特許拒絶査定不服審判
2022-019211
列車制御システム
- 審判番号
- 2022-019211
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-044754外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年11月29日
- 審決日
- 2023年08月17日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (B60L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-44754「列車制御システム」拒絶査定不服審判事件〔令和4年10月3日出願公開、特開2022-143947、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年3月18日の出願であって、令和3年11月29日付け(発送日:令和3年12月7日)で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の令和4年1月31日に意見書及び手続補正書が提出され、令和4年4月4日付け(発送日:令和4年4月12日)で最後の拒絶の理由が通知され、その指定期間内の令和4年6月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和4年6月9日の手続補正について令和4年8月24日付け(発送日:令和4年8月30日)で補正の却下の決定がなされるとともに同日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)(発送日:令和4年8月30日)がなされ、これに対し、令和4年11月29日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、大略以下のとおりである。
1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1
・引用文献等1-3、5
・請求項2
・引用文献等1-3、5
・請求項3
・引用文献等1-3、5
・請求項4
・引用文献等1-3、5
・請求項5
・引用文献等1-5
<引用文献等一覧>
1.特開平4-58702号公報
2.特開2019-4587号公報
3.特開2019-216512号公報
4.特開2014-8849号公報
5.特開2009-237399号公報
第3 本願発明
本願の請求項1ないし請求項5に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、令和4年11月29日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。
「 【請求項1】
信号機が停止現示のときに停止現示情報を発信する地上子を含み、前記停止現示情報を受信すると前記信号機手前の停止位置で停止するように列車を制御する、列車の自動運転が可能な列車制御システムであって、
前記信号機が停止現示のときに前記停止位置と前記信号機との間で即時停止情報を発信する直下地上子、冒進防護地上子及び予備直下地上子をこの順に含み、前記直下地上子又は冒進防護地上子からの即時停止情報の受信により列車を停止させた場合、列車の自動運転を不可とする、列車制御システム。
【請求項2】
列車走行路に設置された地上子から発信される地上子情報に基づいて列車を制御する、列車の自動運転が可能な列車制御システムであって、
前記列車を停止させる列車停止位置と前記列車の走行方向における前記列車停止位置の前方にある信号機との間には、前記信号機が停止現示のときに即時停止情報を発信する直下地上子、冒進防護地上子及び予備直下地上子がこの順に設置され、前記直下地上子又は冒進防護地上子からの即時停止情報の受信により列車を停止させた場合、列車の自動運転を不可とする、列車制御システム。
【請求項3】
走行開始直後は所定速度以下の低速で前記列車を走行させ、その後、所定の地上子の地上子情報を受信して前記所定の地上子の位置情報を取得すると速度照査パターンを発生させ、発生させた速度照査パターン上の速度を超えない範囲で前記列車を加速させ、惰行させ及び減速させる、請求項1又は2に記載の列車制御システム。
【請求項4】
列車走行路に設置され、所定の信号機が停止現示のときに前記所定の信号機の停止現示情報を発信する第1地上子と、
前記列車走行路を走行する列車に搭載され、列車の自動運転が可能であり、前記第1地上子から前記所定の信号機の停止現示情報を受信すると前記所定の信号機の手前の信号停止位置で停止するように前記列車を制御する車上装置と、
を含む列車制御システムであって、
前記列車走行路における前記信号停止位置と前記所定の信号機との間に設置され、前記所定の信号機が停止現示のときに即時停止情報を発信する第2地上子、第3地上子及び第4地上子をこの順に含み、
前記車上装置は、前記第2地上子、前記第3地上子又は前記第4地上子から即時停止情報を受信すると非常ブレーキを作動させて前記列車を停止させ、前記第2地上子又は第3地上子から即時停止情報を受信して前記列車を停止させた場合には列車の自動運転を不可とする、
列車制御システム。
【請求項5】
前記列車走行路における前記第1地上子よりも前記列車の走行方向手前に設置された第5地上子をさらに含み、
前記車上装置は、前記第5地上子の地上子情報を受信して前記第5地上子の位置情報を取得すると自動列車停止機能のための第1速度照査パターン及び前記列車の自動運転のための第2速度照査パターンを発生させ、前記第2速度照査パターンに追随するように前記列車を加速させ、惰行させ及び減速させる一方、前記列車の速度が前記第1速度照査パターン上の対応速度を超えた場合に前記列車を停止させるように構成され、
前記第1速度照査パターンは前記所定の信号機に対する信号機冒進防護パターンを含むと共に、前記第2速度照査パターンは前記列車を前記信号停止位置で停止させるための信号機停止パターンを含み、
前記車上装置は、前記第1地上子から前記所定の信号機の進行現示情報を受信すると前記信号機冒進防護パターン及び前記信号機停止パターンを消去し、前記第1地上子から前記所定の信号機の停止現示情報を受信すると前記信号機冒進防護パターン及び前記信号機停止パターンを維持すると共に前記列車を前記信号機停止パターンにしたがって減速させて前記列車を前記信号停止位置で停止させる、
請求項4に記載の列車制御システム。」
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平4-58702号公報)には、「自動列車停止装置」に関して、次の記載事項及び図示事項がある(下線部は当審が付した。以下同様。)。
ア 「 この発明はATS-SN型自動列車停止装置(以下ATS-SN装置とという)に関するものである。」(第2ページ左上欄第4~5行)
イ 「 従来公知のこの種の装置は、第7図に示すように、信号機Sigの手前に地上子1を設け、信号機Sigが停止現示の場合、130KHzの共振回路とし、この上を通過する列車TR1の車上子に影響を与え、車上子と受信器からなる車上装置の発振回路の発信周波数を105KHzから130KHzに変化させて、地上より車上へ前方の信号機Sigが停止現示であることを伝え、また警報ベルを鳴動させている。この警報ベルが鳴動し、信号機Sigが停止現示であることを乗務員が確認して、常用ブレーキ操作を行ない確認押ボタンを扱う機能を「確認扱い」と称し、この機能が付加されているため、地上子1は信号機Sigより非常ブレーキによる減速距離を考慮した位置だけでなく、さらに警報ベル鳴動後の確認扱いのために予め設定された設定時間(例えば5秒)に走行する距離を加えた距離として、信号機Sigから大きく離れた位置となっている。
そして、設定時間内に確認扱いが行なわれると、第7図点線に示すように列車TR1は非常ブレーキがかかることなく、正常状態で運転されて信号機Sigの手前の停止位置で停止される。一方、設定時間内に確認扱いが行なわれないと、第7図実線に示すように列車TR1は設定時間後に非常ブレーキが動作することにより、信号機Sigの手前の停止位置で停止される。」(第2ページ左上欄第7行~右上欄第14行)
