特許拒絶査定不服審判
2022-014339
マスタエージェント間のインターコネクト帯域幅の分配
- 審判番号
- 2022-014339
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-035569
- 請求日
- 2022年09月12日
- 審決日
- 2023年02月24日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】インフィニオン テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト
- 【請求人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【請求人代理人】森田 拓
- 【請求人代理人】前川 純一
- 【請求人代理人】永島 秀郎
- 【請求人代理人】上島 類
- 審判長/審判官
- 審判長 篠原 功一
- 審判官 林 毅
- 審判官 児玉 崇晶
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .536-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 35569「マスタエージェント間のインターコネクト帯域幅の分配」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月16日出願公開、特開2021-140789、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)3月5日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2020年3月6日(以下、「優先日」という。) 米国)を国際出願日とする特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 1月24日付け:拒絶理由通知書
令和4年 4月14日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 6月 6日付け:拒絶査定(原査定)
令和4年 9月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和4年6月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(理由1)進歩性
本願請求項1ないし23に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1 特開2014-182727号公報
引用文献2 特開平11-184807号公報(周知技術を示す文献)
(理由2)実施可能性要件
この出願は、発明の詳細な説明の記載が以下の理由で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
・理由
(1)本願の図3Bにおいて、何が「所定の要求遅延時間」であって、どこから「遅延されて」いるのかが示されていないため、請求項1ないし23に係る発明の「1つのマスタエージェントが前記現在のタイムインターバル内でインターコネクト帯域幅の割り当て部分を消費した場合に、前記1つのマスタエージェントからの任意の新規アクセス要求を、前記現在のタイムインターバル内の所定の要求遅延時間だけ遅延させるステップ」又は「1つのマスタエージェントが前記現在のタイムインターバル内でインターコネクト帯域幅の割り当て部分を消費した場合に、前記1つのマスタエージェントからの任意の新規アクセス要求を、前記現在のタイムインターバル内の所定の要求遅延時間だけ遅延させる」との発明特定事項は、発明特定事項に対応する技術的手段が単に抽象的または機能的に記載してあるだけで、具現すべき材料、装置、工程等が不明瞭であり、その具現すべき材料、装置、工程等が出願時の技術常識に基づいても当業者が理解できないため、当業者が請求項に係る発明を実施することができない。
(2)請求項8、12、20及び21に係る発明の「前記それぞれのカウンタによって、前記それぞれの要求遅延時間値に対応する時間区間の数を、前記現在のタイムインターバルの終了までカウントするステップ」、「前記それぞれの要求遅延レジスタから前記それぞれの所定の要求遅延時間値を受信し、前記それぞれの要求遅延時間値に対応する時間区間の数を、前記現在のタイムインターバルの終了までカウントするように構成されたそれぞれの要求遅延カウンタ」、又は、「前記それぞれの要求遅延時間値に対応する時間区間の数を、前記現在のタイムインターバルの終了までカウントする」は、発明特定事項に対応する技術的手段が単に抽象的または機能的に記載してあるだけで、具現すべき材料、装置、工程等が不明瞭であり、その具現すべき材料、装置、工程等が出願時の技術常識に基づいても当業者が理解できないため、当業者が請求項に係る発明を実施することができない。
