特許無効審判
2022-800014
トレーニング器具
- 審判番号
- 2022-800014
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2005-186126
- 登録番号
- 3763840
- 請求日
- 2022年02月24日
- 審決日
- 2023年03月14日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コモライフ 株式会社
- 【請求人代理人】杉本 勝徳
- 【請求人代理人】辻 忠行
- 【被請求人】有限会社 MAKIスポーツ
- 【被請求人代理人】原田 寛
- 【被請求人代理人】中村 政美
- 審判長/審判官
- 審判長 古屋野 浩志
- 審判官 藤本 義仁
- 審判官 比嘉 翔一
- 分類
- P1123.113-Y (A63B) / P1123.121-Y (A63B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第3763840号発明「トレーニング器具」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第3763840号発明の特許請求の範囲の請求項1、及び請求項2に記載された発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」、「本件特許発明2」という。)に係る特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
特許第3763840号発明の特許請求の範囲の請求項1(以下、本件特許発明1という)、同請求項2(以下、本件特許発明明2という)に係る特許は、請求人が挙げる甲第1号証乃至甲第4号証によっても、特許法第29条第1項第3号、同法同条第2項の規定に該当せず、無効理由はない。
第2 手続の経緯
本件の手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
平成17年 6月27日 本件特許出願(特願2005-186126号)
平成18年 1月 4日 本件特許査定
平成18年 1月27日 本件特許権の登録(特許第3763840号)
令和 4年 2月24日 本件審判請求
6月 3日 審判事件答弁書
8月 2日付け 審理事項通知
9月22日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
9月26日 口頭審理陳述要領書(請求人)
9月29日 上申書(被請求人)
10月 7日 口頭審理
10月 3日 上申書(請求人)
10月21日 上申書(請求人)
11月 4日 上申書(請求人)、上申書(被請求人)
第3 本件特許発明
本件特許第3763840号の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
ほぼ並行状で相対向している一対の第1グリップ部と、該第1グリップ部それぞれの両端部同士を接続し、第1グリップ部相互の間隔に比し狭くしてほぼ並行状に相対向している一対の第2グリップ部とによって全体を平面からみてほぼ横長矩形枠を呈した一体のループ状に形成して成り、第1グリップ部は直線状もしくは緩やかな曲線状に形成され、第2グリップ部は正面からみて弓形に湾曲され、中央部分が相互に近接するように平面からみて矩形枠の内方に向かってやや窄まり状に形成されていることを特徴とするトレーニング器具。
【請求項2】
第1グリップ部は、第2グリップ部との接続部位が丸味を帯びている略矩形状を呈し、その矩形枠内に手首あるいは足首が挿入可能になっている請求項1記載のトレーニング器具。」
第4 請求人の主張及び証拠方法
1 主張の概要
(1)無効理由1(甲1発明に基づく新規性の欠如)
本件特許発明1及び2は、甲第1号証の記載に基づいて新規性を有さないから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許は無効とすべきものである。
本件特許発明1は、トレーニング器具であるのに対し、甲1発明は、トレーニング器具(ウエイトリフティング装置1)の部品であるバー10である点で相違するものの、甲1発明におけるバー10を用いて、本件特許発明1と同様のトレーニングが可能なことは明らかである。
従って、バー10もトレーニング器具といえるため、甲1発明の構成F’(ウエイトリフティング装置1のバー10)は、本件特許発明1の構成要件F(トレーニング器具1)を満たす。
よって、甲1発明は本件特許発明1、本件特許発明2の構成要件を全て備えるため、本件特許発明1、及び本件特許発明2は新規性を有さない(特許法第29条第1項第3号)。
仮に、甲第1号証にバー10の単独の状態が記載されていないとしても、甲第1号証に記載のウエイトリフティング装置1は、本件特許発明1の全ての構成を備えることが明らかである。また、重りの付いたウエイトリフティング装置1においても、甲第1号証のFig5、Fig.6を見れば、副グリップ部18、20に囲まれる矩形部分に手首や足首が挿通できることは明らかであるため、本件特許発明1、及び2は、ウエイトリフティング装置1を引用発明としても新規性を有さない。
(2)無効理由2(甲1乃至甲4発明に基づく進歩性欠如)
本件特許発明1及び2は、甲第1号証乃至甲第3号証の記載に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許は無効とすべきものである。
甲第2号証、甲第3号証に示すように、重りを載置せずにストレッチに用いる矩形枠状の発明が本件特許の出願前から公知であるため、当業者が、甲1発明(バー10)に、甲第2号証、甲第3号証に記載の重りを載置せずに矩形枠状の器具をトレーニング器具とするアイデアを適用して、甲1発明を単独でストレッチ用のトレーニング器具とすることに想到するのは容易である。
2 証拠方法
甲第1号証:米国特許第6196951号明細書
甲第2号証:実願昭54-101665号(実開昭56-19255号)のマイクロフィルム
甲第3号証:実願昭54-103653号(実開昭56-23156号)のマイクロフィルム
甲第4号証:米国特許第4345756号明細書
甲第5号証:新村出編、広辞苑(第四版)、株式会社岩波書店、1991年11月15日、2621頁の「ゆみ」及び「ゆみがた」の項
甲第6号証:新村出編、広辞苑(第四版)、株式会社岩波書店、1991年11月15日、2299頁の「へいこう」及び2770頁の「わんきょく」の項
