特許異議申立
2022-700395
部品をコーティングするコーティング装置
- 審判番号
- 2022-700395
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-532113
- 登録番号
- 6964668
- 請求日
- 2022年05月09日
- 審決日
- 2024年01月25日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】デュール システムズ アーゲー
- 【権利者代理人】木村 満
- 【権利者代理人】森川 泰司
- 【権利者代理人】長谷川 陽子
- 【権利者代理人】山本 洋美
- 【権利者代理人】和田 朋子
- 【異議申立人】アトラス コプコ イーアーエス ゲーエムベーハー
- 【異議申立人代理人】今井 秀樹
- 審判長/審判官
- 審判長 亀ヶ谷 明久
- 審判官 門前 浩一
- 審判官 瀬下 浩一
- 分類
- P1651.113-YAA(B05C) / P1651.121-YAA(B05C) / P1651.536-YAA(B05C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の4第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第2項第3号、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6964668号発明「部品をコーティングするコーティング装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6964668号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-22〕について訂正することを認める。
特許第6964668号の請求項1-22に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許(特許第6964668号)に係る出願は、2017年(平成29年)12月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年12月14日(以下「本件優先日」という。)(DE)独国)を国際出願日とする出願であって、令和3年10月21日に特許権の設定登録がされ、同年11月10日に特許掲載公報が発行された。その後、令和4年5月9日に特許異議申立人であるアトラス コプコ イーアーエス ゲーエムベーハー(以下、「申立人」ともいう。)によって、請求項1~14(全請求項)に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
その後、当審は、令和4年8月17日付けで取消理由を通知し(発送は同年同月19日)、この取消理由通知に対し、特許権者は、その指定期間内である同年11月17日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。当審は、同年11月29日付けで申立人に訂正請求があった旨を通知し(発送は同年12月1日)、この通知に対し、申立人は、その指定期間内である令和5年1月19日に意見書を提出した。
また、申立人は、令和5年8月3日付けで、異議取下書を提出したが、当審は、同年8月15日付けで申立人に却下理由(特許法第120条の4第1項の規定により取下不可)を通知し、期間を指定して弁明書を提出する機会を設けたところ、申立人は、弁明書を提出せず、当審は、同年10月10日付けで、上記異議取下書に係る手続を却下する決定をした。
第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨
令和4年11月17日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」ともいう。)の請求の趣旨は、「特許第6964668号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~22について訂正することを求める。」というものである。
2 本件訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の内容は、特許請求の範囲の訂正に係る以下の訂正事項からなるものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「a1)コーティングされる部品(1)にコーティング剤ジェットを供給する少なくとも1つのノズルと、
a2)前記ノズルを介したコーティング剤の放出を制御する少なくとも1つのプリントヘッドバルブと、」と記載されているのを、「a1)コーティングされる部品(1)にコーティング剤ジェットを供給する複数のノズルと、
a2)前記ノズルを介したコーティング剤の放出を制御する複数のプリントヘッドバルブと、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3、6、8~14も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「e)前記ロボット制御装置(5)は、計時された特定の第1サイクル時間で、前記コーティングロボット(2)を制御し、
f)前記プリントヘッド制御装置(7)は、計時された特定の第2サイクル時間で、前記プリントヘッド(3)の前記プリントヘッドバルブを制御し、」と記載されているのを、「e)前記ロボット制御装置(5)は、計時された特定の第1サイクル時間で周期的に、前記コーティングロボット(2)を制御し、
f)前記プリントヘッド制御装置(7)は、計時された特定の第2サイクル時間で周期的に、前記プリントヘッド(3)の前記プリントヘッドバルブを制御し、」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5、6、8~14も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
(訂正事項3-1)
特許請求の範囲の請求項7に、「前記プリントヘッド制御装置(7)は、
前記プリントヘッド(3)の前記プリントヘッドバルブに加え、
a)複数のコーティング手段のうちの1つを選択し、前記選択されたコーティング手段を前記プリントヘッド(3)に送るカラー変更装置と、
b)計量装置、特に、塗布される前記コーティング剤を計量する計量ポンプと、
を制御する、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のコーティング装置。」とあるうち、請求項1を引用する部分について独立形式に改め、「a)プリントヘッド(3)であって、
a1)コーティングされる部品(1)にコーティング剤ジェットを供給する少なくとも1つのノズルと、
a2)前記ノズルを介したコーティング剤の放出を制御する少なくとも1つのプリントヘッドバルブと、
を有するプリントヘッド(3)と、
b)コーティングされる前記部品(1)の表面上で前記プリントヘッド(3)をガイドする多軸コーティングロボット(2)と、
c)前記コーティングロボット(2)を制御するロボット制御装置(5)と、
を有し、コーティング剤で部品をコーティングし、特に、自動車の車体部品(1)を塗装するコーティング装置であって、
d)前記プリントヘッドバルブを制御するプリントヘッド制御装置(7)と、
e)出力側で前記プリントヘッド制御装置(7)に接続され、前記コーティングされる部品(1)の空間位置を測定し、前記プリントヘッド制御装置(7)に前記コーティングされる部品(1)の前記空間位置を送信する測定装置(6)、または
f)前記コーティングされる部品を正確に位置決めするための機械的位置決め装置と、を備え、
前記プリントヘッド制御装置(7)は、
前記プリントヘッド(3)の前記プリントヘッドバルブに加え、
g)複数のコーティング手段のうちの1つを選択し、前記選択されたコーティング手段を前記プリントヘッド(3)に送るカラー変更装置と、
h)計量装置、特に、塗布される前記コーティング剤を計量する計量ポンプと、
を制御する、
ことを特徴とするコーティング装置。」と訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8~14も同様に訂正する)。
(訂正事項3-2)
特許請求の範囲の請求項7に、「前記プリントヘッド制御装置(7)は、
前記プリントヘッド(3)の前記プリントヘッドバルブに加え、
a)複数のコーティング手段のうちの1つを選択し、前記選択されたコーティング手段を前記プリントヘッド(3)に送るカラー変更装置と、
b)計量装置、特に、塗布される前記コーティング剤を計量する計量ポンプと、
を制御する、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のコーティング装置。」とあるうち、請求項4を引用する部分について独立形式に改め、「a)プリントヘッド(3)であって、
a1)コーティングされる部品(1)にコーティング剤ジェットを供給する少なくとも1つのノズルと、
a2)前記ノズルを介したコーティング剤の放出を制御する少なくとも1つのプリントヘッドバルブと、
を有するプリントヘッド(3)と、
b)コーティングされる前記部品(1)の表面上で前記プリントヘッド(3)をガイドする多軸コーティングロボット(2)と、
c)前記コーティングロボット(2)を制御するロボット制御装置(5)と、
を有し、コーティング剤で部品をコーティングし、特に、自動車の車体部品(1)を塗装するコーティング装置であって、
d)前記プリントヘッドバルブを制御するプリントヘッド制御装置(7)により特徴付けられ、
e)前記ロボット制御装置(5)は、計時された特定の第1サイクル時間で、前記コーティングロボット(2)を制御し、
f)前記プリントヘッド制御装置(7)は、計時された特定の第2サイクル時間で、前記プリントヘッド(3)の前記プリントヘッドバルブを制御し、
g)前記プリントヘッド制御装置(7)の前記第2サイクル時間が前記ロボット制御装置(5)の前記第1サイクル時間より短く、
前記プリントヘッド制御装置(7)は、
前記プリントヘッド(3)の前記プリントヘッドバルブに加え、
h)複数のコーティング手段のうちの1つを選択し、前記選択されたコーティング手段を前記プリントヘッド(3)に送るカラー変更装置と、
i)計量装置、特に、塗布される前記コーティング剤を計量する計量ポンプと、
を制御する、
ことを特徴とするコーティング装置。」と記載して、新たに請求項15とする。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8に
「前記プリントヘッド制御装置(7)は、前記プリントヘッド(3)により塗布される前記コーティング剤ジェットを、コーティングされる前記部品(1)の表面上で、±2mm未満、±1mm未満、±0.5mm未満または、さらに±0.1mm未満の空間分解能で、高度に動的かつ正確に時間制御してスイッチオンおよびスイッチオフできる、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のコーティング装置。」とあるうち、請求項4を引用する請求項7を引用する部分について、「前記プリントヘッド制御装置(7)は、前記プリントヘッド(3)により塗布される前記コーティング剤ジェットを、コーティングされる前記部品(1)の表面上で、±2mm未満、±1mm未満、±0.5mm未満または、さらに±0.1mm未満の空間分解能で、高度に動的かつ正確に時間制御してスイッチオンおよびスイッチオフできる、
ことを特徴とする請求項15に記載のコーティング装置。」と記載して、新たに請求項16とする。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9に「a)前記コーティング装置は、前記コーティング剤を計量し、それを前記プリントヘッド(3)に搬送する計量装置を制御する計量制御装置(8)を有し、および/または
b)前記計量制御装置(8)は、前記計量装置の前記制御を、前記プリントヘッド(3)の少なくとも1つの前記プリントヘッドバルブの前記制御と同期させるために、前記ロボット制御装置(5)に接続され、および/または
c)前記計量制御装置(8)は、前記計量装置の前記制御を、前記コーティングロボット(2)の前記制御と同期させるために、前記ロボット制御装置(5)に接続される、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のコーティング装置。」とあるうち、請求項4を引用する請求項7を直接または間接的に引用する部分について、「a)前記コーティング装置は、前記コーティング剤を計量し、それを前記プリントヘッド(3)に搬送する計量装置を制御する計量制御装置(8)を有し、および/または
b)前記計量制御装置(8)は、前記計量装置の前記制御を、前記プリントヘッド(3)の少なくとも1つの前記プリントヘッドバルブの前記制御と同期させるために、前記ロボット制御装置(5)に接続され、および/または
c)前記計量制御装置(8)は、前記計量装置の前記制御を、前記コーティングロボット(2)の前記制御と同期させるために、前記ロボット制御装置(5)に接続される、
