商標取消審判
2022-300656
インプレス
- 審判番号
- 2022-300656
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2011-016251
- 登録番号
- 5431551
- 請求日
- 2022年07月13日
- 審決日
- 2024年04月22日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】キム,ボムジュン
- 【請求人代理人】山尾 憲人
- 【請求人代理人】田中 陽介
- 【請求人代理人】寺田 花子
- 【被請求人】花王 株式会社
- 【被請求人代理人】瀧野 文雄
- 【被請求人代理人】江成 文恵
- 【被請求人代理人】今井 貴子
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 和行
- 審判官 豊瀬 京太郎
- 審判官 板谷 玲子
- 分類
- T131 .1 -Y (X03)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第50条、商標法第1条、商標法第2条第3項第2号、商標法第50条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5431551号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5431551号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成23年3月7日に登録出願、第3類「せっけん類,化粧品,香料類」を指定商品として、同年8月12日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和4年8月1日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、令和元(2019)年8月1日から令和4(2022)年7月31日までの期間(以下「要証期間」という。)である。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標について登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実がないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)使用者について
被請求人は、本件商標の使用について株式会社カネボウ化粧品(以下「カネボウ化粧品」という。)との間に黙示的な合意があった旨主張するが(乙2~4)、単に両者の資本関係・支配関係を示すにすぎず、商標使用に関する合意があったことまで明らかにするものではなく、両者間において「通常使用権許諾に関する契約書」が存在しないことは被請求人も認めるところであるから、カネボウ化粧品が本件商標の通常使用権者であると断ずることはできない。
(2)使用行為について
ア カネボウ化粧品が実際に商品を納品したのは「一般小売店」ではなく、「Fa-So-La DUTY FREE」(以下「本件店舗」という。)という「免税店」であるから(乙10の2)、各商品は免税店向けに納品されたといえる。
事実、「株式会社NAAリテイリング」(以下「NAAリテイリング社」という。)の運営するFaSoLa SHOPSの店舗検索を行うと、「化粧品・香水」を取り扱う店舗は「出国審査後エリア」に所在する免税店のみであって、出国前エリアに所在する一般小売店で化粧品を販売している事実が見出せない(甲1)。
イ 「免税店」とは「外国人旅行者などの非居住者等に対し、商品購入時にかかる税金を免除する小売店」であり(甲2)、「消費税免税店(tax-free shop)」と「保税免税店(duty-free shop)」の2種があるが、カネボウ化粧品が商品を納品した本件店舗は、その店舗名に「DUTY FREE」が含まれる点や、所在地が成田国際空港内の出国審査後エリアである点からも「保税免税店」であることが明らかである。
そして、「保税免税店」は関税法第42条などに定める「保税蔵置場」であって「外国から到着した輸入手続の済んでいない物品を出国者に販売する店」とされている(甲2)。実際に、本件商標を付した商品が納品されたというNAAリテイリング社は、東京税関が管轄する「保税蔵置場」の一覧に掲載されている(甲3)。また、保税蔵置所として記録されているNAAリテイリング社の所在地と、乙第9号証の2に記載されている納品先の住所は一致する。
