商標取消審判
2022-300278
ビオラ
- 審判番号
- 2022-300278
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願1987-020702
- 登録番号
- 2151907
- 請求日
- 2022年03月22日
- 審決日
- 2024年06月13日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】小林 喜一
- 【被請求人】株式会社 ADEKA
- 【被請求人代理人】樺澤 聡
- 【被請求人代理人】山田 哲也
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 和行
- 審判官 豊瀬 京太郎
- 審判官 板谷 玲子
- 分類
- T132 .1 -Y (X29)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第2号、商標法第50条第2項、商標法第2条第3項、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第2151907号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第2151907号商標(以下「本件商標」という。)は、「ビオラ」の文字を横書きしてなり、昭和62年2月28日に登録出願、第31類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年7月31日に設定登録され、その後、同22年8月25日に指定商品を第29類「食用油脂,乳製品」及び第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和4年4月7日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成31年(2019年)4月7日から令和4年(2022年)4月6日までの期間(以下「要証期間」という。)である。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第29類「食用油脂,乳製品」について登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第29類「食用油脂,乳製品」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人が使用を主張する商標について
被請求人が本件商標の使用を証明せんとしている商標は、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標であるとは認められず、本件商標の使用にはあたらない。
(2)社会通念上同一と認められる商標について
審判便覧には、不使用に基づく取消審判の対象となった登録商標と社会通念上同一であると認められる商標について例示しているが、被請求人が使用を主張する「ビオラWB」及び「ビオラモイスト」は、本件商標に「WB」及び「モイスト」を付加した商標に該当し、上記審判便覧に示されたいずれにも該当しない。また、「WB」及び「モイスト」部分が捨象されるとする格別な理由もない。
よって、被請求人の主張に係る商標の使用は、本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標の使用には該当しない。
(3)併存登録例
被請求人が使用を主張する商標と本件商標とを比較した場合、「ビオラ」を共通にするにしても「WB」及び「モイスト」において外観上顕著に相違し、称呼においても全体の語調語感が明確に異なることから、社会通念上同一と認められる商標に該当しない。
例えば、特許庁において本件商標と同一・類似の指定商品を指定する商標について、「モイスト」以外の文字又は称呼を共通とするにもかかわらず併存して登録されている(甲3~甲6)。
また、本件商標と異なる指定商品を指定する登録商標ではあるが、特許庁において、「WB(Wb)」以外の文字又は称呼を共通とするにもかかわらず併存して登録されている(甲7~甲10)。
すなわち、「WB(Wb)」又は「モイスト」以外の部分が分離抽出されず、商標全体で一体不可分としてのみ認識された結果、「WB(Wb)」又は「モイスト」以外の文字又は称呼を共通にしようとも商標全体として非類似であると判断されたものと考えられる。翻って本件とこれら併存登録例を比較するに、本件の「ビオラ」部分のみが他の併存登録例における商標中の共通部分と比べて格別に出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるとする事情は発見されず、本件においてのみ「WB」又は「モイスト」の語が捨象されるとする合理的な理由はない。