第3 本願発明
本願請求項1ないし8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、令和4年9月28日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される発明であり、このうち、本願発明1は、以下のとおりの発明である。
「 データ処理装置であって、前記データ処理装置は、
インターコネクトに結合されたマスタエージェントと、
前記マスタエージェントと前記インターコネクトとの間に結合され、前記マスタエージェント間でインターコネクト帯域幅を分配するように構成されたコントローラと、
を含み、
前記コントローラは、
タイムインターバル内で、前記インターコネクト帯域幅のそれぞれの部分を前記マスタエージェントの各々に割り当て、
前記マスタエージェントのいずれかが現在のタイムインターバル内でインターコネクト帯域幅の割り当て部分を消費したか否かを判別するために、前記マスタエージェントを監視し、
1つのマスタエージェントが前記現在のタイムインターバル内でインターコネクト帯域幅の割り当て部分を消費した場合に、前記1つのマスタエージェントからの任意の新規アクセス要求を、前記現在のタイムインターバル内の所定の要求遅延時間だけ遅延させる、
ように構成されている、
データ処理装置。」
なお、本願発明2ないし8は、本願発明1を減縮する発明である。
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0031】
帯域幅とは、バスを流れるデータの速度(メガバイト/秒)である。マスターには、予め定められた帯域が与えられている。マスターが、そのマスターに与えられた帯域を超えてバスにアクセスすると、他のマスターは、割り当てられた帯域より小さい帯域しか使用できず、他のマスターによる処理が遅くなる。」
「【0084】
図3は、本実施形態に係るデータ書込・読出処理装置10の構成を示すブロック図である。データ書込・読出処理装置10は、図2の制御部500に含まれる。
【0085】
データ書込・読出処理装置10は、CPU11、メモリー12、メモリーコントローラー13、USBインターフェイス部14、画像データ圧縮部15及びバス16を備える。
【0086】
CPU11は、バス16に接続されており、図2の制御部500を構成するCPUである。
【0087】
メモリー12は、スレーブとして機能し、メモリーコントローラー13を介してバス16に接続されている。メモリー12は、図2の制御部500を構成するRAMである。メモリー12は、記憶装置の例であり、記憶装置の他の例として、HDD(Hard Disk Drive)が挙げられる。
【0088】
メモリーコントローラー13は、CPU11、USBインターフェイス部14及び画像データ圧縮部15が、データをメモリー12に書き込む処理やデータをメモリー12から読み出す処理をするときに、メモリー12を制御する装置である。メモリーコントローラー13は、記憶装置制御部の例である。
【0089】
USBインターフェイス部14は、バス16に接続されており、USBメモリーに書き込まれているデータをメモリー12に書き込む処理やメモリー12からデータを読み出してUSBメモリーに書き込む処理において、マスターとして機能する。
【0090】
画像データ圧縮部15は、バス16に接続されており、画像データの圧縮処理において、マスターとして機能する。」
「【0127】
第1の読出処理では、USBインターフェイス部14がメモリーコントローラー13に分割データを読み出す要求を送ることなく、メモリーコントローラー13がメモリー12から分割データを読み出す。これに対して、第2の読出処理では、USBインターフェイス部14がメモリーコントローラー13に分割データを読み出す要求を送ることにより、メモリーコントローラー13がメモリー12から分割データを読み出す。」
「【0152】
本実施形態に係るデータ書込・読出処理装置10の第1変形例及び第2変形例について、本実施形態に係るデータ書込・読出処理装置10と異なる点を中心に説明する。図11は、第1変形例に備えられるメモリーコントローラー13において、データ読出処理装置の機能に関するブロックを示すブロック図である。このメモリーコントローラー13には、図7に示すメモリーコントローラー13を構成する機能ブロックに、さらに帯域判定部49が追加されている。」
「【0157】
図11の読出サイズ判定部48によって分割データのサイズが予め定められた値以下と判定されたとき(ステップS6でYes)、帯域判定部49は、分割データをバス16経由でマスターに転送すれば、バス16の帯域幅のうち、マスターに予め割り当てられた帯域を超えるか否かを判定する(ステップS21)。
