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特許拒絶査定不服審判

2022-010327

鼻インプラントおよび使用方法

審判番号
2022-010327
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-535840外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年07月04日
審決日
2023年05月30日
公報発行日
2023年11月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A61F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-535840「鼻インプラントおよび使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月 5日国際公開、WO2018/125868、令和 2年 2月13日国内公表、特表2020-504656〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

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この出願は、2017年(平成29年)12月26日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2016年12月30日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 2年12月18日提出 :手続補正書
令和 3年11月 1日付け :拒絶理由通知書
令和 4年 1月28日提出 :意見書、誤訳訂正書
令和 4年 2月25日付け :拒絶査定
令和 4年 7月 4日提出 :審判請求書、手続補正書
令和 4年12月22日提出 :上申書

第2 令和4年7月4日に提出された手続補正書による補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和4年7月4日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について

(1)本件補正後の本願発明

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「鼻インプラントであって、
近位端部および遠位端部を有する中央本体であって、前記インプラントの中央長手方向軸に沿った中実の構造を含む中央本体と、
前記遠位端部に配設された第1のアームであって、前記中央本体の前記遠位端部に固定された近位端部、および前記本体に固定されていない遠位端部を有し、前記第1のアームの前記遠位端部が、送達構成から展開構成に向かって前記中央本体の中央長手方向軸から離れていくように適合された、第1のアームと、
前記中央本体の前記遠位端部に固定された近位端部、および前記本体に固定されていない遠位端部を有する第2のアームであって、前記第2のアームの前記遠位端部が、送達構成から展開構成に向かって前記中央本体の中央長手方向軸から離れていくように適合された、第2のアームと、
前記鼻インプラントが展開されたときに組織に係合するように構成された、前記インプラン上の複数の返しと
を備え、
前記複数の返しが、前記中央本体の前記近位端部に向かって前記インプラントから突出しており、前記近位端部に向かう前記インプラントの近位方向への移動に抵抗し、且つ前記遠位端部に向かう前記インプラントの遠位方向への動きを可能とし、
前記中央本体の前記中実構造における複数の開口部が、前記中央本体の剛性を修正するように適合されている、鼻インプラント。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1

「鼻インプラントであって、
近位端部および遠位端部を有する中央本体と、
前記遠位端部に配設された第1のアームであって、前記中央本体の前記遠位端部に固定された近位端部、および前記本体に固定されていない遠位端部を有し、前記第1のアームの前記遠位端部が、送達構成から展開構成に向かって前記中央本体の中央長手方向軸から離れていくように適合された、第1のアームと、
前記中央本体の前記遠位端部に固定された近位端部、および前記本体に固定されていない遠位端部を有する第2のアームであって、前記第2のアームの前記遠位端部が、送達構成から展開構成に向かって前記中央本体の中央長手方向軸から離れていくように適合された、第2のアームと、
前記鼻インプラントが展開されたときに組織に係合するように構成された、前記インプラント上の複数の返しと
を備え、
前記複数の返しが、前記中央本体の前記近位端部に向かって前記インプラントから突出しており、前記近位端部に向かう前記インプラントの近位方向への移動に抵抗し、且つ前記遠位端部に向かう前記インプラントの遠位方向への動きを可能とする、鼻インプラント。」

2 補正の適否

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「中央本体」について、「前記インプラントの中央長手方向軸に沿った中実の構造を含む中央本体」、及び、「前記中央本体の前記中実構造における複数の開口部が、前記中央本体の剛性を修正するように適合されている」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項

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ア 引用文献1

(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2016/0058556号明細書(2016年(平成28年)3月3日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(日本語訳は当審で作成し、下線は当審で付した。)

「[0053]Described herein are implants, devices, systems and methods using implants, devices and systems for altering, enhancing, repairing, and supporting a body tissue. Such systems and methods may be used to support or change any tissue in the body, but may be especially beneficial for use in nasal tissue in a patient's nose, such as to aid breathing or change the cosmetic appearance of the nose.」

(日本語訳)