ウ 「 前記の目的を達成するため、この発明は、第1,2図に示すように列車TR1の停止位置と信号機Sig間の位置に、信号機Sigが停止現示のとき、車上に向けて地上子1の共振周波数と異なる共振周波数の影響を与える第2地上子2を設置している。受信器6には地上子1の共振周波数の影響を受ける車上子5を介して動作し、確認扱い又は非常ブレーキを動作させて後の復帰扱いによって動作するリレーMPRの動作と同時に復旧するとともに、地上子2の共振周波数の影響を受けないリレーBPRが設けられている。また前記のように信号機Sigの手前で停止した列車TR1が停止現示の信号機Sig方向へ誤出発したとき、リレーBPRが復旧したままの状態で、地上子2からの共振周波数の影響を受ける車上子5を介してリレーMPRおよびリレーURが復旧し、警報ベルの動作と同時に非常ブレーキを動作させるようになっている。」(第3ページ右上欄第7行~左下欄第5行)
エ 「 前記構成により信号機Sigの手前の停止位置で停止した列車TR1が誤出発しても、該列車の地上子2の通過に伴い、該地上子2からの共振周波数の影響を受ける車上子を介してリレーMPRおよびリレーURが、リレーBPRが復旧したままの状態で復旧し、警報ベルと非常ブレーキを同時に動作させるので、誤出発した列車TR1はすぐに停止される。」(第3ページ左下欄第10行~左下欄第17行)
オ 「 請求項1の発明は前記のような構成からなるので、ATS-SN装置において信号機の手前の停止位置で一旦停止した列車が信号機方向へ誤出発しても、列車が第2地上子を通過するに伴い、第2地上子2からの共振周波数の影響を受ける車上子を介してリレーMPRおよびリレーURが、リレーPBRが復旧したままの状態で復旧し、警報ベルと非常ブレーキを同時に動作されることとなり、誤出発した列車が停止現示の信号機の内方へ大きく侵入するのを確実に防止することができ、極めて安全な保安システムを提供することが可能となる。」(第4ページ右下欄第18行~第5ページ左上欄第9行)
カ 第1図
「
[図:0001401461000001.jpg]
」
(2)引用発明
上記(1)の記載事項及び図示事項を総合して整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
〔引用発明〕
「 信号機Sigが停止現示の場合、列車TR1の車上装置の車上子に影響を与え前方の信号機Sigが停止現示であることを伝える第1地上子1を信号機Sigの手前に設け、列車TR1は設定時間後に非常ブレーキが動作することにより、信号機Sigの手前の停止位置で停止される、ATS-SN型自動列車停止装置であって、
列車TR1の停止位置と信号機Sig間の位置に、信号機Sigが停止現示のとき、車上に向けて共振周波数の影響を与える第2地上子2を設置し、列車の第2地上子2の通過に伴い、第2地上子2からの共振周波数の影響を受ける車上子を介して、非常ブレーキを動作させ、列車TR1はすぐに停止される、ATS-SN型自動列車停止装置。」
2 引用文献2
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2019-4587号公報)には、「自動列車運転システム」に関して、次の記載事項及び図示事項がある。
ア 「【0050】
[第3実施形態]
図8は、本発明の第3実施形態に係る自動列車運転システムにおける列車側設備の概略構成を示す図であり、図9は、第3実施形態に係る自動列車運転システムにおける地上側設備の概略構成を示す図である。なお、上述の第1、第2実施形態に係る自動列車運転システムと同一又は共通する要素については同一の符号を用いてその説明は省略する。
【0051】
第2実施形態と第3実施形態との相違は、第3実施形態に係る自動列車運転システムにおいては、列車側設備としての車上装置がATC車上アンテナ11に代えてATS車上子を含むこと、及び、地上側設備がATCループ21及びATC地上装置24に代えてATS地上子、信号機及び地上無線機を含むことである。
【0052】
すなわち、第3実施形態において、列車Tには、車上装置60及び前方監視装置30が搭載され、車上装置60は、ATO車上子12、速度発電機13、走行制御部14、ブレーキ装置15、駆動装置16、車上無線機51及びATS車上子61を含む。また、第3実施形態において、地上側設備は、少なくとも一つの位置補正用地上子22、少なくとも一つの駅ATO地上子23、ATO地上装置25、障害物検知装置26、ATS地上子27、信号機28及び地上無線機29を含む。
【0053】
ATS地上子27は、列車Tの走行方向における信号機28の所定距離だけ手前に設置されている。ATS地上子27は、信号機28が停止現示(R現示)にときに、停止現示情報、信号機28までの距離情報及び自身の識別情報を列車TのATS車上子61に送信するように構成されている。
【0054】
地上無線機29は、信号機28の近傍に設置されている。地上無線機29は、信号機28が停止現示(R現示)から進行現示(G現示)に切り替わると、ATS地上子27の識別情報を含む出発許可情報を車上無線機51に送信するように構成されている。
【0055】
第3実施形態において、走行制御部14は、上述の第2実施形態における前記第1のATC信号電流(制限速度情報)及び前記第2のATC信号電流(出発許可情報)に基づく処理に代えて、以下の処理を実行する。なお、それ以外の処理については、第2実施形態と同様である。
【0056】
走行制御部14は、列車Tが駅間を走行しているときに、ATS車上子61を介して、ATS地上子27から送信された前記停止現示情報、信号機28までの距離情報及びATS地上子27の識別情報を入力すると、ブレーキ装置15を作動させて列車Tを信号機28の手前の所定位置に停車させる。
【0057】
また、走行制御部14は、列車Tが信号機28の手前の前記所定位置に停車しているとき、前方監視装置30から前記障害物検知信号を入力していない状態で、車上無線機51を介して、地上無線機29から送信されたATS地上子27の識別情報を含む前記出発許可情報を入力すると、列車Tを停車させる他の理由がないことを条件に列車Tを出発させる。
【0058】
ここで、地上無線機29の送信する前記出発許可情報がATS地上子27の識別情報を含むのは、当該出発許可情報が信号機28の停止現示(R現示)によって停車した列車を対象とする情報、すなわち、信号機28の停止現示(R現示)によって停車した列車に対してのみ有効な情報だからである。これにより、かりに地上無線機29の送信する前記出発許可情報を列車T以外の列車が受信した場合であっても当該列車が出発してしまうことが防止される。
【0059】
第3実施形態に係る自動列車運転システムにおいても上述の第2実施形態に係る自動列車運転システムと同様の効果が得られる。
【0060】
なお、第3実施形態において、車上無線機51は、障害物検知装置26の無線機263から送信された前記出発許可情報及び地上無線機29から送信された前記出発許可情報を受信するように構成されている。しかし、これに限るものではなく、車上装置60は、車上無線機51とは別に、地上無線機29から送信された前記出発許可情報を受信する専用の車上無線機を有してもよい。
【0061】
また、車上装置60が車上無線機51に代えてカメラ等の撮像装置を含んでもよい。この場合、前記撮像装置は、列車Tの前方に搭載され、走行制御部14は、前記撮像装置の撮像画像に基づいて信号機28の現示を認識するように構成される。そして、走行制御部14は、列車Tが信号機28の手前の前記所定位置に停車しているとき、前方監視装置30から前記障害物検知信号を入力していない状態で、信号機28が停止現示(R現示)から進行現示(G現示)に切り替わったことを認識すると、列車Tを停車させる他の理由がないことを条件に列車Tを出発させる。なお、前方監視装置30が前記撮像装置としての機能を有してもよい。」
イ 図8
「
