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特許拒絶査定不服審判

2022-014297

レーザーアブレーション用のセルおよび分析装置

審判番号
2022-014297
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-514851
請求日
2022年09月12日
審決日
2023年07月31日
公報発行日
2023年10月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社エス・テイ・ジャパン
  • 【請求人代理人】亀井 岳行
審判長/審判官
  • 審判長 石井 哲
  • 審判官 加々美 一恵
  • 審判官 櫃本 研太郎
分類
P18 .121-Z (G01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2020-514851「レーザーアブレーション用のセルおよび分析装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月24日国際公開、WO2019/202690〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯の概要 本願は、2018年(平成30年)4月18日を国際出願日とする出願であって、令和3年12月10日付けで拒絶理由が通知され、令和4年2月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月3日付け(謄本の送達日:同月14日)で拒絶査定(以下、「原査定」という)がされたところ、同年9月12日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、令和4年2月24日に提出された手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。 【請求項1】 レーザー光が照射されてアブレーションされる試料が収容される収容部と、 前記アブレーションされた試料を搬送する搬送ガスが導入される導入部と、 前記アブレーションされた試料とともに搬送ガスが導出される導出部と、 前記導入部と前記収容部との間に配置され、導入部から導入された搬送ガスが接触して、前記導入部と前記導出部とを結ぶ方向に対して交差する方向に搬送ガスを拡散させる拡散部と、 複数のビーズが充填されて構成される前記拡散部と、 ヘリウムガスにより構成された前記搬送ガスと、 を備えたことを特徴とするレーザーアブレーション用のセル。 第3 原査定 原査定の拒絶の理由は、概略以下のとおりである。 この出願の請求項1~2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1~5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2007-322226号公報 2.特開平9-202974号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2001-77097号公報(周知技術を示す文献) 4.特表2010-506721号公報(周知技術を示す文献) 5.特表2016-517523号公報 第4 当審の判断 1 引用文献 (1)引用文献1の記載 ア 引用文献1の明細書には以下の記載がある。(下線は当審が付した。以下同様。) 【0001】 本発明は、試料に対してレーザアブレーションを行うための試料室、レーザアブレーション装置及びレーザアブレーション方法に関する。 (中略) 【0004】 そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、導出されるキャリアガス中の微粉体物又はガス化物の元素組成比を時間の経過に対して安定化させることができる試料室、レーザアブレーション装置及びレーザアブレーション方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、導出されるキャリアガス中の微粉体物又はガス化物の元素組成比が時間の経過に対して変動するのは、試料室の内部空間においてキャリアガスの流速分布が不均一となっていることに起因していることを突き止めた。つまり、内部空間を画定する壁面にキャリアガス導入口が1つしか形成されていないと、内部空間においてキャリアガス導入口に対向する部分とその周辺部分とでキャリアガスの流速に差が生じるため、レーザアブレーションによって生じた微粉体物又はガス化物がキャリアガス導出口を介して導出されるのに時間差が生じ、導出されるキャリアガス中の微粉体物又はガス化物の元素組成比が時間の経過に対して変動するのである。