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特許拒絶査定不服審判

2022-016972

折りたたみ型ディスプレイ及び携帯端末機器

審判番号
2022-016972
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-089673
請求日
2022年10月24日
審決日
2024年02月28日
公報発行日
2024年05月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】東洋紡株式会社
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 田辺 正樹
  • 審判官 田邉 英治
分類
P18 .121-WZ (G09F) / P18 .536-WZ (G09F) / P18 .537-WZ (G09F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018- 89673「折りたたみ型ディスプレイ及び携帯端末機器」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年11月14日出願公開、特開2019-197962〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年5月8日に出願された特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和4年 2月21日付け :拒絶理由通知書 同年 4月18日 :意見書及び手続補正書の提出 同年 7月14日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。) (同年 8月 2日 :原査定の謄本の送達) 同年10月24日 :審判請求書及び手続補正書の提出 令和5年 9月 6日付け :拒絶理由通知書 同年11月 2日 :意見書及び手続補正書の提出 なお、当審において通知した令和5年9月6日付け拒絶理由通知書を、以下「当審拒絶理由通知書」といい、これに対して、同年11月2日に請求人から提出された意見書を、以下、単に「意見書」という。 第2 本願発明について 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年11月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。 「【請求項1】 折りたたんだ際の屈曲半径が5mm以下である折りたたみ型ディスプレイであって、 折りたたみ型ディスプレイの折りたたみ部分を介して連続した単一のハードコートフィルムが配され、 折りたたみ型ディスプレイの表面の少なくとも一部がハードコートフィルムからなり、 ハードコートフィルムは、ポリエステルフィルム上に易接着樹脂層とハードコート層を順に有し、 ハードコート層が折りたたみ型ディスプレイの表面側に位置しており、 ポリエステルフィルムが、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、 ポリエステルフィルムの厚みが10~75μmであり、 フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒を用いて測定したポリエステルフィルムの極限粘度が0.65~1.0dL/gであり、 易接着樹脂層が、二酸化チタンよりなるチタニア粒子、二酸化ジルコニウムよりなるジルコニア粒子から選ばれる少なくとも一種の粒子と、ジカルボン酸成分の一部としてナフタレンジカルボン酸を含んでなるポリエステル樹脂と、を含有する組成物が硬化されてなり、 易接着樹脂層の厚みが0.03~0.20g/m2であり、 ハードコート層がアクリル樹脂を含有する組成物からなり、 ハードコート層の厚みが1~40μmであり、 ハードコートフィルムの全光線透過率が85%以上である折りたたみ型ディスプレイ。」 第3 当審拒絶理由通知書において指摘した拒絶理由の概要 当審拒絶理由通知書において通知した、令和5年11月2日に提出された手続補正書による補正前の請求項1から請求項8に係る発明(以下、単に「補正前」などという。)に対する進歩性欠如の拒絶の理由の要旨は、次のとおりである。 (進歩性の欠如)補正前の請求項1から請求項8に係る発明は、その出願前に発行された特開2018-10821号公報(以下「引用文献1」という。)に記載された発明並びに周知技術及び技術常識に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第4 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 1 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定 (1) 引用文献1に記載された事項 前記引用文献1には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したもので、引用発明の認定に直接用いる記載に付した。 ア 【特許請求の範囲】 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも片面(A面)のマルテンス硬さが150N/mm2以上であって、フィルムの主配向軸方向(X方向)と、X方向と直交する方向(Y方向)のMIT屈曲破断回数が50000回以上である有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルム。 【請求項2】 少なくとも片面(A面)の面配向係数が0.16以上0.18以下である請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルム。 (中略) 【請求項4】 固有粘度が0.65以上1.0dl/g以下である請求項1~3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルム。 (中略) 【請求項7】 請求項1~6のいずれかに記載のポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置用積層ポリエステルフィルム。 【請求項8】 前記ポリエステルフィルムと前記硬化性樹脂を含有する層の間に厚み10nm以上500nm以下である樹脂層を有し、前記樹脂層の表面自由エネルギーが38mN/m以上であるに請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルム。 【請求項9】 請求項1~6のいずれかに記載のポリエステルフィルムの両面に硬化性樹脂を含有する層を有する請求項7または8に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用積層ポリエステルフィルム。 【請求項10】 請求項7~9のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム及び、円偏光板を有する表示装置であって、前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板の厚み合計が120μm以下である有機エレクトロルミネッセンス表示装置。」 イ 【0001】~【0008】 「【0001】 本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムに関するものであり、耐屈曲性と表面硬度が高いため、有機エレクトロルミネッセンス表示装置のカバーフィルムとして特に好適に使用可能なポリエステルフィルムに関するものである。 【背景技術】 【0002】 近年、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode)と呼ばれる自発光体を用いた画像表示装置(以下、「有機エレクトロルミネッセンス表示装置」という。)の実用化が進んでいる。この有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、自発光体を用いているため、視認性、応答速度の点で優れているだけでなく、バックライトのような補助照明装置を要しないため、表示装置としての薄膜化、フレキシブル化が可能となっている。このため、折り畳みや丸めることが可能なフレキシブル表示装置の開発が加速しており、表示装置表面の傷付きを防止するカバーフィルムについても耐屈曲性が求められている。 【0003】 例えば、画像表示装置向けに、耐傷性を向上させる手法として、ポリエステルフィルムを含む基材の両面にハードコート層を積層したハードコートフィルムが提案されている(例えば、特許文献1)。また、フレキシブル表示装置向けに、ポリエステルフィルムを含む可撓性を有する透明樹脂フィルムの少なくとも一方の面に反射防止層が設けられた反射防止フィルムが提案されている(例えば、特許文献2)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開2015-61750号公報 【特許文献2】特開2016-75869号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の画像表示装置向けに使用されるフィルムは、ハードコート層、反射防止層に特徴があり、基材となるポリエステルフィルムには特徴を有していないため、耐傷性と耐屈曲性の両立が不十分であり、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用への適用は困難であった。 【0006】 そこで本発明の課題は、上記した問題点を解消することにあり、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用として適用された際、耐屈曲性と耐傷性を両立できるポリエステルフィルムを提供することにある。 (中略) 【発明の効果】 【0008】 本発明によれば、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用として、耐屈曲性と表面硬度の高いポリエステルフィルムを提供でき、特に表示装置前面のカバーフィルムとして好適に用いることができる。」 ウ 【0009】~【0017】 「【発明を実施するための形態】 【0009】 以下に、本発明に係るポリエステルフィルムについて、実施の形態とともに詳細に説明する。 (中略) 【0010】 (中略) 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムは、耐傷性の観点から、少なくとも片面(A面)のマルテンス硬さが150N/mm2以上である必要がある。