「[0053]本明細書に記載されているのは、体組織の修正、強化、修復、及び支持の為のインプラント、装置、及びシステム、並びに、インプラント、装置、及びシステムの使用方法である。そのようなシステム及び方法は、体内の任意の組織を支持又は修正することに使用されてよいが、患者の鼻の中の鼻組織内での使用に特に有利である場合があり、例えば、鼻呼吸や鼻の美容的外観の修正を支援する為の鼻組織内での使用に特に有利である場合がある。」

「[0065]FIG. 3A shows an implant for acting on a body tissue with a generally longitudinal body having first end 70, second end 72, and a central portion disposed between the first end and the second end. The implant defines a central longitudinal axis 71. In some examples, the first end of the implant is in a proximal location of an insertion site in a tissue. Second (or distal) end 70 of implant 32 has first arm 76a and second arm 76b, each arm having a proximal end fixed to the body and a distal end not fixed to the body.」

(日本語訳)

「[0065]図3Aは、体組織に作用するインプラントを示しており、その略長手方向のボディが、第1の端部70と、第2の端部72と、第1の端部と第2の端部との間に配置された中央部と、を有する。実施例によっては、インプラントの第1の端部は、組織内の挿入部位の近位側に位置する。インプラント32の第2の端部(遠位端)70は、第1のアーム76a及び第2のアーム76bを有し、各アームは、近位端部がボディに固定されていて、遠位端部がボディに固定されていない。」(なお、当審では、「第2の端部(遠位端)70」は「第2の端部(遠位端)72」の誤記であると認める。また、「第2の端部72」、「第2の端部(遠位端)72」は、図3Aには図示されていないと認める。)

「[0069]In some examples, the implant has first and second arms, and the distal ends of the arms are adapted to move away from a central longitudinal axis of the body. The first and second arms may move from a delivery configuration toward a deployed configuration, or from a contracted to an expanded configuration. In some examples, the first and second arms are biased towards their deployed configuration. In some examples, the biased arms may move from a delivery configuration toward a deployed configuration when a force from a delivery device is removed, such as by removing the implant from the device.
[0070]Arms on an implant, such as first and second arms 76a and 76b, may have different shapes or different configurations, or they may have the same shape or same configuration.・・・An arm or protrusion may be or may have a barb, a bump, a cilia or cilia-like, a generally elongated rod, a hair, a hook, a loop, a prong, a rod, a spike, a thread, a tine, etc.」

(日本語訳)

「[0069]実施例によっては、インプラントは第1及び第2のアームを有しており、これらのアームの遠位端部は、ボディの中心長手軸から離れるように適合されている。第1及び第2のアームは、送達時構成から配備時構成に向かって動いてよく、即ち、縮小構成から展開構成に動いてよい。実施例によっては、第1及び第2のアームは、それぞれの配備時構成に向かって付勢されている。実施例によっては、付勢されているアームは、(例えば、インプラントを送達装置から引き抜くことによって)送達装置からの力がかからなくなったときに、送達時構成から配備時構成に向かって動くことが可能である。
[0070]インプラントのアーム、例えば、第1及び第2のアーム76a及び76bは、形状又は構成が異なっていてよく、或いは、形状又は構成が同じであってよい。・・・アーム又は突出部は、返し、出っ張り、繊毛又は繊毛状のもの、一般的な細長い小枝、毛、フック、ループ、爪、小枝、スパイク、ねじ、歯などであってよく、又はこれらを有してよい。」

「[0076]Implant 32 also has a central bridging region. The central bridging region may be especially useful for bridging an area in need of support, such as weak or collapsed area between structures on either (both) ends. Such an area may be weaker or may have more force generally placed on it such that it requires more support. A central bridging region may bridge a weak or collapsed nasal valve in a nose. Support for the bridging region may be provided from the regions of the implant near the bridging region. A central region may include one or more ribs (also called ridges). Implant 32 has a plurality of ribs 80a, 80b (or ridges) which may be a central bridging region. Body features such as a rib may help anchor an implant in place, such as by catching tissue against the rib, valley, or otherwise.・・・Ribs may aid in the flexibility of the implant; having more ribs or having larger valleys between the ribs may increase the implant flexibility.」

