商標取消審判
2022-300538
ユイカ
- 審判番号
- 2022-300538
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2009-039658
- 登録番号
- 5303374
- 請求日
- 2022年06月14日
- 審決日
- 2024年03月26日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オークヴィレッジ 株式会社
- 【請求人代理人】森合 透
- 【被請求人】加藤 規瑛
- 【被請求人代理人】池田 博毅
- 審判長/審判官
- 審判長 大森 友子
- 審判官 豊瀬 京太郎
- 審判官 小俣 克巳
- 分類
- T132 .1 -Y (X03)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第50条第2項、商標法第2条第3項第1号、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5303374号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5303374号商標(以下「本件商標」という。)は、「ゆいか」の文字を標準文字で表してなり、平成21年5月28日に登録出願、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」を指定商品として、同22年2月19日に設定登録され、令和2年3月31日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続するものである。
なお、本件審判請求の登録日は、令和4年6月27日である。
また、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、令和元年(2019年)6月27日ないし同4年(2022年)6月26日である(以下「要証期間」という。)。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第3類「せっけん類,化粧品,香料類」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第3類「せっけん類,化粧品,香料類」(以下「請求に係る指定商品」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
請求人は、被請求人提出の審判事件答弁書に対して、何ら弁駁していない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第14号証(枝番号を含む。枝番号をまとめて引用するときは枝番号を省略する。)を提出した。
被請求人は、2019年(令和元年)6月27日ないし2021年(令和3年)11月25日に、日本国内において、通常使用権者が、請求に係る商品について本件商標を使用していることを以下のとおり立証する。
1 本件商標に係る商標権について
本件商標は、正プラス株式会社(以下「正プラス社」という。)が2009年(平成21年)5月28日に出願し、2010年(平成22年)2月19日に登録された(甲2)。
商標権者(被請求人)は、2019年(平成30年)5月28日受付に係る移転登録により正プラス社より本件商標の商標権を譲り受け、2020年(令和2年)2月19日に自ら存続期間の更新登録手続を行い、現在まで本件商標の商標権を保有している(甲2)。
2 正プラス社について(乙1、商業登記履歴事項全部証明書)
正プラス社は、2006年(平成18年)11月8日に設立され、森林セラピーに関する事業及び草木からの精油、蒸留液の抽出、並びに、それらの製造、販売などを主な目的とする株式会社で、設立以来現在に至るまで本件商標を製品自体または包装に付した自社製品(以下「yuicaブランド」ないし「yuicaブランド製品」という。)を主力製品として製造し、販売している(乙2の1、乙2の2)。
3 正プラス社による本件商標の使用
正プラス社は、設立当初から現在に至るまで、本件商標を付したエッセンシャルオイル(草木から抽出した精油)、入浴剤、ミスト(スプレー)などを製造、販売している(乙2の3)。
正プラス社のウェブサイト(乙2の3)の製品情報の製品一覧に掲載された上記製品の多くには、いずれも本件商標が付されている(乙2の3、乙3)。また、上記製品は本件商標の指定商品のいずれかに該当する(乙2の3、乙3)
4 商標権者と正プラス社との関係
商標権者は、2010年(平成22年)10月に正プラス社に入社し、2013年(平成25年)ころ同社の製品開発担当の取締役に就任し、2020年(令和2年)2月5日同社の代表取締役に就任したが、2021年(令和3年)11月25日に同社の代表取締役及び取締役を正当な理由なく突如解任された(乙1)。
商標権者は、正プラス社入社前から同社のyuicaブランドの立ち上げ及び製品開発に関わっており、入社後取締役に就任するまでの間はyuicaブランド製品の開発及び企画営業の業務に従事し、その後取締役に就任した後は、製品開発担当の取締役として新たな製品開発及び既存製品の改良、販促物の開発・作製、企業向け特注案件の営業などの業務を行っていた。
