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特許拒絶査定不服審判

2022-013597

噴射制御装置

審判番号
2022-013597
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-160347外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年08月30日
審決日
2023年06月06日
公報発行日
2023年06月30日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (F02D) / P18 .537-WY (F02D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第36条、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2018-160347「噴射制御装置」拒絶査定不服審判事件〔令和2年3月5日出願公開、特開2020-33926、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 20項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成30年8月29日の出願であって、令和2年12月2日に手続補正書及び上申書が提出され、令和3年11月25日付け(発送日:令和3年11月30日)で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の令和4年1月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和4年6月7日付け(発送日:令和3年6月14日)で拒絶査定がなされ、これに対し、令和4年8月30日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要

原査定の拒絶の理由は、大略以下のとおりである。

1.(進歩性)本願の請求項1ないし8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献一覧>

1.特開2012-110096号公報

2.特開2006-336568号公報

3.特開2015-175325号公報

2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の請求項1ないし8の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第3 本願発明

本願の請求項1ないし請求項8に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、令和4年8月30日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に記載されたとおりものであるところ、本願発明1、本願発明4及び本願発明6は、特許請求の範囲の請求項1、請求項4及び請求項6に記載された以下のとおりのものと認める。

1.本願発明1

「 燃料噴射弁を開弁・閉弁するために電流を通電制御する電流通電制御部(14)と、
前記燃料噴射弁に流れる電流をモニタする電流モニタ部(15)と、
前記燃料噴射弁に対し開弁用のピーク電流を通電するための昇圧電圧を、スイッチング素子をオン・オフ制御することで電源電圧から昇圧完了電圧に生成制御する昇圧制御部(13)と、を備え、
前記昇圧制御部は、前記昇圧電圧を監視し、当該昇圧電圧が前記昇圧完了電圧を下回る所定の昇圧開始電圧(Vsta)を下回ると生成制御を開始するものであり、
前記電流通電制御部が前記燃料噴射弁に電流を通電開始し、前記昇圧電圧が所定の昇圧開始電圧を下回ると、
前記昇圧制御部は、前記昇圧電圧の生成制御を開始し、前記電流モニタ部により検出される燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流を検出するための閾値に達するタイミングの前で且つ前記ピーク電流の閾値よりも低く設定された第1所定電流に達したタイミングで前記昇圧電圧の生成制御を停止し始め、
前記燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流の閾値に達するタイミングを含んで実行される前記燃料噴射弁を開弁・閉弁する1回の噴射処理の間で且つ前記ピーク電流の閾値に達したタイミングを含む期間内だけ前記昇圧電圧の生成制御を停止し、前記期間内の後に前記昇圧電圧が前記昇圧完了電圧に達するまでの間は前記昇圧電圧を生成制御する噴射制御装置。」

2.本願発明4

「 燃料噴射弁を開弁・閉弁するために電流を通電制御する電流通電制御部(14)と、
前記燃料噴射弁に流れる電流をモニタする電流モニタ部(15)と、
前記燃料噴射弁に対し開弁用のピーク電流を通電するための昇圧電圧を、スイッチング素子をオン・オフ制御することで電源電圧から昇圧完了電圧に生成制御する昇圧制御部(13)と、を備え、
前記昇圧制御部は、前記昇圧電圧を監視し、当該昇圧電圧が前記昇圧完了電圧を下回る所定の昇圧開始電圧を下回ると生成制御を開始するものであり、
前記電流通電制御部が前記燃料噴射弁に電流を通電開始し、前記昇圧電圧が所定の昇圧開始電圧を下回ると、前記昇圧制御部は前記昇圧電圧の生成制御を開始し、前記電流モニタ部により検出される燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流を検出するための閾値に達するタイミングで前記昇圧電圧の生成制御を停止し始め、
前記昇圧制御部は、前記燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流の閾値に達するタイミングを含んで実行される前記燃料噴射弁を開弁・閉弁する1回の噴射処理の間で且つ前記停止し始めたタイミングから当該ピーク電流の閾値よりも低く設定された第2所定電流を前記燃料噴射弁の通電電流が下回るまでの期間内だけ前記昇圧電圧の生成制御を停止し、前記期間内の後で且つ前記昇圧電圧が前記昇圧完了電圧に達するまでの間は前記昇圧電圧を生成制御する噴射制御装置。」

3.本願発明6

「 燃料噴射弁を開弁・閉弁するために電流を通電制御する電流通電制御部(14)と、
前記燃料噴射弁に流れる電流をモニタする電流モニタ部(15)と、
前記燃料噴射弁に対し開弁用のピーク電流を通電するための昇圧電圧を、スイッチング素子をオン・オフ制御することで電源電圧から昇圧完了電圧に生成制御する昇圧制御部(13)と、を備え、
前記昇圧制御部は、前記昇圧電圧を監視し、当該昇圧電圧が前記昇圧完了電圧を下回る所定の昇圧開始電圧を下回ると生成制御を開始するものであり、
前記電流通電制御部が前記燃料噴射弁に電流を通電開始し、前記昇圧電圧が所定の昇圧開始電圧を下回ると、前記昇圧制御部は前記昇圧電圧の生成制御を開始し、
前記電流通電制御部が前記燃料噴射弁に電流を通電開始する時点を起点としてゼロを超えるように予め設定され前記電流モニタ部により検出される燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流を検出するための閾値に達するまでの時間に設定される第1所定時間を経過するタイミングまで前記昇圧電圧を昇圧制御し、
前記第1所定時間を経過するタイミングから、前記通電開始する時点から前記燃料噴射弁を開弁・閉弁する1回の噴射処理を終了するまでの間に設定される第2所定時間を経過するタイミングまでの期間内だけ前記昇圧電圧の生成制御を停止し、前記期間内の後で且つ前記昇圧電圧が前記昇圧完了電圧に達するまでの間は前記昇圧電圧を生成制御する噴射制御装置。」

第4 引用文献、引用発明等

1.引用文献1

(1)引用文献1の記載事項

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原査定に引用された引用文献1(特開2012-110096号公報)には、「電子制御装置」に関して、次の記載事項及び図示事項がある(下線部は当審が付した。以下同様。)。

