2022-013849
防災訓練システム及び防災システムの制御方法
- 審判番号
- 2022-013849
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-094910外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月05日
- 審決日
- 2023年08月07日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】三菱重工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
本願は、平成30年5月16日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 原査定の概要
原査定(令和4年6月10日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献A-Dに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
A.特開2016-205864号公報
B.特開2014-232435号公報
C.特開2017-198836号公報
D.特開平05-27663号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審が令和5年5月12日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-6に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2016-205864号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2014-232435号公報(拒絶査定時の引用文献B)
3.特開2013-148667号公報(当審において新たに引用した文献)
第4 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、令和5年6月16日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、5は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】作業者の操作により、原子力発電プラントの緊急時において互いに異なる所定の処理を実行する複数の防災システムと、シミュレーションによって、前記原子力発電プラントの挙動を模擬した模擬プラントデータを算出するシミュレータと、を有し、前記シミュレータは、続きを表示(全12行)前記原子力発電プラントの挙動を模擬するシミュレーションを行うための入力値を取得するデータ取得部と、前記データ取得部が取得した入力値を調整して、前記原子力発電プラントの挙動を模擬するシミュレーションを実行することで、前記原子力発電プラントの予め定めされていない様々な事象を模擬的に再現するように調整した入力値に応じた前記模擬プラントデータを、実際には原子力発電プラントに異常がなくプラントデータが正常な値である場合でも、原子力発電プラントに異常が起こった異常値として算出する模擬プラントデータ算出部と、を有し、複数の前記防災システムは、前記原子力発電プラントの緊急時に、前記原子力発電プラントの挙動を示すプラントデータを取得して、前記作業者の操作により前記所定の処理を実行する防災モードと、前記原子力発電プラントの緊急時の対応の訓練時に、前記シミュレータから前記模擬プラントデータを取得して、前記作業者の操作により前記所定の処理を実行する訓練モードと、を切り替え可能であり、緊急時の前記原子力発電プラントによる外部環境への影響を予測する影響予測システムと、緊急時の前記原子力発電プラントの状況の表示を行う意思決定支援システムと、の少なくとも一方を有し、前記影響予測システム及び前記意思決定支援システムは、予測処理として、起因事象の同定と、現在の事象の進展状況の表示と、今後の事象の進展状況の予測と、外部環境への影響の予測と、を行う解析装置を備え、前記シミュレータは、前記訓練モードにおいて、前記防災システムの前記所定の処理に基づき前記模擬プラントデータを更新して、更新した前記模擬プラントデータを、複数の前記防災システムに出力する、防災訓練システム。」
「 【請求項5】原子力発電プラントの緊急時に前記プラントの挙動を示すプラントデータを取得する防災モードと、シミュレータによって算出された原子力発電プラントの挙動を模擬した模擬プラントデータを取得する訓練モードとを、有する防災システムの制御方法であって、前記防災モードから前記訓練モードへの切替えを行うステップと、前記原子力発電プラントの挙動を模擬するシミュレーションを行うための入力値を取得するステップと、取得した入力値を調整して、前記原子力発電プラントの挙動を模擬するシミュレーションを実行することで、前記原子力発電プラントの予め定めされていない様々な事象を模擬的に再現するように調整した入力値に応じた前記模擬プラントデータを、実際には原子力発電プラントに異常がなくプラントデータが正常な値である場合でも、原子力発電プラントに異常が起こった異常値として算出するステップと、前記訓練モードにおいて、前記シミュレータによって算出された前記模擬プラントデータを取得するステップと、予測処理として、起因事象の同定と、現在の事象の進展状況の表示と、今後の事象の進展状況の予測と、外部環境への影響の予測と、を行うステップと、取得した前記模擬プラントデータに基づく作業者の操作に応じた処理を実行するステップと、前記訓練モードにおいて、前記処理に基づいて前記シミュレータによって更新された前記模擬プラントデータを取得するステップと、を有することを特徴とする防災システムの制御方法。」