2020年(令和2年)2月5日、商標権者は正プラス社の代表取締役に就任したが、引き続き上記業務に携わる一方で、販路拡大のための営業活動、ホームページの充実化、SNS及び広告の運用などに取り組んだ。正プラス社WEBサイトの「お知らせ」は、同年4月2日に始まっているが、これはyuicaプランドの広告宣伝などの一環として、同年2月5日に商標権者が代表取締役に就任したあと、自ら思いついて始めたものである。
また、商標権者は、正プラス社の代表取締役として、取引先からのyuicaブランド製品の受注・納品、原材料などの発注・仕入、包装の改訂に関するやりとりなどを中心的に行ってきた(乙4~乙12)。
5 本件商標の商標権に関する黙示の使用許諾
商標権者は、2018年(平成30年)5月28日に本件商標の商標権を正プラス社から承継した後も、正プラス社が本件商標を付した製品を製造し販売することについて異議を述べ、または許諾料を求めることはなかった。
これは商標権者が当時正プラス社の製品開発担当取締役(その後に代表取締役)としてyuicaブランド製品の開発に当初から重要な役割として関わり、代表取締役に就任してからはyuicaブランドの製品開発から販売に至るまで中心的な役割を果たしており、yuicaブランドに関しては正プラス社と商標権者自身とを実質的に一体として考えていたことから、本件商標を付した製品を含めたyuicaブランド製品の製造販売を正プラス社が継続していくことについて何ら問題視していなかったためである。
言い換えれば、商標権者は、自らが正プラス社の取締役又は代表取締役である間は、従前どおり正プラス社が本件商標を使用することについてその都度黙示の承諾を行っており、逆にいうと、正プラス社は使用の都度通常使用権を個別的かつ黙示的に付与されていた。
もっとも、令和3年(2021年)11月25日に商標権者が正プラス社の取締役を突如解任されたことにより、上記黙示の承諾の前提となる事実が覆ったため、同日以降は個別の通常使用権が付与されることはなくなった。 また、商標権者は同日以降正プラス社に対して使用許諾を行ったことはない。
以上により、本件商標は、商標権者が権利を承継した2018年(平成30年)5月28日から、商標権者が正プラス社の取締役又は代表取締役であった2021年(令和3年)11月25日までの間、商標権者からその都度黙示の使用許諾を受けた正プラス社(通常使用権者)により日常的かつ継続的に使用されていた。
6 請求人の主張の不合理性
正プラス社の本店所在地は、請求人の本店所在地と同一であり、正プラス社の代表取締役が請求人の取締役を務めている(乙13)。
請求人の主張によれば、本件商標が3年以上通常使用権者による使用も一切なかったことになるが、そうすると過去に正プラス社による本件商標の使用行為はすべて本件商標の商標権を侵害する行為であったことになる。これは正プラス社が商標権者に対して多額の損害賠償義務を負うことを自認することになり、請求人側の主張として不合理であるといわざるをえない。
本件の審判請求がなされる前に、商標権者は正プラス社に対し、令和4年(2022年)3月31日付けで本件商標権の侵害行為の停止を求めたところ、これに対し正プラス社から同年4月30日付け正プラス社代表取締役であり請求人の取締役の作成に係る書面を受領した(乙14)。ここには、「当然会社に対し使用の許諾があったものと推定するものです。」と記載されており、少なくとも請求人の取締役の認識は使用許諾があったとの認識であることが示されている。
以上のとおり、請求人の主張はその内容自体が不合理であるとともに、請求人の取締役の認識とも矛盾している点でも不合理である。
7 結語
以上のとおり、要証期間内に、請求に係る指定商品について登録商標を使用していることが証明された。
第4 当審の判断
1 被請求人提出の乙各号証及び同人の主張によれば、次のことが認められる。
(1)被請求人提出の乙各号証について
ア 正プラス社の履歴事項全部証明書(乙1)
乙第1号証によれば、正プラス社は本店を岐阜県高山市におき、商標権者は、平成29年(2017年)3月31日付けで正プラス社の取締役に就任、令和2年(2020年)2月5日付けで正プラス社の代表取締役に就任し、その後、同年11月25日付けで取締役及び代表取締役を退任した。
イ 正プラス社ウェブサイト(乙2の2)
乙第2号証の2は、印刷日を2022年(令和4年)3月9日とする、正プラス社のウェブサイトと主張する書証であり、「企業情報」の項に、「住所 岐阜県高山市・・・」、「設立 平成18年11月8日」、「事業内容 2.草木からの精油、蒸留液の抽出、並びにそれらの製造販売 7.化粧品の製造、販売」等の記載がある。
ウ JR東日本ニュース(乙6)
