特許拒絶査定不服審判
2022-021283
充電装置
- 審判番号
- 2022-021283
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-534117
- 請求日
- 2022年12月27日
- 審決日
- 2023年11月14日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】工機ホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】村井 弘実
- 【請求人代理人】村井 隆
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 稲葉 崇
- 審判官 土居 仁士
- 分類
- P18 .121-Z (H02J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-534117「充電装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月 6日国際公開、WO2020/026664〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)6月28日(優先権主張 平成30年7月30日、平成31年4月5日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 2年12月 2日 手続補正書
令和 4年 1月 6日付け 拒絶理由通知書
5月 9日 意見書・手続補正書
9月26日付け 拒絶査定
12月27日 審判請求書・手続補正書
令和 5年 3月15日 前置報告書
以下では、令和4年9月26日付け拒絶査定を「原査定」といい、令和4年12月27日の手続補正書による補正を「本件補正」という。
第2 本件補正について
本件補正は、本件補正前の請求項2における「充電装置」の記載を、「請求項1に記載の充電装置」と補正するものである。
上記補正は、令和4年9月26日付け拒絶査定において付記された、請求項2が請求項1を引用するのかしないのかが不明であるという、特許法36条6項2号の拒絶の理由を解消するためになされたものであるから、本件補正は、特許法17条の2第5項4号の明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
したがって、本件補正は適法になされたものである。
第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
なお、後の参照の便宜のため、本願発明を以下のようにA~Gに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
【請求項1】
A 少なくとも第1、第2及び第3の電池パック接続部を含む複数の電池パック接続部と、
B 前記複数の電池パック接続部に接続された電池パックを充電する充電回路と、
C 前記充電回路からの充電電流供給先となる電池パック接続部を選択する選択手段と、
D 前記充電回路及び前記選択手段を制御する制御部と、を備えた充電装置であって、
E 前記制御部は、前記複数の電池パック接続部に複数の電池パックが接続された場合の制御モードとして、第1モードを実行可能であり、
F 前記第1モードでは、前記複数の電池パックのうち、一つの電池パックが満充電になる前に他の一つの電池パックを充電するよう、充電電流供給先となる電池パック接続部を順次切り替え、
G 前記複数の電池パック接続部のうち、前記第1及び第2の電池パック接続部にそれぞれ第1及び第2の電池パックが予め接続された状態で前記第1モードを実行しているときに、前記第3の電池パック接続部に第3の電池パックが新たに接続された場合、前記予め接続された第1及び第2の電池パックに加えて新たに接続された前記第3の電池パックも前記第1モードに従って順次充電できるように構成した、充電装置。
第4 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明並びに引用文献7及び8に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開平9-215217号公報
引用文献7.特開2003-235172号公報(周知技術を示す文献)
引用文献8.実公平4-24759号公報(周知技術を示す文献)