ア 「【0001】
この発明は、マイクロプロセッサを内蔵し、多数の電気負荷の開閉駆動制御を行なう電子制御装置に係り、特に、特定の大電流負荷の負荷電流の断続に伴って電源ラインに発生するノイズを抑制する電子制御装置に関するものである。」
イ 「【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る電子制御装置を示す全体回路ブロック図である。図1において、例えば車載エンジン制御装置である電子制御装置100は、マイクロプロセッサ110を主体として構成され、電気負荷群105の中の特定の電気負荷106を過励磁制御するための補助電源となる昇圧回路190と開閉制御回路180とを内蔵している。」
ウ 「【0017】
電子制御装置100によって駆動される電気負荷群105は、例えば点火コイル(ガソリンエンジンの場合)、吸気弁開度制御用モータなどの主機類や、排気ガスセンサ用のヒータ、負荷給電用の電源リレー、エアコン駆動用の電磁クラッチ、警報・表示機器などの補機類の電気負荷によって構成されている。また、電気負荷群105の中の特定の電気負荷である電磁コイル106は、燃料噴射用電磁弁を駆動するものであり、複数の電磁コイル106は、各気筒毎に設けられた後述の選択開閉素子によって順次切換接続されて多気筒エンジンの各気筒に対して燃料噴射を行うようになっている。
【0018】
次に、電子制御装置100の内部構成として、マイクロプロセッサ110は、例えばフラッシュメモリである不揮発プログラムメモリ111、演算処理用のRAMメモリ112、不揮発データメモリ113、多チャンネルAD変換器114と協働するようになっている。
【0019】
定電圧電源回路120は、外部電源101から第1の電源リレーの出力接点102aと給電端子102bを介して給電されて、例えばDC5Vの安定化電圧Vccを発生してマイクロプロセッサ110に給電する。
【0020】
給電端子102bと定電圧電源回路120との間を接続する内部電源線102cとグランド回路との間には、例えばアルミ電解コンデンサである第1の大容量コンデンサ121と、例えばセラミックコンデンサである小容量の第1のバイパスコンデンサ122とが接続されている。安定化された制御電圧Vccを発生する定電圧電源回路120の出力端子とグランド回路との間には、例えばアルミ電解コンデンサである第2の大容量コンデンサ123と、例えばセラミックコンデンサである小容量の第2のバイパスコンデンサ124とが接続されている。」
エ 「【0027】
昇圧回路190は、昇圧用インダクタンス素子191、充電ダイオード192、高圧コンデンサ193、昇圧用開閉素子194、電流検出抵抗195、ゲート回路196、駆動抵抗197、電圧制御路198を主体として構成された補助電源である。昇圧用インダクタンス素子191は、外部電源101、第2の電源リレーの出力接点103a、側路給電端子103b、電源平滑回路130A、昇圧用開閉素子194、電流検出抵抗195を通じて給電され、昇圧用開閉素子194が開路したときには昇圧用インダクタンス素子191に蓄積されていた電磁エネルギーを充電ダイオード192を介して高圧コンデンサ193に放出するよう構成されている。
【0028】
なお、電圧制御回路198は、電流検出抵抗195の両端電圧が所定値以下であるときに、通電指令出力DRの論理レベルを「L」にしてゲート回路196と駆動抵抗197を通じて昇圧用開閉素子194を導通させると共に、電流検出抵抗195の両端電圧が所定値以上となった後の所定期間に、通電指令出力DRの論理レベルを「H」にして昇圧用開閉素子194の駆動を停止し、この駆動停止期間に高圧コンデンサ193に対する充電が行われるよう構成されている。
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【0029】
また、このようにして昇圧用開閉素子194のON/OFF動作を繰返すことにより、高圧コデンサ193の充電電圧が所定の目標高電圧Vpmax(後述の図3(H)参照)に到達すると、電圧制御回路198は昇圧用開閉素子194に対する通電指令出力DRの論理レベルを「H」にして通電停止するように構成されている。
【0030】
昇圧回路190は更に、後述の開閉制御回路180が昇圧禁止信号INHを発生しているときに、ゲート回路196を介して昇圧用開閉素子194の通電指令出力DRを停止するようになっている。
【0031】
開閉制御回路180は、開閉素子181と側路開閉素子182を備え、側路開閉素子182は昇圧回路190から目標高電圧以下の昇圧電圧Vhを受けて、電磁コイル106に対して急速給電電圧を供給するようになっている。また、開閉素子181は外部電源101から負荷駆動電圧Vbbを受けて、逆流阻止ダイオード183を介して電磁コイル106に接続され、持続給電電圧を供給する。
【0032】
マイクロプロセッサ110は、入力センサ群104の中のクランク角センサの動作状態に応動して動作指令信号Drjを発生し、開閉制御回路180は、動作指令信号Drjの発生にともなって開閉素子181と側路開閉素子182を閉路駆動すると共に、昇圧禁止信号INHを発生して昇圧用開閉素子194を遮断する。電磁コイル106に対する励磁電流が所定値まで上昇すると側路開閉素子182は開路され、やがて昇圧禁止信号INHも解除されて昇圧回路190の昇圧動作が開始される。」
オ 「【0033】
次に、図1で説明した昇圧回路190と開閉制御回路180の詳細を示す図2について説明する。図2において、昇圧回路190に含まれる電圧制御回路198は、比較基準電圧981a、982a、比較回路981b、982b、パルス発生回路983、論理和素子984、及び分圧抵抗985a、985bによって構成されている。
【0034】
昇圧用開閉素子194は、電流検出抵抗195の両端電圧が所定の比較基準電圧981aの値未満である時にはゲート素子196の出力から駆動抵抗197を介して通電駆動されている。しかし、電流検出抵抗195の両端電圧が所定の基準電圧981aの値以上のなると、比較回路981bとパルス発生回路983と論理和素子984を介してゲート回路196の出力発生を所定時間だけ停止し、昇圧用開閉素子194が遮断されている期間に昇圧用インダクタンス素子191から充電ダイオード192を通じて高圧コンデンサ193に対する充電が行われるよう構成されている。
【0035】
また、このようにして昇圧用開閉素子194のON/OFF動作を繰返すことによって、高圧コンデンサ193の充電電圧が所定の目標高電圧に到達し、分圧抵抗985a、985bによる分圧電圧が所定の比較基準電圧982aを超過すると、比較回路982bと論理和素子984を介しゲート回路196の出力発生を停止して、昇圧用開閉素子194に対する通電指令出力DRの論理レベルを「H」にして通電停止するように構成されている。
【0036】
開閉制御回路180は、開閉素子181、逆流阻止ダイオード183、側路開閉素子182に加えて電磁コイル106の下流位置に直列接続された選択開閉素子184と電流検出抵抗186を備えている。選択開閉素子184には電圧制限ダイオード185が並列接続されるとともに、電磁コイル106と選択開閉素子184と電流検出抵抗186の直列回路に対して転流ダイオード187が並列接続されている。
【0037】
なお、電磁コイル106が多気筒エンジンに対する燃料噴射用電磁弁を気筒別に制御するものである場合には、複数の電磁コイル106のそれぞれに対して選択用開閉素子184が設けられ、何れか一つの選択用開閉素子184が導通駆動されるようになっている。選択開閉素子184が閉路している状態で開閉素子181が開路した場合には、電磁コイル106の励磁電流は選択開閉素子184と低抵抗の電流検出抵抗186と転流ダイオード187を介して還流減衰するようになっている。しかし、選択開閉素子184が開路したときには、電磁コイル106の励磁電流は電圧制限ダイオード185と電流検出抵抗186と転流ダイオード187を介して還流し、高速減衰するようになっている。」
カ 「【0038】
実施の形態1に係る電子制御装置100は前記のように構成されており、次にその動作並びに作用について詳細に説明する。
図3は、実施の形態1に係る電子制御装置100の動作を説明するタイムチャートであり、図4はフローチャートである。
【0039】
続きを表示(全60行)
まず、図1において、図示しない電源スイッチが閉路されると、第1、第2、第3の電源リレーの出力接点102a、103a、105aが閉路して、電子制御装置100の給電端子102bには制御電源電圧Vbaが印加され、側路給電端子103bと負荷電源端子105bには負荷駆動電圧Vbb、Vbcがそれぞれ印加される。その結果、定電圧電源回路120が、例えばDC5Vに安定化された所定の制御電圧Vccを発生してマイクロプロセッサ110が制御動作を開始する。
【0040】
マイクロプロセッサ110は、入力センサ群104の動作状態と、不揮発プログラムメモリ111に格納された制御プログラムの内容に応動して電気負荷群105に対する負荷駆動指令信号Driを発生するとともに、電気負荷群105の中の特定の電気負荷である電磁コイル106に対しては図3で後述する動作指令信号Drjを発生する。一方、昇圧回路190は、昇圧用開閉素子194の断続動作によって高圧コンデンサ193を高圧充電する。
【0041】
図3において、図3(A)は、マイクロプロセッサ110が定期的に発生する動作指令信号Drjの論理レベルを示しており、動作指令信号Drjの論理レベルが「H」になると開閉制御回路180によって電磁コイル106に対する通電制御が行われる。
【0042】
図3(B)は、側路開閉素子182が閉路駆動されて、電磁コイル106に対して昇圧回路190による昇圧電圧Vhが給電されている期間を論理レベル「H」として表現したタイムチャートである。
【0043】
図3(C)は、開閉素子181が閉路駆動されて、電磁コイル106に対して負荷駆動電圧Vbbが印加されている期間を論理レベル「H」として表現したタイムチャートであるが、側路開閉素子182が閉路している期間では開閉素子181から電磁コイル106に対する励磁電流が流れることはない。また、電磁コイル106の励磁電流を開弁保持電流に維持する過程では開閉素子181が断続動作するようになっている。
【0044】
図3(D)は、選択開閉素子184が閉路駆動されて、選択された電磁コイル106に対する通電が可能となっている期間を論理レベル「H」として表現したタイムチャートであるが、選択開閉素子184が開路されると電磁コイル106に対する励磁電流は高速減衰するようになっている。
【0045】
図3(E)は、昇圧禁止信号INHが発生している期間を論理レベル「H」で表現したタイムチャートであり、この昇圧禁止信号INHは側路開閉素子182が閉路している期間と開閉素子181が連続閉路している期間において論理レベル「H」となっている。
【0046】
図3(F)は、側路開閉素子182の開閉動作に応動する負荷駆動電圧Vbbの電圧レベルを示したタイムチャートであり、側路開閉素子182が開路した直後に異常降下電圧Vdが発生し、負荷駆動電圧Vbbは一時的に制御電圧Vcc以下にまで減衰するが、電源平滑回路130A内の第2のコンデンサ132aの作用によって電圧降下が抑制され、開閉制御回路180が誤動作しないための最小動作電圧Vmin以上の値に維持されている。
【0047】
図3(G)は、開閉素子181、側路開閉素子182、選択開閉素子184の開閉動作に応動する電磁コイル106の励磁電流の制御特性を示したタイムチャートであり、側路開閉素子182が閉路して高圧コンデンサ193に充電されている高電圧が電磁コイル106に印加され、励磁電流が増大し、やがて所定のピーク電流Iaに到達すると側路開閉素子182が開路し、電磁コイル106に流れていた励磁電流は開閉素子181側に移行して、印加電圧は高圧の昇圧電圧Vhから負荷駆動電圧Vbbに切換わることによって励磁電流が減衰する。励磁電流が更に減少して所定の減衰判定電流Ib以下に減少すると開閉素子181も開路するが、励磁電流は所定の開弁保持電流Ihを維持するように開閉素子181が開閉動作を行うようになっている。しかし、動作指令信号Drjの論理レベルが「L」となることによって開閉素子181が開路して、励磁電流は急速遮断されるようになっている。
【0048】
図3(H)は、昇圧禁止信号INHの動作に応動する昇圧電圧Vhの電圧レベルの変動を示したタイムチャートであり、動作指令信号Drjの論理レベルが「H」に変化した時刻t0において、高圧コンデンサ193の充電電圧は目標高電圧Vpmaxである最大電圧に達しており、側路開閉素子182が開路する時刻t1において放電最終電圧Vpminである最小電圧にまで放電する。
【0049】
側路開閉素子182が開路して高圧コンデンサ193の放電が停止してから昇圧禁止信号INHが解除される時刻t2までは昇圧電圧Vhは放電最終電圧Vpminを維持し、昇圧禁止信号INHが解除されると昇圧用開閉素子194の断続動作が開始して高圧コンデンサ193の充電が行われ、時刻t3において目標高電圧Vpmaxである最大電圧に到達するようになっている。
【0050】
充電所要時間(t3-t2)は、外部電源101の電源電圧の変動によって変化するが、次回の高電圧給電が開始するまでには目標とする最大電圧に到達するように昇圧用インダクタンス素子191の特性が決定されている。
【0051】
次に、図4について、図3のタイムチャートを参照しながら説明する。なお、図4は、開閉制御回路180の論理制御動作をフローチャートで代替表現したものとなっている。
図4において、工程400は、開閉制御回路180が制御動作を開始するステップである。続く工程410は、入力センサ群104の中のクランク角センサの動作に応動して選択指令信号が更新されたかどうかを判定し、更新されていなければNOの判定を行って工程410へ復帰し、更新されていればYESの判定を行って工程411へ移行する判定待機ステップである。
【0052】
工程411は、複数の選択開閉素子184のうちで、更新決定された一つの開閉素子184が閉路駆動され、以下、後述の工程420まで閉路状態を持続するステップである。
【0053】
続く工程412は、マイクロプロセッサ110が発生する動作指令信号Drjの論理レベルが「H」になったかどうかを判定し、「H」でなければNOの判定を行って工程412へ復帰し、「H」であればYESの判定を行って工程413へ移行する判定待機ステップである。
【0054】
工程413は、昇圧禁止信号INHを発生し、側路開閉素子182と開閉素子181を閉路駆動するステップであり、ここで発生した昇圧禁止信号INHは後述の工程420で解除されるようになっている。
【0055】
続く工程414は、電磁コイル106の励磁電流が所定のピーク電流Iaに到達したかどうかを判定し、到達していなければNOの判定を行って工程413に復帰して現状動作を持続し、到達すればYESの判定を行って工程415へ移行する判定待機ステップである。
【0056】
工程415は、側路開閉素子182を開路し、開閉素子181は閉路駆動を持続しておくステップであり、以降の工程では側路開閉素子182は開路状態が維持されている。
【0057】
続く工程416は、電磁コイル106の励磁電流が所定の減衰判定電流Ibに減衰したかどうかを判定し、減衰していなければNOの判定を行って工程415に復帰して現状動作を持続し、減衰すればYESの判定を行って工程420へ移行する判定待機ステップである。
【0058】
工程420は、開閉素子181を開路するとともに、選択開閉素子184も一時的に開路して励磁電流を高速減衰させるステップである。
【0059】
続く工程421は、電磁コイル106の励磁電流が所定の保持電流制御域に減衰したかどうかを判定し、減衰していなければNOの判定を行って工程420に復帰して現状動作を持続し、減衰すればYESの判定を行って工程422へ移行する判定待機ステップである。
【0060】
工程422は、マイクロプロセッサ110が発生する動作指令信号Drjの論理レベルが「H」になっているかどうかを判定し、「H」でなければNOの判定を行って工程428へ移行し、「H」であればYESの判定を行って工程423へ移行する判定ステップである。
【0061】
工程423は、選択開閉素子184を再び閉路するとともに開閉素子181は引き続いて開路状態に維持しておくステップである。
【0062】
続く工程424は、電磁コイル106の励磁電流が所定の保持最小電流Ie以下に減衰したかどうかを判定し、減衰していなければNOの判定を行って工程422に復帰して現状動作を持続し、減衰すればYESの判定を行って工程425へ移行する判定待機ステップである。
【0063】
工程425は、マイクロプロセッサ110が発生する動作指令信号Drjの論理レベルが「H」になっているかどうかを判定し、「H」でなければNOの判定を行って工程428へ移行し「H」であればYESの判定を行って工程426へ移行する判定ステップである。
【0064】
工程426は、選択開閉素子184は閉路したままで開閉素子181を閉路するステップである。
【0065】
続く工程427は、電磁コイル106の励磁電流が所定の保持最大電流Id以上に増加したかどうかを判定し、増加していなければNOの判定を行って工程425に復帰して現状動作を持続し、増加していればYESの判定を行って工程422へ復帰する判定ステップである。
【0066】
工程428では、側路開閉素子182は開路した状態のままで、選択開閉素子184と開閉素子181をともに開路して電磁コイル106の励磁電流を高速遮断して動作終了行程401へ移行し、電源が投入されているかぎりは動作終了行程401から直ちに動作開始工程400へ移行するようになっている。」
キ 「【図3】
[図:0001398089000001.jpg]
」
ク 「【図4】
[図:0001398089000002.jpg]
」