また、保税免税店は通常、空港の出国審査後エリアなど、「国外」とみなされる場所に位置する必要がある。「国外」に所在するという理由から商品輸入に関する税金や国内消費に対する消費税がかからず、免税価格での商品販売が可能となっており(甲4)、保税免税店で販売された商品は出国手続き後に購入者に引き渡される(甲5)。
ウ このように、本件店舗は、「国外」に所在するとの扱いをされ、「外国から到着した輸入手続きの済んでいない物品」を「出国者」に販売する、保税免税店である。
すると、乙第9号証ないし乙第11号証は、日本法人間で商品の発注等に関するemailのやり取りがあったことは示すものの、実際に商標が付された商品が国内において譲渡・引渡されたことを示すものではなく、例えばカネボウ化粧品が外国にて保管していた商品を成田国際空港内の免税店に輸送しただけという状況も十分考えられる。
「proforma invoice」(乙10の2)について、被請求人は「見積」と主張するが、正確には「売買契約前に売主(輸出者)が買主(輸入者)へ発行する仮のInvoice」とされており(甲6)、カネボウ化粧品の担当部署も「国際事業部門国際事業推進グループ」である(乙11の1)。通常の国内における商品の譲渡・引き渡しにおいて、このような書類や担当部署が関連してくるとは考えにくい。
以上より、提出された証拠は、本件商標が付された商品の国内での譲渡・引渡の事実を明らかにするものではない。
エ さらに、「保税免税店」は、原則として外国に出国する非居住者向けの店舗であり、当該店舗で販売される商品は、我が国内での流通は前提とされておらず、国内需要者が商標を目にする機会も限定されている。
オ 不使用取消審判の制度趣旨は「権利者が一定期間登録商標を使用していない場合には保護すべき信用が発生しないかあるいは発生した信用も消滅する。このような権利が残存することにより商標使用を希望する第三者の商標選択の余地を狭めるのは不当であるため、請求を待ってこのような商標登録を取り消す」点にある、とされている(甲7)。
このような制度趣旨に照らすと、本件商標を使用した各商品は日本国内での流通が前提となっていないため、たとえ形式的には商品に商標が付されていたとしても、それは我が国の商標法によって保護されるべき日本国内での信用が蓄積される態様での使用ではない。かかる商標まで保護することは、商標法第50条の制度趣旨に反するばかりか、商標の使用により化体した業務上の信用の維持を図ることで需要者の利益を保護しようとする商標法の目的(商標法第1条)をも逸脱しているといえる。
カ さらに、被請求人が2019年1月(審決注:「2020年1月」の誤記と思料する。)に販売したと主張する各商品はいずれも生産終了品である(乙5の2、乙6の2、乙7の2)。
カネボウ化粧品は自社サイトにおいて、上記各商品「インプレスエマルジョンIIa」、「インプレスコンセントレートマスク3D」、「インプレスローションIIa」の生産終了時期が2020年11月であることを明記している(甲8)。
また、現時点においてカネボウ化粧品及び商標権者のウェブサイトにおいて本件商標を使用した商品の販売は確認できない(甲9、甲10)。
よって、本件商標を使用した商品は2020年秋の終売に向けて販売を縮小し、2020年11月以降は国内にて販売されていないことが容易にうかがえる。なお、生産終了した商品の一部を販売している場合でも「生産終了品の販売は1年間」である旨、カネボウ化粧品のサイトに明記されている(甲11)。
このように既に終売から時間が経過し、不使用状態が継続している本件商標を現時点において保護する利益は見出せず、反対にこのような商標を保護することで請求人による商標選択の可能性が狭まる不利益の方が大きいといえる。よって、このような本件商標の登録を維持することは、商標法第1条の法目的や同法第50条の制度趣旨に照らしても、きわめて不合理であるといわざるを得ない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、答弁書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号のすべてを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。
