特許拒絶査定不服審判
2023-002390
レーザを用いるガラス部材の表面仕上げ
- 審判番号
- 2023-002390
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-216173
- 請求日
- 2023年02月13日
- 審決日
- 2024年11月26日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】グッドリッチ コーポレイション
- 【請求人代理人】小林 博通
- 【請求人代理人】富岡 潔
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 小野 久子
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P18 .121-WZ (C03C) / P18 .561-WZ (C03C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-216173「レーザを用いるガラス部材の表面仕上げ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月 5日出願公開、特開2018-104268〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年11月9日(パリ条約による優先権主張 2016年11月10日(US)アメリカ合衆国)の出願であって、出願後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和3年 2月24日付け 拒絶理由通知
同年 9月 2日 意見書、手続補正書の提出
令和4年 1年 4日付け 拒絶理由通知(最後)
同年 7月11日 意見書、手続補正書の提出
同年 9月28日付け 令和4年7月11日付けの手続補正書でした 手続補正についての補正の却下の決定、拒絶 査定
令和5年 2月13日 審判請求書、手続補正書の提出
令和6年 2年26日付け 令和5年2月13日付けの手続補正書でした 手続補正についての補正の却下の決定、拒絶 理由通知(最後)、
同年 8月27日 意見書、手続補正書の提出
第2 令和6年8月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定
1 補正の却下の決定の結論
令和6年8月27日付けの手続補正を却下する。
2 理由
(1)補正の内容
令和6年8月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をするものであって、本件補正前後の特許請求の範囲のうち、請求項1の記載は、次のとおりである。
ア 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「 第1の基板表面とその反対側の第2の基板表面とを備えたガラス基板であって、複数の突起が前記第2の基板表面から延在するとともに、1つ以上の気泡が前記第1の基板表面に存在するガラス基板を提供し、
前記第1の基板表面にレーザを直接照射して、前記ガラス基板の表面を滑らかにし、かつ前記第1の基板表面から前記1つ以上の気泡を除去する、
ことを備え、
前記レーザを直接照射することが、
前記1つ以上の気泡を含む前記第1の基板表面の少なくとも一部を溶融するように、前記第1の基板表面をレーザパルシング照射し、
前記ガラス基板の光学的形状および特性が変化しないようにするために、前記レーザパルシング照射中に前記レーザパルシングの周波数を変えることを含む、方法。」
イ 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の、令和3年9月2日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 第1の基板表面とその反対側の第2の基板表面とを備えたガラス基板であって、複数の突起が前記第2の基板表面から延在するガラス基板を提供し、
前記第1の基板表面にレーザを直接照射して、前記ガラス基板の表面を滑らかにすることであって、
前記第1の基板表面の少なくとも一部を溶融し、
前記第1の基板表面の少なくとも一部を除去することにより、前記ガラス基板の表面を滑らかにすることを含む方法。」
(2)本件補正の適否
ア 補正事項
上記(1)によれば、本件補正は、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「レーザを直接照射」することについて、「レーザパルシング照射」することに限定したうえで、「前記ガラス基板の光学的形状および特性が変化しないようにするために、前記レーザパルシング照射中に前記レーザパルシングの周波数を変えることを含む」との事項を追加する補正(以下、「補正事項」という。)を含むものである。
イ 新規事項の追加の有無について
(ア)願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)に記載の事項について
上記補正事項に関して、当初明細書等には、以下の記載がある。
a「【請求項9】
レーザを当てることは、前記ガラス基板の光学的形状または特性を変えることなく行うことを含む、請求項1に記載の方法。
・・・
【請求項12】
レーザを当てることは、前記レーザをパルシングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