少なくとも片面(A面)のマルテンス硬さを150N/mm2以上とすることで、フィルム表面の傷付きを抑制することができる。ここで、マルテンス硬さとは、ナノインデンテーション法により測定される値であり、圧子を試験荷重を増加しながらフィルム表面に押し込み、そのときの試験荷重のくぼみ表面積の商で定義されており、くぼみ表面積は、圧子押し込み深さより算出できる。少なくとも片面(A面)のマルテンス硬さは170N/mm2以上であればより好ましく、180N/mm2以上500N/mm2以下であれば最も好ましい。また、A面の反対面(B面)のマルテンス硬さにおいても150N/mm2以上であることが好ましい。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムにおいて、少なくとも片面(A面)のマルテンス硬さを150N/mm2以上とする方法としては、例えば、少なくとも片面(A面)の面配向係数が0.16以上0.18以下とする方法が挙げられる。面配向係数を0.16以上0.18以下と高く制御することで、フィルム面内の分子配向が進行するため、フィルム表面からの押し込みに対する剛性が向上し、マルテンス硬さを150N/mm2以上とするのに有効である。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムの面配向係数は0.163以上0.178以下であればより好ましく、0.165以上0.175以下であれば最も好ましい。面配向係数を0.16以上0.18以下とする方法としては、キャスト工程で得られた未延伸ポリエステルシートを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで制御することができるが、かかる延伸方法における延伸倍率としては、それぞれの方向に、好ましくは、3.5~4.5倍、さらに好ましくは3.6~4.2倍、特に好ましくは3.7~4倍が採用される。また延伸温度は、延伸ムラが生じない程度に低温とすることが好ましく、例えば、長手方向に延伸した後に、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方法を採用する場合は、長手方向の予熱温度は50~60℃、延伸温度は80~90℃とすることが好ましく、幅方向の予熱温度は70~80℃、延伸温度は90~100℃とすることが好ましい。また、延伸は各方向に対して複数回行ってもよい。 (中略) 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムにおいて、X方向とY方向のMIT屈曲破断回数を50000万回以上と非常に高い屈曲性を得るためには、繰り返し屈曲させた際の残存歪みを低減させる必要がある。このため、分子鎖の滑りを抑制する絡み合いが重要であり、例えばポリエステルフィルムの固有粘度を0.65以上1.0dl/g以下と高くする方法が有効である。ポリエステルフィルムの固有粘度は0.68以上1.0dl/g以下であればより好ましく、0.69以上0.9dl/g以下であれば最も好ましい。 (中略) 【0012】 (中略) 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムは、ハンドリング性、耐傷性、耐屈曲性の観点より、フィルム厚みは10μm以上200μm以下であることが好ましく、15μm以上100μm以下であればさらに好ましく、20μm以上50μm以下であれば最も好ましい。 本発明において、耐傷性の観点から、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有する積層ポリエステルフィルムの構成とすることが好ましい。少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有することで、該硬化性樹脂層側からの衝撃に対する傷付き抑制効果を高めることが可能である。 ここで、硬化性樹脂とは、熱や光を照射することで架橋構造を形成し、硬化する樹脂をさす。硬化性樹脂としては特に限定されないが、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂であることが好ましく、具体的には、有機シリコーン系、ポリオール系、メラミン系、エポキシ系、多官能アクリレート系、ウレタン系、イソシアネート系、有機材料と無機材料の複合材料である有機無機ハイブリット系および硬化性のある官能基を有するシルセスキオキサン系などの樹脂が挙げられる。より好ましくは、エポキシ系、多官能アクリレート系、有機無機ハイブリット系、シルセスキオキサン系の樹脂である。更に好ましくは、多官能アクリレート系、有機無機ハイブリット系、シルセスキオキサン系の樹脂である。 (中略) 【0016】 (中略) 本発明の硬化性樹脂を含有する層は、厚みが1~20μmであることが好ましい。硬化性樹脂を含有する層の厚みが1μmより薄いと、十分な表面硬度が得られない場合がある。また、硬化性樹脂を含有する層の厚みが20μmを超えると積層ポリエステルフィルムを折り曲げた際に、積層された硬化性樹脂を含有する層にクラックが発生することがある。硬化性樹脂を含有する層の厚みは、2μm以上15μm以下であればより好ましく、3μm以上10μm以下であれば最も好ましい。なお、ポリエステルフィルムの両面に硬化性樹脂を含有する層を有する構成の場合は、各面の硬化性樹脂を含有する層の厚みが、それぞれ1~20μmであることが好ましい。 【0017】 また、本発明の硬化性樹脂を含有する層は、1層あるいは2層以上で形成されていても構わない。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムと、硬化性樹脂を含有する層の間に厚み10nm以上500nm以下である樹脂層を有し、該樹脂層の表面自由エネルギーが38mN/m以上であることが好ましい。この厚みが10nm以上500nm以下である表面自由エネルギーが38mN/m以上である樹脂層を有することで、ポリエステルフィルムと硬化性樹脂を含有する層との密着性が向上し、積層フィルム構成での耐屈曲性が向上する。該樹脂層の厚みは20nm以上400nm以下であればより好ましく、30nm以上300nm以下であれば最も好ましい。また、該樹脂層の表面自由エネルギーは、40mN/m以上であればより好ましく、42mN/m以上であれば最も好ましい。 」 エ 【0018】~【0023】 「【0018】 次に本発明のポリエステルフィルムの具体的な製造方法の例について記載するが、本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。 【0019】 まず、ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート樹脂を乾燥、予備結晶化させた後、単軸押出機に供給し、溶融押出する。この際、樹脂温度は265~295℃に制御することが好ましい。次いで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を各々行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムと樹脂を密着させる静電印加法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点~(ガラス転移点-20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。 【0020】 キャスト工程で得られた未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで得ることができるが、かかる延伸方法における延伸倍率としては、それぞれの方向に、好ましくは、3.5~4.5倍、さらに好ましくは3.6~4.2倍、特に好ましくは3.7~4倍が採用される。また延伸温度は、延伸ムラが生じない程度に低温とすることが好ましく、例えば、長手方向に延伸した後に、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方法を採用する場合は、長手方向の予熱温度は50~60℃、延伸温度は80~90℃とすることが好ましく、幅方向の予熱温度は70~80℃、延伸温度は90~100℃とすることが好ましい。また、延伸は各方向に対して複数回行ってもよい。 【0021】 また、本発明のポリエステルフィルムは、幅方向に延伸後に、フィルムの熱処理を行うことが好ましい。熱処理はオーブン中、加熱したロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。熱処理は、180℃~240℃とすることが好ましく、最も高温の熱処理ゾーンの温度としては220℃以上240℃以下とすることが好ましい。また、熱処理は複数のゾーンに分けて段階的に昇温・降温する方法や、熱処理工程で幅方向に微延伸する方法も用いることができる。また、熱処理時間は特性を悪化させない範囲において任意とすることができ、好ましくは10~60秒間、より好ましくは15~30秒間行うのがよい。さらに、熱処理はフィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行ってもよい。 【0022】 また、本発明のポリエステルフィルムは、硬化性樹脂を含有する層との密着性の観点から、少なくとも片面に10nm以上500nm以下であり、表面自由エネルギーが38mN/m以上である樹脂層を積層することが好ましいが、この樹脂層の形成方法としては、樹脂をフィルム表面に被覆(複合溶融押出法、ホットメルトコート法、水以外の溶媒、水溶性および/または水分散性樹脂からのインライン、オフラインコート法など)する方法や、同様組成あるいはそのブレンド品の表面積層法などが挙げられる。なかでも、配向結晶化が完了する前のフィルムの一方の面に被膜塗剤を塗布し、少なくとも一方向に延伸し、熱処理して、配向結晶化を完了させるインラインコーティング法が均一な被膜形成や工業上好ましい。また、コーティングにより樹脂層を設ける場合、樹脂層を付与する樹脂としては、特に限定されるものではないが、たとえば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ビニル系樹脂、塩素系樹脂、スチレン系樹脂、各種グラフト系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂などを使用することができ、これらの樹脂の混合物を使用することもできる。密着性の観点からポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、またはウレタン系樹脂を用いるのが好ましい。