ことを特徴とする請求項15または16に記載のコーティング装置。」と記載して、新たに請求項17とする。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項10に「前記プリントヘッド(3)の前記少なくとも1つのプリントヘッドバルブは、最長で100ms、50ms、20ms、5ms、1ms、または最長で100μsの短いスイッチ時間を有する、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のコーティング装置。」とあるうち、請求項4を引用する請求項7を直接または間接的に引用する部分について、「前記プリントヘッド(3)の前記少なくとも1つのプリントヘッドバルブは、最長で100ms、50ms、20ms、5ms、1ms、または最長で100μsの短いスイッチ時間を有する、
ことを特徴とする請求項15~17のいずれか1項に記載のコーティング装置。」と記載して、新たに請求項18とする。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項11に「生産計画(9)との通信のための第1データインターフェースにより特徴付けられる、
請求項1~10のいずれか1項に記載のコーティング装置。」とあるうち、請求項4を引用する請求項7を直接または間接的に引用する部分について、「生産計画(9)との通信のための第1データインターフェースにより特徴付けられる、
請求項15~18のいずれか1項に記載のコーティング装置。」と記載して、新たに請求項19とする。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項12に「制御ファイル、特に、制御ファイルにより予め判断されるグラフィックで前記部品(1)をコーティングするグラフィックファイルを受信する第2データインターフェース(10)により特徴付けられる、
請求項1~11のいずれか1項に記載のコーティング装置。」とあるうち、請求項4を引用する請求項7を直接または間接的に引用する部分について、「制御ファイル、特に、制御ファイルにより予め判断されるグラフィックで前記部品(1)をコーティングするグラフィックファイルを受信する第2データインターフェース(10)により特徴付けられる、
請求項15~19のいずれか1項に記載のコーティング装置。」と記載して、新たに請求項20とする。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項13に「前記第2データインターフェースは、
a)USBスティックリーダー、および/または
b)メモリーカードリーダー、および/または
c)生産制御のためのインターフェース
を有する、
ことを特徴とする請求項12に記載のコーティング装置。」とあるうち、請求項4を引用する請求項7を直接または間接的に引用する請求項12を引用する部分について、「前記第2データインターフェースは、
a)USBスティックリーダー、および/または
b)メモリーカードリーダー、および/または
c)生産制御のためのインターフェース
を有する、
ことを特徴とする請求項20に記載のコーティング装置。」と記載して、新たに請求項21とする。
(10)訂正事項10
(訂正事項10-1)
特許請求の範囲の請求項14に、「a)前記プリントヘッド(3)は、スプレーとは対照的に、コーティング媒体の狭く制限されたジェットを吐出し、および/または
b)前記プリントヘッド(3)は、ジェットの長手方向に一緒に懸架されるコーティング媒体ジェットとは対照的に、液滴ジェットを吐出し、または
c)前記プリントヘッド(3)は、液滴ジェットとは対照的に、ジェットの前記長手方向に連続的なコーティング剤ジェットを吐出し、および/または
d)コーティング剤の圧力は、±500ミリバール、±200ミリバール、±100ミリバール、±50ミリバールの最大変動で制御され、および/または
e)前記プリントヘッド(3)が少なくとも80%、90%、95%または99%の塗布効率を有し、実質的にすべての前記塗布されたコーティング剤が前記部品(1)上にオーバースプレーすることなく完全に堆積し、および/または
f)前記プリントヘッド(3)が少なくとも0.5m2/分、1m2/分、2m2/分または少なくとも3m2/分の表面コーティング性能を有し、および/または
g)前記塗布されたコーティング剤の体積流量および/または前記コーティング剤の流出速度は、前記コーティング剤が前記部品(1)に衝突した後に前記部品(1)から跳ね返らないように設定され、および/または
h)前記プリントヘッド(3)からの前記コーティング剤の前記流出速度が少なくとも5m/s、7m/sまたは10m/sであり、および/または
i)前記プリントヘッド(3)からの前記コーティング剤の前記流出速度が、30m/s、20m/sまたは10m/s以下であり、および/または
j)塗布距離が少なくとも4mm、10mmまたは40mmであり、および/または
k)前記塗布距離が200mmまたは100mm以下であり、および/または
l)前記コーティング剤が塗料、特にベース塗料、透明塗料、効果塗料、マイカ塗料またはメタリック塗料であり、および/または
m)前記コーティングが水性塗料または溶剤系塗料であり、および/または
n)前記プリントヘッドバルブは、前記プリントヘッド(3)から前記コーティング剤の液滴を噴出するために電気的に制御可能なアクチュエータ、特に磁気アクチュエータまたはピエゾアクチュエータを有し、および/または
o)前記コーティングロボット(2)は、連続的なロボットの運動を有し、および/または
p)前記コーティングロボット(2)は、少なくとも6つまたは7つの可動ロボット軸を有し、および/または
q)前記コーティングロボット(2)は、複数の可動軸を有するロボットハンド軸を有する、」と記載されているのを「a)前記プリントヘッド(3)は、スプレーとは対照的に、コーティング媒体の狭く制限されたジェットを吐出する、」に訂正する。
(訂正事項10-2)
特許請求の範囲の請求項14に、「a)前記プリントヘッド(3)は、スプレーとは対照的に、コーティング媒体の狭く制限されたジェットを吐出し、および/または
b)前記プリントヘッド(3)は、ジェットの長手方向に一緒に懸架されるコーティング媒体ジェットとは対照的に、液滴ジェットを吐出し、または
c)前記プリントヘッド(3)は、液滴ジェットとは対照的に、ジェットの前記長手方向に連続的なコーティング剤ジェットを吐出し、および/または
d)コーティング剤の圧力は、±500ミリバール、±200ミリバール、±100ミリバール、±50ミリバールの最大変動で制御され、および/または
e)前記プリントヘッド(3)が少なくとも80%、90%、95%または99%の塗布効率を有し、実質的にすべての前記塗布されたコーティング剤が前記部品(1)上にオーバースプレーすることなく完全に堆積し、および/または
f)前記プリントヘッド(3)が少なくとも0.5m2/分、1m2/分、2m2/分または少なくとも3m2/分の表面コーティング性能を有し、および/または
g)前記塗布されたコーティング剤の体積流量および/または前記コーティング剤の流出速度は、前記コーティング剤が前記部品(1)に衝突した後に前記部品(1)から跳ね返らないように設定され、および/または
h)前記プリントヘッド(3)からの前記コーティング剤の前記流出速度が少なくとも5m/s、7m/sまたは10m/sであり、および/または
i)前記プリントヘッド(3)からの前記コーティング剤の前記流出速度が、30m/s、20m/sまたは10m/s以下であり、および/または
j)塗布距離が少なくとも4mm、10mmまたは40mmであり、および/または
k)前記塗布距離が200mmまたは100mm以下であり、および/または
l)前記コーティング剤が塗料、特にベース塗料、透明塗料、効果塗料、マイカ塗料またはメタリック塗料であり、および/または
m)前記コーティングが水性塗料または溶剤系塗料であり、および/または
n)前記プリントヘッドバルブは、前記プリントヘッド(3)から前記コーティング剤の液滴を噴出するために電気的に制御可能なアクチュエータ、特に磁気アクチュエータまたはピエゾアクチュエータを有し、および/または
o)前記コーティングロボット(2)は、連続的なロボットの運動を有し、および/または
p)前記コーティングロボット(2)は、少なくとも6つまたは7つの可動ロボット軸を有し、および/または
q)前記コーティングロボット(2)は、複数の可動軸を有するロボットハンド軸を有する、
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のコーティング装置。」と記載されているうち、請求項4を引用する請求項7を直接または間接的に引用する部分について、「a)前記プリントヘッド(3)は、スプレーとは対照的に、コーティング媒体の狭く制限されたジェットを吐出する、
ことを特徴とする請求項15~21のいずれか1項に記載のコーティング装置。」と記載して、新たに請求項22とする。
3 訂正の適否
(1)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~3、6~14について、請求項2、3、6~14はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。また、本件訂正前の請求項4~14について、請求項5~14はそれぞれ請求項4を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項1~14に対応する本件訂正後の請求項1~22は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。なお、訂正後の請求項7、15について、別の訂正単位とする求めはなされていない。
(2)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、請求項1の「少なくとも1つのノズル」、及び、「少なくとも1つのプリントヘッドバルブ」という記載を、それぞれ、「複数のノズル」、「複数のプリントヘッドバルブ」、に訂正することによって、ノズルが1つである場合、及び、プリントヘッドバルブが1つの場合を除くものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
本件特許の明細書(以下、「本件特許明細書」ともいう。)には、「複数のノズル」や「複数のプリントヘッドバルブ」という記載はない。また、「少なくとも1つの」とは、ノズル、及び、プリントヘッドバルブの数の範囲に着目し、その下限値を1にするという意味であるが、本件特許明細書にはノズル、及び、プリントヘッドバルブの数の範囲に関する一般的な説明をしている記載もないし、その下限値を1以外の数値とした具体例の記載もない。
しかし、本件特許明細書にはプリントヘッドバルブが複数である場合の具体例として、「例えば、もしも多数のプリントヘッドバルブが突然開かれると、コーティング剤の消費量が突然増加するので、計量ポンプもまた、より高い能力で運転されるべきである。」(段落【0032】)、「図2は、中央領域において、プリントヘッド3のプリントヘッドバルブの実際の開放時間13を示す。簡略化のために、プリントヘッド3は一列に6個のノズルを有すると仮定する。しかし実際のところ、プリントヘッド3は実際にはより多数のノズルと多数のノズル列とを有し、これは本発明の原理とは無関係である。」(段落【0069】)と記載されている。
また、上記アのとおり、訂正事項1は、ノズル、及び、プリントヘッドバルブの数の範囲が「少なくとも1つの」と特定されていたものを、その範囲から「1つである場合」を除くものであると解せるものであり、訂正事項1による訂正によって、当該数の範囲に本件特許明細書に記載されていない場合が含まれることになるわけでもない。
したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、プリントヘッドバルブの数が1つである場合を、その特許請求の範囲から除くものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、請求項4の「前記ロボット制御装置(5)は、計時された特定の第1サイクル時間で・・・制御し」、及び、「前記プリントヘッド制御装置(7)は、計時された特定の第2サイクル時間で・・・制御し」という記載を、それぞれ、「前記ロボット制御装置(5)は、計時された特定の第1サイクル時間で周期的に・・・制御し」、及び、「前記プリントヘッド制御装置(7)は、計時された特定の第2サイクル時間で周期的に・・・制御し」、に訂正するものであり、第1サイクル時間、あるいは、第2サイクル時間が、一定の時間(第1サイクル時間、あるいは、第2サイクル時間)ごとに周期的に制御を行う際の時間の間隔を特定する事項であることを明確にするためのものであるから、特許法第120条の5第2項第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
本件特許明細書には、「前記ロボット制御装置(5)は、計時された特定の第1サイクル時間で・・・制御し」と記載されている。訂正事項2による訂正後の「前記ロボット制御装置(5)は、計時された特定の第1サイクル時間で周期的に・・・制御し」という記載と一致する記載はないが、「サイクル」という技術用語は、あるものの状態が一定の変化を経過した後,再び元の状態に戻ることや、周期や、循環過程を意味するから、「サイクル」と「周期的に」の意味は重複している。
