審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2022-012104

環境感知モジュールを含むヘッドマウントデバイス

審判番号
2022-012104
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-538557外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年08月04日
審決日
2024年06月25日
公報発行日
2024年12月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-WZ (G02C) / P18 .121-WZ (G02C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-538557「環境感知モジュールを含むヘッドマウントデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月27日国際公開、WO2017/125373、平成31年 1月31日国内公表、特表2019-502964〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 10項目
理 由

第1 手続等の経緯

特願2018-538557号(以下「本件出願」という。)は、2017年(平成29年)1月17日(パリ条約に基づく優先権主張 2016年1月22日 欧州特許庁)を出願日とする国際出願であって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。

平成30年 9月 6日 :手続補正書の提出
令和 2年10月23日付け:拒絶理由通知
令和 3年 2月 2日 :手続補正書、意見書の提出
令和 3年 7月 8日付け:拒絶理由通知(最後)
令和 3年10月19日 :手続補正書、意見書の提出
令和 4年 3月28日付け:補正の却下の決定(令和3年10月19日に提出された手続補正書による手続補正を却下するものである。)
令和 4年 3月28日付け:拒絶査定
令和 4年 8月 4日 :審判請求書の提出
令和 4年 8月 4日 :手続補正書の提出
令和 5年 7月21日付け:拒絶理由通知
令和 5年12月12日 :手続補正書、意見書の提出

第2 本願発明

本件出願の特許請求の範囲の請求項1~15に係る発明は、令和5年12月12日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のものである。

「 ヘッドマウントデバイスであって、前記ヘッドマウントデバイスのユーザの環境の少なくとも1つのパラメータを感知するように構成された環境感知モジュールを含み、前記環境感知モジュールは、少なくとも、
- 前記ヘッドマウントデバイスの前記ユーザの前記環境のパラメータを感知するように構成されるセンサと、
- 前記パラメータを表す、前記センサによって感知されたデータを環境解析モジュールに送信するように構成される通信コンポーネントとを含み、
前記パラメータは、前記ユーザの直接的な環境内の空気、及び/又は前記ユーザの前記直接的な環境内の電磁波、及び/又は前記ユーザの前記直接的な環境内の音波に関係する、
ヘッドマウントデバイス。」

第3 当審において通知した拒絶の理由

令和5年7月21日付けで通知した拒絶の理由は、以下の理由を含むものであって、その概略は、以下のとおりである。

●理由2(進歩性欠如)

本件出願の請求項1~15に係る発明は、本件出願の優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(引用例等一覧)

引用例1:米国特許出願公開第2014/0169609号明細書(対応する特表2016-505889号公報も参照。)

第4 引用例の記載及び引用発明

1 引用例1の記載及び引用発明

(1) 引用例1の記載

当審における拒絶の理由で引用された、米国特許出願公開第2014/0169609号明細書(以下、同じく「引用例1」という。)は、本件優先日前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を記載するものであるところ、そこには以下の記載がある。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す(以下、同様である。)。

ア 「[0042] The communication eyewear assembly 10 is structured to be worn on a person's head so as to protect the person's eyes and also to permit hands-free wireless multimedia communication. The communication eyewear assembly 10 is additionally structured to identify a zone of safety about the wearer, as distinguished from a hazardous object or zone, and to notify the wearer and/or others of the zone of safety, such as that of an industrial environment, or that found in a variety of other situations, such as, but not limited to, military operations, fire and rescue operations, public safety operations, sports activities, interactive gaming, etc. Moreover, the assembly 10 can process a variety of data, receivable from a variety of sources, to ascertain and/or identify the zone of safety. The assembly 10 can also determine existence of extraordinary circumstances based on changes or lack of changes in the data, and notify the wearer and/or others of same, particularly with regard to the status of the wearer.」

(日本語訳)

「[0042] 通信眼鏡10は、人の頭部に装着され、人の眼を保護するとともに、ハンズフリー無線マルチメディア通信を行えるように構成されている。通信眼鏡10は、更に、着用者に関して、危険対象物または危険ゾーンとは区別される安全ゾーンを識別し、産業環境におけるか、または種々の他の状況において、その安全ゾーンを、着用者および/または他の人に対して知らせるように構成され、これらの状況の、限定的でない例は、軍事上の操作、火事または救助操作、公衆安全操作、スポーツ活動、および対話型ゲーム等における状況である。更に、この通信眼鏡10は、種々のソースから受信することができる種々のデータを処理して、安全ゾーンを、確認および/または識別することができる。また通信眼鏡10は、データの変化あるいは変化の欠如に基づいて、異常環境の存在を判定し、特に着用者の状態に関して、異常環境を、着用者および/または他の人に対して知らせることもできる。」

