特許拒絶査定不服審判
2022-015320
すべり軸受
- 審判番号
- 2022-015320
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-172692
- 請求日
- 2022年09月27日
- 審決日
- 2023年07月24日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大豊工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人矢野内外国特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 小川 恭司
- 審判官 尾崎 和寛
- 審判官 久島 弘太郎
- 分類
- P18 .121-Z (F16C) / P18 .575-Z (F16C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-172692「すべり軸受」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月26日出願公開、特開2020-45925〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年9月14日の出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
令和3年11月29日付け:拒絶理由通知書
令和4年1月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年6月20日付け :拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和4年9月27日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年9月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年9月27日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
円筒を軸方向と平行に二分割した一対の半割部材からなるすべり軸受であって、
前記半割部材の円筒軸方向の端面に硬化部を有し、
前記硬化部の前記端面からの長さの範囲は350μm以下であり、
前記すべり軸受の外周面の円筒軸に平行な線に沿った形状において変曲点がなく、
前記硬化部はレーザー変質部である、
ことを特徴とするすべり軸受。
【請求項2】
一体の円筒部材からなるすべり軸受であって、
前記円筒部材の円筒軸方向の端面に硬化部を有し、
前記硬化部の前記端面からの長さの範囲は350μm以下であり、
前記すべり軸受の外周面の円筒軸に平行な線に沿った形状において変曲点がなく、
前記硬化部はレーザー変質部である、
ことを特徴とするすべり軸受。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和4年1月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~3の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
円筒を軸方向と平行に二分割した一対の半割部材からなるすべり軸受であって、
前記半割部材の円筒軸方向の端面に硬化部を有し、
前記硬化部の範囲は350μm以下であり、
前記すべり軸受の外周面の円筒軸に平行な線に沿った形状において変曲点がない、
ことを特徴とするすべり軸受。
【請求項2】
一体の円筒部材からなるすべり軸受であって、
前記円筒部材の円筒軸方向の端面に硬化部を有し、
前記硬化部の範囲は350μm以下であり、
前記すべり軸受の外周面の円筒軸に平行な線に沿った形状において変曲点がない、
ことを特徴とするすべり軸受。
【請求項3】
前記硬化部は、レーザー変質部である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のすべり軸受。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1及び2に記載された発明を特定するために必要な事項である「硬化部」について、「前記端面からの長さ」及び「前記硬化部はレーザー変質部である」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1及び2に記載された発明と補正後の請求項1及び2に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であり、また、補正前の請求項3を削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第1号及び第2号に掲げる請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された特開昭64-15292号公報には、次の記載がある(下線は当審で付したもの。)。
「本発明は平軸受用軸受材料の切断方法に係り、詳しくは、レーザーを利用した平軸受用軸受材料の切断方法に係る。」(第1頁左下欄11行~第13行)
「従来、幅広帯状の軸受材料を切断するには、第2図に示すようにスリッター3と呼ばれる上下の回転円盤状の刃を回転させながら、剪断力によって連続的に切断し、この切断材料5を機械加工してすべり軸受製品に加工していた。しかしながら、従来の機械式の切断方法は、第3図に示すように、軸受材が硬い裏金材7と軟い軸受合金6で成る複合材料である為に、切断時の上下切断刃10による剪断力によって以下のような問題が発生していた。すなわち、