【0158】
分割データ読出処理部47は、予め割り当てられた帯域を超えると判定されないとき(ステップS21でNo)、第1の読出処理を選択する。これに対して、分割データ読出処理部47は、予め割り当てられた帯域を超えると判定されたとき(ステップS21でYes)、第2の読出処理を選択する。」
「【0161】
第1の読出処理では、マスターがディスクリプター読み出し要求をすると、メモリー12から分割データの読み出しが完了するまで、マスターはバス16やメモリーコントローラー13を占有する。このため、予め割り当てられた帯域を超えると判定された場合に、第1の読出処理を実行すると、マスターに割り当てられた帯域を超えてしまう。
【0162】
これに対して、第2の読出処理では、予め割り当てられた帯域を超えると判定された場合、マスターが分割データを読み出す要求をメモリーコントローラー13に送るタイミングを遅らせることにより、マスターに割り当てられた帯域を超えないようにできる。」
「【0208】
これに対して、書込サイズ判定部54が、分割データのサイズが予め定められた値以下と判定しない場合(ステップT4でNo)、第2の書込処理を用いて分割データがメモリー12に書き込まれる(ステップT6)。第1の書込処理と第2の書込処理とは、USBインターフェイス部14が分割データをメモリーコントローラー13に転送するタイミングが異なる。」
「【0238】
本実施形態に係るデータ書込・読出処理装置10の第3変形例及び第4変形例について、本実施形態に係るデータ書込・読出処理装置10と異なる点を中心に説明する。図19は、第3変形例に備えられるメモリーコントローラー13において、データ書込処理装置の機能に関するブロックを示すブロック図である。このメモリーコントローラー13には、図15に示すメモリーコントローラー13を構成する機能ブロックに、さらに帯域判定部67が追加されている。
【0239】
帯域判定部67は、分割データのサイズが、図14の書込サイズ判定部54によって予定められた値以下と判定された場合において、分割データをバス16経由でマスターからメモリーコントローラー13に転送すれば、バス16の帯域幅のうち、マスターに予め割り当てられた帯域を超えるか否かを判定する。
【0240】
図19の分割データ書込処理部66は、予め割り当てられた帯域を超えると判定されないとき、第1の書込処理を選択し、予め割り当てられた帯域を超えると判定された場合、第2の書込処理を選択する。」
「【0247】
第1の書込処理では、マスターが第1のディスクリプター読み出し要求(ディスクリプターをメモリー12から読み出す要求)をすると、メモリー12に分割データの書き込みが完了するまで、マスターはバス16やメモリーコントローラー13を占有する。このため、帯域判定部67によって予め割り当てられた帯域を超えると判定された場合に、第1の書込処理を実行すると、マスターに割り当てられた帯域を超えてしまう。
【0248】
これに対して、第2の書込処理では、帯域判定部67によって予め割り当てられた帯域を超えると判定された場合、マスターが分割データを書き込む要求をメモリーコントローラー13に送るタイミングを遅らせることにより、マスターに割り当てられた帯域を超えないようにできる。」
「【図3】
[図:0001395129000001.jpg]
」
「【図11】
[図:0001395129000002.jpg]
」
「【図19】
[図:0001395129000003.jpg]
」
(2)引用発明
引用文献1の【0084】等の記載から、引用文献1には、「データ書込・読出処理装置10」の発明が記載されているといえる。
また、引用文献1において、データ読出処理装置の機能に関するブロックを示すブロック図である【図11】(【0152】)、データ書込処理装置の機能に関するブロックを示すブロック図である【図19】(【0238】)を参酌すると、「データ書込・読出処理装置10」を構成する「メモリーコントローラー13」は、少なくとも、「分割データ読出処理部47」、「帯域判定部49」、「分割データ書込処理部66」及び「帯域判定部67」を備えたものと認められる。
そして、前記(1)の特に下線部に着目すれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 データ書込・読出処理装置10であって、
帯域幅とは、バスを流れるデータの速度(メガバイト/秒)であり、マスターには、予め定められた帯域が与えられており、
データ書込・読出処理装置10は、CPU11、メモリー12、メモリーコントローラー13、USBインターフェイス部14、画像データ圧縮部15及びバス16を備え、
メモリー12は、スレーブとして機能し、メモリーコントローラー13を介してバス16に接続され、