イ 「[0043] As seen in FIG. 1, the communication eyewear assembly 10 comprises a frame assembly 20 which is structured to be worn on a person's head. Accordingly, the frame assembly 20 is structured to be supportably disposed on the wearer so as to maintain at least one substantially transparent eye panel 25 in a generally shielding position in front of the wearer's eyes.」

(日本語訳)

「[0043] 図1に示すように、通信眼鏡10は、フレーム20を備えており、このフレーム20は、人の頭部に装着しうるように構成されている。従って、フレーム20は、着用者の上に配置され保持されるようになっており、概ね着用者の眼の前部の遮蔽位置に、少なくとも1つの実質的に透明のレンズ25を保持することができる。」

ウ 「[0048] Turning now to the communication aspects of the present invention, the communication eyewear assembly 10 provides for wireless communication between a wearer and other entities, such as, but not limited to, other wearers, control stations, broadcast stations, network servers, remote network peers, local and/or remote data sources, etc.」

(日本語訳)

「[0048] 本発明の通信機能の態様について説明する。通信眼鏡10は、通信眼鏡10の着用者と、他のエンティティとの間の無線通信を提供する。他のエンティティは、限定的でない例として、他の着用者、制御局、放送局、ネットワークサーバ、遠隔ネットワークピア、ローカルおよび/または遠隔データソース等である。」

エ 「[0049] Accordingly, the communication eyewear assembly 10 comprises at least one processor 40 which is coupled to the frame assembly 20.」

(日本語訳)

「[0049] 従って、通信眼鏡10は、フレーム20に結合された少なくとも1つのプロセッサ40を備えている。」

オ 「[0052] The communication eyewear assembly 10 further comprises at least one earpiece 60 structured to be disposed in either wired or wireless communication with the processor 40 and further structured to be disposed at one of the wearer's ears. As such, the processor 40 retransmits a received incoming audio signal to at least one earpiece 60, which in tum communicates the incoming audio signal to the wearer.」

(日本語訳)

「[0052] 通信眼鏡10は、少なくとも1つのイヤホン60を更に備えている。イヤホン60は、プロセッサ40と有線または無線で通信するように構成され配置され、更に、着用者の一方の耳に挿入されるようになっている。従って、プロセッサ40は、入力聴覚信号を少なくとも1つのイヤホン60に送信し、イヤホン60は、その入力聴覚信号を着用者に送信する。」

カ 「[0053] With regard to inter-component connectivity as well as remote connectivity, the processor 40 comprises at least one transceiver structured to facilitate wireless communication. For example, with reference to the embodiment of FIG. 2, the processor 40 can comprise a first transceiver 42 and a second transceiver 44. The first transceiver 42 is structured to receive an incoming data signal from a remote source, and is also structured to transmit an outbound data signal to a remote destination.・・・略・・・In at least one embodiment, the first transceiver utilizes radio frequency communication.・・・略・・・The outbound data signal can also comprise information detected by various sensors, as discussed further below.

(日本語訳)

「[0053] 構成要素間の接続とともに、遠隔接続にも注目すると、プロセッサ40は、無線通信を可能にするようになっている少なくとも1つのトランシーバを備えている。例えば、図2に示す実施形態においては、プロセッサ40は、第1のトランシーバ42と第2のトランシーバ44とを備えることができる。第1のトランシーバ42は、遠隔ソースからの入力データ信号を受信して、出力データ信号を遠隔の宛先に送信するよう構成されている。・・・略・・・少なくとも1つの実施形態においては、第1のトランシーバは、無線周波数通信を利用している。・・・略・・・送信データ信号はまた、種々のセンサによって検出された情報を含むこともある。この点に関しては、以下において論述する。」

キ 「[0055] The second transceiver 44 of FIG. 2 is structured to wirelessly communicate with the earpieces 60.」

(日本語訳)