第5 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された特開平9-215217号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した(以下同様)。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、バッテリ充電装置およびバッテリ充電方法に関する。詳しくは、複数個のバッテリに例えば充電モードに応じた所定時間毎に充電電流を順次切り換え供給して充電を行うことによって、複数個のバッテリに状況に応じた充電を行うことを可能にしようとしたバッテリ充電装置およびバッテリ充電方法に係るものである。」
(2)「【0009】図1は、実施の形態としてのバッテリ充電装置10の構成を示している。このバッテリ充電装置10は、商用交流(AC)電源を供給するための電源プラグ11と、この電源プラグ11に供給される交流電源を直流(DC)電源に変換するためのAC/DCコンバータ12と、このAC/DCコンバータ12より出力される直流電源を安定化して定電圧定電流電源を得るためのレギュレータ13と、システム全体を制御するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」という)14とを有している。」
(3)「【0010】ここで、マイコン14は、後述するように充電すべきリチウムイオンバッテリの端子電圧を監視している。レギュレータ13は、マイコン14の制御によって、1C(C:充電すべきリチウムイオンバッテリの電流容量)程度の定電流電源または4.2Vの定電圧電源として機能するように切り換えられる。すなわち、レギュレータ13は、充電すべきリチウムイオンバッテリの端子電圧が4.1Vとなるまでは定電流電源として機能し、その後は定電圧電源として機能するように制御される。」
(4)「【0011】また、バッテリ充電装置10は、チャネル1(ch1)~チャネル4(ch4)のバッテリ装置部15-1~15-4と、これらバッテリ装着部15-1~15-4に装着されるリチウムイオンバッテリにレギュレータ13より充電電流を選択的に供給するための接続スイッチ16-1~16-4とを有している。接続スイッチ16-1~16-4のオンオフは、マイコン14によって制御される。すなわち、バッテリ装着部15-1~15-4に装着されているリチウムイオンバッテリに充電する場合には、それぞれ接続スイッチ16-1~16-4がオン状態とされる。」
(5)「【0013】ここで、バッテリ装着部15-1~15-4にそれぞれリチウムイオンバッテリBT1~BT4が装着される場合、バッテリBT1~BT4の正極端子P1~P4はそれぞれバッテリ装着部15-1~15-4の正極端子15P1~15P4に接続され、バッテリBT1~BT4の負極端子N1~N4はそれぞれバッテリ装着部15-1~15-4の負極端子15N1~15N4に接続される。」
(6)「【0020】切換スイッチ23の切り換えはユーザによって行われ、a側、b側、c側に切り換えることで、充電モードとしてモード1、モード2、モード3を選択することができる。ここで、切換スイッチ23の可動端子には、切換スイッチ23がa側に切り換えられるときは直流電圧+Bが得られ、切換スイッチ23がb側に切り換えられるときは直流電圧+Bを抵抗器21,22で分圧した電圧が得られ、切換スイッチ23がc側に切り換えられるときは接地電圧が得られる。このように切換スイッチ23の可動端子に得られる信号はモード選択信号Smodとしてマイコン14に供給される。マイコン14では、モード選択信号Smodの電圧値に基づき、モードの判定を行うことができ、そのモードに応じた充電制御が行われる。」
(7)「【0029】次に、ステップST12で、リチウムイオンバッテリが装着されている全てのバッテリ装着部のうち、充電しようとするリチウムイオンバッテリが装着されているバッテリ装着部を選択する。例えば、図1に示すように、チャネル1~4のバッテリ装着部15-1~15-4の全てにリチウムイオンバッテリBT1~BT4が装着されている場合には、最初はチャネル1を選択し、以下ステップST12に戻る毎に、チャネル2、チャネル3、チャネル4、・・・のように選択する。また例えば、チャネル1,2,4のバッテリ装着部15-1,15-2,15-4にリチウムイオンバッテリBT1,BT2,BT4が装着されている場合には、最初はチャネル1を選択し、以下ステップST12に戻る毎に、チャネル2、チャネル4、・・・のように選択する。なお、2巡目以降においては、後述するように満充電状態であると判定したリチウムイオンバッテリが装着されているバッテリ装着部は選択しない。」