メモリーコントローラー13は、CPU11、USBインターフェイス部14及び画像データ圧縮部15が、データをメモリー12に書き込む処理やデータをメモリー12から読み出す処理をするときに、メモリー12を制御する装置であり、
USBインターフェイス部14は、バス16に接続されており、USBメモリーに書き込まれているデータをメモリー12に書き込む処理やメモリー12からデータを読み出してUSBメモリーに書き込む処理において、マスターとして機能し、
画像データ圧縮部15は、バス16に接続されており、画像データの圧縮処理において、マスターとして機能し、
メモリーコントローラー13は、少なくとも、分割データ読出処理部47、帯域判定部49、分割データ書込処理部66及び帯域判定部67を備え、
第1の読出処理では、USBインターフェイス部14がメモリーコントローラー13に分割データを読み出す要求を送ることなく、メモリーコントローラー13がメモリー12から分割データを読み出し、第2の読出処理では、USBインターフェイス部14がメモリーコントローラー13に分割データを読み出す要求を送ることにより、メモリーコントローラー13がメモリー12から分割データを読み出し、
帯域判定部49は、分割データをバス16経由でマスターに転送すれば、バス16の帯域幅のうち、マスターに予め割り当てられた帯域を超えるか否かを判定し、
分割データ読出処理部47は、予め割り当てられた帯域を超えると判定されないとき、第1の読出処理を選択し、予め割り当てられた帯域を超えると判定されたとき、第2の読出処理を選択し、
第2の読出処理では、予め割り当てられた帯域を超えると判定された場合、マスターが分割データを読み出す要求をメモリーコントローラー13に送るタイミングを遅らせることにより、マスターに割り当てられた帯域を超えないようにでき、
第1の書込処理と第2の書込処理とは、USBインターフェイス部14が分割データをメモリーコントローラー13に転送するタイミングが異なり、
帯域判定部67は、分割データをバス16経由でマスターからメモリーコントローラー13に転送すれば、バス16の帯域幅のうち、マスターに予め割り当てられた帯域を超えるか否かを判定し、
分割データ書込処理部66は、予め割り当てられた帯域を超えると判定されないとき、第1の書込処理を選択し、予め割り当てられた帯域を超えると判定された場合、第2の書込処理を選択し、
第2の書込処理では、帯域判定部67によって予め割り当てられた帯域を超えると判定された場合、マスターが分割データを書き込む要求をメモリーコントローラー13に送るタイミングを遅らせることにより、マスターに割り当てられた帯域を超えないようにできる、
データ書込・読出処理装置10。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0068】帯域幅予約レジスタ31,41,51は、ソフトウェア等で設定可能(プログラマブル)であり、ここでの設定値情報はそれぞれ対応する利用可能帯域幅カウンタ33,43,53へと渡される。」
「【0071】利用可能共有帯域幅カウンタ61は、リクエスタ専用の利用可能帯域幅カウンタ33,43,53からの各帯域消費情報を逐次受け取り、共有帯域幅レジスタ60の値と比較して、共有の予約帯域幅を超えないように各要求量制限器32,42,52を制御する。共有の予約帯域幅を超える場合は、その状況を各要求量制限器32,42,52に通知し、それを受けた要求量制限器32,42,52は、後段のアービタ22に対する要求を制限する。
【0072】周期タイマ62は、周期的に各リクエスタ専用の利用可能帯域幅カウンタ33,43,53、および、利用可能共有帯域幅カウンタ61をプリセットし、帯域観測のための単位時間を提供する。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「データ書込・読出処理装置10」は、本願発明1の「データ処理装置」に相当する。
イ 本願発明1の「インターコネクト帯域幅を分配する」との構成によれば、本願発明1における「インターコネクト」とは、「分配」可能な「帯域幅」を有するものである。また、「インターコネクト」との技術用語は、回路間を接続する部材のことをいうことは本願優先日前の技術常識であり、そのことは、本願明細書の【0005】の記載「システムインターコネクトは、マスタエージェントがバスを共有するマルチマスタインターコネクト、またはマスタエージェントが接続されたリソースを共有するクロスバーインターコネクトであってよい。」及び本願の【図1】に「インターコネクト(またはクロスバー)」と記載されていることから明らかである。