1 商標権者及び通常使用権者について
被請求人は、創業1887年の総合日用品メーカーであり、「化粧品をはじめとするビューティケア製品、石鹸」等の商品を扱っている(乙2)。
また、被請求人が本件商標の通常使用権を許諾しているのは、被請求人のグループ会社であるカネボウ化粧品(乙3)である。
通常使用権は、商標権者と通常使用権者との間で交わされる商標権使用許諾契約に基づき発生するものであるが、該契約は、商標権者と通常使用権者との意思表示の合意によって成立するものであり、書面によることを必要とするものではない。
被請求人とカネボウ化粧品の間においても、通常使用権許諾に関する契約書は存在しないが、被請求人の有価証券報告書に、「(株)カネボウ化粧品」の議決権を100%所有する旨記載され、「(株)カネボウ化粧品」の「主要な事業の内容」として「化粧品」と記載されている(乙4)。
被請求人は、本件商標の使用行為時期について、カネボウ化粧品の議決権を100%所有するものであり、カネボウ化粧品は被請求人の完全子会社であるから、カネボウ化粧品が本件商標を「化粧品」に使用することについて、両者の間には黙示的な合意があったものと理解できる。
よって、カネボウ化粧品は、本件商標の通常使用権者である。
2 通常使用権者による本件商標の使用の事実について
通常使用権者が、要証期間内に、取消請求に係る指定商品中「化粧品(乳液,化粧用シートマスク,化粧水)」について、本件商標を使用している事実について立証する。
(1)使用に係る商標及び商品について
ア 通常使用権者の製造販売に係る「乳液」(乙5の1)(以下「使用商品1」という。)、「化粧用シートマスク」(乙6の1)(以下「使用商品2」という。)、「化粧水」(乙7の1)(以下「使用商品3」といい、使用商品1ないし3をまとめていうときは、単に「使用商品」という。)の各容器の正面には、「Impress」の文字が、本件商標と同一と理解される文字態様で大きく表示されている。
また、使用商品1には「乳液」と認識できる商品名として「EMULSION」の文字及び型式を表す「II」の文字、使用商品2には「化粧用シートマスク」と認識できる商品名として「CONCENTRATE MASK 3D」の文字、使用商品3には「化粧水」と認識できる商品名として「LOTION」の文字及び型式を表す「II」の文字が表示され、使用商品のいずれにも、カネボウ化粧品のブランドである「Kanebo」の文字が表示されている(乙5の1、乙6の1、乙7の1)。
イ コスメ・化粧品・美容の総合情報サイトに掲載された使用商品の情報には、商品の標題とともに、使用商品が掲載されたものと容易に認識できる商品写真が掲載され、メーカー名、ブランド名、アイテムカテゴリ、及び「どの事業者の、どの商品か」を表す世界共通の商品識別番号である「JANコード」(バーコード)が表示されている(乙5の2、乙6の2、乙7の2)。
ウ JANコード専門のデータベースサイトにおいて検索したJANコードの詳細情報には、使用商品が掲載されたものと容易に認識できる商品イメージ、JANコード、会社名、商品ジャンル及びブランド英名などの表示がされている。
エ 上記アないしウから、カネボウ化粧品が製造販売する「乳液」にJANコードが「4973167296127」である「Impress(インプレス)エマルジョン IIa」があること、カネボウ化粧品が製造販売する「化粧用シートマスク」にJANコ―ドが「4973167396254」である「Impress(インプレス)コンセントレートマスク3D」があること、カネボウ化粧品が製造販売する「化粧水」にJANコードが「4973167396384」である「Impress(インプレス)ローションIIa」があること、及びそれらのいずれにも「Impress」の文字が、本件商標と同一と理解される文字態様でその商品の包装(容器)に付されていることが確認できる。
(2)使用商品を販売した事実について
NAAリテイリング社の発注に応じ、通常使用権者は、発注に係る本件商標を付した「化粧品(乳液,化粧用シートマスク,化粧水)」を販売した。
ア 「マイナビ2024」のウェブサイトにおけるNAAリテイリング社の会社概要から、NAAリテイリング社の本社住所が確認でき、同社が一般小売店「Fa-So-La」を運営し、その取扱商品に「化粧品」が例示されていることが確認できる(乙8)。
イ NAAリテイリング社からの発注依頼書である電子メール(乙9の1)の送信日時は「2019年12月26日木曜日 15:09」であり、件名、添付ファイルの表記により、カネボウ化粧品宛てに発注依頼があったことを確認できる。