「[0055] 図2に示す第2のトランシーバ44は、イヤホン60と無線通信を行うように構成されている。」

ク 「[0057] As indicated, above, the communication eyewear assembly 10 is additionally structured to identify a zone of safety about the wearer and to notify the wearer and/or others of the zone of safety. In particular, as discussed next, the processor 40 is structured to receive, send, and process a variety of data associated with ascertaining and/or identifying the zone of safety. This includes multimedia communication capabilities associated various sources and recipients of information, preferably via a wireless communication system.」

(日本語訳)

「[0057] 上記したように、通信眼鏡10は、着用者に関する安全ゾーンを識別し、その安全ゾーンを、着用者および/または他の人に対して知らせるように構成されている。特に、次で述べるように、プロセッサ40は、安全ゾーンの確認および/または識別に関する種々のデータの、受信、送信、および処理を行うように構成されている。これは、種々の情報ソース、情報受領者に関連するマルチメディア通信機能を含んでいる。この通信は、無線通信システムを介して行われることが望ましい。」

ケ 「[0058] With reference to FIG. 3, a schematic illustration depicts one embodiment of a wireless communication system 110 in accordance with the present invention. In particular, the processor 40 and various electronic data sources are structured to communicate with one or more communication networks 120 and protocols, such as, but not limited to, the Internet, cellular, satellite, WIFI, WIMAX, WLAN, WAN, LAN, WIFI hotspot, Intranet, ZIGBEE, EN OCEAN, etc.・・・略・・・Further, a remote processor 140 can facilitate processing and organization of data and other information, and may be structured to enhance and/or supplement the computational capacity of the in-frame processor 40, such as for determining the zone of safety.」

(日本語訳)

「[0058] 図3は、本発明による無線通信システム110の1つの実施形態を示す。具体的には、プロセッサ40と、種々の電子データソースとは、1つ以上の通信ネットワーク120および通信ネットワークプロトコルで通信するように構成されている。これらの通信ネットワークは、インターネット、セルラ、衛星、WIFI、WIMAX、WLAN、WAN、LAN、WIFIホットスポット、イントラネット、ZIGBEE、ENOCEAN等である。・・・略・・・更に、遠隔プロセッサ140によって、データおよび他の情報の処理および構成を行うことができ、これにより、安全ゾーンの判定等に関して、フレーム内のプロセッサ40のコンピュータ機能を、強化および/または補完するように構成することができる。」

コ 「[0063] In addition, the communication eyewear assembly 10, itself, can include similar types of data sources integrated therewith, which are each structured to communicate with the processor 40. Accordingly, with reference again to FIGS. 1 and 3, the communication eyewear assembly 10 comprises one or more environmental sensors 81 which are coupled to the frame assembly 20. The environmental sensors 81 are structured and disposed to obtain specific information about the environment around the eyewear wearer. By way of example, only, information provided by the environmental sensors 81 can pertain to potentially dangerous temperatures, toxic gases, airborne chemical or biological agents, ionizing radiation, potentially damaging energy fields, atmospheric pressure, ultrasonic waves, etc.」

(日本語訳)

「[0063] 更に、通信眼鏡10は、それ自体が、通信眼鏡10に組み込まれている、同様の種類のデータソースを含むことができる。これらのデータソースは、プロセッサ40と通信することができるように構成されている。従って、再び図1および図3を参照すると、通信眼鏡10は、フレーム20に結合した1つ以上の環境センサ81を備えている。環境センサ81は、通信眼鏡着用者の周囲の環境に関する情報を得るように構成され配置されている。例としてのみ挙げれば、環境センサ81によって提供される情報は、危険な可能性がある温度、有毒ガス、空気中の化学的または生物学的薬剤、電離放射線、傷害を被る可能性があるエネルギー場、傷害を被る可能性がある大気圧、超音波等に関係するものとすることができる。」

サ 「[0064] Similarly, the communication eyewear assembly 10 comprises one or more locational sensors 83 which are coupled to the frame assembly 20 and structured to communicate with the processor 40. The locational sensors 83 are specifically disposed and structured to provide locational data which can include information about the location of the wearer as well as the location of items of interest.」

(日本語訳)

「[0064] 同様に、通信眼鏡10は、フレーム20と結合され、プロセッサ40と通信するように構成されている1つ以上の位置センサ83を備えている。位置センサ83は、特に、着用者の位置とともに、問題とする物品の位置の情報を含むことができる位置データを提供するように配置され構成されている。」