[図:0001401461000002.jpg]
」
ウ 図9
「
[図:0001401461000003.jpg]
」
(2)引用文献2記載事項
上記(1)の記載事項及び図示事項を総合すると、引用文献2には、以下の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
〔引用文献2記載事項〕
「 自動列車運転システムにおいて、列車Tに搭載された車上装置60は、ATO車上子12、走行制御部14、ブレーキ装置15、駆動装置16、車上無線機51及びATS車上子61を含み、地上側設備は、少なくとも一つの駅ATO地上子23、ATO地上装置25、ATS地上子27、信号機28及び地上無線機29を含み、ATS地上子27は、列車Tの走行方向における信号機28の所定距離だけ手前に設置され、ATS地上子27は、信号機28が停止現示(R現示)にときに、停止現示情報、信号機28までの距離情報及び自身の識別情報を列車TのATS車上子61に送信し、走行制御部14は、列車Tが駅間を走行しているときに、ATS車上子61を介して、ATS地上子27から送信された前記停止現示情報、信号機28までの距離情報及びATS地上子27の識別情報を入力すると、ブレーキ装置15を作動させて列車Tを信号機28の手前の所定位置に停車させること。」
3 引用文献3
(1)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2019-216512号公報)には、「鉄道車両の定位置停止制御システムおよび車上装置」に関して、次の記載事項及び図示事項がある。
ア 「【0017】
図1に示すように、本実施形態における車上装置20は、走行速度および走行距離を算出するために車輪の回転数を検出する速度発電機21、ブレーキディスクやブレーキパッドおよび駆動手段などを有するブレーキ装置22、ATC(ATS)トランスポンダ13(図2参照)からの情報(ATC/ATS情報)を受信するATC(ATS)受信装置23、ATCトランスポンダ車上子28、受信したATC(ATS)情報に基づいてATCパターンを生成しATCパターンに従ってブレーキ装置22を制御するATC(ATS)制御装置24、ATOトランスポンダ12(図2参照)からの情報(ATO情報)を受信するATOトランスポンダ車上子25、車輪を回転駆動するモータなどからなる走行駆動装置26、走行速度を見ながら走行駆動装置26およびブレーキ装置22を制御するノッチ指令を出力して自動運転を行う自動運転制御装置27を備える。なお、ATCトランスポンダ車上子28がATOトランスポンダ車上子25を兼用する構成でもよい。」
イ 「【0020】
次に、本実施形態の定位置停止制御システムにおける定位置停止制御の特徴について、図2を用いて説明する。図2は、図1に示すような構成を有する車上装置20が走行する軌道側に設けられる鉄道軌道の設備(地上側設備)の構成例を示す。
図2において、符号10が付されているのは列車などの鉄道車両が走行する軌道であり、軌道10に沿って所定の間隔をおいて設けられている鉤形(逆L字)の記号は、軌道回路の境界部を表わしている。また、黒塗りの逆三角形「▼」の記号は、軌道10に沿って設けられているトランスポンダと呼ばれるATC制御のためのデータ送信機能を有する地上子(以下、ATCトランスポンダと称する)であり、本実施形態においては、列車が自己の位置を補正するための情報を受信して位置補正に使用する位置補正用地上子として機能する。
【0021】
図2において、白塗りの逆三角形「▽」の記号は軌道10に沿って設けられているATO(自動列車運転)制御のためのデータ送信機能を有する地上子(以下、ATOトランスポンダと称する)であり、本実施形態においては、列車11が駅等の停止位置に向かって速度を落としながら定位置で停止するのを支援するための情報を送信する定位置停止用地上子として機能する。
また、図2において、符号TP0が付されているのは駅等において列車が停止すべき位置(目標停止位置)、符号SPが付されているのはATC制御で列車を停止させる位置(保安上の停止位置)である。この停止位置SPは、当該停止位置の進行方向前方の軌道回路境界部に設定されている停止限界SLよりも、保安装置の余裕距離Dだけ手前に設定される。この余裕距離Dは、列車の駅進入速度および列車の滑走(車輪の回転が停止したまま走行する状態)、速度発電機等からの累積誤差を考慮して決定される。本明細書では、保安装置の余裕距離を安全余裕距離と称する。
【0022】
ATC制御では、列車の車上装置は所定の地上子を通過すると上記停止位置SPを終点とするATCパターンと呼ばれる速度照査パターンP0を生成して、自列車の速度と該パターンP0とを比較しながらブレーキ装置を作動させて車両速度を落とし、最終的に停止位置SPで停止する制御が実行される。なお、列車が停止位置SPで停止できずに停止限界SLを越えてしまうと、列車が当駅を通過したものと地上側システムが判断し後続の列車の信号現示が青(進行)になるため、当該列車は後退せずに次の停車駅まで進む制御が実行される。
【0023】
本実施形態においては、ATC制御の停止位置SPよりも手前に、自動運転による目標停止位置TP0が設定されている。具体的には、この目標停止位置TP0は、例えば先頭車両の進行方向側の車両ドアの中心線がホームドアの中心線に一致する位置として設定される。
さらに、本実施形態においては、目標停止位置TP0よりもそれぞれ所定距離L1,L2だけ手前(以下、上流側と称する)に目標停止位置TP1,TP2が設けられている。L1,L2は、任意の速度で定位置停止制御区間(駅構内)へ進入して来る場合、速度に応じて個別に設定することが考えられる。
【0024】
そして、上記目標停止位置TP0,TP1,TP2に対応してそれぞれ上流側の所定位置に、前記ATOトランスポンダ12a,12b,12cが設けられており、ATOトランスポンダ12a,12b,12cは目標停止位置TP0までの残距離を通過する列車に認知させるための情報を送信する機能を有するように構成されている。目標停止位置TP0までの残距離を、通過する列車に認知させるための情報は、距離情報そのものでも良いし、車上装置の記憶装置に残距離情報を記載したテーブルを格納しておいて、駅コードおよびトランスポンダの識別コードを送信し、車上装置が受信したコードを用いてテーブルを参照して残距離情報を読み出す構成であっても良い。
【0025】
本実施形態においては、車両側の列車自動運転制御装置20は、前の停車駅を出発する際に進行方向最初の目標停止位置TP2を終点とする走行パターンP1を生成して走行を開始して、軌道の途中にあるATCトランスポンダ13を通過する際に受信した情報に基づいて自己の在線位置情報の修正を行う。これにより、例えば図2に示されているATCトランスポンダ13a,13bからの情報で自己の在線位置情報を修正すると、位置認識誤差で目標停止位置TP2に対してずれを起こしていた走行パターンP1の終点をTP2に合致する位置に収束させることができる。
【0026】
そして、列車が最も外側のATOトランスポンダ12cよりも上流側の軌道回路の境界部14cを通過する際(t1)に、走行パターンP1から目標停止位置TP1を終点とする走行パターンP2へ切り替え、ATOトランスポンダ12cを通過する際(t2)に走行パターンP2から目標停止位置TP0を終点とする走行パターンP3へ切り替える。さらに、ATOトランスポンダ12b,12aを通過する際(t3,t4)に、トランスポンダからの情報に基づいて走行速度を走行パターンP3に合わせるための速度調整を実行する。
【0027】
上記のような走行パターンP1-P2-P3に従った速度制御を実行することによって、例えば最終目標停止点TP0に対して±数10cmのような高精度の定位置停止が可能となる。なお、走行パターンP1からP2への切り替えタイミングを与える上記軌道回路の境界部14cは、一般的な駅では、駅進入部に設けられ所望の番線に列車を誘導するためのポイント(分岐器)の設置箇所とされる。
【0028】