被請求人が提出した使用証拠において「ビオラ」と「WB」、「ビオラ」と「モイスト」はそれぞれスペースを設けることなく、一連一体として表されている。
さらに、「ビオラWB」及び「ビオラモイスト」はそれぞれ、ホワイトブレッドの製造に適した「ビオラWB」、水分保持に優れた「ビオラモイスト」として商標全体で認識されることを意図したものである。このように「ビオラWB」及び「ビオラモイスト」全体で一つの商標として認識することが妥当であることは、後述の判決・審決例からも明らかである。
さらに、「ビオラWB」及び「ビオラモイスト」の使用対象の商品が主にパン製造用の食用油脂であることから、取引者、需要者はその商品の用途、すなわち、「ホワイトブレッド用」であることを示唆する「WB」部分、「水分を保持ししっとり感を出し乾燥防止の効果があること」を示唆する「モイスト」部分に殊更着目して商品を選択するものと考えられる。なお、「WB」の文字が、本件商標の指定商品の分野において品番等を示すという取引の実情は見当たらないし、「モイスト」の文字が出所識別標識としての称呼や観念が一切生じないとする事情も発見されない。
したがって、「ビオラWB」及び「ビオラモイスト」は、看者をして一連一体・一体不可分としてのみ認識されるべきものであり、本件商標と「ビオラWB」及び「ビオラモイスト」全体を比較した場合、併存登録例からも明らかなとおり、これらは社会通念上同一と認められる商標に該当しない。
(4)判決・審決例
上記を裏付ける証拠として、不使用に基づく取消審判において、登録商標に別の単語を付加した語の使用が、登録商標と社会通念上同一と認められる商標の使用ではないと判断された判決・審決例を示す(平成25年(行ケ)第10164号(甲11)、取消2006-30688(甲12))。
上記判決例・審決例は、いずれも「登録商標」+「別の単語」から構成される語の使用が、不使用に基づく取消審判の対象の登録商標と社会通念上同一と認められる商標の使用に当たらないことを示している。
本件について検討すると、「ビオラWB」及び「ビオラモイスト」は同書同大同間隔で一連一体に記載されているばかりでなく、被請求人はホワイトブレッドに用いるのに適した商品を「ビオラWB」、パンの乾燥を防ぐのに適した商品を「ビオラモイスト」とそれぞれ称して販売しており、「ビオラWB」及び「ビオラモイスト」をそれぞれ別個の一商標として使用している。さらに、「ビオラモイスト」のパンフレットの記載から、被請求人は、各商品の用途を取引者、需要者に認識させることを意図し、そしてこれらの商標に接した看者は「ビオラWB」及び「ビオラモイスト」のそれぞれの特徴を明確に認識しながら商品を選択するものと考える。
したがって、「ビオラ」のみを分離抽出すべき事情はなく、むしろ「ビオラWB」及び「ビオラモイスト」は、一連一体のものとして認識されるべきものである。
(5)まとめ
被請求人の使用行為については、本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標の使用であることを明らかにしたうえで、証拠資料をもってその旨及び本件商標の使用を証明すべきである。しかしながら、被請求人が使用を証明せんとする商標は、いずれも被請求人による「ビオラWB」及び「ビオラモイスト」についての使用を証明するものに過ぎない。
よって、被請求人提出の証拠をもってしては、被請求人による本件商標の使用の事実は何ら説明、証明されておらず、本件商標又はこれと社会通念上同一の商標が要証期間中に使用されていた事実は何ら立証されていない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、答弁書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証(枝番号を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号のすべてを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。
1 使用の事実の概要
本件商標と社会通念上同一の商標を付した「ビオラ」シリーズの油脂加工食品のクリームについて、使用商標「ビオラWB」及び使用商標「ビオラモイスト」として販売している。「ビオラ」シリーズは主成分がほぼ同じクリームであり、対象となる製品に合わせて一部成分を若干異ならせ、効果が異なることを明確にするために、「ビオラ」の後に製品の対象となるホワイトブレッドの略の「WB」、製品の性質の「モイスト」を付して区別している。