そして、引用発明の「帯域幅とは、バスを流れるデータの速度(メガバイト/秒)であり、マスターには、予め定められた帯域が与えられており」及び「バス16の帯域幅のうち、マスターに予め割り当てられた帯域を超えるか否かを判定し」との構成によれば、引用発明の「バス16」は、「帯域幅」を有し、「マスター」に「割り当てられ」る、すなわち、分配可能なものであるから、本願発明1の「インターコネクト」に相当する。
また、引用発明の「USBインターフェイス部14」及び「画像データ圧縮部15」は、「マスターとして機能」するから、本願発明1の「マスタエージェント」に相当する。
そして、引用発明において、「USBインターフェイス部14」及び「画像データ圧縮部15」は「バス16に接続されて」いるから、引用発明の「マスター」(「USBインターフェイス部14」及び「画像データ圧縮部15」)は、本願発明1の「インターコネクトに結合されたマスタエージェント」に相当する。
ウ 引用発明の「マスターには、予め定められた帯域が与えられており」及び「バス16の帯域幅のうち、マスターに予め割り当てられた帯域を超えるか否かを判定し」との構成によれば、「マスター」である「USBインターフェイス部14」と「画像データ圧縮部15」との間で「バス16の帯域幅」が予め分配されるものと認められる。
引用発明の当該構成及び「メモリーコントローラー13」と、本願発明1の「前記マスタエージェントと前記インターコネクトとの間に結合され、前記マスタエージェント間でインターコネクト帯域幅を分配するように構成されたコントローラ」とは、「前記マスタエージェント間でインターコネクト帯域幅は分配され」ること、及び「コントローラ」である点において共通する。
エ 前記ウを参酌すれば、引用発明において、「マスター」である「USBインターフェイス部14」と「画像データ圧縮部15」との間で「バス16の帯域幅」の一部(それぞれの部分)が割り当てられているものと認められる。
よって、引用発明の当該構成と、本願発明1の「前記コントローラは、」「タイムインターバル内で、前記インターコネクト帯域幅のそれぞれの部分を前記マスタエージェントの各々に割り当て」ることとは、「前記インターコネクト帯域幅のそれぞれの部分が前記マスタエージェントの各々に割り当てられ」る点において共通する。
オ 引用発明の「メモリーコントローラー13」が備える「帯域判定部49」は、「読出処理」の際に、「分割データをバス16経由でマスターに転送すれば、バス16の帯域幅のうち、マスターに予め割り当てられた帯域を超えるか否かを判定」するものであり、また、引用発明の「メモリーコントローラー13」が備える「帯域判定部67」は、「書込処理」の際に、「分割データをバス16経由でマスターからメモリーコントローラー13に転送すれば、バス16の帯域幅のうち、マスターに予め割り当てられた帯域を超えるか否かを判定」するものである。
また、引用発明の「メモリーコントローラー13」の「帯域判定部49」又は「帯域判定部67」は、前記「判定」(判別)をするために、各「マスター」を“監視”していることは明らかである。
よって、引用発明において、「メモリーコントローラー13」の「帯域判定部49」又は「帯域判定部67」が「マスターに予め割り当てられた帯域を超えるか否かを判定」することと、本願発明1の「前記コントローラは、」「前記マスタエージェントのいずれかが現在のタイムインターバル内でインターコネクト帯域幅の割り当て部分を消費したか否かを判別するために、前記マスタエージェントを監視」することとは、「前記コントローラは、」「前記マスタエージェントのいずれかがインターコネクト帯域幅の割り当て部分の消費に関する条件を判別するために、前記マスタエージェントを監視」する点において共通する。
カ 引用発明の
「 分割データ読出処理部47は、予め割り当てられた帯域を超えると判定されないとき、第1の読出処理を選択し、予め割り当てられた帯域を超えると判定されたとき、第2の読出処理を選択し、
第2の読出処理では、予め割り当てられた帯域を超えると判定された場合、マスターが分割データを読み出す要求をメモリーコントローラー13に送るタイミングを遅らせることにより、マスターに割り当てられた帯域を超えないようにでき、」及び
「 分割データ書込処理部66は、予め割り当てられた帯域を超えると判定されないとき、第1の書込処理を選択し、予め割り当てられた帯域を超えると判定された場合、第2の書込処理を選択し、
第2の書込処理では、帯域判定部67によって予め割り当てられた帯域を超えると判定された場合、マスターが分割データを書き込む要求をメモリーコントローラー13に送るタイミングを遅らせることにより、マスターに割り当てられた帯域を超えないようにできる、」
との構成によれば、引用発明において、「メモリーコントローラー13」の「分割データ読出処理部47」又は「分割データ書込処理部66」は、1つの「マスター」に「予め割り当てられた帯域を超えると判定された場合」に、「第2の読出処理」又は「第2の書込処理」を選択することにより「分割データを読み出す要求」又は「分割データを書き込む要求」を「送るタイミングを遅らせる」ように前記1つの「マスター」を制御するものと認められる。