ポリエステル樹脂を水系塗液として用いる場合には、水溶性あるいは水分散性のポリエステル樹脂が用いられるが、このような水溶性化あるいは水分散化のためには、スルホン酸塩基を含む化合物や、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合させることが好ましい。またアクリル樹脂を水性塗液として用いる場合には、水に溶解あるいは分散された状態にする必要があり、乳化剤として界面活性剤(例えば、ポリエーテル系化合物などが挙げられるが、限定されるものではない。)を使用する場合がある。 【0023】 また、本発明に用いられる樹脂層には、さらに接着性を向上させるために、樹脂に各種の架橋剤を併用することができる。架橋剤樹脂としては、メラミン系、エポキシ系、オキサゾリン系樹脂が一般に用いられる。本発明の樹脂層に含有される粒子としては、無機系粒子や有機系粒子を挙げることができるが、易滑性や耐ブロッキング性が向上するので、無機粒子がより好ましい。この無機粒子としては、シリカ、アルミナ、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、チタンなどを用いることができる。」 オ 【0027】、【0028】 「【0027】 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムは、耐屈曲性と表面硬度が高いため、有機エレクトロルミネッセンス表示装置のカバーフィルムとして特に好適に使用することができる。有機エレクトロルミネッセンス表示装置のカバーフィルムとして適用することで、表示装置のフレキシブル性を損なうことなく、表示装置表面の傷付きを防止することができる。 【0028】 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板を有する表示装置であって、前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板の厚み合計が120μm以下であることが好ましい。前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板の厚み合計を120μm以下とすることで、表示装置としてのフレキシブル性が高まり、折り畳みや丸めることが可能な表示装置となる。前記積層ポリエステルフィルムと偏光板の厚み合計は110μm以下であればより好ましく、100μm以下であれば最も好ましい。また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板と、有機エレクトロルミネッセンス素子より構成されることが好ましい。」 カ 【0038】 「【0038】 (中略) (8)固有粘度 ポリエステル樹脂およびフィルムの極限粘度は、ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。」 キ 【0044】~【0047】 「【0044】 (12)円偏光板の作製 (円偏光板-I) 厚さ40μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬した。次いで、ヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥して偏光子を得た。得られた偏光子の、一方の面に予めコロナ処理されたλ/4位相差フィルム(環状オレフィンフィルム23μm)、他方の面に予めケン化処理を施した保護フィルム(トリアセチルセルロールフィルム25μm)を、接着剤を介して貼合せて、厚さ60μmの円偏光板を作製した。 【0045】 (円偏光板-II) ポリビニルアルコールフィルムの厚さを80μm、λ/4位相差フィルムの厚さを33μm、保護フィルムの厚さを40μmとし、円偏光板-Iと同様にして、厚さに95μmの円偏光板を作製した。 【0046】 (13)有機エレクトロルミネッセンス表示装置の作製 本発明の積層ポリエステルフィルム/円偏光板/有機エレクトロルミネッセンスパネル(LGディスプレイ製 15EL9500)を、それぞれアクリル系粘着剤(厚さ20μm)を介して有機エレクトロルミネッセンスパネル(LGディスプレイ社製 商品名15EL9500)の視認側に貼り合せて有機エレクトロルミネッセンス表示装置を作製した。 【0047】 (14)耐屈曲性 本発明の積層ポリエステルフィルムと、(12)で作製した円偏光板を、アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼り合わせたサンプルについて、U字伸縮試験器(ユアサシステム機器製 DLDMLH-FS)を用いて、幅108mm、長さ112mmに切り出したサンプルを、チルトクランプが水平状態にて、ストローク方向がサンプル長さ方向になるようにチルトクランプ端部に貼り付け、試験速度60r/min、試験ストローク60mm、面間距離3mmにて10000回屈曲し、試験後のサンプルについて、積層ポリエステルフィルム側の蛍光灯の反射光と、外観より以下の判定を行った。 A:外観変化がなく、反射光の歪みも観察されなかった。 B:外観上の変化はなかったが、反射光の歪みが観察された。 C:外観に若干の折り曲げラインが観察された。 D:外観に折り曲げラインが鮮明に観察された。」 (2) 引用文献1の記載から認定した事項 ア 認定事項1の認定 (ア) 引用文献1の段落【0010】には、次の記載がある。 「【0010】 (中略)本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用ポリエステルフィルムの面配向係数は0.163以上0.178以下であればより好ましく、0.165以上0.175以下であれば最も好ましい。面配向係数を0.16以上0.18以下とする方法としては、キャスト工程で得られた未延伸ポリエステルシートを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで制御することができるが、かかる延伸方法における延伸倍率としては、それぞれの方向に、好ましくは、3.5~4.5倍、さらに好ましくは3.6~4.2倍、特に好ましくは3.7~4倍が採用される。 (後略)」 (イ) 引用文献1の段落【0018】~【0020】には、次の記載がある。 「【0018】 次に本発明のポリエステルフィルムの具体的な製造方法の例について記載するが、本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。 【0019】 まず、ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート樹脂を乾燥、予備結晶化させた後、単軸押出機に供給し、溶融押出する。この際、樹脂温度は265~295℃に制御することが好ましい。次いで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を各々行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムと樹脂を密着させる静電印加法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点~(ガラス転移点-20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。 【0020】 キャスト工程で得られた未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで得ることができるが、かかる延伸方法における延伸倍率としては、それぞれの方向に、好ましくは、3.5~4.5倍、さらに好ましくは3.6~4.2倍、特に好ましくは3.7~4倍が採用される。(後略)」 (ウ) 前記(ア)及び(イ)を総合すると、引用文献1には、次の事項が記載されていると認められる(以下「認定事項1」という。)。 <認定事項1> 「ポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる未延伸フィルムを、逐次二軸延伸方法又は同時二軸延伸方法により延伸を行うことで得られるものであること。」 イ 認定事項2の認定 (ア)a 前記(1)ウにおいて摘記したとおり、引用文献1の段落【0012】には、次の記載がある。 「本発明において、耐傷性の観点から、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有する積層ポリエステルフィルムの構成とすることが好ましい。少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有することで、該硬化性樹脂層側からの衝撃に対する傷付き抑制効果を高めることが可能である。」 b よって、引用文献1に記載された「積層ポリエステルフィルム」は、ハードコートフィルムとして機能するものであるといえる。 c 前記(1)オにおいて摘記したとおり、引用文献1の段落【0028】には、有機エレクトロルミネッセンス表示装置が、「積層ポリエステルフィルムと円偏光板を有する表示装置」であることが記載されている。 d 以上を踏まえると、積層ポリエステルフィルムが表示装置の表面に配置されていることが認識できる (イ)a そして、引用文献1には、積層ポリエステルフィルムを表示装置に対してあえて部分的に適用したり、フィルムを分割して適用したりすることを示す記載はない。 b その一方、次に摘記した段落【0047】に示すように、積層ポリエステルフィルムを面間距離3mmにて10000回屈曲することが記載されている。 「【0047】 (14)耐屈曲性 本発明の積層ポリエステルフィルムと、(12)で作製した円偏光板を、アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼り合わせたサンプルについて、U字伸縮試験器(ユアサシステム機器製 DLDMLH-FS)を用いて、幅108mm、長さ112mmに切り出したサンプルを、チルトクランプが水平状態にて、ストローク方向がサンプル長さ方向になるようにチルトクランプ端部に貼り付け、試験速度60r/min、試験ストローク60mm、面間距離3mmにて10000回屈曲し、試験後のサンプルについて、積層ポリエステルフィルム側の蛍光灯の反射光と、外観より以下の判定を行った。 A:外観変化がなく、反射光の歪みも観察されなかった。 B:外観上の変化はなかったが、反射光の歪みが観察された。 C:外観に若干の折り曲げラインが観察された。 D:外観に折り曲げラインが鮮明に観察された。」 c そうすると、引用文献1の記載から認識できる、表示装置の表面に配置されている積層ポリエステルフィルムは、連続した単一の積層ポリエステルフィルムとして表示装置の表面全体に配置されていると理解するのが自然である。 (ウ) したがって、引用文献1には、次の事項が記載されていると認められる(以下「認定事項2」という。)。 <認定事項2> 「表示装置の表面全体に連続した単一の積層ポリエステルフィルムが配されていること。」 (3) 引用発明の認定 前記(1)において摘記した事項及び前記(2)において認定した事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 <引用発明> 「 積層ポリエステルフィルムと円偏光板を有する表示装置であって、 (【0028】) 前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板の厚み合計が120μm以下であり、前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板の厚み合計が120μm以下であることで、表示装置としてのフレキシブル性が高まり、折り畳みや丸めることが可能な表示装置であり、(【0028】) 前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板と、有機エレクトロルミネッセンス素子より構成され、(【0028】) 表示装置の表面全体に連続した単一の積層ポリエステルフィルムが配されており、(認定事項2) 積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有する積層ポリエステルフィルムの構成であって、少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有することで、該硬化性樹脂層側からの衝撃に対する傷付き抑制効果を高めることが可能であり、(【0012】) ポリエステルフィルムは、フィルム厚みは20μm以上50μm以下であり、(【0012】) ポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる未延伸フィルムを、逐次二軸延伸方法又は同時二軸延伸方法により延伸を行うことで得られるものであり、(認定事項1) ポリエステルフィルムの固有粘度は0.69以上0.9dl/g以下であり、(【0010】) ポリエステル樹脂およびフィルムの極限粘度は、ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定されるものであり、(【0038】) 積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムと、硬化性樹脂を含有する層の間に厚み10nm以上500nm以下である樹脂層を有し、該樹脂層の表面自由エネルギーが38mN/m以上であり、この厚みが10nm以上500nm以下である表面自由エネルギーが38mN/m以上である樹脂層を有することで、ポリエステルフィルムと硬化性樹脂を含有する層との密着性が向上するものであり、(【0017】) 樹脂層は、インラインコーティング法により設けられ、樹脂層を付与する樹脂として、ポリエステル系樹脂が用いられ、(【0022】) 樹脂層に無機粒子が含有され、この無機粒子は、シリカ、アルミナ、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、チタンなどであり、(【0023】) 硬化性樹脂は、多官能アクリレート系の樹脂であり、(【0012】) 硬化性樹脂を含有する層は、厚みが1~20μmである、(【0016】) 表示装置。」 2 引用文献5に記載された事項及び技術常識1の認定 (1) 引用文献5に記載された事項 当審拒絶理由通知書において技術常識を示す文献として引用された、本願出願前に発行された文献である「日本規格協会“JIS K 7367-5 : 2000 プラスチック-毛細管形粘度計を用いたポリマー希釈溶液の粘度の求め方-第5部:熱可塑性ポリエステル(TP)ホモポリマー及びコポリマー”、2000年1月20日」(以下「引用文献5」という。)の第1ページ、第5ページ及び第6ページには、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付したもので、以下同様である。 「1. 適用範囲 この規格は,熱可塑性ポリエステル(TPs)を規定の溶媒で希釈して得た溶液の粘度数を測定する方法を規定する。この方法は,ポリエチレンテレフタレート(PET),(中略)などISO 7792-1に規定され,規定溶媒のどれかに規定条件下で溶解するものに適用できる。(後略)」 「8. 結果の表示 粘度数は,次の式によって算出し,ml/gで表す。 (後略)」 「A.3 種々の溶媒で測定した粘度数の相互換算 種々の溶媒で測定した粘度数の相関は,次のとおりである。 A.3.1 PETの粘度数 フェノール/1,2-ジクロロベンゼン(50/50)に溶かしたPETと,フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(50/50,60/40),o-クロロフェノール及びジクロロ酢酸に溶かしたPETの粘度数の相関図を,附属書図A.1に示す。 この図から,直線関係であることが分かる。それらの関係を次に示す。 a) (中略) b) フェノール/1,2-ジクロロベンゼン(50/50)とフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(60/40) y=0.83x+11.07 c) フェノール/1,2-ジクロロベンゼン(50/50)とo-クロロフェノール y=0.82x+8.40 d) (中略) ここに,y:代替溶媒での粘度数 x:フェノール/1,2-ジクロロベンゼン(50/50)での粘度数」 「附属書図A.1 フェノール/1,2-ジクロロベンゼン(50/50)と他の溶媒に溶かしたPETの粘度数の相関図 [図:0001409685000001.jpg] 」 (2) 技術常識1の認定 ア 引用文献5のA.3.1は、種々の溶媒で測定したポリエチレンテレフタレート(PET)の粘度数の相関について記載したものであるところ、次の式(A)及び式(B)が記載されている。なお、ここで、x、y、zは、次のとおりである。 x[ml/g]:フェノール/1,2-ジクロロベンゼン(50/50)で測定したポリエチレンテレフタレートの粘度数 y[ml/g]:フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(60/40)で測定したポリエチレンテレフタレートの粘度数 z[ml/g]:o-クロロフェノールで測定したポリエチレンテレフタレートの粘度数 y=0.83x+11.07 ……式(A) z=0.82x+8.40 ……式(B) イ 前記式(A)及び式(B)よりxを消去し、体積の単位が1[dl]=100[ml]であることを踏まえて単位を換算すると、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(60/40)で測定したポリエチレンテレフタレートの粘度数Y[dl/g]とo-クロロフェノールで測定したポリエチレンテレフタレートの粘度数Z[dl/g]について、次の式(C)の換算式が得られる。 Y=1.01Z+0.0257 ……式(C) ウ そして、引用文献5に記載されている「粘度数」が、「固有粘度」や「極限粘度」と同義であることは技術常識である。 エ したがって、次に示す事項は、本願の出願前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)。 [技術常識1] 「フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(60/40)によって測定したポリエチレンテレフタレートの極限粘度をY[dl/g]と置き、o-クロロフェノールによって測定したポリエチレンテレフタレートの極限粘度Z[dl/g]と置くと、両者の換算式として、 Y=1.01Z+0.0257 が成り立つこと。」 3 引用文献6、7に記載された事項及び周知技術等の認定 (1) 引用文献6に記載された事項 当審拒絶理由通知書において周知技術を示す文献として引用された、本願出願前に発行された文献である特開2009-143226号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。 ア 【特許請求の範囲】 「【請求項1】 ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂と、屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)と、平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を含有する塗布層を設けた光学用易接着性ポリエステルフィルム。 (後略)」 イ 【0001】~【0011】 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、光学用易接着性ポリエステルフィルムに関する。例えば、タッチパネル、液晶表示板(LCD)、テレビやコンピューターのブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)等の表示画面の前面に装着して、外光の写り込み、ぎらつき、虹彩状色彩等を抑制する反射防止性を付与し、ハードコート層との密着性及び高温高湿処理後の密着性に優れる光学用易接着性ポリエステルフィルムに関する。 【背景技術】 【0002】 タッチパネル、コンピューター、テレビ、液晶表示装置等のディスプレイ、装飾材等の前面には、透明なハードコート層を積層させたハードコートフィルムが使用されている。また、基材の透明プラスティックフィルムとしては、透明な二軸配向ポリエステルフィルムが一般的に用いられ、基材のポリエステルフィルムとハードコート層との密着性を向上させるために、これらの中間層として易接性を有する塗布層を設ける場合が多い。 【0003】 前記のハードコートフィルムには、温度、湿度、光に対する耐久性、透明性、耐薬品性、耐擦傷性、防汚性等が求められている。また、ハードコートフィルムにはディスプレイや装飾材などの表面に用いられることが多いため、視認性や意匠性が要求されている。そのため、任意の角度から見たときの反射光によるぎらつきや虹彩状色彩等を抑えるため、ハードコート層の上層に、高屈折率層と低屈折率層を相互に積層した多層構造の反射防止層を設けることが一般的に行われている。 【0004】 しかしながら、ディスプレイや装飾材などの用途では、近年、さらなる大画面化(大面積化)及び高級性が求められ、それにともなって特に蛍光灯下での虹彩状色彩(干渉斑)の抑制に対する要求レベルが高くなってきている。