特許訂正審判
2022-390007
低磁場磁気共鳴撮像方法及び装置
- 審判番号
- 2022-390007
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2020-025749
- 登録番号
- 6955595
- 請求日
- 2022年01月26日
- 審決日
- 2022年07月25日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ハイパーファイン,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】大貫 進介
- 審判長/審判官
- 審判長 三崎 仁
- 審判官 井上 香緒梨
- 審判官 伊藤 幸仙
- 分類
- P141 .841-Z (A61B) / P141 .856-Z (A61B) / P141 .537-Z (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第1項、特許法第126条第7項、特許法第126条第3項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6955595号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6955595号(以下「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願は、平成27年9月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年1月30日(米国)、2015年2月3日(米国)、2014年9月5日(米国)、2015年6月12日(米国))を国際出願日として出願した特願2017-531980号の一部を令和2年2月19日に新たな特許出願としたものであって、令和3年10月5日にその特許権の設定登録がされ、同年10月27日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、本件特許について、令和4年1月26日に訂正審判(以下「本件審判」という。)の請求がされ、本件審判の請求に対して、令和4年3月25日付け(発送日:同年3月30日)で訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もなかった。
第2 請求の趣旨
特許第6955595号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付の特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1乃至14について訂正することを認める、との審決を求める。
第3 訂正の内容
本件審判の訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項1~3のとおりのものである(なお、下線は請求人が付したものである。)。
1 訂正事項1
本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1に「当該低磁場MRIシステムのためのB0磁場に寄与する磁場を生成するように構成されるB0磁石」と記載されているのを、「当該低磁場MRIシステムのためのB0磁場に寄与する0.2T以下の磁場強度を有する磁場を生成するように構成されるB0磁石」に訂正する。
2 訂正事項2
本件特許に係る特許請求の範囲の請求項1に「前記複数のラミネート層の各々は、低磁場磁気共鳴映像法(MRI)における使用のための磁性コンポーネント少なくとも一部分を形成するようにパターン化された、少なくとも1つの導電層と、少なくとも1つの非導電層とを含み」と記載されているのを、「前記複数のラミネート層の各々は、低磁場磁気共鳴映像法(MRI)における使用のための磁性コンポーネントの少なくとも一部分を形成するようにパターン化された、少なくとも1つの導電層と、少なくとも1つの非導電層とを含み」に訂正する。
3 訂正事項3
本件特許に係る特許請求の範囲の請求項14に「前記貫通穴ビアの少なくとも1つは、メッキされた貫通穴ビア又はピンビアである」と記載されているのを、「前記貫通穴ビアのうちの少なくとも1つの貫通穴ビアは、メッキされた貫通穴ビア又はピンビアであり、前記貫通穴ビアのうちの少なくとも1つの貫通穴ビアの場所は、前記B0磁場の同質性に対する影響を最小限に抑えるように且つ/或いは通電されるときに前記複数のラミネート層の少なくとも1つのラミネート層でパターン化される前記x勾配コイル、前記y勾配コイル及び前記z勾配コイルのうちの少なくとも1つの勾配コイルの1以上の電気特性を最適化するように選択される」に訂正する。
第4 訂正拒絶理由の概要
当審が令和4年3月25日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
訂正事項3は、特許法第126条第5項および同条第7項の規定に適合せず、そして、訂正事項1~3は一群の請求項に対してなされた訂正であるから、訂正事項1~3からなる本件訂正は認められない。
第5 訂正の適否についての判断
事案に鑑み、訂正事項3について検討する。
1 訂正事項3について
(1)訂正の目的
訂正事項3は、本件特許に係る特許請求の範囲の請求項14の「貫通穴ビアの場所」について「前記B0磁場の同質性に対する影響を最小限に抑えるように且つ/或いは通電されるときに前記複数のラミネート層の少なくとも1つのラミネート層でパターン化される前記x勾配コイル、前記y勾配コイル及び前記z勾配コイルのうちの少なくとも1つの勾配コイルの1以上の電気特性を最適化するように選択される」ことを限定する訂正を含むものである。
よって、訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含む。
(2)新規事項の有無
ア 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面
訂正事項3について、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)には次の記載がある(下線は当審が付した。)。