また、上記実施形態では、新たにATOトランスポンダ12a,12b,12cを設置する場合を想定して説明したが、本発明は、既に定位置停止のためのトランスポンダ(例えばTASCトランスポンダ)が設置されている場合には、既設のトランスポンダをそのまま利用して定位置停止制御を実施することができる。
なお、上記実施形態におけるATOトランスポンダ12やATC(ATS)トランスポンダ13は、電源を有するものでも良いし、電源を持たずに車上子から電力の供給を受けて情報を送信する地上子(電子タグを含む)あるいは光学的に情報を読み取ることが可能に構成されたタグ(バーコード等)であってもよい。
【0029】
次に、本実施形態の定位置停止制御システムにおける定位置停止制御の具体的な手順について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。なお、図3に示すフローチャートに従った制御は、例えば停止駅よりも所定距離手前に設置されているATCトランスポンダ(図2では13a)からの情報を受信したことを条件(トリガ)として、車上装置20の自動運転制御装置27によって実行される。
また、図3には示されていないが、自動運転制御装置27は、速度発電機21からの回転数信号を読み込んで回転数と車輪径とから自列車の速度および走行距離を演算し、出発点の在線位置情報に走行距離を加算することで常時自列車の位置(キロ程)を把握しつつ、ATCトランスポンダ13から受信した情報に基づいて位置を補正するとともに、ATC(ATS)制御装置24により生成された速度照査パターン(ATCパターン)等を監視する処理を実行しており、走行速度がATCパターンで規制される速度に達するとブレーキ装置22を作動させて減速を行う。
【0030】
図3の制御処理が開始されると、自動運転制御装置27は、先ず自列車の在線位置情報を取得する(ステップS1)。なお、ATCトランスポンダからの情報を受信したことをトリガにして図3の処理を開始する場合、情報を受信した際に自列車の位置(もしくは停止位置までの残距離)の補正処理を行う。また、ATC(ATS)制御装置24もATC制御のために自列車の位置を計算しているので、ATC(ATS)制御装置24から自列車の補正後の在線位置情報を取得してもよい。このように、トランスポンダの情報に基づいて位置補正を行うことにより、誤差を低減して精度の高い定位置停止が可能となる。
【0031】
続いて、自動運転制御装置27は、ステップS1で取得した自列車の在線位置情報に基づいて、自ら保有する次停車駅の目標停止位置(図2のTP0)を記憶装置から読み出して、その目標停止位置(TP0)から、滑走等を考慮して予め設定されている駅中間の安全余裕距離を考慮して決定されている所定距離(図2のL2)を差し引いた地点(図2のTP2)を暫定停車目標点として算出し、当該目標点を終点とするATO走行パターン(図2のP1)を作成する(ステップS2)。
【0032】
次に、作成した上記ATO走行パターン(P1)に従って走行している途中でATCトランスポンダ(13)らの情報を受信すると、自動運転制御装置27は、ATCトランスポンダの情報に応じて自列車の位置(もしくは停止位置までの残距離)を補正する(ステップS3)。
その後、例えば駅進入部に設けられているポイント(分岐器)の設置箇所(図2の14c)のような定位置停止制御区間の入口で、駅構内の安全余裕距離を考慮して決定された所定距離(図2のL1)を差し引いた地点(図2のTP1)を第2の暫定目標停止点に変更して、当該目標停止点を終点とするATO走行パターン(図2のP2)を作成(更新)する(ステップS4)。
【0033】
次に、定位置停止制御区間に最初に設置されているATOトランスポンダ(図2の12c)からの情報を受信すると、自動運転制御装置27は、自列車の位置(もしくは停止位置までの残距離)を補正して、最終停止位置(図2のTP0)を目標停止点に変更して、当該目標停止点を終点とするATO走行パターン(図2のP3)を作成(更新)する(ステップS5)。
その後、ATOトランスポンダ(図2の12b,12a)からの情報を受信すると、受信の度に実列車の位置を補正し、補正した在線位置情報に基づいてステップS5で更新したATO走行パターンに従って速度が変化するようにブレーキ装置22を制御し減速する(ステップS6)。上記のような制御を実行することで、例えば±35cmのような精度で目標停止位置に停止させることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、図3に示す定位置停止制御処理においては、駅中間と駅構内の安全余裕距離が異なる場合(高速鉄道)について説明したが、駅中間と駅構内の安全余裕距離が同一である場合には、ステップS4で、最終停止位置を目標停止点とするATO走行パターンに更新して、ステップS5を省略しても良い。
また、上記実施形態では、最初のATOトランスポンダ12cが駅進入口の分岐器のある軌道回路の境界部14cよりも駅ホームに近い箇所に設置されているが、最初のATOトランスポンダ12cは分岐器のある軌道回路の境界部14cよりも駅ホームから遠い位置に設置されていても良い。」
ウ 図1
「
[図:0001401461000004.jpg]
」
エ 図2
「
[図:0001401461000005.jpg]
」
オ 図3
「
[図:0001401461000006.jpg]
」
(2)引用文献3記載事項
上記(1)の記載事項及び図示事項を総合すると、引用文献3には、以下の事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。
〔引用文献3記載事項〕
「 車上装置20は、ブレーキ装置22、ATC(ATS)受信装置23、ATC(ATS)制御装置24、ATOトランスポンダ車上子25、走行駆動装置26及び自動運転制御装置27を備え、ATC制御の停止位置SPよりも手前に、自動運転による目標停止位置TP0が設定され、自動運転制御装置27は、走行速度がATCパターンで規制される速度に達するとブレーキ装置22を作動させて減速を行い、定位置停止制御区間に最初に設置されているATOトランスポンダからの情報を受信すると、自動運転制御装置27は、自列車の位置(もしくは停止位置までの残距離)を補正して、最終停止位置を目標停止点に変更して、当該目標停止点を終点とするATO走行パターンを作成(更新)し、その後、ATOトランスポンダからの情報を受信すると、受信の度に実列車の位置を補正し、補正した在線位置情報に基づいて更新したATO走行パターンに従って速度が変化するようにブレーキ装置22を制御し減速し、目標停止位置に停止させること。」
4 引用文献4
(1)引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2014-8849号公報)には、「踏切情報無線伝送装置」に関して、次の記載事項及び図示事項がある。
ア 「【0039】
車上装置13は(図4参照)、これも駅制御装置12と同じく無線通信利用の速度照査機能が開発された以後のものであるが、やはり無線通信で信号防護パターン利用の速度照査機能を実現した公知の車上装置なので(非特許文献2参照)、これについても概要と本願発明の実施に関係する部分とを述べるにとどめるが、要するに、それぞれ何れかの列車8a,8b,8cに搭載されて列車位置を検知し、その位置情報を予めデータ保持している列車運転方向や列車識別番号等の列車IDと共に無線で駅制御装置12へ送信するようになっている。また、車上装置13は、それぞれ、検知した列車位置と予め保持している線路データのうちの信号機位置とに基づいて予定進路における直近の停止現示の信号機の位置に係る信号防護パターンを発生するとともに、駅制御装置12から無線で受信して得た信号機位置基準の列車進入可能区間情報に基づいて、直近の停止現示の信号機の現示状態が進行現示に変化したことが判明したときには、該当する信号防護パターンを消去するようになっている。」
イ 「【0072】