また、本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明である。
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1及び引用発明
(1) 引用文献1
当審拒絶理由に引用した引用文献1には、以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。
「【図1】[図:0001401321000001.jpg]【図2】[図:0001401321000002.jpg]」
「【0015】(第1実施形態)以下、本実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1に示すように、第1実施形態に係る原子力プラント50の訓練システム10は、原子力プラント50の中央制御室51において入出力されるプラントデータsを伝送する監視ネットワーク18と、原子力プラント50に設けられたプラント機器53及び特定事故対応設備11を仮想的に構築し、設定されたプラントの各種運転状態をシミュレーション(模擬)して、模擬プラントデータs’(図2参照)を生成する模擬計算部20と、生成された模擬プラントデータs’を伝送する訓練ネットワーク24と、プラント訓練時に、監視ネットワーク18に接続されている緊急時対策所12及び緊急時制御室15の少なくとも一方を、訓練ネットワーク24に接続させる切替スイッチ25(25a、25b)と、を備えている。【0016】なお、本実施形態は、特定事故対応設備11、緊急時対策所12及び緊急時制御室15を用いて緊急事態に対応する原子力プラント50に適用される。特定事故対応設備11、緊急時対策所12及び緊急時制御室15は、原子力プラント50の安全基準上で設置が定められているものであり、中央制御室51及び原子炉建屋52とは独立して設置される。」
「【0020】緊急時対策所12は、プラント内で緊急事態が発生した際に、配備された指揮者及び複数の運転員により事故収束方法の意思決定を行う場所である。なお、緊急時対策所12に配備される指揮者は、常時緊急時対策所12に駐在する必要は無く、地震、津波などの緊急事態を引き起こす事象が発生した場合に配備される。【0021】緊急時対策所12は、監視ネットワーク18を介して伝送されるプラントデータsを受信する第1受信部13と、指揮者により決定された事故収束方法に基づく指令信号tを出力する指令出力部14と、を備えている。続きを表示(全64行)【0022】緊急時制御室15は、プラント内で緊急事態が発生した際に、複数の運転員が配備されて、緊急時対策所12から出された指令信号tに対応する特定事故対応設備11の制御を実施する場所である。【0023】緊急時制御室15は、監視ネットワーク18を介して伝送される指令信号tを受信する第2受信部16と、指令信号tに対応する特定事故対応設備11の制御信号uを出力する制御部17と、を備えている。【0024】なお、図1では監視ネットワーク18を用いて緊急時対策所12と緊急時制御室15との間の信号伝送を行っているが、これらの拠点間を直接接続するネットワークを別途布設して信号伝送を行っても良い。【0025】訓練設備19は、プラント訓練時に使用される設備であり、中央制御室51内の制御盤を模擬して構成された訓練用制御盤21と、プラント機器53及び特定事故対応設備11を仮想的に構築し、訓練時に運転員により設定されたプラントの各種運転状態のシミュレーションを行う模擬計算部20と、を備えている。【0026】訓練システム10は、通常のプラント運転を監視して、建屋内で緊急事態が発生した際に事故収束の対応を実施するプラント監視時と、訓練設備19を用いてプラント訓練を実施するプラント訓練時との2つの動作に分けられる。各動作の切り替えは切替スイッチ25を用いて行われる。【0027】切替スイッチ25は、緊急時対策所12及び緊急時制御室15に接続されるネットワークを切り替えるためのスイッチであり、通常のプラント監視時にはAB間を導通させて監視ネットワーク18に接続させ、プラントの訓練時にAC間を導通させて訓練ネットワーク24に接続させる。【0028】ここで、通常のプラント監視時及びプラント訓練時のそれぞれにおける動作を具体的に説明する。【0029】まず、プラント監視時の動作について説明する。中央制御室51は、原子炉建屋52内に設けられた各種プラント機器53からプラント信号を入力する。そして、このプラント信号に基づいて制御信号をプラント機器53に出力して安定的なプラント制御を実施している。【0030】監視ネットワーク18は、中央制御室51に接続されており、中央制御室51において入出力されるプラント信号、制御信号、プラント機器53に設置されるセンサの検出信号、警報信号等のプラント制御に係る様々なプラントデータsを伝送するネットワークである。