また、「前記プリントヘッド制御装置(7)は、計時された特定の第2サイクル時間で・・・制御し」についても同様である。
そうすると、訂正事項2による訂正前の記載と、訂正後の記載は、その意味が一致しているものであって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、訂正事項2は、第1サイクル時間、あるいは、第2サイクル時間の意味が、周期的に制御を行う際の時間の間隔を特定する事項であることを明確にするためのものであり、また、上記イのとおり、訂正事項2による訂正前の記載と、訂正後の記載は、その意味が一致しているから、訂正事項2による訂正の前後でその特許請求の範囲がなんら変更や追加されていない。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものとはいえず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(4)訂正事項3について
ア 訂正事項3のうち、訂正事項3-1は、請求項7が請求項1~6のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものを、引用する請求項を請求項1のみとしたうえで、請求項1の記載を引用しない形式に変更することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、同第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項3-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであることが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
イ また、訂正事項3のうち、訂正事項3-2は、訂正事項3-1によって、請求項7から除かれることとなった部分のうち、請求項4を引用する部分について、請求項4の記載を引用しない形式に変更するとともに、新たな請求項15とすることを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、同第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項3-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであることが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(5)訂正事項4について
請求項8は、請求項1~7のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項7は、請求項1~6のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであるから、請求項8は、請求項7のうち請求項4を引用する部分を引用する場合を含むものであったが、上記(4)のとおり訂正事項3-1によって、請求項7から請求項4を引用する部分が除かれることとなったので、これに連動して請求項8から当該部分を引用する部分が除かれることになった。
また、訂正事項3-2によって当該部分(請求項7のうち請求項4を引用する部分)は新たな請求項15となった。
訂正事項4は、請求項8のうち、上記のとおり訂正事項3-1に連動して請求項8から除かれることとなった、請求項4を引用する請求項7を引用する場合を、新たな請求項16とするとともに、その記載を、新たな請求項15を引用する形式で記載するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであることが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(6)訂正事項5について
請求項9は、請求項1~8のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項8は、請求項1~7のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項7は、請求項1~6のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであるから、請求項9は、請求項4を引用する請求項7を引用する場合、及び、請求項8のうち請求項4を引用する請求項7を引用する場合(以下、まとめて、「請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用する部分」という。)を含むものであったが、訂正事項3-1によって、請求項7から請求項4を引用する部分が除かれ、また、これに連動して請求項8から当該部分を引用する場合が除かれることになり、さらに、当該除かれた部分は、それぞれ新たな請求項15、16となった(上記(4)、(5)を参照。)。
訂正事項5は、請求項9のうち、上記のとおり請求項9から除かれることとなった請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用する部分を、新たな請求項17とするとともに、その記載を、新たな請求項15又は16を引用する形式で記載するものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであることが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(7)訂正事項6について
請求項10は、請求項1~9のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項9は、請求項1~8のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項8は、請求項1~7のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項7は、請求項1~6のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであるから、請求項10は、請求項4を引用する請求項7を引用する場合、請求項8のうち請求項4を引用する請求項7を引用する場合、及び、請求項9のうち請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用する場合を含むものであったが、訂正事項3-1によって、請求項7から請求項4を引用する部分が除かれ、また、これに連動して請求項8、9から当該部分を直接又は間接的に引用する部分が除かれることになり、さらに、当該除かれた部分は、それぞれ新たな請求項15~17となった(上記(4)~(6)を参照。)。
訂正事項6は、請求項10のうち、請求項10から除かれることとなった上記の部分を、新たな請求項18とするとともに、その記載を、新たな請求項15~17のいずれか1項を引用する形式で記載するものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであることが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(8)訂正事項7について
請求項11は、請求項1~10のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項10は、請求項1~9のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項9は、請求項1~8のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項8は、請求項1~7のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項7は、請求項1~6のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであるから、請求項11は、請求項4を引用する請求項7を引用する場合、請求項8のうち請求項4を引用する請求項7を引用する場合、請求項9のうち請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用する場合、及び、請求項10のうち請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用する場合を含むものであったが、訂正事項3-1によって、請求項7から請求項4を引用する部分が除かれ、また、これに連動して請求項8~10から当該部分を直接又は間接的に引用する部分が除かれることになり、さらに、当該除かれた部分は、それぞれ新たな請求項15~18となった(上記(4)~(7)を参照。)。
訂正事項7は、請求項11のうち、請求項11から除かれることとなった上記の部分を、新たな請求項19とするとともに、その記載を、新たな請求項15~18のいずれか1項を引用する形式で記載するものである。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであることが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(9)訂正事項8について
請求項12は、請求項1~11のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項11は、請求項1~10のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項10は、請求項1~9のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項9は、請求項1~8のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項8は、請求項1~7のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項7は、請求項1~6のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであるから、請求項12は、請求項4を引用する請求項7を引用する場合、請求項8のうち請求項4を引用する請求項7を引用する場合、請求項9のうち請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用する場合、請求項10のうち請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用する場合、及び、請求項11のうち請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用する場合を含むものであったが、訂正事項3-1によって、請求項7から請求項4を引用する部分が除かれ、また、これに連動して請求項8~11から当該部分を直接又は間接的に引用する部分が除かれることになり、さらに、当該除かれた部分は、それぞれ新たな請求項15~19となった(上記(4)~(8)を参照。)。
訂正事項8は、請求項12のうち、請求項12から除かれることとなった上記の部分を、新たな請求項20とするとともに、その記載を、新たな請求項15~19のいずれか1項を引用する形式で記載するものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであることが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(10)訂正事項9について
請求項13は、請求項12の記載を引用する形式で記載されていたものであり、請求項12は、請求項1~11のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項11は、請求項1~10のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項10は、請求項1~9のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項9は、請求項1~8のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項8は、請求項1~7のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項7は、請求項1~6のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであるから、請求項13は、請求項12の記載のうち、請求項4を引用する請求項7を引用する場合、請求項8のうち請求項4を引用する請求項7を引用する場合、請求項9のうち請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用する場合、請求項10のうち請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用する場合、及び、請求項11のうち請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用する場合を含むものであったが、訂正事項3-1によって、請求項7から請求項4を引用する部分が除かれ、また、これに連動して請求項8~11から当該部分を直接又は間接的に引用する部分が除かれることになり、さらに、当該除かれた部分は、それぞれ新たな請求項15~20となった(上記(4)~(9)を参照。)。
