特許拒絶査定不服審判
2022-016240
使用済燃料貯蔵容器の閉じ込め機能確認装置
- 審判番号
- 2022-016240
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-021669
- 請求日
- 2022年10月12日
- 審決日
- 2023年08月17日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人開知
- 審判長/審判官
- 審判長 波多江 進
- 審判官 松川 直樹
- 審判官 吉野 三寛
- 分類
- P18 .575-Z (G21F) / P18 .121-Z (G21F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-21669号「使用済燃料貯蔵容器の閉じ込め機能確認装置」拒絶査定不服審判事件〔令和2年8月27日出願公開、特開2020-128920号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年2月8日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年11月29日付け:拒絶理由通知書
令和4年 1月17日 :意見書、手続補正書の提出
同年 4月 1日付け:拒絶理由(最後)通知書
同年 5月31日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月 4日付け:補正の却下の決定、拒絶査定(以下「原査定
」という。)
(同月12日 :原査定の謄本の送達)
同年10月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年10月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年10月12日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和4年10月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についての補正を含むものであって、本件補正前(令和4年1月17日にされた手続補正後をいう。)の特許請求の範囲の請求項1及び本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ次の(1)及び(2)に示すとおりである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
内部に放射性物質を収納して貯蔵する使用済燃料貯蔵容器の閉じ込め機能を確認するための装置であって、
前記使用済燃料貯蔵容器は、その開口部にそれぞれガスケットによってシールされた二重の蓋が取り付けられた構造となっており、
前記閉じ込め機能確認装置は、
前記二重の蓋の間に設けられた蓋間空間のガスの圧力を測定する圧力計と、
前記圧力計と前記蓋間空間とを連絡させる延長配管と、
前記延長配管を覆う断熱材と、を備え、
前記圧力計は、前記使用済燃料貯蔵容器の設置面に設置されており、
前記延長配管の容積を、前記蓋間空間の容積に比べて1%以下と小さくする
ことを特徴とする閉じ込め機能確認装置。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
内部に放射性物質を収納して貯蔵する使用済燃料貯蔵容器の閉じ込め機能を確認するための装置であって、
前記使用済燃料貯蔵容器は、その開口部にそれぞれガスケットによってシールされた二重の蓋が取り付けられた構造となっており、
前記閉じ込め機能確認装置は、
前記二重の蓋の間に設けられた蓋間空間のガスの圧力を測定する圧力計と、
前記圧力計と前記蓋間空間とを連絡させるよう常設された延長配管と、
前記延長配管を覆う断熱材と、を備え、
前記圧力計は、前記使用済燃料貯蔵容器の設置面に設置されており、
前記延長配管の容積を、前記蓋間空間の容積に比べて1%以下と小さくする
ことを特徴とする閉じ込め機能確認装置。」
2 本件補正の適否についての当審の判断
(1) 本件補正の目的について
ア 本件補正で請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1の、圧力計と蓋間空間とを連絡させる延長配管について、「常設された」ものに限定する補正事項を含むものである。
イ そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
ウ したがって、本件補正で請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
(2) 独立特許要件について
前記(1)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