シ 「[0065] The processor 40 is structured to utilize information from the locational sensor 83 and/or other aforementioned sources of locational data to determine the wearer's position on the face of the earth, location of restricted areas, relative locations of potentially hazardous stationary or moving objects around the eyewear wearer, etc. For instance, with regard to determining the wearer's global position, the locational sensor 83 can be structured to receive signals from the Global Positioning System (GPS) via a geomagnetic sensing capability. Such information can be used to determine the wearer's general location and also to determine situational awareness, such as whether the wearer is venturing into restricted areas or perhaps is immobile in excess of a predetermined amount of time, signaling possible incapacitation.」

(日本語訳)

「[0065] プロセッサ40は、位置センサ83、および/または他のソースからの情報を利用して、着用者の地球上における位置、通信眼鏡の着用者の周囲の危険な可能性がある静止物体、または移動物体の位置によって影響される規制区域等を判定するように構成されている。例えば、着用者の地球上位置の判定に関しては、位置センサ83を、地磁気検出機能を介して、全地球測位システム(GPS)からの信号を受信するように構成することができる。これら情報は、これを使用して、着用者の一般的な位置を判定し、また、着用者が規制区域に進出するか、または所定の時間を超えて不動であり、効果なくシグナリングされているかどうか等の状況認識を判定することができる。」

ス 「図1
[図:0001416925000001.jpg]
」
セ 「図2
[図:0001416925000002.jpg]
」
ソ 「図3
[図:0001416925000003.jpg]
」

(2) 引用発明

引用例1の[0042]~[0043]、[0048]~[0049]、[0052]~[0053]、[0055]、[0057]~[0058]、[0063]~[0065]及び図1~図3の記載からみて、引用例1には、「通信眼鏡10」の発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「 人の頭部に装着され、ハンズフリー無線マルチメディア通信を行えるように構成され、
着用者に関して、危険対象物または危険ゾーンとは区別される安全ゾーンを識別し、その安全ゾーンを、着用者および/または他の人に対して知らせるように構成され、
更に、種々のソースから受信することができる種々のデータを処理して、安全ゾーンを、確認および/または識別することができ、また、データの変化あるいは変化の欠如に基づいて、異常環境の存在を判定し、特に着用者の状態に関して、異常環境を、着用者および/または他の人に対して知らせることもできる、通信眼鏡10であって、([0042])
-通信眼鏡10は、人の頭部に装着しうるように構成されたフレーム20を備え、([0043]、図1)
続きを表示(全19行)
-通信眼鏡10は、通信眼鏡10の着用者と、他のエンティティとの間の無線通信を提供し、
他のエンティティは、他の着用者、制御局、放送局、ネットワークサーバ、遠隔ネットワークピア、ローカルおよび/または遠隔データソース等であり、([0048])
-通信眼鏡10は、フレーム20に結合された少なくとも1つのプロセッサ40、及び、少なくとも1つのイヤホン60を備え、([0049]、[0052]、図1)
プロセッサ40は、無線通信を可能にするようになっているトランシーバを備え、
第1のトランシーバ42は、遠隔ソースからの入力データ信号を受信して、出力データ信号を遠隔の宛先に送信するよう構成され、送信データ信号はまた、種々のセンサによって検出された情報を含み、([0053]、図2)
第2のトランシーバ44は、イヤホン60と無線通信を行うように構成され、([0055]、図2)
プロセッサ40は、安全ゾーンの確認および/または識別に関する種々のデータの、受信、送信、および処理を行うように構成され、これは、種々の情報ソース、情報受領者に関連するマルチメディア通信機能を含み、([0057])
プロセッサ40と、種々の電子データソースとは、1つ以上の通信ネットワーク120および通信ネットワークプロトコルで通信するように構成され、
更に、遠隔プロセッサ140によって、データおよび他の情報の処理および構成を行うことができ、これにより、安全ゾーンの判定等に関して、フレーム内のプロセッサ40のコンピュータ機能を、強化および/または補完するように構成し、([0058]、図3)
-通信眼鏡10は、それ自体が、通信眼鏡10に組み込まれている、データソースを含み、これらのデータソースは、プロセッサ40と通信することができるように構成され、従って、通信眼鏡10は、フレーム20に結合した1つ以上の環境センサ81を備え、環境センサ81は、通信眼鏡着用者の周囲の環境に関する情報を得るように構成され配置され、
環境センサ81によって提供される情報は、危険な可能性がある温度、有毒ガス、空気中の化学的または生物学的薬剤、電離放射線、傷害を被る可能性があるエネルギー場、傷害を被る可能性がある大気圧、超音波に関係し、([0063]、図1、図3)
-通信眼鏡10は、フレーム20と結合され、プロセッサ40と通信するように構成されている1つ以上の位置センサ83を備え、
位置センサ83は、特に、着用者の位置とともに、問題とする物品の位置の情報を含むことができる位置データを提供するように配置され構成され、([0064]、図1、図3)
プロセッサ40は、位置センサ83、および/または他のソースからの情報を利用して、着用者の地球上における位置、通信眼鏡の着用者の周囲の危険な可能性がある静止物体、または移動物体の位置によって影響される規制区域等を判定するように構成され、これら情報は、これを使用して、着用者の一般的な位置を判定し、また、着用者が規制区域に進出するか、または所定の時間を超えて不動であり、効果なくシグナリングされているかどうか等の状況認識を判定することができる、([0065]、図3)
通信眼鏡10。」