それから(図16(a)参照)、連動装置11で先行の下り列車8aの出発進路が構成されると、その条件で踏切4の警報が開始される。現示時素の秒数経過後に下りの出発信号機5Rが進行現示になると、駅制御装置12から列車8aの車上装置13へ無線送信される列車進入可能区間が下りの出発信号機5Rより先も進行可になるので(図16(c)参照)、遮断完了の条件が既に整っている踏切情報無線伝送装置15では(図16(d)参照)、下りの出発信号機5Rの現示が停止現示から進行現示に変化したことにより、先行の下り列車8aについて、踏切の遮断完了と踏切より手前の列車位置と出発信号機の進行現示という三条件(図3(c)参照)が満たされることとなって(図16(d)参照)、踏切防護パターン消去指示が送信され、列車8aは踏切4を通過することができる。」
(2)引用文献4記載事項
上記(1)の記載事項及び図示事項を総合すると、引用文献4には、以下の事項(以下、「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。
〔引用文献4記載事項〕
「 車上装置13は、予定進路における直近の停止現示の信号機の位置に係る信号防護パターンを発生するとともに、直近の停止現示の信号機の現示状態が進行現示に変化したことが判明したときには、該当する信号防護パターンを消去すること。」
5 引用文献5
(1)引用文献5の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2009-237399号公報)には、「鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練方法及びその装置」に関して、次の記載事項及び図示事項がある。
ア 「【0026】
ATS(Automatic Train Stop)とは、列車が停止信号機に接近した際、地上からの制御信号により車上の運転室内に警報ベルを鳴らして運転士に注意を喚起したり、自動的にブレーキを動作させて列車を停止信号の手前で停止させる装置であり、通常の列車運転は運転士にまかせ、緊急時に運転士のブレーキ操作をバックアップするものである。」
イ 「【0029】
ATS動作は、制限速度内で運転していれば動作することはなくoffのままであるが、図3のようにATS照査速度が25km/hの地点で運転速度が25km/hを超えると、非常制動がかかる。この非常制動を解除するには、非常運転モードに手動で変更せざるを得ない。非常運転モードにすることで、ATS照査速度は一旦freeになり、しばらくして(例えば、信号機2つ分過ぎたところで操作して)通常運転モードに戻すことになる。」
(2)引用文献5記載事項
上記(1)の記載事項及び図示事項を総合すると、引用文献5には、以下の事項(以下、「引用文献5記載事項」という。)が記載されている。
〔引用文献5記載事項〕
「 ATS(Automatic Train Stop)とは、列車が停止信号機に接近した際、自動的にブレーキを動作させて列車を停止信号の手前で停止させる装置であり、ATS動作は、運転速度がATS照査速度を超えると、非常制動がかかり、この非常制動を解除するには、手動で非常運転モードに変更することで、ATS照査速度は一旦freeになること。」
第5 対比及び判断
1 本願発明1
(1)本願発明1と引用発明との対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「信号機Sig」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明1の「信号機」に相当し、以下同様に、「停止現示」は「停止現示」に、「信号機Sigが停止現示の場合、列車TR1の車上装置の車上子に影響を与え前方の信号機Sigが停止現示であることを伝える第1地上子1」は「信号機が停止現示のときに停止現示情報を発信する地上子」に、「信号機Sigの手前の停止位置」は「信号機手前の停止位置」に、「停止」は「停止」に、「列車TR1」は「列車」に、「列車TR1の停止位置と信号機Sig間」は「前記停止位置と前記信号機との間」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「信号機Sigが停止現示の場合、列車TR1の車上装置の車上子に影響を与え前方の信号機Sigが停止現示であることを伝える第1地上子1を信号機Sigの手前に設け、列車TR1は設定時間後に非常ブレーキが動作することにより、信号機Sigの手前の停止位置で停止される、ATS-SN型自動列車停止装置」と、本願発明1の「信号機が停止現示のときに停止現示情報を発信する地上子を含み、前記停止現示情報を受信すると前記信号機手前の停止位置で停止するように列車を制御する、列車の自動運転が可能な列車制御システム」とは、「信号機が停止現示のときに停止現示情報を発信する地上子を含み、前記停止現示情報を受信すると前記信号機手前の停止位置で停止するように列車を制御する、列車制御システム」の限りで一致する。
さらに、引用発明の「信号機Sigが停止現示のとき、車上に向けて共振周波数の影響を与える第2地上子2」は、列車の第2地上子2の通過に伴い、第2地上子2からの共振周波数の影響を受ける車上子を介して、非常ブレーキを動作させ、列車TR1はすぐに停止されるものであるから、本願発明1の「前記信号機が停止現示のときに前記停止位置と前記信号機との間で即時停止情報を発信する」事項を備えていることは自明であるから、引用発明の「列車TR1の停止位置と信号機Sig間の位置に、信号機Sigが停止現示のとき、車上に向けて共振周波数の影響を与える第2地上子2を設置し」という態様と、本願発明1の「前記信号機が停止現示のときに前記停止位置と前記信号機との間で即時停止情報を発信する直下地上子、冒進防護地上子及び予備直下地上子をこの順に含み」という態様とは、「前記信号機が停止現示のときに前記停止位置と前記信号機との間で即時停止情報を発信する第2の地上子を含み」という限りで一致する。
そうすると、引用発明の「列車TR1の停止位置と信号機Sig間の位置に、信号機Sigが停止現示のとき、車上に向けて共振周波数の影響を与える第2地上子2を設置し、列車の第2地上子2の通過に伴い、第2地上子2からの共振周波数の影響を受ける車上子を介して、非常ブレーキを動作させ、列車TR1はすぐに停止される、ATS-SN型自動列車停止装置」と、本願発明1の「前記信号機が停止現示のときに前記停止位置と前記信号機との間で即時停止情報を発信する直下地上子、冒進防護地上子及び予備直下地上子をこの順に含み、前記直下地上子又は冒進防護地上子からの即時停止情報の受信により列車を停止させた場合、列車の自動運転を不可とする、列車制御システム」とは、「前記信号機が停止現示のときに前記停止位置と前記信号機との間で即時停止情報を発信する第2の地上子を含み、前記第2の地上子からの即時停止情報の受信により列車を停止させる、列車制御システム」の限りで一致する。
したがって、両者は以下の一致点及び相違点を有する。
〔一致点〕
「 信号機が停止現示のときに停止現示情報を発信する地上子を含み、前記停止現示情報を受信すると前記信号機手前の停止位置で停止するように列車を制御する、列車制御システムであって、
前記信号機が停止現示のときに前記停止位置と前記信号機との間で即時停止情報を発信する第2の地上子を含み、前記第2の地上子からの即時停止情報の受信により列車を停止させる、列車制御システム。」
〔相違点1〕
本願発明1は「列車の自動運転が可能」であるのに対し、引用発明は「列車の自動運転が可能」であるのかどうか不明な点。
〔相違点2〕
本願発明1は「前記信号機が停止現示のときに前記停止位置と前記信号機との間で即時停止情報を発信する直下地上子、冒進防護地上子及び予備直下地上子をこの順に含み、前記直下地上子又は冒進防護地上子からの即時停止情報の受信により列車を停止させた場合、列車の自動運転を不可とする」のに対し、引用発明は「列車TR1の停止位置と信号機Sig間の位置に、信号機Sigが停止現示のとき、車上に向けて共振周波数の影響を与える第2地上子2を設置し、列車の第2地上子2の通過に伴い、第2地上子2からの共振周波数の影響を受ける車上子を介して、非常ブレーキを動作させ、列車TR1はすぐに停止される」点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
