審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2022-008654

絶縁電線、ケーブル

審判番号
2022-008654
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-144443外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年06月07日
審決日
2023年03月27日
公報発行日
2023年04月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
審判長/審判官
分類
P18 .121-WYF(H01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-144443「絶縁電線、ケーブル」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月 6日出願公開、特開2020- 21620、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、平成30年7月31日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 3年12月 7日付け:拒絶理由通知
令和 4年 2月10日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 2月28日付け:拒絶査定
令和 4年 6月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要

原査定(令和4年2月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 本願の請求項1~3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

1.国際公開第2011/162301号

2.特開平1-289021号公報

第3 令和4年6月7日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)について

本件補正は、特許請求の範囲について、補正前の請求項1、2、及び請求項1を引用する請求項3を削除するとともに補正前の請求項2を引用する請求項3を新たな請求項1とし、更に、明細書の段落0006、段落0009~段落0012の記載を特許請求の範囲の記載に合わせるものであるから、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものである。また、上記のとおり請求項を削除する本件補正が、特許法第17条の2第3項及び第4項の要件に適合するものであることは明らかである。

したがって、本件補正は適法になされたものである。

第4 本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和4年6月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
中心導体と、該中心導体の周囲を被覆した樹脂材料による絶縁体とからなる絶縁電線であって、
前記中心導体が、銅の外層と鋼の芯材とからなるクラッド線材を複数本撚り合わせた撚り線で形成されており、
前記クラッド線材の電気導電率が20(IACS%)~80(IACS%)の範囲であり、かつ、前記クラッド線材の径が、0.02(mm)~0.06(mm)の範囲であり、
前記中心導体の導体断面積が0.004(mm2)~0.6(mm2)の範囲であり、
前記クラッド線材の撚りピッチが、前記中心導体の径の30倍以下であり、
前記芯材の径が、前記クラッド線材の径の60(%)~90(%)の範囲であり、
前記外層がメッキによって形成される、絶縁電線。」

第5 引用文献、引用発明

1 引用文献1、引用発明

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には「自動車用電線」について、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審にて付与した。)。

「[0029] 金属膜3の厚さ(めっき厚)d1は、要求される導電率、耐腐食性及び耐曲げ強さを達成するために、12.4~29.6μmとなっている。金属膜3の厚さd1が12.4μm未満では導電率が低下し、曲げに対して弱くなり、耐腐食性に劣る。一方、金属膜3の厚さd1が29.6μmを超えると、自動車用電線1の強度が低下したり、めっき厚が増加してもCu面積率の増加が小さくなったり、表面性が悪くなり自動車用電線1を曲げたときにクラックが入りやすくなったり、引張強度が低下したりする。」

「[0032] 絶縁体5は、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、FEP、ETFEなど)又はこれらの発泡体等、絶縁性、難燃性、耐油性、耐水性等を有した樹脂から形成される。」