甲第7号証:相賀徹夫編、世界原色百科事典8、株式会社小学館、昭和44年4月20日、360頁の「弓」の項
甲第8号証:特開2004-321037号公報
甲第9号証:特開2005-104593号公報
甲第10号証:特開2005-35640号公報
甲第11号証:特開2005-161439号公報
甲第12号証:特開2004-338804号公報
甲第13号証:特許第3579786号公報
甲第14号証:実願昭59-158868号(実開昭61-74039号)のマイクロフィルム
甲第15号証:特願2005-186126号の平成17年12月5日に提出された意見書
甲第16号証:令和4年(ワ)3847号 訴状
甲第17号証:令和4年(ワ)3847号 原告証拠説明書
甲第18号証:令和4年(ワ)3847号 甲第1号証の1(特許第3763840号公報)
甲第19号証:令和4年(ワ)3847号 甲第1号証の2(特開2007-492号公報)
甲第20号証:令和4年(ワ)3847号 甲第2号証
甲第21号証:令和4年(ワ)3847号 甲第3号証
甲第22号証:令和4年(ワ)3847号 甲第4号証
甲第23号証:令和4年(ワ)3847号 甲第5号証
甲第24号証:令和4年(ワ)3847号 甲第6号証
甲第25号証:令和4年(ワ)3847号 甲第7号証(米国特許第6196951号明細書)
甲第26号証:令和4年(ワ)3847号 甲第8号証(実願昭54-101665号(実開昭56-19255号)のマイクロフィルム)
甲第27号証:令和4年(ワ)3847号 甲第9号証(実願昭54-103653号(実開昭56-23156号)のマイクロフィルム)
甲第28号証:令和4年(ワ)3847号 甲第10号証(米国特許第4345756号明細書)
甲第29号証:令和4年(ワ)3847号 甲第11号証の1
甲第30号証:令和4年(ワ)3847号 甲第11号証の2
甲第31号証:令和4年(ワ)3847号 甲第12号証
甲第32号証:令和4年(ワ)3847号 甲第13号証
甲第33号証:令和4年(ワ)3847号 答弁書
甲第34号証:令和4年(ワ)3847号 原告証拠説明書
甲第35号証:令和4年(ワ)3847号 甲第14号証
甲第36号証:令和4年(ワ)3847号 甲第15号証(甲第1号証翻訳文)
甲第37号証:令和4年(ワ)3847号 甲第16号証
甲第38号証:令和4年(ワ)3847号 被告準備書面1
甲第39号証:令和4年(ワ)3847号 原告準備書面1
甲第40号証:令和4年(ワ)3847号 原告証拠説明書
甲第41号証:令和4年(ワ)3847号 甲第17号証(新村出編、広辞苑(第四版)、株式会社岩波書店、1991年11月15日、2621頁の「ゆみ」及び「ゆみがた」の項)
甲第42号証:令和4年(ワ)3847号 甲第18号証(新村出編、広辞苑(第四版)、株式会社岩波書店、1991年11月15日、2299頁の「へいこう」及び2770頁の「わんきょく」の項)
甲第43号証:令和4年(ワ)3847号 甲第19号証(相賀徹夫編、世界原色百科事典8、株式会社小学館、昭和44年4月20日、360頁の「弓」の項)
甲第44号証:令和4年(ワ)3847号 甲第20号証(特開2004-321037号公報)
甲第45号証:令和4年(ワ)3847号 甲第21号証(特開2005-104593号公報)
甲第46号証:令和4年(ワ)3847号 甲第22号証(特開2005-35640号公報)
甲第47号証:令和4年(ワ)3847号 甲第23号証(特開2005-161439号公報)
甲第48号証:令和4年(ワ)3847号 甲第24号証(特開2004-338804号公報)
甲第49号証:令和4年(ワ)3847号 甲第25号証(特許第3579786号公報)
甲第50号証:令和4年(ワ)3847号 甲第26号証(実願昭59-158868号(実開昭61-74039号)のマイクロフィルム)
甲第51号証:令和4年(ワ)3847号 甲第27号証(特願2005-186126号の平成17年12月5日に提出された意見書)
第5 被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
特許第3763840号発明の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に係る特許は、請求人が挙げる甲第1号証乃至甲第4号証によっても、特許法第29条第1項第3号、同法同条第2項の規定に該当せず、無効理由はない。
本件特許発明と甲第1号証発明とは、目的、構成、作用において一致する点はなく、全く別異の発明であるから、甲第1号証発明によって本件特許発明の新規性が認められないことはない。
本件特許発明は、請求項1、2に記載した構成によって、筋肉、筋力を単にアップさせるトレーニングのみならず、構成各部による身体各部へのあてがい、挿入等と共に引き・押し、捻りその他によって、人体に対する対象使用部位、使用態様の様々なバリエーションの選択を可能にしている。そのため、身体マッサージ、体力チェック、美容ダイエットトレーニング、病院用リハビリトレーニングをも可能にしており、このような多用途のトレーニング器具は、各甲号証によっても新規性、進歩性は阻却されない。
甲第1号証発明をストレッチ用のトレーニング器具として用いることには動機付けがなく、甲第2号証乃至甲第4号証を参照しても、本件特許発明の構成を当業者は容易に想到し得ないのであり、本件特許発明の進歩性が否定されることはない。
2 証拠方法
乙第1号証:新村出編、広辞苑(第三版)、株式会社岩波書店、昭和62年10月15日、606頁の「きゅうけい」の項
乙第2号証:尚学図書編、国語大辞典、株式会社小学館、昭和57年2月27日、656頁の「きゅうけい」の項及び2409頁の「ゆみ」の項
第6 当審の判断
1 各甲号証の記載事項
(1)甲第1号証
本件特許の出願日前の2001年3月6日に発行された米国特許第6196951号明細書には、以下の事項が記載されている。(なお、括弧内の翻訳は当審で作成した。また、下線は当審で付した。)
ア 「The apparatus 1, has particular application as a triceps exerciser, its shape facilitating overhead triceps extensions. The apparatus has two main components, the bar and handle assembly, and the support and clamping assembly.」(3欄26~29行)