訂正事項9は、請求項13のうち、請求項13から除かれることとなった上記の部分を、新たな請求項21とするとともに、その記載を、新たな請求項20の記載を引用する形式で記載するものである。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであることが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(11)訂正事項10について
ア 訂正事項10のうち、訂正事項10-1は、請求項14に記載されていたa)~q)の選択肢のうち、b)~q)の選択肢を削除することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項10-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであることが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
イ また、訂正事項10のうち、訂正事項10-2は、請求項14が請求項1~13のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項13は、請求項12の記載を引用する形式で記載されていたものであり、請求項12は、請求項1~11のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項11は、請求項1~10のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項10は、請求項1~9のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項9は、請求項1~8のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項8は、請求項1~7のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであり、請求項7は、請求項1~6のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものであるから、請求項14は、請求項4を引用する請求項7を引用する場合、請求項8のうち請求項4を引用する請求項7を引用する場合、請求項9のうち請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用する場合、請求項10のうち請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用する場合、請求項11のうち請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用する場合、請求項12のうち請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用する場合、及び、請求項13のうち請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用する場合を含むものであったが、訂正事項3-1によって、請求項7から請求項4を引用する部分が除かれ、また、これに連動して請求項8~13から当該部分を直接又は間接的に引用する部分が除かれることになり、さらに、当該除かれた部分は、それぞれ新たな請求項15~21となった(上記(4)~(10)を参照。)。
訂正事項10-2は、請求項14のうち、請求項14から除かれることとなった上記の部分に対して上記訂正事項10-1と同様に請求項14に記載されていたa)~q)の選択肢のうち、b)~q)の選択肢を削除した上で、新たな請求項22とするとともに、その記載を、新たな請求項15~21の記載を引用する形式で記載するものである。
したがって、訂正事項10-2は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項10-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであることが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(12)独立特許要件について
本件訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~14に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項により読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。
(13)本件訂正の適否についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1、3、4号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項により準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~22について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求は認められたので、本件特許の請求項1~22に係る発明は、その特許の特許請求の範囲の請求項1~22に記載された以下のとおりのものである(請求項1~22に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明22」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)。
「【請求項1】
a)プリントヘッド(3)であって、
a1)コーティングされる部品(1)にコーティング剤ジェットを供給する複数のノズルと、
a2)前記ノズルを介したコーティング剤の放出を制御する複数のプリントヘッドバルブと、
を有するプリントヘッド(3)と、
b)コーティングされる前記部品(1)の表面上で前記プリントヘッド(3)をガイドする多軸コーティングロボット(2)と、
c)前記コーティングロボット(2)を制御するロボット制御装置(5)と、
を有し、コーティング剤で部品をコーティングし、特に、自動車の車体部品(1)を塗装するコーティング装置であって、
d)前記プリントヘッドバルブを制御するプリントヘッド制御装置(7)と、
e)出力側で前記プリントヘッド制御装置(7)に接続され、前記コーティングされる部品(1)の空間位置を測定し、前記プリントヘッド制御装置(7)に前記コーティングされる部品(1)の前記空間位置を送信する測定装置(6)、または
f)前記コーティングされる部品を正確に位置決めするための機械的位置決め装置と、
により特徴付けられる、
コーティング装置。
【請求項2】
前記測定装置は、
a)位置判断のための少なくとも1つのセンサ、特に、カメラまたは光バリアと、
b)センサ信号、特にカメラ(6)により撮影された画像を評価し、前記コーティングされる部品(1)の前記空間位置を判断する評価ユニットと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項3】
前記測定装置(6)は、±2mm、±1mm、±0.5mm、±0.25mm、または±0.1mm未満の位置公差で前記コーティングされる部品(1)の前記空間位置を判断する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング装置。
【請求項4】
a)プリントヘッド(3)であって、
a1)コーティングされる部品(1)にコーティング剤ジェットを供給する少なくとも1つのノズルと、
a2)前記ノズルを介したコーティング剤の放出を制御する少なくとも1つのプリントヘッドバルブと、
を有するプリントヘッド(3)と、
b)コーティングされる前記部品(1)の表面上で前記プリントヘッド(3)をガイドする多軸コーティングロボット(2)と、
c)前記コーティングロボット(2)を制御するロボット制御装置(5)と、
を有し、コーティング剤で部品をコーティングし、特に、自動車の車体部品(1)を塗装するコーティング装置であって、
d)前記プリントヘッドバルブを制御するプリントヘッド制御装置(7)により特徴付けられ、
e)前記ロボット制御装置(5)は、計時された特定の第1サイクル時間で周期的に、前記コーティングロボット(2)を制御し、
f)前記プリントヘッド制御装置(7)は、計時された特定の第2サイクル時間で周期的に、前記プリントヘッド(3)の前記プリントヘッドバルブを制御し、
g)前記プリントヘッド制御装置(7)の前記第2サイクル時間が前記ロボット制御装置(5)の前記第1サイクル時間より短い、
ことを特徴とするコーティング装置。
【請求項5】
前記プリントヘッド制御装置(7)の前記第2サイクル時間は、最長で100ms、50ms、20ms、10ms、5ms、1ms、500μs、100μsまたは最長で10μsである、
ことを特徴とする請求項4に記載のコーティング装置。
【請求項6】
前記プリントヘッド制御装置(7)は、入力側で前記ロボット制御装置(5)に接続され、前記ロボット制御装置(5)から、前記プリントヘッド(3)の現在の空間位置および/または現在の速度および/または現在の空間向きを、入力情報として受信する、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のコーティング装置。
【請求項7】
a)プリントヘッド(3)であって、
a1)コーティングされる部品(1)にコーティング剤ジェットを供給する少なくとも1つのノズルと、
a2)前記ノズルを介したコーティング剤の放出を制御する少なくとも1つのプリントヘッドバルブと、
を有するプリントヘッド(3)と、
b)コーティングされる前記部品(1)の表面上で前記プリントヘッド(3)をガイドする多軸コーティングロボット(2)と、
c)前記コーティングロボット(2)を制御するロボット制御装置(5)と、
を有し、コーティング剤で部品をコーティングし、特に、自動車の車体部品(1)を塗装するコーティング装置であって、
d)前記プリントヘッドバルブを制御するプリントヘッド制御装置(7)と、
e)出力側で前記プリントヘッド制御装置(7)に接続され、前記コーティングされる部品(1)の空間位置を測定し、前記プリントヘッド制御装置(7)に前記コーティングされる部品(1)の前記空間位置を送信する測定装置(6)、または
f)前記コーティングされる部品を正確に位置決めするための機械的位置決め装置と、を備え、
前記プリントヘッド制御装置(7)は、
前記プリントヘッド(3)の前記プリントヘッドバルブに加え、
g)複数のコーティング手段のうちの1つを選択し、前記選択されたコーティング手段を前記プリントヘッド(3)に送るカラー変更装置と、
h)計量装置、特に、塗布される前記コーティング剤を計量する計量ポンプと、
を制御する、
ことを特徴とするコーティング装置。
【請求項8】
前記プリントヘッド制御装置(7)は、前記プリントヘッド(3)により塗布される前記コーティング剤ジェットを、コーティングされる前記部品(1)の表面上で、±2mm未満、±1mm未満、±0.5mm未満または、さらに±0.1mm未満の空間分解能で、高度に動的かつ正確に時間制御してスイッチオンおよびスイッチオフできる、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のコーティング装置。
【請求項9】
a)前記コーティング装置は、前記コーティング剤を計量し、それを前記プリントヘッド(3)に搬送する計量装置を制御する計量制御装置(8)を有し、および/または
b)前記計量制御装置(8)は、前記計量装置の前記制御を、前記プリントヘッド(3)の少なくとも1つの前記プリントヘッドバルブの前記制御と同期させるために、前記ロボット制御装置(5)に接続され、および/または
c)前記計量制御装置(8)は、前記計量装置の前記制御を、前記コーティングロボット(2)の前記制御と同期させるために、前記ロボット制御装置(5)に接続される、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のコーティング装置。
【請求項10】
前記プリントヘッド(3)の前記少なくとも1つのプリントヘッドバルブは、最長で100ms、50ms、20ms、5ms、1ms、または最長で100μsの短いスイッチ時間を有する、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のコーティング装置。
【請求項11】
生産計画(9)との通信のための第1データインターフェースにより特徴付けられる、
請求項1~10のいずれか1項に記載のコーティング装置。
【請求項12】
制御ファイル、特に、制御ファイルにより予め判断されるグラフィックで前記部品(1)をコーティングするグラフィックファイルを受信する第2データインターフェース(10)により特徴付けられる、
請求項1~11のいずれか1項に記載のコーティング装置。
【請求項13】
前記第2データインターフェースは、
a)USBスティックリーダー、および/または