(日本語訳)

「[0076]インプラント32は又、中央ブリッジ領域を有する。中央ブリッジ領域は、支持が必要な場所、例えば、弱い場所やつぶれた場所に、両端部の構造物の間で橋を架けることに特に有用であろう。そのような場所は、特に支持が必要であるような、特に弱いか、特に大きな力が広くかかっている場所であると考えられる。中央ブリッジ領域は、鼻の中の、弱くなっているか、つぶれている鼻弁に橋を架けることが可能である。ブリッジ領域に対する支持は、インプラントの、ブリッジ領域の近くの領域から得られる。中央領域は、1つ以上のリブ(リッジとも呼ばれる)を含んでよい。インプラント32は、複数のリブ80a、80b(又はリッジ)を有しており、これらが中央ブリッジ領域であってよい。リブなどのボディ形体は、組織をリブ、谷、又は別のものでつかむことなどにより、インプラントを定位置に固定することに役立ちうる。・・・リブは、インプラントの可撓性に寄与しうる。即ち、リブを増やすか、リブ間の谷を大きくすることにより、インプラントの可撓性を高めることが可能である。」

「[0078]Different regions of an implant may have material properties, such as strength, flexibility, rigidity, flexural rigidity, etc. An implant may have a material property chosen to come close to a material property of a body structure. For example, a flexural rigidity of a nasal implant may be the same as or close to the flexural rigidity of nasal tissue such as cartilage. As described below, some nasal cartilage has a modulus of elasticity measured to be between 5 and 32 MPa. An implant, or a portion of an implant such as a central region, an end region, an arm region, a proximal feature, a distal feature, a protrusion, a bump, or other part of an implant as described herein may have a modulus of elasticity between 5 and 32 MPa or greater than 2, 4, 5, 10, 15, 20, 25, 30, 32, 35, 40, or 50 MPa or less than 2, 4, 5, 10, 15, 20, 25, 30, 32, 35, 40, or 50 MPa or any value in between, such as between 2 and 50 MPa, between 10 and 30 MPa, etc.」

(日本語訳)

「[0078]インプラントの異なる各領域が、強度、可撓性、剛性、曲げ剛性などの材料特性を有していてよい。インプラントの材料特性は、体構造の材料特性に近くなるように選択可能である。例えば、鼻インプラントの曲げ剛性は、軟骨などの鼻組織の曲げ剛性と同等か、これに近くなるようにできる。後述するように、一部の鼻軟骨は、弾性係数が5MPaから32MPaと測定される。インプラント、又はインプラントの一部分、例えば、中央領域、端部領域、アーム領域、近位形体、遠位形体、突起、隆起、又は他の、本明細書に記載のインプラントの部分は、弾性係数が5MPaから32MPaであってよく、或いは2、4、5、10、15、20、25、30、32、35、40、又は50MPaを上回ってよく、或いは2、4、5、10、15、20、25、30、32、35、40、又は50MPaを下回ってよく、或いはこれらの間の任意の値、例えば、2MPaから50MPa、10MPaから30MPaなどの間の任意の値であってよい。」

「[0094]FIG. 9A shows implant 100 in a deployment configuration. The same implant is shown in FIG. 9B in a delivery configuration. Implant 100 has first hook 102 and second hook 106. A hook may be useful for catching or holding body tissue and holding or anchoring the implant in place in a tissue. A hook may be curved or bent so as to form an angle, e.g., of up to 30゜, from 30゜ and up to 45゜, from 45゜ and up to 60゜, from 60゜ up to 90゜ or 90゜ with the implant at the base of the hook or with a centerline of the implant. An implant may be curved or bent relative to or towards the proximal end as shown in FIG. 9A, or may be curved or bent relative to or towards the distal end.・・・An implant with a hook (a hooked implant) may be placed in body tissue in a contracted form and, once inside the tissue, may expand and thereby catch or hook body tissue to hold the implant in place in the tissue.」

(日本語訳)