(8)「【0038】例えば、モード1の充電制御では、充電量が100%となる毎に充電すべきリチウムイオンバッテリを切り換える。モード2の充電制御では、1巡目は充電量が80%となる毎に充電すべきリチウムイオンバッテリを切り換え、2巡目は充電量が100%となる毎に充電すべきリチウムイオンバッテリを切り換える。モード3の充電制御では、1巡目は充電量が60%となる毎に充電すべきリチウムイオンバッテリを切り換え、2巡目は充電量が80%となる毎に充電すべきリチウムイオンバッテリを切り換え、3巡目は充電量が100%となる毎に充電すべきリチウムイオンバッテリを切り換える。ここで、各リチウムイオンバッテリの充電量は、上述したように端子電圧に基づいて判断する他に、充電電流を検出して判断することもできる。」
(9)「【0040】
【発明の効果】この発明によれば、複数個のバッテリに充電電流が順次切り換え供給して充電を行うものであり、切り換え動作を行うための充電時間または充電量を選択することで、複数個のバッテリに状況に応じた充電を行うことができる。例えば、切り換え動作を行うための充電時間または充電量が小さな値となるモードを選択することで、緊急に複数のバッテリが必要なときにも対処できる。また、複数個のバッテリに同時に充電をするものでなく、大型のトランス等を必要とせず、小型、軽量、低消費電力のバッテリ充電装置を得ることができる。」
2 引用発明
前記1(1)~(9)の記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をa~iに分説し、「分説a」などのようにして参照する。
<引用発明>
「a バッテリ充電装置10は、AC/DCコンバータ12より出力される直流電源を安定化して定電圧定電流電源を得るためのレギュレータ13と、システム全体を制御するためのマイコン14とを有しており、(【0009】)
b レギュレータ13は、マイコン14の制御によって定電流電源または定電圧電源として機能するように切り換えられ、(【0010】)
c バッテリ充電装置10は、バッテリ装着部15-1~15-4に装着されるリチウムイオンバッテリにレギュレータ13より充電電流を選択的に供給するための接続スイッチ16-1~16-4とを有しており、接続スイッチ16-1~16-4のオンオフは、マイコン14によって制御され、(【0011】)
d バッテリ装着部15-1~15-4にそれぞれリチウムイオンバッテリBT1~BT4が装着され、(【0013】)
e マイコン14では、モード選択信号Smodの電圧値に基づき、モードの判定を行うことができ、そのモードに応じた充電制御が行われ、(【0020】)
f 例えば、バッテリ装着部15-1、15-2、15-4にリチウムイオンバッテリBT1、BT2、BT4が装着され、(【0029】)
g モード3の充電制御では、1巡目は充電量が60%となる毎に充電すべきリチウムイオンバッテリを切り換え、2巡目は充電量が80%となる毎に充電すべきリチウムイオンバッテリを切り換え、3巡目は充電量が100%となる毎に充電すべきリチウムイオンバッテリを切り換え、(【0038】)
h 複数個のバッテリに充電電流が順次切り換え供給して充電を行う、(【0040】)
i 充電装置。(【0001】)」
3 引用文献7及び8に記載された事項と周知技術の認定
(1)引用文献7に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された特開2003-235172号公報(以下「引用文献7」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リチウムイオン電池等の二次電池のパック(以下電池パックという)を複数充電可能な充電方法に関するものである。特に携帯電話やデジタルカメラなどのように、機器本体の他に携帯機器に携帯する予備の電池パックを充電するのに最適な充電装置および充電方法を提供する。」
イ 「【0005】本発明は、充電中に他の電池が着脱、あるいは新たに装着された場合等でも、未充電電池を自動的に検出し、全ての未充電電池が充電完了するまで、充電を行うことができるようにする。また、充電装置内の制御回路の大幅な削減を行い、充電装置の小型化とコストダウンを実現することを可能にすることである。」
ウ 「【0015】
【発明の実施の形態】図1に本発明の実施例を、図2と図3に本発明の充電方法を示すフローチャートを示す。図1の充電装置50は電池パックが3個(P1~P3) の例であり、おおまかに分類して、充電を司る充電制御用FET部分1と、充電を制御するための充電制御回路2と、スイッチ手段3および4とからなる。充電装置50自身の電源はACアダプタから供給される。」