b)メモリーカードリーダー、および/または
c)生産制御のためのインターフェース
を有する、
ことを特徴とする請求項12に記載のコーティング装置。
【請求項14】
a)前記プリントヘッド(3)は、スプレーとは対照的に、コーティング媒体の狭く制限されたジェットを吐出する、
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のコーティング装置。
【請求項15】
a)プリントヘッド(3)であって、
a1)コーティングされる部品(1)にコーティング剤ジェットを供給する少なくとも1つのノズルと、
a2)前記ノズルを介したコーティング剤の放出を制御する少なくとも1つのプリントヘッドバルブと、
を有するプリントヘッド(3)と、
b)コーティングされる前記部品(1)の表面上で前記プリントヘッド(3)をガイドする多軸コーティングロボット(2)と、
c)前記コーティングロボット(2)を制御するロボット制御装置(5)と、
を有し、コーティング剤で部品をコーティングし、特に、自動車の車体部品(1)を塗装するコーティング装置であって、
d)前記プリントヘッドバルブを制御するプリントヘッド制御装置(7)により特徴付けられ、
e)前記ロボット制御装置(5)は、計時された特定の第1サイクル時間で、前記コーティングロボット(2)を制御し、
f)前記プリントヘッド制御装置(7)は、計時された特定の第2サイクル時間で、前記プリントヘッド(3)の前記プリントヘッドバルブを制御し、
g)前記プリントヘッド制御装置(7)の前記第2サイクル時間が前記ロボット制御装置(5)の前記第1サイクル時間より短く、
前記プリントヘッド制御装置(7)は、
前記プリントヘッド(3)の前記プリントヘッドバルブに加え、
h)複数のコーティング手段のうちの1つを選択し、前記選択されたコーティング手段を前記プリントヘッド(3)に送るカラー変更装置と、
i)計量装置、特に、塗布される前記コーティング剤を計量する計量ポンプと、
を制御する、
ことを特徴とするコーティング装置。
【請求項16】
前記プリントヘッド制御装置(7)は、前記プリントヘッド(3)により塗布される前記コーティング剤ジェットを、コーティングされる前記部品(1)の表面上で、±2mm未満、±1mm未満、±0.5mm未満または、さらに±0.1mm未満の空間分解能で、高度に動的かつ正確に時間制御してスイッチオンおよびスイッチオフできる、
ことを特徴とする請求項15に記載のコーティング装置。
【請求項17】
a)前記コーティング装置は、前記コーティング剤を計量し、それを前記プリントヘッド(3)に搬送する計量装置を制御する計量制御装置(8)を有し、および/または
b)前記計量制御装置(8)は、前記計量装置の前記制御を、前記プリントヘッド(3)の少なくとも1つの前記プリントヘッドバルブの前記制御と同期させるために、前記ロボット制御装置(5)に接続され、および/または
c)前記計量制御装置(8)は、前記計量装置の前記制御を、前記コーティングロボット(2)の前記制御と同期させるために、前記ロボット制御装置(5)に接続される、
ことを特徴とする請求項15または16に記載のコーティング装置。
【請求項18】
前記プリントヘッド(3)の前記少なくとも1つのプリントヘッドバルブは、最長で100ms、50ms、20ms、5ms、1ms、または最長で100μsの短いスイッチ時間を有する、
ことを特徴とする請求項15~17のいずれか1項に記載のコーティング装置。
【請求項19】
生産計画(9)との通信のための第1データインターフェースにより特徴付けられる、
請求項15~18のいずれか1項に記載のコーティング装置。
【請求項20】
制御ファイル、特に、制御ファイルにより予め判断されるグラフィックで前記部品(1)をコーティングするグラフィックファイルを受信する第2データインターフェース(10)により特徴付けられる、
請求項15~19のいずれか1項に記載のコーティング装置。
【請求項21】
前記第2データインターフェースは、
a)USBスティックリーダー、および/または
b)メモリーカードリーダー、および/または
c)生産制御のためのインターフェース
を有する、
ことを特徴とする請求項20に記載のコーティング装置。
【請求項22】
a)前記プリントヘッド(3)は、スプレーとは対照的に、コーティング媒体の狭く制限されたジェットを吐出する、
ことを特徴とする請求項15~21のいずれか1項に記載のコーティング装置。」
第4 異議申立の概要及び証拠の一覧
1 異議申立の概要
申立人が申し立てた特許異議申立の理由は、以下のとおりである。
申立理由1(新規性)本件発明1~2、4~6、8、10は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
申立理由2(進歩性)本件発明1~14は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
申立理由3(実施可能要件)本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、本件発明3を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないので、その特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
2 証拠の一覧
(1)申立人が提示した証拠は、次のとおりである。なお、甲第1号証を甲1などという。
ア 特許異議の申立てと同時に提示された証拠
甲1:特表2004-528956号公報
甲2:独国特許出願公開第102008018881号明細書
甲3:米国特許出願公開第2016/0074882号明細書
甲4:独国実用新案公開第9405600号明細書
甲5:独国特許出願公開第102010004496号明細書
甲6:米国特許出願公開第2016/0306364号明細書
甲7:欧州特許出願公開第2196267号明細書
甲8:特表2016-507372号公報
甲9:特表2015-535735号公報
甲10:特開2015-27636号公報
イ 令和5年1月19日の意見書と共に提示された証拠
参考資料1:特開2004-337710号公報
参考資料2:米国特許第9108424号明細書
(2)特許権者が提示した証拠は、次のとおりである。なお、乙第1号証を乙1などという。
乙1:三輪幸市、「基本情報技術者スーパー合格本 2011年版」第1版第1刷、株式会社秀和システム、2010年12月5日、p.118
乙2:TAC株式会社編集、「TAC情報処理講座 ニュースペックテキスト 応用情報技術者 平成25秋・26春年版」初版第1刷、TAC出版、2013年8月5日、p.95-96
乙3:石川欽一、「ポケットスタディ 基本情報午前・合格用語 連鎖キーワード法+過去問360題」第1版第1刷、株式会社秀和システム、2009年3月10日、p.91
乙4:Heinz worn、Uwe brinkschulte、「Echtxeitsysteme」、Springer社、2005年、p.467-468 (当審注:著者名「worn」中の「o」(1カ所)はウムラウト表記)
第5 本件明細書及び証拠の記載事項
1 本件特許明細書の記載
本件特許の明細書には、次の記載がある。
(1)「【0012】
コーティング装置は、好ましくは塗料で部品をコーティングするように設計され、すなわち、ほんの数例を挙げると、塗布されるコーティング剤は、好ましくは、溶剤系塗料、水性系塗料、着色系塗料または透明塗料のような塗料であることにも留意すべきである。しかし、本発明は、塗布されるコーティングの種類に関して塗料に限定されず、ほんの数例を挙げると、接着剤、絶縁材料、密閉剤、プライマーなどの他の種類のコーティング剤を用いて実現することもできる。」
(2)「【0065】
一般に、ロボット制御装置5、プリントヘッド制御装置7、および計量制御装置8は、別々のハードウェア部品として設計され、互いに分離されていることが好ましいことが言及されるべきである。
【0066】
しかし、本発明の範囲内で、ロボット制御装置5、プリントヘッド制御装置7および計量制御装置8は、他の点では統一された制御ユニット内の別々のソフトウェア部品としてのみ実装される可能性もある。」
2 甲1の記載
甲1には、次の記載がある。
(1)「【請求項1】
粘性の接着剤を加圧して作用可能で且つ被着ノズル(24)を有しているノズルヘッド(18)を用いて接着剤を工作物に被着させるための装置であって、有利には噴射線で被着ノズル(24)から出る接着剤をストライプ状接着剤(40)の形態で所定の被着軌道に沿って工作物(14)に被着可能であるようにノズルヘッド(18)と工作物(14)とがロボット装置(10)を用いて互いに相対的に移動可能である前記装置において、
ノズルヘッド(18)または付属のロボット要素に配置され、対物レンズを噴射線(28)またはストライプ状接着剤(40)に対し指向させた少なくとも1つのカメラユニット(42)が設けられ、カメラユニット(42)が出力側で画像評価ユニット(45)に接続されていることを特徴とする装置。
・・・
【請求項13】
ノズルヘッド(18)が配量装置(52)を介して接着剤で付勢可能であること、画像評価ユニット(45)および(または)距離センサ(46)が配量装置(52,54)を制御する制御回路の構成要素であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項14】
配量装置(52)が接着剤の流量を調整するための流量調整器と、被着軌道(36)に沿って接着剤のストライプ幅を調整するための調整または制御装置(54)とを有していることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項15】
ロボット装置(10)が所定の被着軌道(36)に沿った配量ヘッド(18)の経路および速度を調整するための軌道曲線メモリまたは軌道曲線生成器を有していることを特徴とする、請求項14に記載の装置。
・・・
【請求項17】
ノズルヘッド(18)が配量調整器(52)を介して接着剤で付勢可能であること、画像評価ユニット(45)および(または)距離センサ(46)が配量調整器(52,54)を制御する制御回路の構成要素であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項18】
ノズルヘッド(18)が渦型噴射ヘッドとして構成され、その被着ノズルは連続する糸状接着剤(28)を放出するためのものであるとともに、渦型噴射ヘッドは被着ノズル(24)に対し傾斜して指向する少なくとも1つの噴射空気管路(34)を有していること、被着軌道(36)に沿った所定のストライプ幅に応じて噴射空気供給量を調整するための制御装置(54)が設けられ、制御装置(54)は、所定のストライプ幅と測定したストライプ幅とのずれから導出されて画像評価ユニット(45)から出力される追従制御信号で付勢可能であることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項19】
ノズルヘッド(18)が渦型噴射ヘッドとして構成され、その被着ノズル(24)は連続する糸状接着剤(28)を放出し、且つ偏心軸線のまわりに回転駆動可能であること、被着軌道(36)に沿った所定のストライプ幅に応じてノズル回転数を調整するための制御装置が設けられ、制御装置は、所定のストライプ幅と測定したストライプ幅とのずれから導出されて画像評価ユニット(45)から出力される追従制御信号で付勢可能であることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか一つに記載の装置。」
(2)「【0001】
本発明は、粘性の接着剤を加圧して作用可能で且つ被着ノズルを有しているノズルヘッドを用いて接着剤を工作物に被着させるための装置であって、有利には噴射線で被着ノズルから出る接着剤をストライプ状接着剤の形態で所定の被着軌道に沿って工作物に被着可能であるようにノズルヘッドと工作物とがロボット装置を用いて互いに相対的に移動可能である前記装置に関するものである。なお、以下で言うところの「接着剤」なる概念は、粘性形態で被着ノズルを介して工作物上に被着されるシーラントのような他の粘性物質をも含むものとする。」
(3)「【0013】
次に、本発明の実施形態を添付の図面を用いて詳細に説明する。
図面に図示したロボット装置10は、自動車の部品14の接着されたフランジシーム12を封止するために接着剤を被着させるのに用いる。この目的のためロボット装置はその終端部材16にノズルヘッド18を担持している。ノズルヘッド18はフレキシブルなホース20を介してペースト状の接着剤で付勢可能であり、バルブニードル22で閉鎖可能な被着ノズル24を有している。バルブニードル22の操作はシリンダピストン装置48を介して行う。シリンダピストン装置48のピストン50はロボット装置の制御により閉鎖ばね51の力に抗して上方へ移動して開放位置を占め、閉鎖ばね51の作用で下方へ移動して閉鎖位置を占める。図示した実施形態の場合、ノズルヘッド18は渦型噴射ヘッドとして構成され、その被着ノズル24から糸状接着剤28が噴射される。糸状接着剤28は圧縮ガスにより偏向して渦を形成するので、ループ状に延在し、部分的に開口した一定幅のストライプ状接着剤40が工作物14上に被着される。この目的のためノズルヘッド18は噴射空気接続部材30を有し、噴射空気接続部材30には噴射空気管が接続されている。噴射空気管を介して供給された噴射空気は被着ノズル24に対し傾斜している空気噴射管路34に流れ込む。