「[0094]図9Aは、配備時構成のインプラント100を示す。送達時構成の同じインプラントを図9Bに示す。インプラント100は、第1のフック102及び第2のフック106を有する。体組織をつかんだり保持したりすること、並びに、インプラントを組織内の定位置に保持したり固定したりすることには、フックが有用であろう。フックは、フックの基部においてインプラントと、或いはインプラントの中心線と角度を成す為に曲がるか折れてよく、その角度は、例えば、30°まで、30°から45°まで、45°から60°まで、60°から90°まで、又は90°であってよい。インプラントは、図9Aに示されるように、近位端に対して相対的に、又は近位端に向かって曲がるか折れてよく、或いは、遠位端に対して相対的に、又は遠位端に向かって曲がるか折れてよい。・・・フックを有するインプラント(フック付きインプラント)は、縮小された形態で体組織内に配置されてよく、組織に入った時点で、展開して体組織を捕らえるかひっかけることにより、インプラントを組織内の定位置で保持することが可能である。」

「[0100]In some embodiments the implant can include one or more bioabsorbable materials in combination with a non-absorbing material. For example, in some cases at least one of the distal end, proximal end, or central portion is composed of a core made of a non-absorbable or an absorbable material. The implant can then include an outer layer made of a different non-absorbable or absorbable material from the core. In some examples the core and outer layer are fixedly laminated to one another. In other examples the core and outer layer are slid-ably engaged with one another.」

(日本語訳)

「[0100]実施形態によっては、インプラントは、1つ以上の生体適合性材料と、非吸収材料との組み合わせを含んでよい。例えば、場合によっては、遠位端、近位端、又は中央部のうちの少なくとも1つが、非吸収性又は吸収性の材料で作られたコアで構成されてよい。そして、インプラントは、コアとは異なる非吸収性又は吸収性の材料で作られた外層を含んでよい。実施例によっては、コアと外層は、互いに対して固定されて積層されている。又、実施例によっては、コアと外層は、互いに対して摺動可能に係合している。」

「図3
[図:0001403239000001.jpg]
」
「図9
[図:0001403239000002.jpg]
」

(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

a 引用文献1に記載された技術は、体組織の修正、強化、修復、及び支持の為のインプラントであって、鼻呼吸や鼻の美容的外観の修正を支援する為の鼻組織内での使用に特に有利なものである([0053])。

b 体組織に作用するインプラントの略長手方向のボディが、第1の端部70と、第2の端部72と、第1の端部70と第2の端部72との間に配置された中央部とを有する([0065])。

c インプラント32の第2の端部(遠位端)72は、第1のアーム76a及び第2のアーム76bを有し、各アームは、近位端部がボディに固定されていて、遠位端部がボディに固定されておらず([0065])、アームの遠位端部は、ボディの中心長手軸から離れるように適合され、第1及び第2のアームは、送達時構成から配備時構成に向かって動いてよく、即ち、縮小構成から展開構成に動いてよい([0069])。

d アームは、返しを有してよい([0070])。

e インプラント32は、複数のリブ80a、80bを有しており、これらが中央ブリッジ領域であってよく、組織をリブでつかむことなどにより、インプラントを定位置に固定することに役立ちうる([0076])。

f インプラント100は、第1のフック102及び第2のフック106を有し、体組織をつかんだり保持したりすること、並びに、インプラントを組織内の定位置に保持したり固定したりする。フックは、フックの基部においてインプラントの中心線と角度を成す為に曲がるか折れてよく、その角度は、例えば、30°まで、30°から45°まで、45°から60°まで、60°から90°まで、又は90°であってよい。フックを有するインプラント(フック付きインプラント)は、縮小された形態で体組織内に配置されてよく、組織に入った時点で、展開し、体組織をとらえるかひっかける([0094])。

g リブは、インプラントの可撓性に寄与しうる。即ち、リブを増やすか、リブ間の谷を大きくすることにより、インプラントの可撓性を高めることが可能である([0076])。インプラントの異なる各領域が、強度、可撓性、剛性、曲げ剛性などの材料特性を有していてよく、中央領域の弾性係数を任意の値にしてよい([0078])。

