2022-015211
偏光板および画像表示装置
- 審判番号
- 2022-015211
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-512442外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月26日
- 審決日
- 2023年09月15日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-Z (G02B) / P18 .121-Z (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 7項目
第1 手続等の経緯
特願2019-512442号(以下「本件出願」という。)は、2018年(平成30年)4月2日(先の出願に基づく優先権主張 平成29年4月10日)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
第2 本願発明
本件出願の請求項1~9に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、次のものである。
「 偏光子と、該偏光子の一方の側に配置された第1の保護フィルムと、該偏光子の他方の側に配置された第2の保護フィルムと、を有し、前記偏光子の厚みが12μm以下であり、前記第1および第2の保護フィルムの少なくとも一方は、コアシェル型粒子が分散されたアクリル系樹脂を含む、偏光板。」
第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
●理由1(新規性) この出願の請求項1-9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
●理由2(進歩性) この出願の請求項1-9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 当合議体の判断
1 引用文献の記載事項及び引用発明
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(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された、本件出願の優先権主張の基礎とされた先の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じで公衆に利用可能となった文献である、特開2014-35393号公報には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定又は判断で利用した箇所である。
ア 「【請求項1】一軸延伸されて1~10μmの厚さを有し、二色性物質が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子と、延伸されたアクリル系樹脂フィルムとが、両者の延伸軸が直交するように貼合されていることを特徴とする偏光板。・・・(中略)・・・【請求項3】前記アクリル系樹脂フィルムは、アクリル系のベース樹脂にゴム粒子を10~50重量%含有するアクリル系樹脂組成物から形成されている請求項1又は2に記載の偏光板。【請求項4】前記アクリル系樹脂フィルムは、15~60μmの厚さを有する請求項1~3のいずれかに記載の偏光板。・・・(中略)・・・【請求項6】前記アクリル系樹脂フィルムに貼合されている面と反対側の前記偏光子面に、光学フィルムが貼合されている請求項1~5のいずれかに記載の偏光板。」
イ 「【技術分野】【0001】本発明は、厚さが1~10μmと薄肉化された偏光子に透明保護フィルムが貼合されている偏光板、及びその偏光板を液晶セルに貼着した液晶表示パネルに関するものである。」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】・・・(中略)・・・【0011】そこで、本発明の課題の一つは、厚さが10μm以下と薄肉化された偏光子に透明保護フィルムが貼合された偏光板であって、その偏光板を液晶セルに貼着して液晶パネルとした場合に、高温環境や高温高湿環境にさらされても反りを小さくすることができる偏光板を提供することにある。本発明のもう一つの課題は、その偏光板を液晶セルに貼着して、高温環境や高温高湿環境にさらされても反りが小さい液晶パネルを提供することにある。