本発明者らは、この知見に基づいて更に検討を重ね、本発明を完成させるに至った。 【0006】 すなわち、本発明に係る試料室は、レーザアブレーションの対象となる試料が配置されると共に、試料に対するレーザアブレーションによって生じる微粉体物又はガス化物を搬送するためのキャリアガスが流通する内部空間を有する試料室であって、内部空間を画定する壁面には、試料が配置される位置に対して一方の側に位置する複数のキャリアガス導入口、及び試料が配置される位置に対して他方の側に位置するキャリアガス導出口が形成されていることを特徴とする。 【0007】 この試料室においては、内部空間を画定する壁面にキャリアガス導入口が複数形成されているため、キャリアガス導入口が1つしか形成されていない場合に比べ、内部空間におけるキャリアガスの流速分布が均一化される。 (中略) 【0014】 以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。 【0015】 図1に示されるように、LA-ICP-MS装置1は、分析対象の試料Sに対してレーザアブレーションを行うことで微粉体物又はガス化物を生じさせるレーザアブレーション装置2と、試料Sに対するレーザアブレーションによって生じた微粉体物又はガス化物をイオン化して、質量電荷比m/z値(m:質量数、z:電荷数)ごとに(すなわち、質量数の異なる元素ごとに)単位時間当たりのカウント数(すなわち、検出強度)を測定するICP-MS装置3と、により構成されている。 【0016】 レーザアブレーション装置2は、レーザ光を出射するレーザユニット5と、試料Sを撮像するCCDカメラ6と、試料室40と、を具備している。試料室40は、レーザアブレーションの対象となる試料Sが載置される試料台41が設けられた内部空間42を有している。 【0017】 レーザアブレーション装置2において、レーザユニット5から所定の波長で出射されたレーザ光は、ミラー10,11で反射されて、波長変換素子12に入射する。波長変換素子12で波長を半減されたレーザ光は、波長変換素子13で更に波長を半減されて、ミラー14,15,16で反射された後、レンズ17を通って、ビームスプリッタ18で反射され、試料室40に設けられた透過窓を通って試料Sに照射される。 【0018】 レーザユニット5は、例えば、波長1064nmのNd-YAGレーザを搭載している。そして、レーザユニット5から出射されたレーザ光は、波長変換素子12で波長1064nmから波長532nm(2次高調波)に変換され、更に、波長変換素子13で波長532nmから波長266nm(3次高調波)に変換される。このように、レーザ光を短波長とすることで、レーザ光のエネルギが高まり、より多くの物質に対してレーザアブレーションを行うことができる。 【0019】 CCDカメラ6は、ビームスプリッタ18を介して試料室40の内部空間42に配置された試料Sを観察することができるようになっている。CCDカメラ6は、例えば、試料Sの表面におけるレーザ光の照射位置を撮像する。 【0020】 図2は、試料室40の水平断面図(すなわち、CCDカメラ6の方向から見た試料室40の断面図)である。図1及び図2に示されるように、試料室40の内部空間42は円柱形状をなしており、内部空間42を画定する壁面のうち側壁面43には、試料Sが配置される位置に対して一方の側Aに位置する3つのキャリアガス導入口44、及び試料Sが配置される位置に対して他方の側Bに位置する1つのキャリアガス導出口45が形成されている。これにより、試料Sに対するレーザアブレーションによって生じる微粉体物又はガス化物を搬送するためのキャリアガスGは、キャリアガス導入口44からキャリアガス導出口45に向かって内部空間42を流通することになる。なお、3つのキャリアガス導入口44及び1つのキャリアガス導出口45は水平面H上に位置している。 【0021】 試料室40は、キャリアガス導入口44を介して内部空間42にキャリアガスGを導入するためのキャリアガス導入流路46と、キャリアガス導出口45を介して内部空間42から微粉体物又はガス化物と共にキャリアガスGを導出するためのキャリアガス導出流路47と、を備えている。 イ また、図1、図2はそれぞれ以下のとおりである。 図1 [図:0001402421000001.jpg] 図2 [図:0001402421000002.jpg] ウ 上記イの図2より、3つのキャリアガス導入口44が略同一開口形状であることが見て取れる。 (2)引用発明 上記(1)より、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考のため、認定の主な根拠となった箇所を括弧内に示す。 (引用発明) 「レーザ光を出射するレーザユニット5と、試料Sを撮像するCCDカメラ6と、試料室40と、を具備しているレーザーアブレーション装置の試料室40であって、(【0016】、図1) 試料室40は、レーザアブレーションの対象となる試料Sが載置される試料台41が設けられた内部空間42を有しており、(【0016】、図1) 試料室40の内部空間42を画定する壁面のうち側壁面43には、試料Sが配置される位置に対して一方の側Aに位置する3つの略同一開口形状のキャリアガス導入口44、及び試料Sが配置される位置に対して他方の側Bに位置する1つのキャリアガス導出口45が形成されており、これにより、試料Sに対するレーザアブレーションによって生じる微粉体物又はガス化物を搬送するためのキャリアガスGは、キャリアガス導入口44からキャリアガス導出口45に向かって内部空間42を流通することになり、(【0020】、上記(1)ウ、図2) 試料室40は、キャリアガス導入口44を介して内部空間42にキャリアガスGを導入するためのキャリアガス導入流路46と、キャリアガス導出口45を介して内部空間42から微粉体物又はガス化物と共にキャリアガスGを導出するためのキャリアガス導出流路47と、を備えており、(【0021】、図2) この試料室においては、内部空間を画定する壁面にキャリアガス導入口が複数形成されているため、キャリアガス導入口が1つしか形成されていない場合に比べ、内部空間におけるキャリアガスの流速分布が均一化される、(【0007】) レーザーアブレーション装置の試料室40。」 (3)引用文献2の記載 引用文献2には以下の記載がある。 【請求項1】反応室の内部にガス導入口を通じて薄膜材料でなる反応ガスを導入し、上記反応室の内部に設置された電極と、上記電極に対向する位置に配置された被薄膜形成対象物との間に電圧を印加して上記反応ガスをプラズマ化させて上記被薄膜形成対象物上に供給することにより、上記被薄膜形成対象物上に上記反応ガスに応じた薄膜を形成する薄膜形成装置において、 上記ガス導入口及び上記電極間に配置され、上記ガス導入口を通じて導入される上記反応ガスを拡散させて上記電極側に流出させる絶縁性でなるガス拡散部材を具えることを特徴とする薄膜形成装置。 (中略) 【0022】以上の構成によれば、反応管12のガス導入口14Aと電極18との間に複数の貫通穴20Aが全面に亘つて穿設されたガス拡散板20を設けてガス拡散板20で反応ガス15を乱反射させて各貫通穴20Aから反応ガス15を電極18側に流出させるようにしたことにより、ガス導入管14から導入される反応ガス15を反応管12内部にほぼ均一に拡散させることができるので、基板16上に均一に薄膜を形成し得ると共に膜質を向上させることができ、かくして信頼性を向上し得るプラズマCVD装置を実現し得る。 【0023】なお上述の実施例においては、ガス拡散部材として複数の貫通孔20Aが穿設された拡散板20を用いた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要は反応ガス15を反応管12内部にほぼ均一に拡散させることができれば、ガス拡散部材としてこの他種々のガス拡散部材を適用し得る。例えば図1との対応部分に同一符号を付して示す図2に示すように、角錐形状や円錐形状のガス拡散板30を用いて反応ガス15を拡散させるようにしてもよく、また図1との対応部分に同一符号を付して示す図3に示すように、セラミツク等のポーラス(多孔性)状の板40を用いても上述の実施例と同様の効果を得ることができる。 【0024】さらに図1との対応部分に同一符号を付して示す図4に示すように、反応管12の上端部12Aとガス拡散板20との間にセラミツクやガラス、プラスチツク等の絶縁性でなるビーズ50を貫通穴20Aを塞がないように充填してもよく、また図1との対応部分に同一符号を付して示す図5に示すように、反応管12の上端部12Aと電極18との間に複数のガス拡散板20を配設するようにしても上述の実施例と同様の効果を得ることができる。この場合、各拡散板20の各貫通穴20Aがそれぞれ一致しないように各ガス拡散板20に貫通穴20Aを穿設する。これにより反応ガス15を一段と反応管12内部に拡散させることができる。 また、図1、図4は以下のとおりである。 [図:0001402421000003.jpg] [図:0001402421000004.jpg] (4)引用文献3の記載 引用文献3には以下の記載がある。 【0078】図10に他の実施の形態を示す。