特許拒絶査定不服審判
2022-013018
統合リセット可能温度ヒューズ付きのコネクタ
- 審判番号
- 2022-013018
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-505495外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年08月19日
- 審決日
- 2023年04月12日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ボーンズ、インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人秀和特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (H01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-505495「統合リセット可能温度ヒューズ付きのコネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月 8日国際公開、WO2018/026689、令和 1年 9月 5日国内公表、特表2019-525416、請求項の数(32)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)7月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年8月2日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和3年8月19日付けで拒絶理由通知がされ、令和4年2月24日に手続補正がされ、令和4年4月15日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和4年8月19日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和4年4月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1~23、28~32に係る発明は、以下の引用文献1、2に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.国際公開第2015/190020号
2.特開2002-280746号公報
第3 本願発明
本願の請求項1~23、28~32に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明23」、「本願発明28」~「本願発明32」という。)は、令和4年2月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~23、28~32に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
電子デバイスとの電気通信を提供するコネクタであって、前記コネクタは、
非導電材料および導電材料のパターン化層を含む基板と、
前記基板上に取り付けられ、かつ前記導電材料と電気的に接続されたインターフェース部材と、
前記基板内に埋め込まれ、かつ前記導電材料および前記インターフェース部材と電気的に接続されたリセット可能温度ヒューズと、を備え、
前記リセット可能温度ヒューズの少なくとも一部が、前記インターフェース部材から前記リセット可能温度ヒューズへの熱伝導経路が存在するように、前記インターフェース部材の直下に配置されており、前記リセット可能温度ヒューズは、前記インターフェース部材の導電線を流れる過剰な電流を防止するように構成され、
前記コネクタは、前記電子デバイスと他の電子デバイスの間で電力およびデータ通信のうち少なくとも1つを供給するように構成された、1つ以上の端子を含む、
コネクタ。」
なお、本願発明2~23、28~32の概要は以下のとおりである。
本願発明2~22、32は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明23は、本願発明1におけるコネクタを備えるケーブルの発明である。
本願発明28は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明29~31は、本願発明28を減縮した発明である。
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
引用文献1の段落【0018】【0021】の記載と図2から、コネクタボディ11から突出するコネクタシェル12に覆われた部分にコネクタ端子であるVBUS端子21、GND端子22、D+端子23、D-端子24、ID端子25が並設されており、前記コネクタボディ11、前記コネクタシェル12及び前記各端子からなるインターフェース部が基板3に取り付けられていること、温度検出素子51は基板3の表面に設けられるとともに前記インターフェース部の上に配置されていることが理解される。
また、図3から、温度検出素子51はスイッチS1及びGND端子22と電気的に接続されていることが看取される。
したがって、引用文献1(特に【0002】、【0005】、【0021】~【0033】、図2~4参照)には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電子機器とのデータの送受信や電力供給をするコネクタ2であって、前記コネクタ2は、
基板3と、
前記基板3上に取り付けられ、かつVBUS線31又はGND線32と基板3を介して電気的に接続されるVBUS端子21又はGND端子22が並設されているインターフェース部と、
前記基板3の表面に設けられ、かつ前記スイッチS1及び前記インターフェース部の前記GND端子22と電気的に接続されたPTCサーミスタである温度検出素子51と、を備え、
前記温度検出素子51が前記インターフェース部の上に配置されており、前記前記温度検出素子51は、過大な出力電流や異常な温度上昇により出力を停止する保護動作を行うことができ、
前記コネクタ2は、前記電子機器と他の電子機器の間で電力供給およびデータ送受信を行うVBUS端子21、GND端子22、D+端子23、D-端子24、ID端子25を含む、