「[0033] 次に、自動車用電線1の製造方法について説明する。
まず芯材2を準備する。芯材2は、上記炭素鋼を用いて、最終線径まで伸線加工を行うことによって得ることができる。具体的には、硬鋼線材(SWRH72)に対しパテンティング処理を行う。パテンティング処理は、例えば1000℃程度のオーステナイト域から500℃~600℃まで急冷し、その温度に所定時間保持した後、室温まで冷却する処理である。このパテンティング処理により、細径化された芯材2を得る。
・・・(中略)・・・
[0037] 金属膜3は、金属膜3を構成する金属材料を含むピロリン酸めっき浴を用いて形成する。以下、その形成工程を順に説明する。
続きを表示(全16行)
(1)脱脂
まず、芯材2を例えば10質量%のNaOHの溶液に浸漬することで、電解脱脂を行う。なお、芯材2の表面2aに存在する、主に油脂性の汚れを洗浄することができれば、電解脱脂に限ることはなく、超音波脱脂等、公知の脱脂方法を用いて脱脂することができる。
(2)酸活性
次いで、上記脱脂を行った芯材2を、例えば10質量%のHClに例えば15秒間浸漬させることで、芯材2の表面2aの酸活性化を行う。
[0038] (3)ストライクめっき
次に、ストライクめっきを行う。ストライクめっきは、液中にて発生する水素ガスによって表面のクリーニング及び活性化を行う手法である。本実施形態においては、例えばピロリン酸液をめっき液として採用する。ストライクめっきにおいて、電流密度及び処理時間は、ストライクめっきの厚さによって異なるが、例えば電流密度が1A/dm2である場合、めっき処理時間は例えば60秒とすればよい。
(4)本めっき
次に、充分な電流密度を与える本めっき処理をストライクめっき層の上面に対して行う。本めっき処理は、ピロリン酸液をめっき液として採用する。本めっき処理において、形成すべき金属膜3の厚さを12.4μm~29.6μmとするためには、電流密度及び本めっき処理時間は例えば以下のようにすればよい。すなわち、例えば電流密度が3A/dm2である場合、本めっき処理時間は5~60分とすればよい。本めっき処理によって形成される金属膜3の厚さは、前記本めっき処理時間に依存するため、必要に応じて適宜本めっき処理時間を変更すればよい。
[0039] なお、本実施形態においては、銅からなる金属膜3を形成する場合には、ピロリン酸液として例えば銅を含むピロドンコンク(株式会社ムラタ製)を使用することができる。ピロリン酸液の成分には、環境や人体に対して有害な物質は含まれていないため、めっき処理において、環境や人体への影響を少なくすることができる。
[0040] 本めっき処理後、金属膜3が形成された芯材2を乾燥させることで、単線4からなる導体10を得ることができる。
[0041] 次に、上記のようにして得られる単線4を絶縁体5で被覆する。絶縁体5は、例えば単線4を被覆するように、押出成型で均一の厚さに形成すればよい。
以上のようにして自動車用電線1の製造が完了する。」
「[0053] なお、本発明は上記第1及び第2実施形態に限定されるものではない。例えば上記第1及び第2実施形態においては、自動車用電線1,1Aが1本の単線4,4Aを有する場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば図7に示すように、導体として、複数本の単線4を撚り合わせてなる撚り線7を用いてもよい。図7は、単線4を複数本とし、これらを撚り合せて撚り線7とした自動車用電線1Bの実施形態を示す概略断面図である。図7において、導体10Bは撚り線7で構成されている。
[0054] 撚り線7を構成する単線4の線径は、1本の単線4,4Aのみを用いる自動車用電線1,1Aの単線4,4Aよりも小さくし、このような単線4,4Aを複数本撚り合わせ、その合計断面積を自動車用電線1,1Aにおける1本の単線4,4Aと同等以上の大きさとすればよい。」
「[請求項1] 芯材及び該芯材の表面を被覆する金属膜から構成される少なくとも1本の単線を含む導体と、
前記導体を被覆する絶縁体とを備え、
前記芯材は炭素鋼からなり、
前記金属膜は12.4~29.6μmの厚さを有する自動車用電線。
[請求項2] 前記導体が、前記単線を複数本撚り合わせた撚り線である請求項1に記載の自動車用電線。」
「
[図:0001396118000001.jpg]
」
「
[図:0001396118000002.jpg]
」

(2)上記(1)より、引用文献1には以下の技術事項が記載されている。

ア 段落0032には「絶縁体5は」「樹脂から形成される。」と記載されている。

よって、引用文献1には、絶縁体5は樹脂から形成されることが記載されている。

イ 段落0033には「硬鋼線材(SWRH72)に対しパテンティング処理を行う。」「このパテンティング処理により、細径化された芯材2を得る。」と記載されている。

よって、引用文献1には、硬鋼線材(SWRH72)に対しパテンティング処理を行うことにより、細径化された芯材2を得ることが記載されている。

ウ 段落0037には「芯材2を」「10質量%のNaOHの溶液に浸漬することで、電解脱脂を行う。」及び「次いで、上記脱脂を行った芯材2を」「10質量%のHClに」「15秒間浸漬させることで、芯材2の表面2aの酸活性化を行う。」と記載され、段落0038には「次に、ストライクめっきを行う。ストライクめっきは」「表面のクリーニング及び活性化を行う手法である。」「次に、充分な電流密度を与える本めっき処理をストライクめっき層の上面に対して行う。本めっき処理は、ピロリン酸液をめっき液として採用する。」と記載され、段落0039には「銅からなる金属膜3を形成する場合には、ピロリン酸液として例えば銅を含むピロドンコンク(株式会社ムラタ製)を使用することができる。」と記載されている。