引用文献5記載事項は「ATS(Automatic Train Stop)とは、列車が停止信号機に接近した際、自動的にブレーキを動作させて列車を停止信号の手前で停止させる装置であり、ATS動作は、運転速度がATS照査速度を超えると、非常制動がかかり、この非常制動を解除するには、手動で非常運転モードに変更することで、ATS照査速度は一旦freeになること。」であって、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項のうち「前記停止位置と前記信号機との間で」「直下地上子、冒進防護地上子及び予備直下地上子をこの順に含み、前記直下地上子又は冒進防護地上子からの即時停止情報の受信により列車を停止させた場合、列車の自動運転を不可とする」事項(以下、「本願発明1の発明特定事項1」という。)を開示するものではない。同様に、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項及び引用文献4記載事項のいずれも本願発明1の発明特定事項1を開示するものではない。
したがって、引用発明に対し、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、引用文献5記載事項を適用できたとしても、当該適用によりなし得た発明が本願発明1の発明特定事項1を備えるものでないことは明らかである。
また、引用発明から、当業者の通常の創作能力の範囲で本願発明1の発明特定事項1を容易に想到し得たとする格別な証拠はない。
さらに、フェールセーフ装置に冗長性を持たせるために複数個設けることが例示するまでもなく慣用技術であるとしても、引用発明に当該慣用技術を適用したことによりなし得た発明は、停止位置と信号機Sigとの間に第2地上子2と同じ地上子を複数個設置する事項を備えるのにとどまる。ここに、引用文献5記載事項を採用したとしても、本願発明1の発明特定事項1を備えるものとはならない。
そうすると、引用発明において、本願発明1の発明特定事項1を容易に想到し得たとする事情がないのであるから、引用発明において、本願発明1の発明特定事項1を含む相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想到し得たとすることはできない。
そして、審判請求人が審判請求書において主張するように、本願発明1は、(直下地上子、冒進防護地上子及び予備直下地上子のうち)直下地上子又は冒進防護地上子からの即時停止情報の受信により列車を停止させた場合、列車が誤出発又は誤発進した可能性が高く(本願明細書の段落【0078】、【0086】も参照。)、列車の自動運転を不可とする事項により、例えば「安全性を確保しつつ、列車の自動運転が不可となる状態が過剰に発生することを抑制する」などの、引用発明並びに引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、引用文献5記載事項及び慣用技術にはない格別顕著な効果も奏する。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、引用文献5記載事項及び慣用技術に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明2
(1)本願発明2と引用発明との対比
本願発明2と引用発明とを対比すると、引用発明の「列車TR1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明2の「列車」に相当し、以下同様に、「停止」は「停止」に、「信号機Sig」は「信号機」に、「停止現示」は「停止現示」に、「信号機Sigの手前の停止位置」は「列車を停止させる列車停止位置」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「信号機Sigが停止現示の場合、列車TR1の車上装置の車上子に影響を与え前方の信号機Sigが停止現示であることを伝える第1地上子1」は、列車は第1地上子1の上を通過することから、第1地上子1は列車走行路に設置されたといえるから、本願発明2の「列車走行路に設置された地上子」に相当する。
そうすると、引用発明の「信号機Sigが停止現示の場合、列車TR1の車上装置の車上子に影響を与え前方の信号機Sigが停止現示であることを伝える第1地上子1を信号機Sigの手前に設け、列車TR1は設定時間後に非常ブレーキが動作することにより、信号機Sigの手前の停止位置で停止される、ATS-SN型自動列車停止装置」と、本願発明2の「列車走行路に設置された地上子から発信される地上子情報に基づいて列車を制御する、列車の自動運転が可能な列車制御システム」とは、「列車走行路に設置された地上子から発信される地上子情報に基づいて列車を制御する、列車制御システム」の限りで一致する。
さらに、引用発明の「列車TR1の停止位置と信号機Sig間」は、停止位置は信号機Sigの手前にあることから、信号機Sigは列車TR1の走行方向における停止位置の前方にあるといえるから、本願発明2の「前記列車を停止させる列車停止位置と前記列車の走行方向における前記列車停止位置の前方にある信号機との間」に相当する。
そして、引用発明の「信号機Sigが停止現示のとき、車上に向けて共振周波数の影響を与える第2地上子2」は、列車の第2地上子2の通過に伴い、第2地上子2からの共振周波数の影響を受ける車上子を介して、非常ブレーキを動作させ、列車TR1はすぐに停止されるものであるから、本願発明2の「前記信号機が停止現示のときに即時停止情報を発信する」事項を備えていることは自明であるから、引用発明の「列車TR1の停止位置と信号機Sig間の位置に、信号機Sigが停止現示のとき、車上に向けて共振周波数の影響を与える第2地上子2を設置し」という態様と、本願発明2の「前記列車を停止させる列車停止位置と前記列車の走行方向における前記列車停止位置の前方にある信号機との間には、前記信号機が停止現示のときに即時停止情報を発信する直下地上子、冒進防護地上子及び予備直下地上子がこの順に設置され」という態様とは、「前記列車を停止させる列車停止位置と前記列車の走行方向における前記列車停止位置の前方にある信号機との間には、前記信号機が停止現示のときに即時停止情報を発信する第2の地上子が設置され」という限りで一致する。
そうすると、引用発明の「列車TR1の停止位置と信号機Sig間の位置に、信号機Sigが停止現示のとき、車上に向けて共振周波数の影響を与える第2地上子2を設置し、列車の第2地上子2の通過に伴い、第2地上子2からの共振周波数の影響を受ける車上子を介して、非常ブレーキを動作させ、列車TR1はすぐに停止される、ATS-SN型自動列車停止装置」と、本願発明2の「前記列車を停止させる列車停止位置と前記列車の走行方向における前記列車停止位置の前方にある信号機との間には、前記信号機が停止現示のときに即時停止情報を発信する直下地上子、冒進防護地上子及び予備直下地上子がこの順に設置され、前記直下地上子又は冒進防護地上子からの即時停止情報の受信により列車を停止させた場合、列車の自動運転を不可とする、列車制御システム」とは、「前記列車を停止させる列車停止位置と前記列車の走行方向における前記列車停止位置の前方にある信号機との間には、前記信号機が停止現示のときに即時停止情報を発信する第2の地上子が設置され、前記第2の地上子からの即時停止情報の受信により列車を停止させる、列車制御システム」の限りで一致する。
したがって、両者は以下の一致点及び相違点を有する。
〔一致点〕
「 列車走行路に設置された地上子から発信される地上子情報に基づいて列車を制御する、列車制御システムであって、
前記列車を停止させる列車停止位置と前記列車の走行方向における前記列車停止位置の前方にある信号機との間には、前記信号機が停止現示のときに即時停止情報を発信する第2の地上子が設置され、前記第2の地上子からの即時停止情報の受信により列車を停止させる、列車制御システム。」