(2)引用発明1

上記(1)の記載事項及び図示事項を総合し、整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「燃料噴射用電磁弁を制御する電磁コイル106に急速給電電圧を供給する開閉制御回路180と、
クランク角センサと、
昇圧用開閉素子194のON/OFF動作を繰り返すことで外部電源101から昇圧用インダクタンス素子191に給電された電磁エネルギーを高圧コンデンサ193に放出し、前記高圧コンデンサ193の充電電圧を所定の目標高電圧に到達させる昇圧回路190と、を備え、
前記昇圧回路190は、クランク角センサに応動してマイクロプロセッサ110が昇圧禁止信号INHを発生しているときに昇圧用開閉素子194の通電指令出力DRを停止する電子制御装置100。」

2.引用文献2

(1)引用文献2の記載事項

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原査定に引用された引用文献2(特開2006-336568号公報)には、「インジェクタ駆動装置」に関して、次の記載事項及び図示事項がある。

ケ 「【0008】
本発明の目的は、エンジンに燃料噴射を行うインジェクタ駆動装置におけるチャージコンデンサの充電に際して、DCDCコンバータのスイッチング動作によって発生する電磁ノイズを抑制し、しかも電磁ノイズ対策に要するコストを低減させることである。」
コ 「【0021】
図1は、ディーゼルエンジンの燃料噴射制御システムの概要を示す構成図である。
【0022】
本燃料噴射制御システムで扱うディーゼルエンジンは4つの気筒を有しており、各気筒の4つのインジェクタはそれぞれ電磁ソレノイド10a,10b,10c,10dを備える。電磁ソレノイド10a~10dの通電タイミング及び通電時間を制御することにより、ディーゼルエンジンの各気筒への燃料噴射時期及び燃料噴射量が制御される。」
サ 「【0025】
本燃料噴射制御システムは、ECU20からの噴射信号S1a~S1dに基づき電磁ソレノイド10a~10dを通電させてインジェクタを駆動するためのインジェクタ駆動装置30を備える。インジェクタ駆動装置30は制御回路32を有しており、制御回路32がECU20との噴射信号S1a~S1d及びフェイル信号S2の送受信や、インジェクタ駆動装置30の各種スイッチング制御などを行う。さらに制御回路32はスイッチング態様設定手段としての充電制御部50を有しているが、詳しくは後述する。
【0026】
また、インジェクタ駆動装置30は、ピーク電流供給回路として、DCDCコンバータ34とチャージコンデンサ40とを備えており、DCDCコンバータ34の出力側はチャージコンデンサ40に接続されている。さらに、チャージコンデンサ40はMOSFET42を介して電磁ソレノイド10a~10dのハイサイドに接続されている。
【0027】
DCDCコンバータ34はインダクタ35と、スイッチング素子としてのMOSFET36と、電流検出抵抗37と、ダイオード38とから構成される。インダクタ35は一端が12ボルト程度のバッテリ電源+Bに接続され、他端がMOSFET36と電流検出抵抗37とを介して接地されている。また、インダクタ35とMOSFET36との接点Aと、チャージコンデンサ40との間に、チャージコンデンサ40に電流が流れる向きを順方向として、ダイオード38が接続されている。
【0028】
一方で、MOSFET36と電流検出抵抗37との接点Bと、制御回路32とが接続され、制御回路32は接点Bの電圧からDCDCコンバータ34に流れる電流を検知している。また、制御回路32とMOSFET36のゲートとが接続され、制御回路32によってMOSFET36のスイッチングが行われる。なお、チャージコンデンサ40の両端には図示していない電圧検出器が設けられており、制御回路32がチャージコンデンサ40の充電電圧を検知する。
【0029】
さらに、インジェクタ駆動装置30は、ホールド電流供給回路として、MOSFET44とダイオード46とを備えており、バッテリ電源+BにMOSFET44とダイオード46とが直列に接続されている。ダイオード46は電磁ソレノイド10a~10dに電流が流れる向きを順方向として、電磁ソレノイド10a~10dのハイサイドに共通接続されている。なお、電磁ソレノイド10a~10dのローサイドには図示していない電流検出器が設けられており、制御回路32が電磁ソレノイド10a~10dに流れる電流の大きさを検知している。制御回路32は電磁ソレノイド10a~10dに一定のホールド電流が流れるようにMOSFET44をスイッチングする。」
シ 「【0031】
さて、制御回路32が有する充電制御部50は、図2に示されるような構成である。充電制御部50はDCDCコンバータ34に流れる電流を制限するための遮断電流を可変に設定するものである。充電制御部50はMOSFET36をスイッチングしてDCDCコンバータ34を駆動する。充電制御部50は、チャージコンデンサ40が電気エネルギを放出して一定時間が経過してから、チャージコンデンサ40が所望の電圧に充電されるまで動作する。
【0032】
充電制御部50は、論理和演算器51と、噴射周期算出手段としての周波数-電圧変換回路(以下、FV変換回路という)52と、コンパレータ53とからなる。噴射信号S1a~S1dが論理和演算器51に入力され、論理和演算器51の出力がFV変換回路52に入力される。また、コンパレータ53の+入力端子にはFV変換回路52の出力が入力されるとともに、同-入力端子には接点Bの電圧が入力され、コンパレータ53の出力はMOSFET36のゲートに入力されている。
【0033】
ところで、チャージコンデンサ40は電磁ソレノイド10a~10dのハイサイドに共通接続されており、全気筒の噴射毎に充電が行われる。このため充電制御部50では論理和演算器51にて噴射信号S1a~S1dの論理和演算を行い、FV変換回路52は該演算信号の立ち上がりを噴射タイミングとして検知している。また、FV変換回路52は主として積分器から構成されるものであり、入力信号の周波数を電圧に変換して出力する。ここでは具体的に、噴射タイミングの平均的な周期に応じた電圧を出力する。つまりこの場合、毎回の噴射タイミング間隔ではなく、所定期間における噴射タイミングの頻度を反映できるよう平均的な周期が算出される。FV変換回路52の出力電圧は、コンパレータ53を通じMOSFET36をオフする基準であって、遮断電流Icに相当する制御量である。遮断電流Icの大きさは次の噴射タイミングまでにチャージコンデンサ40の充電が完了するものであって、そのためのFV変換回路52の入出力特性があらかじめ求められている。」
ス 「【0036】
図4は、多段噴射としてパイロット噴射とメイン噴射を行った場合の、インジェクタ駆動装置30の動作を表すタイミングチャートである。図4(a)はエンジンが比較的高速に回転するとき、図4(b)はエンジンが比較的低速に回転するときの様子を表している。それぞれの場合において充電制御部50では、噴射信号に基づく噴射タイミングの平均的な周期によって遮断電流Ic1及びIc2が設定されている。
【0037】
さて、図4(a)において時刻t11では、噴射信号S1aがハイレベルとなりパイロット噴射が開始される。このとき制御回路32は、MOSFET42を一時的にオンし、チャージコンデンサ40に蓄えられた電気エネルギを放出させて電磁ソレノイド10aにピーク電流(本実施の形態においては16アンペア程度)を供給し、インジェクタを高速開弁する。その後、制御回路32はホールド電流供給回路を動作させ、時刻t13まで一定のホールド電流(本実施の形態においては4.5アンペア程度)を供給して、インジェクタの開弁状態を維持する。
【0038】
一方でピーク電流の供給後には、時刻t12よりチャージコンデンサ40の充電が行われる。時刻t12において充電制御部50がMOSFET36をオンすると、DCDCコンバータ34に電流が流れ始める。このときの電流の過渡応答はインダクタ35や電流検出抵抗37等の抵抗体などによって一意に決まるものである。その後DCDCコンバータ34を流れる電流が遮断電流Ic1に達すると、充電制御部50はMOSFET36をオフする。このとき、インダクタ35の作用により接点Aにバッテリ電源の電圧よりも高い電圧が発生し、チャージコンデンサ40に電流が流れてチャージコンデンサ40の充電が行われる。チャージコンデンサ40に電流が流れなくなると、充電制御部50は再びMOSFET36をオンする。充電制御部50はチャージコンデンサ40が所望の電圧になるまで上記の動作を繰り返す。
【0039】
時刻15からt18までの期間にはメイン噴射が行われ、ピーク電流及びホールド電流の供給によってインジェクタが駆動される。さらにピーク電流供給回路では時刻t16からt17の期間においてチャージコンデンサ40の充電が行われる。短期的には遮断電流Ic1の大きさはほとんど変化しないため、充電にかかる時間t16~t17は時間t12~t14とほぼ同様である。また、時刻t19では噴射信号S1bがハイレベルになって次の気筒の燃料噴射が行われ、上述した動作を繰り返す。
【0040】
図4(b)では、t21~t23の期間にパイロット噴射が行われ、t25~28の期間にメイン噴射が行われる。各々の噴射開始当初にはチャージコンデンサ40からインジェクタに対してピーク電流が供給される。その後、時刻t22~24及び時刻t26~t27の期間に充電制御部50によってDCDCコンバータ34が駆動され、チャージコンデンサ40の充電が行われる。図4(b)では、図4(a)に比べてエンジン回転速度が遅く噴射信号S1a~S1dに基づく噴射タイミングの平均的な周期が長いため、遮断電流Ic2が遮断電流Ic1に比べて小さくなっている。また、チャージコンデンサ40の充電にかかる時間t22~t24及びt26~27は、図4(a)の時間t12~14及びt16~17に比べて長い。」
セ 「【図2】
[図:0001398089000003.jpg]
」
ソ 「【図4】
[図:0001398089000004.jpg]
」