また、蛍光灯は昼光色の再現性のため3波長形が主流となってきており、より干渉斑が出やすくなっている。さらに、反射防止層の簡素化によるコストダウン要求も高くなってきている。そのため、反射防止層を付加しないハードコートフィルムのみでも干渉斑をできるだけ抑制するものが求められている。 【0005】 ハードコートフィルムの虹彩状色彩(干渉斑)は、基材のポリエステルフィルムの屈折率(例えば1.62)とアクリル樹脂からなるハードコート層の屈折率(例えば1.49)との差が大きいため発生するといわれている。積層間の屈折率差を小さくして干渉斑の発生を防止するため、基材のポリエステルフィルム上に塗布層を設け、ポリエステルフィルムと塗布層との屈折率差、塗布層とハードコート層の屈折率差を小さくするように、塗布層を構成する樹脂と高屈折添加剤の含有量で塗布層の屈折率を制御する方法が開示されている。このような方法として、例えば、(1)水溶性ポリエステル樹脂と水溶性金属キレート化合物または金属アシレート化合物を含むもの(特許文献1)、(2)高分子バインダーと高屈折率の金属酸化物を含むもの(特許文献2)等が提案されている。 【0006】 【特許文献1】特許第3632044号明細書 【特許文献2】特開2004-54161号公報 【0007】 上記(1)、(2)の方法で干渉斑の発生を抑制する場合、塗布層の厚みを制御することが重要となる。塗布層を設けることで、ハードコート層-塗布層界面で生じる反射光と、塗布層-ポリエステルフィルム界面で生じる反射光とが生じるが、この2つの波長が打ち消しあって逆位相となる為には、光学設計上、特定の範囲内で塗布層厚みを制御する必要があるためである。そのため、塗布層の厚みが所定の範囲を超える場合は、これら反射光による干渉斑が発生することとなる。よって、上記(1)、(2)の方法では、生産管理上、極めて厳密に塗布層厚みを制御する必要があった。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 しかしながら、近年の生産効率の向上の点から、ハードコート層形成用塗布液の溶剤として速乾性やレベリングに優れた各種の溶剤が用いられるようになってきており、そのようなものの中には、ポリエステルフィルムに設けた塗布層を溶解するものも使用されるようになってきた。そのため、上記方法で特定の厚みを有する塗布層を設けても、ハードコート層形成用塗布液の溶剤によって塗布層厚みが変動し、干渉斑が抑制できない場合が生じてきた。そのため、各種の溶剤でも広範囲に適用可能な干渉斑の効果を有する塗布層の組成が切望された。 【0009】 すなわち、本発明は、蛍光灯下での虹彩状色彩を抑制し、かつ、ハードコート層との密着性、高温高湿下での密着性に優れる光学易接着性ポリエステルフィルム及び該フィルムにハードコート層を積層してなる光学用積層ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 上記課題に対し、本発明者は塗布層組成に関して鋭意検討を行った結果、所定の屈折率を有する塗布層に平均粒径200nm以上700nm以下という大きな粒子を加えた結果、厚み変動に対しても安定的に干渉斑を抑制できるという驚くべき効果を見いだし、本発明に至った。 【0011】 すなわち、本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂と、屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)と、平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を含有する塗布層を設けた光学用易接着性ポリエステルフィルムである。 また、本発明は前記塗布層に架橋剤を含むことを特徴とした光学用易接着性ポリエステルフィルムである。 また、本発明は、前記架橋剤が尿素系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤から選ばれた少なくとも1種の架橋剤であることを特徴とする光学用易接着性ポリエステルフィルムである。 また、本発明は、前記光学用易接着性ポリエステルフィルムの塗布層の少なくとも片面に、電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂、またはシロキサン系熱硬化性樹脂からなるハードコート層を積層してなる光学用積層ポリエステルフィルムである。」 ウ 【0013】~【0031】 「【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 (ポリエステルフィルム) 本発明で基材として用いるポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂より構成されるフィルムであり、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの少なくとも1種を構成成分とする。これらのポリエステル樹脂の中でも、物性とコストのバランスからポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。また、これらのポリエステルフィルムは二軸延伸することで耐薬品性、耐熱性、機械的強度などを向上させることができる。 (中略) 【0019】 (塗布層) 本発明の光学用易接着性フィルムには、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂と、屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)と、平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を含有する塗布層に設けることが重要である。すなわち、本発明の以下のような達成手段による。 【0020】 (1)塗布層の屈折率制御 本願発明の光学易接着性フィルムは、塗布層の屈折率をハードコート層と基材ポリエステルフィルムとの中間付近に調整する必要がある。ハードコート層に使用する樹脂の組成によって、ハードコート層の屈折率は変動するため、塗布層の屈折率はそれに対応して調整することが望ましく、具体的には塗布層の屈折率を1.6~1.7の範囲に調整する必要がある。このようにすることで各界面屈折率差を小さくし、干渉斑を抑制する。一般に易接着性を有する塗布層では屈折率が低いため(1.50前後)、塗布層の屈折率を上記範囲に制御する為に本願では、塗布層の用いる樹脂を酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂を用い、さらに屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)を添加する。係る構成により密着性を有しながら、屈折率の高い塗布層にすることができる。これらの組成の詳細については後述する。 (中略) 【0024】 本発明は、上記態様により、ハードコート層との密着性、及び高温高湿下での密着性(耐湿熱性)を維持しながら、蛍光灯下での虹彩状色彩を制御できる。さらに、本発明の構成を以下に詳細する。 【0025】 本発明において、易接着層中にポリエステル樹脂を含有させる必要があり、前記ポリエステル樹脂の酸性分として、ナフタレンジカルボン酸を含有させる必要がある。ナフタレンジカルボン酸を含有させることで、屈折率が増加し、蛍光灯下での虹彩状色彩を制御しやすくなる。また、耐湿熱性を向上させることができる。 【0026】 ポリエステル樹脂は水、または、水溶性の有機溶剤(例えば、アルコール、アルキルセルソルブ、ケトン系、エーテル系を50質量%未満含む水溶液)または、有機溶剤(例えば、トルエン、酢酸エチル等)に対して溶解または分散したものが使用できる。 【0027】 ポリエステル樹脂は酸成分として、少なくともナフテレンジカルボン酸を含有させる必要がある。このようなナフテレンジカルボン酸としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましい。ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は酸性分として20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましく、60%以上がよりさらに好ましい。また、ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は酸性分として90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましい。ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は、粒子Aとともに塗布層の屈折率が前述の範囲になるよう適宜調整するが、20%未満であれば粒子Aの添加量が多くなり、密着性が低下する場合がある。また、90%を超える場合は、樹脂の密着性が低下する場合がある。本発明の効果を奏する範囲であれば、ポリエステル樹脂中の酸性分としてさらに、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、4-ナトリウムスルホナフタレン-2,7-ジカルボン酸等を使用しても良い。ジオール成分としては、エチレングリコール、プロパングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。 (中略) 【0031】 本発明において、塗布層中に屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)を含有させる必要がある。このような金属酸化物としては、TiO2(屈折率2.7)、ZnO(屈折率2.0)、Sb2O3(屈折率1.9)、SnO2(屈折率2.1)、ZrO2(屈折率2.4)、Nb2O5(屈折率2.3)、CeO2(屈折率2.2)、Ta2O5(屈折率2.1)、Y2O3(屈折率1.8)、La2O3(屈折率1.9)、In2O3(屈折率2.0)、Cr2O3(屈折率2.5)、及びこれらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。本発明の塗布層には、これらの金属酸化物を少なくとも1種または2種以上を含有する。金属酸化物粒子の屈折率が1.7以上であれば、塗布層の屈折率を前記範囲で調整する点で好ましい。また、金属酸化物粒子の屈折率が3.0以下であればフィルムの透明性を維持する点で好ましい。」 (2) 引用文献7に記載された事項 当審拒絶理由通知書において周知技術を示す文献として引用された、本願出願前に発行された文献である特開2004-54161号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の事項が記載されている。 ア 【特許請求の範囲】 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層が設けられた光学用易接着性ポリエステルフィルムであって、塗布層が高分子バインダーおよび微粒子を含有し、微粒子は平均一次粒子径5~100nm、屈折率1.70~3.00の金属酸化物である、光学用易接着性ポリエステルフィルム。 【請求項2】 高分子バインダーがポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂およびこれらの変性体のいずれかを含有する、請求項1記載の光学用易接着性ポリエステルフィルム。 (中略) 【請求項4】 ポリエステルフィルムを構成するポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン-2,6-ナフタレートである、請求項1記載の光学用易接着性ポリエステルフィルム。」 イ 【0001】~【0008】 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、光学用易接着性ポリエステルフィルムに関し、更に詳しくは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、易接着性塗膜を形成した光学用易接着性ポリエステルフィルムに関する。 【0002】 【従来の技術】 ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの二軸延伸フィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐薬品性を有するため、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、金属板ラミネート用フィルム、ガラスディスプレイ等の表面に貼るフィルム、各種部材の保護用フィルム等の素材として広く用いられている。 【0003】 ポリエステルフィルムは、近年、特に各種光学用フィルムに多く用いられ、液晶表示装置の部材のプリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルムや反射防止用フィルムのベースフィルム、プラズマディスプレイの電磁波シールドフィルム、有機ELディスプレイのベースフィルム、ディスプレイの防爆用ベースフィルム等の用途に用いられている。このような光学用フィルムに用いられるベースフィルムは優れた透明性が要求される。さらにプリズムレンズ層、ハードコート、粘着剤、反射防止処理、スパッタ層等に対する優れた易接着性が要求される。 【0004】 二軸配向のポリエステルフィルムがディスプレイの部材として使用される場合、特に最外層に使用されると、近年の画像のデジタル化による高画質、高精細の映像、表示は外光反射の影響を受けやすく、視認性が悪くなることがある。一般的に外光反射を防ぐには表面に反射防止層を加工することや表面をグレア処理することで行っている。グレア処理では高画質な画像に対応できないため反射防止処理層を表面に加工することが多い。反射防止層は高屈折率と低屈折率層を交互に積層させることで光の干渉現象を利用し外光の反射防止を行う。通常、スパッタリング、ゾルゲルによるウェット加工等を何回か行い、積層体を作成する。高反射防止能にするにはナノメーターオーダーの加工膜の膜厚制御が必要である。異物による表面欠点を嫌うため、クリーン内の工程で実施する必要もあり、高いコストとなり、高価なフィルムとなっている。 【0005】 一方、二軸配向ポリエステルフィルムは一般的に他の材料、例えばアクリル系樹脂を主成分とするプリズムレンズ層やハードコートとの接着性が悪いため、ポリエステルフィルムの表面に、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂やウレタン樹脂等の易接着層を積層して用いることが提案されている(例えば、特開平10-119215号公報、特開2000-246855号公報)。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、これら従来の易接着層では、屈折率が1.50前後に固定されてしまい、反射防止フィルムを設計する際、反射防止能の性能が制限されることがある。 【0007】 本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、透明性、易滑性および耐傷性に優れ、種々の光学用途に用いられる層との接着力に優れながら、さらに優れた反射防止性能を有するポリエステルフィルムを提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】 すなわち、本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層が設けられた光学用易接着性ポリエステルフィルムであって、塗布層が高分子バインダーおよび微粒子を含有し、微粒子は平均一次粒子径5~100nm、屈折率1.70~3.00の金属酸化物である、光学用易接着性ポリエステルフィルムである。」 ウ 【0010】~【0024】 「【0010】 [ポリエステルフィルム] 本発明においてポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン-2,6-ナフタレートを例示することができる。 (中略) 【0016】 [塗布層] 本発明では、上記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層が設けられ、該塗布層が高分子バインダーと微粒子を含有する。そして、該微粒子は平均一次粒子径5~100nm、屈折率1.70~3.00の金属酸化物である。塗布層について説明する。 【0017】 [高分子バインダー] 塗布層を構成する高分子バインダーは、好ましくは、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びこれら樹脂同士の変性体のいずれか一種以上から構成される。高分子バインダーは、水に可溶性または分散性のものが好ましいが、多少の有機溶剤を含有し、水に可溶なものも好ましく用いることができる。 【0018】 [ポリエステル樹脂] ポリエステル樹脂として、下記の多塩基酸成分とジオール成分から得られるポリエステルを用いることができる。すなわち、多価塩基成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6-ナフタレンジカルボン酸、1、4-シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸を例示することができる。 (中略) 【0023】 [微粒子] 塗布層を構成する微粒子は平均一次粒子径が5~100nmである。平均一次粒子径が100nmを超えると光学散乱が発生し、塗布層の透明性が悪くなり、5nm未満であると微粒子同士の凝集が多くなり、二次粒子径が大きくなり、光学散乱が発生し、塗布層の透明性が悪くなることがある。 【0024】 微粒子には、屈折率が1.70~3.00金属酸化物を用いる。屈折率が1.70未満であると高分子バインダーに対する微粒子の体積分率が高くなり塗布層の凝集力が下がる。屈折率が3.00を越えると非常に特殊な物質なり、工業的に用いるのは難しい。微粒子として用いる金属酸化物としては、例えば、酸化アンチモン、酸化イットリウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物やATO、ITOといった、2種以上の金属を含む金属酸化物を例示することができる。これらの金属酸化物を2種以上使用しても良い。」 エ 【0028】~【0033】 「【0028】 [製造方法] 本発明において塗布層の塗設に用いられる上記組成物は、塗布層(以下『塗膜』いうことがある)を形成させるために、水溶液、水分散液或いは乳化液等の水性塗液の形態で使用されることが好ましい。塗膜を形成するために、必要に応じて、前記組成物以外の他の樹脂、例えば帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、架橋剤等を添加することができる。 (中略) 【0033】 塗液の塗布量は、塗膜の厚さが0.01~0.3μm、好ましくは0.02~0.25μmの範囲となるような量であることが好ましい。塗膜の厚さが薄過ぎると、接着力が不足し、逆に厚過ぎると、ブロッキングを起こしたり、ヘイズ値が高くなったりする可能性があり好ましくない。」 (3) 周知技術1の認定 前記(1)及び(2)で示した摘記事項に例示されるように、次に示す事項は、本願の出願前において、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。 [周知技術1] 「ポリエステルフィルムとハードコート層を易接着樹脂層によって接着させてなる光学用フィルムにおいて、虹彩状色彩の抑制、反射防止の観点から、易接着樹脂層の材料として、ナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂と酸化チタン、酸化ジルコニウム等の無機粒子を含む材料を用いること。」 (4) 周知の設計指針1の認定 前記(2)で示した摘記事項に例示されるように、次に示す事項は、本願の出願前において、当業者にとって周知の設計指針であったと認められる(以下「周知の設計指針1」という。)。 [周知の設計指針1] 「ポリエステルフィルムとハードコート層を易接着樹脂層によって接着させてなる光学用フィルムにおいて、易接着性樹脂層の厚みの下限値及び上限値を、易接着性樹脂層の接着力及びブロッキング性の観点から設定すること。」 4 引用文献8に記載された事項及び技術常識2の認定 (1) 引用文献8に記載された事項 当審拒絶理由通知書において技術常識を示す文献として引用された、本願出願前に発行された文献である特開2016-112834号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の事項が記載されている。 ア 【0001】 「【技術分野】 【0001】 本発明は、例えばスマートフォンやタブレット端末などの各種タッチパネルディスプレイの保護フィルムなどとして好適に使用できるハードコートフィルムに関する。」 