続きを表示(全14行)【課題を解決するための手段】【0012】研究の結果、一軸延伸されて厚さが1~10μmとなった偏光子に、延伸されたアクリル系樹脂フィルムを両者の延伸軸が直交するように貼合することが、液晶パネルの反り防止に有効であることを見出し、さらに種々の検討を加えて本発明を完成するに至った。【0013】すなわち本発明によれば、一軸延伸されて1~10μmの厚さを有し、二色性物質が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子と、延伸されたアクリル系樹脂フィルムとが、両者の延伸軸が直交するように貼合されている偏光板が提供される。・・・(中略)・・・【0015】アクリル系樹脂フィルムは、アクリル系のベース樹脂にゴム粒子を10~50重量%含有するアクリル系樹脂組成物から形成し、これを延伸したもので構成することができる。延伸されたアクリル系樹脂フィルムは、15~60μmの厚さを有するものであることが好ましい。また、延伸されたアクリル系樹脂フィルムは、その延伸軸方向及びそれと直交する方向の長さがそれぞれ100mmの正方形に裁断し、温度80℃の乾燥下で24時間加熱した後の延伸軸方向の収縮率が1.5%以上、とりわけ1.5~5%の範囲にあるものであることが好ましい。【0016】これらの偏光板において、アクリル系樹脂フィルムに貼合されている面と反対側の偏光子面には、光学フィルムを貼合することができる。アクリル系樹脂フィルムと偏光子は、紫外線硬化型接着剤により貼合されていることが好ましい。偏光子のアクリル系樹脂フィルムが貼合されている面と反対側に光学フィルムを貼合する場合、その光学フィルムと偏光子も、紫外線硬化型接着剤により貼合されていることが好ましい。」
エ 「【発明を実施するための形態】・・・(中略)・・・【0022】本発明に係る偏光板の層構成の例を図1及び図2に断面模式図で示した。図1は、本発明の偏光板を液晶パネルの視認側に配置する場合の好適な層構成例を、液晶セルとともに示している。図1の(A)では、偏光子11の一方の面に、延伸されたアクリル系樹脂フィルム12が貼合され、偏光子11の他方の面には光学フィルム14が貼合されて、視認側偏光板10が構成されている。その光学フィルム14の外側に設けられた粘着剤層18によって、液晶セル30に貼り合わされる。続きを表示(全36行)・・・(中略)・・・【0034】[偏光子]偏光子11,21は、一軸延伸され、二色性物質が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる。・・・(中略)・・・【0036】偏光子11,21は、薄肉化の観点から、その厚さを10μm以下とするが、好ましくは7μm以下である。偏光子の厚さを10μm以下とすることにより、薄型の偏光板、さらには液晶表示パネルとすることができる。偏光子11,21は、延伸されて配向し、そこに二色性物質が吸着していることにより、偏光子としての機能、すなわち自然光から直線偏光を取り出す機能を発現する。その延伸倍率は、好ましくは5倍超、さらに好ましくは5倍を超え17倍以下である。【0042】[アクリル系樹脂フィルム]本発明では、以上説明した偏光子11,21に、アクリル系樹脂フィルム12,22を貼合して、偏光板10,20とする。アクリル系樹脂フィルム12,22は、延伸されており、その延伸軸が偏光子11,21の延伸軸と直交するように貼合される。・・・(中略)・・・【0061】アクリル系樹脂は、ゴム粒子が配合されていることも有効である。すなわち、上で説明したアクリル系のベース樹脂にゴム粒子が配合されたアクリル系樹脂組成物から形成されるフィルムを、本発明に従って、延伸し、偏光子に貼合することは、好ましい形態の一つである。配合しうるゴム粒子としては、アクリル酸エステルを主な構成モノマーとするゴム状重合体、ブタジエンを主な構成モノマーとするゴム状重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。中でも、アクリル酸エステルを主な構成モノマーとするゴム状重合体であるアクリルゴム粒子が好ましい。もちろん、アクリルゴム粒子と他のゴム粒子を併用してもよい。【0062】アクリルゴム粒子は、アクリル酸ブチルやアクリル酸2-エチルヘキシルの如き、アルキル基の炭素数が多い、例えば炭素数4~8程度のアクリル酸アルキルエステルを主な構成モノマーとするものであることができる。これらの中でも、アクリル酸ブチルを主な構成モノマーとする弾性重合体が好ましい。アクリル酸アルキルエステルを主な構成モノマーとする弾性重合体からなる単層構造のゴム粒子であってもよいが、当該弾性重合体の層を含む多層構造のゴム粒子も有効である。