【0014】
ノズルヘッドはロボット装置10を介して矢印38の方向に所定の被着軌道36に沿って工作物14に対し移動可能であり、被着ノズル24を介して、渦を巻いたストライプ状接着剤40を工作物14上にもたらす。
【0015】
図1および図3からわかるように、ロボット装置10の終端部材16にはさらに照明装置44を備えたカメラユニット42が配置されている。カメラユニット42は移動方向38においてノズルヘッド18の後方にあり、ストライプ状接着剤40の被着を監視して、必要な場合には画像評価ユニット45で制御技術または調整技術により修正する課題を担っている。
【0016】
ノズルヘッド18には、カメラユニット42に加えて距離センサ46が連結されており、距離センサ46により被着ノズル24と工作物14との距離が重要な調整パラメータとして検出され、ストライプ状接着剤40の厚さプロフィールおよび(または)幅を決定させることができる。この場合距離センサ46はスキャナーのごとく被着軌道に対し横方向に延びる振動運動を実施する。距離センサ46はたとえばレーザーセンサまたは超音波センサとして構成されている。
【0017】
カメラユニット42と距離センサ46の測定データは、実際のデータ40を検出するために画像データメモリ47に読み込まれ、コンピュータ49で少なくとも一部が比較ルーチンにより所定の目標値データ40’と比較される。この場合測定されるのはフランジエッジ12,12’と、ストライプ状接着剤40の幅および厚さである。比較データは配量装置52または噴射空気供給部54を制御するための制御パラメータに変換することができる。制御パラメータとしてはノズルヘッド18の送り速度、配量装置52内の駆動圧、噴射空気供給部54における噴射空気圧、或いは被着ノズル24と工作物14との距離が考慮される。被着速度が高速であるため、非常に高速なカメラ42が必要である。同様に重要なのは、照明ユニット44によるコンスタントな良好な照明である。個々の各カメラ画像を、ダイオードフラッシュとして構成された照明ユニット44のライトフラッシュにより照明するのが合目的である。被着軌道36に沿った距離測定は変位測定器または距離スケール57を介して行うのが合目的である。距離スケール57は参照穴、エッジ、屈曲部、またはノッチのような工作物固定の参照点により位置調整し、挿入する(interpolieren)ことができる。この処置により、必要な場合には測定値に応じて所定の被着軌道36もロボット装置の制御により修正することができる。
【0018】
ストライプ状接着剤を高速作動ビデオカメラと距離センサ46とを用いて監視することにより、ロボット装置10および配量システム52,54の調整作業が容易になるばかりでなく、材料交換、温度変動、本来の調整パラメータへの干渉のような障害時のロボット装置10および配量システム52,54の追従制御も容易になる。この場合特に有利な点は、調整過程および追従制御過程を外部のコンピュータ56を介しても行うことができることで、たとえばオンラインネット58を使用してサービスステーションからインターネットのように行えることである。
【0019】
本発明を総括すると以下のようになる。本発明は工作物に接着剤を被着させるための装置を備えた接着ロボットに関する。接着ロボットは、粘性の接着剤を加圧して付勢可能で、被着ノズル24を有しているノズルヘッド18を有している。この場合ノズルヘッド18と工作物14とは互いに相対的に移動可能である。噴射線28で被着ノズル24から出る接着剤は、ストライプ状接着剤40の形態で所定の被着軌道36に沿って工作物14上に被着される。調整能と再校正とを容易にするため、ノズルヘッド18に配置され、対物レンズを噴射線28またはストライプ状接着剤40に対し指向させた少なくとも1つのカメラユニット42が設けられている。カメラユニット42は出力側で画像評価ユニット45に接続されている。カメラユニット42を介して検出された画像データ40は中間メモリされ、所定の画像値40’と比較される。被着軌道36に沿って検出された画像値のずれに基づき、システムの重要な制御パラメータの校正と追従制御とが自動的にまたは遠隔操作で可能である。」
(4)「
[図:0001409060000001.jpg]
[図:0001409060000002.jpg]
[図:0001409060000003.jpg]
[図:0001409060000004.jpg]
[図:0001409060000005.jpg]
」
3 甲2の記載
甲2には、次の記載がある。摘記事項の後ろに当審の仮訳を掲載した。
(1)「
[図:0001409060000006.jpg]
」
(日本語訳:このような方法及び装置は、特に自動車の車体の製造の際に利用される。ロボットは、塗布装置の塗布弁を、塗布経路に沿ってワークピース(この場合車体部品)に対して相対的に移動させる。塗布弁から塗布経路に、例えば、接着剤が塗布される。その接着剤は、1つの接着剤ビード、又は、ギャップによって互いに分離され、間隔をおいてワークピース上に配置される複数の接着剤ビードから成り得る。特に接着剤ビードは、スポット溶接又は溶接シームによって接合される2つのワークピースの接合強度を高める役割を果たす。その際、スポット溶接を塗布経路に配置することが特に有利であるが、そのためには溶接前に接着剤を塗布する必要がある。従来の方法においては、塗布弁はロボット制御ユニットによって制御され、そのロボット制御ユニットは、ロボットの、ひいては塗布装置の、ワークピースに対する相対的な動きも制御する。塗布装置とワークピースとの間の相対速度が速い場合、ロボット制御ユニットの演算能力は、短い接着剤ビード、又は、短いギャップを有する複数の短い接着剤ビードの塗布のために塗布弁を十分に速く制御するには、十分ではない。そのため、従来の方法においては、塗布装置とワークピースと間の相対速度を通常の300~500mm/秒より大幅に下げた場合にのみ、溶接部間に短いビードを配置した材料塗布が可能となる。しかしながら、このような速度低下は生産性を著しく低下させるため、容認できない。また、個々の短い接着剤ビードの塗布は、そのビード間に規定されたギャップが配置されているかどうかに依存せず、相対速度を下げた場合にのみ可能である。)
(2)「
[図:0001409060000007.jpg]
[図:0001409060000008.jpg]
」
(日本語訳:好適には、開閉時刻の算出には、塗布弁が作動してから開くまで、あるいは閉じるまでの経過時間である塗布弁の切替え時間が入る。その際、所定の切替え時間を弁制御ユニットのデータメモリに記憶しておくことができる。本方法の有利な更なる形態によれば、ニードルの位置がセンサによって時間に依存して測定され、弁制御ユニットに伝達される。その際、弁制御ユニットは、切替え時間の長さを常に新たに算出し、これを開閉時刻の算出に入れる。動作の過程において、摩耗又は接着剤の硬化によって、塗布弁の切替え時間が変化し得る。この変化は、通常、数ミリ秒の範囲であり、長い材料ビードを塗布する場合にはほとんど重要ではない。しかしながら、短い間隔に配置される短い材料ビードの塗布の際に、塗布弁が10ミリ秒単位の時間において開閉するような塗布においては、そのような切替え時間の変化は、非常に重要である。弁制御ユニットの塗布弁の切替え時間が知られている場合、対応する時間だけ早く開閉処理を開始することができる。それによって、長時間の動作後においても、材料ビード及び材料ビードの間隔を所望の精度において維持することができる。切替え時間の決定には、ニードルがエンドポジションに到達したとき及び離れたときに、センサが弁制御ユニットに信号を送信すれば十分である。ニードルの位置が、所定の短い時間間隔において又は連続的に、アナログセンサによって測定される場合、塗布弁の開閉の正確な測定を得ることができる。有利には、確定された切替え時間が所定値を超える場合、エラー信号が生成される。そのエラー信号は、塗布弁の交換が必要であることを示し得る。また、塗布弁の連続した摩耗を示す異なる所定値を超えた場合、異なるエラー信号を提供することができる。)
(3)「
[図:0001409060000009.jpg]
」
(日本語訳:図1による、自動車用車体部品12に接着剤を塗布するための塗布装置10は、ロボット14を有し、そのロボット14のロボットアーム16には接着剤用の塗布装置18が搭載されている。塗布装置18は塗布弁20を有し、その塗布弁20は、ロボット14によって、塗布経路に沿って、ワークピース12の表面上を、距離を置いて移動される。接着剤は、加圧されて、塗布弁20からワークピース12に塗布される。ロボット14の、ひいては塗布装置18のワークピース12に対する移動は、ロボット制御ユニット21によって制御される。言うまでもなく、塗布装置18の移動に加えて、ワークピース12の移動も可能であり、その際、本発明にとっては、単に、塗布装置18とワークピース12とが互いに相対的に移動することが重要である。)
(4)「
[図:0001409060000010.jpg]
[図:0001409060000011.jpg]
」
(日本語訳:本実施例においては、ギャップ26の長さは、10mmと14mmの間である。ワークピース12と塗布ノズル20との間の相対速度が典型的には500mm/秒までである場合、塗布弁20は、30ミリ秒未満の時間内にギャップ26に沿った距離を進む。この時間内において、塗布弁20は、所定時刻に、まず閉じ、次いで再び開く必要がある。これは、短い接着剤ビード24を塗布する場合にも、類似的に当てはまる。塗布弁20の開閉処理をロボット制御ユニット21によって制御する場合、ロボット制御ユニット21が、ロボット14の高速、且つ複雑な動作の制御によって既にほぼフル稼働しているため、ロボット制御ユニットの演算能力、或いはデータ伝送の経過時間は、接着剤ビード24を十分な精度において塗布するには十分とは言えない。このため、塗布装置18は弁制御ユニット27を有し、その弁制御ユニットには、図2の表に示すような、個々の接着剤ビード24及びギャップ26の長さの目標データ28が格納されている。ワークピース12に対する塗布弁20の現在の相対速度を特徴付けるデータ30は、ロボット制御ユニット21によって弁制御ユニット27に連続的に伝送される。さらに、弁制御ユニット27のデータメモリには、塗布弁20の作動と接着剤塗布の開始又は終了との間に経過する切替え時間について、塗布弁20に固有の値が格納されている。弁制御ユニット27は、目標データ28、速度データ30、及び切替え時間から、接着剤ビード24の塗布のために塗布弁20を開閉させる開閉時刻を算出し、算出した時刻において開閉するように塗布弁20を制御する。接着剤塗布の開始は、ロボット制御ユニット21の開始信号によって行われ、接着剤塗布の終了も同様である。その制御過程を図8に示す。)
(5)「
[図:0001409060000012.jpg]
」
(日本語訳:特に、図3~図6に示すような機能様式の弁が、塗布弁20として適している。その際、これらは例外なくニードル弁である。図3による最も単純な弁は、弁体32に移動可能に取り付けられたニードル34を有し、このニードルは、ピストン室36内において移動可能に取り付けられたピストン38に移動可能に結合されている。接着剤は、供給路40を介して、弁体32に供給される。その弁体は、ニードル34を弁座42に押し付けることによって閉じられ、ニードル34を弁座42から離すことによって開かれる。ここでは詳細に示されていない塗布ノズルが弁座42に直接連結しており、その塗布ノズルから接着剤が射出する。ピストン38は両側において圧縮空気によって加圧可能であり、そのため、ピストン38の圧縮空気加圧によってニードル弁20の開閉がそれぞれ行われる。各ピストンストロークの直後に、ピストン室36は排気される。それによって、圧縮空気を逃がすことができ、その後のピストンストロークの際に、時間を要して圧縮空気を押し出す必要はない。)
(6)「
[図:0001409060000013.jpg]
[図:0001409060000014.jpg]
(日本語訳:
[図:0001409060000015.jpg]
)
[図:0001409060000016.jpg]
・・・
[図:0001409060000017.jpg]
」
4 甲6の記載
甲6には、次の記載がある。摘記事項の後ろに当審の仮訳を掲載した。
(1)「
[図:0001409060000018.jpg]
[図:0001409060000019.jpg]
」
(日本語訳:実施形態例のディスペンスヘッド50が備える吐出部53は、図示しない計量管と、図示しないプランジャーと、吐出口55を有するノズル54とを備えている(図2
参照)。吐出量制御装置64は、プランジャーを計量管内で往復移動させるステッピングモータ(吐出用モータ)である。すなわち、プランジャーの往復移動は吐出用モータの回転により制御される。より詳細には、吐出用モータの回転数が多くなるほど、プランジャーの進出移動距離が長くなり、吐出用モータの回転速度が速くなるほどプランジャーの前進移動の速度が速くなる。図示しない計量管には、プランジャーを後退させてシリンジ56から液体材料を吸入する。)
(2)「
[図:0001409060000020.jpg]
」
