体温の影響を受けやすい髪の根元1センチ部分(頭皮の近く)は、毛先よりも明るくなりやすいこと、美容室では根元と毛先の塗り分けを行うこと、美容師はバージンヘアに対して、根元部分はトーンを抑えたカラー剤でカラーリングし、毛先部分はトーンを明るくする力の強いカラー剤を使うといった塗り分けを行って、均一になるようにカラーリングすることが記載されている。
ここで、上記1(1)に記載したとおり、引用発明は、毛髪を希望通りの色に染色するために、毛髪に対する塗布部位の違いを考慮するものである上、更に、希望のヘアカラーを全体で均一に行うことを課題としているところ、引用文献3には、根元と毛先の塗り分けを行い、均一になるようにカラーリングする点が記載されており(上記「第4 5」)、引用文献3に記載された事項も、毛髪を希望通りの色に染色するために、毛髪に対する塗布部位の違いを考慮するものであり、希望のヘアカラーを全体で均一に行うといった課題が当然内在するものである。そして、引用発明と引用文献3に記載の事項とは、ともにヘアカラーに関する点で技術分野が関連し、希望のヘアカラーを全体で均一に行うという点で課題、及び作用・機能が共通するから、引用発明に引用文献3の記載を参照する動機は十分に認められる。
そうすると、引用発明において引用文献3の記載を参照し、新生毛(根本)の部分をさらに、根本1センチ部分(頭皮の近く)とそれ以外の部分とに分けて、薬剤を塗り分けることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、引用文献1において、中間部が染髪された既存部である場合が記載されているが、中間部(既存部)が染髪されていない場合も想定されることは明らかであり、そのような場合に、引用文献3の記載を参照し、染髪されていない毛髪を含む、「根本」及び「中間部」に対し、頭皮の近くである「根本」と、頭皮に近くない「中間部」として分けて、薬剤を塗り分けることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(2)請求人は、令和6年10月18日付けの意見書(C)(イ)において、「さらに、引用文献1には、以下の記載があります。
「一部に根元に近い部位で体温の熱によって発色が良いとされていますが、間違った考えで水分や油分が健康に保たれているため発色が早いとされています。」
さらに、引用文献3には、以下の記載があります。
「体温の影響がある根元1センチだけすごく明るくなってしまう」
つまり、引用文献3に記載された内容は、引用文献1の中において、間違った考えであることが示されています。引用文献1では、根元に近い部位で体温の熱によって発色が良いという引用文献3の考えを積極的に排斥しています。これは、審査基準第III部第2章第2節進歩性の阻害要因の類型の「(iii) 主引用発明がその適用を排斥しており、採用されることがあり得ないと考えられる副引用発明」に該当するものと思われます。そのため、引用文献1において、引用文献3の記載を参照し、水分や油分が健康に保たれている新生毛(根本)の部分を、さらに、体温の影響がある根元1センチと、その他の部分とに分けて、薬剤を塗り分けることには、阻害要因があります。同様に、引用文献1において、引用文献3の記載を参照し、染髪されていない毛髪を含む、「根本」及び「中間部」に対し、体温の影響がある頭皮の近くである「根本」と、頭皮に近くない「中間部」として分けて、薬剤を塗り分けることは、阻害要因があります。」と主張する。
しかしながら、上記「第4 1」に記載したとおり、引用発明は、新生毛(根本)の発色が良いという事象に着目し、新生毛(根本)と中間部とを薬剤の種類を変えて染めるという技術的思想を有するものであり、引用文献3に記載された事項も、髪の根元1センチ部分(頭皮の近く)は、毛先よりも明るくなりやすいという引用発明と同様の事象に着目し、根元と毛先の塗り分けを行うという技術的思想を有するものである。してみると、両者の技術的思想は、毛髪の部位による発色の違いに着目し、毛髪の部位によって薬剤を異ならせるという共通の技術的思想であるといえる。
したがって、引用発明と引用文献3に記載された事項とは、新生毛(根本)の発色が良くなる原因についての解釈の違いは存在するものの、毛髪の部位によって薬剤を異ならせるという技術的思想は共通しており、引用発明において引用文献3に記載された事項を参照することに格別の困難性を有しないといえ、阻害要因があるとまではいえない。
よって、請求人の上記主張は採用することができない。
3 小括
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2~3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2~3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-002212