(ウ)上記a~d、gから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「鼻組織内での使用に有利なインプラントであって、
インプラントの略長手方向のボディが、第1の端部70と、第2の端部72と、第1の端部と第2の端部との間に配置された中央部とを有し、
インプラント32の第2の端部72は、第1のアーム76a及び第2のアーム76bを有し、各アームは、近位端部がボディに固定されていて、遠位端部がボディに固定されておらず、アームの遠位端部は、ボディの中心長手軸から離れるように適合され、第1及び第2のアームは、送達時構成から配備時構成に向かって動いてよく、即ち、縮小構成から展開構成に動いてよく、
アームは、返しを有しており、
リブを増やすか、リブ間の谷を大きくすることにより、中央領域の弾性係数を任意の値にする、インプラント」

イ 引用文献2

(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2011/0251634号明細書(2011年(平成23年)10月13日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(日本語訳は当審で作成した。)

「[0019]Referring initially to the exemplary embodiment shown in FIG. 1, a nasal valve suspension device(NVSD) 100 is configured in a T-shape comprising a head portion 110 and a body portion 120 having a proximal end 122 and a distal end 124. A plurality of barbs 130 are disposed along body portion 120 so that the pointed ends of each barb are directed towards proximal end 122 (and head portion 110) and away from distal end 124. In certain embodiments, body portion 120 may be 0.5 to 3.0 cm in length, and head portion 110 may be approximately 0.5 centimeters in length.」

(日本語訳)

「[0019]最初に図1に示す例示的な実施形態を参照すると、鼻弁懸架装置(NVSD)100は、ヘッド部分110と、近位端122及び遠位端124を有する本体部分120とを含むT字形状に構成される。複数の返し130は、各返しの尖った端部が近位端122(およびヘッド部分110)の方に向けられ、遠位端124から離れるように、本体部分120に沿って配置される。特定の実施形態において、本体部分120は、0.5~3.0cmの長さであってよく、ヘッド部分110は、約0.5cmの長さであってよい。」

「図1
[図:0001403239000003.jpg]
」

(イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「ヘッド部分110と本体部分120とからなる鼻弁懸架装置(NVSD)100において、複数の返し130を、各返しの尖った端部が近位端122(およびヘッド部分110)の方に向けられ、遠位端124から離れるように、本体部分120に沿って配置されること」

(3)対比

ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「鼻組織内での使用に有利なインプラント」は、本件補正発明の「鼻インプラント」に相当する。

また、引用発明の「中央部」は、第1の端部70と第2の端部72との間に配置されるものであるから、引用発明の「中央部」と、本件補正発明の「近位端部および遠位端部を有する中央本体であって、前記インプラントの中央長手方向軸に沿った中実の構造を含む中央本体」とは、「近位端部および遠位端部を有する中央本体であって、前記インプラントの中央長手方向軸に沿った中央本体」である限度で一致する。

また、引用発明の「第1のアーム76a」、「第2のアーム76b」は、それぞれ本件補正発明の「第1のアーム」、「第2のアーム」に相当する。

また、引用発明の「返し」は、本件補正発明の「返し」に相当する。

さらに、引用発明の「リブを増やすか、リブ間の谷を大きくすることにより、中央領域の弾性係数を任意の値にする」は、中央領域のリブ間の谷を大きくすることによりインプラントの可撓性を高めることであるから、本件補正発明の「中央本体の剛性を修正する」に相当する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】

「鼻インプラントであって、
近位端部および遠位端部を有する中央本体であって、前記インプラントの中央長手方向軸に沿った中央本体と、
前記遠位端部に配設された第1のアームであって、前記中央本体の前記遠位端部に固定された近位端部、および前記本体に固定されていない遠位端部を有し、前記第1のアームの前記遠位端部が、送達構成から展開構成に向かって前記中央本体の中央長手方向軸から離れていくように適合された、第1のアームと、
前記中央本体の前記遠位端部に固定された近位端部、および前記本体に固定されていない遠位端部を有する第2のアームであって、前記第2のアームの前記遠位端部が、送達構成から展開構成に向かって前記中央本体の中央長手方向軸から離れていくように適合された、第2のアームと、
前記インプラント上の返しと
を備え、
前記中央本体が、前記中央本体の剛性を修正するように適合されている、鼻インプラント。」