エ 「【0017】充電制御回路2は、充電時の電流を検出する充電電流検出回路21と、定電流充電、定電圧充電および予備充電を行うために前記充電制御用FET1を制御する充電FET制御回路22、装着された電池パックの電圧を検出する電池パック電圧検出回路23と、電池パックが、充電装置50に装着されているかどうかを検出する電池パック装着検出回路24と、上記全ての回路と前記スイッチ手段3および4を制御する制御回路25と、本充電装置50に装着されている任意の電池パックを充電中に、スイッチ手段4の接続を周期的に切り替えることで、電池パック装着検出回路24により電池パックの装着状態を常時監視し、その監視状況から電池パックの着脱履歴を記憶する記憶手段26で構成されている。」
オ 「【0020】制御回路25からはスイッチ手段3を制御するためのSW制御信号Aとスイッチ手段4を制御するためのSW制御信号Bが出力される。SW制御信号Aは電池パックを充電する順番を切り替える信号であり、充電中の電池パックの充電が完了したとき、次の電池パックを充電するためにスイッチ手段3を切り替える。SW制御信号Bは充電装置に装着されている電池パックを調べるための信号であり、充電中または、充電待ちの状態に関わらず、スイツチ(S41)から(S43)を順にオンさせている。スイッチ(S41)から(S43)のオンが一巡する時間は、充電装置50から電池パックを取り外して、再度装着するまでの一般的な時間より十分短い時間、例えば数十mSに設定されている。」
カ 「【0021】次に本充電装置50の充電方法を図2と図3のフローチャートに沿って説明する。充電装置50は、ACアダプタから電源が供給されると充電を開始する(ステップS1)。まず、スイッチ手段4によって最初に充電を行う電池パックP1が選択され、電池パックP1の電池電圧を測定する(ステップS2)。なお、電池パックP1は各種機器の本体に内蔵されている電池パックであり、その電池パックP1から充電を行うようにしている。」
キ 「【0022】その電池パックP1の電圧が所定の設定電圧1以下であれば(ステップS3)、予備充電を行う(ステップS13)。予備充電はこの後に行う定電流充電より少ない電流で充電を行うものである。設定電圧はリチウムイオン電池の場合、単セルあたり約2.5Vに設定している。これは二次電池が過放電状態にある場合、いきなり大電流で充電すると危険なため、充電電流を絞って充電を行う必要があるためである。このため予備充電時の充電電流は通常数mA~数十mA程度の電流値である。」
ク 「【0023】予備充電により電池パック電圧P1が上昇し、設定電圧1に到達した場合、あるいは最初から設定電圧1以上の場合は、定電流充電を行う(ステップS4)。この定電流充電は電池パックの容量により設定された比較的大きな電流で充電するもので、急速に充電を行うことができる。定電流充電が進んで、電池パック電圧が設定電圧2に達すると(ステップS5)、定電圧充電に切り替える(ステップS6)。」
ケ 「【0025】電池パックP1の充電の完了後、記憶手段26の情報から他に接続されている電池パックが有るかどうかを調ベ(ステップS9)、有る場合はその電池パック(P2とする)にスイッチ手段3を切り替え(ステップS10)。さらに記憶手段26からの情報から、この電池パックP2が、新規に装着したものであるかを判定し(ステップS11)、新規に装着したものであれば、ステップS3にもどり、設定電圧が1より高いか低いかの判定をする。」
コ 「【0030】
【発明の効果】本発明によれば、充電中でも、充電装置に装着されている全ての電池パックの着脱を常時監視しているため、充電中に着脱された別電池パックも自動的に充電が行われるようになる。また、次の充電に際し、該当電池パックの着脱情報と電池パックの電圧値から最適な充電方法を選択することができる。」
(2)引用文献7記載事項の認定
前記(1)ア~コの記載によれば、引用文献7には、次の引用文献7記載事項が記載されていると認められる。
「リチウムイオン電池等の二次電池のパックを複数充電可能な充電方法であって、(【0001】)
充電中に他の電池が新たに装着された場合でも、未充電電池を自動的に検出し、全ての未充電電池が充電完了するまで、充電を行うことができるようにするものであり、(【0005】)
充電装置50は電池パックが3個(P1~P3) の例であり、充電制御回路2と、スイッチ手段3を備え、(【0015】)
充電制御回路2は、制御回路25と、本充電装置50に装着されている任意の電池パックを充電中に、電池パック装着検出回路24により電池パックの装着状態を常時監視し、その監視状況から電池パックの着脱履歴を記憶する記憶手段26を備え、(【0017】)
制御回路25からはスイッチ手段3を制御するためのSW制御信号Aが出力され、SW制御信号Aは電池パックを充電する順番を切り替える信号であり、充電中の電池パックの充電が完了したとき、次の電池パックを充電するためにスイッチ手段3を切り替え、(【0020】)