ア 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
イ 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
a 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に発行された特開2011-196715号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当合議体が付したものである。以下同じ。)
(a) 特許請求の範囲
「【請求項1】
核燃料が収納される貯蔵室を有するキャスク本体の上部開口部に蓋間空間部を有する核燃料貯蔵用のキャスクと、前記蓋間空間部の圧力を計測する圧力計を備えた核燃料貯蔵施設における保安監視設備であって、
前記蓋間空間部の近くに1次バルブと、前記圧力計の近くに2次バルブを備え、
前記1次バルブと前記2次バルブが導管により接続されることによって前記蓋間空間部の圧力を前記圧力計に導圧する導圧路が形成された保安監視設備。」
(b) 技術分野及び背景技術
「【技術分野】
【0001】
本発明は核燃料貯蔵施設における保安監視設備に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みの核燃料を乾式の貯蔵容器を用いて貯蔵する場合、例えばキャスクと呼ばれる金属製の貯蔵施設が用いられる。核燃料が安全に貯蔵されていることを十分に監視する必要があるため、例えば、特開2002-116294号公報(特許文献1)や特開2003-156590号公報(特許文献2)、特開2004-294066号公報(特許文献3)に開示された核燃料貯蔵施設では、キャスクの内部圧力の変化を監視するシステムが採用されている。
【0003】
図3は内部圧力の変化が監視されるキャスクの一例を示す概略的断面構造図である。キャスク1は、上部に開口を有し、核燃料が収納される貯蔵室11を形成するキャスク本体10と、前記開口を塞ぐ第1の蓋体12と、さらに第1の蓋体12の上部を覆う第2の蓋体13を備える。第1の蓋体12の上面に形成された凹部15と第2の蓋体13の底面とによって、第1の蓋体12と第2の蓋体13の間に蓋間空間部14が形成されている。核燃料が封入された貯蔵室11内の大気は不活性ガスで置換され、大気圧よりも減圧状態に維持される。蓋間空間部14は不活性ガスで大気圧よりも高圧に加圧され、蓋間空間部14の圧力は蓋間空間部14に設置された圧力計2によって監視される。」
(c) 実施例1
「【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の核燃料貯蔵施設における保安監視設備の一例を示す説明図である。本発明の保安監視設備は、核燃料、特に使用済みの核燃料を貯蔵する施設の保安監視のために使用される。核燃料貯蔵施設は一般的にキャスク1と呼ばれ、従来から用いられているキャスク1とほぼ同様な構造を有する。このキャスク1は、上部に開口を有し、核燃料を収納・保管するための貯蔵室11を形成するキャスク本体10と、前記開口を塞ぐ第1の蓋体12と、さらに第1の蓋体12の上部を覆う第2の蓋体13を備える。このキャスク1は、第1の蓋体12に形成された凹部15と第2の蓋体13の底面とから形成された蓋間空間部14を有している。核燃料が貯蔵された貯蔵室11内の大気は不活性ガスで置換され、大気圧よりも減圧状態に維持される。蓋間空間部14は不活性ガスで大気圧よりも高圧に加圧されている。
【0015】
第2の蓋体13の上面には凹所18が形成されている。当該凹所18内には、蓋間空間部14から引き出された配管19に接続された1次バルブ16と、その近くにて前記1次バルブ16に接続されたカプラー17が設置されている。圧力計2はキャスク1から離れた位置、具体的には作業の安全が確保される地上や放射線量が極めて少なく、被ばくの可能性がほとんどない環境下、例えば放射線管理区域外に設置され、そのキャスク1側に2次バルブ22が接続されている。2次バルブ22とカプラー17の間は導管21により気密的に接続されることによって、蓋間空間部14の圧力を圧力計2に伝える導圧路20が蓋間空間部14と圧力計2の間に形成されている。また、導圧路20の末端には終末カプラー23が設置されている。
【0016】
この保安監視設備においては、キャスク1の近くに1次バルブ16が設置されているので、蓋間空間部14を加圧した状態で圧力計2の設置場所を自由に変えることができる。従って、貯蔵設備を管理する建物などの設備環境を容易に改修できる。また、圧力計2はキャスク1から離れた位置に設置される。それに加えて、圧力計2の近くには2次バルブ22が設置されているので、2次バルブ22を閉じることによって圧力計2の校正や交換など、圧力計2の保守点検作業が行える。これらのために、作業者はキャスク1に近づくことなく安全に圧力計2の保守点検が行える。また、放射線管理区域外での作業が行えるので、作業時間にとらわれず確実な保守点検作業を行うことができる。」