(装置1は、上腕三頭筋運動具として特定の用途を有し、その形状は、上腕三頭筋の拡張を容易にする。この装置は2つの主要構成要素、バー及びハンドルアセンブリと、支持及びクランプアセンブリを備えている。)
「The bar 10 has two mutually opposed handle extensions, 12, each extension having a main handle portion 16, and two alternate gripping areas 18, 20.」(3欄38~41行)
(バー10は、2個の互いに対向するハンドル延長部12を有し、延長部の各々は、主ハンドル部分16、2つの予備把持領域18、20を有している。)
「The handle extensions each extend from the level portion of the bar at an oblique angle of about 20 degrees so that the main handle portions occupy a plane offset from the level portion of the bar. The main handle portions are parallel to one another and the alternate gripping areas extend inwardly towards one another from the main handle portion to the level portion of the bar.」(3欄54~60行)
(主ハンドル部分がバーの水平部分からオフセットされている平面に位置するように、ハンドル延長部は、約20度の傾斜角度でバーの水平部分から延びている。主ハンドル部分は互いに平行で、予備把持領域は互いに主ハンドル部分からバーの水平部分に向けて内側に延びる。)
「The weight bearing platform 26 and releasable clamping means 28 form the support and clamping assembly.」(3欄61~62行)
(重量支持プラットフォーム26と解放可能なクランプ手段28は、支持及びクランプアセンブリを形成する。)
「Also, bar 10 may be welded to the underside of the platform 26 allowing the platform 26 to be relatively large. It can be appreciated that the width and length of the platform 26 is limited to the space 30 between parallel bar segments 32、34 and the length of the flat portion 24 of the bar, respectively.」(4欄3~8行)
(また、プラットフォーム26を比較的大きくすることができるよう、バー10は、プラットフォーム26の下側に溶接されてもよい。プラットフォーム26の幅および長さは、並列バーセグメント32、34の間の空間30およびバーの平坦部24の長さにそれぞれ制限されることが理解され得る。)
「Clamping member 28 which may be a conventional locking collar as is well known in the art, is securely fastened about the post 38 anchor the weights onto the platform 26.」(4欄12~15行)
(当技術分野で従来周知のロック用カラーであるクランプ部材28は固定支柱38の周りにしっかり留められ、錘をプラットフォーム26上に固定する。)
「As the apparatus 1 is lifted over the user's head, there is no resultant torque load being imposed on the user's wrist due to the center of gravity placement described previously. Use of a conventional barbell for this exercise results in an undesirable grasping angle, and the elbows are forced outward, as opposed to the grasping angle illustrated in FIG. 7 where the elbows are in. A more traditional hand placement may be facilitated by grasping the apparatus 1 by grasping either of the alternate gripping areas 18, 20.」(4欄30~39行)
(装置1が、使用者の頭部の上に持ち上げられるときに、上記した重力の中心に起因するトルク荷重が使用者の手首に課されることはない。この運動のための従来型バーベルの使用は、望ましくない把持角度をもたらし、図7に示すような把持角度とは対照的に、肘が外側に押し出される。より伝統的な手の配置は予備把持領域18、20のいずれかを掴んで装置1を把持することによって容易にすることができる。)
「
[図:0001404526000001.jpg]
」
「
[図:0001404526000002.jpg]
」
「
[図:0001404526000003.jpg]
」
「
[図:0001404526000004.jpg]
」
バー10は、2個の互いに対向するハンドル延長部12と、延長部の各々は、主ハンドル部分16、2つの予備把持領域18、20を有していることからすると、「バー及びハンドルアセンブリ」とは実質的にバー10を意味するものと認められる。
Fig.3及び4より、一対の主ハンドル部分16は、それぞれ、直線状に形成され、並行状で相対向していることが看取できる。
Fig.3より、一対の並列バーセグメント32、34は、一対の主ハンドル部分16相互の間隔に比し狭くして並行状に相対向し、予備把持領域18、20は、並列バーセグメント32、34から主ハンドル部分へ斜めに延び、接続部位は丸みを帯び、バー及びハンドルアセンブリは、平面視でループ状であることが看取できる。
