2022-020120
ベンダブル配線基板、伸縮できる配線基板およびそれらによる電子デバイス
- 審判番号
- 2022-020120
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-553838外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月12日
- 審決日
- 2023年11月13日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】三井化学株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人鷲田国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 19項目
第1 手続の経緯
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本願は、2019年(令和元年)10月25日(優先権主張 平成30年10月31日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 原査定の概要
原査定(令和4年9月12日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献1、2、4-6に基づいて、本願請求項5-11に係る発明は、以下の引用文献1-6に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2013-237714号公報
2.特開2017-022237号公報
3.特開2017-168437号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2017-118109号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2018-160512号公報(周知技術を示す文献)
6.国際公開第2017/159456号(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、令和4年12月12日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、5は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】長鎖ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて合成可能なポリウレタンであって、動的粘弾性測定により貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が155℃以上であり、25℃における貯蔵弾性率が20~200MPaであり、引張強度が20~80MPaであり、かつ破断伸度が500~900%であるポリウレタンからなる、溶液キャスト法、加熱溶融法、溶融押出成形法、または射出成形法により成型されたフィルムと、前記フィルムの表面に接して形成された回路配線と、を有するベンダブル配線基板。」
「 【請求項5】長鎖ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて合成可能なポリウレタンであって、動的粘弾性測定により貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が155℃以上であり、25℃における貯蔵弾性率が20~200MPaであり、引張強度が20~40MPaであり、かつ破断伸度が500~900%であるポリウレタンからなる、溶液キャスト法、加熱溶融法、溶融押出成形法、または射出成形法により成型されたフィルムと、前記フィルムの表面に接して形成された回路配線と、を有し、伸張させる前の前記回路配線の比抵抗(Ω・cm)ρ0と、前記回路配線を伸長変化させた時の比抵抗ρと、の比ρ/ρ0が1.05~10.0の範囲であることを特徴とする、伸縮できる配線基板。」
また、本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明6-8は、本願発明5を減縮した発明であり、本願発明9-11は、本願発明1または本願発明5を減縮した発明である。
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1及び引用発明
(1) 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。
「【0168】調製例3(1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン3(以下、1,4-BIC3とする。)の製造)攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、調製例1の1,4-BIC1を767.3質量部、調製例2の1,4-BIC2を255.8質量部装入し、窒素雰囲気下、室温にて1時間撹拌した。得られた1,4-BIC3のガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C-NMR測定によるトランス/シス比は80/20であった。【0169】続きを表示(全20行)実施例1窒素雰囲気下、錨形アンカー翼、温度計および水冷式コンデンサーを備え、撹拌トルクを継続的に測定できる反応機に、予め減圧脱水処理した、PTG2000SN(数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、保土ヶ谷化学製)1000質量部、および、そのPTG2000SN中の水酸基に対するイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)が0.67となるように、1,4-BIC3 65.1質量部を仕込み、撹拌速度200rpmにて、60℃まで昇温した。【0170】次いで、60℃で1時間反応させた後、ウレタン化触媒として、ネオスタンU-600(オクチル酸ビスマス、日東化成製)を0.058質量部添加した。【0171】同温度にてさらに2時間反応させた後、FT-IR測定により、2250cm^-1付近のイソシアネート基由来の吸収の消失を確認して、水酸基末端ウレタンプレポリマー(A-1)を得た。