(d) 図1及び図3
[図:0001403388000001.jpg]
[図:0001403388000002.jpg]
b 引用文献から読み取れる事項の認定
前記 (b)で摘記した【0002】の「核燃料が安全に貯蔵されていることを十分に監視する」との記載は背景技術についての記載であるが、前記a(c)で摘記した【0014】の「核燃料貯蔵施設は一般的にキャスク1と呼ばれ、従来から用いられているキャスク1とほぼ同様な構造を有する」との記載から見て、前記a(c)に記載されているキャスク1についても妥当する記載であることは明らかである。
c 引用発明の認定
前記aに摘記した引用文献1の記載事項及び前記bで認定した事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(なお、認定の根拠となる段落を参考までに括弧内に付してある。)
<引用発明>
「核燃料が収納される貯蔵室を有するキャスク本体の上部開口部に蓋間空間部を有する核燃料貯蔵用のキャスクと、前記蓋間空間部の圧力を計測する圧力計を備えた核燃料貯蔵施設における保安監視設備であって、
前記蓋間空間部の近くに1次バルブと、前記圧力計の近くに2次バルブを備え、
前記1次バルブと前記2次バルブが導管により接続されることによって前記蓋間空間部の圧力を前記圧力計に導圧する導圧路が形成され、(【請求項1】)、
使用済みの核燃料を貯蔵する施設の保安監視のために使用され(【0014】)、
前記キャスクは、上部に開口を有し、核燃料を収納・保管するための貯蔵室を形成するキャスク本体と、前記開口を塞ぐ第1の蓋体と、さらに第1の蓋体の上部を覆う第2の蓋体を備え、前記第1の蓋体に形成された凹部と前記第2の蓋体の底面とから形成された蓋間空間部を有し、核燃料が貯蔵された貯蔵室内の大気は不活性ガスで置換され、大気圧よりも減圧状態に維持され、前記蓋間空間部は不活性ガスで大気圧よりも高圧に加圧され(【0014】)、
前記第2の蓋体の上面には凹所が形成され、当該凹所内には、前記蓋間空間部から引き出された配管に接続された1次バルブと、その近くにて前記1次バルブに接続されたカプラーが設置され、前記圧力計はキャスクから離れた、作業の安全が確保される地上に設置され、そのキャスク側に2次バルブが接続され、前記2次バルブと前記カプラーの間は導管により気密的に接続されることによって、蓋間空間部の圧力を圧力計に伝える導圧路が蓋間空間部と圧力計の間に形成され、前記導圧路の末端には終末カプラーが設置され(【0015】)、
前記圧力計の近くには前記2次バルブが設置されているので、2次バルブを閉じることによって圧力計の校正や交換など、圧力計の保守点検作業が行え(【0016】)、
核燃料が安全に貯蔵されていることを十分に監視する(前記b)、
保安監視設備。」
(イ) 引用文献2~4に記載された事項及び周知技術の認定
a 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に発行された特開2003-130625号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、断熱された計装導圧配管の肉厚管理方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、最外部に板金を有する断熱材で被覆された計装導圧配管の肉厚管理方法であって、運転中においてプロセスに影響を与えず安全に作業でき、さらに正確な測定を行うことができ、よって実用的観点から特に優れた断熱された計装導圧配管の肉厚管理方法に関するものである。
【0002】なお、計装導圧配管とは、化学プラント、製鉄所等の工場等において多用されており、製造プロセスの流量、圧力および液面等の測定のため、プロセス流体を計器に導くために用いられている配管である。
【0003】
【従来の技術】計装導圧配管は、通常、最外部に板金を有する断熱材で被覆されており、材質としては炭素鋼等が用いられている。該配管は屋外に設けられることが多く、雨水等の侵入により外面が腐食される。従って、定期的に腐食の進行を点検し、必要に応じて、修理したり、更新したりする必要がある。」
b 引用文献3に記載された事項
本審決において新たに引用される、本願の出願前に発行された特開2008-170292号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0011】
貯留タンク10の側面には、2つの導圧管18A,18Bが上下に距離Hだけ離間して設けられている。これらの導圧管18A,18Bも、必要に応じて断熱材20によって被覆されて、保温されている。導圧管18A,18Bの内径は、内部で気化したガスの気泡が容易に移動しない程度に小さいことが必要で、例えば10mm以下であることが好ましい。それぞれの導圧管18A,18Bの先端には圧力計22A,22Bが設けられている。圧力計22A,22Bとしては、市販の適宜のものが採用可能であるが、例えば、セラミックの変形に伴う静電容量値の変化を検出するもの、金属製ダイアフラムの変形に伴う抵抗値の変化を検出するもの等が挙げられる。」