上記記載事項、Fig.1及び2より重量支持プラットフォーム26とバー10とは、バー10の平坦部24において重量支持プラットフォーム26に溶接されていると推認できる。そして、平坦部24は溶接されているのであるから、Fig.2と合わせてみると、バー及びハンドルアセンブリは、側面視で台形状であるといえる。
上記記載事項、Fig.1、2及び3より、予備把持領域18、20が、約20度の傾斜角度で並列バーセグメント32、34から延びていると認められる。
(2)甲第2号証
本件特許の出願日前の昭和56年2月20日に頒布された実願昭54-101665号(実開昭56-19255号)のマイクロフィルムには、以下の事項が記載されている。
「2.実用新案登録請求の範囲
二点で折り曲がった部材1と2の間に、はしご状に3、4、5、6の部材が取り付けられたトレーニング器具」(1頁4~7行)
「1図、2図、3図は、それぞれ本考案の、平面図、正面図、側面図である。本考案は、1図で示すように、二点で折り曲がった部材1と2の間に、2図のように3、4、5、6の部材が、はしご状に取り付けられたものである。
使用する時は、静的トレーニングの方法によって、4図のように、胸の前で3と6を持ち、これを最大努力において数秒間、引っぱり、もしくは、押しつける、これを数度くりかえすことにより、胸と腕のトレーニングとなる。5図も同様であるが、4と5を使うため幅が狭くなり、関節の角度に変化をつけることができ効果が一層高くなる。また、この場合1と2が折れ曲がっているため、3と6が腕に当ることがなく、じゃまにならない。
さらに、3と4、3と5、1と2、それぞれの間隔を適当にとることによって、関節の角度に一層変化をもたせることができる。」
「以上のように、本考案は、構造がいたって簡単なため、安価であり、また、静的トレーニングとして使用されるため、安全性が高く、場所もとらないので、手軽にトレーニングを楽しむことができる。」
「10図の斜視図のように、円弧状にしてもほぼ同様に使用でき、その場合、7図、8図の使用例がバランスを養なうトレーニングとなる。」
「
[図:0001404526000005.jpg]
」
(3)甲第3号証
本件特許の出願日前の昭和56年3月2日に頒布された実願昭54-103653号(実開昭56-23156号)のマイクロフィルムには、以下の事項が記載されている。
「2. 実用新案登録請求の範囲
1. 直径2.5cm程度の軽量管材(1)~(6)を長辺80cm程度、短辺25cm程度の長四角形に曲げ加工し、両長辺の中心を結ぶ位置に、同じ管材の補強管(7)を取付て一体に成形し、各々の支持部に軟質ゴムの握り(8)を取付た構造の軽量管材を組合せた体育器具。」
「
[図:0001404526000006.jpg]
」
(4)甲第4号証
本件特許の出願日前の1982年8月24日に発行された米国特許第4345756号明細書には、以下の事項が記載されている。
「That is, the collar means 48 defines an internally threaded aperture 50 therethrough such that when a weight means 16 is placed on the bar as shown in FIG. 2, the collar means 48 may be threaded on to the externally threaded bar 46.」
(すなわち、カラー手段48は、図2に示すようにバー上に重り手段16が配置された時に、カラー48は、雄ネジ棒46にネジ締めすることができるように、雌ねじ山付きアパーチャ50を画定する。)
「FIG. 1 is a perspective illustration of an embodiment of the adjustable dumbbell apparatus of the present invention;」
(図1は、本発明の調整可能なダンベル装置の一実施形態の斜視図である。)
「FIG. 2 is a side view of an embodiment of an adjustable dumbbell apparatus of the present invention showing grasping thereof by an exerciser; and」
(図2は、本発明者によるその把持を調整可能なダンベル装置の一実施形態の側面図である。)
「Fig.1
[図:0001404526000007.jpg]
」
「Fig.2
[図:0001404526000008.jpg]
」
2 各甲号証に記載された発明及び技術事項
(1)甲1発明
上記「1(1)」より、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「上腕三頭筋運動具であって、
上腕三頭筋運動具は2つの主要構成要素である、バー及びハンドルアセンブリと、支持及びクランプアセンブリを備え、
バー及びハンドルアセンブリは、並列バーセグメント32、34及び2個の互いに対向するハンドル延長部を有し、ハンドル延長部の各々は、主ハンドル部分16、2つの予備把持領域18、20を有し、
一対の主ハンドル部分16は、それぞれ、直線状に形成され、並行状で相対向し、
一対の並列バーセグメント32、34は、一対の主ハンドル部分16相互の間隔に比し狭くして並行状に相対向し、予備把持領域18、20は、互いに主ハンドル部分16から並列バーセグメント32、34に向けて内側に延び、接続部位は丸みを帯び、バー及びハンドルアセンブリは、平面視でループ状であり、側面視で台形状であり、2つの予備把持領域18、20が、約20度の傾斜角度で並列バーセグメント32、34から延び、
支持及びクランプアセンブリは、重量支持プラットフォーム26と解放可能なクランプ手段28を有し、
バー及びハンドルアセンブリは、重量支持プラットフォーム26の下側に、バー10の平坦部24が溶接され、
ロック用カラーとすることができるクランプ手段28は、錘40を重量支持プラットフォーム26上に固定する、
上腕三頭筋運動具。」
(2)甲2技術事項
「部材をはしご状に取り付け、長辺を円弧状にしたトレーニング器具。」
(3)甲3技術事項
「直径2.5cm程度の軽量管材を長辺80cm程度、短辺25cm程度の長四角形に曲げ加工し、両長辺の中心を結ぶ位置に、同じ管材の補強管を取付て一体に成形し、各々の支持部に軟質ゴムの握りを取付た構造の軽量管材を組合せた体育器具。」
(4)甲4技術事項