(1)使用商標「ビオラWB」
使用商標「ビオラWB」を付した製品は、油脂加工食品のクリームのうちのWBはホワイトブレッド(白パン)用で、タンパク質の含有量を減らして焼き色を少なくしたタイプであり、油脂加工食品である食用油脂で、還元水あめ、植物油脂、乳等を主原料とする食品、乳たんぱく、乳清ミネラル、脱脂濃縮乳を含有する乳製品である(乙1)。なお、乙第1号証の写真は本件審判請求の登録日より3年以上前の写真であるが、2010年(平成22年)に上市されてから、同じ内容のものを被請求人が現在に至るまで継続して販売している(乙2)。
そして、この「ビオラWB」を付した製品は、2022年(令和4年)2月9日に出荷され、2022年(令和4年)2月10日に被請求人から販売先に販売され費用請求している(乙3)。
(2)使用商標「ビオラモイスト」
使用商標「ビオラモイスト」を付した製品は、油脂加工食品のクリームのうちの水分を保持する湿潤を意味するモイストで、しっとり感を出し乾燥防止の効果があるタイプであり、油脂加工食品である食用油脂で、植物油脂、食塩、脱脂濃縮乳、乳たんぱく(一部に乳成分を含む)等を含有する乳製品である(乙4)。そして、2018年(平成30年)に上市されてから、被請求人が現在に至るまで継続して販売している(乙5)。
また、「ビオラモイスト」が付された製品のパンフレット(乙6)を、2018年に上市した際に作成し、現在に至るまで不特定多数に配布し製品を販売している。
これとは別に「2018年度新製品のご案内」のパンフレット(乙7の1)にも「ビオラモイスト」を掲載し、2018年(平成30年)4月から使用し、同様に不特定多数に配布し製品を販売している。なお、このパンフレットは、平成30年3月12日に費用が請求されているので、平成30年3月に作成されたことは明らかである(乙7の2)。
さらに、2021年改訂の被請求人の「総合パンフレット」(乙8)にも「ビオラモイスト」は掲載され、2021年(令和3年)6月から現在に至るまで不特定多数に配布され販売されている。
そして、この「ビオラモイスト」を付した製品は、2022年(令和4年)2月11日に出荷され、2022年(令和4年)2月11日に被請求人から販売先に請求されている(乙9)。
2 使用の事実の詳細
(1)「商標権者」による使用
「ビオラWB」のラベル(乙1の3、乙2の3)には製造者として被請求人である株式会社ADEKAの記載があり、これらのラベルはいずれも要証期間のものではないが要証期間を挟んだ前後の期間で同一のラベルであり、この要証期間のみ製造者が異なることは不自然であり、要証期間においても被請求人が製造していることは明らかである。また、仮に明らかでないとしても、要証期間においても被請求人が製造してこのラベルを使用していることはこれらから容易に推認できる。「ビオラモイスト」のラベル(乙4の3)自体も要証期間外のものであるが、要証期間内に頒布されているパンフレット(乙8)にもラベル(乙4の3)と同一のラベルが貼付された製品の写真が掲載されており、同様に製造者として株式会社ADEKAの記載があり、被請求人が本件商標を付した製品を製造していることがわかる。
また、被請求人である株式会社ADEKAの請求明細書(控)(乙3の2、乙9の2)には、「ビオラWB」に対して2022年2月10日に納品した製品に対する請求があり、「ビオラモイスト」に対して2022年2月11日に納品した製品に対する請求があることから、被請求人が本件商標を付した製品を販売している。
さらに、各種パンフレット(乙6、乙7の1、乙8)のいずれにも、本件商標が記載されており、これらいずれのパンフレットも、被請求人のものであり、被請求人が本件商標を付した取引書類を配布している。
これらから明らかなとおり、被請求人が本件商標を付した製品を製造、販売、取引書類を配布しており、被請求人は本件商標の商標権者であるので、商標権者本人による使用である。
(2)「指定商品」についての使用
商標権者が製造・販売する商品は、商標「ビオラWB」については、ラベル(乙1の3)の名称に記載のように油脂加工食品で、原材料名に記載のように、乳等を主要原料とする食品、乳たんぱく、乳清ミネラル、脱脂濃縮乳を含有するクリームであり、指定商品の第29類「食用油脂」及び「乳製品」に該当する。
また、商標「ビオラモイスト」については、ラベル(乙4の3)の名称に記載のように油脂加工食品で、原材料名に記載のように、油脂加工食品である食用油脂で、植物油脂、食塩、脱脂濃縮乳、乳たんぱく(一部に乳成分を含む)等を含有するクリームである。また、パンフレット(乙6、乙7の1)にもクリームである旨の記載があり、指定商品の第29類「食用油脂」及び「乳製品」に該当する。