(2)引用発明2

上記(1)の記載事項及び図示事項を総合し、整理すると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「 インジェクタを駆動する制御回路32と、
バッテリ電源+BからMOSFET36をスイッチングしてチャージコンデンサ40が所望の電圧に充電されるまで動作する充電制御部50と、を備え、
前記充電制御部50は、チャージ電流の供給後には時刻t12よりチャージコンデンサ40が所望の電圧になるまで充電が行われるインジェクタ駆動装置30。」

3.引用文献3

(1)引用文献3の記載事項

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原査定に引用された引用文献3(特開2015-175325号公報)には、「燃料噴射制御装置」に関して、次の記載事項及び図示事項がある。

タ 「【0011】
そこで、本発明は、高圧ポンプの調量弁の通電駆動とインジェクタの通電駆動とに、共通のコンデンサを用いる燃料噴射制御装置において、高圧ポンプの制御精度を良好にすることを目的としている。」
チ 「【0019】
以下に、本発明が適用された実施形態の燃料噴射制御装置について、図面を用い説明する。
[第1実施形態]
図1に示す第1実施形態の燃料噴射制御装置(以下、ECUという)11は、車両(自動車)に搭載された多気筒(この例では4気筒)エンジンの各気筒#1~#4に燃料を噴射供給する4個のインジェクタI1~I4と、燃料タンクから供給される燃料をエンジンの駆動力により加圧してインジェクタI1~I4に供給する高圧ポンプ5とを制御する。尚、本実施形態のECU11において、スイッチとして用いられているトランジスタ(スイッチング素子)は、例えばMOSFETであるが、バイポーラトランジスタやIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の他種類のトランジスタでも良い。
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【0020】
インジェクタI1~I4の各々は、コイルL1~L4を備える。そして、インジェクタIn(nは1~4の何れか)では、コイルLnに通電されると、図示しない弁体が開弁位置に移動し(つまり、開弁し)、燃料噴射が行われる。また、コイルLnへの通電が停止されると、弁体が元の閉弁位置に戻り(つまり、閉弁し)、燃料噴射が停止される。
【0021】
そして、ECU11は、各インジェクタI1~I4の駆動期間(即ち、コイルL1~L4への通電開始タイミング及び通電時間)を制御することにより、各気筒#1~#4への燃料噴射タイミング及び燃料噴射量を制御する。
【0022】
高圧ポンプ5は、吐出量を制御するための調量弁7を含み、この例では、調量弁7は、コイルL7への通電により閉弁する常開型電磁弁である。
高圧ポンプ5は、ポンプ室内でピストン(プランジャ)が往復運動することで燃料を吸入/吐出するものであり、ピストンは、エンジンのクランク軸又はカム軸によって回転駆動されるカムにより、上記ポンプ室内で往復運動するように駆動される。」
ツ 「【0025】
インジェクタI1~I4、調量弁7の各コイルL1~L4,L7の上流側と下流側は、それぞれ車両内配線(いわゆるワイヤハーネス)を介してECU11に接続されている。
そして、コイルL7の上流側は、ECU11の内部において、電流出力ライン13に接続されている。同様に、コイルL1,L4の上流側は、ECU11の内部において、共通の電流出力ライン14に接続されており、コイルL2,L3の上流側は、ECU11の内部において、共通の電流出力ライン15に接続されている。
【0026】
続きを表示(全37行)
コイルL1を備えるインジェクタI1と、コイルL4を備えるインジェクタI4は、気筒#1~#4のうち、噴射順序が連続しない気筒#1,#4(つまり、燃料噴射を実施する期間が重なる可能性がない気筒同士)のインジェクタである。同様に、コイルL2を備えるインジェクタI2と、コイルL3を備えるインジェクタI3も、燃料順序が連続しない気筒#2,#3のインジェクタである。インジェクタI1~I4は、このような観点から2つのグループに分けられている。
【0027】
ECU11は、各コイルL1~L4,L7の下流側と、基準電位(この例では0V)のラインであるグランドラインとの間の各々に、通電対象を選択するための下流側スイッチ21~24,27を備える。下流側スイッチ27がオンすることで、その下流側スイッチ27に対応するコイルL7への通電が可能になる。同様に、下流側スイッチ21~24の何れかがオンすることで、そのオンした下流側スイッチ21~24に対応するコイルL1~L4への通電が可能になる。下流側スイッチ21~24は、燃料噴射対象の気筒を選択するスイッチでもあるため、気筒選択スイッチと呼ばれる。
【0028】
また、下流側スイッチ27のコイルL7側の端子(この例ではドレイン)とは反対側の端子(この例ではソース)とグランドラインとの間には、コイルL7に流れる電流を検出するための抵抗33が設けられている。そして、下流側スイッチ21,24のコイルL1,L4側の端子(ドレイン)とは反対側の端子(ソース)とグランドラインとの間には、コイルL1,L4に流れる電流を検出するための抵抗34が設けられている。同様に、下流側スイッチ22,23のコイルL2,L3側の端子(ドレイン)とは反対側の端子(ソース)とグランドラインとの間には、コイルL2,L3に流れる電流を検出するための抵抗35が設けられている。
【0029】
そして、ECU11は、電源電圧(本実施形態では車載バッテリのプラス端子の電圧であるバッテリ電圧)VBが供給される電源ライン41に一方の出力端子(この例ではソース)が接続された3つの定電流用スイッチ43,44,45と、定電流用スイッチ43の他方の出力端子(この例ではドレイン)にアノードが接続され、カソードが電流出力ライン13に接続された逆流防止用のダイオードD1と、アノードがグランドラインに接続され、カソードが電流出力ライン13に接続された電流還流用のダイオードD2と、定電流用スイッチ44の他方の出力端子(ドレイン)にアノードが接続され、カソードが電流出力ライン14に接続された逆流防止用のダイオードD3と、アノードがグランドラインに接続され、カソードが電流出力ライン14に接続された電流還流用のダイオードD4と、定電流用スイッチ45の他方の出力端子(ドレイン)にアノードが接続され、カソードが電流出力ライン15に接続された逆流防止用のダイオードD5と、アノードがグランドラインに接続され、カソードが電流出力ライン15に接続された電流還流用のダイオードD6と、を備える。定電流用スイッチ43は、電源電圧VBを電源としてコイルL7に一定の電流を流すためのスイッチング素子である。同様に、定電流用スイッチ44は、電源電圧VBを電源としてコイルL1,L4の何れかに一定の電流を流すためのスイッチング素子であり、定電流用スイッチ45は、電源電圧VBを電源としてコイルL2,L3の何れかに一定の電流を流すためのスイッチング素子である。
【0030】
更に、ECU11は、コイルL1~L4,L7に放電するエネルギーが蓄積されるコンデンサ51と、電源電圧VBを昇圧してコンデンサ51を充電する充電回路としてのDCDCコンバータ52と、を備える。
【0031】
DCDCコンバータ52は、電源ライン41に一端が接続された昇圧用のコイル53と、コイル53の他端とグランドラインとの間の経路上に直列に設けられた昇圧用スイッチ54と、昇圧用スイッチ54とグランドラインとの間に設けられた電流検出用の抵抗55と、コイル53の他端と昇圧用スイッチ54のコイル53側の出力端子(この例ではドレイン)とを結ぶ電流経路にアノードが接続された逆流防止用のダイオード56と、を備える。
【0032】
そして、コンデンサ51は、ダイオード56のカソードとグランドラインとの間の経路上に直列に設けられている。また、コンデンサ51に下流側には、コンデンサ51に流れる電流を検出するための抵抗57が設けられている。尚、コンデンサ51は、例えばアルミ電解コンデンサであるが、他の種類のコンデンサでも良い。
【0033】
DCDCコンバータ52においては、昇圧用スイッチ54がオン/オフされると、コイル53と昇圧用スイッチ54との接続点に、電源電圧VBよりも高いフライバック電圧(逆起電圧)が発生し、そのフライバック電圧によりダイオード56を通じてコンデンサ51が充電される。このため、コンデンサ51は電源電圧VBよりも高い電圧で充電される。
【0034】
そして更に、ECU11は、コンデンサ51の正極側を電流出力ライン13に(つまり、コイルL7の上流側に)接続させる放電用スイッチ63と、コンデンサ51の正極側を電流出力ライン14に(つまり、コイルL1,L4の上流側に)接続させる放電用スイッチ64と、コンデンサ51の正極側を電流出力ライン15に(つまり、コイルL2,L3の上流側に)接続させる放電用スイッチ65と、上記各スイッチ21~24,27,43~45,54,63~65を制御する駆動制御回路67と、コンデンサ51の正極側の電圧(即ち、コンデンサ51の充電電圧)VCを所定の比率で分圧して駆動制御回路67に入力させる2つの分圧用抵抗68,69と、マイコン(マイクロコンピュータ)71と、電源電圧VBを所定の比率で分圧してマイコン71に入力させる2つの分圧用抵抗73,74と、を備える。尚、分圧用抵抗73,74は、後述する第2、第3実施形態において必要な構成要素であるため、本第1実施形態では無くてもよい。
【0035】
駆動制御回路67は、例えばICであり、DCDCコンバータ52(詳しくは、昇圧用スイッチ54)を制御する充電制御部67aと、下流側スイッチ27、定電流用スイッチ43及び放電用スイッチ63を制御することで、コイルL7に流す電流(即ち、調量弁7の駆動電流)を制御する電流制御部67bと、下流側スイッチ21~24、定電流用スイッチ44,45及び放電用スイッチ64,65を制御することで、コイルL1~L4に流す電流(即ち、インジェクタI1~I4の駆動電流)を制御する電流制御部67cと、を備える。
【0036】
ECU11では、下流側スイッチ21~24、抵抗34,34、定電流用スイッチ44,45、ダイオードD3~D6及び放電用スイッチ64,65によって構成されている回路が、インジェクタI1~I4を駆動するためのインジェクタ駆動回路66になっている。そして、電流制御部67cは、駆動制御回路67において、そのインジェクタ駆動回路66を制御する部分である。
【0037】
マイコン71は、プログラムを実行するCPU75、プログラムや固定のデータ等が記憶されたROM76、CPU75による演算結果等が記憶されるRAM77、及びA/D変換器(図示省略)等を備えている。また、図示は省略しているが、マイコン71には、エンジンのクランク軸が所定角度回転する毎にパルスエッジが生じるクランク角信号や、車両の運転者によるアクセル開度を表す信号や、エンジンの冷却水温を表す信号などが入力される。
【0038】
そして、マイコン71は、入力される各種信号により検出されるエンジンの運転状態に基づいて、調量弁7を駆動するための駆動信号である調量弁駆動信号と、各インジェクタI1~I4を駆動するための駆動信号であるインジェクタ駆動信号とを、駆動制御回路67に出力する。
【0039】
調量弁駆動信号は、その信号のレベルがアクティブレベル(本実施形態では例えばハイ)の間だけ調量弁7のコイルL7に通電する(換言すれば、調量弁7を通電駆動する)、という意味を持っている。このため、マイコン71は、エンジンの運転情報に基づいて、調量弁7の駆動期間(調量弁駆動期間)を設定し、その設定した駆動期間だけ、調量弁駆動信号をハイにしていると言える。このようなことは、インジェクタ駆動信号との各々についても同様である。
【0040】
一方、駆動制御回路67において、充電制御部67aは、マイコン71から当該駆動制御回路67に出力される充電許可信号が、ハイとローのうち、許可を示す方のレベル(この例ではハイ)である場合に動作する。そして、充電制御部67aは、分圧用抵抗68,69同士の接続点に生じる電圧に基づいて、コンデンサ51の充電電圧VCを検出し、検出した充電電圧VCが、電源電圧VBよりも高い目標電圧(例えば60V)VTとなるように、DCDCコンバータ52を動作させる(つまり、昇圧用スイッチ54をオン/オフさせる)。
【0041】