(日本語訳:ロボット20は、X軸移動装置21と、Y軸移動装置22と、ロボットヘッド23と、架台24と、ロボットコントローラ30とを備えた卓上型の装置である。)
(3)「
[図:0001409060000021.jpg]
」
(日本語訳:実施形態例の制御部は、 ロボットコントローラ30と、ディスペンスコントローラ40とから構成される。以下では、ロボットコントローラ30を第一制御部30と呼称し、ディスペンスコントローラ40を第二制御部40と呼称する。なお、第一制御部と第二制御部とが物理的に別体である実施形態例とは異なり、第一制御部と第二制御部とが物理的に一体である一つの制御部で実現される場合もある。)
(4)「
[図:0001409060000022.jpg]
」
(日本語訳:第一制御部30と第二制御部40は、ケーブルA80で電気的に接続されており、通信を行うことが可能である。第一制御部30からは、塗布プログラムからの吐出開始・終了指令、および、ディスペンスヘッド50の移動速度Vが、第二制御部40に送信される。ここで、ディスペンスヘッド50の移動速度Vは、塗布プログラムからの移動速度変更指令が出された際に、或いは、所定の時間間隔で、第二制御部40に送信される。第二制御部40による移動速度Vの取得は、第二制御部40から第一制御部30へ送信要求を行うポーリング方式により行ってもよい。)
(5)「
[図:0001409060000023.jpg]
」
(日本語訳:第二制御部40が第一制御部30から吐出開始・終了指令および移動速度Vの情報を受信すると、ディスペンスヘッド50に吐出動作指令を送信する。吐出動作指令のうち、吐出開始・終了指令は塗布プログラムに記述されているが、吐出動作指令のうち、吐出量制御指令については塗布プログラムには記述されていない。すなわち、塗布プログラムに記述されたディスペンスヘッド50の移動速度Vに基づいて第二制御部40が動的に吐出量制御指令を生成する。実施形態例では、吐出量制御装置64はステッピングモータであるから、吐出量増加指令はモータの回転速度(単位時間当たりの回転数)を増加させる指令であり、吐出量減少指令はモータの回転速度(単位時間当たりの回転数)を減少させる指令となる。すなわち、第二制御部40は、ディスペンスヘッド50の移動速度が上昇した際には吐出量増加指令を出力し、ディスペンスヘッド50の移動速度が低下した際には吐出量減少指令を出力する。第二制御部40により吐出量が実質的にリアルタイムで制御されるので、線幅が均一な描画塗布を、従来よりも少ないプログラミング作業により実現することが可能である。)
(6)「
[図:0001409060000024.jpg]
[図:0001409060000025.jpg]
」
5 甲7の記載
甲7には、次の記載がある。摘記事項の後ろに当審の仮訳を掲載した。
(1)「
[図:0001409060000026.jpg]
」
(日本語訳:[請求項12]
部材(14)、特に車両用プラスチック部材(14)の三次元表面(12)をラッカー塗布するためのシステム(10)であって、
前記部材(14)の前記表面(12)にラッカーを塗布するための、少なくとも1つのデジタル制御可能なラッカー塗布装置(16)であって、前記表面(12)に前記ラッカーを塗布するための少なくとも1つの塗布ユニット(18)、特にプリントヘッド(18)と、前記塗布ユニット(18)から射出されるラッカー体積流量を調整するための少なくとも1つのディスペンスユニットとを有する、少なくとも1つのデジタル制御可能なラッカー塗布装置(16)と、
前記塗布ユニット(18)が取り付けられた少なくとも1つの産業用ロボット(20)であって、前記塗布ユニット(18)を、前記ラッカーの塗布中において少なくとも一時的に、塗布される前記表面(12)上の三次元軌道に沿って移動させるように構成されている、少なくとも1つの産業用ロボット(20)と、を備えたシステム(10)。)
(2)「
[図:0001409060000027.jpg]
[図:0001409060000028.jpg]
」
(日本語訳:[請求項13]
前記システム(10)は第1の制御ユニット(22)を備え、前記塗布ユニッ卜(18)を移動させるための前記産業用ロボット(20)は、前記第1の制御ユニット(22)において実行可能であり前記部材(14)に割り当てられたロボットプログラムを介して、前記第1の制御ユニット(22)によって制御可能であること、及び、
前記システム(10)は、第2の制御ユニットを備え、所定のラッカー体積流量を調整する前記ディスペンスユニットは、前記第2の制御ユニットにおいて実行可能であり前記部材(14)に割り当てられたディスペンスプログラムを介して、前記第2の制御ユニットによって制御可能であること、を特徴とする、請求項12に記載のシステム(10)。)
(3)「
[図:0001409060000029.jpg]
」
(日本語訳:プリントヘッド又は塗布ユニットは、好ましくはインクジェットプリンタ用のプリントヘッドの形態に形成され、又は本質的にインクジェットプリンタ用のプリントヘッドの形態に形成され、そのため、少なくとも1つのノズル、好ましくは細いパイプ又はニードルの形態の複数のノズルを有する。その複数のノズルは、ラッカー塗りための周知の方法によって、部材の表面にラッカー又はラッカー材料をスプレー又は塗布する。インクジェットプリンタ用のプリントヘッドの形態に形成されたプリントヘッドは、部材の表面への、良好に分散したラッカー塗布を可能にする。これらのプリントヘッドは、ラッカー材料又はラッカーを霧化せず、それによって本質的に高い塗布効率(AWG)を有する。このことは、本発明による軌道に沿った規定の動きと関連して、ラッカー塗布中における、ラッカー又はラッカー材料の損失の大幅な減少を伴う。個々の滴量の可変分量は、例えば、プリントノズル内の発熱要素によって、又は、ピエゾ結晶への電圧の印加時間によって制御することができる。)
(4)「
[図:0001409060000030.jpg]
[図:0001409060000031.jpg]
」
(日本語訳:ラッカー塗布される部材の識別コードが記憶された本発明によるRFID(無線認証)トランスポンダの使用によって、それぞれの部材に特に割り当てられた塗布ユニット又は複数の塗布ユニットの位置決めが、本発明によるRFID(無線認証)リーダと関連して、ラッカー塗布前において実際的な方法によって、設定可能である。その位置決めは、それぞれのロボットプログラム又はディスペンスプログラムに必要なものである。)
(5)「
[図:0001409060000032.jpg]
」
6 甲8の記載
甲8には、次の記載がある。
(1)「【請求項1】
コーティング剤、特に、塗料、封止剤、離型剤、機能層、または接着剤を、部品(6、9)、特に自動車車体部品に、塗布するための塗布方法であって、
a)塗布装置(2、12)から前記コーティング剤のジェット(5、13)を放出するステップであって、
a1)前記塗布装置(2、12)からの放出後、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、前記コーティング剤の前記ジェットが分裂距離(LZERFALL)に達するまで、最初、噴射方向に連続した領域を有し、
a2)前記塗布装置(2、12)からの放出後、前記分裂距離(LZERFALL)以降、前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、前記噴射方向に互いに離散した複数の液滴へと分裂する、
ステップと、
b)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)が前記部品(6、9)に衝突して前記部品(6、9)をコーティングするよう、前記塗布装置(2、12)の位置を、前記部品(6、9)を基準に、前記塗布装置(2、12)と前記部品(6、9)との間で、所定の塗布距離(d)に合わせるステップと、
を備え
c)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)が前記連続した領域で前記部品(6、9)に衝突するよう、前記塗布距離(d)は前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)の前記分裂距離(LZERFALL)より小さい、
ことを特徴とする、塗布方法。
・・・
【請求項14】
a)塗布された前記コーティング剤の実質的に全部がオーバースプレーなしで前記部品(6、9)上全体に積層されるよう、前記塗布方法は80%、90%、95%以上、または99%以上の高い塗布効率を有し、および/または、
b)前記塗布方法は、0.5m2/min、1m2/min以上、または3m2/min以上の領域コーティング出力を有し、および/または、
c)塗布された前記コーティング剤の体積流量率、および、ひいては、前記コーティング剤の放出速度は、前記コーティング剤が前記部品(6、9)への衝突の後に前記部品(6、9)から跳ね返らないよう、設定されており、および/または、
d)前記塗布装置(2、12)からの前記コーティング剤の前記放出速度は、5m/s、7m/s以上、または10m/s以上であり、および/または、
e)前記塗布装置(2;12)からの前記コーティング剤の前記放出速度は、30m/s、20m/s以下、または10m/s以下であり、および/または、
f)前記塗布距離(d)は、4mm、10mm以上、または40mm以上であり、および/または、
g)前記塗布距離(d)は、200mm以下または100mm以下であり、および/または、
h)前記塗布装置(2、12)は、機械、特に、多軸ロボット、を使用して移動させられ、および/または、
i)前記コーティング剤は、塗料、特に、下地塗料、クリアラッカー、効果塗料、雲母塗料、または金属塗料であり、および/または、
j)前記コーティング剤は、水性塗料または溶媒系塗料であり、および/または、
k)前記コーティング剤の前記ジェット(5、13)は、50ms、20ms、10ms、5ms、または1msより短いスイッチ切替間隔で、スイッチを入れたり切ったりされる、請求項1から13のいずれか1項に記載の塗布方法。」
(2)「【0039】
塗布装置は、好ましくは、直列または並列運動学を有する多軸ロボットを使用して、移動させられることも特筆に値する。そのようなロボット自体は、従来技術から周知なので、詳細には述べない。」
第6 令和4年8月17日付けで通知した取消理由について
1 当審が、令和4年8月17日付けで通知した取消理由1~3の概要は、以下のとおりである。
取消理由1(新規性)本件発明1~2、4~6、9~10、14は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
取消理由2 進歩性)本件発明1~6、8~14は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
取消理由3(明確性)本件発明14は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
2 本件訂正前後の請求項の対応について整理すると、以下のとおりである。
(1)本件訂正前の請求項1、及び、これを直接又は間接的に引用する請求項2、3は、本件訂正後の請求項1、及び、これを直接又は間接的に引用する請求項2、3に対応する。
(2)本件訂正前の請求項4、及び、これを引用する請求項5は、本件訂正後の請求項4、及び、これを引用する請求項5に対応する。
(3)本件訂正前の請求項6は、本件訂正後の請求項6に対応する。
(4)本件訂正前の請求項7のうち、請求項1を引用していた部分が本件訂正後の請求項7に相当し、請求項4を引用していた部分が本件訂正後の請求項15に相当する。
(5)本件訂正前の請求項8~14のうち、請求項1を引用する請求項7を直接又は間接的に引用していた部分がそれぞれ本件訂正後の請求項8~14に相当し、請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用していた部分がそれぞれ本件訂正後の請求項16~22に相当する。
3 取消理由1、2のうち、主たる引用文献等として甲1を引用するものについて
(1)取消理由の概要
取消理由1、2のうち、主たる引用文献等として甲1を引用するものは、甲1(請求項1及び段落【0013】~【0017】)には以下の発明(甲1発明)が記載されていると認められ、本件訂正前の請求項1に係る発明と甲1発明を対比すると、甲1発明の「接着剤を噴射線で噴射し、ストライプ状接着剤40の形態で工作物14に被着させるための被着ノズル24」、「上下に移動して開放位置又は閉鎖位置を占めることにより、前記被着ノズル24からの噴射を制御するバルブニードル22」、及び、「ノズルヘッド18」は、それぞれ、本件訂正前の請求項1に係る発明の「a1)コーティングされる部品(1)にコーティング剤ジェットを供給する少なくとも1つのノズル」、「a2)前記ノズルを介したコーティング剤の放出を制御する少なくとも1つのプリントヘッドバルブ」、及び、「a)プリントヘッド(3)」に相当し、本件訂正前の請求項1、2、9、14に係る発明は、甲1発明と同一であり、また、本件訂正前の請求項1~3、8~14(本件訂正後の請求項1~3、8~22)に係る発明は、甲1発明及び甲7~8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである、というものである。
<甲1発明>
