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特許拒絶査定不服審判

2022-013341

リンク作動装置を用いた複合作業装置

審判番号
2022-013341
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-061130外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年08月25日
審決日
2023年08月15日
公報発行日
2023年11月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (B25J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-61130「リンク作動装置を用いた複合作業装置」拒絶査定不服審判事件〔令和1年10月10日出願公開、特開2019-171506〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年3月28日の出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年10月27日付け:拒絶理由通知書 同 年12月27日 :意見書、手続補正書の提出 令和4年 5月23日付け:拒絶査定 同 年 8月25日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和5年 4月26日付け:拒絶理由通知書 同 年 6月12日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1~3に係る発明は、令和5年6月12日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 左右方向に並んだ作業体を2つ有し、1つの被作業体に対して前記2つの作業体が接触状態または非接触状態で作業を行う複合作業装置であって、 前記2つの作業体をそれぞれ個別に姿勢変更可能に支持する左右方向に並んだ2つのリンク作動装置を備え、 前記各リンク作動装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有し、前記3組以上のリンク機構のうちの2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させる姿勢制御用駆動源が設けられたものであり、 前記2つのリンク作動装置は、それぞれが支持する前記作業体の各作業可能範囲が、前記被作業体が配置される平面である基準作業平面上において前記2つのリンク作動装置の並び方向に互いに重なる重複領域を持つように配置され、 前記基準作業平面上での全ての前記被作業体の配置場所は、前記重複領域内に位置する場所であり、 前記2つのリンク作動装置と前記1つの被作業体とを相対的に前後方向に移動させる直動アクチュエータを2つ有し、そのうちの1つの直動アクチュエータと、この直動アクチュエータにより移動可能な1つの前記リンク作動装置と、このリンク作動装置に支持された前記作業体とで第1のユニットを構成し、かつ残りの1つの直動アクチュエータと、この直動アクチュエータにより移動可能な1つの前記リンク作動装置と、このリンク作動装置に支持された前記作業体とで第2のユニットを構成し、これら第1および第2のユニットがそれぞれ個別に動作して作業を行うリンク作動装置を用い、 前記2つの直動アクチュエータが、同一方向に動き、 前記2つの作業体が、前記リンク作動装置の並び方向である左右方向の内側を向いて作業する複合作業装置。」 第3 当審における拒絶の理由 当審が、令和5年4月26日付けで通知した拒絶理由のうち、請求項1に係る発明に対する理由の概要は、次のとおりである。 この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2017-52017号公報 第4 引用文献1の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載事項 当審が通知した拒絶理由で引用された引用文献1(特開2017-52017号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は、理解を容易にするために、当審で付したものである。 