c 引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に発行された実願昭56-77480号(実開昭57-190444号)のマイクロフィルム(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。
「本考案は、このような従来のシールダイアフラム付差圧伝送器の欠点を除くためになされたもので、外側のフレキシブルチユーブと内側の導圧管との間の空間に断熱材を封入して外気と遮断した構造のキャピラリーチューブを使用することにより、周囲温度の急変に対して、キャピラリーチューブ内の封入液の体積変化の応答を極めて遅くすることにより、過渡的な温度変動による誤差の少ない安定したシールダイアフラム付差圧伝送器を提供するものである。」(5頁13行~6頁2行)
「〔1〕外気の短時間の温度変動(風による冷却や、直射日光が当ったり、当らなかったりすることによる温度変動)に対して、キャピラリーチューブ内の封入液の体積が変化しないことにより、差圧伝送器の出力変動が無くなる。」(7頁14~19行)
「また、本考案はシールダイアプラム付差圧伝送器に限らず、シールダイアフラム付圧力伝送器にも実施することができる。」(8頁12~14行)
d 周知技術の認定
前記a~cで例示した引用文献2~4の記載によれば、次の内容は本願出願日における周知技術と認められる。
<周知技術>
「流体を圧力計に導く導圧管を断熱材で覆うこと。」
(ウ) 引用文献5に記載された事項及び引用文献5技術事項の認定
a 引用文献5に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に発行された特開平5-180720号公報(以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の缶内圧測定装置では、加熱殺菌処理中の缶を途中でサンプリングして測定するようにしなければならず、サンプリング作業が煩雑で面倒であるとともに、缶内の内圧を連続的に測定することできず、内圧の最大値のようなデータが得られず、測定結果の利用価値が低かった。さらに、測定装置として例えばブルドン管圧力計のようなものを用いた場合には測定部の体積が、サンプルの缶の上部に形成された空間の体積(ヘッドスペース)(通常、17~24ml)に対して、5~6mlと大きく、測定値が実際の内圧よりも低く検出されるといった問題がある。」
「【0021】図1に示すように、缶本体2の外側面には、内部に図示しない圧力感知部を備えた圧力測定器6がゴムバンド7により固定されている。この圧力測定器6からは前記圧力感知部に連通した細いゴム管8が引き出されている。このゴム管8の先端には先端が先鋭とされた細い中空状の針9が取り付けられている。前記針9及びゴム管8の内容積の総和は、約0.7mlとなっている。前記内容積の総和は、サンプル缶の上部に形成された空間(ヘッドスペース)の体積の10%以下であればよい。なお、前記ヘッドスペースの体積は、350ml缶で24~25ml、250ml缶で16~17mlとなっている。」
「【0023】そして、図1に示すように、この針9は、缶本体2に蓋体3を密封して取り付けた後に、前記盲栓5を貫通してサンプル缶の内部に差し込まれ、これによりサンプル缶の内部と圧力感知部との連通が図られる。なお、前記盲栓5、ゴム管8、針9は本発明の圧力導入部を構成する。」
「【0031】また、本実施例によれば、缶のヘッドスペースと圧力測定器6の圧力感知部とが微小な体積の内容積の針9及びゴム管8とにより接続しているので、従来においてブルドン管圧力測定器を用いた測定のように測定圧力が実際の圧力値より小さくなるといったこともなく、内圧を正確に測定することができる。」
b 引用文献5技術事項の認定
前記aで摘記した引用文献5の記載事項を総合すると、引用文献5には、次の技術事項(以下「引用文献5技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献5技術事項>
「缶内圧測定装置としてブルドン管圧力計のようなものを用いた場合に、缶内圧測定装置の測定部の体積が、サンプルの缶の上部に形成された空間の体積(ヘッドスペース)に対して大きい場合は、測定値が実際の内圧よりも低く検出される(【0004】)ため、缶本体と圧力感知部を連通するゴム管及びゴム管の先端に取り付けられた針の内容積の総和をサンプル缶の上部に形成された空間(ヘッドスペース)の体積の10%以下(【0021】)として、缶のヘッドスペースと圧力感知部とが微小な体積の内容積の針と及びゴム管とにより接続しているので、内圧を正確に測定できるようにすること(【0031】)。」