したがって、本件の使用している商品は、第29類「食用油脂,乳製品」に該当する商品である。
(3)「登録商標(社会通念上同一の商標を含む)」の使用
本件商標は、片仮名で「ビオラ」の文字を書した商標である。
一方、実際に使用しているのは、製品のラベル(乙1の3、乙2の3)、出門証(乙3の1)及び請求明細書(控)(乙3の2)に示すように、「ビオラWB」の文字を書した商標、並びに、パンフレット(乙6、乙7の1、乙8)、製品のラベル(乙4の3)、出門証(乙9の1)及び請求明細書(控)(乙9の2)に示すように、「ビオラモイスト」の文字を書した商標である。
上記の各商標は、本件商標「ビオラ」に、本件製品の使用対象であるホワイトブレッド用でタンパク質の含有量を減らして焼き色を少なくしたタイプであることを明確にするホワイトブレッドの略の「WB」を加えたもの、又は、本件製品の水分を保持ししっとり感を出し乾燥防止の効果があることを明確にする湿潤を意味する「モイスト」を加えたものであり、本件商標とは異なるものの、「ビオラ」シリーズ製品で対象製品を明確にするこの程度の付加は、登録商標の使用に当たって通常一般に行われるものであり、本件商標が有する独自の識別性に影響を与えるものではないから、「ビオラWB」及び「ビオラモイスト」は本件商標と社会通念上同一の商標である。
また、製品はほぼ同一のクリームで前段がシリーズ名の「ビオラ」で同じで、後段のみがそれぞれが製品の特長を表す異なる文字が加えられていることからも、「ビオラ」シリーズで対象、性質を異ならせたものであることも明らかであり、「ビオラWB」も「ビオラモイスト」もそれぞれ本件商標と社会通念上同一の商標である。
3 商標法第2条第3項に規定する「使用」
(1)ア 本件商標と社会通念上同一の商標である「ビオラWB」を付した製品は出門証(乙3の1)に記載されているように、本件審判請求登録前3年以内の2022年(令和4年)2月9日にお客様納入コード103473-302-000に宛てて株式会社ADEKAより20個出荷され、請求明細書(控)(乙3の2)に記載されているように、2022年(令和4年)2月10日に被請求人から納入場所コード103473302000に20個の費用請求していることにより、要証期間に「ビオラWB」の商標を付した製品を販売している。
イ 本件商標と社会通念上同一の商標である「ビオラモイスト」を付した製品は出門証(乙9の1)に記載されているように、2022年(令和4年)2月11日に株式会社ADEKAより1個出荷され、請求明細書(控)(乙9の2)に記載されているように、2022年(令和4年)2月11日に被請求人から1個の費用請求していることにより、要証期間に「ビオラモイスト」の商標を付した製品を販売している。
ウ これらの被請求人の行為は、「商品の包装に標章を付したものを譲渡する行為」(商標法第2条第3項第2号)に該当するものである。
(2)ア 本件商標と社会通念上同一の商標である「ビオラモイスト」を付した製品が掲載されたパンフレット(乙7の1)は、2018年(平成30年)4月から使用し、それ以降不特定多数に配布され販売されている。なお、このパンフレットは、制作会社の被請求人に対する請求書(乙7の2)に示すように平成30年3月12日に5000部印刷した費用が請求されていることより、平成30年3月に作成されたものであることは明らかである。また、このパンフレットの裏表紙の記載より、2018年(平成30年)4月から使用が開始されたことが判り、それ以降不特定多数に配布され販売されている。
なお、一般に各種の企業が自らの取り扱いに係る商品について、パンフレットを作成するのは商品の販売促進に資するためのものであって、5000部印刷しており当然に各顧客に頒布し使用されるものである。そうすると、パンフレット(乙7の1)及び請求書(乙7の2)のみによっては、パンフレットの頒布の事実が明確ではないとしても、パンフレットは、その体裁からして実際に頒布されたものであることを十分に推認し得る。
イ 本件商標と社会通念上同一の商標である「ビオラモイスト」を付した製品が掲載された総合パンフレット(乙8)は、2021年(令和3年)6月から使用し、それ以降不特定多数に配布され販売されている。なお、この総合パンフレットは被請求人が印刷、製造しているため、印刷などの請求書等は無いが、最終ページの記載より、2021年(令和3年)6月に作成され使用が開始されたことは明らかである。この総合パンフレットを従前のように大量にあらかじめ印刷するようにしなかったのは、必要以上に紙を消費することを防止した環境配慮のためである。
ウ これらの被請求人の行為は、「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当するものである。