具体的には、充電制御部67aは、充電電圧VCが目標電圧VTよりも所定値(例えばVTの5%)αだけ低い下限値VL(=VT-α)以下になったと判定すると、充電電圧VCが目標電圧VT以上になったと判定するまで、昇圧用スイッチ54のオン/オフ制御を実施してコンデンサ51を充電する。充電制御部67aは、昇圧用スイッチ54のオン/オフ制御(以下、充電制御という)としては、例えば、以下の動作を繰り返す。即ち、充電制御部67aは、昇圧用スイッチ54をオンしてから、抵抗55に生じる電圧によって検出される電流(即ち、昇圧用スイッチ54を介してコイル53に流れる電流)が所定のオフ切換閾値まで増加すると、昇圧用スイッチ54をオフさせる。そして、その後、抵抗57に生じる電圧によって検出される電流(即ち、コンデンサ51に流れ込む充電電流)が所定のオン切換閾値まで減少すると、昇圧用スイッチ54を再びオンさせる。尚、他の例として、例えば、充電制御部67aは、昇圧用スイッチ54のオンによってコイル53に流れる電流がオフ切換閾値にまで増加すると、昇圧用スイッチ54を所定のオフ時間だけオフさせて再びオンさせるようになっていても良い。
【0042】
また、充電制御部67aは、マイコン71からの充電許可信号がローである場合には、充電電圧VCに拘わらず、DCDCコンバータ52の動作を停止させる(つまり、昇圧用スイッチ54をオフさせたままにする)。このため、充電許可信号がローである期間は、充電制御部67aの動作が禁止され、その結果、DCDCコンバータ52の動作が禁止されて、コンデンサ51の充電が禁止される。」
テ 「【0043】
次に、駆動制御回路67における電流制御部67bの動作について、図2を用い説明する。尚、以下の説明と図2及び後述する他の図において、「ポンプ電流」とは、調量弁7のコイルL7に流れる電流(調量弁7の駆動電流)のことである。
【0044】
図2に示すように、電流制御部67bは、マイコン71から出力される調量弁駆動信号がハイになると、その調量弁駆動信号がハイになっている間、コイルL7に対応する下流側スイッチ27をオンさせる。また、電流制御部67bは、調量弁駆動信号がハイになると、放電用スイッチ63もオンする。すると、コンデンサ51の正極側がコイルL7の上流側に接続されて、コンデンサ51からコイルL7に放電され、この放電により、コイルL7への通電が開始される。
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【0045】
そして、電流制御部67bは、放電用スイッチ63をオンした後において、ポンプ電流(コイルL7に流れる電流)を抵抗33に生じる電圧により検出し、ポンプ電流が放電電流の目標最大値ipになったことを検知すると、放電用スイッチ63をオフする。放電用スイッチ63のオフにより、コンデンサ51からコイルL7への放電が終了する。
【0046】
このようにして、調量弁7の駆動期間(調量弁駆動期間)の開始時には、コンデンサ51に蓄積されていたエネルギーがコイルL7に放電される。この例では、コンデンサ51からコイルL7への、目標最大値ipになるまでの放電電流が、調量弁7の弁体を駆動位置(この例では閉弁位置)へと速やかに移動させるための所謂ピーク電流である。尚、例えば放電用スイッチ63を一定時間だけオンする構成でも良い。
【0047】
そして、電流制御部67bは、放電用スイッチ63をオフした後は、抵抗33に生じる電圧により検出されるポンプ電流が、上記目標最大値ipよりも小さい一定の電流となるように、定電流用スイッチ43をオン/オフさせる定電流制御を行う。
【0048】
具体的に説明すると、電流制御部67bは、ポンプ電流が下側閾値icL以下であることを検知すると定電流用スイッチ43をオンさせ、ポンプ電流が上側閾値icH以上であることを検知すると定電流用スイッチ43をオフさせる、という制御を行う。下側閾値icLと、上側閾値icHと、目標最大値ipとの大小関係は、図2の如く「ip>icH>icL」になっている。
【0049】
このような定電流制御により、ポンプ電流が目標最大値ipから低下して下側閾値icL以下になると、定電流用スイッチ43のオン/オフが繰り返されて、ポンプ電流の平均値が、icHとicLとの間の一定電流icに維持される。尚、コイルL7へは、定電流用スイッチ43のオン時には、電源ライン41側から定電流用スイッチ43とダイオードD1を介して電流が流れ、定電流用スイッチ43のオフ時には、グランドライン側からダイオードD2を介して電流が還流する。
【0050】
その後、マイコン71からの調量弁駆動信号がハイからローになると、電流制御部67bは、コイルL7に対応する下流側スイッチ27をオフすると共に、定電流用スイッチ43のオン/オフ制御(定電流制御)を終了して、定電流用スイッチ43もオフ状態に保持する。すると、コイルL7への通電が停止して調量弁7が開弁し、高圧ポンプ5の燃料吐出が終了する。
【0051】
一方、駆動制御回路67における電流制御部67cも、電流制御部67bと同様の動作により、インジェクタI1~I4の駆動電流を制御する。調量弁駆動信号がハイになった場合の電流制御部67bの動作と比較して説明する。
【0052】
例えば、マイコン71から出力される駆動信号のうち、インジェクタI1を駆動するための駆動信号がハイになった場合には、電流制御部67cは、下流側スイッチ27ではなく、コイルL1に対応する下流側スイッチ21をオンし、放電用スイッチ63ではなく、放電用スイッチ64をオンさせる。そして、定電流用スイッチ43ではなく、定電流用スイッチ44をオン/オフさせることにより、コイルL1に一定の電流を流す。また例えば、マイコン71から出力される駆動信号のうち、インジェクタI2を駆動するための駆動信号がハイになった場合には、電流制御部67cは、下流側スイッチ27ではなく、コイルL2に対応する下流側スイッチ22をオンし、放電用スイッチ63ではなく、放電用スイッチ65をオンさせる。そして、定電流用スイッチ43ではなく、定電流用スイッチ45をオン/オフさせることにより、コイルL2に一定の電流を流す。
【0053】
ところで、ECU11では、調量弁7の通電駆動とインジェクタI1~I4の通電駆動とに、共通のコンデンサ51を用いている。また、調量弁7の駆動タイミングと、インジェクタI1~I4の駆動タイミングとの、相対関係(時間差)は一定でない。よって、調量弁7の駆動開始時における充電電圧VCは、少なくとも、インジェクタI1~I4の駆動のためにコンデンサ51が放電されてから調量弁7の駆動が開始されるまでの時間差に応じて変わる。このため、調量弁7の駆動時において、前述した第1の場合と第2の場合とが、不規則に起こると考えられる。第1の場合とは、コンデンサ51からコイルL7への放電によっても充電電圧VCが前述の下限値VL以下にならずに、DCDCコンバータ52は動作しない場合である。第2の場合とは、コンデンサ51からコイルL7への放電によって充電電圧VCが前述の下限値VL以下になり、DCDCコンバータ52が動作する場合である。
【0054】
そして、第2の場合には、コンデンサ51からコイルL7への放電が終了してから、電源電圧VBによってコイルL7に一定の電流を流すための定電流制御が開始された時点において、DCDCコンバータ52が動作していることにより、第1の場合よりも電源電圧VBが低下する。
【0055】
このため、第1の場合と第2の場合とでは、図3(特に2段目)に示すように、定電流制御が開始された直後にコイルL7に流れる電流(ポンプ電流)の波形が異なってしまう。図3において、点線楕円内における太線と細線とのうち、太線が、第2の場合のポンプ電流波形を表しており、細線が、第1の場合のポンプ電流波形を表している。また、図3及び後述する図4における時刻t1のタイミングは、コンデンサ51からコイルL7への放電終了後における定電流制御の開始タイミングであり、詳しくは、放電用スイッチ63がオフされてから定電流用スイッチ43が最初にオンされるタイミングである。
【0056】
つまり、第2の場合には、第1の場合と比較すると、DCDCコンバータ52の動作により電源電圧VBが低下するため、コンデンサ51からの放電終了に伴い急減少していくポンプ電流を、定電流制御における目標値(この例では下側閾値icLと上側閾値icHとの間の電流:図2参照)に安定させるまでに時間がかかってしまう。具体的には、放電終了後のポンプ電流が下側閾値icLまで減少して定電流用スイッチ43が最初にオンされてから、ポンプ電流が上側閾値icHまで上昇するのに要する時間が、第2の場合には、第1の場合よりも長くなる。
【0057】
その結果、調量弁7の駆動開始時から該調量弁7の弁体が駆動位置(この例では閉弁位置)に到達するまでの時間(調量弁7の動作応答時間)が、駆動時毎に(詳しくは、駆動時毎の、DCDCコンバータ52の動作有り無しにより)ばらついてしまい、延いては、高圧ポンプ5の制御精度(詳しくは吐出量の制御精度)が悪化する。
【0058】
そこで、本実施形態のECU11では、図4に示すように、調量弁7のコイルL7に電流(ポンプ電流)を流す調量弁駆動期間中の所定期間は、DCDCコンバータ52の動作を禁止する充電禁止期間にしている。そして、その充電禁止期間は、電流制御部67bがコンデンサ51からコイルL7への放電を終了してから定電流制御により定電流用スイッチ43を最初にオンさせるタイミング(定電流制御の開始タイミング)t1を含んだ期間である。具体的には、図4に示すように、調量弁駆動期間の開始時から所定時間Tfの期間を、充電禁止期間としている。そして、その充電禁止期間の長さである所定時間Tfは、調量弁駆動期間の開始時から定電流制御の開始タイミングt1までの時間よりも長く、且つ、調量弁駆動期間の開始時から調量弁7が閉弁するまでの動作応答時間よりも長くなるように設定されている。尚、一般に、調量弁7が閉弁するタイミングは、定電流制御の開始タイミングよりも後になる。
【0059】
そして、ECU11では、上記充電禁止期間を設けるために、マイコン71が、調量弁駆動信号をローからハイにするタイミング毎(即ち、調量弁駆動期間の開始時毎)に、図5の充電禁止処理を開始する。尚、マイコン71が行う処理は、CPU75がROM76内のプログラムを実行することで実現される。
【0060】
図5に示すように、マイコン71は、充電禁止処理を開始すると、まずS110にて、駆動制御回路67への充電許可信号をハイからローにする。すると、前述したように、充電制御部67aの動作が禁止され、延いては、DCDCコンバータ52の動作が禁止される。そして、マイコン71は、次のS120にて、所定時間Tfが経過するまで待ち、所定時間Tfが経過したなら、S130にて、充電許可信号をローからハイに戻す。すると、充電制御部67aの動作が許可されて、DCDCコンバータ52の動作禁止が解除される。そして、マイコン71は、その後、当該充電禁止処理を終了する。
【0061】
以上のようなECU11では、図6に示すように、ポンプ電流を流す調量弁駆動期間の開始時から前述の所定時間Tfが経過するまでの期間は、充電制御部67aに対する充電許可信号をローにすることにより、DCDCコンバータ52の動作を禁止する充電禁止期間としている。尚、図6において、「充電電流」は、DCDCコンバータ52によるコンデンサ51への充電電流を表しており、その充電電流が脈動している期間は、DCDCコンバータ52が動作している期間である。また、図6において、「インジェクタ1電流」は、インジェクタI1の駆動電流(コイルL1に流れる電流)を例示しており、「インジェクタ2電流」は、インジェクタI2の駆動電流(コイルL2に流れる電流)を例示している。
【0062】
このため、ECU11では、調量弁駆動期間において、定電流制御の開始タイミングを含む期間では、DCDCコンバータ52の動作が禁止される。よって、その期間における電源電圧VBが、調量弁7の駆動時毎に、DCDCコンバータ52の動作の有無によって低下したり低下しなかったりすることが防止される。その結果、定電流制御の開始直後におけるポンプ電流の波形が調量弁7の駆動時毎に異なってしまうことが防止される。従って、調量弁7の動作応答時間が駆動時毎にばらついてしまうことを防止することができ、高圧ポンプ5の吐出量の制御精度を良好にすることができる。特に、充電禁止期間の長さTfは、調量弁7の動作応答時間よりも長く設定しており、調量弁7の閉弁が完了するまでは充電禁止期間が続いてDCDCコンバータ52の動作が禁止される。このため、調量弁7の動作応答時間が駆動時毎にばらついてしまうことを確実に防止することができる。
【0063】
また、充電禁止期間は、例えば調量弁駆動期間の開始時よりも後の所定タイミング(例えば放電用スイッチ63のオフタイミングや、そのオフタイミングから所定時間後のタイミング)から開始するように構成しても良いが、ECU11では、充電禁止期間を、調量弁駆動期間の開始時から始めるようにしている。このため、充電禁止期間の開始タイミングが一義的に決まり、その充電禁止期間を設定するためのソフトウェアやハードウェアを簡単なものにすることができる。」
ト 「【図2】
[図:0001398089000005.jpg]
」
ナ 「【図3】
[図:0001398089000006.jpg]
」
ニ 「【図4】
[図:0001398089000007.jpg]
」
ヌ 「【図5】
[図:0001398089000008.jpg]
」