(ア)「【0072】 図4は、幾つかの実施態様に従った、低磁場MRIシステムと共に用いるための例示的な多層ラミネートパネルの概略図を例示している。・・・【0075】 図示のように、例示的なラミネートパネル400は、複数のB0層(410a,410b)を含み、複数のB0層は、それらの上に形成される1以上のB0コイルを有する。B0コイルは、適切な電流が(複数の)コイルに提供されるときに、低磁場MRIシステムのためのB0磁場の少なくとも部分を生成するように構成される。・・・」
(イ)「【0077】 発明者は、MRIコンポーネントを設計し且つ製造するためにラミネート技法を用いることが、低磁場MRIシステムのためのB0コイルを製造する従来的な技法を用いては現実的でない或いは可能でない任意の幾何学的構成及び形態を有するB0コイルの加工を可能にし、実質的にあらゆる幾何学的構成、形態及び/又は配置のコイル設計を可能にすることを認識し且つ理解した。幾つかの実施態様によれば、その上に1以上のコイル又はその部分が形成される少なくとも幾つかのB0層を、他の層と異なる幾何学的構成を用いてパターン化して、所望のB0磁場を達成してよい。以下に更に詳細に議論するように、幾つかのB0層は、異なる用途及び環境のためにB0磁場を同調させるよう或いは所望の強度及び/又は同質性のB0磁場を較正し又はその他の方法で達成するためにB0磁場を調節するよう独立して制御され得る1以上のコイルをその上に形成してよい。【0078】 具体的なコイル幾何学的構成又はコイル幾何学的構成の組み合わせ及びラミネートパネル内のコイルの配置及び分布の選択は、少なくとも部分的に、低磁場MRI用途との使用のために生成されるべき所望のB0磁場に依存することがある。加えて、同じ又は異なるB0コイル設計を有する1以上のラミネート層は、多数の層の上の導電性トレースを接続する1以上のビアによって接続されてよい。幾つかの実施態様において、ビアの場所は、結果として得られるB0磁場の同質性に対するそれらの影響を最小にするよう並びに/或いは通電されるコイルの1以上の電気特性を概ね最適化させるよう選択されてよい。低磁場MRIにおける使用のためのB0磁場を少なくとも部分的に毛伊勢得するために用いられてよいB0コイル設計の非限定的な実施例を以下に更に詳細に記載する。」
(ウ)「【0082】 上で議論したように、ラミネートパネルは、低磁場MRIシステムにおいて作動させられるときに、検出されるMR信号の空間符号化を提供するのに適した磁場を生成し得る或いはそのような磁場に寄与し得る、1以上の勾配コイル又は1以上の勾配コイルの部分を形成するようにパターン化された、少なくとも1つの導電層を更に含んでよい。図4に例示する実施例において、ラミネートパネル400は、複数のラミネート層(420a,420b,420c)を含み、複数のラミネート層の上には、勾配コイル(421a,421b,421c)が形成されている。(複数の)層420aは、Z勾配コイル421aの全部又は部分を形成するようにパターン化された導電性トレースを含み、(複数の)層420bは、Y勾配コイル421bの全部又は部分を形成するようにパターン化された導電性トレースを含み、(複数の)層420cは、X勾配コイル421cの全部又は部分を形成するようにパターン化された導電性トレースを含む。・・・」
(エ)「【0085】 同様に上で議論したように、ラミネートパネルは、B1励起場を生成することによってMR応答を刺激するように構成される(送信)並びに/或いはB0磁場及び対応する勾配場を生成するように構成されるコイルと共に作動させられるときに発せられるMR信号を受信するように構成される(受信)、1以上の送信/受信コイル又は1以上の送信/受信コイルの部分を形成するようにパターン化された少なくとも1つの導電層を更に含んでよい。・・・図4に例示する実施例において、ラミネートパネル400は、(複数の)層430を含み、複数の層の上には、送信/受信コイル431の全部又は部分が形成される。」
(オ)「【0089】 所望の磁場の生成を促進するよう配置されるシムコイル(shim coils)が、ラミネートパネルの1以上の層の上にパターン化されてもよい。・・・図4に例示する実施例において、ラミネートパネル400は、(複数の)層450を含み、(複数の)層450の上には、1以上のシムコイル452(又はその部分)が形成される。・・・」
(カ)【図4】
[図:0001393029000001.jpg]
イ 当審の判断
(ア)訂正後発明特定事項1について
訂正事項3のうち、「前記貫通穴ビアのうちの少なくとも1つの貫通穴ビアの場所」は「前記B0磁場の同質性に対する影響を最小限に抑えるように」「選択される」点(以下「訂正後発明特定事項1」という。)を特定する訂正について検討すると、上記ア(イ)には「ビアの場所は、結果として得られるB0磁場の同質性に対するそれらの影響を最小にするよう・・・選択されてよい。」と記載されていることから、訂正後発明特定事項1は特許明細書等に記載されている。
よって、訂正後発明特定事項1を特定する訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(イ)訂正後発明特定事項2について
a 訂正事項3のうち、「前記貫通穴ビアのうちの少なくとも1つの貫通穴ビアの場所」は「通電されるときに前記複数のラミネート層の少なくとも1つのラミネート層でパターン化される前記x勾配コイル、前記y勾配コイル及び前記z勾配コイルのうちの少なくとも1つの勾配コイルの1以上の電気特性を最適化するように選択される」点(以下「訂正後発明特定事項2」という。)を特定する訂正について検討する。