レーザを当てることは、前記レーザパルシングの周波数を変えることを含む、請求項12に記載の方法。」
b「【0007】
レーザを当てることは、ガラス基板の光学的形状または特性を変えることなく、行うことを包含することができる。特定の実施形態では、レーザを当てることは、ガラス基板の表面を溶融することを包含することができる。レーザを当てることは、レーザをパルシングすることを包含することができる。特定の実施形態では、レーザを当てることは、レーザパルシングの周波数を変えることを包含することができる。レーザを当てることは、その表面の欠陥または汚染物を除去及び/または蒸発させることを包含することができる。この方法は、表面の窪みを充填することを包含することができる。特定の実施形態では、レーザを当てることは、その表面から気泡を除去することを包含することができる。
・・・
【0018】
レーザを当てることは、ガラス基板の光学形状または特性を変えることなく、行うことを包含することができる。特定の実施形態では、レーザを当てることは、ガラス基板の表面を溶融することを包含することができる。レーザを当てることは、レーザをパルシングすることを包含することができる。特定の実施形態では、レーザを当てることは、レーザパルシングの周波数を変えることを包含することができる。レーザを当てることは、その表面の欠陥または汚染物を除去及び/または蒸発させることを包含することができる。この方法は、表面の窪みを充填することを包含することができる。特定の実施形態では、レーザを当てることは、その表面から気泡を除去することを包含することができる。」
(イ)判断
a 「ガラス基板の光学的形状および特性が変化しないようにするために」、「レーザパルシングの周波数を変える」ことについて
上記(ア)aによれば、当初明細書等には、「レーザを当てること」が、「ガラス基板の光学的形状または特性を変えることなく行うこと」(請求項9)、「レーザをパルシングすること」(請求項12)、及び「レーザパルシングの周波数を変えること」(請求項13)を含むことは記載されている。しかしながら、請求項9と請求項12は、それぞれ請求項1を引用する請求項であり、請求項13は、請求項12を引用する、すなわち間接的に請求項1を引用する請求項であるから、請求項9の「ガラス基板の光学的形状または特性を変えることなく行うこと」と、請求項12の「レーザをパルシングすること」及び請求項13の「レーザパルシングの周波数を変えること」との関係が記載されているとはいえない。そうすると、「ガラス基板の光学的形状および特性が変化しないようにするために」、「レーザパルシングの周波数を変える」ことを上記記載から理解することはできない。
また、上記(ア)bによれば、当初明細書等には、「レーザを当てること」が、「ガラス基板の光学形状または特性を変えることなく、行う」こと、「レーザをパルシングする」こと、及び「レーザパルシングの周波数を変えること」を包含することができることは記載されている。しかしながら、「ガラス基板の光学形状または特性を変えることなく、行う」ことと、「レーザパルシングの周波数を変えること」との関係については記載も示唆もされていないから、「ガラス基板の光学的形状および特性が変化しないようにするために」、「レーザパルシングの周波数を変える」ことを上記記載から理解することはできない。
そして、当初明細書等のその他の記載を参酌しても、「ガラス基板の光学的形状および特性が変化しないようにするために」、「レーザパルシングの周波数を変える」ことは記載されておらず、当初明細書等の記載から自明の事項であるともいえない。
したがって、「ガラス基板の光学的形状および特性が変化しないようにするために」、「レーザパルシングの周波数を変える」ことは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
b 「レーザパルシング照射中に前記レーザパルシングの周波数を変えること」について
上記(ア)a、bによれば、当初明細書等には、「レーザパルシングの周波数を変えること」は記載されているが、レーザパルシングの周波数を変えるタイミングについては記載も示唆もされていないから、「レーザパルシング照射中に」、レーザパルシングの周波数を変えることを上記記載から理解することはできない。
また、当初明細書等のその他の記載を参酌しても、「レーザパルシング照射中に」、レーザパルシングの周波数を変えることが記載されておらず、当初明細書等の記載から自明の事項であるともいえない。
したがって、「レーザパルシング照射中に前記レーザパルシングの周波数を変えること」は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
c 請求人の主張について
令和6年8月27日に提出された意見書において、請求人は「今回同時に提出する手続補正書において、令和3年9月2日付けの手続補正書により補正された請求項9,11~13の発明特定事項を、同日付け手続補正書により補正された請求項1に加えて限定しました。」旨、主張する。
しかしながら、上記補正事項が当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえないことは上記a、bで説示したとおりであるから、請求人の上記主張は、採用することができない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、上記補正事項、及び当該補正事項を含む本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものではないから、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明