〔相違点3〕
本願発明2は「列車の自動運転が可能」であるのに対し、引用発明は「列車の自動運転が可能」であるのかどうか不明な点。
〔相違点4〕
本願発明2は「前記列車を停止させる列車停止位置と前記列車の走行方向における前記列車停止位置の前方にある信号機との間には、前記信号機が停止現示のときに即時停止情報を発信する直下地上子、冒進防護地上子及び予備直下地上子がこの順に設置され、前記直下地上子又は冒進防護地上子からの即時停止情報の受信により列車を停止させた場合、列車の自動運転を不可とする」のに対し、引用発明は「列車TR1の停止位置と信号機Sig間の位置に、信号機Sigが停止現示のとき、車上に向けて共振周波数の影響を与える第2地上子2を設置し、列車の第2地上子2の通過に伴い、第2地上子2からの共振周波数の影響を受ける車上子を介して、非常ブレーキを動作させ、列車TR1はすぐに停止される」点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点4について検討する。
引用文献5記載事項は「ATS(Automatic Train Stop)とは、列車が停止信号機に接近した際、自動的にブレーキを動作させて列車を停止信号の手前で停止させる装置であり、ATS動作は、運転速度がATS照査速度を超えると、非常制動がかかり、この非常制動を解除するには、手動で非常運転モードに変更することで、ATS照査速度は一旦freeになること。」であって、相違点4に係る本願発明2の発明特定事項のうち「前記列車を停止させる列車停止位置と前記列車の走行方向における前記列車停止位置の前方にある信号機との間には、直下地上子、冒進防護地上子及び予備直下地上子がこの順に設置され、前記直下地上子又は冒進防護地上子からの即時停止情報の受信により列車を停止させた場合、列車の自動運転を不可とする」事項(以下、「本願発明2の発明特定事項1」という。)を開示するものではない。同様に、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項及び引用文献4記載事項のいずれも本願発明2の発明特定事項1を開示するものではない。
したがって、引用発明に対し、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、引用文献5記載事項を適用できたとしても、当該適用によりなし得た発明が本願発明2の発明特定事項1を備えるものでないことは明らかである。
また、引用発明から、当業者の通常の創作能力の範囲で本願発明2の発明特定事項1を容易に想到し得たとする格別な証拠はない。
さらに、フェールセーフ装置に冗長性を持たせるために複数個設けることが例示するまでもなく慣用技術であるとしても、引用発明に当該慣用技術を適用したことによりなし得た発明は、停止位置と信号機Sigとの間に第2地上子2と同じ地上子を複数個設置する事項を備えるのにとどまる。ここに、引用文献5記載事項を採用したとしても、本願発明2の発明特定事項1を備えるものとはならない。
そうすると、引用発明において、本願発明2の発明特定事項1を容易に想到し得たとする事情がないのであるから、引用発明において、本願発明2の発明特定事項1を含む相違点4に係る本願発明2の発明特定事項を容易に想到し得たとすることはできない。
そして、審判請求人が審判請求書において主張するように、本願発明2は、(直下地上子、冒進防護地上子及び予備直下地上子のうち)直下地上子又は冒進防護地上子からの即時停止情報の受信により列車を停止させた場合、列車が誤出発又は誤発進した可能性が高く(本願明細書の段落【0078】、【0086】も参照。)、列車の自動運転を不可とする事項により、例えば「安全性を確保しつつ、列車の自動運転が不可となる状態が過剰に発生することを抑制する」などの、引用発明並びに引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、引用文献5記載事項及び慣用技術にはない格別顕著な効果も奏する。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明2は、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、引用文献5記載事項及び慣用技術に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本願発明4
(1)本願発明4と引用発明との対比
本願発明4と引用発明とを対比すると、引用発明の「列車TR1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明4の「列車」に相当し、以下同様に、「信号機Sig」は「所定の信号機」に、「停止現示」は「停止現示」に、「信号機Sigの手前の停止位置」は「所定の信号機の手前の信号停止位置」に、「停止」は「停止」に、「列車TR1の停止位置と信号機Sig間」は「前記列車走行路における前記信号停止位置と前記所定の信号機との間」に、「非常ブレーキ」は「非常ブレーキ」に、それぞれ相当する。
引用発明の「信号機Sigが停止現示の場合、列車TR1の車上装置の車上子に影響を与え前方の信号機Sigが停止現示であることを伝える第1地上子1」は、列車は第1地上子1の上を通過することから、第1地上子1は列車走行路に設置されたといえるから、本願発明4の「列車走行路に設置され、所定の信号機が停止現示のときに前記所定の信号機の停止現示情報を発信する第1地上子」に相当する。
また、引用発明の「車上装置」は、列車TR1に搭載されたものであり、信号機Sigが停止現示の場合、第1地上子1が列車TR1の車上子に影響を与え前方の信号機Sigが停止現示であることを伝えると、列車TR1は設定時間後に非常ブレーキが動作することにより、信号機Sigの手前の停止位置で停止されることから、本願発明4の「前記列車走行路を走行する列車に搭載され、列車の自動運転が可能であり、前記第1地上子から前記所定の信号機の停止現示情報を受信すると前記所定の信号機の手前の信号停止位置で停止するように前記列車を制御する車上装置」と、「前記列車走行路を走行する列車に搭載され、前記第1地上子から前記所定の信号機の停止現示情報を受信すると前記所定の信号機の手前の信号停止位置で停止するように前記列車を制御する車上装置」の限りで一致する。
そうすると、引用発明の「信号機Sigが停止現示の場合、列車TR1の車上装置の車上子に影響を与え前方の信号機Sigが停止現示であることを伝える第1地上子1を信号機Sigの手前に設け、列車TR1は設定時間後に非常ブレーキが動作することにより、信号機Sigの手前の停止位置で停止される、ATS-SN型自動列車停止装置」と、本願発明4の「列車走行路に設置され、所定の信号機が停止現示のときに前記所定の信号機の停止現示情報を発信する第1地上子と、前記列車走行路を走行する列車に搭載され、列車の自動運転が可能であり、前記第1地上子から前記所定の信号機の停止現示情報を受信すると前記所定の信号機の手前の信号停止位置で停止するように前記列車を制御する車上装置と、を含む列車制御システム」とは、「列車走行路に設置され、所定の信号機が停止現示のときに前記所定の信号機の停止現示情報を発信する第1地上子と、前記列車走行路を走行する列車に搭載され、前記第1地上子から前記所定の信号機の停止現示情報を受信すると前記所定の信号機の手前の信号停止位置で停止するように前記列車を制御する車上装置と、を含む列車制御システム」の限りで一致する。
引用発明の「信号機Sigが停止現示のとき、車上に向けて共振周波数の影響を与える第2地上子2」は、列車の第2地上子2の通過に伴い、第2地上子2からの共振周波数の影響を受ける車上子を介して、非常ブレーキを動作させ、列車TR1はすぐに停止されるものであるから、本願発明4の「前記所定の信号機が停止現示のときに即時停止情報を発信する」事項を備えていることは自明であるから、引用発明の「列車TR1の停止位置と信号機Sig間の位置に、信号機Sigが停止現示のとき、車上に向けて共振周波数の影響を与える第2地上子2を設置し」という態様と、本願発明4の「前記列車走行路における前記信号停止位置と前記所定の信号機との間に設置され、前記所定の信号機が停止現示のときに即時停止情報を発信する第2地上子、第3地上子及び第4地上子をこの順に含み」という態様とは、「前記列車走行路における前記信号停止位置と前記所定の信号機との間に設置され、前記所定の信号機が停止現示のときに即時停止情報を発信する第2の地上子を含み」という限りで一致する。