よって、引用文献1には、芯材2を10質量%のNaOHの溶液に浸漬することで、電解脱脂を行い、次いで、上記脱脂を行った芯材2を10質量%のHClに15秒間浸漬させることで芯材2の表面2aの酸活性化を行い、次に、ストライクめっきを行って表面のクリーニング及び活性化を行い、次に、充分な電流密度を与える本めっき処理をストライクめっき層の上面に対して行い、本めっき処理はピロリン酸液をめっき液として採用し、ピロリン酸液として銅を含むピロドンコンク(株式会社ムラタ製)を使用して銅からなる金属膜3を形成することが記載されている。

エ 段落0040には「本めっき処理後、金属膜3が形成された芯材2を乾燥させることで、単線4からなる導体10を得ることができる。」と記載されている。

よって、引用文献1には、本めっき処理後、金属膜3が形成された芯材2を乾燥させることで、単線4からなる導体10を得ることが記載されている。

オ 段落0041には「次に、」「単線4を絶縁体5で被覆する。」及び「以上のようにして自動車用電線1の製造が完了する。」と記載されている。

よって、上記エを参酌すると、引用文献1には、単線4からなる導体10を絶縁体5で被覆した自動車用電線が記載されている。

カ 段落0053には「図7に示すように、導体として、複数本の単線4を撚り合わせてなる撚り線7を用いてもよい。図7は、単線4を複数本とし、これらを撚り合せて撚り線7とした自動車用電線1Bの実施形態を示す概略断面図である。」と記載されている。

よって、引用文献1には、導体として、複数本の単線4を撚り合わせてなる撚り線7を用いることが記載されている。

キ 上記エ~カより、引用文献1には、本めっき処理後、金属膜3が形成された芯材2を乾燥させることで単線4とし、複数本の単線4を撚り合わせてなる撚り線7を導体とし、導体を絶縁体5で被覆した自動車用電線が記載されているといえる。

ク 段落0054には「撚り線7を構成する単線4の線径は、1本の単線4」「のみを用いる自動車用電線1」「の単線4」「よりも小さくし、このような単線4」「を複数本撚り合わせ、その合計断面積を自動車用電線1」「おける1本の単線4と同等以上の大きさとすればよい。」と記載されている。

よって、引用文献1には、撚り線7を構成する単線4の線径は、1本の単線4のみを用いる自動車用電線1の単線4よりも小さく、その合計断面積は1本の単線4のみを用いる自動車用電線1における1本の単線4と同等以上の大きさとすることが記載されている。

ケ 段落0029には「金属膜3の厚さ(めっき厚)d1は」「12.4~29.6μmとなっている。」と記載されている。

よって、引用文献1には、金属膜3の厚さは12.4~29.6μmとなっていることが記載されている。

また、段落0029には「金属膜3の厚さd1が12.4μm未満では導電率が低下し、曲げに対して弱くなり、耐腐食性に劣る。一方、金属膜3の厚さd1が29.6μmを超えると、自動車用電線1の強度が低下したり、めっき厚が増加してもCu面積率の増加が小さくなったり、表面性が悪くなり自動車用電線1を曲げたときにクラックが入りやすくなったり、引張強度が低下したりする。」と記載され、特許請求の範囲には、請求項1に「芯材及び該芯材の表面を被覆する金属膜から構成される少なくとも1本の単線を含む導体と」「を備え、」「前記金属膜は12.4~29.6μmの厚さを有する自動車用電線。」と記載されると共に、請求項2に「前記導体が、前記単線を複数本撚り合わせた撚り線である請求項1に記載の自動車用電線。」と記載されている。