ウ 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
a 引用発明の「保安監視設備」は、「核燃料が収納される貯蔵室を有するキャスク本体の上部開口部に蓋間空間部を有する核燃料貯蔵用のキャスクと、前記蓋間空間部の圧力を計測する圧力計を備えた核燃料貯蔵施設における」ものであり、「使用済みの核燃料を貯蔵する施設の保安監視のために使用され[る]」ものであるから、使用済みの核燃料が収納される貯蔵室を有するキャスク本体の閉じ込め機能を確認するものであるといえる。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「内部に放射性物質を収納して貯蔵する使用済燃料貯蔵容器の閉じ込め機能を確認するための装置であ[る]」「閉じ込め機能確認装置」である点で一致する。
b 引用発明の「キャスク」は、「上部に開口を有し、核燃料を収納・保管するための貯蔵室を形成するキャスク本体と、前記開口を塞ぐ第1の蓋体と、さらに第1の蓋体の上部を覆う第2の蓋体を備え[る]」ものであって、「使用済みの核燃料を貯蔵する施設」に用いられるものである。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記使用済燃料貯蔵容器は、その開口部に二重の蓋が取り付けられた構造となって[いる]」点で共通する。
c 引用発明の「圧力計」は、「前記蓋間空間部の圧力を計測する」ものであって、当該「蓋間空間部」は、「前記第1の蓋体に形成された凹部と前記第2の蓋体の底面とから形成された」ものであり、「不活性ガスで大気圧よりも高圧に加圧され[た]」ものである。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「二重の蓋の間に設けられた蓋間空間のガスの圧力を測定する圧力計」を備える点で一致する。
d(a) 引用発明の「導圧路」は、「蓋間空間部の圧力を圧力計に伝える」ものであるから、本件補正発明でいう「前記圧力計と前記蓋間空間とを連絡させる」ものであるといえる。
(b) また、核燃料が安全に貯蔵されていることを十分に監視するために、蓋間空間部の圧力の計測は常時行われる必要があることは技術常識であるから、そのための「導圧路」は本件補正発明でいう「常設された」ものであることは明らかである。
(c) また、引用発明の「導圧路」は、「前記蓋間空間部から引き出された配管に接続された1次バルブと、その近くにて前記1次バルブに接続されたカプラーが設置され、前記圧力計はキャスクから離れた、作業の安全が確保される地上に設置され、そのキャスク側に2次バルブが接続され、前記2次バルブと前記カプラーの間は導管により気密的に接続されることによって」形成されるものであるから、本件補正発明でいう「延長配管」であるといえる。
(d) 前記(a)~(c)をまとめると、本件補正発明と引用発明は、「前記圧力計と前記蓋間空間とを連絡させるよう常設された延長配管」を備える点で一致する。
e 引用発明ではキャスクの設置場所を特定しないが、通常キャスクは地上に設置されているから、引用発明の圧力計が設置される「地上」は、本件補正発明の、「使用済燃料貯蔵容器の設置面」に相当する。そして、引用発明の「圧力計」は、「キャスクから離れた、作業の安全が確保される地上に設置され[て]」いるから、本件補正発明と引用発明は、「前記圧力計は、使用済燃料貯蔵容器の設置面に設置されて[いる]」点で一致する。
(イ) 一致点及び相違点
前記(ア)の対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のa及びbに示すとおりである。
a 一致点
「内部に放射性物質を収納して貯蔵する使用済燃料貯蔵容器の閉じ込め機能を確認するための装置であって、
前記使用済燃料貯蔵容器は、その開口部に二重の蓋が取り付けられた構造となっており、
前記閉じ込め機能確認装置は、
前記二重の蓋の間に設けられた蓋間空間のガスの圧力を測定する圧力計と、
前記圧力計と前記蓋間空間とを連絡させるよう常設された延長配管と、を備え、
前記圧力計は、前記使用済燃料貯蔵容器の設置面に設置されている、
閉じ込め機能確認装置。」
b 相違点
(a) 相違点1
使用済燃料貯蔵容器の二重の蓋が、本件補正発明はそれぞれガスケットによってシールされているのに対して、引用発明はガスケットによってシールされているのか明らかではない点。
(b) 相違点2
延長配管が、本件補正発明は、「断熱材」で「覆」われているのに対して、引用発明は断熱材で覆うとはされない点。
(c) 相違点3
本件補正発明は、「延長配管の容積を、前記蓋間空間の容積に比べて1%以下と小さくする」ものであるのに対して、引用発明は導圧路の容積が不明である点。
エ 判断
(ア) 相違点についての判断
前記相違点について検討する。