上記のとおり本件補正は却下されたので、本願の請求項1~13に係る発明は、令和3年9月2日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の2(1)イに記載のとおりのものである。
第4 当審の拒絶理由
平成6年2月26日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの一つは、本願発明は、その出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献9、13~17に記載された技術的事項に基づいて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:国際公開第2010/029836号
引用文献9:特開平6-16440号公報
引用文献13:特表2013-545272号公報
引用文献14:特開2004-29314号公報
引用文献15:特開2001-30171号公報
引用文献16:特開2003-7655号公報
引用文献17:特開平2-86128号公報
第5 当審の判断
当審は、本願発明は、依然として上記の理由により特許をすることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである、と判断する。
詳細は以下のとおりである。
1 引用文献、引用発明
(1)引用文献1
ア 引用文献1には、次の事項が記載されている。(文中の下線は当審で付与した。以下同じ。)
「 請求の範囲
[請求項1] TiO2を含有し、SiO2を主成分とする石英ガラス材料製のEUVリソグラフィ(EUVL)用光学部材の凹欠点を有する光学面に対して、水蒸気分圧3.6mmHg以下の雰囲気中で、EUVL用光学部材の吸収係数が0.01μm-1以上である波長で発振するレーザをフルエンス0.3~1.5J/cm2で照射することを特徴とする、EUVL用光学部材の光学面を平滑化する方法。
・・・
[請求項7] レーザ照射前後の光学部材の平坦度の変化量を300nm以下とする、請求項1~6のいずれかに記載のEUVL用光学部材の光学面を平滑化する方法。
・・・
[請求項9] 前記レーザが波長250nm以下のエキシマレーザ、または、炭酸ガスレーザである、請求項1~8のいずれかに記載のEUVL用光学部材の光学面を平滑化する方法。
[請求項10] 前記レーザのパルス幅が100μsec以下である、請求項1~9のいずれかに記載のEUVL用光学部材の光学面を平滑化する方法。
[請求項11] 各照射部位におけるショット数が10以上となるように、前記光学面に前記レーザを照射する、請求項1~10のいずれかに記載のEUVL用光学部材の光学面を平滑化する方法。
・・・
[請求項19] 請求項1~13のいずれかに記載の方法によりEUVL用光学部材の光学面を平滑化し、光学面上に反射多層膜を形成して得られる、EUVL用ミラー。」
「[0004] EUVLに用いられる反射光学系としては、例えば、反射型マスク(以下、本明細書において、「EUVL用マスク」という。)や、集光光学系ミラー、照明光学系ミラー、投影光学系ミラー等のミラー(以下、本明細書において、「EUVL用ミラー」という。)が挙げられる。
[0005] EUVL用マスクの製造に用いられるEUVL用マスクブランクは、(1)EUVL用光学部材(例えば、ガラス基板)、(2)EUVL用光学部材の光学面に形成された反射多層膜、(3)反射多層膜上に形成された吸収体層、から基本的に構成される。一方、EUVL用ミラーは、(1)EUVL用光学部材(例えば、ガラス基板)、(2)EUVL用光学部材の光学面に形成された反射多層膜から基本的に構成される。
[0006] EUVL用光学部材としては、EUV光照射下においても歪みが生じないよう低熱膨張係数を有する材料が必要とされ、低熱膨張係数を有するガラスまたは低熱膨張係数を有する結晶化ガラスの使用が検討されている。以下、本明細書において、低熱膨張係数を有するガラスおよび低熱膨張係数を有する結晶化ガラスを総称して、「低膨張ガラス」または「超低膨張ガラス」という。
[0007] このような低膨張ガラスおよび超低膨張ガラスとしては、ガラスの熱膨張係数を下げるためにドーパントが添加された石英ガラスが最も広く使用されている。なお、ガラスの熱膨張係数を下げる目的で添加するドーパントは、代表的にはTiO2である。ドーパントとしてTiO2が添加された石英ガラスの具体例としては、例えば、ULE(登録商標)コード7972(コーニング社製)、旭硝子株式会社製品番AZ6025などが挙げられる。」
「[0033] 本発明の平滑化方法が対象とするEUVL用光学部材は、SiO2を主成分とする石英ガラス材料製であり、熱膨張係数を下げるためのドーパントとしてTiO2が添加されている。
[0034] 石英ガラス材料におけるTiO2濃度は、石英ガラス材料の熱膨張係数をEUVL用光学部材として使用するのに十分低くすることができる限り特に限定されないが、3~10質量%であることが好ましい。TiO2濃度が上記範囲であれば、石英ガラス材料の熱膨張係数が十分低くなり、具体的には、20℃における熱膨張係数が0±30ppb/℃の低膨張ガラス、好ましくは、20℃における熱膨張係数が0±10ppb/℃の超低膨張ガラスとなる。TiO2濃度は5~9質量%がより好ましく、6~8質量%がさらに好ましい。