【0172】その後、60℃において、PTG2000SN中の水酸基に対して、1,4-BIC3とコスモネートPH(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、三井化学製)のイソシアネート基の総量の当量比が1.5となるように、コスモネートPHを103.8質量部装入した。同温度においてイソシアネート基濃度が1.8質量%になるまで反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A-2)を得た。【0173】次いで、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A-2)を50℃まで冷却した後、撹拌速度300rpmにて、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A-2)濃度が31.4質量%となるように、予め、モレキュラーシーブス4Aを浸漬して脱水したDMAc(N,N´-ジメチルアセトアミド、和光純薬製、有機合成グレード)2556質量部を徐々に添加して、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A-2)を溶解した。【0174】その後、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A-2)のDMAc溶液を15℃以下まで冷却した。30℃を越えないように、13.7質量部のEDA(エチレンジアミン、和光純薬製、特級グレード)と3.7質量部のDEA(ジエチルアミン、和光純薬製、特級グレード)との混合アミンの10質量%DMAc溶液を滴下して、鎖伸長反応させた。EDAとDEAのアミノ基のモル%は、それぞれ90モル%および10モル%であり、混合アミンのアミノ基に対するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A-2)イソシアネート基の当量比は0.99であった。【0175】混合アミン溶液を滴下後、50℃まで昇温し、同温度にて1時間反応させてポリウレタン弾性体の溶液(A-3)を得た。ポリウレタン弾性体の固形分濃度は30質量%であった。【0176】そして、ガラス板上に、乾燥後のフィルム厚みが100μmとなるようにポリウレタン弾性体(A-3)のDMAc溶液を塗布し、窒素雰囲気下、40℃で1時間、常圧でDMAcを留去させた。次いで、同温度で、3時間減圧することにより、ポリウレタン弾性体フィルム(A)を得た。」
「【0220】残留歪(%) = {(L2-L1)/L1}×100応力緩和(%)= {(M1-M2)/M1}×100<ポリウレタン弾性体フィルムの引張試験>続きを表示(全11行)23℃、相対湿度55%の実験室内に設置した引張試験機(インテスコ社製、モデル:205型)を用いて、引張試験を行なった。より具体的には、引張方向に60mm、幅10mmであるフィルム試験片を、チャック間距離30mm、引張速度300mm/minの条件で引張試験した。これにより、ポリウレタン弾性体フィルムの100%モジュラス(単位:MPa)、破断強度(単位:MPa)、破断伸度(単位:%)を測定した。<ポリウレタン弾性体フィルムの軟化温度(単位:℃)>動的粘弾性装置(レオメトリックス・ファーイースト社製、モデル:RSA-II)を用いて、100μm厚のポリウレタン弾性体フィルムを、引張モード、周波数10Hz、昇温速度3℃/minの条件にて動的粘弾性の温度依存性を測定し、その貯蔵弾性率が1×10^6Paとなる温度を軟化温度(単位:℃)と定義した。【0221】【表1】[図:0001404481000001.jpg]」
ここで、引用文献1に記載されている事項について検討する。
上記【0220】、【0221】及び【表1】の記載から、引用文献1には、
「動的粘弾性測定により貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が213℃以上であり、23℃における破断強度が45MPaであり、かつ破断伸度が900%であるポリウレタンフィルム」
が記載されていると認められる。
(2) 引用発明
したがって、引用文献1には、特に、実施例1に注目すると、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン3は、1,4-BIC3とするものであり、反応機に、PTG2000SN(数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール)、および、1,4-BIC3を仕込み、反応させてポリウレタンを得、ガラス板上に、乾燥後のフィルム厚みが100μmとなるようにポリウレタンのDMAc溶液を塗布し、窒素雰囲気下、40℃で1時間、常圧でDMAcを留去させ、次いで、同温度で、3時間減圧することにより、ポリウレタンフィルムを得たものであって、動的粘弾性測定により貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が213℃以上であり、23℃における破断強度が45MPaであり、かつ破断伸度が900%であるポリウレタンフィルム。」
2 引用文献2-6について
(1) 引用文献2
引用文献2には、以下の記載がある。
「【図1】[図:0001404481000002.jpg]【図2】[図:0001404481000003.jpg]」
「【0022】1.配線回路基板本発明の一実施形態である配線回路基板1は、図1図2に示すように、絶縁層2と、絶縁層2に埋め込まれている導体パターン3とを備える。【0023】1-1. 絶縁層絶縁層2は、図1に示すように、配線回路基板1の外形形状と同一の外形形状を有する。具体的には、絶縁層2は、先後方向に延びる平面視略矩形のフィルム(シート)形状を有している。絶縁層2は、図2に示すように、平坦な下面10と、下面10の上側に間隔を隔てて対向する上面11とを備える。また、絶縁層2は、導体パターン3に対応する複数の溝部4を備えている。複数の溝部4のそれぞれは、上方に向かって開放されている。【0024】絶縁層2は、例えば、後述する耐折回数を満足する絶縁材料から形成される。絶縁材料としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂(アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂の意味であり、以下同義)、ウレタン・(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(具体的には、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、イソブチレン系樹脂などが挙げられる。絶縁材料は、単独使用または2種以上組み合わせることもできる。」