「【0010】 この発明の目的は、高速、高精度の動作が可能な2つのリンク作動装置により2つの被作業体に対して同時に作業を行うことができ、2つの被作業体間の距離が短くて全体的にコンパクトな複合作業装置を提供することである。」 「【0023】 この発明の一実施形態に係るリンク作動装置を用いた複合作業装置を図1~図10と共に説明する。 図1~図3はこの複合作業装置のそれぞれ異なる状態の正面図、図4は同複合作業装置の一部分の平面図である。この複合作業装置1は、2つの被作業体2,2に対して2つの作業体3,3で非接触作業を行う装置である。2つの被作業体2,2は、水平状の床面4に、所定の被作業体間距離dを開けて左右方向(X軸方向)に並んで載置されている。2つの作業体3,3は、2つの被作業体2,2の上方に、左右方向(X軸方向)および前後方向(Y軸方向)に移動可能で、かつ姿勢変更可能に設けられ、被作業体2,2に対して上方から作業を行う。作業体3は、被作業体2に対して非接触で作業を行うもの、例えばグリース塗布機、レーザ検査機、スプレー式塗装機、溶接機、外観検査機等である。 【0024】 2つの作業体3,3を左右方向に移動させる手段として、第1の直動アクチュータ5が設けられている。第1の直動アクチュータ5はモータ5aによって駆動される。2つの作業体3,3をそれぞれ個別に前後方向に移動させる手段として、第2、第3の直動アクチュータ6L,6Rが設けられている。第2、第3の直動アクチュエータ6L,6Rはそれぞれモータ6a,6aによって駆動される。2つの作業体3,3をそれぞれ個別に姿勢変更する手段として、2つのリンク作動装置7L,7Rが設けられている。リンク作動装置7L,7Rについては、後で詳しく説明する。」 (なお、「第1の直動アクチュータ5」、「第2、第3の直動アクチュータ6L,6R」の記載は、それぞれ、「第1の直動アクチュエータ5」、「第2、第3の直動アクチュエータ6L,6R」の誤記と認める。以下同様。) 「【0027】 リンク作動装置7L,7Rについて説明する。2つのリンク作動装置7L,7Rは同じ構成であるので、以下の説明では符号を統一して「7」で表すこととする。 【0028】 図5はリンク作動装置の正面図、図6、図7はリンク作動装置の互いに異なる状態を示す斜視図である。これらの各図は、図1~図3に対して上下反転して表されている。リンク作動装置7は、パラレルリンク機構9と、このパラレルリンク機構9を作動させる姿勢制御用アクチュエータ10とで構成される。パラレルリンク機構9は、基端側のリンクハブ12に対し先端側のリンクハブ13を3組のリンク機構14を介して姿勢変更可能に連結したものである。図1~図3に示すリンク作動装置7の設置状態では、先端側のリンクハブ13が下向きとなる。なお、図5では、1組のリンク機構14のみが示されている。リンク機構14の数は、4組以上であっても良い。 【0029】 各リンク機構14は、基端側の端部リンク部材15、先端側の端部リンク部材16、および中央リンク部材17で構成され、4つの回転対偶からなる4節連鎖のリンク機構をなす。基端側および先端側の端部リンク部材15,16はL字状をなし、一端がそれぞれ基端側のリンクハブ12および先端側のリンクハブ13に回転自在に連結されている。中央リンク部材17は、両端に基端側および先端側の端部リンク部材15,16の他端がそれぞれ回転自在に連結されている。」 「【0033】 基端側のリンクハブ12と先端側のリンクハブ13と3組のリンク機構14とで、基端側のリンクハブ12に対し先端側のリンクハブ13が直交2軸回りに回転自在な2自由度機構が構成される。言い換えると、基端側のリンクハブ12に対して先端側のリンクハブ13を、回転が2自由度で姿勢変更自在な機構である。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の可動範囲を広くとれる。 【0034】 例えば、球面リンク中心PA,PBを通り、リンクハブ12,13と端部リンク部材15,16の各回転対偶の中心軸O1(図8)と直角に交わる直線をリンクハブ12,13の中心軸QA,QBとした場合、基端側のリンクハブ12の中心軸QAと先端側のリンクハブ13の中心軸QBとの折れ角θ(図9)の最大値を約±90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の旋回角φ(図9)を0°?360°の範囲に設定できる。折れ角θは、基端側のリンクハブ12の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ13の中心軸QBが傾斜した垂直角度のことであり、旋回角φは、基端側のリンクハブ12の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ13の中心軸QBが傾斜した水平角度のことである。」 