乙第6号証は、2020年3月5日付けの東日本旅客鉄道株式会社が公表したプレスリリース(JR東日本ニュース)であり、「「高輪ゲートウェイ駅の香り」オリジナルエッセンシャルオイルと入浴剤の発売」の見出しの下、「商品名/価格 yuicaエッセンシャルオイル(10ml)「高輪ゲートウェイ駅の香り」:2,090円(税込) yuica森の7days bath(60g)「高輪ゲートウェイ駅の香り」(入浴剤):385円(税込)」の記載、「発売開始日 2020年3月23日」の記載、「販売元 株式会社JR東日本商事」の記載、「製造元 正プラス株式会社」の記載、「〈商品詳細〉2アイテムとも、岐阜県飛騨高山に拠点を置く、日本の森から生まれた香りのブランド「yuica(ゆいか)」とのコラボ商品です。」の記載、並びに、「yuica」の文字を付した容器の写真を表し、その下に「yuicaエッセンシャルオイル(10ml)「高輪ゲートウェイ駅の香り」」の記載、及び、「yuica」の文字を付した容器の写真を表し、その下に「yuica森の7days bath(60g)「高輪ゲートウェイ駅の香り」」の記載がある。
(2)上記(1)から、以下の事実を認めることができる。
ア 正プラス社は、岐阜県高山市に本店を置く、草木からの精油、蒸留液の抽出、並びにそれらの製造販売、化粧品の製造、販売等を事業とする企業である(乙2の2)。
イ 商標権者は、平成29年(2017年)3月31日ないし令和3年(2021年)11月25日の期間、正プラス社の取締役であり、そのうちの同2年(2020年)2月5日ないし同3年(2021年)11月25日の期間では、正プラス社の代表取締役であった。
ウ 東日本旅客鉄道株式会社は、2020年(令和2年)3月23日に、「yuika(ゆいか)」とのコラボ商品として、正プラス社の製造に係る「エッセンシャルオイル」及び「入浴剤」(以下「使用商品」という。)を販売したところ、これらの商品の包装(容器)には、「yuica」の欧文字(以下「使用商標」という。)が付されている(乙6)。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)本件商標及び使用商標について
本件商標は、「ゆいか」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、その構成文字からは、「ユイカ」の称呼を生じること明らかであり、当該文字は一般的な辞書等に載録のない語である。
他方、使用商標は、「yuica」の欧文字を横書きしたものであるところ、その構成文字からは、ローマ字読みにより「ユイカ」の称呼が生じること明らかであり、それ以外の称呼が一般的なものとして生じるとはいえず、また、当該文字は一般的な辞書等に載録のない語である。
そうすると、使用商標は、本件商標とその構成文字の文字種において平仮名と欧文字の差異があるとしても、共に「ユイカ」と称呼され、観念において相違するものではないことから、両者は、文字種のみに変更を加えた社会通念上同一の商標といえる。
(2)使用商品について
使用商品は、「エッセンシャルオイル」及び「入浴剤」であるところ、「エッセンシャルオイル」は「香料類」の、「入浴剤」は「化粧品」の範ちゅうにそれぞれ属する商品である。
したがって、使用商品は請求に係る指定商品に含まれる。
(3)使用者について
使用商品の製造元(製造者)は正プラス社であるから、使用商標を使用商品の包装(容器)に付したのは正プラス社である。そして、使用商品の発売開始日には商標権者は、正プラス社の代表取締役あったと認められ、商標権者が正プラス社に対し、使用商標を使用することを許容しているといった主張に何ら不自然な点はないことから、当該発売開始日において商標権者と正プラス社との間で、本件商標について黙示の使用許諾があったと推認して差し支えない。
よって、使用商標の使用者は、正プラス社であり、同社は、本件商標の通常使用権者である。
(4)使用時期及び使用行為について
通常使用権者は、遅くとも、使用商品の発売開始日である2020年(令和2年)3月23日には、包装(容器)に使用商標を付した使用商品を、製造していたものと推認できる。
そうすると、通常使用権者は、使用商品の包装(容器)に使用商標を付して使用したものであり当該日付は、要証期間である。
また、通常使用権者は、岐阜県高山市に本店を有するから、使用商品の使用場所も日本国内であると認められる。
(5)小括
上記(1)ないし(4)からすれば、本件商標の通常使用権者は、要証期間に、日本国内において請求に係る指定商品中の「香料類,化粧品」の範ちゅうに含まれる商品「エッセンシャルオイル,入浴剤」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、商品に付する行為(商標法第2条第3項第1号)により使用したといえる。
3 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が本件審判請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、本件審判の請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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