プラントデータsは、監視ネットワーク18を介して緊急時対策所12に送信される。【0031】緊急時対策所12の第1受信部13は、監視ネットワーク18を介して送信されたプラントデータsを受信する。【0032】緊急時対策所12に配備された指揮者は、プラントデータsを監視して、プラント内で緊急事態が発生した際に、事故の大きさ、程度、種類に応じて事故収束方法を決定する。そして、指令出力部14は、指揮者により決定された事故収束方法に基づく指令信号t(例えば、非常用電源のON/OFF、放水ポンプの作動開始など)を出力する。出力された指令信号tは、緊急時制御室15に送信される。【0033】緊急時制御室15の第2受信部16は、監視ネットワーク18を介して送信された指令信号tを受信する。【0034】制御部17は、指令信号tに対応する特定事故対応設備11の制御信号uを出力する。なお、制御操作は、緊急事態が発生した際に緊急時制御室15に配備される運転員により実行される。そして、緊急時対策所12と緊急時制御室15とが連携し、特定事故対応設備11の制御を実行して、建屋内で発生した緊急事態の収束を行う。【0035】次に、図2を用いて、プラント訓練時について説明する。プラント訓練時では、切替スイッチ25はAB間からAC間の導通に切り替えられる。これにより、監視ネットワーク18に接続されている緊急時対策所12及び緊急時制御室15は訓練ネットワーク24に接続される。切替スイッチ25における監視ネットワーク18から訓練ネットワーク24への切り替えは、誤動作を避けるため運転員による手動操作により行われる。【0036】なお、通常運転や定期試験などの訓練用制御盤21のみで訓練が実施可能な場合は、監視ネットワーク18から訓練ネットワーク24に切り替える必要は無い。【0037】また、緊急時対策所12及び緊急時制御室15のそれぞれは、監視ネットワーク18を介して伝送されるプラントデータsを受信する補助受信部26(26a,26b)を備えている。補助受信部26を備えることで、プラント訓練時においてもプラントデータsが受信され、各拠点に配備されている指揮者や運転員によりプラントの運転状態がモニター可能となる。【0038】訓練設備19の模擬計算部20は、原子力プラント50のプラント機器53及び特定事故対応設備11を仮想的に構築する。そして、模擬計算部20は、仮想的に構築されたこれらの機器を用いて、プラントの通常運転、定期試験、異常事態、緊急事態等の各種プラント状態のシミュレーションを実行して、プラント状態に応じた模擬プラントデータs’を生成する。なお、シミュレーションを実行するプラント状態は運転員により設定される。【0039】訓練ネットワーク24は、模擬計算部20に接続されており、模擬計算部20で生成された模擬プラントデータs’を伝送するネットワークである。【0040】緊急事態を除く、通常運転、定期試験等のプラント状態がシミュレーションされた場合、訓練対象者は訓練用制御盤21を用いて訓練を実施する。【0041】具体的には、模擬計算部20で模擬プラントデータs’が生成されると、訓練用制御盤21の監視端末23には、指示・記録・警報等を表示される。これに対して訓練対象者は、訓練用制御盤21の操作端末22から運転操作を実行して、操作・制御信号を模擬計算部20に出力する。【0042】そして、模擬計算部20は、訓練対象者の操作結果を反映したプラント状態のシミュレーションを実行し、再度生成した模擬プラントデータs’を訓練用制御盤21に出力して、監視端末23の指示・記録・警報等の情報を更新させる。このように、模擬計算部20によるシミュレーションと運転員による運転操作とを繰り返すことでプラント訓練が実施される。【0043】続けて、模擬計算部20で緊急事態がシミュレーションされる場合について説明する。まず、模擬計算部20は、地震、津波等の自然災害を起因とする過酷事故、意図的な航空機衝突による緊急事態をシミュレーションして、この緊急事態に応じた模擬プラントデータs’を生成する。【0044】緊急時対策所12の第1受信部13は、訓練ネットワーク24を介して模擬プラントデータs’を受信する。【0045】緊急時対策所12に配備された訓練者は、模擬プラントデータs’を監視して、模擬計算部20でシミュレーションされた緊急事態の大きさ、程度、種類に応じて事故収束方法を決定する。指令出力部14は、指揮者により決定された事故収束方法に基づく模擬指令信号t’を出力する。出力された模擬指令信号t’は、緊急時制御室15に送信される。【0046】緊急時制御室15の第2受信部16は、訓練ネットワーク24を介して送信された模擬指令信号t’を受信する。【0047】制御部17は、模擬指令信号t’に対応する特定事故対応設備(模擬計算部20で仮想的に構築されたもの)の模擬制御信号u’を出力する。なお、制御操作は、緊急時制御室15に配備される訓練対象者により実行される。【0048】そして、模擬計算部20は、訓練対象者の制御結果を反映したプラント状態のシミュレーションを実行し、生成した模擬プラントデータs’を、訓練ネットワーク24を介して緊急時対策所12に出力する。【0049】緊急時対策所12及び緊急時制御室15に配備された訓練対象者は連携して、模擬指令、仮想上の特定事故対応設備11に対する模擬制御を繰り返して事故収束の訓練を行う。」