第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)ア 賞味期限を2022年7月11日とする油脂加工食品の包装(箱、袋)にゴシック体の書体で表された「ビオラWB」の文字が表示され、また、上記の包装箱には、「原材料名」として「還元水あめ、植物油脂、乳等を主要原料とする食品、乳たんぱく、乳清ミネラル、脱脂濃縮乳」等の記載があり、内容量が10kg、保存方法が3度から7度の要冷蔵である旨、並びに「製造者」として商標権者の名称及び住所の記載がある(乙2)。
イ 賞味期限を2022年7月4日とする油脂加工食品の包装(箱、袋)にゴシック体の書体で表された「ビオラモイスト」の文字が表示され、また、上記の包装箱には、「原材料名」として「植物油脂、食塩、脱脂濃縮乳、乳たんぱく/増粘剤(CMC)、ph調整剤、(一部に乳成分を含む)」の記載があり、内容量が10kg、保存方法が3度から7度の要冷蔵である旨、並びに「製造者」として商標権者の名称及び住所の記載がある(乙4)。
(2)ア 裏表紙の、商標権者の名称及び住所並びに「2021.6」の記載から、2021年6月に商標権者が発行したと推認される「総合パンフレット」の8頁に、「パン生地改良素材」の一として「ビオラモイスト」の文字の記載があり、「10kg(BIB袋)段ボール」、3度から7度の要冷蔵である旨、及び「パンのしっとり感が持続する機能性リキッドです。生地の水分を保持するので、経日的にパサつきやすいパンに効果的です。」の記載があり、また、上記記載の近傍に、前記(1)イの包装箱と酷似する外観を呈する画像の掲載及び当該画像の直下に「ビオラモイスト」の文字の記載がある(乙8)。
イ 前記アに加え、「ビオラモイスト」に関して、「パンのしっとり感に着目した機能性練込用クリーム「ビオラモイスト」を上市しました。パンの水分を保持し、焼きたての食感を持続させる機能が好評をいただいています。」(乙5)、「パンの老化防止、乾燥防止の効果があり、焼きたての食感が持続します。」「[用途]製パン」(乙6、乙7の1)といった記載があることから、「ビオラモイスト」は、パンの水分を保持する機能、効果を謳う商品であると認められる。
ウ 被請求人の主張によれば、「ビオラWB」は、白パン用の商品であり、当該「WB」の文字は、ホワイトブレッドの略である。なお、この点につき、請求人は争っていない。
(3)ア 商標権者から埼玉県所在の株式会社に宛てた2022年2月9日を作成日・出荷日とする「出門証」には、同日付で出荷倉庫を「三郷」とする押印並びに得意先番号「100006-353」及び納入場所番号「103473-302-000」の記載があり、当該出荷に係る品目として「ビオラWB」(以下「使用商品1」という。)があり、使用商品1の荷姿は「C/S 10kg」、出荷に係る数量は20個、200kgであった(乙3の1)。
そして、2022年2月の「請求明細書(控)」には、2022年2月10日を納期日とする品名「ビオラWB」(使用商品1)があり、その荷姿及び個数並びに当該請求明細書に記載された請求先及び納入場所の番号は、上記出門証に記載の内容と整合し、売上管理部門として「販売二G(食品)」の記載がある(乙3の2)。
イ 商標権者から千葉県所在の者に宛てた2022年2月10日を作成日、同月11日を出荷日とする「出門証」には、同月11日付で出荷倉庫を「三郷」とする押印並びに得意先番号「616760-002」及び問合せ番号「120691」の記載があり、当該出荷に係る品目として「ビオラモイスト」(以下、「使用商品2」といい、「使用商品1」と合わせていうときは単に「使用商品」という。)があり、使用商品2の荷姿は「C/S 10kg」、出荷に係る数量は1個、10kgであった(乙9の1)。
そして、2022年2月の「請求明細書」には、2022年2月11日を納期日とする品名「ビオラモイスト」があり、その荷姿及び個数並びに当該請求明細書に記載された請求先及び問合わせの番号は、上記出門証に記載の内容と整合し、売上管理部門として「東京販売(食品)」の記載がある(乙9の2)。
ウ 前記ア及びイからすれば、使用商品1は、2022年(令和4年)2月9日から10日の間に被請求人(商標権者)から埼玉県所在の株式会社に対して、使用商品2は、2022年(令和4年)2月11日に被請求人(商標権者)から千葉県所在の者に対して、それぞれ納品されたといえる。
2 前記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標について
ア 本件商標は、「ビオラ」の文字をゴシック体の書体で表してなる商標である。