「重りを外した状態の調整可能なダンベル装置。」
3 無効理由1について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「『それぞれ、直線状に形成され、並行状で相対向している』『一対の主ハンドル部分16』」、「『平面視でループ状』の『バー及びハンドルアセンブリ』」及び「上腕三頭筋運動具」は、それぞれ、本件特許発明1の「ほぼ並行状で相対向している一対の第1グリップ部」、「全体を平面からみてほぼ横長矩形枠」及び「トレーニング器具」に相当する。
甲1発明の「バー及びハンドルアセンブリ」は、「並列バーセグメント32、34及び2個の互いに対向するハンドル延長部を有し、ハンドル延長部の各々は、主ハンドル部分16、2つの予備把持領域18、20、を有し」、「一対の並列バーセグメント32、34は、一対の主ハンドル部分16相互の間隔に比し狭くして並行状に相対向し」ているところからすると、甲1発明の「バー及びハンドルアセンブリ」における「『並列バーセグメント32、34』及び『2つの予備把持領域18、20』」の部分は、本件特許発明1の「『第1グリップ部相互の間隔に比し狭くして』『ほぼ並行状に相対向している一対の第2グリップ部』」に相当する。
そして、甲1発明の各「2つの予備把持領域18、20」と「主ハンドル部分16」との両端部同士が接続部位は丸みを帯びて接続されていることは明らかである。
甲1発明の「バー及びハンドルアセンブリ」は、平面視でループ状であり、「バー及びハンドルアセンブリ」が有する「一対の主ハンドル部分16」は、それぞれ、直線状に形成され、並行状で相対向し、「一対の並列バーセグメント32、34」は、並行状に相対向しているから、甲1発明の「バー及びハンドルアセンブリ」は、本件特許発明1の「全体を平面からみてほぼ横長矩形枠」に相当し、一体のループ状に形成して成るものとの点で共通する。
甲1発明の「バー及びハンドルアセンブリ」の「2つの予備把持領域18、20」は、互いに主ハンドル部分16から並列バーセグメント32、34に向けて内側に延びているから、「バー及びハンドルアセンブリ」は、中央部分が相互に近接するように平面からみて矩形枠の内方に向かってやや窄まり状に形成されているといえる。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の各点で相違する。
[一致点]
「ほぼ並行状で相対向している一対の第1グリップ部と、該第1グリップ部それぞれの両端部同士を接続し、第1グリップ部相互の間隔に比し狭くしてほぼ並行状に相対向している一対の第2グリップ部とによって全体を平面からみてほぼ横長矩形枠を呈した一体のループ状に形成して成り、第1グリップ部は直線状に形成され、第2グリップ部は、中央部分が相互に近接するように平面からみて矩形枠の内方に向かってやや窄まり状に形成されていることを特徴とするトレーニング器具。」
[相違点]
本件特許発明1は、「第2グリップ部」が、「正面からみて弓形に湾曲され」ているのに対し、甲1発明のバー及びハンドルアセンブリの「並列バーセグメント32、34」及び2個の互いに対向するハンドル延長部の各々の「2つの予備把持領域18、20」は、側面視で台形状である点。
イ 判断
上記相違点について、以下検討する。
本件特許発明1の「弓形に湾曲」との特定事項について、
(ア)通常の意味は、「弓のように湾曲した形」であること、及び数学的な意味であっても「円の一部」であること(乙第1号証及び乙第2号証参照。)、
(イ)本件特許明細書に特段の定義付けがなされていないこと、
(ウ)本件特許明細書の段落【0023】によれば、「第2グリップ部1b自体は、その相互の間隔が内方向に向かってやや窄まり状になっていて、その窄まりの方向にほぼ直交する方向で弓形に湾曲していることで略ウイング型アーチ状となって」おり、「そのアーチは円周の4分の1の弓形を成して湾曲して成る間隔の狭い部分となっている」ことにより、全体形状が略ウイング型アーチ状に形成されていること、
(エ)本件特許明細書の段落【0009】によれば、「第2グリップ部1bは正面からみて弓形に湾曲され、中央部分が相互に近接するように平面からみて矩形枠の内方に向かってやや窄まり状に形成されている」ことにより、第2グリップ部1bの弓形湾曲形状は、その山部分によって身体各部を選択して押し当てることで例えば首部や腰部のストレッチ、車椅子に乗った状態でのリハビリトレーニング、椅子を使うか仰臥もしくは起立した状態での背中へのマッサージ等の多面的なトレーニングを可能にすると共に、逆に第2グリップ部1bをその谷部分として身体各部位にあてがい、第1グリップ部1aを把持して持ち上げるように使用できること、
(オ)本件特許図面の図2(b)に具体的形状が図示されていること、
が、一般的な用語の意味、並びに本件特許明細書及び図面から把握できる。
以上のことからすると、本件特許発明の「弓形に湾曲」とは、円弧の一部と理解することができるし、そのように解釈することが、妥当な解釈といえる。
そこで甲1発明についてみるに、甲1発明の「バー及びハンドルアセンブリ」は、「側面視で台形状」であって、数学的な意味のみならず、通常の意味からしても、円弧形状とはいえないのであるから、本件特許発明1の「正面からみて弓形に湾曲され」た「第2グリップ部」に相当し得ない。
してみると、上記相違点は実質的な相違点であって、甲1発明は、上記相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えていない。
よって、本件特許発明1と甲1発明との間には、相違点が存在するから、本件特許発明1は、甲第1号証発明ではない。
したがって、本件特許発明1が、甲1発明であるとすることはできない。
ウ 請求人の主張について
(ア)請求人は、甲1発明として錘40を備えないバー10を認定の上、
“甲1発明のバー10の水平部分24は第2グリップ部に相当。本件特許発明1がトレーニング器具であるのに対し、甲1発明は、トレーニング器具の一部である点で一応異なる。甲1発明も第2グリップ部分を手で握って運動可能であるためトレーニング器具そのものであるから、本件特許発明1は新規性がない”(審判請求書)及び、