「【0064】第2実施形態における訓練システム10が第1実施形態と異なる点は、緊急時対策所12が、緊急事態の起因となる事象が検出されたときに、訓練中止信号vを切替スイッチ25に出力する事象検出部27を備えており、切替スイッチ25が、プラント訓練時において事象検出部27から訓練中止信号vが出力されたときに、訓練ネットワーク24から監視ネットワーク18に接続を自動的に切り替える点にある。【0065】事象検出部27は、地震、津波、意図的な航空機衝突等の外的事象、プラント機器53の故障、予期せぬ停止等の内的事象によりプラント内で発生する警告信号、あるいは警報信号を予め登録しておき、警告信号または警報信号の発生により緊急事態の起因となる事象の検出を行う。そして、事象検出部27は、切替スイッチ25a、25bに対して訓練中止信号vを切替スイッチ25に出力する。」
「【0070】第3実施形態における訓練システム10が第1実施形態と異なる点は、緊急時対策所12が、プラント監視時に監視ネットワーク18を介して伝送されるプラントデータsを記録するデータ記録部28と、プラント訓練時に、記録されたプラントデータsに基づき訓練ネットワーク24を介して伝送される模擬プラントデータs’の挙動を予測する訓練用シミュレータ29と、を備える点にある。【0071】データ記録部28は、第1受信部13内に設けられて、プラント監視時において監視ネットワーク18を介して送信されるプラントデータsを記録する。プラントデータsは、通常のプラント運転時、緊急事態の発生時等のようにプラントの運転状態に応じてそれぞれを区別してデータ記録部28に記録される。【0072】そして、訓練用シミュレータ29は、プラント訓練時において、記録されているプラントデータsを用いて訓練設備19から送信される模擬プラントデータs’の挙動の予測を行う。具体的には、緊急事態の発生時のプラントデータsを用いてプラント状態が悪化するまでの時間、データの推移等を予測する。」
【0073】
訓練用シミュレータ29により、実際のプラントデータsを用いて模擬プラントデータs’における挙動の予測が行われることで、緊急時対策所12において実際のプラント運転状態に近い環境下で、緊急時制御室15への指令を下す訓練を実施することができる。
【0074】
また、データ記録部28は、プラント訓練時に、模擬プラントデータs’の挙動を記録させておき、訓練用シミュレータ29において、プラント監視時にプラントデータsの挙動を予測させる構成としても良い。これにより、過酷事故の進展予測及び手順選定等の緊急時の事故対応の支援機能としても活用可能となる。」
(2) 引用発明
引用文献1の特に「第3実施形態」に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「原子力プラント50の訓練システム10であって、原子力プラント50の中央制御室51において入出力されるプラントデータsを伝送する監視ネットワーク18と、原子力プラント50に設けられたプラント機器53及び特定事故対応設備11を仮想的に構築し、設定されたプラントの各種運転状態をシミュレーション(模擬)して、模擬プラントデータs’を生成する模擬計算部20と、生成された模擬プラントデータs’を伝送する訓練ネットワーク24と、プラント訓練時に、監視ネットワーク18に接続されている緊急時対策所12及び緊急時制御室15の少なくとも一方を、訓練ネットワーク24に接続させる切替スイッチ25(25a、25b)と、を備えており、緊急時対策所12及び緊急時制御室15を用いて緊急事態に対応する原子力プラント50に適用されるものであり、緊急時対策所12は、プラント内で緊急事態が発生した際に、配備された指揮者及び複数の運転員により事故収束方法の意思決定を行う場所であり、緊急時対策所12は、監視ネットワーク18を介して伝送されるプラントデータsを受信する第1受信部13と、指揮者により決定された事故収束方法に基づく指令信号tを出力する指令出力部14と、を備えており、続きを表示(全21行)緊急時制御室15は、プラント内で緊急事態が発生した際に、複数の運転員が配備されて、緊急時対策所12から出された指令信号tに対応する特定事故対応設備11の制御を実施する場所であり、緊急時制御室15は、監視ネットワーク18を介して伝送される指令信号tを受信する第2受信部16と、指令信号tに対応する特定事故対応設備11の制御信号uを出力する制御部17と、を備えており、訓練システム10は、通常のプラント運転を監視して、建屋内で緊急事態が発生した際に事故収束の対応を実施するプラント監視時と、訓練設備19を用いてプラント訓練を実施するプラント訓練時との2つの動作に分けられるとともに、各動作の切り替えは切替スイッチ25を用いて行われ、プラント監視時の動作について、緊急時対策所12の第1受信部13は、監視ネットワーク18を介して送信されたプラントデータsを受信し、緊急時対策所12に配備された指揮者は、プラントデータsを監視して、プラント内で緊急事態が発生した際に、事故の大きさ、程度、種類に応じて事故収束方法を決定し、制御部17における制御操作は、緊急事態が発生した際に緊急時制御室15に配備される運転員により実行され、プラント訓練時について、模擬計算部20は、緊急事態等の各種プラント状態のシミュレーションを実行して、プラント状態に応じた模擬プラントデータs’を生成するとともに、シミュレーションを実行するプラント状態は運転員により設定され、緊急時対策所12の第1受信部13は、訓練ネットワーク24を介して模擬プラントデータs’を受信し、緊急時対策所12に配備された訓練者は、模擬プラントデータs’を監視して、模擬計算部20でシミュレーションされた緊急事態の大きさ、程度、種類に応じて事故収束方法を決定し、制御部17における制御操作は、緊急時制御室15に配備される訓練対象者により実行され、模擬計算部20は、訓練対象者の制御結果を反映したプラント状態のシミュレーションを実行し、生成した模擬プラントデータs’を、訓練ネットワーク24を介して緊急時対策所12に出力し、緊急時対策所12が、訓練用シミュレータ29を備えており、訓練用シミュレータ29は、プラント訓練時において、緊急事態の発生時のプラントデータsを用いてプラント状態が悪化するまでの時間、データの推移等を予測し、訓練用シミュレータ29において、プラント監視時にプラントデータsの挙動を予測させる構成としても良い、原子力プラント50の訓練システム10。」
2 引用文献2、3、C、Dについて
(1) 引用文献2には、以下の記載がある。
「【0016】研究・教育システム14は、受信部25a、教育データベース25b、研究システム25c、教育情報送信部25dなどを有している。この研究・教育システム14は、放射線モニタリング・通信設備12、気象情報収集部21a、プラント情報収集部21b、インフラ情報収集部21c等から受信した情報を基にして、原子力発電所の緊急時における一般市民の被害を最小化させるために必要な教育・訓練をサポートし、かつ研究を支援するもので、平常時においても放射線に関する情報を収集,蓄積,提供している。」
「【0025】(3)研究・教育システム研究・教育システム14は、上述の図2に示すように、受信部25a、教育データベース25b、研究システム25c、教育情報送信部25d等からなる。【0026】受信部25aは、放射線モニタリング機器・通信設備12,気象情報収集部21a,プラント情報収集部21b,インフラ情報収集部21d等から送信された情報を受信する。【0027】教育データベース25bは、一般市民に対して教育する際の教育データを蓄積している。この教育データベース25bで築盛する教育データは、例えば、原子力や放射線の情報や教育に関するデータ、放射線に関する情報、放射線が健康に与える影響に関する情報、原子力発電所に関する情報等がある。【0028】研究システム25cは、放射性物質の拡散の予測モデルを備えており、平常時から、大気・土壌・海洋等といった環境への長期的影響評価(原子力立地地域の住民の健康への影響に関与)、住民影響を評価しており、災害発生後の長期的影響評価(原子力立地地域の住民への健康への影響に関与)の確立をその目的としている。また、研究システム25cは、緊急時は、危機管理センタ23から送信された情報を受信部25c1において受信し、この情報を基に放射線の拡散予測の解析を行い、その解析結果を危機管理センタ23に対して送信部25c2を介して送信する。」
(2) 引用文献3には、以下の記載がある。
「【0025】まず、実機プラント100の異常現象の発生時の行動訓練を行うために、インストラクタが、模擬入力手段310および模擬発生手段320への入力を行うと、インストラクタ用制御盤300は、実機プラント100における各種状態量、模擬入力手段310により入力された模擬的な自然環境、および、模擬発生手段320により模擬的に発生させる異常現象の内容や、発報シーケンスに関するデータを、シミュレータ400に送信する。すると、シミュレータ400のシミュレーション手段410は、これらのデータに基づいて、実機プラント100における各種状態量をシミュレーション結果として算出する。そして、シミュレーション手段410は、このシミュレーション結果を、実機プラント100、運転用制御盤200、およびインストラクタ用制御盤300に送信する。また、シミュレータ400は、発報シーケンスに関するデータを、発報シーケンサー420を通じて実機プラント100に送信する。このシミュレーション結果および発報シーケンスに関するデータを受信した実機プラント100においては、発報シーケンスに関するデータおよび実機プラント100内に設置された発報手段110の設置場所におけるLPガス濃度閾値に応じて、それぞれの発報手段110が発報する。なお、ここでは、LPガス濃度が900ppm以上の場合に一次警報を発報し、LPガス濃度が3600ppm以上の場合に二次警報を発報するように設定している。また、運転用制御盤200およびインストラクタ用制御盤300は、発報手段110の発報状況、および、実機プラント100内の模擬的なLPガス濃度を、表示手段220,340に表示する。このようにして、プラントオペレータの行動訓練が開始される。」
(3) 引用文献Cには、以下の記載がある。
「【0032】尚、上記訓練例は、第一攻撃パターン31によるものを示したが攻撃シナリオ生成部13は、シナリオ作成モジュール15により複数の攻撃パターンを組み合わせて自由に攻撃シナリオを設定することができる。その際、自動で必要事項を補完することでシナリオが作成される。又、上記ST4は、ST1の前段階に存在してもよい。」
(4) 引用文献Dには、以下の記載がある。