[0035] 石英ガラス材料には、熱膨張係数を下げるためのドーパントとして、TiO2以外のドーパントが添加されていてもよい。このようなドーパントしては、例えば、SnO2が挙げられる。ドーパントとしてSnO2を添加する場合、石英ガラス材料におけるSnO2濃度は、石英ガラス材料の熱膨張係数をEUVL用光学部材として使用するのに十分低くすることができる限り特に限定されないが、0.1~10質量%であることが好ましい。ドーパントとしてSnO2を添加する場合、SnO2濃度は、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、SnO2濃度は、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。」
「[0046] 本発明の平滑化方法において、凹欠点を有する光学面に対して、水蒸気分圧3.6mmHg以下の雰囲気中で、EUVL用光学部材の吸収係数が0.01μm-1以上となる波長域で発振するレーザをフルエンス0.3~1.5J/cm2で光学面に照射することにより加熱された凹欠点の周囲の石英ガラスがリフローして凹欠点が埋まることによって光学面が平滑化されるものと推測する。」
「[0049] また、凹欠点周囲の石英ガラスのリフローという点では、レーザが照射された光学面を含む表層の仮想温度が、1550℃以上となることが好ましく、1650℃以上となることがより好ましく、1700℃以上となることがさらに好ましく、1750℃以上となることが特に好ましい。」
「[0057] 本発明の平滑化方法では、EUVL用光学部材に使用する材料に対する吸収係数が0.01μm-1以上の波長で発振するレーザを用いる。KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2エキシマレーザ(波長157nm)といった波長250nm以下のエキシマレーザは、ドーパントとしてTiO2が添加された石英ガラス材料(3~10wt%)に対する吸収係数が0.01μm-1以上と高く、しかも高強度であることから、本発明の平滑化方法に用いるレーザとして好適である。また、炭酸ガスレーザ(波長10.6μm)もEUVL用光学部材に対する吸収係数が高く、高強度であることから、本発明の平滑化方法に持いるレーザとして好適である。更に、波長250nm以下のエキシマレーザは、通常パルス幅100nsec以下のパルスレーザであるため、照射部位における熱拡散距離が短く、光学面を含む表層のみが加熱され、光学部材の内部まで加熱されないため、応力による基板の平坦度の悪化や変形、複屈折等の問題が非常に少ない点でも好ましい。
[0058] 本発明の平滑化方法では、レーザをフルエンス0.3~1.5J/cm2で照射する。レーザのフルエンスが0.3J/cm2未満だと、光学面を含む表層が十分加熱されず、凹欠点の周囲のガラスがリフローせず光学面を平滑化することができない。一方、レーザのフルエンスが1.5J/cm2超だと光学面の表面粗さが顕著に悪化する、光学部材に許容不可能な平坦度の悪化が生じる等の問題が生じる。なお、以下の理由からレーザのフルエンスを0.7~1.5J/cm2とすることがより好ましい。」
イ 上記記載から、引用文献1には、引用文献1の請求項1、9、10、11を引用する請求項19に係る発明である、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「TiO2を含有し、SiO2を主成分とする石英ガラス材料製のEUVリソグラフィ(EUVL)用光学部材の凹欠点を有する光学面に対して、水蒸気分圧3.6mmHg以下の雰囲気中で、EUVL用光学部材の吸収係数が0.01μm-1以上である波長で発振するレーザをフルエンス0.3~1.5J/cm2で照射して、EUVL用光学部材の光学面を平滑化し、光学面上に反射多層膜を形成してEUVL用ミラーを得る方法であって、
前記レーザが波長250nm以下のエキシマレーザであり、
前記レーザのパルス幅が100μsec以下であり、
各照射部位におけるショット数が10以上となるように、前記光学面に前記レーザを照射する、
EUVL用ミラーを得る方法。」
(2)引用文献9
引用文献9には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】透明板表面に形成された凹状欠陥部分にArFエキシマレーザビームを照射して、該欠陥部分を平滑化する透明板表面の欠陥修正方法。」
「【0010】エキシマレーザは、紫外領域のレーザビームを発生することが可能であり、そのレーザビームによって被加工物の原子の間の結合を断ち切ることにより熱発生を伴わずに被加工物の表面を加工することができる。ガラスなどの透明材料を加工する場合には、レーザビームの波長によってはガラスを透過して原子間結合を断ち切れないため、レーザビームがその材料表面で吸収される波長を選択する必要がある。エキシマレーザの波長は使用するガスの種類により発振波長が異なるが、図3に示すように、ArFエキシマレーザを用いて平坦なガラス板表面22を切削加工すると、削られた加工部の底面21はほぼ平らになり、透光性は損なわれない。」
「【0013】欠陥修正時には、ガラスが削られると微量の飛散物が生じるが、研磨粉を用いて研磨する場合に比較すると大幅に減少する。飛散物が加工部に付着することを防ぐには、レーザビーム照射部以外をマスキングすればよい。」
(3)引用文献13