ここで、引用発明の「分割データを読み出す要求」及び「分割データを書き込む要求」は、本願発明1の「任意の新規アクセス要求」に相当する。
また、前記オを参酌すれば、引用発明の「予め割り当てられた帯域を超えると判定された場合」と、本願発明1の「インターコネクト帯域幅の割り当て部分を消費した場合」とは、「インターコネクト帯域幅の割り当て部分の消費に関する条件を満たした場合」である点において共通する。
よって、前記オを参酌すれば、引用発明の当該構成と、本願発明1の「前記コントローラは、」「1つのマスタエージェントが前記現在のタイムインターバル内でインターコネクト帯域幅の割り当て部分を消費した場合に、前記1つのマスタエージェントからの任意の新規アクセス要求を、前記現在のタイムインターバル内の所定の要求遅延時間だけ遅延させる」とは、「1つのマスタエージェントがインターコネクト帯域幅の割り当て部分の消費に関する条件を満たした場合に、前記1つのマスタエージェントからの任意の新規アクセス要求を、遅延させる」点において共通する。
キ 引用発明の「メモリーコントローラー13」は、後述する相違点を除いて、上記オ及びカで認定したように構成されているものである。
(2)一致点、相違点
前記(1)より、本願発明1と引用発明は、次の点において一致ないし相違する。
○一致点
「 データ処理装置であって、前記データ処理装置は、
インターコネクトに結合されたマスタエージェントと、
コントローラと、
を含み、
前記マスタエージェント間でインターコネクト帯域幅は分配され、
前記インターコネクト帯域幅のそれぞれの部分が前記マスタエージェントの各々に割り当てられ、
前記コントローラは、
前記マスタエージェントのいずれかがインターコネクト帯域幅の割り当て部分の消費に関する条件を判別するために、前記マスタエージェントを監視し、
1つのマスタエージェントがインターコネクト帯域幅の割り当て部分の消費に関する条件を満たした場合に、前記1つのマスタエージェントからの任意の新規アクセス要求を、遅延させる、
ように構成されている、
データ処理装置。」
○相違点
(相違点1)
本願発明1の「コントローラ」は、「前記マスタエージェントと前記インターコネクトとの間に結合され」るのに対し、引用発明の「メモリーコントローラー13」は、「メモリー12は、スレーブとして機能し、メモリーコントローラー13を介してバス16に接続され」との構成からして、「スレーブ」である「メモリー12」と「バス16」(インターコネクト)との間に結合されている点。
(相違点2)
本願発明1の「コントローラ」は、「前記マスタエージェント間でインターコネクト帯域幅を分配するように構成された」ものであり、よって、「前記コントローラは、」「タイムインターバル内で、前記インターコネクト帯域幅のそれぞれの部分を前記マスタエージェントの各々に割り当て」るのに対し、引用発明において、「バス16の帯域幅」は、各「マスター」に「予め割り当てられた」ものであるものの、その「割り当て」を「メモリーコントローラー13」が行うことを具体的に特定していない点。
(相違点3)
本願発明1において、「インターコネクト帯域幅」は、「タイムインターバル内」で割り当てがなされるのに対し、引用発明は、「帯域幅とは、バスを流れるデータの速度(メガバイト/秒)であり、マスターには、予め定められた帯域が与えられており」との構成を備えるものの、「帯域幅」が「タイムインターバル」内で割り当てられることを具体的に特定していない点。
(相違点4)
一致点に含まれる「インターコネクト帯域幅の割り当て部分の消費に関する条件」及び「インターコネクト帯域幅の割り当て部分の消費に関する条件を満たした場合」のそれぞれが、本願発明1においては、「現在のタイムインターバル内でインターコネクト帯域幅の割り当て部分を消費したか否か」及び「前記現在のタイムインターバル内でインターコネクト帯域幅の割り当て部分を消費した場合」であるのに対し、引用発明においては、「マスターに予め割り当てられた帯域を超えるか否か」及び「予め割り当てられた帯域を超えると判定された場合」である点。
(相違点5)
一致点に含まれる「前記1つのマスタエージェントからの任意の新規アクセス要求を、遅延させる」ことが、本願発明1においては、「前記1つのマスタエージェントからの任意の新規アクセス要求を、前記現在のタイムインターバル内の所定の要求遅延時間だけ遅延させる」ことであるのに対し、引用発明は、「マスターが分割データを読み出す要求をメモリーコントローラー13に送るタイミングを遅らせることにより、マスターに割り当てられた帯域を超えないようにでき」ること、又は、「マスターが分割データを書き込む要求をメモリーコントローラー13に送るタイミングを遅らせることにより、マスターに割り当てられた帯域を超えないようにできる」ことである点。