「【0030】絶縁層2の20℃における引張貯蔵弾性率E’は、例えば、2,000MPa以下、好ましくは、1,000MPa以下、より好ましくは、100MPa以下、さらに好ましくは、50MPa以下、とりわけ好ましくは、20MPa以下であり、また、例えば、0.1MPa以上、好ましくは、0.5MPa以上である。」
(2) 引用文献3
引用文献3には、以下の記載がある。
「【0026】本発明は、炭素系導電性粒子、柔軟性樹脂、空隙、好ましくは無機粒子を含有する伸縮性導体シートであり、前記無機粒子がAl、Siの一方または両方の水酸化物及び/又は酸化物によって表面処理されており、当該シートが、直交する2つの方向においていずれも元の長さの40%伸張した際の伸長方向における伸張時の比抵抗の変化率が±10%未満である点に特色がある。また、本発明は、炭素系導電性粒子、柔軟性樹脂、及び好ましくは空隙、ないし好ましくは無機粒子を含有する伸縮性導体シートであり、前記無機粒子のアスペクト比が1.5未満であり、捻り試験の捻りサイクルを100回繰り返した後のシートの比抵抗が、初期比抵抗の3.0倍以内である点に特色がある。さらに本発明は、凝集銀粒子、柔軟性樹脂、及び好ましくは空隙、ないし好ましくは無機粒子を含有する伸縮性導体シートであり、凝集銀粒子の平均粒子径が0.8~10μmであり、無機粒子のアスペクト比が1.5未満であり、無機粒子の平均粒子径が凝集銀粒子の0.5倍以下であり、10%圧縮を100回繰り返した後の比抵抗が、初期比抵抗の2.4倍以内である点に特色がある。」
(3) 引用文献4
引用文献4には、以下の記載がある。
「【図7A】[図:0001404481000004.jpg]【図7B】[図:0001404481000005.jpg]【図7C】[図:0001404481000006.jpg]」
「【0041】伸縮性フレキシブル基板100の1つの例示的な構成について詳述する。図7Aは、湾曲した伸縮ストリップ10Bを含む配線層10と、繊維布から構成された基材50とを備える伸縮性フレキシブル基板100を模式的に示している。図7B及び7Cは、図7AのX-Xにおける断面を示す。図7Bは、伸縮性フレキシブル基板100が伸張していないときの断面図である。図7Cは、伸縮性フレキシブル基板100が伸張しているときの断面図である。」
「【0045】基材50は、例えば繊維布である。繊維布は、化学繊維及び/又は天然繊維からなる。【0046】化学繊維は、合成繊維、半合成繊維、再生繊維および/または無機繊維であってもよい。合成繊維としては、脂肪族ポリアミド系繊維(例えば、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維)、芳香族ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維(例えば、ビニロン繊維)、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエステル系繊維(例えば、ポリエステル繊維、PET繊維、PBT繊維、ポリアリレート繊維)、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリウレタン系繊維、フェノール系繊維およびポリフルオロエチレン系繊維などを挙げることができる。半合成繊維としては、セルロース系繊維および蛋白質系繊維などを挙げることができる。再生繊維としては、レーヨン繊維、キュプラ繊維およびリヨセル繊維などを挙げることができる。そして、無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維および金属繊維などを挙げることができる。」
「【0049】繊維布は、繊維織物、繊維編物および不織布のいずれであってもよい。つまり、繊維布が、いわゆるタテ糸とヨコ糸とを交差させるように織り込んだ織物であってもよく、あるいは、糸が屈曲するように編み込まれた網物であってもよい。あるいは、繊維布は、不織布(例えば、ニードルパンチ布またはスパンボンド布)であってもよい。」
(4) 引用文献5
引用文献5には、以下の記載がある。
「【0017】本発明の導電性回路布帛を構成する布帛は絶縁性繊維から形成される。絶縁性繊維としては、例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等)、ポリウレタン、ポリアクリル等の合成繊維などを挙げることができ、これらが2種以上組み合わされていてもよい。布帛の形態としては織物、編物、不織布であることができる。【0018】絶縁性布帛の表面に接着樹脂層が形成される。接着樹脂層を形成する接着性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合物、エポキシ系樹脂およびそれらの溶液、分散体などを用いることができる。なかでも柔軟性に優れるという理由でポリウレタン系樹脂が好ましい。【0019】接着性樹脂はホットメルトタイプの樹脂であることが好ましい。ホットメルトタイプの樹脂の例としては、ポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂、ポリエチレン酢酸ビニル系ホットメルト樹脂などが挙げられる。なかでもポリウレタン系ホットメルト樹脂が伸縮性に優れるという点で好ましい。ホットメルトタイプの樹脂が接着性を発揮する溶融温度は50~150℃であることが好ましい。【0020】本発明における導電層は、導電性粒子を含有する樹脂からなることが好ましい。導電性粒子は、金属及び又は金属塩粒子、カーボン粒子、カーボンナノチューブなどが挙げられる。好ましい導電性粒子は銅粒子、銀粒子、カーボン粒子である。導電層を形成する樹脂成分としては、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。」
(5) 引用文献6
引用文献6には、以下の記載がある。
「[0045] 本発明では、以上述べてきた伸縮性導体形成用ペーストを用いて電気配線パターンを直接布帛に印刷することにより伸縮性導体組成物からなる電気配線を有する衣服を製造することができる。印刷手法としては、スクリーン印刷法、平版オフセット印刷法、ペーストジェット法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、スタンピング法、ステンシル法、などを用いることができるが、本発明ではスクリーン印刷法、ステンシル法を用いることが好ましい。またディスペンサ等を用いて配線を直接描画する手法も広義の印刷と解釈して良い。」