引用文献13には、次の事項が記載されている。
「【請求項32】
マイクロリソグラフィ投影露光装置のミラーのミラー温度測定及び/又は熱作動の方法であって、前記ミラー(101、301、401、701、801、901)は、光学有効面(101a、301a、401a、701a、801a、901a)と、前記ミラーのうち前記光学有効面に相当しない面から該有効面の方向に延びる少なくとも1つのアクセス通路(110、310、410、710、711、712、810、811、812、910、910’)とを有し、前記ミラー(101、301、401、701、801、901)のミラー温度測定及び/又は熱作動を、前記アクセス通路(110、310、410、710、711、712、810、811、812、910、910’)に沿って伝播する電磁放射線により行い、該電磁放射線を前記アクセス通路(110、310、410、710、711、712、810、811、812、910)内で複数回反射させる方法。
・・・
【請求項35】
マイクロリソグラフィ投影露光装置のミラーの熱処理の方法であって、該ミラー(901)は、光学有効面(901a)と、前記ミラーのうち前記光学有効面に相当しない面から該有効面の方向に延びる少なくとも1つのアクセス通路(911、912、913)とを有し、前記ミラー(901)の熱処理は、該ミラー(901)の前記光学有効面(901a)の加熱の結果として生じる電磁放射線を前記アクセス通路(911、912、913)に沿ってリザーバ(940)へ伝播させて該リザーバ(940)から放散させる、前記光学有効面(901a)の受動冷却を含む方法。」
「【0004】
適当な半透明屈折材料が利用可能でないので、ミラーをEUV領域、すなわち例えば約13nm又は約7nmの波長用に設計した投影対物系での結像プロセスのための光学コンポーネントとして用いる。実際に生じる問題は、EUV光源が放出した放射線の吸収の結果として、EUVミラーに温度上昇が生じ、それに関連して熱膨張又は変形が生じ、その膨張又は変形がさらに光学系の結像特性の悪化をもたらし得ることである。これらの影響を評価し、場合によってはこれらを補償できるように、そのミラー温度上昇の程度をできる限り正確に判定し、場合によっては熱作動の意味でそれを制御する必要がある。」
「【0031】
一実施形態では、少なくとも1つのアクセス通路は、円筒形の幾何学的形状とは異なる幾何学的形状を有し得る。かかる幾何学的形状は、例えば円錐形の幾何学的形状であり得る。しかしながら、本開示はこれに限定されないので、例えば各アクセス通路の直径の段階的変化等の他の幾何学的形状も可能である。かかる幾何学的形状は、例えば、円筒形の幾何学的形状のアクセス通路を用いる場合よりも例えば円錐形のアクセス通路を用いる場合に、ミラーの、例えばファセットミラーの所与の(縁部)領域において所望の効果をより良好に達成できる場合に有利であり得る。」
「【0079】
図7は、最初に、図1及び図3におけるアクセス通路110及び310と同様にミラーの裏側からミラー701の光学有効面701aに向かう方向にそれぞれ延びる複数のアクセス通路710、711、712、…を有する、ミラー700の概略図を示す。ミラーの光学有効面701aの領域における反射層を、図7(及び図8)では斜線で示し、誇張した縮尺で概略的にしか示さない。」
「【図7】
[図:0001421702000001.jpg]
」
(4)引用文献14
引用文献14には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
光学素子の光の入射・出射しない面に沿って近接配置された、該光学素子から熱輻射を受ける受熱板と、
該受熱板を冷却する冷却手段と、
を具備することを特徴とする光学素子冷却装置。
【請求項2】
前記光学素子がミラーであり、該ミラーの反射面以外の部分に沿って前記受熱板が配置されていることを特徴とする請求項1記載の光学素子冷却装置。
・・・
【請求項5】
前記光学素子の前記受熱板側の面に、輻射率を高める加工がなされていることを特徴とする請求項1又は2記載の光学素子冷却装置。
・・・
【請求項7】
前記輻射率を高める加工が、熱輻射面積を広げるための面粗し加工、凹凸加工であることを特徴とする請求項4又は5記載の光学素子冷却装置。
・・・
【請求項12】
極端紫外線を反射するミラー及び/又は反射マスクを有する露光装置であって、
前記ミラー及び/又は反射マスクの反射面以外の部分に沿って、該ミラー及び/又は反射マスクから熱輻射を受ける受熱板が近接配置されていることを特徴とする露光装置。」
「【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前述の反射鏡は、入射したEUV光の一部を吸収することによって加熱される。ここで、図8に示すような光学系鏡筒を真空雰囲気中で使用する場合には、加熱された反射鏡の放熱性が悪いため、反射鏡が熱変形するおそれがある。そこで、冷却機構を光学素子(反射鏡)に接触させて冷却する方法が考えられる。しかしながら、この方法では接触により光学素子に力が加わり変形してしまうおそれがあり、その結果、光学素子の高精度な形状が維持できない可能性がある。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、光学素子を冷却して温度上昇を抑制し、光学素子の変形や位置変化を抑制することのできる光学素子保持機構等を提供することを目的とする。」
「【0039】