(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、「インターコネクト帯域幅」の「割り当て」において連関する相違点2ないし5についてまとめて検討する。
相違点2ないし5に係る本願発明1の構成は、「タイムインターバル」内で割り当てられた「インターコネクト帯域幅」が消費された場合であっても、「任意の新規アクセス要求」を「現在のタイムインターバル内の所定の要求遅延時間だけ遅延させる」ことを条件として、割り当てられた「インターコネクト帯域幅」を超えて許容することを技術思想とするものと認められる。
一方、引用発明は、「帯域幅」が「バスを流れるデータの速度」であるとの定義の下で、「予め割り当てられた帯域を超えると判定された場合」、すなわち、「マスター」に予め割り当てられた「帯域幅」を超えそうになった場合に、「分割データを読み出す要求」又は「分割データを書き込む要求」を「送るタイミングを遅らせる」ことにより、「マスターに割り当てられた帯域を超えないようにできる」ように制御するものであるから、「タイムインターバル」との制限なしに常に、「帯域幅」(バスを流れるデータの速度)が一定値を下回るように制御することを技術思想とするものである。
そうすると、引用発明は、そもそも技術思想が本願発明1とは異なるものであるから、当業者といえども、その構成を変更して相違点2ないし5に係る本願発明1の構成を採用しようとする起因を見いだすことはできない。
また、相違点2ないし5に係る本願発明1の構成は、引用文献2にも記載されておらず、また、本願優先日前の周知技術であるとも認められない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明することができたものであるとはいえない。
2 本願発明2ないし8について
本願発明2ないし8は、相違点2ないし5に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明することができたものであるとはいえない。
第6 原査定について
1 理由1(進歩性)について
令和4年9月23日に提出された手続補正書に係る補正により、本願発明1ないし8は、相違点2ないし5に係る本願発明1の構成を有するものとなっており、当業者が、原査定において引用された引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由1(進歩性)を維持することはできない。
2 理由2(実施可能要件)について
物の発明に関する発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすか否かについては、当業者が、同記載及び出願時(優先日前)の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、かつ、使用することができる程度の記載があるか否かに基づいて判断すべきである。
(1)理由2(1)について
明細書には、請求項1ないし8に係る「1つのマスタエージェントが前記現在のタイムインターバル内でインターコネクト帯域幅の割り当て部分を消費した場合に、前記1つのマスタエージェントからの任意の新規アクセス要求を、前記現在のタイムインターバル内の所定の要求遅延時間だけ遅延させる」との事項に関して、次のように記載されている。
「 【0029】
図3Bのタイミング図300Bは、マスタエージェント110.nのカウンタCnが帯域幅カウンタBWCnとして機能し、その後、要求遅延カウンタRDCnとして機能することを示している。カウンタCnは、第1のタイムインターバルTIの間は帯域幅カウンタBWCnとして機能し、第2のタイムインターバルTIの第1の部分の間も帯域幅カウンタBWCnとして機能する。次いで、カウンタCnは、第2のタイムインターバルTIの第2の部分の間、要求遅延カウンタRDCnとして機能する。より具体的には、帯域幅カウンタBWCとしてのカウンタCが帯域幅値tBWnからゼロまでカウントダウンした後、マスタエージェント110.nは、要求遅延モード(request_delay_mode_n=1)に入り、その間、カウンタCは要求遅延値tRDnをロードされ、要求遅延カウンタRDCnとして機能する。マスタエージェント110.nは、この要求遅延モードの間、2つの新しいインターコネクトアクセス要求を送信するものとして示され、これらは、マスタエージェントアービトレーションのためにアービタ130に転送されるのではなく、遅延される。これらの新しいインターコネクトアクセス要求の各々により、カウンタCに要求遅延値tRDnがロードされ、カウンタCは、要求遅延値tRDnからゼロまでカウントダウンし、その後、新規の要求がマスタエージェントアービトレーションのためにアービタ130に転送されうる。そして、第2のタイムインターバルTIの終了時には、要求遅延モードも終了するので、カウンタCnは、帯域幅値tBWnでリロードされる。」