(当合議体注:引用発明においては、「プロセッサ40」及び「プロセッサ」との記載を、「プロセッサ40」に統一した。また、引用発明の認定の根拠となった記載及び図面を、括弧「()」を付して記載した。)

第5 当合議体の判断

1 対比

本願発明と、引用発明とを対比する。

(1) ヘッドマウントデバイス

引用発明の「通信眼鏡10」は、「人の頭部に装着され、ハンズフリー無線マルチメディア通信を行えるように構成され」、「着用者に関して、危険対象物または危険ゾーンとは区別される安全ゾーンを識別し、その安全ゾーンを、着用者および/または他の人に対して知らせるように構成され」るものである。

そうすると、引用発明の「通信眼鏡10」は、本願発明の「ヘッドマウントデバイス」に相当する。

(2) センサ

引用発明の「通信眼鏡10は、フレーム20に結合した」「環境センサ81を備え、環境センサ81は、通信眼鏡着用者の周囲の環境に関する情報を得るように構成され配置され」る。

そうすると、上記「環境センサ81」は、「通信眼鏡着用者の周囲の環境」のパラメータを感知するように構成されている、といえる。

上記(1)より、上記「通信眼鏡着用者」は、本願発明の「ヘッドマウントデバイスのユーザ」に相当し、上記「通信眼鏡着用者の周囲の環境」は、本願発明の「ヘッドマウントデバイスのユーザの環境」に相当する。

してみると、引用発明の「環境センサ81」は、本願発明の、「前記ヘッドマウントデバイスの前記ユーザの前記環境のパラメータを感知するように構成される」とされる、「センサ」に相当する。

(3) 通信コンポーネント、環境解析モジュール

ア 引用発明の「通信眼鏡10に組み込まれている」「データソース」は、「プロセッサ40と通信することができるように構成され」ている。

そうすると、上記(2)より、引用発明の「通信眼鏡10に組み込まれている」「データソース」は、上記「環境センサ81」により感知された上記「通信眼鏡着用者の周囲の環境」のパラメータ(「データ」)を、「プロセッサ40」に送信するように構成されている、と理解できる。

してみると、引用発明の「通信眼鏡10に組み込まれている」「データソース」は、「環境センサ81」により感知された「通信眼鏡着用者の周囲の環境に関する情報」を、「プロセッサ40」に送信するように構成される通信コンポーネントを含んでいるといえる。

イ 引用発明の「フレーム20に結合された」「プロセッサ40」は、「安全ゾーンの確認および/または識別に関する種々のデータの、受信、送信、および処理を行うように構成され」ている。

上記アより、この「フレーム20に結合された」「プロセッサ40」が「受信、送信、および処理を行う」、「安全ゾーンの確認および/または識別に関する」「データ」には、当該「プロセッサ40」に送信される、「環境センサ81」により感知された「通信眼鏡着用者の周囲の環境」のパラメータが含まれる、と理解できる。