最初に充電を行う電池パックP1が選択され、(【0021】)
その電池パックP1の電圧が所定の設定電圧1以下であれば(ステップS3)、予備充電を行い、(【0022】)
予備充電により電池パック電圧P1が設定電圧1に到達した場合、定電流充電を行い(ステップS4)、設定電圧2に達すると(ステップS5)、定電圧充電に切り替え(ステップS6)、(【0023】)
電池パックP1の充電の完了後、記憶手段26の情報から他に接続されている電池パックが有るかどうかを調ベ、有る場合はその電池パック(P2とする)にスイッチ手段3を切り替え、この電池パックP2が新規に装着したものであれば、ステップS3にもどり、(【0025】)
充電中に着脱された別電池パックも自動的に充電が行われるようになる、(【0030】)
充電方法。」
(3)引用文献8に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された実公平4-24759号公報(以下「引用文献8」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「(イ) 産業上の利用分野
本考案は複数のバツテリーを順次個別に充電するようにした充電装置に関する。」(第1欄15行~17行)
イ 「(ハ) 考案が解決しようとする問題点
この様に複数のバツテリーが順次個別に充電される充電装置では、充電完了したバツテリーを外して、新たに未充電のバツテリーを接続して充電したい場合が考えられる。そこで、この未充電のバツテリーも自動的に充電される構成が充電装置に望まれる。又、停電回復後においても、自動的に充電が再開されるものが望ましい。」(第2欄2行~9行)
ウ 「(ニ) 問題点を解決するための手段
本考案は、複数のバツテリーを満充電を検出しながら、切換制御回路により順次切換えて充電する充電装置において、電源回路の出力に接続され前記複数のバツテリーが接続されたときにオンとなるスイツチ手段と、前記スイツチ手段の出力の立上りを検出する立上り検出回路と、前記立上り検出回路出力に基づき初期設定信号を作成する初期設定信号作成回路とを備え、前記切換制御回路を前記初期設定信号により、初期状態に設定することを特徴とする充電装置である。」(第2欄10行~20行)
エ 「 また、充電動作中にバツテリーの入れ替えを行うと、新しいバツテリーを接続したときに、対応するスイツチ(S1からS3のうちの一つ)がオフからオンとなり、立上がりが検出されて、初期設定信号が作成される。そこで、3つのサイリスタ接続回路25,26,27は初期状態に設定される。つまり、バツテリーの入れ替えにより、充電が初めから実行されることになる。このような動作により、接続されているバツテリーは必ず充電されることを簡単な構成により実現できる。」(第11欄12行~21行)
オ 「(ト) 考案の効果
以上述べた様に本考案によれば、バツテリーの接続を検出して初期設定信号が作成されるので、接続されたバツテリーは、途中で接続されたものを含めて、全て充電される。又、停電回復後も充電が自動的に再開されるので実用的である。」(第14欄13行~18行)
(4)引用文献8記載事項の認定
前記(3)ア~オの記載によれば、引用文献8には、次の引用文献8記載事項が記載されていると認められる。
「複数のバツテリーを順次個別に充電するようにした充電装置であって、(第1欄15行~17行)
充電完了したバツテリーを外して、新たに未充電のバツテリーを接続して充電したい場合が考えられ、この未充電のバツテリーも自動的に充電される構成が充電装置に望まれる、という問題点を解決しようとするものであり、(第2欄2行~9行)
複数のバツテリーを満充電を検出しながら、切換制御回路により順次切換えて充電する充電装置において、電源回路の出力に接続され前記複数のバツテリーが接続されたときにオンとなるスイツチ手段と、前記スイツチ手段の出力の立上りを検出する立上り検出回路と、前記立上り検出回路出力に基づき初期設定信号を作成する初期設定信号作成回路とを備え、前記切換制御回路を前記初期設定信号により、初期状態に設定することを特徴とし、(第2欄10行~20行)
充電動作中にバツテリーの入れ替えを行うと、充電が初めから実行されることになり、(第11欄12行~21行)
接続されたバツテリーは、途中で接続されたものを含めて、全て充電される、(第14欄13行~18行)
充電装置。」
(5)周知技術の認定
前記(2)及び(4)において認定した事項から、次の技術事項は当業者にとって周知技術であったと認められる。
[周知技術]
「複数の電池を順次充電する充電装置において、充電中に新たに接続された電池についても充電を行うために、充電中に電池の接続状態を監視し、新たな電池が装着された場合に、当該電池も充電の対象として、既に装着されている電池と同じ手法で順次充電すること」