【相違点1】

本件補正発明では、中央本体が「中実の構造を含む」のに対し、引用発明では、中央部が中実構造であるか不明である点。

【相違点2】

本件補正発明では、返しが、「前記鼻インプラントが展開されたときに組織に係合するように構成された」「複数」のものであり、また、「前記中央本体の前記近位端部に向かって前記インプラントから突出しており、前記近位端部に向かう前記インプラントの近位方向への移動に抵抗し、且つ前記遠位端部に向かう前記インプラントの遠位方向への動きを可能」であるのに対し、引用発明では、返しの具体的構成が不明である点。

【相違点3】

中央本体の剛性を修正するのが、本件補正発明では、「前記中実構造における複数の開口部」であるのに対し、引用発明では、リブ間の谷を大きくしている点。

(4)判断

以下、相違点について判断する。

ア 相違点1、3について

上記相違点1、3はいずれも中央本体に関するものであるため併せて判断する。

引用文献1に、インプラントをコアと外層から構成することが記載されており([0100])、この記載に照らせば、引用発明の中央部は中実の構成であることは明らかである。さらに、そもそも、インプラントを製造する際に中実とすることは通常に採用される構成である。

また、引用文献1には、中央領域をリブ間の谷を大きくすることにより可撓性を高めることが記載されており([0076]、[0078])、これは、中央領域の体積を減らすことにより、剛性を修正することを意味する。そして、体積を減らすための手段として開口部を設けることは、種々想到し得る体積を減らすための周知の手段の1つにすぎない。

そうすると、引用発明の中央部を中実とするとともに、開口部を設けることにより剛性を修正することは、上記記載や周知の手段また技術常識に照らして当業者であれば容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について

引用文献1には、インプラント100に第1のフック102及び第2のフック106を設けること、フックの基部においてインプラントの中心線と角度を成す為に曲げること、フック付きインプラントを縮小された形態で体組織内に配置し、組織に入った時点で、展開して体組織を捕らえるかひっかけることが記載されている([0094])。また、引用文献2に、ヘッド部分110と本体部分120とからなる鼻弁懸架装置(NVSD)100において、複数の返し130を、各返しの尖った端部が近位端122(およびヘッド部分110)の方に向けられ、遠位端124から離れるように、本体部分120に沿って配置されることが記載されている。

このように、鼻インプラントの返しを、「前記鼻インプラントが展開されたときに組織に係合するように構成」することは、引用文献1に記載されており、また、返しを、「複数」設けること、「前記中央本体の前記近位端部に向かって前記インプラントから突出」させることは、引用文献1、2に記載されている。そして、これらはいずれも鼻インプラントの返しに関するものであるから、引用発明に適用し得ることは明らかである。そうしてみると、引用発明の返しの具体的な構成として、「前記鼻インプラントが展開されたときに組織に係合するように構成された」「複数」のものとすること、及び、「前記中央本体の前記近位端部に向かって前記インプラントから突出」させることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

ウ 効果について

本件補正発明の効果について検討する。まず、インプラントを中実とすることより、何らかの格別の効果を奏するとは認められない。また、返しの形状を本件補正発明のようにすることにより、通常の返しが持つ効果以上の効果を奏するとは認められない。また、中央本体に開口を設けることも同様に、剛性を修正するという通常に奏する効果以上のものは認められない。さらに、これらの効果を総合してみても本件補正発明の奏する効果は格別なものであるとはいえない。

エ 小括

したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1、2に記載された周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび(補正の却下の決定のむすび)

よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和4年7月4日に提出された手続補正書による補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年1月28日に提出した誤訳訂正書により誤訳訂正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.米国特許出願公開第2016/58556号明細書

2.米国特許出願公開第2011/251634号明細書

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、中央本体に関する、「前記インプラントの中央長手方向に沿った中実の構造を含む」という限定事項、また、「前記中実構造における複数の開口部が、前記中央本体の剛性を修正するように適合されている」という限定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献1、2に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に想到することができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献1、2に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-010327

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