また、電子メールの内容として、「1月定期オーダー(PO No.503305)」「納品日を1/17(金)としております」との記載がされており、差出人として「NAAリテイリング」とその担当者名が記載されている。
上記電子メールに添付されたNAAリテイリング社からカネボウ化粧品に対する「2019年12月26日付け」の発注書(乙9の2)には、発注者として、NAAリテイリング社の「本社住所」、「会社名」、「担当者名」が表記され、責任者による押印、「納品先」の住所と宛先、発注書番号(Purchase Order No.)として「503305」の表記がされている。
また、発注の宛先である「株式会社カネボウ化粧品」の表記がされ、納品日(TIME OF DELIVER)として「1月17日」を示す「1/17」の数字が記載されている。
上記発注書に添付された発注明細(ATTACHED SHEET)(乙9の3)に、日付として「DATE:26-12-19」の文字が確認でき、発注番号(Order No)として「503305」の数字が記載されている。
また、発注明細(ATTACHED SHEET)の「DESCRIPTION」に記載されているのは「商品銘柄と商品名」の略称であり、「REF NO.」には「JANコード」、「QTY」には「数量」、「Unit Price」には「単価(卸値)」、「AMOUNT」には「合計額」が記載されている。
上記発注明細中、本件商標に係る商品は、使用商品である。
以上から明らかなとおり、2019年12月26日に、NAAリテイリング社からカネボウ化粧品に、納期を2020年1月17日とする使用商品に関する発注があったことが確認できる。
ウ カネボウ化粧品からNAAリテイリング社への発注依頼に対する「出荷連絡」及び「PROFORMA INVOICE(見積)」に関する電子メール(乙10の1)の送信日時は「2020年1月9日木曜日 15:44」であり、当該電子メールの件名の記載、添付ファイルの表記、宛先、出荷の連絡内容としての「NAA503305-1(1月定期オーダー)」等の記載及び差出人の表記から、当該電子メールにより、ファイル名が「NAA503305-3」の「出荷連絡」及び「PROFORMA INVOICE(見積)」が送信されたことが確認できる。
上記電子メールに添付されたカネボウ化粧品からNAAリテイリング社に対する「2020年1月9日付け」の発注番号(PO NO)「NAA503305-3」の「出荷連絡」及び「PROFORMA INVOICE(見積)」(乙10の2)は、使用商品が表記されているものである。
上記書面には、カネボウ化粧品の社名、住所等が英語表記され、「2020年1月9日」を表す「January 09,2020」、上記書面の番号である「SO NO.3410642」、請求・出荷先であるNAAリテイリング社の名称とその運営する小売店「Fa-So-La」(乙8)の文字を有する「Fa-So-La DUTY FREE」(本件店舗)の表記、乙第9号証の2に記載された納品先の住所が表記されている。
また、NAAリテイリング社の発注番号として「PO NO NAA503305」に枝番を付した「NAA503305-3」の表記、「出荷・納品予定日が2020年1月17日」であることを示す「ETD:January 17,2020」「ETA:January 17,2020」の表記がされている。
さらに、「商品の内容明細」である「DESCRIPTION」の欄に表記された、JANコードと商品名から、これらは使用商品であることが確認できる。
そして、使用商品の個々の合計額の額面は、乙第9号証の3に示す発注明細に記載された金額と合致する。
以上から明らかなとおり、2020年1月9日に、カネボウ化粧品からNAAリテイリング社に、使用商品に関する出荷・納品予定日が2020年1月17日である「PROFORMA INVOICE(見積)」(NAA503305-3)を送信していたことが確認できる。
エ カネボウ化粧品からNAAリテイリング社への請求書に関する電子メール(乙11の1)の送信日時は「2020年2月3日月曜日 16:08」であり、当該電子メールの件名の記載、添付ファイルの表記、宛先、連絡内容としての「カネボウ化粧品1月度ご請求を取り急ぎPDFにてお送り致します。」との記載及び差出人の表記がある。