a 相違点1について
引用文献1には、第1の蓋体及び第2の蓋体と使用済燃料貯蔵容器をガスケットによってシールするとは明記されていないが、「前記第1の蓋体に形成された凹部と前記第2の蓋体の底面とから形成された蓋間空間部」は、「不活性ガスで大気圧よりも高圧に加圧され」ているから、第1の蓋体及び第2の蓋体はいずれも蓋間空間部の高圧を維持する機能を有することは明らかであり、また、そのような高圧を維持する機構としてガスケットは例を挙げるまでもなく周知の技術的手段にすぎないから、第1の蓋体及び第2の蓋体と使用済燃料貯蔵容器は、それぞれガスケットによってシールされていると認められ、また、そうでないとしても、第1の蓋体及び第2の蓋体と使用済燃料貯蔵容器をガスケットによってシールすることは、当業者が容易になし得たことである。
b 相違点2について
引用発明の「導圧路」は屋外に設置されるものであることは明らかであるところ、屋外に設置されれば直射日光や風雨にさらされ、この結果、導圧路の温度が変動するおそれがあること、また、導圧路の温度が変動して蓋間空間の温度と異なる温度となれば、蓋間空間の圧力が正確に測定できないおそれがあることは、当業者が自明の課題として認識し得ることである。
そして、前記イ(イ)のとおり、流体を圧力計に導く導圧管を断熱材で覆うことは周知技術であるから、前記自明の課題に鑑みて、引用発明の圧力計と蓋間空間部とを連絡する導圧路を断熱材で覆うことは、当業者が容易になし得たことである。
c 相違点3について
まず、本件補正発明の相違点3に係る「延長配管の容積を、前記蓋間空間の容積に比べて1%以下と小さくする」との発明特定事項の技術上の意義について明細書の記載を参酌すると、「蓋間空間6と圧力計7を繋いだ内側配管11の容積を蓋間空間6の容積に比べて小さくすることが望ましい。例えば、蓋間空間6に比して1%以下にすることが望ましい。これにより、蓋間空間6と圧力計7を繋いだ配管8を延長したことによる蓋間空間6の容積への影響を極力小さくし、蓋間空間6からのガスの漏えい量を計算するときの誤差を小さくすることが望ましい。」(【0043】)との記載のとおり、蓋間空間と圧力計を繋いだ配管を延長したことによる蓋間空間の容積への影響を極力小さくすることである。
そして、引用文献5には、「缶内圧測定装置としてブルドン管圧力計のようなものを用いた場合に、缶内圧測定装置の測定部の体積が、サンプルの缶の上部に形成された空間の体積(ヘッドスペース)に対して大きい場合は、測定値が実際の内圧よりも低く検出されるため、缶本体と圧力感知部を連通するゴム管及びゴム管の先端に取り付けられた針内容積の総和をサンプル缶の上部に形成された空間(ヘッドスペース)の体積の10%以下として、缶のヘッドスペースと圧力感知部とが微小な体積の内容積の針と及びゴム管とにより接続しているので、内圧を正確に測定できるようにすること。」(引用文献5技術事項)が記載されているところ、測定部の体積が圧力の被測定空間に対して大きい場合に測定値が実際の内圧よりも低く検出されるという課題は、引用発明の圧力計の導圧路の体積がキャスク本体の蓋間空間部の体積に対して大きい場合にも当然生じる課題であることは当業者には明らかである。
また、引用文献5の測定装置は「ブルドン管圧力計のようなもの」であるが、ブルドン管圧力計は原子力プラントやキャスクで用いる圧力計として一般的なものであって、引用発明の圧力計2にもブルドン管圧力計のような測定部の体積を有する圧力計を用いることは十分想定されるから、引用文献5技術事項を引用発明に適用する動機は十分にあるといえる。
よって、引用発明において、引用文献5技術事項を参酌して、蓋間空間部の圧力の測定値が実際の圧力よりも低く検出されることがないように、導圧路を構成する配管及び導管の内容積の総和を蓋間空間部の体積に対して小さくすることは当業者が容易に想到し得ることである。
また、その際に、導圧路を構成する配管及び導管の内容積の総和の蓋間空間部の体積に対する割合が小さいほど測定値に対する影響が少なくなることは自明のことであるから、当該割合をどの程度とするかは、蓋間空間部の体積や導圧路の長さ、測定値の精度を考慮して当業者が適宜決定すべき設計的事項にすぎない。
したがって、引用発明に引用文献5技術事項を適用して、本件補正発明に係る相違点3の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。
e 総合検討
前記相違点1~3を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果としては、引用発明及び周知技術からは予測困難な効果、又は、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献5技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ) 請求人の主張について