イ 【0010】、【0020】 「【発明を実施するための形態】 【0010】 本発明のハードコートフィルムは、基材の少なくとも一方の面にハードコート層(X)と表面層(Y)とが順に積層されたハードコートフィルムであって、前記ハードコート層(X)が、加水分解性シリル基またはシラノール基と、ラジカル重合性官能基とを有する化合物(x1)、前記化合物(x1)以外のラジカル重合性化合物(x2)及び重合開始剤を含有するハードコート剤を用いて形成された層であり、前記化合物(x1)が前記ラジカル重合性化合物(x2)及び重合開始剤の合計に対して2.9質量%以上含まれ、かつ、前記ハードコートフィルムの前記表面層(Y)側の面の塑性硬さが1000N/mm2以上であることを特徴とする。 (後略)」 「【0020】 また、前記ハードコートフィルムとしては、透明性の高いものを使用することが、ディスプレイの表面に設置した場合であっても、良好な視認性を確保できるため好ましい。前記ハードコートフィルムの全光線透過率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。」 (2) 技術常識2の認定 前記(1)で示した摘記事項に例示されるように、次に示す事項は、本願の出願前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識2」という。)。 [技術常識2] 「ディスプレイ表面に設置するハードコートフィルムとして、透明性の高いものが要求されること。」 第5 対比・判断 1 対比 (1) 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 ア(ア) 引用発明における「表示装置」は、「折り畳みや丸めることが可能な表示装置」であるから、本願発明における「折りたたみ型ディスプレイ」に相当する。 (イ) したがって、本願発明と引用発明は、「折りたたみ型ディスプレイ」の発明である点において一致する。 イ(ア)a 引用発明においては「少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有することで、該硬化性樹脂層側からの衝撃に対する傷付き抑制効果を高めることが可能であ[る]」から、引用発明における「硬化性樹脂を含有する層」は本願発明における「ハードコート層」に相当する。 b 引用発明における「積層ポリエステルフィルム」は、少なくとも片面に「硬化性樹脂を含有する層」(「ハードコート層」に相当する。)を有するものであるから、本願発明における「ハードコートフィルム」に相当する。 (イ)a 引用発明における「表示装置」は、「積層ポリエステルフィルムと円偏光板を有する表示装置」である。 b また、引用発明は、「表示装置の表面全体に連続した単一の積層ポリエステルフィルムが配されて[いる]」ものである。 c そして、引用発明における「表示装置」は「前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板の厚み合計が120μm以下であり、前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板の厚み合計が120μm以下であることで、表示装置としてのフレキシブル性が高まり、折り畳みや丸めることが可能な表示装置」であるから、積層ポリエステルフィルムが配された表面に折りたたみ部分が存在することは明らかである。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「折りたたみ型ディスプレイの折りたたみ部分を介して連続した単一のハードコートフィルムが配され、 折りたたみ型ディスプレイの表面の少なくとも一部がハードコートフィルムからな[る]」点。 ウ(ア) 引用発明における「積層ポリエステルフィルム」は、「ポリエステルフィルムと、硬化性樹脂を含有する層の間に厚み10nm以上500nm以下である樹脂層を有[する]」ものであるから、「ポリエステルフィルム」上に「樹脂層」と「硬化性樹脂を含有する層」を順に有するものである。 (イ) 引用発明における「樹脂層」は、「樹脂層を有することで、ポリエステルフィルムと硬化性樹脂を含有する層との密着性が向上するものであ[る]」から、本願発明における「易接着樹脂層」に相当する。 (ウ) 前記(ア)(イ)及び前記イ(ア)aより、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「ハードコートフィルムは、ポリエステルフィルム上に易接着樹脂層とハードコート層を順に有[する]」点。 エ(ア) 引用発明は、「表示装置の表面全体に連続した単一の積層ポリエステルフィルムが配されて[いる]」ものである。 (イ) 引用発明における「積層ポリエステルフィルム」は、少なくとも片面に「硬化性樹脂を含有する層」を有するものである。 (ウ) そして、引用発明においては、「少なくとも片面に硬化性樹脂を含有する層を有することで、該硬化性樹脂層側からの衝撃に対する傷付き抑制効果を高めることが可能であ[る]」から、「硬化性樹脂を含有する層」(「ハードコート層」に相当する。)が表示装置の表面側に位置していることは明らかである。 (エ) したがって、前記ア(イ)も踏まえると、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「ハードコート層が折りたたみ型ディスプレイの表面側に位置して[いる]」点。 オ(ア) 引用発明における「ポリエステルフィルム」は、「ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる未延伸フィルムを、逐次二軸延伸方法又は同時二軸延伸方法により延伸を行うことで得られるものであ[る]」から、「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」に相当する。 (イ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「ポリエステルフィルムが、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであ[る]」点。 カ(ア) 引用発明における「ポリエステルフィルム」は、「フィルム厚みは20μm以上50μm以下であ[る]」から、その厚みが10~75μmの範囲内のものである。 (イ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「ポリエステルフィルムの厚みが10~75μmであ[る]」点。 キ(ア)a 引用発明において、「ポリエステルフィルム」の「固有粘度」は「0.69以上0.9dl/g以下」であり、「ポリエステル樹脂およびフィルム」の「極限粘度」は、ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定されるものである。 b 引用発明における「ポリエステルフィルム」は、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなるものである。 c 「固有粘度」と「極限粘度」が同義であることは技術常識であるので、前記a及びbより、引用発明における「ポリエステルフィルム」の「固有粘度」は、オルトクロロフェノール(o-クロロフェノール)の混合溶液を用いて測定したポリエチレンテレフタレートの極限粘度であり、その値は「0.69以上0.9dl/g以下」であると認められる。 (イ) 前記2(2)エにおいて技術常識1として認定したとおり、次に示す事項は技術常識である。 「フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(60/40)によって測定したポリエチレンテレフタレートの極限粘度Y[dl/g]と置き、o-クロロフェノールによって測定したポリエチレンテレフタレートの極限粘度をZ[dl/g]と置くと、両者の換算式として、 Y=1.01Z+0.0257 が成り立つこと。」 (ウ) 前記(ア)及び(イ)より、引用発明における「ポリエステルフィルム」の固有粘度である「0.69以上0.9dl/g以下」を、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(60/40)によって測定したポリエチレンテレフタレートの極限粘度に換算すると、「0.72以上0.93dl/g以下」となり、「0.65~1.0dl/g」の範囲に含まれる。 (エ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒を用いて測定したポリエステルフィルムの極限粘度が0.65~1.0dL/gであ[る]」点。 ク(ア) 前記ウ(イ)において示したとおり、引用発明における「樹脂層」は、本願発明における「易接着樹脂層」に相当する。 (イ) 引用発明における「樹脂層」は、インラインコーティング法により設けられ、ポリエステル系樹脂が用いられるものであって、無機粒子が含有されるものであるから、少なくとも一種の無機粒子と、ポリエステル樹脂を含有する組成物が硬化されてなるものである。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において共通する。 「易接着樹脂層が、少なくとも一種の無機粒子と、ポリエステル樹脂と、を含有する組成物が硬化されてな[る]」点。 ケ(ア) 前記イ(ア)において示したとおり、引用発明における「硬化性樹脂を含有する層」は、本願発明における「ハードコート層」に相当する。 (イ) 引用発明における「硬化性樹脂」は、多官能アクリレート系の樹脂であるから、「アクリル樹脂」に相当する。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「ハードコート層がアクリル樹脂を含有する組成物からな[る]」点。 コ(ア) 引用発明における「硬化性樹脂を含有する層」は、「厚みが1~20μmである」ので、厚みが1~40μmの範囲に含まれるものである。 (イ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「ハードコート層の厚みが1~40μmであ[る]」点。 (2) 一致点及び相違点の認定 前記(1)の対比分析の結果を総合すると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ、次のア及びイに示すとおりである。 