(2)引用発明3

上記(1)の記載事項及び図示事項を総合し、整理すると、引用文献3には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。

「 インジェクタを開弁及び閉弁するコイルL1~L4への通電開始タイミング及び通電時間を制御するECU11と、
前記コイルL1~L4に流れる電流を検出するための抵抗34と、
昇圧用スイッチ54をオン/オフされると電源電圧VBを昇圧してコンデンサ51を充電する充電回路としてのDCDCコンバータ52を制御する充電制御部67aと、を備え、
前記充電回路としてのDCDCコンバータ52を制御する充電制御部67aは、充電電圧VCが目標電圧VTよりも所定値αだけ低い下限値VL以下になったと判定すると、昇圧用スイッチ54のオン/オフ制御を実施してコンデンサ51を充電し、
調量弁7のコイルL7に電流を流す調量弁駆動期間中の所定期間には充電電圧VCに拘らず昇圧用スイッチ54をオフさせたままにする燃料噴射制御装置。」

第5 対比・判断

1.本願発明1

(1)本願発明1と引用発明1との対比

本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「燃料噴射用電磁弁」はその機能、構成及び技術的意義からみて本願発明1の「燃料噴射弁」に相当する。そして、引用発明1の「燃料噴射用電磁弁を制御する電磁コイル106に急速給電電圧を供給する」ことは、燃料噴射用電磁弁を開弁・閉弁するために急速給電電圧を供給すなわち電流を通電制御することであるから、本願発明1の「燃料噴射弁を開弁・閉弁するために電流を通電制御する」ことに相当する。そうすると、引用発明1の「開閉制御回路180」は本願発明1の「電流通電制御部」に、「電子制御装置100」は「噴射制御装置」にそれぞれ相当する。

引用発明1の「クランク角センサ」と本願発明1の「前記燃料噴射弁に流れる電流をモニタする電流モニタ部(15)」とは、「モニタ部」という限りで一致する。

引用発明1の「昇圧用開閉素子194」は、その機能、構成及び技術的意義からみて本願発明1の「スイッチング素子」に相当し、以下同様に「昇圧用開閉素子194のON/OFF動作を繰り返す」ことは「スイッチング素子をオン・オフ制御する」ことに、「外部電源101」は「電源電圧」に、「所定の目標高電圧」は「昇圧完了電圧」にそれぞれ相当する。そして、引用発明1の「昇圧用開閉素子194のON/OFF動作を繰り返すことで外部電源101から昇圧用インダクタンス素子191に給電された電磁エネルギーを高圧コンデンサ193に放出し、前記高圧コンデンサ193の充電電圧を所定の目標高電圧に到達させる」ことは、燃料噴射用電磁弁を制御する電磁コイルに急速給電電圧を供給するために高圧コンデンサ193の充電電圧を所定の目標高電圧に到達させることであるから、本願発明1の「前記燃料噴射弁に対し開弁用のピーク電流を通電するための昇圧電圧を、スイッチング素子をオン・オフ制御することで電源電圧から昇圧完了電圧に生成制御する」ことに相当する。そうすると、引用発明1の「昇圧回路190」は本願発明1の「昇圧制御部」に相当する。

引用発明1の「前記昇圧回路190は、クランク角センサに応動してマイクロプロセッサ110が昇圧禁止信号INHを発生しているときに昇圧用開閉素子194の通電指令出力DRを停止する」ことは、所定の期間内で昇圧電圧の生成制御を停止することであるから、本願発明1の「前記昇圧制御部は、前記昇圧電圧を監視し、当該昇圧電圧が前記昇圧完了電圧を下回る所定の昇圧開始電圧(Vsta)を下回ると生成制御を開始するものであり、前記電流通電制御部が前記燃料噴射弁に電流を通電開始し、前記昇圧電圧が所定の昇圧開始電圧を下回ると、前記昇圧制御部は、前記昇圧電圧の生成制御を開始し、前記電流モニタ部により検出される燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流を検出するための閾値に達するタイミングの前で且つ前記ピーク電流の閾値よりも低く設定された第1所定電流に達したタイミングで前記昇圧電圧の生成制御を停止し始め、前記燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流の閾値に達するタイミングを含んで実行される前記燃料噴射弁を開弁・閉弁する1回の噴射処理の間で且つ前記ピーク電流の閾値に達したタイミングを含む期間内だけ前記昇圧電圧の生成制御を停止し、前記期間内の後に前記昇圧電圧が前記昇圧完了電圧に達するまでの間は前記昇圧電圧を生成制御する」こととは「前記昇圧制御部は、所定の期間内で昇電電圧の生成制御を停止する」ことという限りで一致する。

したがって、両者は、

「 燃料噴射弁を開弁・閉弁するために電流を通電制御する電流通電制御部と、
モニタ部と、
前記燃料噴射弁に対し開弁用のピーク電流を通電するための昇圧電圧を、スイッチング素子をオン・オフ制御することで電源電圧から昇圧完了電圧に生成制御する昇圧制御部と、を備え、
前記昇圧制御部は、所定の期間内で昇圧電圧の生成制御を停止する噴射制御装置。」

である点で一致し、次の2点で相違する。

[相違点1-1]

「モニタ部」に関し、本願発明1は「燃料噴射弁に流れる電流をモニタする電流モニタ部」であるのに対し、引用発明1は「クランク角センサ」である点。

[相違点1-2]