「【0042】 リンク作動装置7の姿勢制御用アクチュエータ10は、減速機構52を備えたモータであり、基端側のリンクハブ12の基端部材20の上面に、前記回転軸22と同軸上に設置されている。姿勢制御用アクチュエータ10と減速機構52は一体に設けられ、モータ固定部材53により減速機構52が基端部材20に固定されている。この例では、3組のリンク機構14のすべてに姿勢制御用アクチュエータ10が設けられているが、3組のリンク機構14のうち少なくとも2組に姿勢制御用アクチュエータ10を設ければ、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢を確定することができる。」 「【0046】 図10は、この複合作業装置の制御系を示すブロック図である。 第1~第3の直動アクチュエータ5,6L,6Rの各モータ5a,6a,6a、および2つのリンク作動装置7L,7Rの各姿勢制御用アクチュエータ(モータ)10,・・・を駆動するモータドライバが通信ネットワーク70で互いに接続されている。この通信ネットワーク70は1つのコントローラ71に繋がっており、この1つのコントローラ71によって、モータ5a,6a,6aおよび姿勢制御用アクチュエータ10,・・・が制御される。」 「【0048】 このリンク作動装置を用いた複合作業装置1は、第1~第3の直動アクチュエータ5,6L,6Rの各1自由度と、2つのリンク作動装置7L,7Rの各2自由度とで、計7自由度の構成である。使用時には、前記コントローラ71の制御により、第1の直動アクチュエータ5で2つリンク作動装置7L,7Rを左右方向に移動させると共に、第2の直動アクチュエータ6Lおよび第3の直動アクチュエータ6Rで2つのリンク作動装置7L,7Rを第1の直動アクチュエータ5の移動方向と直交する前後方向に移動させ、かつリンク作動装置7L,7Rで作業体3,3の姿勢を変更する。これにより、2つの作業体3,3で2つの被作業体2,2に対して多様な作業を行うことができる。リンク作動装置7L,7Rで作業体3,3の姿勢変更を高速・高精度で行えるため、高速・高精度の作業が可能である。 【0049】 図1は、2つのリンク作動装置7L,7Rを複合作業装置1の左右中央よりも右寄りの位置に移動させ、かつ2つのリンク作動装置7L,7Rの姿勢を先端側のリンクハブ13,13が左上がりとなるようにし、被作業体2,2に対して右側から作業体3,3で作業を行う状態を表している。 【0050】 図2は、2つのリンク作動装置7L,7Rを複合作業装置1の左右中央よりも左寄りの位置に移動させ、かつ2つのリンク作動装置7L,7Rの姿勢を先端側のリンクハブ13,13が右上がりとなるようにし、被作業体2,2に対して左側から作業体3,3で作業を行う状態を表している。 【0051】 また、図3は、片方のリンク作動装置7Lの姿勢を先端側のリンクハブ13が右上がりとなるようにし、かつもう片方のリンク作動装置7Rの姿勢を先端側のリンクハブ13が左上がりとなるようにし、1つの被作業体2(図の例では左の被作業体2)に対して2つの作業体3,3で同時に作業を行う状態を表している。 【0052】 このように、2つの被作業体2,2に対して2つの作業体3,3でそれぞれ作業を行うことも、1つの被作業体2に対して2つの作業体3,3で同時に作業を行うこともできる。また、リンク作動装置7L,7Rによって作業体3の姿勢を変更することで、被作業体2の様々な面に対して作業を行うことができる。なお、図1~図3の例では、被作業体2の数が2つであるが、被作業体2を3つ以上配置しても良い。その場合も、各被作業体2の様々な面に対して作業を行うことができる。」 図1 「 [図:0001403320000001.jpg] 」 図2 「 [図:0001403320000002.jpg] 」 図3 「 [図:0001403320000003.jpg] 」 図9 「 [図:0001403320000004.jpg] 」 2 引用文献1の記載事項の整理 上記1の記載事項から見て、以下の技術的事項を理解することができる。 (1)引用文献1には、2つのリンク作動装置により2つの被作業体に対して同時に作業を行うことを目的とする発明(【0010】)が記載されており、2つのリンク作動装置で2つの被作業体に対して同時に作業を行うことは、主に、図1~図2に示されている。 (2)これに対して、引用文献1の図3には、1つの被作業体2に対して2つの作業体3,3で同時に作業を行うこと(【0051】)についても記載されているから、引用文献1には、1つの被作業体2に対して2つの作業体3,3で同時に作業を行う発明についても記載されているといえる。 (3)複合作業装置1(【0023】)は、左右方向に並んだ2つの作業体3,3を有している(図3)。 (4)2つの作業体3,3を、それぞれ個別に姿勢変更する手段として、2つのリンク作動装置7L,7Rが設けられている(【0024】)。 (5)各リンク作動装置7は、パラレルリンク機構9と、このパラレルリンク機構9を作動させる姿勢制御用アクチュエータ10とで構成され、パラレルリンク機構9は、基端側のリンクハブ12に対し先端側のリンクハブ13を3組のリンク機構14を介して姿勢変更可能に連結したものである(【0028】)。 (6)各リンク機構14は、基端側の端部リンク部材15、先端側の端部リンク部材16、及び中央リンク部材17で構成され、基端側及び先端側の端部リンク部材15,16は、一端がそれぞれ基端側のリンクハブ12及び先端側のリンクハブ13に回転自在に連結されており、中央リンク部材17は、両端に基端側及び先端側の端部リンク部材15,16の他端がそれぞれ回転自在に連結されている(【0029】)。 (7)3組のリンク機構14のうち少なくとも2組に姿勢制御用アクチュエータ10を設ければ、基端側のリンクハブ12に対する先端側のリンクハブ13の姿勢を確定することができる(【0042】)。 (8)2つの作業体3,3を左右方向に移動させる手段として、第1の直動アクチュエータ5が設けられており、2つの作業体3,3をそれぞれ個別に前後方向に移動させる手段として、第2及び第3の直動アクチュエータ6L,6Rが設けられている(【0024】)。 (9)上記(8)の第2の直動アクチュエータ6Lと、この第2の直動アクチュエータ6Lにより移動可能なリンク作動装置7L(【0048】)と、このリンク作動装置7Lに支持された作業体3(【0048】)とで、左側のユニットが構成されているということができる。 (10)上記(8)の第3の直動アクチュエータ6Rと、この第3の直動アクチュエータ6Rにより移動可能なリンク作動装置7R(【0048】)と、このリンク作動装置7Rに支持された作業体3(【0048】)とで、右側のユニットが構成されているということができる。 (11)上記(9)の左側のユニットの作業体3と、上記(10)の右側のユニットの作業体3は、それぞれ個別に姿勢変更が可能である(【0024】)ことから、左側のユニットと右側のユニットは、個別に動作することができるといえる。 (12)図3には、左側のユニットの作業体3が右下を向いて作業し、右側のユニットの作業体3が左下を向いて作業すること、すなわち、2つの作業体3,3がリンク作動装置7L,7Rの並び方向である左右方向の内側を向いて作業することが図示されている。 3 引用発明 上記2をまとめると、引用文献1には、次の発明が記載されているということができる。 「左右方向に並んだ作業体3,3を2つ有し、1つの被作業体2に対して前記2つの作業体3,3が非接触状態で作業を行う複合作業装置であって、 前記2つの作業体3,3をそれぞれ個別に姿勢変更可能に支持する左右方向に並んだ2つのリンク作動装置7L,7Rを備え、 前記各リンク作動装置7L,7Rは、基端側のリンクハブ12に対し先端側のリンクハブ13が、3組のリンク機構14を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構14は、それぞれ前記基端側のリンクハブ12及び前記先端側のリンクハブ13に一端が回転可能に連結された基端側及び先端側の端部リンク部材15,16と、これら基端側及び先端側の端部リンク部材15,16の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材17とを有し、前記3組のリンク機構14のうちの2組以上のリンク機構14に、前記基端側のリンクハブ12に対する前記先端側のリンクハブ13の姿勢を任意に変更させる姿勢制御用駆動源10が設けられたものであり、 前記2つの作業体3,3を左右方向に移動させる手段として、第1の直動アクチュエータ5が設けられており、 前記2つのリンク作動装置7L,7Rと前記1つの作業体2とを相対的に前後方向に移動させる直動アクチュエータ6L,6Rを2つ有し、そのうちの1つの直動アクチュエータ6Lと、この直動アクチュエータ6Lにより移動可能な1つの前記リンク作動装置7Lと、このリンク作動装置7Lに支持された前記作業体3とで左側のユニットを構成し、かつ残りの1つの直動アクチュエータ6Rと、この直動アクチュエータ6Rにより移動可能な1つの前記リンク作動装置7Rと、このリンク作動装置7Rに支持された前記作業体3とで右側のユニットを構成し、これら左側及び右側のユニットがそれぞれ個別に動作して作業を行うリンク作動装置7L,7Rを用い、 前記2つの作業体3,3が、前記リンク作動装置7L,7Rの並び方向である左右方向の内側を向いて作業する複合作業装置。」