この実施の形態では図2のプラズマ処理装置において、反応容器1の上部にガス均一化室5が一体に形成されている。ガス均一化室5は反応容器1よりも厚い箱状に形成されるものであって、ガス均一化室5の上面はガス供給口30として全面に亘って開口されていると共にガス均一化室5の下面には反応容器1のガス導入口16が開口されている。このガス均一化室5内にはシリカボール等で形成される球体6が多数個充填されている。 【0079】この実施の形態では、ガス均一化室5を介してプラズマ生成用ガスを反応容器1に供給するのである。すなわち、ガス供給口30からガス均一化室5内にプラズマ生成用ガスを導入し、球体6の間の隙間を通過させるようにしてプラズマ生成用ガスをガス導入口16まで下流させ、この後、ガス導入口16から反応容器1内にプラズマ生成用ガスを導入するのである。そして、このようにガス均一化室5を通過させてプラズマ生成用ガスを反応容器1に供給するので、プラズマ生成用ガスが反応容器1内の一部分に偏らないように、反応容器1内の全体に均一な濃度で供給することができ、均質なプラズマを効率よく生成することができるものであり、また、処理むらを少なくすることができるものである。 また、図10は以下のとおりである。 [図:0001402421000005.jpg] (5)引用文献4の記載 引用文献4には以下の記載がある。 【0015】 流動化のための方法及び装置 1つの態様において、ナノ粒子、微粒子又はそれらの組合せから成る乾燥粉末は、空気力を用いて流動化される。図3は、このことを例示する。流動床11は、1つ以上の粉末入口7を通して受入れ粉末を受け入れる。受入れ粉末は、様々な粒度の粒子を含有することができ、それらの粒子は全て、流動床に導入される。圧縮空気の供給は、適切なフィルター1、流量計2及び制御弁3を通して流動化装置の空気入口4に提供される。制御弁及び流量計によって、空気流量の制御が可能となる。空気は、シリカビーズ(silica beads)5の層を通過する。シリカビーズは、均一なガス流がその流れ領域を確実に横切るのを助け、且つ、乾燥剤としても作用する(シリカビーズは、定期的に取り替えられる)。空気は、次いで、多孔質の流動化装置プレート6を通過し、次いで、前記粉末が入口7で導入される上記室の中に入る。 また、図3は以下のとおりである。 [図:0001402421000006.jpg] (6)引用文献5の記載 引用文献5には以下の記載がある。 【請求項1】 レーザアブレーション発光分光における熱的影響を低減するための方法であって、 ターゲット表面上の分析ラインに沿って前記ターゲット表面上に分離アブレーションスポットを生成し、 連続するアブレーションスポットのペアが前記分析ラインに沿って互いに離間され、前記アブレーションスポットの追加のアブレーションスポットによって互いに分離されるように前記アブレーションスポットを位置決めすること、及び/又は 前記分析ラインが概して互いに隣接し互いに平行な分析ラインセグメントを有する場合に、 連続するアブレーションスポットのペアが異なる分析ラインセグメント上に位置するように前記アブレーションスポットを位置決めすること、及び 前記異なる分析ラインセグメントが互いに隣接する場合に、前記連続するアブレーションスポットを前記分析ラインセグメントに沿った異なる長手方向位置に位置するように位置決めすること のうち少なくとも1つを行い、 これにより分離アブレーションスポットの線形スキャンを生成する、 方法。 (中略) 【0018】 試料チャンバ102は、キャリアガス(例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素など、又はこれらの組み合わせ)のような流体を20mL/分から1000mL/分(例えば、100mL/分から150mL/分の範囲、あるいは125mL/分又はそのあたり)の範囲の流量で内部空間106に導入するようにそれぞれ構成された1以上の噴射ノズル120をさらに含んでいてもよい。例えば、それぞれの噴射ノズル120をフレーム114内の流体ポートに挿入してもよく、それぞれの噴射ノズル120は、試料チャンバ102の外部の流体源(例えば加圧流体源)に流体的に連通するように構成された流入口と、試料チャンバ102の内部空間106に露出する流出口とを含んでいてもよい。試料チャンバ102の内部空間106を試料チャンバ102の外部の環境と流体的に隔離するために、フレームと噴射ノズル120との間にシール(図示せず)を設けてもよい。内部空間106にキャリアガスを導入すると、内部空間106にキャリアガスの流れ(本明細書においては「キャリアガス流」ともいう)が生成される。