「[0047] 印刷に用いる基材は伸縮性のある基材ないし屈曲性の高い素材となる。本発明における伸縮性導体形成用ペーストは、ゴム、ないしウレタンなどの柔軟シート上に、また衣服や繊維製品の原反となる、織物、編物、不織布、合成皮革などの布帛上に伸縮性電気配線を形成するための好適に用いられる。また、あらかじめ布帛上にポリウレタン樹脂、ゴムなどの柔軟性のある樹脂材料を下地として全体に、あるいは部分的に塗布した後に伸縮性導体形成用ペーストを印刷することもできる。また布帛を水溶性の樹脂などで仮に固めてハンドリングしやすくして印刷しても良い。またさらに硬質な板材に仮固定して印刷しても良い。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「PTG2000SN」は、「数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール」であるから、本願発明1の「長鎖ポリオール」に相当する。
イ 引用発明の「1,4-BIC3」は、「1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン3」であるから、本願発明1の「ポリイソシアネート」に相当する。
ウ 引用発明の「ポリウレタン」は、「反応機に、PTG2000SN(数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコール)、および、1,4-BIC3を仕込み、反応させて」「得」られるものであるから、「PTG2000SN」、および、「1,4-BIC3」を反応させて合成することにより得られると認められる。
したがって、上記ア、イを踏まえると、引用発明の「ポリウレタン」は、本願発明1の「長鎖ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて合成可能なポリウレタン」に相当する。
エ 引用発明の「破断強度」は、本願発明1の「引張強度」に相当する。
オ 引用発明の「ポリウレタンフィルム」は、「ガラス板上に、乾燥後のフィルム厚みが100μmとなるようにポリウレタンのDMAc溶液を塗布し、窒素雰囲気下、40℃で1時間、常圧でDMAcを留去させ、次いで、同温度で、3時間減圧することにより」、「得」られるものであるから、本願発明1の「ポリウレタンからなる」「フィルム」に相当する。
カ 引用発明の「動的粘弾性測定により貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が213℃以上であ」ることは、本願発明1の「動的粘弾性測定により貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が155℃以上であ」ることに相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「 長鎖ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて合成可能なポリウレタンであって、動的粘弾性測定により貯蔵弾性率が1MPaとなる温度が155℃以上である、ポリウレタンからなる、フィルム。」
(相違点1)
本願発明1の「フィルム」が、「25℃における貯蔵弾性率が20~200MPaであり、引張強度が20~80MPaであり、かつ破断伸度が500~900%であるポリウレタンからなる」のに対して、引用発明の「ポリウレタンフィルム」は、「23℃における破断強度が45MPaであり、かつ破断伸度が900%である」ものの、25℃における貯蔵弾性率、破断強度及び破断伸度が不明である点。
(相違点2)
本願発明1の「フィルム」が、「溶液キャスト法、加熱溶融法、溶融押出成形法、または射出成形法により成型された」ものであるのに対して、引用発明の「ポリウレタンフィルム」は、「ガラス板上に、乾燥後のフィルム厚みが100μmとなるようにポリウレタンのDMAc溶液を塗布し、窒素雰囲気下、40℃で1時間、常圧でDMAcを留去させ、次いで、同温度で、3時間減圧することにより」、「得たもの」であるものの、このような構成については特定されていない点。
(相違点3)
本願発明1が、「フィルムの表面に接して形成された回路配線と、を有するベンダブル配線基板」であるのに対して、引用発明は、「フィルム」であるものの、このような構成については特定されていない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、「フィルム」に関する点で互いに関連している上記相違点2-3についてまとめて先に検討する。
「溶液キャスト法、加熱溶融法、溶融押出成形法、または射出成形法により成型されたフィルム」「の表面に接して形成された回路配線と、を有するベンダブル配線基板」の構成は、引用文献1-6のいずれにも記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であったともいえない。
よって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明2-4について
本願発明2-4は、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3 本願発明5-8について
本願発明5-8は、本願発明1の構成に対応する構成を実質的に備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
4 本願発明9-11について
本願発明9-11は、本願発明1または本願発明5と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 原査定についての判断
令和4年12月12日提出の手続補正書による補正により、補正後の請求項1-11は、相違点2-3に係る本願発明1の構成を有するものとなった。
そして、当該構成は、原査定における引用文献1-6には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-11は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
よって、原査定を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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