“甲第1号証には、「バー10にプラットフォーム26を固定され、…」あるいは、「プラットフォーム26をバー10に取り付けることが、…溶接によって達成される。」と記載されており、溶接前のバー10と溶接後のバー10が記載されているといえます。溶接前のバー10は重り40を有しません。そして、バー10がトレーニング器具であるかどうかは、トレーニング器具として用いることができるかどうかで判断すべきです。作った人間がトレーニング器具として認定すると、トレーニング器具であり、作った人間がトレーニング器具でないと認定するとトレーニング器具でないとするならば、作った人間が死んでしまって分からないような場合、トレーニング器具かどうかは、永遠に分からないことになります。バー10は、本件特許発明とその構成が同一であることから、トレーニング器具として用い得ることは明らかですから、トレーニング器具であることは明白です。”(口頭審理陳述要領書)
旨、主張する。
しかし、甲第1号証に記載された、上腕三頭筋運動具は、錘40があって、はじめて運動具として機能するものである、すなわち、錘40と一体不可分の上腕三頭筋運動具であるから、そもそも、錘40を除外したバー10は上腕三頭筋運動具の一部であって、甲第1号証においては、バー10のみで運動具として用いることを想定していない。
よって、請求人の主張は、前提において、誤認したものであり、採用し得ない。
(イ)請求人は、
“「弓形」とは、広辞苑第4版において、「弦を張った弓のような形。ゆみなり。」とされ、また、「湾曲」は、「弓形に曲がること」とされており、「弓」には、円弧状のものに限らず、甲第5号証、甲第7号証に示すように、台形状のものもあるため、バー10において、台形山状に折曲された代替グリップエリアは、弓形に湾曲されているともいえる。従って、本件特許発明1の構成代替グリップエリアが台形山状に折曲されていたとしても、本件特許発明1の構成Eは、バー10の構成e―1と同じであるので、これをもって、本件特許発明1がバー10から新規性を有するとは言えない。
上述しましたように、広辞苑第4版(甲第5号証、第6号証参照)において、「弓形」とは、「弦を張った弓のような形。ゆみなり。」とされ、また、「湾曲」は、「弓形に曲がること」とされており、「弓」には、円弧状のものに限らず、甲第5号証に示すように、台形状のものも多く存在するため、台形状も弓形に含まれことは明白です。”(口頭審理陳述要領書)、及び
“被請求人は、9月29日付上申書において、乙第1号証、及び乙第2号証に記載された「弓形」の数学用語としての意味を、技術用語の意味として解釈すべき旨主張されましたが、数学用語は学術用語ではありますが、技術用語は数学用語に限られるものではありません。仮に、技術用語として数学用語のみの使用が許されるとしたら、本件特許発明1の「直線」は、両端が無く無限に長い直線を指すことになります。技術用語としての「弓形」に、台形等の円弧(円の一部)状でないものを含むことは、特許出願、又は実用新案登録出願に係る公報において、円弧状(円の一部)でないものについて広く使用されていることから明らかです(甲第8号証から甲第14号証参照)。”(上申書)
旨、主張する。
しかし、甲第5号証及び甲第7号証には、弓の図が記載され、台形のように見えるものの、弓の形として台形が含まれるとは記載されていないし、上記イのとおり、本件特許発明の「弓形に湾曲」とは、円弧の一部と解され、台形状は含まないものである。仮に、本件特許発明1の第2グリップ部が台形状であるとすると、上記イ(エ)で摘記した多面的なトレーニングにおいて、効果を奏し得ないことは、明らかである。
また、請求人が提示した甲第8号証乃至甲第12号証及び甲第14号証において、円弧の一部でない形状のものを「弓形」と表記しているものの、上記イのとおり、本件特許発明の「弓形に湾曲」とは、円弧の一部と解されるのであるから、円弧の一部でない形状のものを「弓形」の解釈として採用できるものではない。
他方、乙第1号証及び乙第2号証からすれば、「弓形」は円弧の一部と理解できる。
よって、請求人の主張は採用できない。
(2)本件特許発明2について
上記第3のとおり、本件特許発明2は、本件特許発明1のすべての特定事項を有し、さらに限定を付加したものである。
上記(1)のとおり、本件特許発明1は、甲1号証発明ではないのであるから、本件特許発明2も、甲1号証発明であるとすることはできない。
(3)小括
よって、本件特許発明1及び本件特許発明2についての特許は、請求人が主張する無効理由1によって無効とすることはできない。
4 無効理由2について
(1)本件特許発明1について
ア 判断
上記3(1)アのとおり、本件特許発明1と甲1発明とは上記相違点で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。
甲2技術事項には、正面からみて弓形に湾曲されたトレーニング器具が記載されている。
しかし、甲1発明は、重量支持プラットフォーム26の下側に、バー10の平坦部24が溶接されているから、溶接の強度を勘案すると、上記甲2技術事項を適用して、当該平坦部24を弓形に湾曲することには阻害要因があるし、甲1発明において、正面からみて弓形に湾曲させることが設計的事項ともいえない。
また、上記2(3)及び(4)のとおり、甲3技術事項及び甲4技術事項には、弓形に湾曲したグリップ部は示されていない。
よって、本件特許発明1は、甲1発明から、当業者が容易に発明できたものとすることはできないし、また、甲1発明、及び甲2技術事項乃至甲4技術事項から、当業者が容易に発明できたものとすることはできない。
そして、本件特許発明1には、上記相違点に係る発明特定事項を備えることにより、本件特許明細書の段落【0007】に記載されているとおりのトレーニング及びストレッチにおいて、多用途に使用することができるという効果を奏するものである。
これに対し、甲1発明の「上腕三頭筋運動具」が「錘40」を備えることが必須の要件であることからすれば、本件特許明細書の段落【0007】に記載されている使用方法が採用できないことは明らかであるし、そのような使用方法を想定しているものともいえない。
イ 請求人の主張について
請求人は、
“本件特許明細書の段落0004には、筋力ストレッチトレーニング、筋力アップトレーニングが課題として挙げられており、三頭筋を伸展し、鍛える甲第1号証発明と課題が共通する。また、甲第2号証1頁「3.考案の詳細な説明」の1行目には、「本考案は、筋力を増強させるために」と記載されており、甲第3号証には、2頁の「3.考案の詳細な説明」の1から2行目に筋力強化用体育器具に関する」と記載されているため、甲第1号証発明は、甲第2、第3号証とも課題が共通するため、甲第2、第3号証とともに進歩性の判断における引例として適当である。”(口頭審理陳述要領書)、