(3)図4(B)に示すように、ミラー1裏面と受熱板3表面(各々の対向面)にそれぞれ突起1X、3Xを形成し、各突起1X、3Xが互い違いに入り込むように配置する。この場合も、受熱板3はミラー1に近接配置し、各突起1X、3X同士は接触しないようにする。このような突起1X、3Xにより実質的な表面積を増やすことができる。なお、(2)と(3)を併合して用いると、さらに効果的である。」
「【図4】
[図:0001421702000002.jpg]
」
(5)引用文献15
引用文献15には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】表面に微細な凹凸のある物品において、該微細な凹凸を衝突エネルギーで除去し、該表面を平滑にすることを特徴とする表面平滑方法。
【請求項2】前記衝突エネルギー源が、レーザであることを特徴とする請求項1記載の表面平滑方法。」
「【0022】本発明による方法では、物品の表面を研削等することによって生じた微細な凹凸を無理な力を加えずに、レーザ光線のような衝突エネルギーを用い、鏡面化もしくは平滑化する事が可能となる。物品としては、金属、ガラス、セラミック、プラスチックなどがあげられる。」
「【0026】レーザ装置としては、エキシマ、炭酸ガス、ヘリウムネオン等を使用するガスレーザ装置、液体レーザ装置、YAGやルビー等を使用した固体レーザ装置、半導体レーザ装置等があげられる。
【0027】レーザのエネルギーが物品に吸収される時の熱エネルギーによる物品表面の熱溶解が起こり、表面の微細な凹凸が除去され、平滑化できる。また、一部のレーザでは、物品表面に吸収されたエネルギーが、化学的結合を切断し、分解除去すること(アブレーションという)によって物品表面の微細な凹凸を平滑にすることができる。表面の微細な凹凸の平滑化は、レンズ素材の違いや表面加熱もしくはアブレーションの程度で決定付けられる。表面加熱もしくはアブレーションの程度は、照射領域のエネルギーのレベルや照射時間、集光した光線の焦点の合い具合によって制御される。」
(6)引用文献16
引用文献16には、次の事項が記載されている。
「【0015】作業物6の表面に残留している有機粒子及び層を精密に取り除くために、スイッチングミラー12をオフ状態にして、基本波長を有する第2レーザービーム16を周波数ハーモニック発生手段13に通過させる。基本波長(1064nm)を有する第2レーザービーム16が周波数ハーモニック発生手段13によって半波長(532nm)レーザービーム、1/3波長(略355nm)レーザービーム或いは1/4波長(266nm)レーザービームのような短波長レーザービーム14に変調されて、このような短波長レーザービーム14が反射ミラー9を使用して作業物6の表面に直接照射されることにより、作業物6の表面に付着されている有機物質のような表面汚染物質5を効果的に取り除くことができるようにする。」
「【0040】本発明による装置は、半導体製造工程中の基板ウェハーの乾式表面クリーニング工程、LCD、TFT、PDP、OLED、ELDのような平板ディスプレー製造工程中の表面洗浄工程、微小電子部品、磁器部品、精密加工レンズなどの製造工程中の表面洗浄工程に使用されることができる。」
(7)引用文献17
引用文献17には、次の事項が記載されている。
「(従来技術および発明が解決しようとする課題)
表面汚染物としては、大きさがサブミクロンから目視で見える粒状物までの範囲にあるばら状の物質である。このような汚染物は微細塵埃粒子、または炭素又は酸素などの元素よりなる望ましくない分子であることがある。汚染物はしばしば、弱い共有結合、静電力、ファンデルワールス力、水素結合、クーロン力、または双極子-双極子相互作用によって表面に付着し、汚染物の除去が困難になる。
或る場合、表面汚染物の存在により、汚染基質は基質の所定の目的でそれほど効力的ではなくなり、あるいは作用できなくなる。例えば、或る正確な科学測定装置では、これらの装置における光学レンズまたはミラーが微細な表面汚染物で被覆されると、精度が悪くなる。同様に、半導体では、小さい分子汚染物による表面欠陥はしばしば半導体マスクまたはチップを価値のないものにしてしまう。石英半導体マスクの表面分子欠陥の数を少量でも減らすことにより、半導体チップの製造収率を非常に向上させる。同様に、回路層をシリコンウェーハに蒸着する前、あるいは層の蒸着間に炭素又は酸素のような分子表面汚染物をシリコンウェーハの表面から除去することにより、製造されたコンピュータチップの品質を著しく向上させる。」(第3ページ右上欄第8行~同ページ左下欄第13行)
2 対比・判断
(1)対比
ア 本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「TiO2を含有し、SiO2を主成分とする石英ガラス材料製のEUVリソグラフィ(EUVL)用光学部材」は、本願発明の「第1の基板表面とその反対側の第2の基板表面とを備えたガラス基板」に相当する。
(イ)引用発明の「EUVL用光学部材の光学面」は、本願発明の「第1の基板表面」に相当する。したがって、引用発明の「前記光学面に前記レーザを照射」して、「EUVL用光学部材の光学面を平滑化」することは、本願発明の「前記第1の基板表面にレーザを直接照射して、前記ガラス基板の表面を滑らかにすること」に相当する。
イ そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおり
である。
【一致点】
「第1の基板表面とその反対側の第2の基板表面とを備えたガラス基板を提供し、