後者の代表例として、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルとスチレンとのグラフト化弾性重合体の如き、アクリル系弾性重合体の層と、メタクリル酸メチルを主な構成モノマーとする硬質重合体層とが、コア-シェル構造で層を形成しているゴム粒子が挙げられる。さらに具体的には、アクリル系弾性体の外側に上記の硬質重合体の層が形成された2層構造のものや、アクリル系弾性体の内側に上記の硬質重合体の層が形成され、アクリル系弾性体の外側にも上記の硬質重合体の層が形成された3層構造のものがある。【0063】特にこのような多層構造のアクリルゴム粒子を配合したものが、好適な例として挙げられる。多層構造のアクリルゴム粒子を配合すれば、アクリル系樹脂のビカット軟化点を必要以上に低下させることなく引張破壊歪みの値を調節して、耐熱性を低下させることなくフィルム成型時の破断を防ぐことができる。【0064】ゴム粒子は、アクリル系のベース樹脂中に分散した状態での数平均粒径が1,000nm以下、さらには100~1,000nmの範囲、とりわけ100~500nmの範囲にあることが好ましい。ゴム粒子の数平均粒径が大きいと、フィルムのヘイズ(曇り度)が大きくなりすぎて、光線透過率が低くなる。一方、数平均粒径が小さすぎると、フィルムの可撓性が低下する傾向にある。・・・(中略)・・・【0067】アクリル系のベース樹脂に対するゴム粒子の添加量は、ゴム粒子が配合されたアクリル系樹脂組成物全体の量を基準に、10~50重量%、さらには10~40重量%であることが好ましい。ゴム粒子の量が少なすぎると、フィルムの滑り性や可撓性が十分でなく、逆に多すぎると、フィルムの耐熱性が十分に実現されにくくなる。・・・(中略)・・・【0073】次に、アクリル系樹脂フィルムの製膜方法、すなわち、延伸に供するアクリル系樹脂原反フィルムの製造方法について説明する。原反フィルムは、生産性や厚み精度に優れるという観点から、Tダイを用いた溶融押出成形法によって製造するのが好ましい。・・・(中略)・・・【0126】[光学フィルム]図1及び図2を参照して説明したとおり、アクリル系樹脂フィルム12,22が貼合された偏光子11,21の反対面には、光学フィルム14,15,24を貼合することができる。また、図2には示していないが、液晶セル30の背面側に配置される偏光板20においては、液晶セル30から遠い側に位置するアクリル系樹脂フィルム22の外側に、光学フィルムを貼合することもできる。偏光子11,21と液晶セル30との間に位置する光学フィルム14,15,24は、樹脂の延伸フィルムで構成される位相差フィルムとも呼ばれるもの、光学異方性物質の塗布・配向によって形成される光学補償フィルムとも呼ばれるもの、その他一般に保護フィルムとも呼ばれるものなどで構成することができる。また、背面側偏光板20において、アクリル系樹脂フィルム22の外側に配置することができる光学フィルムの例として、輝度向上フィルムを挙げることができる。・・・(中略)・・・【0132】その他、偏光子の保護フィルムとして用いられるものには、トリアセチルセルロースを代表例とするアセチルセルロース系樹脂フィルム、シクロオレフィン系樹脂フィルムなどがある。」
(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)ア及びエの記載を踏まえると、引用文献1には、請求項1及び3を引用する請求項6に係る発明の実施形態として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 一軸延伸されて1~10μmの厚さを有し、二色性物質が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子と、延伸されたアクリル系樹脂フィルムとが、貼合されている偏光板であって、前記アクリル系樹脂フィルムは、アクリル系のベース樹脂にゴム粒子を10~50重量%含有するアクリル系樹脂組成物から形成されており、前記アクリル系樹脂フィルムに貼合されている面と反対側の前記偏光子面に、光学フィルムが貼合されており、前記ゴム粒子は、アクリル系のベース樹脂中に分散しており、前記ゴム粒子は、アクリルゴム粒子であって、アクリル系弾性重合体の層と、メタクリル酸メチルを主な構成モノマーとする硬質重合体層とが、コア-シェル構造で層を形成しているゴム粒子であり、前記光学フィルムは、偏光子の保護フィルムとして用いられるものである、偏光板。」
2 対比及び判断