第6 対比
本願発明と引用発明とを対比すると以下のとおりとなる。
1 発明特定事項Aについて
引用発明は、「それぞれリチウムイオンバッテリBT1~BT4が装着」される「バッテリ装着部15-1~15-4」(分説d)を備えており、「リチウムイオンバッテリ」は「電池」であり、「装着」により「接続」することは明らかであるから、「バッテリ装着部」は「電池接続部」であるといえる。
したがって、本願発明と引用発明は、「少なくとも第1、第2及び第3の電池接続部を含む複数の電池接続部」を備える点で共通する。他方、本願発明は、電池「パック」接続部を備えるのに対して、引用発明では、電池が、電池「パック」であるか否かが不明であり、それに付随して、電池接続部が、電池「パック」接続部であるか否かが不明である。
2 発明特定事項Bについて
引用発明では、「バッテリ装着部15-1~15-4に装着されるリチウムイオンバッテリにレギュレータ13より充電電流」が「供給」(分説c)されており、「レギュレータ13」が所定の電気回路により構成されるのは明らかであるから、「レギュレータ13」は「充電回路」であるといえる。
また、「バッテリ装着部」は「電池接続部」であり、「リチウムイオンバッテリ」は「電池」である(前記1)。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記複数の電池接続部に接続された電池を充電する充電回路」を備える点で共通する。他方、前記1のとおり、引用発明では、電池が、電池「パック」であるか否かが不明であり、それに付随して、電池接続部が、電池「パック」接続部であるか否かが不明である。
3 発明特定事項Cについて
(1)引用発明では、「レギュレータ13より充電電流」が「供給」(分説c)され、「レギュレータ13」は「充電回路」である(前記2)から、引用発明は、「充電回路からの充電電流」を「供給」するものである。
(2)引用発明は、「バッテリ装着部15-1~15-4に装着されるリチウムイオンバッテリ」に「充電電流を選択的に供給するための接続スイッチ16-1~16-4」(分説c)を備えており、充電電流が「バッテリ装着部」を介して「リチウムイオンバッテリ」に供給されることは明らかであるから、「接続スイッチ16-1~16-4」は「バッテリ装着部15-1~15-4」に充電電流を選択的に供給しているといえる。また、「バッテリ装着部」は「電池接続部」である(前記1)。
したがって、引用発明の「接続スイッチ16-1~16-4」は、「充電電流供給先となる電池接続部を選択する選択手段」であるといえる。
(3)前記(1)及び(2)によれば、本願発明と引用発明は、「前記充電回路からの充電電流供給先となる電池接続部を選択する選択手段」を備える点で共通する。他方、前記1のとおり、引用発明では、電池接続部が、電池「パック」接続部であるか否かが不明である。
4 発明特定事項Dについて
引用発明では、「レギュレータ13は、マイコン14の制御」によって「切り換えられ」(分説b)、「接続スイッチ16-1~16-4のオンオフは、マイコン14によって制御」(分説c)されており、「レギュレータ13」は「充電回路」であり(前記2)、「接続スイッチ16-1~16-4」は「選択手段」である(前記3(2))から、引用発明の「マイコン14」は、「充電回路及び選択手段を制御する制御部」であるといえる。
また、引用発明は、「充電装置」(分説i)である。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記充電回路及び前記選択手段を制御する制御部と、を備えた充電装置」である点で一致する。
5 発明特定事項Eについて
(1)引用発明では、「マイコン14」において「モードの判定」を行い、「モードに応じた充電制御が行われ」(分説e)、「モード3の充電制御」(分説g)が行われるものであり、「マイコン14」は「制御部」である(前記4)から、引用発明では、「制御部」は「制御モード」として、「モード3」を「実行可能」である。
(2)引用文献は、「モード3」において「充電すべきリチウムイオンバッテリ」を「切り換え」(分説g)、「複数個のバッテリ」に「充電を行う」(分説h)ものであり、「電池」である「リチウムイオンバッテリ」が「接続」される「複数の電池接続部」を備える(前記1)から、引用文献の「モード3」は、「複数の電池接続部に複数の電池が接続された場合の制御モード」であるといえる。また、「モード3」を「第1モード」と呼ぶことは任意である。