本願発明1の「昇圧制御部」は「昇圧制御部は、前記昇圧電圧を監視し、当該昇圧電圧が前記昇圧完了電圧を下回る所定の昇圧開始電圧(Vsta)を下回ると生成制御を開始するものであり、前記電流通電制御部が前記燃料噴射弁に電流を通電開始し、前記昇圧電圧が所定の昇圧開始電圧を下回ると、前記昇圧制御部は、前記昇圧電圧の生成制御を開始し、前記電流モニタ部により検出される燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流を検出するための閾値に達するタイミングの前で且つ前記ピーク電流の閾値よりも低く設定された第1所定電流に達したタイミングで前記昇圧電圧の生成制御を停止し始め、前記燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流の閾値に達するタイミングを含んで実行される前記燃料噴射弁を開弁・閉弁する1回の噴射処理の間で且つ前記ピーク電流の閾値に達したタイミングを含む期間内だけ前記昇圧電圧の生成制御を停止し、前記期間内の後に前記昇圧電圧が前記昇圧完了電圧に達するまでの間は前記昇圧電圧を生成制御する」ものであるのに対し、引用発明1の「昇圧回路190」は「昇圧回路190は、クランク角センサに応動してマイクロプロセッサ110が昇圧禁止信号INHを発生しているときに昇圧用開閉素子194の通電指令出力DRを停止する」ものである点。

(2)本願発明1と引用発明2との対比

本願発明1と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「インジェクタ」は、その機能、構成及び技術的意義からみて本願発明1の「燃料噴射弁」に相当し、以下同様に、「駆動する」ことは「開弁・閉弁する」ことに、「インジェクタ駆動装置30」は「噴射制御装置」にそれぞれ相当する。

引用発明2の「インジェクタを駆動する制御回路32」は、インジェクタを駆動するために電流通電制御する「制御回路32」であるから、その機能、構成及び技術的意義からみて本願発明1の「燃料噴射弁を開弁・閉弁するために電流を通電制御する電流通電制御部」に相当する。

引用発明2の「バッテリ電源+B」は、その機能、構成及び技術的意義からみて本願発明1の「電源電圧」に相当し、以下同様に「MOSFET36」は「スイッチング素子」に、「MOSFET36スイッチングして」は「スイッチング素子をオン・オフ制御することで」に、「所望の電圧」は「昇圧完了電圧」にそれぞれ相当する。そして、引用発明2の「バッテリ電源+BからMOSFET36をスイッチングしてチャージコンデンサ40が所望の電圧に充電されるまで動作する」ことは、インジェクタに対し開弁用のピーク電流を通電するために行うバッテリ電源+Bからチャージコンデンサ40への昇電電圧を、昇圧完了電圧に生成制御することであるから、本願発明1の「燃料噴射弁に対し開弁用のピーク電流を通電するための昇圧電圧を、スイッチング素子をオン・オフ制御することで電源電圧から昇圧完了電圧に生成制御する」ことに相当する。そうすると、引用発明2の「充電制御部50」は本願発明1の「昇圧制御部」に相当する。

引用発明2の「充電制御部50は、ピーク電流の供給後には時刻t12よりチャージコンデンサ40が所望の電圧になるまで充電が行われる」ことは、制御回路32がインジェクタに電流を通電開始した後、ピーク電流の後に生成制御を開始するものであるから、本願発明1の「前記昇圧制御部は、前記昇圧電圧を監視し、当該昇圧電圧が前記昇圧完了電圧を下回る所定の昇圧開始電圧(Vsta)を下回ると生成制御を開始するものであり、前記電流通電制御部が前記燃料噴射弁に電流を通電開始し、前記昇圧電圧が所定の昇圧開始電圧を下回ると、前記昇圧制御部は、前記昇圧電圧の生成制御を開始し、前記電流モニタ部により検出される燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流を検出するための閾値に達するタイミングの前で且つ前記ピーク電流の閾値よりも低く設定された第1所定電流に達したタイミングで前記昇圧電圧の生成制御を停止し始め、前記燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流の閾値に達するタイミングを含んで実行される前記燃料噴射弁を開弁・閉弁する1回の噴射処理の間で且つ前記ピーク電流の閾値に達したタイミングを含む期間内だけ前記昇圧電圧の生成制御を停止し、前記期間内の後に前記昇圧電圧が前記昇圧完了電圧に達するまでの間は前記昇圧電圧を生成制御する」こととは、「前記昇圧制御部は、前記電流通電制御部が前記燃料噴射弁に電流を通電開始し、ピーク電流の後に生成制御を開始する」ことという限りで一致する。

したがって、両者は、

「 燃料噴射弁を開弁・閉弁するために電流を通電制御する電流通電制御部と、
前記燃料噴射弁に対し開弁用のピーク電流を通電するための昇圧電圧を、スイッチング素子をオン・オフ制御することで電源電圧から昇圧完了電圧に生成制御する昇圧制御部と、を備え、
前記昇圧制御部は、前記電流通電制御部が前記燃料噴射弁に電流を通電開始し、ピーク電流の後に生成制御を開始する噴射制御装置。」

である点で一致し、次の2点で相違する。

[相違点2-1]

本願発明1は「燃料噴射弁に流れる電流をモニタする電流モニタ部」を有するのに対し、引用発明2はかかる事項を有していない点。

[相違点2-2]

本願発明1の「昇圧制御部」は、「昇圧制御部は、前記昇圧電圧を監視し、当該昇圧電圧が前記昇圧完了電圧を下回る所定の昇圧開始電圧(Vsta)を下回ると生成制御を開始するものであり、前記電流通電制御部が前記燃料噴射弁に電流を通電開始し、前記昇圧電圧が所定の昇圧開始電圧を下回ると、前記昇圧制御部は、前記昇圧電圧の生成制御を開始し、前記電流モニタ部により検出される燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流を検出するための閾値に達するタイミングの前で且つ前記ピーク電流の閾値よりも低く設定された第1所定電流に達したタイミングで前記昇圧電圧の生成制御を停止し始め、前記燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流の閾値に達するタイミングを含んで実行される前記燃料噴射弁を開弁・閉弁する1回の噴射処理の間で且つ前記ピーク電流の閾値に達したタイミングを含む期間内だけ前記昇圧電圧の生成制御を停止し、前記期間内の後に前記昇圧電圧が前記昇圧完了電圧に達するまでの間は前記昇圧電圧を生成制御する」ものであるのに対し、引用発明2の「充電制御部50」は、「充電制御部50は、ピーク電流の供給後には時刻t12よりチャージコンデンサ40が所望の電圧になるまで充電が行われる」ものである点。

(3)本願発明1と引用発明3との対比

本願発明1と引用発明3とを対比すると、引用発明3の「インジェクタ」はその機能、構成及び技術的意義からみて本願発明1の「燃料噴射弁」に相当し、以下同様に、「開弁及び閉弁する」は「開弁・閉弁する」に、「コイルL1~L4への通電開始タイミング及び通電時間を制御する」ことは「電流を通電制御する」ことに、「ECU11」は「電流通電制御部」に、「コイルL1~L4に流れる電流を検出するための抵抗34」は「燃料噴射弁に流れる電流をモニタする電流モニタ部」に、「燃料噴射制御装置」は「噴射制御装置」にそれぞれ相当する。

引用発明3の「昇圧用スイッチ54」、その機能、構成及び技術的意義からみて本願発明1の「スイッチング素子」に相当し、以下同様に、「昇圧用スイッチ54をオン/オフされると」は「スイッチング素子をオン・オフ制御することで」に、「電源電圧VB」は「電源電圧」にそれぞれ相当する。そして、引用発明3の「昇圧用スイッチ54をオン/オフされると電源電圧VBを昇圧してコンデンサ51を充電する」ことは、インジェクタを開弁及び閉弁するための電流を通電するコンデンサ51に対し、電源電圧VBから昇圧完了電圧となるよう生成制御するものであるから、本願発明1の「前記燃料噴射弁に対し開弁用のピーク電流を通電するための昇圧電圧を、スイッチング素子をオン・オフ制御することで電源電圧から昇圧完了電圧に生成制御する」ことに相当する。そうすると、引用発明3の「充電回路としてのDCDCコンバータ52を制御する充電制御部67a」は本願発明1の「昇圧制御部」に相当する。

引用発明3の「充電電圧VC」は、その機能、構成及び技術的意義からみて本願発明1の「昇圧電圧」に相当し、以下同様に、「目標電圧VT」は「昇圧完了電圧」に相当する。そして、引用発明3の「充電回路としてのDCDCコンバータ52を制御する充電制御部67aは、充電電圧VCが目標電圧VTよりも所定値αだけ低い下限値VL以下になったと判定すると、昇圧用スイッチのオン/オフ制御を実施してコンデンサ51を充電し」は、充電電圧VCを監視して行うものであることは明らかであるから、本願発明1の「昇圧制御部は、前記昇圧電圧を監視し、当該昇圧電圧が前記昇圧完了電圧を下回る所定の昇圧開始電圧を下回ると生成制御を開始するものであり」に相当する。そうすると、引用発明3の「前記充電回路としてのDCDCコンバータ52を制御する充電制御部67aは、充電電圧VCが目標電圧VTよりも所定値αだけ低い下限値VL以下になったと判定すると、昇圧用スイッチのオン/オフ制御を実施してコンデンサ51を充電し、調量弁7のコイルL7に電流を流す調量弁駆動期間中の所定期間には充電電圧VCに拘らず昇圧用スイッチ54をオフさせたままにする」ことは、所定の期間は昇圧電圧の生成制御を停止するものであるから、本願発明1の「前記昇圧制御部は、前記昇圧電圧を監視し、当該昇圧電圧が前記昇圧完了電圧を下回る所定の昇圧開始電圧(Vsta)を下回ると生成制御を開始するものであり、前記電流通電制御部が前記燃料噴射弁に電流を通電開始し、前記昇圧電圧が所定の昇圧開始電圧を下回ると、前記昇圧制御部は、前記昇圧電圧の生成制御を開始し、前記電流モニタ部により検出される燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流を検出するための閾値に達するタイミングの前で且つ前記ピーク電流の閾値よりも低く設定された第1所定電流に達したタイミングで前記昇圧電圧の生成制御を停止し始め、前記燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流の閾値に達するタイミングを含んで実行される前記燃料噴射弁を開弁・閉弁する1回の噴射処理の間で且つ前記ピーク電流の閾値に達したタイミングを含む期間内だけ前記昇圧電圧の生成制御を停止し、前記期間内の後に前記昇圧電圧が前記昇圧完了電圧に達するまでの間は前記昇圧電圧を生成制御する」こととは、「前記昇圧制御部は、前記昇圧電圧を監視し、当該昇圧電圧が前記昇圧完了電圧を下回る所定の昇圧開始電圧を下回ると生成制御を開始するものであり、所定の期間は昇圧電圧の生成制御を停止する」ことという限りで一致する。