“また、仮に台形状が弓形に含まれないとしても、甲第2号証の図10には、弓形のものが記載されており、また、バー10と、甲第2号証の図10に係る発明は、トレーニング器具である点で技術分野が共通し、筋力を増加させるためのものに供されるという課題が共通し、両手の把持幅を変更可能で、種々のトレーニングに用い得るという同様の作用・効果を有する点で共通し、特に両者を組み合わせるにあたり阻害要因も無いので、バー10と甲第2号証に係る発明を組み合わせて本件特許発明1、2とすることは、容易です。また、合議体の見解で、甲1発明の代替の把持部分をほぼ並行状にするのに阻害要因があるとするのは、そもそも本件特許発明の第2グリップ部自体が平行でないので、これも失当です。”(口頭審理陳述要領書)、
“仮に、本件特許発明1、2とバー10が、トレーニング器具であるか否かに加えて、本件特許発明1、2の第2グリップ部が弓形(円弧状)であるのに対しバー10の第2グリップ部相当部が台形である点においても異なるとしても、甲第2号証の図10には、第2グリップ部相当部が正面視で円弧状のものが記載されており、バー10における第2グリップ部相当部の台形状の正面視形状を甲第2号証図10発明の円弧状の正面視形状に置き換えることで、本件特許発明1、2を容易に創作することができます。ここで、甲第1号証の発明の目的は、複数の把持位置を備えるウエイトリフティング装置を提供することであり(審判請求書添付資料2の翻訳文3ページ29行目参照)、甲第2号証の3ページ13行目には、「(部材)4と5を使うため幅が狭くなり」とあり、両者は、複数の把持位置を設けるという点で課題が共通するため、バー10に甲第2号証の発明を組み合わせるにあたって強い動機づけが有るといえます。以上のことから、本件特許発明1、2は、バー10から進歩性を有さないことが明らかです。”(上申書)
旨、主張する。
しかし、上記3(1)ウ(ア)のとおり、甲第1号証に記載された、上腕三頭筋運動具は、錘40と一体不可分の上腕三頭筋運動具である。そして、甲1発明の認定のとおり、バー10に平坦部24を設けることにより、バー及びハンドルアセンブリと、錘40が固定される重量支持プラットフォーム26とを溶接するのであるから、バー10の平坦部24を正面からみて弓形に湾曲にすることはできない。
また、甲第1号証の上腕三頭筋運動具におけるバー及びハンドルアセンブリのみを運動具としようとしても、側面視で台形状であるバー及びハンドルアセンブリを、「正面からみて弓形に湾曲」とする動機付けが、甲第1号証には記載も示唆もされていないのであるから、上記相違点は充足し得ない。
そうすると、甲2技術事項乃至甲4技術事項に錘を設けないトレーニング器具が記載され、甲2技術事項に円弧状のトレーニング器具が記載されているからといって、甲1発明は、錘40と一体不可分の上腕三頭筋運動具であるから、甲1発明に、甲2技術事項乃至甲4技術事項を適用するには阻害要因がある。
なお、甲2技術事項は、バランストレーニングのため円弧状にしており、把持位置を複数設けるために円弧状としているものではない。この点からも、甲1発明に、甲2技術事項を適用する動機付けがあるとはいえない。
(2)本件特許発明2について
上記第3のとおり、本件特許発明2は、本件特許発明1のすべての特定事項を有し、さらに限定を付加したものである。
上記(1)のとおり、本件特許発明1は、甲1号証発明から、当業者が容易に発明できたものとすることはできないし、また、甲第1号証発明、及び甲2技術事項乃至甲4技術事項から、当業者が容易に発明できたものとすることはできないのであるから、本件特許発明2も、甲1号証発明から、当業者が容易に発明できたものとすることはできないし、また、甲第1号証発明、及び甲2技術事項乃至甲4技術事項から、当業者が容易に発明できたものとすることはできない。
(3)小括
よって、本件特許発明1及び本件特許発明2についての特許は、請求人が主張する無効理由2によって無効とすることはできない。
5 無効理由3について
審判請求人は、上記無効理由1及び無効理由2に加え、令和4年10月7日の口頭審理及び、同年同月21日に提出された上申書において、以下の無効理由(甲2発明に基づく進歩性欠如)(以下「無効理由3」という。)を主張したところ、念のため、以下、検討する。
(1)無効理由3(甲2発明に基づく進歩性欠如)
甲第2号証の図10に係る発明は、第2グリップ部相当部(符号1と2の部材)の中央部分が相互に近接するように窄まり状に形成されていない点で、本件特許発明1と異なります。一方、甲第1号証のバー10は、第2グリップ部相当部が、相互に近接するよう窄まっており、これを甲第2号証の図10に係る発明の第2グリップ部に適用することで、本件特許発明1を容易に創作することが可能です。(請求人上申書6.(2))
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2技術事項とを対比する。
甲2技術事項の「トレーニング器」は、本件特許発明1の「トレーニング器」に相当し、甲2技術事項は、部材をはしご状に取り付け、長辺を円弧状にしたトレーニング器具であるから、本件特許発明1の「『直線状に形成され、』、『並行状で相対向している一対の第1グリップ部』」、「第1グリップ部それぞれの両端部同士を接続し、第1グリップ部相互の間隔に比し狭くして並行状に相対向している一対の第2グリップ部」、「全体を平面からみて横長矩形枠」を備え、一体のループ状に形成して成るといえる。
また、甲2技術事項は、長辺を円弧状にしたトレーニング器具であるから、第2グリップ部は正面からみて弓形に湾曲されているといえる。
そうすると、本件特許発明1と甲2技術事項とは、以下の点で一致し、以下の各点で相違する。
[一致点]
「並行状で相対向している一対の第1グリップ部と、該第1グリップ部それぞれの両端部同士を接続し、第1グリップ部相互の間隔に比し狭くして並行状に相対向している一対の第2グリップ部とによって全体を平面からみて横長矩形枠を呈した一体のループ状に形成して成り、第1グリップ部は直線状に形成され、第2グリップ部は正面からみて弓形に湾曲されているトレーニング器具。」
[相違点3]
本件特許発明1は、「中央部分が相互に近接するように平面からみて矩形枠の内方に向かってやや窄まり状に形成されている」であるのに対し、甲2技術事項は、部材がはしご状に取り付けたものであって、平行である点。
イ 判断
上記1(2)のとおり、甲第2号証には、はしご状の部材を窄まり状とすることは記載も示唆もされていないから、本件特許発明1は、甲2技術事項から、当業者が容易に発明できたものとすることはできない。