(3)前記(1)及び(2)によれば、本願発明と引用発明は、「前記制御部は、前記複数の電池接続部に複数の電池が接続された場合の制御モードとして、第1モードを実行可能」である点で共通する。他方、前記1のとおり、引用発明では、電池が、電池「パック」であるか否かが不明であり、それに付随して、電池接続部が、電池「パック」接続部であるか否かが不明である。
6 発明特定事項Fについて
(1)引用発明は、「第1モード」(前記5)において、「1巡目は充電量が60%となる毎に充電すべきリチウムイオンバッテリを切り換え」る(分説g)ものであり、充電の際に「充電量」が「60%」となるのは、「満充電になる前」であるから、引用発明は、「第1モードでは、複数の電池のうち、一つの電池が満充電になる前に他の一つの電池パックを充電」するように「切り替え」るものである。
(2)引用発明は「充電電流供給先となる電池接続部を選択する」(前記3)ものであり、「充電電流が順次切り換え供給」(分説h)されるから、引用発明は、「充電電流供給先となる電池接続部を順次切り替え」るものである。
(3)前記(1)及び(2)によれば、本願発明と引用文献は、「前記第1モードでは、前記複数の電池のうち、一つの電池が満充電になる前に他の一つの電池を充電するよう、充電電流供給先となる電池接続部を順次切り替え」る点で共通する。他方、前記1のとおり、引用発明では、電池が、電池「パック」であるか否かが不明であり、それに付随して、電池接続部が、電池「パック」接続部であるか否かが不明である。
7 発明特定事項Gについて
(1)引用発明は、「例えば、バッテリ装着部15-1、15-2、15-4にリチウムイオンバッテリBT1、BT2、BT4が装着され」(分説f)るものであり、「バッテリ装着部」は「電池接続部」であり、「リチウムイオンバッテリ」は「電池」である(前記1)から、引用発明は、「複数の電池接続部のうち、第1及び第2の電池接続部にそれぞれ第1及び第2の電池」が「接続された状態」を備えている。
(2)引用発明は、「バッテリ装着部」に「装着されるリチウムイオンバッテリ」に「充電電流」を「供給」(分説c)して、「第1モード」(前記5)による充電を行うものであるから、引用発明では、「電池が予め接続された状態で第1モードを実行している」といえる。
(3)引用発明は、「充電装置」である(前記4)。
(4)引用発明では、前記(2)で示したように、「電池が予め接続された状態で第1モードを実行している」が、「第1モードを実行しているときに、前記第3の電池パック接続部に第3の電池パックが新たに接続された場合」にどのような動作となるかは特定されていない。
(5)前記(1)~(4)によれば、本願発明と引用発明は、「前記複数の電池接続部のうち、前記第1及び第2の電池接続部にそれぞれ第1及び第2の電池が予め接続された状態で前記第1モードを実行する、充電装置」である点で共通する。
他方、前記1のとおり、引用発明では、電池が、電池「パック」であるか否かが不明であり、それに付随して、電池接続部が、電池「パック」接続部であるか否かが不明である。
また、引用発明は、「第1モードを実行しているときに、前記第3の電池パック接続部に第3の電池パックが新たに接続された場合」にどのような動作となるかは特定されていない。
8 一致点及び相違点
以上のことから、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致及び相違する。
<一致点>
「 少なくとも第1、第2及び第3の電池接続部を含む複数の電池接続部と、
前記複数の電池接続部に接続された電池を充電する充電回路と、
前記充電回路からの充電電流供給先となる電池接続部を選択する選択手段と、
前記充電回路及び前記選択手段を制御する制御部と、を備えた充電装置であって、
前記制御部は、前記複数の電池接続部に複数の電池が接続された場合の制御モードとして、第1モードを実行可能であり、
前記第1モードでは、前記複数の電池のうち、一つの電池が満充電になる前に他の一つの電池を充電するよう、充電電流供給先となる電池接続部を順次切り替え、
前記複数の電池接続部のうち、前記第1及び第2の電池接続部にそれぞれ第1及び第2の電池が予め接続された状態で前記第1モードを実行する、充電装置。」
<相違点1>
本願発明では、電池が、電池「パック」であり、電池「パック」接続部を備えるのに対して、引用発明では、電池が、電池「パック」であるか否かが不明であり、それに付随して、電池接続部が、電池「パック」接続部であるか否かが不明である点。
<相違点2>
本願発明は、「第1モードを実行しているときに、前記第3の電池パック接続部に第3の電池パックが新たに接続された場合、前記予め接続された第1及び第2の電池パックに加えて新たに接続された前記第3の電池パックも前記第1モードに従って順次充電できるように構成した」ものであるのに対して、引用発明は、「第1モードを実行しているときに、前記第3の電池パック接続部に第3の電池パックが新たに接続された場合」にどのような動作となるかは特定されていない点。