上記電子メールに添付されたカネボウ化粧品からNAAリテイリング社に対する「2020年1月31日付け」の「請求書」と「明細」(乙11の2)について、「請求書」の宛先には、乙第10号証の2に示す「出荷連絡」及び「PROFORMA INVOICE(見積)」に表記された請求先である「株式会社NAAリテイリング Fa-So-La DUTY FREE」とその住所が表記されている。また、請求者であるカネボウ化粧品の社名、住所が表記され、振込口座であるカネボウ化粧品の口座が記載されている。
上記「明細」には、カネボウ化粧品の名称の英語表記があり、「請求書番号」である「INVOICE NO.」に乙第10号証の2に示す「出荷連絡」及び「PROFORMA INVOICE(見積)」に記載された「SO NO.3410642」と合致する「3410642」が表記されている。
また、「発注書番号」を表す「P.O.NO.」欄には、乙第10号証の2に示す「出荷連絡」及び「PROFORMA INVOICE(見積)」に記載された「PO NO」と同じ「NAA503305-3」の表記がされており、上述のとおり、「503305」は乙第9号証に示すNAAリテイリング社の発注番号と合致するものである。
さらに、「NAA503305-3」の金額は乙第10号証の2に示す使用商品に関する額面の合計と合致し、また、乙第9号証の3に示すNAAリテイリング社からの発注明細に記載された「使用商品」の金額の合計とも合致する。
以上から明らかなとおり、2020年2月3日に、カネボウ化粧品からNAAリテイリング社に「2020年1月31日付けの請求書」が送られたことが確認できる。
(3)まとめ
上記の各証拠方法から、通常使用権者が、本件商標と同一の商標を「乳液,化粧用シートマスク,化粧水」の包装(容器)に付し、その商品に対する請求書を2020年1月31日にNAAリテイリング社に発行していることから、遅くとも使用商品は2020年1月31日には販売されていたことが明らかである。
また、上記の通常使用権者による本件商標の使用行為は、商標法第2条第3項第2号の「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡す行為」に該当するものである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、本件審判請求の予告登録前3年以内に、日本国内において、通常使用権者により、第3類の「化粧品」に属する「乳液,化粧用シートマスク,化粧水」について使用されている。
第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)被請求人(本件商標権者)は、せっけんに加え、化粧品をはじめとするビューティケア製品等を取り扱う会社である(乙2)。そして、少なくとも2019年(平成31年)1月1日から2020年(令和2年)12月31日まで、カネボウ化粧品を連結子会社とし、その議決権の100%を有するものである(乙4)。
(2)カネボウ化粧品は、「化粧品」を主要な事業の内容とするものである(乙4)。
(3)ア 使用商品1は、JANコードを「4973167296127」とする「Impress エマルジョン IIa(EMULSION II)」であり、カネボウ化粧品の業務に係る基礎化粧品に属する商品「乳液」とされ、その商品には、別掲2の構成からなる商標(使用商標)が表示されている(乙5)。
イ 使用商品2は、JANコードを「4973167396254」とする「Impress コンセントレートマスク 3D(CONCENTRATE MASK 3D)」であり、カネボウ化粧品の業務に係る基礎化粧品に属する商品「パック・フェイスマスク」「シートマスク・パック」とされ、その商品には、使用商標が表示されている(乙6)。
ウ 使用商品3は、JANコードを「4973167396384」とする「Impress ローション IIa(LOTION II)」であり、カネボウ化粧品の業務に係る基礎化粧品に属する商品「化粧水」とされ、その商品には、使用商標が表示されている(乙7)。
(4)「マイナビ2024」のウェブサイトには、NAAリテイリング社について、会社概要として「成田国際空港内で免税店、一般小売店の『Fa-So-La』ショップを運営。」、取扱商品として「化粧品」等の記載がある(乙8)。