b 上記ア(イ)には「ビアの場所は・・・通電されるコイルの1以上の電気特性を概ね最適化させるよう選択されてよい。」と記載されている。 しかし、特許明細書等にはコイルとして「B0コイル」(上記ア(ア)、(イ))、「勾配コイル」(上記ア(ウ))、「送信/受信コイル」(上記ア(エ))、「シムコイル」(上記ア(オ))等が記載されているところ、上記ア(イ)において、「通電されるコイル」はいかなるコイルであるかは説明されておらず、「通電されるコイル」は「勾配コイル」であるという記載もない。 してみると、「ビアの場所は・・・通電されるコイルの1以上の電気特性を概ね最適化させるよう選択されてよい。」という記載において「通電されるコイル」を「勾配コイル」と解することはできない。 むしろ、上記ア(イ)ではコイルとしては専ら「B0コイル」について言及されていることから、この点に着目するならば、上記ア(イ)に記載の「通電されるコイル」は「勾配コイル」ではなく「B0コイル」と解するのが相当であるともいえる。 そうすると、上記ア(イ)に記載の「通電されるコイル」は「勾配コイル」であるとはいえないことから、訂正後発明特定事項2を特定する訂正は「貫通穴ビアの場所」を「勾配コイル」との関係で選択することを特定する点において特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものと認められる。
c よって、訂正後発明特定事項2を特定する訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
(ウ)小括
訂正事項3は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第126条第5項の規定に適合するものでない。
(3)独立特許要件
ア 訂正事項3は、上記(1)のとおり特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするので、同条第7項の規定に適合するか否かについて検討する。
イ 特許法第36条第6項第2号(明確性)に規定する要件について検討する。
(ア)訂正事項3は、請求項14において訂正後発明特定事項2、すなわち「前記貫通穴ビアのうちの少なくとも1つの貫通穴ビアの場所」は「通電されるときに前記複数のラミネート層の少なくとも1つのラミネート層でパターン化される前記x勾配コイル、前記y勾配コイル及び前記z勾配コイルのうちの少なくとも1つの勾配コイルの1以上の電気特性を最適化するように選択される」点を特定する訂正を含む。
(イ)しかし、「勾配コイルの1以上の電気特性」とは「勾配コイル」のいかなる電気特性であるのか特定されていないところ、「勾配コイルの1以上の電気特性」が「最適」であるとする基準が不明であり、「勾配コイルの1以上の電気特性を最適化する」とは「勾配コイルの1以上の電気特性」をいかなる特性とすることを意味しているのか不明である。
(ウ)また、「勾配コイルの1以上の電気特性」とは「勾配コイル」のいかなる電気特性であるのか特定されていないことにより、「勾配コイルの1以上の電気特性」と「貫通穴ビアの場所」との間の技術的な関連性は不明であるから、「貫通穴ビアの場所」は「勾配コイルの1以上の電気特性を最適化する」ように「選択される」とは、「貫通穴ビアの場所」は「勾配コイル」との関係においていかに「選択される」ことを意味しているのか不明である。
(エ)ここで、上記(1)イ(イ)のとおり、そもそも訂正後発明特定事項2は特許明細書等に記載されていないことから、上記(イ)、(ウ)の点は特許明細書等を参照してもなお不明である。
(オ)よって、訂正後発明特定事項2は明確でない。
(カ)そして、訂正事項3による訂正後の請求項14の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、訂正事項3による訂正後の請求項14に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。
ウ したがって、訂正事項3は、特許法第126条第7項の規定に適合しない。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~14は、請求項2~14が請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであるから、一群の請求項であり、訂正事項1~3は、特許法第126条第3項に規定する当該一群の請求項ごとに行われたものである。
3 請求人の主張について
(1)審判請求書における主張
ア 新規事項の有無について
請求人は、審判請求書において、願書に添付した明細書の段落【0078】を根拠として訂正事項3は特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である旨主張している(審判請求書第5~6頁の「c 訂正事項1乃至3が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること」より。ここでこの記載中の「1」及び「3」は審判請求書では数字を丸で囲む丸数字で記載されている。)。
しかし、上記1(2)イ(イ)で説示したとおり、特許明細書等の段落【0078】を参照しても訂正事項3のうち訂正後発明特定事項2は記載されていないから、請求人の上記主張は採用できない。
イ 独立特許要件について
請求人は、審判請求書において、訂正発明1乃至14は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものには該当しないことが明らかであり、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである旨主張している(審判請求書第6頁の「d 訂正発明1乃至14が、特許出願の際に独立して特許を受けることができること」より)。
しかし、上記1(3)のイ及びウで説示したとおり、訂正後の請求項14の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないことから、訂正後の請求項14に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。よって、請求人の上記主張は採用できない。
(2)訂正拒絶理由に対する主張
令和4年3月25日付けで訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もなかったことから、上記1で述べた当審の判断に対する請求人の主張はない。
第6 むすび
以上のとおり、訂正事項3は、特許法第126条第5項及び同条第7項の規定に適合せず、そして、訂正事項1~3は一群の請求項に対してなされた訂正であるから、訂正事項1~3からなる本件訂正は認められない。
よって、結論のとおり審決する。
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