「【0010】次に動作について説明する。指導員卓2からプラントデータの収集を要求するとプラントデータ収集要求処理部9から計算機2側データ伝送処理部8にプラントデータ収集要求信号を出力する。計算機2側データ伝送処理部8がプラントデータ収集要求信号をプラントデータ収集装置5に伝送するとプラントデータ収集処理部16は運転データ6と環境データ7のデータを収集する。収集された運転データ6及び環境データ7はプラントデータ収集装置5側データ伝送処理部8より計算機2へ伝送する。計算機2に伝送された運転データ6及び環境データ7はプラントデータ10としてまとめられる。初期値データ生成処理部11はプラントデータ10を基にシミュレーションモデル模擬演算用の初期値データ12を生成する。生成された初期値データ12と既存初期値データ13は初期値データ選択判断器14によりいづれか選択されシミュレーションモデル15に与えられる。また環境条件も環境条件を記憶した環境条件データ31とプラントデータ10の中の実際の環境データを条件判断器34によりいづれか選択されシミュレーションモデル15に与えられる。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「プラント」は「原子力プラント50」であり、これに原子力発電プラントが含まれることは当業者にとって自明な事項である。
イ 引用発明の「緊急時対策所12」における「配備された指揮者及び複数の運転員」は、作業を行う者であるといえる。また、引用発明の「緊急時対策所12」は、「原子力プラント50」である「プラント内で緊急事態が発生した際に、配備された指揮者及び複数の運転員により事故収束方法の意思決定を行う」とともに、「指揮者により決定された事故収束方法に基づく指令信号tを出力する」から、原子力プラント内で緊急事態が発生した際に指揮者により決定された事故収束方法を出力するための操作及び当該操作に基づいた処理を行っていると認められる。さらに、引用発明の「緊急時対策所12」は、「監視ネットワーク18を介して伝送されるプラントデータsを受信する第1受信部13と、指揮者により決定された事故収束方法に基づく指令信号tを出力する指令出力部14と、を備えて」いるから、防災のための情報システムであると認められる。
したがって、上記アを踏まえると、引用発明の「緊急時対策所12」は、本願発明1の「作業者の操作により、原子力発電プラントの緊急時において」「所定の処理を実行する」「防災システム」に相当する。
ウ 引用発明の「緊急時制御室15」における「複数の運転員」は、作業を行う者であるといえる。また、引用発明の「制御部17における制御操作は、緊急事態が発生した際に緊急時制御室15に配備される運転員により実行され」るから、引用発明の「緊急時制御室15」では、当該「制御操作」に基づいた処理が行われることも明らかである。さらに、引用発明の「緊急時制御室15」は、「原子力プラント50」である「プラント内で緊急事態が発生した際に、」「緊急時対策所12から出された指令信号tに対応する特定事故対応設備11の制御を実施する場所であり、」「監視ネットワーク18を介して伝送される指令信号tを受信する第2受信部16と、指令信号tに対応する特定事故対応設備11の制御信号uを出力する」処理を行っているから、防災のための情報システムであると認められる。
したがって、上記アを踏まえると、引用発明の「緊急時制御室15」は、本願発明1の「作業者の操作により、原子力発電プラントの緊急時において」「所定の処理を実行する」「防災システム」に相当する。
エ 上記イ、ウを踏まえると、引用発明の「緊急時対策所12」及び「緊急時制御室15」がプラント内で緊急事態が発生した際に、互いに異なる処理を行っていることは明らかであるから、引用発明の「緊急時対策所12」及び「緊急時制御室15」は、本願発明1の「作業者の操作により、原子力発電プラントの緊急時において互いに異なる所定の処理を実行する複数の防災システム」に相当する。
オ 引用発明の「模擬プラントデータs’」は、「設定されたプラントの各種運転状態をシミュレーション(模擬)」するものであるから、プラントの挙動を模擬したデータであるといえる。
したがって、上記アを踏まえると、引用発明の「原子力プラント50に設けられたプラント機器53及び特定事故対応設備11を仮想的に構築し、設定されたプラントの各種運転状態をシミュレーション(模擬)して、模擬プラントデータs’を生成する模擬計算部20」は、本願発明1の「シミュレーションによって、前記原子力発電プラントの挙動を模擬した模擬プラントデータを算出するシミュレータ」に相当する。
カ 引用発明において「シミュレーションを実行するプラント状態は運転員により設定され」るから、当該シミュレーションを実行するプラント状態は運転員により入力が行われた値であるといえる。
したがって、上記ア、オを踏まえると、引用発明の「模擬計算部20は、緊急事態等の各種プラント状態のシミュレーションを実行して、プラント状態に応じた模擬プラントデータs’を生成するとともに、シミュレーションを実行するプラント状態は運転員により設定され」る構成は、本願発明1の「前記シミュレータは、前記原子力発電プラントの挙動を模擬するシミュレーションを行うための入力値を取得するデータ取得部と、前記データ取得部が取得した入力値」「に応じた前記模擬プラントデータを」「算出する模擬プラントデータ算出部と、を有」する構成に相当する。