前記第1の基板表面にレーザを直接照射して、前記ガラス基板の表面を滑らかにする方法。」
【相違点】
・相違点1
本願発明のガラス基板が、「複数の突起が前記第2の基板表面から延在する」ものであるのに対して、引用発明は、当該構成が特定されていない点。
・相違点2
本願発明の、第1の基板表面にレーザを直接照射して、前記ガラス基板の表面を滑らかにすることが、「前記第1の基板表面の少なくとも一部を溶融し、前記第1の基板表面の少なくとも一部を除去することにより」なされるのに対して、引用発明は、当該構成が特定されていない点。
(2)判断
・相違点1について
上記1(3)のとおり、引用文献13には、ミラーをEUV領域の波長用に設計した投影対物系での結像プロセスのための光学コンポーネントとして用いる場合に、EUV光源が放出した放射線の吸収の結果として、EUVミラーに温度上昇が生じ、それに関連して熱膨張又は変形が生じ、その膨張又は変形が光学系の結像特性の悪化をもたらすので、これらの影響を評価し、場合によってはこれらを補償できるように、そのミラー温度上昇の程度をできる限り正確に判定し、場合によっては熱作動の意味でそれを制御する必要があるという問題が生じることが記載されている。
そして、引用文献13には、マイクロリソグラフィ投影露光装置のミラーを、光学有効面に相当しない面から有効面の方向に延びる少なくとも1つのアクセス通路を有する構造を備えるものとすることで、前記アクセス通路に沿って伝播する電磁放射線により、マイクロリソグラフィ投影露光装置のミラーの温度の測定を行い、及び/又は、該ミラーの前記光学有効面の加熱の結果として生じる電磁放射線を前記アクセス通路に沿ってリザーバへ伝播させて該リザーバから放散させることで、前記光学有効面を受動冷却させて、前記問題を解決することが記載されている。
さらに、上記1(4)のとおり、引用文献14には、反射鏡は、入射したEUV光の一部を吸収することによって加熱され、真空雰囲気中で使用する場合には、加熱された反射鏡の放熱性が悪いため、反射鏡が熱変形するおそれがあるので、光学素子を冷却して温度上昇を抑制し、光学素子の変形や位置変化を抑制することが課題となっていることが記載されている。
そして、引用文献14には、当該課題を、極端紫外線を反射するミラーの光の入射・出射しない面に沿って、該光学素子からの熱輻射を受ける受熱板を近接配置し、さらに当該受熱板を冷却する冷却手段を設けるとともに、前記ミラーの受熱板側の面に、輻射率を高めるための凹凸加工をなすことで解決することが記載されている。
ここで、引用文献13の、光学有効面に相当しない面から有効面の方向に延びる少なくとも1つのアクセス通路を有する構造、及び、引用文献14の、ミラーの受熱板側の面に加工された輻射率を高めるための凹凸は、いずれも、本願発明の「第2の基板表面から延在する」「複数の突起」に相当する構造といえる。
してみれば、引用文献13、14の前記記載から、引用発明の「EUVL用ミラー」における、使用時の熱変形による光学系の結像特性の悪化を予測し、当該光学系の結像特性の悪化を抑制するために、引用発明に、引用文献13、14に記載される技術を適用して、ガラス基板を、「複数の突起が前記第2の基板表面から延在する」ものすること、すなわち、相違点1について、本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
・相違点2について
ア 「第1の基板表面の少なくとも一部を溶融し」について
上記1(1)のとおり、引用文献1の[0046]には、「本発明の平滑化方法において、凹欠点を有する光学面に対して、水蒸気分圧3.6mmHg以下の雰囲気中で、EUVL用光学部材の吸収係数が0.01μm-1以上となる波長域で発振するレーザをフルエンス0.3~1.5J/cm2で光学面に照射することにより加熱された凹欠点の周囲の石英ガラスがリフローして凹欠点が埋まることによって光学面が平滑化されるものと推測」されることが、また、[0049]には、「凹欠点周囲の石英ガラスのリフローという点では、レーザが照射された光学面を含む表層の仮想温度が、1550℃以上となることが好ましく、1650℃以上となることがより好ましく、1700℃以上となることがさらに好ましく、1750℃以上となることが特に好ましい」ことが、さらに、[0058]には、「レーザのフルエンスが0.3J/cm2未満だと、光学面を含む表層が十分加熱されず、凹欠点の周囲のガラスがリフローせず光学面を平滑化することができない」ことが記載されている。
また、上記1(5)のとおり、引用文献15の【0027】には、「レーザのエネルギーが物品に吸収される時の熱エネルギーによる物品表面の熱溶解が起こり、表面の微細な凹凸が除去され、平滑化できる」ことが記載されている。
これらの記載を踏まえると、引用発明の「石英ガラス材料製のEUVリソグラフィ(EUVL)用光学部材の凹欠点を有する光学面に対して、水蒸気分圧3.6mmHg以下の雰囲気中で、EUVL用光学部材の吸収係数が0.01μm-1以上である波長で発振するレーザをフルエンス0.3~1.5J/cm2で照射して、EUVL用光学部材の光学面を平滑化」する工程は、加熱された凹欠点の周囲の石英ガラスのリフローを含むものであって、十分な加熱が必要とされる当該リフローは、溶融を伴うものと認められるから、引用発明は、「第1の基板表面の少なくとも一部を溶融し」という操作を伴うものと理解される。
イ 「第1の基板表面の少なくとも一部を除去する」について