a 請求人の主張
請求人は、審判請求書において概略以下の主張をしている。
本件補正発明は延長配管による外気に面する表面積や、測定したい蓋間空間に存在するガスに対して延長配管内のガス量が大きくなることから、温度変化による影響及び蓋間空間と延長配管内のガス温度差の影響を小さくするために体積を小さくするのに対して、引用文献5は、容積変化を抑えるために圧力導入部を微小容積にしているのではなく、圧力測定器を搭載したサンプル缶を通常製品と同じ製造ラインに乗せるために微小容積にしているのであるから、測定対象部の容積変化が生じないように測定するために、保安監視設備の発明である引用発明に引用文献5技術事項を適用することには阻害要因がある。
b 請求人の主張についての検討
審判請求書における請求人の主張について検討する。
前記(ア)で述べたとおり、引用文献5には、「缶内圧測定装置としてブルドン管圧力計のようなものを用いた場合に、缶内圧測定装置の測定部の体積が、サンプルの缶の上部に形成された空間の体積(ヘッドスペース)に対して大きい場合は、測定値が実際の内圧よりも低く検出されるため、缶本体と圧力感知部を連通するゴム缶及びゴム管の先端に取り付けられた針の内容積の総和をサンプル缶の上部に形成された空間(ヘッドスペース)の体積の10%以下として、缶のヘッドスペースと圧力感知部とが微小な体積の内容積の針と及びゴム管とにより接続しているので、内圧を正確に測定できるようにすること。」(引用文献5技術事項)が記載されており、測定部の体積を缶の上部に形成された空間の体積の所定割合以下とすることが内圧を正確に測定するための構成であることは明らかである。
よって、請求人の主張は、「引用文献5は、容積変化を抑えるために圧力導入部を微小容積にしているのではなく、圧力測定器を搭載したサンプル缶を通常製品と同じ製造ラインに乗せるために微小容積にしている」との前提において誤っており、採用できない。
なお、前記(ア)cに記載したように、本件補正発明で延長配管の容積を小さくすることの技術上の意義は、蓋間空間と圧力計を繋いだ配管を延長したことによる蓋間空間の容積への影響を極力小さくすることであって、本願の明細書には、請求人の主張する、温度変化による影響及び蓋間空間と延長配管内のガス温度差の影響を小さくするために体積を小さくすることは記載されていない。
よって、請求人の主張は採用できない。
オ 独立特許要件についての当審の判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明、引用文献5技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(3) 本件補正の適否についての当審の判断のまとめ
前記(2)に示したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由3(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由3.(進歩性の欠如)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において発行された下記の引用文献1~5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.特開2011-196715号公報
2.特開2003-130625号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2003-227770号公報(周知技術を示す文献)
4.実願昭56-77480号(実開昭57-190444号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
5.特開平5-180720号公報
3 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定は、前記第2の2(2)イにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明に対して、圧力計と蓋間空間とを連絡させる延長配管について、「常設された」ものとの限定を省いた、ものである。
そして、本願発明の発明特定事項を全て含み、当該発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2(2)において説示したとおり、引用発明、引用文献5技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も、引用発明、引用文献5技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 本願発明についてのまとめ
本願発明は、引用発明、引用文献5技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-016240