「接着剤を噴射線で噴射し、ストライプ状接着剤40の形態で工作物14に被着させるための被着ノズル24と、
上下に移動して開放位置又は閉鎖位置を占めることにより、前記被着ノズル24からの噴射を制御するバルブニードル22と、
を有するノズルヘッド18と、
その終端部材16にノズルヘッド18を担持し、該ノズルヘッド18を工作物14に対し移動可能とするための、少なくとも2つの可動軸を有するロボット装置10と、
前記ロボット装置10の動きを制御する軌道曲線メモリ又は軌道曲線生成器と、
配量装置52内の駆動圧や噴射空気供給部54における噴射空気圧の制御により、ノズルヘッド18からの噴射を制御するコンピュータ49と、
ノズルヘッド18又は付属のロボット要素に配置され、ストライプ状接着剤40の被着を監視する少なくとも1つのカメラユニット42と、
該カメラユニット42の出力側に接続され、ストライプ状接着剤40の被着を制御、調整、修正する画像評価ユニット45とを少なくとも備えた、
接着剤を工作物に被着させるための装置。」
(2)当審の判断
ア 本件発明1~7について
上記第3のとおり、本件訂正が認められた結果、本件訂正前の請求項1に係る発明の「a1)コーティングされる部品(1)にコーティング剤ジェットを供給する少なくとも1つのノズル」、及び、「a2)前記ノズルを介したコーティング剤の放出を制御する少なくとも1つのプリントヘッドバルブ」は、それぞれ、「a1)コーティングされる部品(1)にコーティング剤ジェットを供給する複数のノズル」、及び、「a2)前記ノズルを介したコーティング剤の放出を制御する複数のプリントヘッドバルブ」に限定された。
また、甲1には、甲1発明の「ノズルヘッド18」について、「接着剤を噴射線で噴射し、ストライプ状接着剤40の形態で工作物14に被着させるための被着ノズル24」、及び、「上下に移動して開放位置又は閉鎖位置を占めることにより、前記被着ノズル24からの噴射を制御するバルブニードル22」を複数備えるものや、複数備えるものとすることに関して、記載も示唆もない。
また、甲1以外の証拠をみても、甲1発明の「ノズルヘッド18」において、「接着剤を噴射線で噴射し、ストライプ状接着剤40の形態で工作物14に被着させるための被着ノズル24」、及び、「上下に移動して開放位置又は閉鎖位置を占めることにより、前記被着ノズル24からの噴射を制御するバルブニードル22」を複数備えるものとすることに関して、記載も示唆もない。
そうすると、上記の点は実質的な相違点であり、かつ、当業者が容易に想到し得たものであるとも認められないから、取消理由1、2によって、本件発明1に係る特許を取り消すべきものとすることはできない。
また、本件発明2~7は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様の理由により、その発明の特許を取消理由1、2によって、取り消すべきものとすることはできない。
イ 本件発明8~14について
上記2(5)のとおり、本件発明8~14は、それぞれ、本件訂正前の請求項8~14において請求項1を引用する請求項7を直接又は間接的に引用していた部分に相当する。また、請求項7は、取消理由1、2(甲1を主たる引用文献等とするもの)の対象となっていない。そうすると、本件発明8~14の特許を取消理由1、2によって、取り消すべきものとすることはできない。
ウ 本件発明15~22について
上記2(4)のとおり、本件発明15は、本件訂正前の請求項7のうち請求項4を引用していた部分に相当し、上記2(5)のとおり、本件訂正前の請求項8~14のうち、請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用していた部分がそれぞれ本件発明16~22に相当する。また、請求項4、及び、7は、取消理由1、2(甲1を主たる引用文献等とするもの)の対象となっていない。そうすると、本件発明15~22の特許を取消理由1、2によって、取り消すべきものとすることはできない。
4 取消理由1、2のうち、主たる引用文献等として甲2を引用するものについて
(1)取消理由の概要
取消理由1、2のうち、主たる引用文献等として甲2を引用するものは、甲2(段落[0018]~[0021])には以下の発明(甲2発明)が記載されていると認められ、本件訂正前の請求項4に係る発明と甲2発明を対比すると、甲2発明において、ロボット制御ユニット21の制御時間は30ミリ秒未満、弁制御ユニット27の制御時間は10ミリ秒単位であるから、後者の制御時間は前者の制御時間より短く、また、ロボット制御ユニットの演算能力、或いはデータ伝送の経過時間は、接着剤ビード24を十分な精度において塗布するには十分とは言えないため、弁制御ユニット27が設けられた点からみても、弁制御ユニット27の制御時間は、ロボット制御ユニット21の制御時間より短いと解されるから、甲2発明は、本件訂正前の請求項4に係る発明の「e)前記ロボット制御装置(5)は、計時された特定の第1サイクル時間で、前記コーティングロボット(2)を制御し、
f)前記プリントヘッド制御装置(7)は、計時された特定の第2サイクル時間で、前記プリントヘッド(3)の前記プリントヘッドバルブを制御し、
g)前記プリントヘッド制御装置(7)の前記第2サイクル時間が前記ロボット制御装置(5)の前記第1サイクル時間より短い」を充足し、本件訂正前の請求項4~6、10、14に係る発明は、甲2発明と同一であり、また、本件訂正前の請求項4~6、8~14(本件訂正後の請求項4~6、8~22)に係る発明は、甲2発明及び甲6~8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである、というものである。
<甲2発明>
「接着剤を射出する塗布ノズルと、
ニードル弁の開閉により接着剤の射出を制御する塗布弁20と、
を有する塗布装置18と、
塗布弁20を塗布経路に沿って、ワークピース12の表面上で距離を置いて移動させるための、少なくとも2つの可動軸を有するロボット14と、
ロボットの移動を制御するロボット制御ユニット21と、
ワークピース12に対する塗布弁20の現在の相対速度を特徴付けるデータ30が、ロボット制御ユニット21から連続的に伝送され、当該速度データ30を少なくとも含む情報に基づき、塗布弁20を制御する弁制御ユニット27とを少なくとも備え、
ロボット制御ユニット21及びそれによるロボットの移動は、30ミリ秒未満の時間で制御され、
弁制御ユニット27及びそれによる塗布弁20の開閉は、10ミリ秒単位の時間で制御されている、
自動車用車体部品12に接着剤を塗布するための塗布装置10。」
(2)当審の判断
ア 本件発明4~6について
上記第3のとおり、本件訂正が認められた結果、本件訂正前の請求項4に係る発明の「計時された特定の第1サイクル時間で」、及び、「計時された特定の第2サイクル時間で」は、それぞれ、「計時された特定の第1サイクル時間で周期的に」、及び、「計時された特定の第2サイクル時間で周期的に」に限定された。
また、甲2発明の「弁制御ユニット27及びそれによる塗布弁20の開閉は、10ミリ秒単位の時間で制御されている」における「10ミリ秒単位の時間で制御されている」は、「塗布弁20の開閉」を「10ミリ秒」で行うことができるという意味であって、10ミリ秒間隔で開閉を繰り返し行うことを意味するものではないから、本件発明4の「計時された特定の第2サイクル時間で周期的に」に相当しない。
また、甲2や、甲2以外の証拠をみても、甲2発明の「弁制御ユニット27及びそれによる塗布弁20の開閉は、10ミリ秒単位の時間で制御されている」において、「塗布弁20の開閉」を周期的に行うものとすることについては、記載も示唆もない。
そうすると、上記の点は実質的な相違点であり、かつ、当業者が容易に想到し得たものであるとも認められないから、取消理由1、2によって、本件発明4に係る特許を取り消すべきものとすることはできない。
また、本件発明5、6は、いずれも、本件発明4を直接又は間接的に引用し、さらに限定したものであるから、本件発明4と同様の理由により、それらの発明の特許を取消理由1、2によって、取り消すべきものとすることはできない。
イ 本件発明8~14について
上記2(5)のとおり、本件発明8~14は、それぞれ、本件訂正前の請求項8~14において請求項1を引用する請求項7を直接又は間接的に引用していた部分に相当する。また、請求項1、及び、7は、取消理由1、2(甲2を主たる引用文献等とするもの)の対象となっていない。そうすると、本件発明8~14の特許を取消理由1、2によって、取り消すべきものとすることはできない。
ウ 本件発明15~22について
上記2(4)のとおり、本件発明15は、本件訂正前の請求項7のうち請求項4を引用していた部分に相当し、上記2(5)のとおり、本件訂正前の請求項8~14のうち、請求項4を引用する請求項7を直接又は間接的に引用していた部分がそれぞれ本件発明16~22に相当する。また、請求項7は、取消理由1、2(甲2を主たる引用文献等とするもの)の対象となっていない。そうすると、本件発明15~22の特許を取消理由1、2によって、取り消すべきものとすることはできない。
5 取消理由3について
取消理由3は、本件訂正前の請求項14の記載について、a)~q)という17もの多数の発明特定事項が「および/または」や「または」で並列されているが、各発明特定事項は必ずしも類似の性質又は機能を有するとはいえないため、一の請求項に記載された事項から一の発明を明確に把握することができず、不明確であるというものであるが、本件訂正前の請求項14に対応する本件訂正後の請求項14、及び、22は、b)~q)の発明特定事項が削除され、a)のみとなった。
したがって、本件訂正前の請求項14に対応する本件訂正後の請求項14、及び、22を、取消理由3によって、取り消すべきものとすることはできない。
第7 取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由について
1 取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由は、申立理由2のうち、請求項7に係る発明の特許を対象とし甲2を主たる証拠とするもの、及び、申立理由3である。
また、申立理由3の概要は以下のとおりである。
<申立理由3の概要>
請求項3には「前記測定装置(6)は、±2mm、±1mm、±0.5mm、±0.25mm、または±0.1mm未満の位置公差で前記コーティングされる部品(1)の前記空間位置を判断する」旨記載されている。しかし、これはもっぱら課題を形式化しているだけであり、発明の詳細な説明にはこのような位置公差で部品の空間位置を判断するための具体的な測定装置の構成が何ら記載されておらず、かつ周知のものでもない。よって、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない(特許異議申立書62頁21行~63頁2行)。
2 当審の判断
(1)
上記第5の4(2)アを踏まえて、本件発明7と甲2発明を対比すると、本件発明7は、「計時された特定の第1サイクル時間で周期的に」、及び、「計時された特定の第2サイクル時間で周期的に」と特定されていること(以下、「相違点1」ともいう。)に加え、「前記プリントヘッド制御装置(7)は、
前記プリントヘッド(3)の前記プリントヘッドバルブに加え、
g)複数のコーティング手段のうちの1つを選択し、前記選択されたコーティング手段を前記プリントヘッド(3)に送るカラー変更装置と、
h)計量装置、特に、塗布される前記コーティング剤を計量する計量ポンプと、
を制御する、」と特定されている点(以下、「相違点2」ともいう。)で相違している。
そして、相違点1は、上記第5の4(2)アのとおり、実質的な相違点であり、かつ、当業者が容易に想到し得たものであるとも認められないものである。
また、甲2発明は、接着剤を塗布するための塗布装置に係るものであり、接着剤は、通常着色されていることやその色を変更することが想定されていないものであるから、相違点2のうち、「g)複数のコーティング手段のうちの1つを選択し、前記選択されたコーティング手段を前記プリントヘッド(3)に送るカラー変更装置」を備える動機付けとなるものが存在しない。
そうすると、本件発明7を当業者が容易に想到し得たとは認められないから、取消理由2によって、本件発明7に係る特許を取り消すべきものとすることはできない。
また、本件発明7を引用する本件発明8~14及び本件発明1を引用する本件発明4を更に引用する本件発明7を独立形式に訂正した本件発明15及び引用する本件発明16~22についても本件発明7と同様に当業者が容易に想到し得たとは認められないから、取消理由2によって、それらの発明に係る特許を取り消すべきものとすることはできない。
(2)申立理由3について
コーティングされる部品(1)の空間位置を±2mmという程度の精度で測定することができる装置が存在することは、当業者に明らかである。また、そのような測定が可能な市販品が存在しないことを証明するような具体的な証拠も示されていない。
したがって、本件訂正前の請求項3に対応する本件訂正後の請求項3の発明に係る特許を、申立理由1によって、取り消すべきものとすることはできない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~22に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700395