(以下「引用発明」という。) 第5 対比並びに一致点及び相違点 1 対比 本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりである。 (1)引用発明の「左右方向に並んだ作業体3,3」は、本願発明の「左右方向に並んだ作業体」に相当し、以下同様に、「1つの被作業体2」は「1つの被作業体」に、「前記2つの作業体3,3が非接触状態で作業を行う複合作業装置」は「前記2つの作業体が接触状態または非接触状態で作業を行う複合作業装置」に、「前記2つの作業体3,3をそれぞれ個別に姿勢変更可能に支持する左右方向に並んだ2つのリンク作動装置7L,7R」は「前記2つの作業体をそれぞれ個別に姿勢変更可能に支持する左右方向に並んだ2つのリンク作動装置」に、それぞれ相当する。 (2)また、引用発明において「前記各リンク作動装置7L,7Rは、基端側のリンクハブ12に対し先端側のリンクハブ13が、3組のリンク機構14を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構14は、それぞれ前記基端側のリンクハブ12及び前記先端側のリンクハブ13に一端が回転可能に連結された基端側及び先端側の端部リンク部材15,16と、これら基端側及び先端側の端部リンク部材15,16の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材17とを有」することは、本願発明において「前記各リンク作動装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有」することに相当し、同様に、「前記3組のリンク機構14のうちの2組以上のリンク機構14に、前記基端側のリンクハブ12に対する前記先端側のリンクハブ13の姿勢を任意に変更させる姿勢制御用駆動源10が設けられたもの」は「前記3組以上のリンク機構のうちの2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させる姿勢制御用駆動源が設けられたもの」に相当する。 (3)また、引用発明において、「前記2つの作業体3,3を左右方向に移動させる手段として、第1の直動アクチュエータ5が設けられており、前記2つのリンク作動装置7L,7Rと前記1つの作業体2とを相対的に前後方向に移動させる直動アクチュエータ6L,6Rを2つ有」することは、本願発明が当該前後方向に移動させる直動アクチュエータ以外の、他のアクチュエータを設けることを排除する特定はないことから、本願発明の「前記2つのリンク作動装置と前記1つの被作業体とを相対的に前後方向に移動させる直動アクチュエータを2つ有」することに相当する。 (4)そして、引用発明において「そのうちの1つの直動アクチュエータ6Lと、この直動アクチュエータ6Lにより移動可能な1つの前記リンク作動装置7Lと、このリンク作動装置7Lに支持された前記作業体3とで左側のユニットを構成」することは、本願発明において「そのうちの1つの直動アクチュエータと、この直動アクチュエータにより移動可能な1つの前記リンク作動装置と、このリンク作動装置に支持された前記作業体とで第1のユニットを構成」することに相当し、以下同様に、「かつ残りの1つの直動アクチュエータ6Rと、この直動アクチュエータ6Rにより移動可能な1つの前記リンク作動装置7Rと、このリンク作動装置7Rに支持された前記作業体3とで右側のユニットを構成」することは、「かつ残りの1つの直動アクチュエータと、この直動アクチュエータにより移動可能な1つの前記リンク作動装置と、このリンク作動装置に支持された前記作業体とで第2のユニットを構成」することに、「これら左側及び右側のユニットがそれぞれ個別に動作して作業を行うリンク作動装置7L,7Rを用」いることは、「これら第1および第2のユニットがそれぞれ個別に動作して作業を行うリンク作動装置を用」いることに、「前記2つの作業体3,3が、前記リンク作動装置7L,7Rの並び方向である左右方向の内側を向いて作業する」ことは、「前記2つの作業体が、前記リンク作動装置の並び方向である左右方向の内側を向いて作業する」ことに、それぞれ相当する。 