したがって、両者は、

「 燃料噴射弁を開弁・閉弁するために電流を通電制御する電流通電制御部と、
前記燃料噴射弁に流れる電流をモニタする電流モニタ部と、
前記燃料噴射弁に対し開弁用のピーク電流を通電するための昇圧電圧を、スイッチング素子をオン・オフ制御することで電源電圧から昇圧完了電圧に生成制御する昇圧制御部と、を備え、
前記昇圧制御部は、前記昇圧電圧を監視し、当該昇圧電圧が前記昇圧完了電圧を下回る所定の昇圧開始電圧を下回ると生成制御を開始するものであり、
所定の期間は昇圧電圧の生成制御を停止する噴射制御装置。」

である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点3-1]

本願発明1の昇圧制御部は、「前記電流通電制御部が前記燃料噴射弁に電流を通電開始し、前記昇圧電圧が所定の昇圧開始電圧を下回ると、 前記昇圧制御部は、前記昇圧電圧の生成制御を開始し、前記電流モニタ部により検出される燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流を検出するための閾値に達するタイミングの前で且つ前記ピーク電流の閾値よりも低く設定された第1所定電流に達したタイミングで前記昇圧電圧の生成制御を停止し始め、 前記燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流の閾値に達するタイミングを含んで実行される前記燃料噴射弁を開弁・閉弁する1回の噴射処理の間で且つ前記ピーク電流の閾値に達したタイミングを含む期間内だけ前記昇圧電圧の生成制御を停止し、前記期間内の後に前記昇圧電圧が前記昇圧完了電圧に達するまでの間は前記昇圧電圧を生成制御する」であるのに対し、引用発明3の「充電回路としてのDCDCコンバータ52を制御する充電制御部67a」は「調量弁7のコイルL7に電流を流す調量弁駆動期間中の所定期間には充電電圧VCに拘らず昇圧用スイッチ54をオフさせたままにする」である点。

(4)相違点の判断

事案に鑑み先ず相違点1-2、相違点2-2及び相違点3-1について検討する。相違点1-2、相違点2-2及び相違点3-1において上述したとおり、引用発明1ないし引用発明3は、いずれも本願発明1が有する「前記電流通電制御部が前記燃料噴射弁に電流を通電開始し、前記昇圧電圧が所定の昇圧開始電圧を下回ると、前記昇圧制御部は、前記昇圧電圧の生成制御を開始し、前記電流モニタ部により検出される燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流を検出するための閾値に達するタイミングの前で且つ前記ピーク電流の閾値よりも低く設定された第1所定電流に達したタイミングで前記昇圧電圧の生成制御を停止し始め、前記燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流の閾値に達するタイミングを含んで実行される前記燃料噴射弁を開弁・閉弁する1回の噴射処理の間で且つ前記ピーク電流の閾値に達したタイミングを含む期間内だけ前記昇圧電圧の生成制御を停止し、前記期間内の後に前記昇圧電圧が前記昇圧完了電圧に達するまでの間は前記昇圧電圧を生成制御する」との発明特定事項(以下、「本願発明1の発明特定事項」という。)を備えていない。そして、引用発明1ないし引用発明3のいずれかから、当業者の通常の創作能力の範囲で本願発明1の発明特定事項を容易に想到し得たとする格別な証拠はない。

また、仮に引用発明1ないし引用発明3のいずれか一つの引用発明に対し、他の引用発明を適用できたとしても、当該適用によりなし得た発明が本願発明1の発明特定事項を備えるものでないことも明らかである。

そして、当業者の通常の創作能力の範囲内で、引用発明1ないし引用発明3から本願発明1の発明特定事項を容易に想到し得たとする他の事情を見出すこともできない。

そして、本願発明1は、本願発明1の発明特定事項により、例えば「大規模な昇圧装置を必要とすることなく電流モニタ精度を向上することで噴射量のばらつきを抑制できる」などの、引用発明1ないし引用発明3にはない格別顕著な効果も奏する。

したがって、他の相違点の検討をするまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1ないし引用発明3に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明4

本願発明4と引用発明1ないし引用発明3を対比すると、引用発明1ないし引用発明3は、本願発明4が有する「前記電流通電制御部が前記燃料噴射弁に電流を通電開始し、前記昇圧電圧が所定の昇圧開始電圧を下回ると、前記昇圧制御部は前記昇圧電圧の生成制御を開始し、前記電流モニタ部により検出される燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流を検出するための閾値に達するタイミングで前記昇圧電圧の生成制御を停止し始め、前記昇圧制御部は、前記燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流の閾値に達するタイミングを含んで実行される前記燃料噴射弁を開弁・閉弁する1回の噴射処理の間で且つ前記停止し始めたタイミングから当該ピーク電流の閾値よりも低く設定された第2所定電流を前記燃料噴射弁の通電電流が下回るまでの期間内だけ前記昇圧電圧の生成制御を停止し、前記期間内の後で且つ前記昇圧電圧が前記昇圧完了電圧に達するまでの間は前記昇圧電圧を生成制御する」との発明特定事項(以下、「本願発明4の発明特定事項」という。)を備えていない点で少なくとも相違する。

これに対して、引用発明1ないし引用発明3のいずれかから、当業者の通常の創作能力の範囲で本願発明4の発明特定事項を容易に想到し得たとする格別な証拠はない。

また、仮に引用発明1ないし引用発明3のいずれか一つの引用発明に対し、他の引用発明を適用できたとしても、当該適用によりなし得た発明が本願発明4の発明特定事項を備えるものでないことも明らかである。

そして、当業者の通常の創作能力の範囲内で、引用発明1ないし引用発明3から本願発明4の発明特定事項を容易に想到し得たとする他の事情を見出すこともできない。

そして、本願発明4は、本願発明4の発明特定事項により、例えば「大規模な昇圧装置を必要とすることなく電流モニタ精度を向上することで噴射量のばらつきを抑制できる」などの、引用発明1ないし引用発明3にはない格別顕著な効果も奏する。

したがって、本願発明4は、当業者であっても、引用発明1ないし引用発明3に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明6

本願発明6と引用発明1ないし引用発明3を対比すると、引用発明1ないし引用発明3は、本願発明6が有する「前記電流通電制御部が前記燃料噴射弁に電流を通電開始し、前記昇圧電圧が所定の昇圧開始電圧を下回ると、前記昇圧制御部は前記昇圧電圧の生成制御を開始し、前記電流通電制御部が前記燃料噴射弁に電流を通電開始する時点を起点としてゼロを超えるように予め設定され前記電流モニタ部により検出される燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流を検出するための閾値に達するまでの時間に設定される第1所定時間を経過するタイミングまで前記昇圧電圧を昇圧制御し、前記第1所定時間を経過するタイミングから、前記通電開始する時点から前記燃料噴射弁を開弁・閉弁する1回の噴射処理を終了するまでの間に設定される第2所定時間を経過するタイミングまでの期間内だけ前記昇圧電圧の生成制御を停止し、前記期間内の後で且つ前記昇圧電圧が前記昇圧完了電圧に達するまでの間は前記昇圧電圧を生成制御する」との発明特定事項(以下、「本願発明6の発明特定事項」という。)を備えていない点で少なくとも相違する。

これに対して、引用発明1ないし引用発明3のいずれかから、当業者の通常の創作能力の範囲で本願発明6の発明特定事項を容易に想到し得たとする格別な証拠はない。

また、仮に引用発明1ないし引用発明3のいずれか一つの引用発明に対し、他の引用発明を適用できたとしても、当該適用によりなし得た発明が本願発明6の発明特定事項を備えるものでないことも明らかである。

そして、当業者の通常の創作能力の範囲内で、引用発明1ないし引用発明3から本願発明6の発明特定事項を容易に想到し得たとする他の事情を見出すこともできない。

そして、本願発明6は、本願発明6の発明特定事項により、例えば「大規模な昇圧装置を必要とすることなく電流モニタ精度を向上することで噴射量のばらつきを抑制できる」などの、引用発明1ないし引用発明3にはない格別顕著な効果も奏する。

したがって、本願発明6は、当業者であっても、引用発明1ないし引用発明3に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.本願発明2、本願発明3、本願発明5、本願発明7及び本願発明8

本願発明2、本願発明3及び本願発明5は、本願発明1の発明特定事項を全て備え、さらに請求項2、請求項3及び請求項5で新たに特定される発明特定事項を備えるものである。

本願発明7及び本願発明8は、本願発明1の発明特定事項を全て備え、さらに請求項7及び請求項8で新たに特定される発明特定事項を備えるものである。また、本願発明7及び本願発明8は、本願発明4の発明特定事項を全て備え、さらに請求項7及び請求項8で新たに特定される発明特定事項を備えるものでもある。

そして、引用発明1ないし引用発明3は、少なくとも1.(4)及び2.で上述したとおり本願発明1の発明特定事項または本願発明4の発明特定事項を有していない。

そうすると、1.(4)及び2.で上述したとおりの理由と同じく、本願発明2、本願発明3、本願発明5、本願発明7及び本願発明8は、当業者であっても、引用発明1ないし引用発明3に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 特許法第36条第6項第2号の検討

原査定における特許法第36条6項第2号の拒絶の理由は、大略次のとおりである。

1. 請求項1の「前記電流モニタ部により検出される燃料噴射弁の通電電流が前記ピーク電流を検出するための閾値に達するタイミング又はその前に前記昇圧電圧の生成制御を停止し、その後の一の噴射処理の間で且つ前記ピーク電流の閾値に達したタイミングを含む期間中において前記昇圧電圧の生成制御を停止する」なる記載について、技術的、論理的に、どのような期間中、昇圧電圧の生成制御を停止するのか、不明確である。また、その技術的意味、作用効果も不明確である。

2. 請求項3の「第1所定時間」について、定義、技術的意義が不明確であり、「前記期間中」の技術的意味が不明確である。

3. 請求項6の「第1所定時間」、「第2所定時間」について、定義、技術的意義が不明確であり、「前記期間中」の定義、技術的意味が不明確である。また、引用請求項が不適切である。

4. 請求項8の「第3所定時間」について、定義、技術的意義が不明確である。

これら拒絶の理由については、令和4年8月30日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に記載された本願発明1ないし本願発明8においては明確といえるものである。

したがって、原査定における特許法第36条6項第2号の拒絶の理由は

令和4年8月30日の手続補正により解消した。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明1ないし本願発明8は、引用発明1ないし引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

また、本願発明1ないし本願発明8の記載は明確である。

したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-013597

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