内部空間106の異なる位置でのキャリアガス流の速度及び方向は、試料チャンバ102の内部空間106の形状及びサイズ、1以上の噴射ノズル120の構成、特定の噴射ノズル120により内部空間106に導入されるキャリアガスの流量など、又はこれらの組み合わせに応じて変化し得ることは理解できよう。一実施形態においては、内部空間106に導入されるキャリアガスの流量を制御することによって内部空間106の圧力を(例えば、11psi以下の圧力に)維持することができる。 また、図1は以下のとおりである。 [図:0001402421000007.jpg] 2 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「レーザアブレーションの対象となる試料S」は、本願発明の「レーザー光が照射されてアブレーションされる試料」に相当する。 とすると、引用発明の「レーザアブレーションの対象となる試料Sが載置される試料台41が設けられた内部空間42」は、本願発明1の「レーザー光が照射されてアブレーションされる試料が収容される収容部」に相当する。 引用発明の「試料Sに対するレーザアブレーションによって生じる微粉体物又はガス化物を搬送するためのキャリアガスG」は、本願発明1の「搬送ガス」に相当する。 とすると、引用発明の「キャリアガス導入流路46」は、本願発明1の「アブレーションされた試料を搬送する搬送ガスが導入される導入部」に相当する。また、引用発明の「試料Sが配置される位置に対して他方の側Bに位置する1つのキャリアガス導出口45」は、本願発明1の「アブレーションされた試料とともに搬送ガスが導出される導出部」に相当する。 また、引用発明では「試料Sが配置される位置に対して一方の側Aに位置する3つの略同一開口形状のキャリアガス導入口44、及び試料Sが配置される位置に対して他方の側Bに位置する1つのキャリアガス導出口45が形成されており、これにより、試料Sに対するレーザアブレーションによって生じる微粉体物又はガス化物を搬送するためのキャリアガスGは、キャリアガス導入口44からキャリアガス導出口45に向かって内部空間42を流通する」のであるから、引用発明の「3つの略同一開口形状のキャリアガス導入口44」は、本願発明1の「導入部と導出部とを結ぶ方向に対して交差する方向に搬送ガスを拡散させる拡散部」に相当する。 引用発明の「レーザアブレーションの対象となる試料Sが載置される試料台41が設けられた内部空間42を有して」いる「試料室40」は、本願発明1の「レーザーアブレーション用のセル」に相当する。 以上より、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また以下の各点で相違する。 (一致点) レーザー光が照射されてアブレーションされる試料が収容される収容部と、 前記アブレーションされた試料を搬送する搬送ガスが導入される導入部と、 前記アブレーションされた試料とともに搬送ガスが導出される導出部と、 前記導入部と前記導出部とを結ぶ方向に対して交差する方向に搬送ガスを拡散させる拡散部と、 を備えたレーザーアブレーション用のセル。 (相違点1) 本願発明1では、拡散部が「複数のビーズが充填されて構成される」のに対し、引用発明では「3つの略同一開口形状のキャリアガス導入口44」で構成されている点。 (相違点2) 本願発明1では、搬送ガスが「ヘリウムガスにより構成された」ものであるのに対し、引用発明では搬送ガスの種類について限定がない点。 3 判断 (1)当審の判断 ア 相違点1について判断する。引用発明は、内部空間を画定する壁面にキャリアガス導入口が複数形成されることで、キャリアガス導入口が1つしか形成されていない場合に比べ、内部空間におけるキャリアガスの流速分布を均一化することを目的としたものである。しかし、引用文献1の【0023】の「なお、上流側でキャリアガス導入本線46aから分岐するキャリアガス導入支線46bの横断面積(すなわち、そのキャリアガス導入支線46bと接続されたキャリアガス導入口44の開口面積)は、下流側でキャリアガス導入本線46aから分岐するキャリアガス導入支線46bの横断面積(すなわち、そのキャリアガス導入支線46bと接続されたキャリアガス導入口44の開口面積)より小さくしてもよい。これにより、各キャリアガス導入口44を介して内部空間42に流入するキャリアガスGの流速を均一化することが可能となる。」や、【0043】の「例えば、図6に示されるように、内部空間42を画定する側壁面43に形成されるキャリアガス導入口44の数は、3つに限定されず、7つであってもよい。