(1)本願発明1と引用発明の対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「偏光子」及び「偏光板」は、それぞれ、本願発明1の「偏光子」及び「偏光板」に相当する。
そして、引用発明の「偏光子」は、「1~10μmの厚さを有し」ているから、本願発明1の「前記偏光子の厚みが12μm以下であり」との条件を満たしている。
イ 引用発明の「アクリル系樹脂フィルム」は、偏光子に貼合されて偏光板を構成しているものであって、上記1(1)イ【0001】、同ウ【0011】、【0012】等の記載によれば、偏光子の保護フィルムであることが明らかであるから、当該「アクリル系樹脂フィルム」は、本願発明1の「該偏光子の一方の側に配置された第1の保護フィルム」に相当する。
ウ 引用発明の「光学フィルム」は、「偏光子の保護フィルムとして用いられるもの」であって、「前記アクリル系樹脂フィルムに貼合されている面と反対側の前記偏光子面に」「貼合されて」いるものであるから、本願発明1の「該偏光子の他方の側に配置された第2の保護フィルム」に相当する。
エ 引用発明の「アクリル系樹脂フィルム」は、「アクリル系のベース樹脂にゴム粒子を10~50重量%含有するアクリル系樹脂組成物から形成されて」いるものであって、前記「ゴム粒子」は、「アクリル系のベース樹脂中に分散しており」、「コア-シェル構造で層を形成しているゴム粒子」であるから、本願発明1の「コアシェル型粒子が分散されたアクリル系樹脂を含む」ものといえる。
したがって、引用発明は、本願発明1の「前記第1および第2の保護フィルムの少なくとも一方は、コアシェル型粒子が分散されたアクリル系樹脂を含む」との発明特定事項に相当する構成を備えている。
(2)一致点・相違点の認定及び判断
上記(1)のアからエの対比を総合すると、本願発明1と引用発明とは、
「 偏光子と、該偏光子の一方の側に配置された第1の保護フィルムと、該偏光子の他方の側に配置された第2の保護フィルムと、を有し、前記偏光子の厚みが12μm以下であり、前記第1および第2の保護フィルムの少なくとも一方は、コアシェル型粒子が分散されたアクリル系樹脂を含む、偏光板。」
である点で一致し、相違点はない。
すなわち、本願発明1は引用文献1に記載された発明である。
また、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」「(2)本願発明と引用文献に記載の発明との対比」において、以下のような主張を行っている。
「 しかし、引用文献1では、[0063]段落に記載されるように、「フィルム成形時の破断」を防ぐために、「多層構造のアクリルゴム粒子を配合して、フィルムの引張破壊歪み値を調節」することを意図しており、引用文献1には、本願発明のように、「偏光板の耐屈曲性およびハンドリング性の向上」のために、「コアシェル型粒子をアクリル系樹脂に分散させる」ことは、記載も示唆も一切されておりません。そのため、当業者であっても、引用文献1からは、「フィルムの引張破壊歪み値を調節するように、多層構造のアクリルゴム粒子を配合すること」が想到されるのみであって、本願発明のように、「偏光板の耐屈曲性およびハンドリング性を向上させるように、コアシェル型粒子を分散させること」は、容易に想到できないと思料致します。そのため、本願発明は、拒絶査定書で挙げられた引用文献に対して新規性および進歩性を有するものであって、特許法第29条第1項第3号および同条第2項には該当しません。」
そこで、上記主張について検討する。
上記第2に示したとおり、本願発明1は、本件出願の特許請求の範囲(請求項1)の記載から明らかなように、「前記第1および第2の保護フィルムの少なくとも一方は、コアシェル型粒子が分散されたアクリル系樹脂を含む」との発明特定事項を含むものの、「偏光板の耐屈曲性およびハンドリング性を向上させるように」との事項を発明特定事項として含まない。
そして、上記(1)エに示したとおり、引用発明は、本願発明1の「前記第1および第2の保護フィルムの少なくとも一方は、コアシェル型粒子が分散されたアクリル系樹脂を含む」との発明特定事項に相当する構成を備えている。
したがって、上記主張は採用できない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用文献1に記載された発明である。
また、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明1は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-015211