2 一致点及び相違点 以上から、本願発明と引用発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1及び2で相違する。 [一致点] 両発明は、「左右方向に並んだ作業体を2つ有し、1つの被作業体に対して前記2つの作業体が接触状態または非接触状態で作業を行う複合作業装置であって、 前記2つの作業体をそれぞれ個別に姿勢変更可能に支持する左右方向に並んだ2つのリンク作動装置を備え、 前記各リンク作動装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結され、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび前記先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを有し、前記3組以上のリンク機構のうちの2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させる姿勢制御用駆動源が設けられたものであり、 前記2つのリンク作動装置と前記1つの被作業体とを相対的に前後方向に移動させる直動アクチュエータを2つ有し、そのうちの1つの直動アクチュエータと、この直動アクチュエータにより移動可能な1つの前記リンク作動装置と、このリンク作動装置に支持された前記作業体とで第1のユニットを構成し、かつ残りの1つの直動アクチュエータと、この直動アクチュエータにより移動可能な1つの前記リンク作動装置と、このリンク作動装置に支持された前記作業体とで第2のユニットを構成し、これら第1および第2のユニットがそれぞれ個別に動作して作業を行うリンク作動装置を用い、 前記2つの作業体が、前記リンク作動装置の並び方向である左右方向の内側を向いて作業する複合作業装置。」である点。 [相違点1] 本願発明は、「前記2つのリンク作動装置は、それぞれが支持する前記作業体の各作業可能範囲が、前記被作業体が配置される平面である基準作業平面上において前記2つのリンク作動装置の並び方向に互いに重なる重複領域を持つように配置され、前記基準作業平面上での全ての前記被作業体の配置場所は、前記重複領域内に位置する場所」であるのに対して、引用発明は、2つのリンク作動装置の作業可能範囲が重複作業領域を持つかどうか不明であり、被作業体の配置場所が、重複領域内に位置する場所であるかどうか不明な点。 [相違点2] 本願発明は、「前記2つの直動アクチュエータが、同一方向に動」くのに対して、引用発明は、2つの直動アクチュエータが、同一方向に動くかどうか明確ではない点。 第6 判断 1 相違点1について 引用発明の複合作業装置は、1つの被作業体2に対して、左右の2つの作業体3,3により作業を行うものであることを考慮すると、左の作業体3の作業可能な円錐(リンク作動装置7の折れ角θと旋回角φによる円錐)の底面の円内に被作業体2が存在すると同時に、右の作業体3の作業可能な円錐の底面の円内にも被作業体2が存在するように配置すること、すなわち、左右の作業体3,3の基準作業平面上において2つのリンク作動装置7L,7Rの並び方向に互いに重なる重複領域を被作業体2の配置場所とすることは、当業者であれば普通になし得た事項である。また、左右の2つの作業体3,3による複合作業が必要な被作業体が複数ある場合に、それらをどのように配置するかは、作業効率や、被作業体の大きさ、重複領域の広さ等を考慮しつつ適宜に選択されるべきことであって、それらを考慮した結果、その全てを重複領域内に位置させる選択をすることは、当業者であれば格別の困難性を有したこととはいえない。 したがって、引用発明において、「前記2つのリンク作動装置は、それぞれが支持する前記作業体の各作業可能範囲が、前記被作業体が配置される平面である基準作業平面上において前記2つのリンク作動装置の並び方向に互いに重なる重複領域を持つように配置され、前記基準作業平面上での全ての前記被作業体の配置場所は、前記重複領域内に位置する場所」であるように構成することは、当業者が容易に想到できた事項である。 2 相違点2について (1)相違点2の「前記2つの直動アクチュエータが、同一方向に動」くことについて、請求人の説明(令和3年12月27日の意見書の(3))を参酌すると、2つの直動アクチュエータがそれぞれ別個に前後方向へ移動することを意味すると解されるが、そうであれば、引用発明と差異はなく、相違点2は実質的な相違点ではない。 (2)また、仮に、「同一方向に動」くことが、前後方向において同じ位置となるように移動するという意味であるとしても、引用文献1には、1つの被作業体2に対して2つの作業体3,3で同時に作業を行うことが示されており、同じ被作業体2に同時に作業を行うのであるから、2つのリンク作動装置を最も近づけて作業を行うこと、すなわち、2つの直動アクチュエータ6L,6Rが前後方向において同じ位置となるように移動させて作業を行うことは、当業者が容易に想到できた事項である。 (3)したがって、引用発明においても「前記2つの直動アクチュエータが、同一方向に動」くように構成されているといえるし、仮に、そのように構成されていなかったとしても、当業者が容易に想到できたものである。 3 小括 以上から、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 請求人の主張について 1 請求人の主張の概要 令和5年6月12日の意見書における請求人の主張のうち、本願発明に関する主張の概要は、以下のとおりである。 (1)引用発明は本願と前提が異なること 引用発明は、2個セットで流れてくる被作業体2に対して作業を行うことを想定した複合作業装置に関するものであり、本願発明とは前提が異なる。 (2)本願発明は2つの直動アクチュエータのみで作業できること 引用発明では、重複領域が設けられておらず、代わりに、3つの直動アクチュエータ5,6L,6Rが使用されており、本願発明における「2つの回転2自由度の作業装置と、2つの直動アクチュエータのみで、作業体に対して全方向から同時に作業できる」ような構成は、引用文献1には開示されていない。そして、本願発明は、「コンパクトな構成で、被作業体3に対して全方向から同時に作業できる」という格別の効果を奏するものであるから、引用文献1から容易に想到し得ないことは明白である。 2 請求人の主張の検討 (1)引用発明は本願と前提が異なることについて 請求人は、引用発明について、2個セットで流れてくる被作業体2に対して作業を行うものであり、本願発明と前提が異なる旨を主張している。 確かに、引用文献1には、2個セットで流れてくる被作業体2に対して作業を行う記載が含まれているとしても、引用発明は、上記第4の2及び3に示すとおり、主に図3に開示された、2つの作業体が左の被作業体に対して同時に作業を行う状態の複合作業装置の態様に基づいて認定したものであるから、請求人が主張する、2個セットで流れてくる被作業体2に対して作業を行う点は、引用発明の認定に影響を及ぼすものとはいえない。 したがって、請求人の上記主張は、採用できない。 (2)本願発明は2つの直動アクチュエータのみで作業できることについて 請求人は、本願発明は、重複領域に全ての被作業体を配置することで、前後方向に作業体を移動させる2つの直動アクチュエータのみで、被作業体に対して全方向からの同時作業を実現する旨を主張している。 しかしながら、上記第5の1(3)で説示のとおり、本願発明は請求人が主張する、「2つの直動アクチュエータのみで作業できること」を限定しているものとはいえないから、上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づく主張とはいえず、採用することはできない。 なお、付言すると、仮に、本願発明において、「2つの直動アクチュエータのみで作業できる」事項を限定したとしても、一般に、装置における部材の削除は、機能低下等のデメリットと、構成の簡素化や省スペース化等のメリットの両面を踏まえ、当業者であれば適宜選択可能な事項といえる。 また、請求人が主張する効果(コンパクトな構成で、被作業体に対して全方向から同時に作業できること)を検討しても、コンパクトな構成に関する効果は、上記の選択により得られる程度のものにすぎないし、全方向から同時に作業できることに関する効果は、全ての被作業体の配置場所を重複領域内に位置させる構成で生じるものであるから、いずれの効果も格別顕著なものとはいえない。 したがって、仮に、本願発明において、上記の事項を限定したとしても、当該事項は、当業者であれば容易想到の範囲内のものといえる。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-013341

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