そうすると、引用発明の「フレーム20に結合された」「プロセッサ40」は、「環境センサ81」により感知された「通信眼鏡着用者の周囲の環境」に関するデータを「受信」「および処理」し、「安全ゾーンの確認および/または識別」するように構成されていることから、環境を解析する機能を有するモジュールであるということができる。

してみると、引用発明の「フレーム20に結合された」「プロセッサ40」は、本願発明の「環境解析モジュール」に相当する。

ウ 上記アとイより、引用発明の「通信眼鏡10に組み込まれている」「データソース」が含む通信コンポーネントは、本願発明の、「前記パラメータを表す、前記センサによって感知されたデータを環境解析モジュールに送信するように構成される」とされる、「通信コンポーネント」に相当する。

(4) 環境感知モジュール

引用発明の「環境センサ81」及び(通信コンポーネントを含む)「通信眼鏡10に組み込まれている」「データソース」とからなる構成は、「通信眼鏡10」が有する「環境」感知の機能を担う構成単位(モジュール)といえるから、本願発明の「環境感知モジュール」に相当し、両者は、「少なくとも」、「センサと」、「通信コンポーネントとを含」む点で共通する。

加えて、上記(2)で説示した「環境センサ81」の機能より、本願発明の「環境感知モジュール」と、引用発明の「環境センサ81」及び(通信コンポーネントを含む)「通信眼鏡10に組み込まれている」「データソース」とからなる構成は、「前記ヘッドマウントデバイスのユーザの環境の少なくとも1つのパラメータを感知するように構成された」点で共通する。

(5) ヘッドマウントデバイスの全体構成

以上(1)~(4)の対比結果によれば、本願発明の「ヘッドマウントデバイス」と、引用発明の「通信眼鏡10」は、「環境感知モジュールを含」む点で共通する。

以上総合すると、本願発明と引用発明は、

「 ヘッドマウントデバイスであって、前記ヘッドマウントデバイスのユーザの環境の少なくとも1つのパラメータを感知するように構成された環境感知モジュールを含み、前記環境感知モジュールは、少なくとも、
- 前記ヘッドマウントデバイスの前記ユーザの前記環境のパラメータを感知するように構成されるセンサと、
- 前記パラメータを表す、前記センサによって感知されたデータを環境解析モジュールに送信するように構成される通信コンポーネントと
を含む、
ヘッドマウントデバイス。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。

(相違点)

「前記パラメータ」(「前記センサによって感知されたデータ」)が、本願発明においては、「前記ユーザの直接的な環境内の空気、及び/又は前記ユーザの前記直接的な環境内の電磁波、及び/又は前記ユーザの前記直接的な環境内の音波に関係し」ているのに対して、引用発明においては、「環境センサ81によって提供される」「着用者の周囲の環境に関する情報」(以下「周囲環境情報」という。)は、「危険な可能性がある温度、有毒ガス、空気中の化学的または生物学的薬剤、電離放射線、傷害を被る可能性があるエネルギー場、傷害を被る可能性がある大気圧、超音波に関係」するものとされている点。

2 相違点についての判断

(1) 新規性(特許法第29条1項3号)について

上記相違点について検討する。

ア 引用発明の「通信眼鏡10」は、「着用者に関して、危険対象物または危険ゾーンとは区別される安全ゾーンを識別し」、「その安全ゾーンを、着用者」「に対して知らせるように構成され」るものであるところ、引用発明において周囲情報を提供する「環境センサ81」は、「人の頭部に装着され」る「通信眼鏡10」の「フレーム20に結合」され、「危険な可能性がある温度、有毒ガス、空気中の化学的または生物学的薬剤、電離放射線、傷害を被る可能性があるエネルギー場、傷害を被る可能性がある大気圧、超音波に関係」する「情報」を「提供」するものである。

イ ここで、本願発明の「直接的な環境」について、本願明細書の【0034】には、「ユーザから数メートル以内の環境として理解すべきである。」、「一般に、直接的な環境は、ユーザが呼吸できる空気、及び/又はユーザが聞くであろう音、及び/又はユーザが受けるであろう電磁波を含む。」と記載されている。そして、上記アで述べた引用発明の「通信眼鏡10」及び「環境センサ81」の機能や「環境センサ81」の配置(着用者の頭部の近傍である)からみて、引用発明の「環境センサ81」により感知されるデータ(パラメータ)は、着用者から数メートル以内の環境に関するデータであることは明らかである。