イ これに対し、使用に係る商標は、前記1(1)アの認定事実から「ビオラWB」の文字をゴシック体の書体で表してなる商標(以下「使用商標1」という。)及び前記1(1)イの認定事実から「ビオラモイスト」の文字をゴシック体の書体で表してなる商標(以下「使用商標2」といい、「使用商標1」と合わせていうときは単に「使用商標」という。)であると認められる。
そして、まず使用商標1についてみるに、一般に、欧文字2字からなる標章が商品の品番、型番等を表示するための記号、符号として取引上普通に採択されており、前記1(2)ウの認定事実からすれば、使用商標1における「WB」についても、白パン用の商品であることを表すための記号、符号の1種として表示されているものと認められる。
次に、使用商標2についてみるに、「モイスト」の文字(語)は「湿り気があること。また、そのさま。」(出典:デジタル大辞泉(小学館))程の意味を有する成語であり、前記1(2)ア及びイの認定事実からすれば、使用商標2における「モイスト」についても、パンの水分を保持する機能、効果がある商品であることを表すために表示されているものといえ、使用商品2の品質を表したものと認められる。
してみれば、使用商標において、自他商品識別機能を果たすのは「ビオラ」の文字部分であるといえる。
ウ 本件商標と使用商標において自他商品識別機能を果たす「ビオラ」の文字部分とは、書体のみに変更を加えた同一の文字からなるものといえるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
(2)使用商品について
使用商品は、前記1(1)及び(2)の認定事実からすれば、油脂加工食品であって、使用商品1は植物油脂、乳等を主要原料とする食品及び脱脂濃縮乳等を、使用商品2は植物油脂及び脱脂濃縮乳等を、それぞれ原材料とするパン製造用のクリームないしクリーム状の食用油脂であると認められ、これは、本件審判の請求に係る指定商品「食用油脂,乳製品」に含まれるものである。
(3)使用時期、使用行為及び使用者について
前記1(3)の認定事実からすれば、使用商品1が2022年(令和4年)2月9日から10日の間に商標権者から埼玉県所在の株式会社に対して、使用商品2が2022年(令和4年)2月11日に商標権者から千葉県所在の者に対して、それぞれ納品(譲渡)されたものと認められ、前記1(1)及び(2)の認定事実を合わせみれば、この譲渡にあたり、使用商品の包装(容器)に使用商標が付されていたものとみるのが相当である。
そして、当該日は、要証期間内である。
(4)小括
以上によれば、本件商標の商標権者は、要証期間内である令和4年2月に日本国内において、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を、本件審判の請求に係る指定商品に含まれる商品の包装に付して譲渡したと認められる。
そして、この行為は、商標法第2条第3項第2号にいう「商品の包装に標章を付したものを譲渡する行為」に該当する。
3 請求人の主張について
請求人は、「ビオラWB」及び「ビオラモイスト」の使用対象の商品が主にパン製造用の食用油脂であることから、取引者、需要者はその商品の用途、すなわち、「ホワイトブレッド用」であることを示唆する「WB」部分、「水分を保持ししっとり感を出し乾燥防止の効果があること」を示唆する「モイスト」部分に殊更着目して商品を選択するものと考えられ、「ビオラWB」及び「ビオラモイスト」は、看者をして一連一体・一体不可分としてのみ認識されるべきものである旨主張する。
しかしながら、取引者、需要者が、使用商標中の「WB」又は「モイスト」の部分について、その商品の用途や効果を示唆する部分として着目することは、その商品の用途等を理解するためと解され、その場合、当該商品の出所識別標識として着目されるのは上記文字部分以外の構成文字である「ビオラ」の部分であるというのが相当であり、前記2(1)で判断したとおり、使用商標において、自他商品識別機能を果たすのは「ビオラ」の文字部分であるといえる。
なお、請求人は、併存登録例、判決例及び審決例(甲3~甲12)を挙げて、使用商標は本件商標と社会通念上同一と認められる商標ではない旨主張するが、それらの事例は、商標の具体的構成が明らかに異なるものであるから、本件の判断を左右するものではない。
したがって、請求人の主張は、採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が、本件審判の請求に係る指定商品に含まれる商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていることを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-300278