そうすると、引用発明の「列車TR1の停止位置と信号機Sig間の位置に、信号機Sigが停止現示のとき、車上に向けて共振周波数の影響を与える第2地上子2を設置し、列車の第2地上子2の通過に伴い、第2地上子2からの共振周波数の影響を受ける車上子を介して、非常ブレーキを動作させ、列車TR1はすぐに停止される、ATS-SN型自動列車停止装置」と、本願発明4の「前記列車走行路における前記信号停止位置と前記所定の信号機との間に設置され、前記所定の信号機が停止現示のときに即時停止情報を発信する第2地上子、第3地上子及び第4地上子をこの順に含み、前記車上装置は、前記第2地上子、前記第3地上子又は前記第4地上子から即時停止情報を受信すると非常ブレーキを作動させて前記列車を停止させ、前記第2地上子又は第3地上子から即時停止情報を受信して前記列車を停止させた場合には列車の自動運転を不可とする、列車制御システム」とは、「前記列車走行路における前記信号停止位置と前記所定の信号機との間に設置され、前記所定の信号機が停止現示のときに即時停止情報を発信する第2の地上子を含み、前記車上装置は、前記第2の地上子から即時停止情報を受信すると非常ブレーキを作動させて前記列車を停止させる、列車制御システム」の限りで一致する。
したがって、両者は以下の一致点及び相違点を有する。
〔一致点〕
「 列車走行路に設置され、所定の信号機が停止現示のときに前記所定の信号機の停止現示情報を発信する第1地上子と、
前記列車走行路を走行する列車に搭載され、前記第1地上子から前記所定の信号機の停止現示情報を受信すると前記所定の信号機の手前の信号停止位置で停止するように前記列車を制御する車上装置と、
を含む列車制御システムであって、
前記列車走行路における前記信号停止位置と前記所定の信号機との間に設置され、前記所定の信号機が停止現示のときに即時停止情報を発信する第2の地上子を含み、
前記車上装置は、前記第2の地上子から即時停止情報を受信すると非常ブレーキを作動させて前記列車を停止させる、
列車制御システム。」
〔相違点5〕
車上装置に関し、本願発明4は「列車の自動運転が可能」であるのに対し、引用発明は「列車の自動運転が可能」であるのかどうか不明な点。
〔相違点6〕
本願発明4は「前記列車走行路における前記信号停止位置と前記所定の信号機との間に設置され、前記所定の信号機が停止現示のときに即時停止情報を発信する第2地上子、第3地上子及び第4地上子をこの順に含み、前記車上装置は、前記第2地上子、前記第3地上子又は前記第4地上子から即時停止情報を受信すると非常ブレーキを作動させて前記列車を停止させ、前記第2地上子又は第3地上子から即時停止情報を受信して前記列車を停止させた場合には列車の自動運転を不可とする」のに対し、引用発明は「列車TR1の停止位置と信号機Sig間の位置に、信号機Sigが停止現示のとき、車上に向けて共振周波数の影響を与える第2地上子2を設置し、列車の第2地上子2の通過に伴い、第2地上子2からの共振周波数の影響を受ける車上子を介して、非常ブレーキを動作させ、列車TR1はすぐに停止される」点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点6について検討する。
引用文献5記載事項は「ATS(Automatic Train Stop)とは、列車が停止信号機に接近した際、自動的にブレーキを動作させて列車を停止信号の手前で停止させる装置であり、ATS動作は、運転速度がATS照査速度を超えると、非常制動がかかり、この非常制動を解除するには、手動で非常運転モードに変更することで、ATS照査速度は一旦freeになること。」であって、相違点6に係る本願発明4の発明特定事項のうち「前記列車走行路における前記信号停止位置と前記所定の信号機との間に設置され、第2地上子、第3地上子及び第4地上子をこの順に含み、前記車上装置は、前記第2地上子、前記第3地上子又は前記第4地上子から即時停止情報を受信すると非常ブレーキを作動させて前記列車を停止させ、前記第2地上子又は第3地上子から即時停止情報を受信して前記列車を停止させた場合には列車の自動運転を不可とする」事項(以下「本願発明4の発明特定事項1」という。)を開示するものではない。同様に、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項及び引用文献4記載事項のいずれも本願発明4の発明特定事項1を開示するものではない。
したがって、引用発明に対し、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、引用文献5記載事項を適用できたとしても、当該適用によりなし得た発明が本願発明4の発明特定事項1を備えるものでないことは明らかである。
また、引用発明から、当業者の通常の創作能力の範囲で本願発明4の発明特定事項1を容易に想到し得たとする格別な証拠はない。
さらに、フェールセーフ装置に冗長性を持たせるために複数個設けることが例示するまでもなく慣用技術であるとしても、引用発明に当該慣用技術を適用したことによりなし得た発明は、停止位置と信号機Sigとの間に第2地上子2と同じ地上子を複数個設置する事項を備えるのにとどまる。ここに、引用文献5記載事項を採用したとしても、本願発明4の発明特定事項1を備えるものとはならない。
そうすると、引用発明において、本願発明4の発明特定事項1を容易に想到し得たとする事情がないのであるから、引用発明において、本願発明4の発明特定事項1を含む相違点6に係る本願発明4の発明特定事項を容易に想到し得たとすることはできない。
そして、審判請求人が審判請求書において主張するように、本願発明4は、(第2地上子、第3地上子及び第4地上子のうち)第2地上子又は第3地上子からの即時停止情報の受信により列車を停止させた場合、列車が誤出発又は誤発進した可能性が高く(本願明細書の段落【0078】、【0086】も参照。)、列車の自動運転を不可とする事項により、例えば「安全性を確保しつつ、列車の自動運転が不可となる状態が過剰に発生することを抑制する」などの、引用発明並びに引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、引用文献5記載事項及び慣用技術にはない格別顕著な効果も奏する。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明4は、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、引用文献5記載事項及び慣用技術に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 本願発明3及び本願発明5
本願発明3は、本願発明1又は本願発明2の発明特定事項を全て含み、さらに請求項3で新たに特定される発明特定事項を備えるものである。
本願発明5は、本願発明4の発明特定事項を全て含み、さらに請求項5で新たに特定される発明特定事項を備えるものである。
そうすると、1(2)、2(2)及び3(2)で上述したとおりの理由と同じく、本願発明3及び本願発明5は、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、引用文献5記載事項及び慣用技術に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし本願発明5は、引用発明並びに引用文献2記載事項、引用文献3記載事項、引用文献4記載事項、引用文献5記載事項及び慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-019211