そうすると、引用発明の周囲環境情報は、本願発明の「ユーザの直接的な環境内の空気」「及び」「前記ユーザの前記直接的な環境内の電磁波」「に関係」するもの、すなわち、相違点に係る本願発明のパラメータの要件を満たすといえる。

したがって、上記相違点は、実質的な相違点ではない。

(2) 進歩性(特許法第29条第2項)について

仮に、上記相違点が実質的な相違点であったとして検討すると次のとおりである。

上記(1)アで述べた引用発明の「通信眼鏡10」及び「環境センサ81」の機能や「環境センサ81」の配置に照らせば、引用発明の「環境センサ81」が感知するデータ(パラメータ)を、相違点に係る本願発明に係るものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3) 令和5年12月12日提出の意見書における請求人の主張について

ア 請求人は、「1.手続補正について」(同意見書1頁)において、「請求項1に記載の「前記ヘッドマウントデバイスは、空気組成、音、及び/又は電磁波を含む環境基準に基づいて案内又はナビゲーション情報を提供する」を請求項1から削除し、対応する特徴を請求項13に追加致しました。」と説明し、

「理由2(進歩性欠如)」「(1)新規性について」(同意見書2~6頁)において、引用例1には、ユーザ(着用者)の案内について開示されていない、「案内又はナビゲーション情報を提供すること」が「空気組成、音、及び/又は電磁波を含む環境基準に基づいて」行われることは開示されていない、従って、本願の補正後の請求項1の主題は引用例1と比較して新規性を有する、

同「(2)進歩性について」(同意見書6~9頁)において、引用例1は安全ゾーンに到達するための方法を開示していません、従って、本願の請求項1は引用文献と比較して進歩性を有する、と主張している。

イ しかしながら、上記主張は、上記アに示したように、令和5年12月12日提出の手続補正書による手続補正によって削除された構成を前提としたものであって、請求項1の記載に基づかない主張であるから採用できない。

3 小括

以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1に記載された発明である。

あるいは、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび

本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。

あるいは、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-012104

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決26件(エシロール・アンテルナシオナル)
  • 2024-011877拒絶査定不服審判 / 2026-06-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)装用者に適合する眼用累進多焦点レンズ
    同じ当事者: エシロール・アンテルナシオナル
  • 2025-006020拒絶査定不服審判 / 2026-06-15 / 原査定取消(特許/登録すべき)自然な視覚姿勢にある人物の頭部の方向づけられた3D表現を決定するための方法
    同じ当事者: エシロール・アンテルナシオナル
  • 2024-011352拒絶査定不服審判 / 2026-01-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)フロントシェルを有する電気的に制御された光学装置
    同じ当事者: エシロール・アンテルナシオナル
  • 2024-013646拒絶査定不服審判 / 2026-01-05 / 原査定取消(特許/登録すべき)視力関連パラメータの経時的な進展を予測するためのモデルを構築するための方法及び装…
    同じ当事者: エシロール・アンテルナシオナル
  • 2024-012517拒絶査定不服審判 / 2025-12-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)レンズ要素
    同じ当事者: エシロール・アンテルナシオナル
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)183件(113・G02C、121・G02C)
  • 2025-008533拒絶査定不服審判 / 2026-06-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)コンタクトレンズ回転度を増大させる方法
    共通の審決分類: 113・G02C、121・G02C
  • 2025-007831拒絶査定不服審判 / 2026-06-15 / 原査定取消(特許/登録すべき)ユーザの頭部上にフィット可能であると共に画像を生成するディスプレイ装置用の眼鏡レ…
    共通の審決分類: 113・G02C、121・G02C
  • 2024-019875拒絶査定不服審判 / 2026-04-13 / 原査定取消(特許/登録すべき)より広範なNIRカット及びより良好な美的価値のためのNIR染料の混合物
    共通の審決分類: 113・G02C、121・G02C
  • 2024-013693拒絶査定不服審判 / 2026-01-13 / 原査定取消(特許/登録すべき)領域的に変化する屈折率を有する累進眼鏡レンズ及びその設計方法
    共通の審決分類: 113・G02C、121・G02C
  • 2024-005221拒絶査定不服審判 / 2025-12-15 / 原査定取消(特許/登録すべき)矯正レンズ
    共通の審決分類: 113・G02C、121・G02C

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存