甲1発明の「上腕三頭筋運動具」は、その使用方法からすれば、「一対の主ハンドル部分16」相互の間隔は、使用者の両手の間隔に設定され、「一対の並列バーセグメント32、34」の間隔は、重量支持プラットフォーム26の幅及び長さに対応して設定されているところ、「バー及びハンドルアセンブリ」の「把持領域18、20」は、並列バーセグメント32、34から主ハンドル部分へ斜めに延びているから、「バー及びハンドルアセンブリ」は、中央部分が相互に近接するように平面からみて矩形枠の内方に向かってやや窄まり状に形成されているといえる。
ここで、甲1発明の「把持領域18、20」が「把持領域」といえるのは、上記のとおり、従来型バーベルの使用における把持角度でバーベルを持ち上げるためであることからすると、甲1発明の「把持領域18、20」を「把持領域」というためには、甲1発明の「上腕三頭筋運動具」が「錘40」を備えることが必須の要件となる。
ここで、甲2技術事項は、部材をはしご状に取り付けただけのものであって、錘を取り付けることを想定しているものではないから、当然、甲1発明の重量支持プラットフォーム26を備えることも想定していない。
そして、上記のとおり、甲1発明が、重量支持プラットフォーム26を備え、その幅及び長さに対応して「一対の並列バーセグメント32、34」の間隔を設定していることからすると、甲2技術事項において、平行なはしご状の部材を窄まり状にする動機付けは見当たらない。
また、甲2技術事項には部材1と部材2の間隔を変えることが示唆されているところ、甲第1号証の上腕三頭筋運動具におけるバー及びハンドルアセンブリのみを運動具とし、甲2技術事項に甲1発明を適用しようとしても、部材1と部材2を湾曲させると、部材4と部材5を短くし、部材3と部材6を長くしなければならず、甲2技術事項に甲1発明を適用することにとどまらず、その余の部材の改変を伴うこととなり、当業者が容易になし得るものとはいえない。
さらに、上記1(2)のとおり、甲2技術事項が構造がいたって簡単であることが前提であることからすると、甲2技術事項に甲1発明を適用して部材を湾曲させることは想定外といわざるを得ない。
そうすると、甲2技術事項において、上記相違点3とすることは、当業者が容易に発明できたとすることはできない。
よって、本件特許発明1は、甲2技術事項から、当業者が容易に発明できたものとすることはできないし、また、甲2技術事項及び甲1発明から、当業者が容易に発明できたものとすることはできない。
ウ 請求人の主張について
請求人は、
“甲第2号証の図10に係る発明は、第2グリップ部相当部(符号1と2の部材)の中央部分が相互に近接するように窄まり状に形成されていない点で、本件特許発明1と異なります。一方、甲第1号証のバー10は、第2グリップ部相当部が、相互に近接するよう窄まっており、これを甲第2号証の図10に係る発明の第2グリップ部に適用することで、本件特許発明1を容易に創作することが可能です。本件特許の平成17年12月5日付意見書(甲第15号証)の第2ページ15行目には、「更に第2グリップ部における窄まり形態は、全体形状を補強させており、例えば、引用文献1(甲第2号証)におけるようなハンドルとなる中間部材(符号4、5)の補強によるはしご状形態とすることは不要であります。」と記載されており、つまり、甲第2号証図10に係る発明から中間部材4、5を除くにあたっては、第2グリップ部相当部を補強するという課題を有しています。一方、甲第1号証発明のバー10の第2グリップ部相当部は、重り40の荷重によるモーメントを平面視における内側に向けるために窄められております。(第2グリップ部相当部のように、内側に倒れるか外側に倒れるかが一定せず不安定な部材について、内側に傾斜させることで安定させる技術は、椅子や建築物等多くの構造物で利用されている周知・慣用技術です。)すると、両者は、第2グリップ部、及び第2グリップ部相当部を窄めることについて課題、及び効果が共通しております。従って、甲第2号証図10の発明に、甲第1号証のバー10における第2グリップ部相当部の窄まり形状を適用するのは、強い動機づけがあるため、極めて容易であり、本件特許発明1は、甲第2号証図10に係る発明から進歩性を有しません。加えて、甲第1号証にかかる発明の第1グリップ部相当部と、第2グリップ部相当部の接続部位のように、パイプの折れ曲がり部に丸味を帯びさせるのは、パイプ状のものを曲げ加工した際にパイプが潰れないようにするための慣用技術です。つまり、甲第2号証の図10に係る発明に、甲第1号証に記載の慣用技術を適用することで、本件特許発明2を容易に創作できるため、本件特許発明2も甲第2号証図10に係る発明から進歩性を有しません。”(上申書)
旨、主張する。
しかし、甲2技術事項は、部材がはしご状に取り付けられているトレーニング器具であるところ、部材4及び部材5は、必須の構成要素といえる。
してみると、甲2技術事項のトレーニング器具において、必須の構成要素である部材4及び部材5を取り除くことは、想定されてないのであるから、甲2技術事項に、甲1発明の号証の一対の主ハンドル部分16相互の間隔に比し狭くして並行状に相対向した一対の並列バーセグメント32、34を適用する動機付けは、存在しないといえる。
そして、上記イのとおり、甲2技術事項において、平行なはしご状の部材を窄まり状にする動機付けは見当たらないのであるから、甲2技術事項に甲1発明を適用する動機付けもない。
よって、請求人の主張は採用できない。
(3)本件特許発明2について
上記第3のとおり、本件特許発明2は、本件特許発明1のすべての特定事項を有し、さらに限定を付加したものである。
上記(1)のとおり、本件特許発明1は、甲2技術事項から、当業者が容易に発明できたものとすることはできないし、また、甲2技術事項及び甲第1号証発明から、当業者が容易に発明できたものとすることはできないのであるから、本件特許発明2も、甲2技術事項から、当業者が容易に発明できたものとすることはできないし、また、甲2技術事項及び甲第1号証発明から、当業者が容易に発明できたものとすることはできない。
(4)小括
よって、本件特許発明1及び本件特許発明2についての特許は、請求人が主張する無効理由3によって無効とすることはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、無効理由1乃至3はいずれも理由がないものであり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明1及び2についての特許は、無効理由1乃至3によっては、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-800014