・・・なお、各キャリアガス導入口44を介して内部空間42に流入するキャリアガスGの流速をより一層均一化するために、上流側のキャリアガス導入口44の開口面積を、下流側のキャリアガス導入口44の開口面積より小さくしてもよい。」といった記載からするに、3つの略同一開口形状のキャリアガス導入口44を有する構成とするものは、キャリアガス導入口が1つしか形成されていない場合に比べれば内部空間におけるキャリアガスの流速分布が均一化されるものの、その均一化の程度は未だ改善の余地があるものと当業者に理解されることは明らかであり、より高いレベルの均一化を目指す動機があることが読み取れる。 ここで、引用文献2~4に記載されているように、複数のビーズが充填された構成により、導入部と導出部とを結ぶ方向に対して交差する方向にガスを拡散させる拡散部は、周知技術である。そして、このように複数のビーズが充填されてなる構成を用いたガス拡散は、理論的にはガス分子がビーズに衝突するたびに拡散が進行し、また、ビーズの数は容易に極めて多数とできることから、3つと限定された数のキャリアガス導入口しか有さない場合と比較して、容易にガス拡散の目的を達成することが可能であることは、当業者にとって明らかである。とすると、キャリアガスの流速分布を均一化することを目的とした引用文献1に接した当業者であれば、拡散部として「3つの略同一開口形状のキャリアガス導入口44」である拡散部に代えて、上記周知技術である、「複数のビーズが充填されたて構成される拡散部」を採用して、本願発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 イ 相違点2について検討する。例えば引用文献5に記載されているように、レーザーアブレーション用の搬送ガスとしてヘリウムを使用することは本願出願時において周知であって、引用発明の搬送ガスとしてヘリウムを採用することは、当業者が適宜なし得ることに過ぎない。 ウ また、本願発明1の奏する効果は、当業者が予測可能な範囲ものであるし、本願発明1に進歩性の存在を推認させるほどの効果があったとは認めることができない。 エ したがって、本願発明1は引用文献1~5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)審判請求書での請求人の主張について ア 請求人は審判請求書で以下の旨主張をしている(「3.本願発明が特許されるべき理由」「(3)本願発明と引用発明との対比」参照)。 引用文献2~4に記載のものは、拡散部としてビーズが使用されている構成において一見類似しているが、使用されているガスの種類が全く異にするものであって、ガスの機能、使用目的、特性(粘性や反応性)、使用環境、使用可能条件が一致しない。ヘリウムガスは、引用文献2~4に記載のガスに比べて、粘性が非常に低く、拡散しにくい物質であることが、当業者にとっては一般に認識されている。したがって、粘性の高いガスで使用可能な構成を、そのままヘリウムガスに適用しても、ヘリウムガスを拡散させることはできないであろうと予測することが、当業者にとって自然な思考であり、そのまま適用できないということが技術的常識である。本願は、このような当業者の技術的な常識、思い込みを疑い、実際に検証することで得られた知見に基づくもので、引用文献1-5および本件出願前の技術常識から鑑みて、発想の転換、発想の飛躍があり、当業者といえども到底想到し得ることではない。 イ 当審の判断 ビーズを使用した拡散部は、ビーズに衝突したガス分子が四方八方に散らばることでガス拡散を行うものであって、ビーズに衝突しさえすれば、ガス分子の粘性や種類、機能、使用目的、使用環境、使用可能条件に関わらず、相当程度のガスの拡散が期待されるといえる。してみれば、本願発明1の奏する効果は当業者が予測可能な範囲ものである。 よって、上記(1)アで述べたように、引用発明に、引用文献2~5に記載されたような周知技術を適用することに、困難性を見いだすことはない。 第5 むすび 上記のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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  • 2025-009599拒絶査定不服審判 / 2026-08-10 / 原査定取消(特許/登録すべき)自動分析装置、および自動分析装置の運転方法
    共通の審決分類: 121・G01N
  • 2025-009154拒絶査定不服審判 / 2026-08-10 / 原査定取消(特許/登録すべき)インピーダンス信号処理を用いた医療用分析装置
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