また、上記【0029】において参照されている本願の【図3B】は、以下のとおりのものである。
「【図3B】
[図:0001395129000004.jpg]
」
上記【0029】及び【図3B】において、特に「マスタエージェント110.n」の「第2のタイムインターバル」に着目すると、「帯域幅カウンタBWCn」として機能する「カウンタCn」の値が0になる(請求項1ないし8に係る発明の「1つのマスタエージェントが前記現在のタイムインターバル内でインターコネクト帯域幅の割り当て部分を消費した場合」に相当。)と、要求遅延モードに入り、「マスタエージェント110.n」から「新しいインターコネクトアクセス要求」(請求項1ないし8に係る発明の「前記1つのマスタエージェントからの任意の新規アクセス要求」に相当。)を受信したことを契機として、「カウンタCn」に「要求遅延値tRDn」がロードされ、「要求遅延値tRDn」がカウントダウンされて0になるまでの間は、「新しいインターコネクトアクセス要求」は、「アービタ130」に転送されず、「要求遅延値tRDn」が0になると「アービタ130」に転送される(請求項1ないし8に係る発明の「前記1つのマスタエージェントからの任意の新規アクセス要求を、前記現在のタイムインターバル内の所定の要求遅延時間だけ遅延させる」に相当。)ものと理解することができる、
したがって、発明の詳細な説明は、請求項1ないし8に係る発明において、何が「所定の要求遅延時間」であって、どこから「遅延されて」いるのかについて、本願優先日前の技術常識を参酌すれば、その具現すべき材料、装置、工程等について当業者が理解できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
(2)理由2(2)について
原査定時の請求項20及び21に対応する請求項5及び6に記載された
「前記それぞれの要求遅延時間値に対応する時間区間の数を、前記現在のタイムインターバルの終了までカウントする」
に関し、前記(1)で摘記した明細書の【0029】及び図面【図3B】に加え、明細書の【0013】には、次のように記載されている。
「 【0013】
要求遅延レジスタRDRは、それぞれの所定の要求遅延時間値tRDを格納するように構成されている。要求遅延カウンタRDCは、それぞれの要求遅延レジスタRDRからそれぞれの所定の要求遅延時間値tRDを受信し、それぞれの要求遅延時間値tRDに対応する時間区間の数を、それぞれの所定の要求遅延時間までまたは現在のタイムインターバルTIまでの終了のいずれか短い方でカウントするように構成されている。」
なお、【0029】の記載は、【0013】に記載の「要求遅延カウンタRDC」に替えて「カウンタCn」を使用する実施例を記載したものと認められる。
そうすると、上記【0013】、【0029】及び【図3B】において、「要求遅延カウンタRDC」(「カウンタCn」)に「要求遅延時間値tRDn」(請求項5及び6に係る「前記それぞれの要求遅延時間値に対応する時間区間の数」に相当。)をロードして、当該「要求遅延時間値tRDn」を、当該「要求遅延時間値tRDn」の値が0になるか、又は、「現在のタイムインターバルTI」の終期のいずれか早い時点までカウントダウンするとの事項が記載されているといえる。
そうすると、請求項5及び6に係る「前記それぞれの要求遅延時間値に対応する時間区間の数を、前記現在のタイムインターバルの終了までカウントする」との事項は、発明の詳細な説明に記載された上記事項のうち、「要求遅延時間値tRDn」の値が0になる前に「現在のタイムインターバルTI」の終期に達する場合に限定して記載したものといえる。
したがって、発明の詳細な説明は、請求項5及び6に係る発明において、「前記それぞれの要求遅延時間値に対応する時間区間の数を、前記現在のタイムインターバルの終了までカウントする」との事項について、本願優先日前の技術常識を参酌すれば、その具現すべき材料、装置、工程等について当業者が理解できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
以上より、本願請求項1ないし8に係る発明について、発明の詳細な説明には、当業者が、同記載及び本願優先日前の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、かつ、使用することができる程度の記載があるといえるから、実施可能要件に適合したものである。
したがって、原査定の理由2(実施可能要件)を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-014339