(5)ア NAAリテイリング社からの2019年(令和元年)12月26日送信のメールには、ファイル名を「Kanebo_発注書_503305」及び「Kanebo_発注明細_503305」とするファイルが添付され、1月定期オーダーの納品日を1月17日(金曜日)とする旨の記載がある(乙9の1)。
そして、2019年(令和元年)12月26日付けの「発注書」は、千葉県成田市成田国際空港在のNAAリテイリング社からカネボウ化粧品に宛てたものであり、納品先を千葉県成田市吉岡に所在するビル内のNAAリテイリング社とし、購入注文番号を「503305」、配達時期を「1/17」とするものである(乙9の2)。
また、2019年(令和元年)12月26日付けの「ATTACHED SHEET」には、注文番号「503305」に係る一覧表があり、(ア)「IP EMULSION IIA 2029612」「4973167296127」、(イ)「IP 3D MASK 2039625」「4973167396254」及び(ウ)「IP LOTION IIA 2039638」「4973167396384」が含まれており、上記(ア)ないし(ウ)の「AMOUNT」は順に、「84,150.00」、「42,075.00」、「42,075.00」である(乙9の3)。
イ カネボウ化粧品からNAAリテイリング社宛ての2020年(令和2年)1月9日送信のメールには、ファイル名を「PIV_NAA503305-3」等とするファイルが添付され、1月定期オーダーの配達予定日を1月17日(金曜日)とする旨の記載がある(乙10の1)。
そして、東京都中央区在のカネボウ化粧品による2020年(令和2年)1月9日付け「SO NO.3410642」の「PROFORMA INVOICE」は、発送先及び請求先を千葉県成田市吉岡に所在するビル内のNAAリテイリング社、購入注文番号を「NAA503305-3」、配達時期を1月17日とするものであり、(ア)「4973167296127」「エマルジョン 2A IPEM2A」、(イ)「4973167396254」「IP コンセントレートマスク3D IPCM3D」及び(ウ)「4973167396384」「IP ローション2A IPL2A」が記載されており、上記(ア)ないし(ウ)の「AMOUNT」は順に、「84,150.00」、「42,075.00」、「42,075.00」であり、その合計として「168,300.00」の記載がある(乙10の2)。
ウ カネボウ化粧品からNAAリテイリング社宛ての2020年(令和2年)2月3日送信のメールには、ファイル名を「【NAA様】カネボウ化粧品1月度請求書」とするファイルが添付され、1月度請求書を送る旨の記載がある(乙11の1)。
そして、2020年(令和2年)1月31日付けの「請求書」は、東京都中央区在のカネボウ化粧品から千葉県成田市吉岡に所在するビル内のNAAリテイリング社に宛てて、支払期日を「2020/02/29」としてカネボウ化粧品の銀行口座への支払いを請求するものであり、「明細」には、「INVOICE NO./SO NO.」として「3410642」、「P.O.NO.」として「NAA503305-3」、「金額」として「168,300」、「消費税」として「16,829」の記載があり、上記金額の単位は「円」とされている(乙11の2)。
エ 前記アないしウに記載の3種類の商品に係る商品名及びコード番号とみられるもの((ア)「IP EMULSION IIA 2029612」「エマルジョン 2A IPEM2A」「4973167296127」、(イ)「IP 3D MASK 2039625」「IP コンセントレートマスク3D IPCM3D」「4973167396254」及び(ウ)「IP LOTION IIA 2039638」「IP ローション2A IPL2A」「4973167396384」)は、前記(3)に記載の使用商品に係る商品名及びJANコードと同視できるものである。
また、前記アないしウに記載の注文番号「503305」が共通し、当該3種類の商品に係る金額も一致する。
そうすると、使用商品は、2020年(令和2年)1月にカネボウ化粧品からNAAリテイリング社に対して納品され、同年2月に代金の請求がされたといえる。
2 前記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標について
本件商標は、別掲1のとおりの構成からなるところ、使用商標は、別掲2のとおりの構成からなるものであって、本件商標と同一の商標と認められる。
(2)使用商品について