引用発明の「TiO2を含有し、SiO2を主成分とする石英ガラス材料製のEUVリソグラフィ(EUVL)用光学部材」は、SiO2を主成分とする石英ガラスであって、TiO2を含有し、引用文献1の[0035]によれば、TiO2以外のSnO2等のドーパントが添加されていてもよいものである。
また、引用発明のEUVリソグラフィ(EUVL)用光学部材は、引用発明に係る平滑化の処理に先立って行われる他の工程、及び、当該他の工程と平滑化の処理の工程との間における保管及び移送の工程を経たものであり、当該他の工程及び保管及び移送の工程で前記光学部材の表面に汚染物が付着することは普通であるから、光学部材の表面は、その一部として、汚染物を含むものといえる。
そして、上記1(7)のとおり、引用文献17に、「表面汚染物としては、大きさがサブミクロンから目視で見える粒状物までの範囲にあるばら状の物質である。このような汚染物は微細塵埃粒子、または炭素又は酸素などの元素よりなる望ましくない分子であることがある。汚染物はしばしば、弱い共有結合、静電力、ファンデルワールス力、水素結合、クーロン力、または双極子-双極子相互作用によって表面に付着」と記載されていることを踏まえれば、光学部材の表面の前記汚染物は、弱い共有結合、静電力、ファンデルワールス力、水素結合、クーロン力、又は双極子-双極子相互作用によって表面に付着していることが理解される。
他方、引用発明の「レーザが波長250nm以下のエキシマレーザであり、前記レーザのパルス幅が100μsec以下であり、各照射部位におけるショット数が10以上となるように、前記光学面に」「フルエンス0.3~1.5J/cm2で照射」するレーザは、引用文献1の[0057]によれば、「ArFエキシマレーザ(波長193nm)」等である。
そして、上記1(2)のとおり、引用文献9の【0010】に、「エキシマレーザは、紫外領域のレーザビームを発生することが可能であり、そのレーザビームによって被加工物の原子の間の結合を断ち切ることにより熱発生を伴わずに被加工物の表面を加工することができる」ことが、また、【0013】に、「欠陥修正時には、ガラスが削られると微量の飛散物が生じる」ことが記載されており、さらに、上記1(5)のとおり、引用文献15の【0027】に、「一部のレーザでは、物品表面に吸収されたエネルギーが、化学的結合を切断し、分解除去すること(アブレーションという)によって物品表面の微細な凹凸を平滑にすることができる」と記載されていることを踏まえれば、引用発明の「レーザが波長250nm以下のエキシマレーザ」は、SiO2を主成分として、TiO2を含有し、SnO2等のドーパントが添加されていてもよい石英ガラスを構成する原子の間の結合を断ち切り、ガラスを削り、微量の飛散物を生じさせるといえるから、石英ガラスの一部を除去、すなわち、基板表面の少なくとも一部を除去するものといえる。
さらに、エキシマレーザは、上記のとおり、被加工物の原子の間の結合を断ち切るものであって、上記1(6)のとおり、引用文献16の【0015】に、「1/4波長(266nm)レーザービームのような短波長レーザービーム14に変調されて、このような短波長レーザービーム14が反射ミラー9を使用して作業物6の表面に直接照射されることにより、作業物6の表面に付着されている有機物質のような表面汚染物質5を効果的に取り除くことができる」と記載されていることも踏まえれば、引用発明のエキシマレーザによる照射が、光学部材の表面の一部となっている表面汚染物と前記石英ガラスとの間の、「弱い共有結合、静電力、ファンデルワールス力、水素結合、クーロン力、または双極子-双極子相互作用」等の結合を断ち切り、光学部材の表面の一部となっている汚染物を、前記光学部材の表面から除去することも理解される。
すなわち、引用発明は、「第1の基板表面の少なくとも一部を除去する」という操作をも伴うものと理解される。
ウ 上記ア及びイのとおりであるから、引用発明の平滑化は、「前記第1の基板表面の少なくとも一部を溶融し、前記第1の基板表面の少なくとも一部を除去することにより」なされるものと認められる。
したがって、上記相違点2は、実質的なものではない。
(3)請求人の主張について
請求人は、令和6年8月27日提出の意見書において、「本願発明は、「前記1つ以上の気泡を含む前記第1の基板表面の少なくとも一部を溶融するように、前記第1の基板表面をレーザパルシング照射」することと、「前記ガラス基板の光学的形状および特性が変化しないようにするために、前記レーザパルシング照射中に前記レーザパルシングの周波数を変える」ことによって、第1の基板表面から気泡を除去することを特徴としていますが、引用文献1,2,6,9および13~17は、いずれもこの特徴について一切開示も示唆もしておりません。」として、本件補正後の請求項1に係る発明が、進歩性を有する旨主張している。
しかしながら、上記第2のとおり、本件補正は却下されたから、当該主張は採用できない。
また、請求人は、本件補正前の請求項1に係る発明、すなわち本願発明に対して当審が通知した拒絶理由については何ら言及していない。
よって、請求人の上記意見書による主張は採用できない。
(4)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明と、引用文献9、13~17に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明、すなわち、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-002390