コネクタ2、及び、コネクタ2の製造方法。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特に【0005】、【0007】、【0040】、【0042】、図4参照)には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「携帯電話、携帯情報端末(PDA)、およびデジタルカメラ等のプリント回路基板において、プリント回路基板の表面上に取付けられたPTC過電流保護装置に代えて、埋込み内部PTC材料層41とすることで、プリント回路基板の表面上に取付けられる装置の数が減少し、それにより、PCB表面の使用率が増加し、さらに、PTC素子の表面積が増加するため、正常抵抗(すなわち、通常動作時の抵抗値)が実質的に低減された、プリント回路基板。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「電子機器」は本願発明1における「電子デバイス」に相当し、以下同様に、「データの送受信や電力供給をする」という事項は「電気通信を提供する」という事項に、「コネクタ2」は「コネクタ」に、それぞれ相当する。
引用文献1の【0021】における「VBUS線31は基板3を介して、VBUS端子21と電気的に接続され、GND線32は基板3を介してGND端子22と電気的に接続されている。」との記載から、基板3が非導電材料および導電材料のパターン化層を含むことは明らかであるから、引用発明の「基板3」は本願発明1の「非導電材料および導電材料のパターン化層を含む基板」に相当し、以下同様に、「VBUS線31又はGND線32と基板3を介して電気的に接続されるVBUS端子21又はGND端子22が並設されているインターフェース部」は「前記導電材料と電気的に接続されたインターフェース部材」に、
「前記スイッチS1及び前記インターフェース部の前記GND端子22と電気的に接続された」という事項は「前記導電材料および前記インターフェース部材と電気的に接続された」という事項に、
「PTCサーミスタである温度検出素子51」は「リセット可能温度ヒューズ」に、
「前記温度検出素子51が前記インターフェース部の上に配置されて」いる事項は「前記リセット可能温度ヒューズの少なくとも一部が、前記インターフェース部材から前記リセット可能温度ヒューズへの熱伝導経路が存在するように、前記インターフェース部材の直下に配置されて」いる事項に、
「過大な出力電流や異常な温度上昇により出力を停止する保護動作を行うことができ」る事項は「前記インターフェース部材の導電線を流れる過剰な電流を防止するように構成され」ている事項に、
「電力供給およびデータ送受信を行うVBUS端子21、GND端子22、D+端子23、D-端子24、ID端子25を含む」という事項は「電力およびデータ通信のうち少なくとも1つを供給するように構成された、1つ以上の端子を含む」という事項に、それぞれ相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「電子デバイスとの電気通信を提供するコネクタであって、前記コネクタは、
非導電材料および導電材料のパターン化層を含む基板と、
前記基板上に取り付けられ、かつ前記導電材料と電気的に接続されたインターフェース部材と、
前記導電材料および前記インターフェース部材と電気的に接続されたリセット可能温度ヒューズと、を備え、
前記リセット可能温度ヒューズの少なくとも一部が、前記インターフェース部材から前記リセット可能温度ヒューズへの熱伝導経路が存在するように、前記インターフェース部材の直下に配置されており、前記リセット可能温度ヒューズは、前記インターフェース部材の導電線を流れる過剰な電流を防止するように構成され、
前記コネクタは、前記電子デバイスと他の電子デバイスの間で電力およびデータ通信のうち少なくとも1つを供給するように構成された、1つ以上の端子を含む、
コネクタ。」
<相違点>
リセット可能温度ヒューズが、本願発明1では、「前記基板内に埋め込まれ」ているのに対し、引用発明では、基板3の表面に設けられている点。
(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、「第4 引用文献、引用発明等」の「2.引用文献2について」に記載のとおり、引用文献2には、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、およびデジタルカメラ等のプリント回路基板において、プリント回路基板の表面上に取付けられたPTC過電流保護装置に代えて、埋込み内部PTC材料層41とすることで、プリント回路基板の表面上に取付けられる装置の数が減少し、それにより、PCB表面の使用率が増加し、さらに、PTC素子の表面積が増加するため、正常抵抗(すなわち、通常動作時の抵抗値)が実質的に低減された、プリント回路基板が記載されている。
しかしながら、引用発明はケーブル端部に設けられたコネクタであるため、引用発明における基板3に実装される電子部品の数は限られており、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、およびデジタルカメラ等のプリント基板において求められるような、表面上に取付けられる電子部品の数を減少させなければならないという課題はない。
また、引用文献1の図3、図4によれば、引用発明における温度検出素子51は、VBUS端子21及びGND端子22に対して並列に接続されており、インターフェース部から供給される電流の全てが温度検出素子51を通過するわけではないため、PTC素子の表面積を増加させて、正常抵抗(すなわち、通常動作時の抵抗値)を低減させなければならない事情もない。
そうすると、引用文献2に記載されている技術的事項を、引用発明に適用する動機付けがないから、当業者といえども、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項から、相違点に係る本願発明1の、「(コネクタに備えられた)基板内に埋め込まれ」たリセット可能温度ヒューズという構成を容易に想到することはできない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2~23、32について
本願発明2~23、32も、本願発明1の「基板内に埋め込まれ」たリセット可能温度ヒューズと同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3 本願発明28~31について
本願発明28は本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明28~31も、本願発明1の「基板内に埋め込まれ」たリセット可能温度ヒューズに対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1~23、28~32は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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