ア 一致点 「 折りたたみ型ディスプレイであって、 折りたたみ型ディスプレイの折りたたみ部分を介して連続した単一のハードコートフィルムが配され、 折りたたみ型ディスプレイの表面の少なくとも一部がハードコートフィルムからなり、 ハードコートフィルムは、ポリエステルフィルム上に易接着樹脂層とハードコート層を順に有し、 ハードコート層が折りたたみ型ディスプレイの表面側に位置しており、 ポリエステルフィルムが、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、 ポリエステルフィルムの厚みが10~75μmであり、 フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒を用いて測定したポリエステルフィルムの極限粘度が0.65~1.0dL/gであり、 易接着樹脂層が、少なくとも一種の無機粒子と、ポリエステル樹脂と、を含有する組成物が硬化されてなり、 ハードコート層がアクリル樹脂を含有する組成物からなり、 ハードコート層の厚みが1~40μmである」点。 イ 相違点 (ア) 相違点1 本願発明が、「折りたたんだ際の屈曲半径が5mm以下である折りたたみ型ディスプレイ」であるのに対し、 引用発明は、「折りたたみ型ディスプレイ」ではあるが、折りたたんだ際の屈曲半径について明示の特定はない点。 (イ) 相違点2 少なくとも一種の無機粒子と、ポリエステル樹脂とを含有する組成物が硬化されてなる易接着樹脂層について、 本願発明においては、 ポリエステル樹脂が、「ジカルボン酸成分の一部としてナフタレンジカルボン酸を含んでな[る]」ことの限定があり、 少なくとも一種の無機粒子が、「二酸化チタンよりなるチタニア粒子、二酸化ジルコニウムよりなるジルコニア粒子から選ばれる少なくとも一種の粒子」であり、 「厚みが0.03~0.20g/m2」であるのに対して、 引用発明においては、 ポリエステル系樹脂がジカルボン酸成分の一部としてナフタレンジカルボン酸を含んでなることの限定はなく、 少なくとも一種の無機粒子が、「シリカ、アルミナ、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、チタンなどであり」、 「厚みが10nm以上500nm以下」である点。 (ウ) 相違点3 本願発明においては、「ハードコートフィルムの全光線透過率が85%以上」であるのに対し、 引用発明では、積層ポリエステルフィルムの全光線透過率について特定されていない点。 2 判断 (1) 相違点1について ア 引用発明は、「積層ポリエステルフィルムと円偏光板を有する表示装置」であって、「前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板の厚み合計が120μm以下であり、前記積層ポリエステルフィルムと円偏光板の厚み合計が120μm以下であることで、表示装置としてのフレキシブル性が高まり、折り畳みや丸めることが可能な表示装置」である。 イ 引用文献1の段落【0047】には、耐屈曲性試験において積層ポリエステルフィルムに円偏光板を貼り合わせたサンプルをU字伸縮試験器を用いて面間距離3mm(屈曲半径1.5mmに相当する)にて10000回屈曲して判定を行うことが記載されている。 ウ 前記イより、引用文献1において、「積層ポリエステルフィルム」と「円偏光板」を貼り合わせたサンプルの耐屈曲性試験を屈曲半径1.5mmで行っていることから、引用文献1における「積層ポリエステルフィルム」及び「円偏光板」を有する表示装置であって、折り畳みや丸めることが可能な表示装置は、屈曲半径1.5mmに近い状態で折りたたむことが当然想定されており、少なくとも屈曲半径5mmで折りたたみ可能なものであると認められる。 エ したがって、相違点1に係る本願発明の構成は、実質的な相違点でなく、少なくとも、当業者には極めて自明の設計事項にすぎない。 (2) 相違点2について ア(ア) 前記第4の3(3)において周知技術1として認定したとおり、次に示す事項は周知技術である。 「ポリエステルフィルムとハードコート層を易接着樹脂層によって接着させてなる光学用フィルムにおいて、虹彩状色彩の抑制、反射防止の観点から、易接着樹脂層の材料として、ナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂と酸化チタン、酸化ジルコニウム等の無機粒子を含む材料を用いること。」 (イ) 引用発明における「積層ポリエステルフィルム」は、「ポリエステルフィルム」と、「硬化性樹脂を含有する層」(「ハードコート層」に相当する。)の間に「樹脂層」(「易接着樹脂層」に相当する。)を有するものであるから、ポリエステルフィルムとハードコート層を易接着樹脂層によって接着させてなる光学用フィルムに相当する。 (ウ) したがって、引用発明における「積層ポリエステルフィルム」に対し、虹彩状色彩の抑制、反射防止の観点から前記周知技術1を適用し、「樹脂層」(「易接着樹脂層」に相当する。)の材料として、ナフタレンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂と酸化チタン、酸化ジルコニウム等の無機粒子を含む材料を用いるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 イ(ア) 引用文献1の段落【0023】には、「樹脂層」の易滑性や耐ブロッキング性を向上させることが記載されていることから、引用発明において、「樹脂層」のブロッキング性は、当然考慮すべき特性であるといえる。 (イ) 前記第4の3(4)において周知の設計指針1として認定したとおり、次に示す事項は周知の設計指針である。 「ポリエステルフィルムとハードコート層を易接着樹脂層によって接着させてなる光学用フィルムにおいて、易接着性樹脂層の厚みの下限値及び上限値を、易接着性樹脂層の接着力及びブロッキング性の観点から設定すること。」 (ウ) 前記(ア)及び(イ)より、引用発明において、「樹脂層」の厚みの下限値及び上限値を、易接着性樹脂層の接着力及びブロッキング性の観点から設定することは、当業者にとって当然の設計指針であり、その厚みを0.03~0.20g/m2とすることは、当業者が適宜設定し得る設計事項である。 ウ したがって、前記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。 (3) 相違点3について ア 前記第4の4(2)において技術常識2として認定したとおり、次に示す事項は技術常識である。 「ディスプレイ表面に設置するハードコートフィルムとして、透明性の高いものが要求されること。」 イ したがって、引用発明において、積層ポリエステルフィルムの全光線透過率を高めることは、当業者にとって自明の設計指針であり、全光線透過率を85%以上とすることによって相違点3に係る構成を備えるようにすることは、当業者が適宜設定し得ることにすぎない。 (4) 総合評価 前記(1)~(3)において検討したとおり、相違点1は実質的な相違点ではなく、相違点2及び相違点3に係る本願発明の構成は、いずれも当業者が容易に想到し得たものであるから、相違点1から相違点3は、いずれも格別のものではない。 そして、相違点1から相違点3を総合的に勘案しても、本願発明の奏する効果としては、当業者にとって予測困難であり、かつ、格別顕著なものを認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 請求人の主張について (1) 意見書の主張内容 請求人は意見書において、本願発明が進歩性を有する根拠として、次のア~ウの点を主張している。 ア 請求人の主張1 (ア) 引用文献1、6、7は、次の構成を開示していない。 「折りたたみ型ディスプレイの折りたたみ部分を介して連続した単一のハードコートフィルムが配され、 折りたたみ型ディスプレイの表面の少なくとも一部がハードコートフィルムからなる」構成 (イ) 本願発明は、ディスプレイ折りたたみに対する強さ(耐屈曲性、鉛筆硬度)を、厚み10~75μmで極限粘度0.65~1.0dL/gの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ハードコートフィルム)の幅方向をディスプレイ折りたたみ部の方向に、同フィルムの縦方向をディスプレイの屈曲方向に設定することで、達成しており、引用文献1の開示内容から前記構成が自明とまではいえない。 イ 請求人の主張2 引用文献1には樹脂層(本願発明の易接着樹脂層に対応)に関して、虹彩状色彩(干渉斑)の抑制が全く記載・考慮されていない。引用文献1の段落0023には、この樹脂層に関して易滑性や耐ブロッキング性を向上させるための粒子の一例としてチタンが記載されているにすぎない。 ウ 請求人の主張3 引用文献1には、積層ポリエステルフィルムの全光線透過率について何ら記載されていない。 (2) 請求人の主張に対する当審の判断 ア 請求人の主張1について 引用文献1の記載から「折りたたみ型ディスプレイの折りたたみ部分を介して連続した単一のハードコートフィルムが配され」、「折りたたみ型ディスプレイの表面の少なくとも一部がハードコートフィルムからなる」構成が認識できることは、前記第5の1(1)イにおいて示したとおりである。したがって、請求人の主張1は採用できない。 なお、「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ハードコートフィルム)の幅方向をディスプレイ折りたたみ部の方向に、同フィルムの縦方向をディスプレイの屈曲方向に設定すること」は、本願発明において特定されていない技術事項であり、請求人の前記主張1のうち(イ)の主張は、本願発明の構成に基づかない主張であるから、採用できない。 イ 請求人の主張2について 請求人の主張2は相違点2についてのものであるところ、相違点2が周知技術1及び周知の設計指針1に基づいて当業者が容易に想到し得たことは前記2(2)において示したとおりであるから、請求人の主張2は前記2(4)の結論を左右するものではない。 ウ 請求人の主張3について 請求人の主張3は相違点3についてのものであるところ、相違点3が技術常識2に基づいて当業者が容易に想到し得たことは前記2(3)において示したとおりであるから、請求人の主張3は前記2(4)の結論を左右するものではない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術1、周知の設計指針1及び技術常識2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-016972

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    共通の審決分類: 121・G09F、536・G09F、537・G09F
  • 2022-004529拒絶査定不服審判 / 2023-05-10 / 請求不成立折りたたみ型ディスプレイ及び携帯端末機器
    共通の審決分類: 121・G09F、536・G09F、537・G09F

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