第7 判断
1 相違点についての判断
(1)相違点1について
引用発明では、電池が、電池パックであるか否かが不明であるが、電池を電池パックとして構成することは常套手段(例えば、前記第5の3(2)のとおり、引用文献7には、電池パックを充電することが記載されている。)であるので、引用発明において、電池を、電池パックとし、電池接続部を、電池パック接続部とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
(2)相違点2について
前記第5の3(5)のとおり、「複数の電池を順次充電する充電装置において、充電中に新たに接続された電池についても充電を行うために、充電中に電池の接続状態を監視し、新たな電池が装着された場合に、当該電池も充電の対象として、既に装着されている電池と同じ手法で順次充電すること」は、当業者にとって周知技術であったと認められ、充電中に新たに接続された電池についても充電を行うことは、引用発明においても当業者が当然認識する課題であると認められる。
したがって、引用発明に前記周知技術を適用して、第1モードを実行して第1及び第2の電池の充電を行っているときに、第3の電池が新たに接続された場合に、第3の電池についても、第1モードによる充電の対象に加えて、第1及び第2の電池と同様に第1モードに従って順次充電を行うようにすることは、当業者が容易に想到できたことである。
2 効果についての判断
引用発明において、電池及び電池接続部を、それぞれ電池パック及び電池パック接続部とし、第1モードを実行して第1及び第2の電池の充電を行っているときに、第3の電池が新たに接続された場合に、第3の電池についても、第1モードによる充電の対象に加えて、第1及び第2の電池と同様に第1モードに従って順次充電を行うようにしたものは、本願発明と同一の効果を奏することが明らかであるため、本願発明の効果は格別のものではない。
3 請求人の主張についての判断
請求人は、「(4)対比
本願発明と引用文献1に記載された発明(以下「引用発明1」)との間には、少なくとも下記の相違点が認められます。
・相違点1… 本願発明が、「前記複数の電池パック接続部のうち、前記第1及び第2の電池パック接続部にそれぞれ第1及び第2の電池パックが予め接続された状態で前記第1モードを実行しているときに、前記第3の電池パック接続部に第3の電池パックが新たに接続された場合、前記予め接続された第1及び第2の電池パックに加えて新たに接続された前記第3の電池パックも前記第1モードに従って順次充電できるように構成した」との事項を有するのに対し、引用発明1は、そのような事項に何ら教示していない点。
(5)本願発明が特許されるべき理由
新たに挙げられた引用文献7,8はいずれも、1つの電池パックを満充電まで充電した後に新たに接続された電池パックを充電する構成(例えば引用文献7の段落0025、引用文献8の第13欄第15行~19行)であり、接続されている電池パックが満充電になる前に新たに接続された電池パックの充電を開始する構成ではありません。
そのため、引用文献1に記載された発明に引用文献7及び8の技術を適用したとすると、接続されている電池パックが満充電になった後に新たに接続された電池パックの充電が開始される構成になるに過ぎません。
従って、これらの引用文献を組み合わせたとしても、本願発明の特徴、すなわち上記相違点1に係る事項に容易に想到できるものではありません。」と主張する。(審判請求書3~4頁)
しかしながら、引用発明は、第1モードにおいて、接続されている複数の電池について、一つの電池が満充電になる前に他の一つの電池を充電するよう順次切り替えを行うものであり(前記第6の8)、前記1(2)のとおり、引用発明に引用文献7及び8に示される周知技術を適用して、第1モードを実行して第1及び第2の電池の充電を行っているときに、新たに接続された第3の電池についても、第1モードによる充電の対象に加えて、第1及び第2の電池と同様に第1モードに従って順次充電を行う、すなわち、一つの電池が満充電になる前に他の一つの電池を充電するよう順次切り替えを行うようにすることは、当業者が容易に想到できたことである。
したがって、請求人の主張は採用できない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献7及び8に示される周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-021283