キ 引用発明の「建屋内で緊急事態が発生した際に事故収束の対応を実施するプラント監視時」、「訓練設備19を用いてプラント訓練を実施するプラント訓練時」、「建屋内で緊急事態が発生した際に事故収束の対応を実施するプラント監視時」「の動作」、「訓練設備19を用いてプラント訓練を実施するプラント訓練時」「の動作」、「プラントデータs」、「模擬プラントデータs’」は、それぞれ、本願発明1の「プラントの緊急時」、「プラントの緊急時の対応の訓練時」、「防災モード」、「訓練モード」、「プラントの挙動を示すプラントデータ」、「模擬プラントデータ」に相当する。
したがって、上記ア、イ、ウ、オ、カを踏まえると、引用発明の「訓練システム10は、通常のプラント運転を監視して、建屋内で緊急事態が発生した際に事故収束の対応を実施するプラント監視時と、訓練設備19を用いてプラント訓練を実施するプラント訓練時との2つの動作に分けられるとともに、各動作の切り替えは切替スイッチ25を用いて行われ、プラント監視時の動作について、緊急時対策所12の第1受信部13は、監視ネットワーク18を介して送信されたプラントデータsを受信し、緊急時対策所12に配備された指揮者は、プラントデータsを監視して、プラント内で緊急事態が発生した際に、事故の大きさ、程度、種類に応じて事故収束方法を決定し、制御部17における制御操作は、緊急事態が発生した際に緊急時制御室15に配備される運転員により実行され、プラント訓練時について、模擬計算部20は、緊急事態等の各種プラント状態のシミュレーションを実行して、プラント状態に応じた模擬プラントデータs’を生成するとともに、シミュレーションを実行するプラント状態は運転員により設定され、緊急時対策所12の第1受信部13は、訓練ネットワーク24を介して模擬プラントデータs’を受信し、緊急時対策所12に配備された訓練者は、模擬プラントデータs’を監視して、模擬計算部20でシミュレーションされた緊急事態の大きさ、程度、種類に応じて事故収束方法を決定し、制御部17における制御操作は、緊急時制御室15に配備される訓練対象者により実行され」る構成は、本願発明1の「複数の前記防災システムは、前記原子力発電プラントの緊急時に、前記原子力発電プラントの挙動を示すプラントデータを取得して、前記作業者の操作により前記所定の処理を実行する防災モードと、前記原子力発電プラントの緊急時の対応の訓練時に、前記シミュレータから前記模擬プラントデータを取得して、前記作業者の操作により前記所定の処理を実行する訓練モードと、を切り替え可能であ」る構成に相当する。
ク 引用発明の「緊急時対策所12」では、「監視ネットワーク18を介して伝送されるプラントデータsを受信する」とともに、「緊急時対策所12に配備された指揮者は、プラントデータsを監視して、プラント内で緊急事態が発生した際に、事故の大きさ、程度、種類に応じて事故収束方法を決定」する処理を行っているから、指揮者が事故収束方法を決定するために、受信したプラントデータsの表示を当然に行っていると認められる。
したがって、上記アを踏まえると、引用発明の「緊急時対策所12」を備える構成は、本願発明1の「複数の前記防災システムは、緊急時の前記原子力発電プラントによる外部環境への影響を予測する影響予測システムと、緊急時の前記原子力発電プラントの状況の表示を行う意思決定支援システムと、の少なくとも一方」のうちの「緊急時の前記原子力発電プラントの状況の表示を行う意思決定支援システム」を有する構成に相当する。
ケ 引用発明の「プラントデータs」が、プラントにおける現在の事象の進展状況を反映していることは明らかである。また、引用発明の「訓練用シミュレータ29」において「予測」された、「プラント状態が悪化するまでの時間、データの推移等」、「プラントデータsの挙動」は、今後のプラントの進展状況を表す情報であるといえる。さらに、引用発明の「訓練用シミュレータ29」は、データを解析する装置であるといえる。
したがって、上記クを踏まえると、引用発明の「緊急時対策所12が、訓練用シミュレータ29を備えており、訓練用シミュレータ29は、プラント訓練時において、緊急事態の発生時のプラントデータsを用いてプラント状態が悪化するまでの時間、データの推移等を予測し、訓練用シミュレータ29において、プラント監視時にプラントデータsの挙動を予測させる構成としても良い」構成は、本願発明1の「前記意思決定支援システムは、予測処理として、」「現在の事象の進展状況の表示と、今後の事象の進展状況の予測」「を行う解析装置を備え」る構成に相当する。
コ 引用発明における「訓練対象者の制御結果を反映したプラント状態のシミュレーションを実行し」て「生成した模擬プラントデータs’」は、訓練対象者の制御結果を反映したプラント状態のシミュレーションを実行する前の模擬プラントデータs’を更新するデータであるといえる。
したがって、上記イ、オ、キを踏まえると、引用発明の「プラント訓練時について、」「模擬計算部20は、訓練対象者の制御結果を反映したプラント状態のシミュレーションを実行し、生成した模擬プラントデータs’を、訓練ネットワーク24を介して緊急時対策所12に出力」する構成は、本願発明1の「前記シミュレータは、前記訓練モードにおいて、前記防災システムの前記所定の処理に基づき前記模擬プラントデータを更新して、更新した前記模擬プラントデータを、」「前記防災システムに出力する」構成に相当する。