(1)剪断力によって連続的に切断する方法である為に、第3図(a)に示すように、軸受複合材料1の接合部の特に剪断面に剥離9が生じ、切断した後、その材料のすべてを成形加工して使用することはできない。
(2)また、第4図(a)の方式で切断した軸受材は、第3図(a)および(b)に示す形状が交互に発生する。これに伴い、ダレ8や板巾方向の反りも合金側、裏金側に交互に発生し、寸法精度上で後工程の成形加工に差支えが生じる。」(第1頁左下欄第15行~第1頁右下欄第14行)
「特に、軸受材料は炭素鋼裏金材に軸受台金が複合され、その合金特性は材質および製法によって多種類に及ぶが、大きくは錫基軸受合金、鉛基軸受合金、銅基軸受合金およびアルミ基軸受合金に大別する事ができ、その製法は焼結法または鋳造法で連続的に裏金鋼板上に複合されたものである。従って、裏金と特性の異なる種々の軸受合金との複合材を精度良く反りやダレおよび剥離を生じる事なく切断することのできる新しい方法が望まれていた。」(第1頁右下欄第18行~第2頁左上欄第7行)
「本発明はこれらの問題点の解決を目的とし、具体的には、レーザービームを使用して、精度良く、かつ反りやダレおよび剥離の生じることの無い軸受材料の切断方法を提供することを目的とする。」(第2頁左上欄第9行~第13行)
「本発明は、平軸受用軸受材料を切断する際に、レーザービームを使用することを特徴とする。
以下、図面によって本発明の手段たる構成ならびにその作用を説明すると、次の通りである。
第1図は本発明に係る切断方法を示す説明図であり、第2図は従来の機械式切断方法によるすべり軸受の製造工程を示す工程図であり、第3図(a)および(b)は従来の機械式切断時に発生する剥離やダレおよび反りの発生状況を示す斜視図であり、第4図(a)および(b)はそれぞれ従来の機械式切断方法を示す説明図である。
すなわち、従来のように軸受材料を機械式の切断方法で切断する際に生じるダレや剥離および反り等の問題点は、硬い裏金材7と軟かい軸受合金6との複合材である軸受材を上下切断刃の回転による剪断力によって切断することにより生じるものであることから、機械式切断方法以外の切断手段について検討した結果、レーザービームを利用することに着目し、本発明を完成したものである。」(第2頁左上欄第17行~右上欄第16行)
「第1図は本発明に係る切断方法を示す説明図であり、第2図は従来の機械式切断方法によるすべり軸受の製造工程を示す工程図であり、第3図(a)および(b)は従来の機械式切断時に発生する剥離やダレおよび反りの発生状況を示す斜視図であり、第4図(a)および(b)はそれぞれ従来の機械式切断方法を示す説明図である。
すなわち、従来のように軸受材料を機械式の切断方法で切断する際に生じるダレや剥離および反り等の問題点は、硬い裏金材7と軟かい軸受合金6との複合材である軸受材を上下切断刃の回転による剪断力によって切断することにより生じるものであることから、機械式切断方法以外の切断手段について検討した結果、レーザービームを利用することに着目し、本発明を完成したものである。
レーザービームは既に鋼板の切断、穿孔および溶接等に広く利用され、その特徴を生かした有力な加工方法となっているが、このレーザービームを軸受材料の切断方法に使用することによって従来の機械的方法による問題点はすべて解決することができた。」(第2頁右上欄第1行~左下欄第2行)
「第1図はレーザービームを使用した切断方法の一例を示したもので、レーザー発振器1から発振されたレーザービームをミラーMおよびハーフミラ-HMを使用して図に示すように分岐し、各分岐したレーザービームをそれぞれ集光レンズL1、L2、L3、L4で集光し、切断個所に投光する。一方、幅広の軸受材料は矢印方向に一定速度で進行させることにより所定幅に切断される。
以上のように、本発明に係る切断方法は機械的剪断力によるものではないため、軸受材料のような複合材料に適用しても従来法のようなダレや剥離および反りの起こる恐れは無い。また、レーザービームは直進性があるので、形状性に優れた溶断面が得られ、更に、レンズによって極めて小さい点に絞ることができるので熱影響部をほとんど生成させずに切断することができる。」(第2頁左下欄第3行~第20行)
「以上説明したように、本発明は、平軸受用軸受材料を切断する際に、レーザービームを使用することを特徴とし、従来の機械式切断方法の欠点であった軸受複合材料の接合部の剪断面における剥離やダレおよび巾方向の反りの生成は完全に除去されると共に、精度良く切断することができるので、材料収率も大巾に向上させることができた。」(第2頁右下欄第8行~第15行)
「第1図
[図:0001402462000001.jpg]
」
「第2図
[図:0001402462000002.jpg]
」
「第3図
[図:0001402462000003.jpg]
」
イ 上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献1の第1頁左下欄第15行~同頁右下欄第14行(特に、左下欄第15行~第19行、及び、右下欄第13行~第14行)、及び、第2頁左上欄第17行~右上欄第16行の記載から、引用文献1に記載の平軸受用軸受材料は、図2の従来のすべり軸受の製造工程のうち、機械式の切断方法に代えて、レーザービームの切断方法を使用したものであり、切断方法以外は従来のすべり軸受製品と同等の方法により製作されているものと理解される。
そして、切断方法を示す第1図から、レーザービームで軸受材料1を短冊状に切断していることが看取され、第2頁左下欄第18行~第19行、及びすべり軸受の製造工程を示す第2図から、当該短冊を機械加工により半円筒状に成形した部材からすべり軸受を製造することが理解される。