使用商品は、前記1(3)の認定事実からすれば、「乳液」、「顔用シート状パック」及び「化粧水」と認められ、これは、本件審判の請求に係る指定商品中の「化粧品」に含まれるものである。
(3)使用時期及び使用行為について
前記1(5)の認定事実からすれば、使用商品が、2020年(令和2年)1月に東京都所在のカネボウ化粧品から千葉県所在のNAAリテイリング社に対して納品(譲渡)されたものと認められ、前記1(3)の認定事実によれば、この譲渡にあたり、使用商品の包装(容器)に使用商標が付されていたものとみるのが相当である
そして、当該月は、要証期間内である。
(4)使用者について
本件商標権者とカネボウ化粧品は、いずれも化粧品を取り扱う会社であるところ、本件商標権者は、カネボウ化粧品を連結子会社とし、その議決権の100%を有するものであり(前記1(1)及び(2))、両者は密接な業務上の繋がりがあると認められ、また、そのような関係にある中にあって、本件商標権者がカネボウ化粧品による使用商標の使用について異議を述べたという事実も見あたらない。
そうすると、本件商標権者は、カネボウ化粧品に対して本件商標を使用する黙示の許諾を与えていたものと認めて差し支えない。
したがって、カネボウ化粧品は、本件商標の通常使用権者であるといえる。
(5)小括
以上によれば、本件商標の通常使用権者であるカネボウ化粧品は、要証期間内である令和2年1月に日本国内において、本件商標と同一と認められる使用商標を、本件審判の請求に係る指定商品中の「化粧品」に含まれる「乳液」、「顔用シート状パック」及び「化粧水」の包装に付して譲渡したと認められる。
そして、この行為は、商標法第2条第3項第2号にいう「商品の包装に標章を付したものを譲渡する行為」に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、被請求人が本件商標を使用した商品を納品したと主張する店舗(本件店舗)は、「国外」に所在するとの扱いをされ、「外国から到着した輸入手続きの済んでいない物品」を「出国者」に販売する、保税免税店であるから、実際に商標が付された商品が国内において譲渡・引渡されたことを示すものではなく、また、「保税免税店」は、原則として外国に出国する非居住者向けの店舗であり、当該店舗で販売される商品は、我が国内での流通は前提とされておらず、国内需要者が商標を目にする機会も限定されているから、たとえ形式的には商品に商標が付されていたとしても、それは我が国の商標法によって保護されるべき日本国内での信用が蓄積される態様での使用ではない旨主張する。
しかしながら、前記の認定、判断のとおり、使用商標を付した使用商品は、東京都中央区在のカネボウ化粧品によって、発送先を千葉県成田市吉岡に所在するNAAリテイリング社として譲渡されたもので、日本国内において商取引の対象物とされたというのが相当であり、このことは、その取引に当たって消費税額が請求されていること(前記1(5)ウの認定事実)からもうかがい知ることができるから、日本所在の会社間で行われた日本国内における使用行為であるといえ、請求人の上記主張は、採用することができない。
(2)請求人は、本件商標を使用した商品は2020年秋の終売に向けて販売を縮小し、2020年11月以降は国内にて販売されていないことが容易にうかがえ、生産終了した商品の一部を販売している場合でも「生産終了品の販売は1年間」であるから、既に終売から時間が経過し、不使用状態が継続している本件商標を現時点において保護する利益は見出せない旨主張する。
しかしながら、商標法は、第50条第2項において、同条第1項の請求があった場合においては、「その審判の請求の登録前3年以内に」登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、当該請求に係る商標登録が取り消されると定めるものであるところ、本件審判における「審判の請求の登録前3年以内」とは、令和元年(2019年)8月1日から令和4年(2022年)7月31日までの期間であるから、請求人の上記主張は、明文の規定に反する見解を述べるものであり、採用の限りでない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が、本件審判の請求に係る指定商品に含まれる商品について、本件商標の使用をしていることを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-300656