サ 上記イ、ウを踏まえると、引用発明の「原子力プラント50の訓練システム10」は、本願発明1の「防災訓練システム」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「作業者の操作により、原子力発電プラントの緊急時において互いに異なる所定の処理を実行する複数の防災システムと、シミュレーションによって、前記原子力発電プラントの挙動を模擬した模擬プラントデータを算出するシミュレータと、を有し、前記シミュレータは、前記原子力発電プラントの挙動を模擬するシミュレーションを行うための入力値を取得するデータ取得部と、続きを表示(全11行)前記データ取得部が取得した入力値に応じた前記模擬プラントデータを算出する模擬プラントデータ算出部と、を有し、複数の前記防災システムは、前記原子力発電プラントの緊急時に、前記原子力発電プラントの挙動を示すプラントデータを取得して、前記作業者の操作により前記所定の処理を実行する防災モードと、前記原子力発電プラントの緊急時の対応の訓練時に、前記シミュレータから前記模擬プラントデータを取得して、前記作業者の操作により前記所定の処理を実行する訓練モードと、を切り替え可能であり、緊急時の前記原子力発電プラントによる外部環境への影響を予測する影響予測システムと、緊急時の前記原子力発電プラントの状況の表示を行う意思決定支援システムと、の少なくとも一方を有し、前記意思決定支援システムは、予測処理として、現在の事象の進展状況の表示と、今後の事象の進展状況の予測を行う解析装置を備え、前記シミュレータは、前記訓練モードにおいて、前記防災システムの前記所定の処理に基づき前記模擬プラントデータを更新して、更新した前記模擬プラントデータを、前記防災システムに出力する、防災訓練システム。」
(相違点1)
本願発明1では、「前記データ取得部が取得した入力値を調整して、前記原子力発電プラントの挙動を模擬するシミュレーションを実行することで、前記原子力発電プラントの予め定めされていない様々な事象を模擬的に再現するように調整した入力値に応じた前記模擬プラントデータを、実際には原子力発電プラントに異常がなくプラントデータが正常な値である場合でも、原子力発電プラントに異常が起こった異常値として算出する」のに対し、引用発明では「模擬計算部20は、緊急事態等の各種プラント状態のシミュレーションを実行して、プラント状態に応じた模擬プラントデータs’を生成するとともに、シミュレーションを実行するプラント状態は運転員により設定され」るものの、このような構成について特定されていない点。
(相違点2)
本願発明1では、「起因事象の同定」を行うのに対して、引用発明では、このような構成について特定されていない点。
(相違点3)
本願発明1では、「外部環境への影響の予測」を行うのに対して、引用発明では、このような構成について特定されていない点。
(相違点4)
「解析装置」を備えるものが、本願発明1では、「前記影響予測システム及び前記意思決定支援システム」であるのに対して、引用発明では、「意思決定支援システム」である点。
(相違点5)
本願発明1では、「更新した前記模擬プラントデータを、複数の前記防災システムに出力する」のに対して、引用発明では、「プラント訓練時について、」「模擬計算部20は、訓練対象者の制御結果を反映したプラント状態のシミュレーションを実行し、生成した模擬プラントデータs’を、訓練ネットワーク24を介して緊急時対策所12に出力」するものの、出力先の「防災システム」が「複数」であるとは特定されていない点。
(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、相違点1に係る本願発明1の「前記データ取得部が取得した入力値を調整して、前記原子力発電プラントの挙動を模擬するシミュレーションを実行することで、前記原子力発電プラントの予め定めされていない様々な事象を模擬的に再現するように調整した入力値に応じた前記模擬プラントデータを、実際には原子力発電プラントに異常がなくプラントデータが正常な値である場合でも、原子力発電プラントに異常が起こった異常値として算出する」構成は、上記引用文献1-3には記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2-4について
本願発明2-4は、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3 本願発明5について
本願発明5は、本願発明1の構成に対応する構成を実質的に備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定についての判断
令和5年6月16日付けの補正により、補正後の請求項1-5は、相違点1に係る本願発明1の構成を有するものとなった。
そして、当該構成は、原査定における引用文献A-Dには記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1-5は、当業者であっても、引用文献A-Dに基づいて容易に発明をすることができたものではない。
よって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-013849