したがって、引用文献1のすべり軸受製品を構成する短冊を半円筒状に成形した部材の巾方向の両端がレーザービームによる切断面となっており、当該部材を一対として、軸を円筒内側で支持するすべり軸受製品を構成するものと認められる。
b 引用文献1の第2頁左下欄第17行~第20行の記載から、引用文献1のすべり軸受製品を構成する短冊を半円筒状に成形した部材のレーザービームによる切断面には熱影響部が生成されている。
c 引用文献1の第2頁左上欄第9行~第13行、同頁左下欄第12行~第15行の記載から、引用文献1のすべり軸受製品を構成する短冊を半円筒状に成形した部材はレーザービームによって切断されているため、切断部分(短冊を半円筒状に成形した部材の巾方向の両端)には、第3図(a)に示されるようなダレ8が生じていない(この点については、下記(4)イ(イ)も参照。)。
ウ 引用発明
上記認定事項より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「短冊を半円筒状に成形した部材を一対として構成されたすべり軸受製品であって、
前記短冊を半円筒状に成形した部材は、炭素鋼裏金材に軸受合金を複合した軸受材料をレーザービームにより切断し成形加工したものであり、
前記短冊を半円筒状に成形した部材の巾方向の両端がレーザービームによる切断面となっており、
当該切断面には熱影響部が生成されており、
前記短冊を半円筒状に成形した部材の巾方向の両端にはダレが生じていない、
すべり軸受製品。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「短冊を半円筒状に成形した部材」は、本件補正発明の「円筒を軸方向と平行に二分割した半割部材」に相当し、また、引用発明の「すべり軸受製品」は、本件補正発明の「すべり軸受」に相当するから、引用発明の「短冊を半円筒状に成形した部材を一対として構成されたすべり軸受製品」は、本件補正発明の「円筒を軸方向と平行に二分割した一対の半割部材からなるすべり軸受」に相当する。
引用発明の「前記短冊を半円筒状に成形した部材の巾方向の両端」は、本件補正発明の「前記半割部材の円筒軸方向の端面」に相当する。
引用発明の「熱影響部」は、レーザービームの熱エネルギーによる切断の際に母材が熱によって変質したものであるといえるから、本件補正発明の「レーザー変質部」に相当する。
したがって、引用発明の「前記短冊を半円筒状に成形した部材の巾方向の両端がレーザービームによる切断面となっており、当該切断面には熱影響部が生成されて」いることは、本件補正発明の「前記半割部材の円筒軸方向の端面に硬化部を有し」、「前記硬化部はレーザー変質部である」こととの対比において、「前記半割部材の円筒軸方向の端面に、レーザー変質部を有する」との限度で一致する。
引用発明の「前記短冊を半円筒状に成形した部材の巾方向の両端にはダレが生じていない」ことは、すべり軸受製品を構成する半割部材の外周面(及び内周面)が、円筒軸に平行な線に沿った形状であり、変曲点がないことであるといえるから、本件補正発明の「前記すべり軸受の外周面の円筒軸に平行な線に沿った形状において変曲点がない」ことに相当する。
以上のとおりであるから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「円筒を軸方向と平行に二分割した一対の半割部材からなるすべり軸受であって、
前記半割部材の円筒軸方向の端面にレーザー変質部を有し、
前記すべり軸受の外周面の円筒軸に平行な線に沿った形状において変曲点がない、
すべり軸受。」
[相違点]
本件補正発明は、レーザー変質部が「硬化部」であり、「前記硬化部の前記端面からの長さの範囲は350μm以下」とされているのに対し、引用発明は、レーザー変質部が「熱影響部」であり、熱影響部の半割部材の端面からの長さの範囲については特定されていない点。
(4)判断
ア 相違点についての検討
上記相違点について検討する。
引用発明の短冊を半円筒状に成形した部材は、「炭素鋼裏金材に軸受合金を複合した軸受材料をレーザービームにより切断し成形加工したもの」とされているところ、炭素鋼をレーザービームにより切断すると、切断面にレーザービームの熱によって硬化層が形成されることは当業者には周知の技術的事項である(例えば、特開2003-126929号公報の段落【0013】、特許第3277470号公報の段落【0029】、【0041】、特公平5-80291号公報の第2頁第3欄第13行~第22行を参照。)。
そうすると、引用発明の「熱影響部」は、レーザービームの熱によって焼入れされた硬化層といえ、本件補正発明の「硬化部」に相当するものといえる。
ここで、引用発明の「熱影響部」は、レンズによって極めて小さい点に絞られたレーザービームによって切断されることによって、ほとんど生成されることがないとされている(引用文献1の第2頁左下欄第17行~第20行。)。
また、本件の明細書及び図面の記載を参酌しても、本件補正発明において、硬化部の端面からの長さの範囲を「350μm以下」とした点の、350μmという数値に臨界的な意味合いは認められず、350μmという数値は、軸受材料を剪断力によって切断した際に生じる加工硬化の範囲よりも狭いことを、レーザービームによって切断した際に通常生じる程度の範囲の数値として規定したにすぎないものといえる(本件の明細書の段落【0031】を参照。)。
上記2つの事項を勘案すれば、引用発明において、ほとんど生成されることがない「熱影響部」を350μm以下とし、以て、相違点に係る本件補正発明の構成となすことは当業者であれば容易に想到し得たものということができる。
そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から当業者であれば予測しうる程度のものであって格別顕著なものということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
イ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人の主張
上記相違点に関し、審判請求人(特許出願人)は、審判請求書において次のように主張する。
「引用文献1の第2頁左下欄第15-20行における「レーザービームはレンズによって極めて小さい点に絞ることができるので熱影響部をほとんど生成させずに切断することができる」の一文をもって、引用文献1において、熱影響部をほとんど生成させないことから、熱影響による変質部(つまり、熱影響部=熱硬化部)がほとんどなければ、成型時に変形を生じる部位がほとんどなくなることが自明であるものとは必ずしも言えません。
この論理によれば、熱影響部がほとんど生成されない前提から、熱影響部=熱硬化部であるという構成に発展しておりますが、引用文献1に熱影響部が硬化した部分であるとの明確な記載はなく、むしろ、ダレ、剥離、反りなどが硬化した部分を指しているものと思われます。
したがって、本願発明1の限定する硬化部の存在には全く言及されておらず、当該記載をもって、「熱硬化部がほとんどなければ、成型時に変形を生じる部位がほとんどなくなる」といえる根拠とはならないものと思料いたします。
また、引用文献1には、ブランクのレーザー切断加工についてのみ明記されており、ただ単に「精度の良い」ブランクを形成する切断加工について記載されております。したがって、その後の曲げ加工において「精度の良い」ブランクを加工したときに、変曲点が存在するか否かについては記載されておりません。
これに対し本願発明1は、明細書段落0033に示されるように、硬化部25の硬化の度合いが小さい(前記端面からの長さの範囲は350μm以下)ことにより、切り出したブランク材を半円状に曲げ加工する際に、ブランク材に無用な応力を生じさせることなく、精度よく曲げ加工することができます。このことが、すべり軸受の外周面2bの円筒軸に平行な線に沿った形状において変曲点がない理由であると考えられるものであります。
したがって、本願発明1の「硬化部の端面からの長さの範囲が350μmである」、「軸受成型後の背面に変曲点が無い」、および「硬化部はレーザー変質部である」点により、1.ホルダに対する面あたり性の改善および2.ブランク材における無用な応力の発生を防止し、曲げ加工の精度の向上という二つの効果を両立して得られるという、引用文献に記載の軸受ではなし得なかった有利な効果を奏するものであります。
」(第4頁第11行~第5頁第10行)
(イ)当審の判断
引用発明の「熱影響部」が、本件補正発明の「硬化部」に相当することは、上述のとおりであるし、仮に、引用発明の「熱影響部」の全ての範囲が硬化部でないとしても、レーザービームの熱による硬化した部分を少なからず含むといえるから、引用発明の「熱影響部」が、本件補正発明の「硬化部」に相当するという判断に誤りはなく、審判請求人のこの点の主張は採用できない。
そして、引用発明においては(熱硬化部を含む)「熱影響部」は、ほとんど生成されていないから(引用文献1の第2頁左下欄第17行~第20行を参照。)、軸受材料(短冊)の後工程である成形加工(曲げ加工)時に無用な応力の発生を防止できるものといえる。
そうすると、引用発明の「レーザービームにより切断した」、「軸受材料」ないし「短冊」の切断部分には、ダレがなく、軸受材料ないし短冊の寸法精度が高いことによって軸受材料(短冊)の後工程の寸法精度を高めることができることに加え、成形加工時における加工応力の観点からも、軸受材料ないし短冊を精度よく半円状に曲げ加工することができるといえるから、引用発明の「軸受材料」ないし「短冊」を半円筒状に成形した部材の巾方向の両端には、外周面の円筒軸に平行な線に沿った形状において変曲点がないものといえる。
したがって、審判請求人のこの点の主張も採用できない。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年9月27日にされた手続補正は、上記「第2」のとおり却下されたので、本願の請求項1~3に係る発明は、令和4年1月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2」の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~3に係る発明は、本願の出願前に頒布された、特開昭64-15292号(上記引用文献1)に記載された発明に基いて、又は、特開昭64-15292号に記載された発明及び本願の出願前に頒布された特開平3―255222号公報に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 原査定の拒絶の理由に対する当審の判断
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、上記引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというところ、本願発明は、上記「第2」の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記端面からの長さ」及び「前記硬化部はレーザー変質部である」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2」の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-015320