よって、上記金属膜3の厚さについての数値限定は、導体として、複数本の単線を撚り合わせてなる撚り線を用いる場合にも適用されると認められる。

コ 上記ア~ケより、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「硬鋼線材(SWRH72)に対しパテンティング処理を行うことにより、細径化された芯材2を得て、
芯材2を10質量%のNaOHの溶液に浸漬することで、電解脱脂を行い、
次いで、脱脂を行った芯材2を10質量%のHClに15秒間浸漬させることで芯材2の表面2aの酸活性化を行い、
次に、ストライクめっきを行って表面のクリーニング及び活性化を行い、
続きを表示(全11行)
次に、充分な電流密度を与える本めっき処理をストライクめっき層の上面に対して行い、本めっき処理はピロリン酸液をめっき液として採用し、ピロリン酸液として銅を含むピロドンコンク(株式会社ムラタ製)を使用して銅からなる金属膜3を形成し、
金属膜3の厚さは12.4~29.6μmとなっており、
本めっき処理後、金属膜3が形成された芯材2を乾燥させることで単線4とし、
複数本の単線4を撚り合わせてなる撚り線7を導体とし、導体を絶縁体5で被覆した自動車用電線であって、
絶縁体5は樹脂から形成され、
撚り線7を構成する単線4の線径は、1本の単線のみを用いる自動車用電線の単線よりも小さく、その合計断面積は1本の単線のみを用いる自動車用電線における1本の単線と同等以上の大きさとした
自動車用電線。」

2 引用文献2

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には以下の事項が記載されている。

「[実施例]
以下、本発明の実施例について説明する。
先ず、導電率が40%IACSの銅被覆鋼線を伸線加工して線径が0.2mmの素線を得た。次いで、この素線を窒素ガス雰囲気中で種々の温度で夫々1時間加熱した後、中心に1本、その周囲に6本配置した総計7本の素線を撚合わせ加工して撚線を製造した。撚合わせのピッチは8mmであり、撚線速度は12m/分である。」(第3頁左上欄第14行~右上欄第2行)

第6 当審の判断

1 本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「導体」は本願発明の「中心導体」に相当する。また、引用発明において「絶縁体5は樹脂から形成され」るから、引用発明の「絶縁体5」は本願発明の「樹脂による絶縁体」に相当する。そして、引用発明の「導体を絶縁体5で被覆した自動車用電線」は、導体と、導体の周囲を被覆した絶縁体5とからなる点で、本願発明の「中心導体と、該中心導体の周囲を被覆した樹脂からなる絶縁体とからなる絶縁電線」に相当する。

(2)引用発明の「硬鋼線材(SWRH72)に対しパテンティング処理を行うことにより、細径化された芯材2」は、硬鋼線材から形成されるから、本願発明の「鋼の芯材」に相当する。

また、引用発明の「銅からなる金属膜3」は、「芯材2を10質量%のNaOHの溶液に浸漬することで、電解脱脂を行い、次いで、脱脂を行った芯材2を10質量%のHClに15秒間浸漬させることで芯材2の表面2aの酸活性化を行い、次に、ストライクめっきを行って表面のクリーニング及び活性化を行い、次に、充分な電流密度を与える本めっき処理をストライクめっき層の上面に対して行い、本めっき処理はピロリン酸液をめっき液として採用し、ピロリン酸液として銅を含むピロドンコンク(株式会社ムラタ製)を使用して」形成したものであるから、「芯材2」の表面にめっきにより形成されたものであるといえ、本願発明の「銅の外層」に相当する。

さらに、引用発明の「単線4」は、「金属膜3が形成された芯材2」であるから、本願発明の「銅の外層と鋼の芯材とからなるクラッド線材」に相当する。

(3)引用発明の「複数本の単線4を撚り合わせてなる撚り線7を導体と」することは、本願発明の「前記中心導体が」「クラッド線材を複数本撚り合わせた撚り線で形成され」ることに相当する。

(4)本願発明が「前記クラッド線材の電気導電率が20(IACS%)~80(IACS%)の範囲で」あるのに対し、引用発明はそのような限定がされていない点で、両者は相違する。

(5)本願発明が「前記クラッド線材の径が、0.02(mm)~0.06(mm)の範囲で」あるのに対し、引用発明はそのような限定がされていない点で、両者は相違する。

(6)本願発明が「前記中心導体の導体断面積が0.004(mm2)~0.6(mm2)の範囲で」あるのに対し、引用発明はそのような限定がされていない点で、両者は相違する。

(7)本願発明が「前記クラッド線材の撚りピッチが、前記中心導体の径の30倍以下で」あるのに対し、引用発明はそのような限定がされていない点で、両者は相違する。

(8)本願発明が「前記芯材の径が、前記クラッド線材の径の60(%)~90(%)の範囲で」あるのに対し、引用発明はそのような限定がされていない点で、両者は相違する。

(9)引用発明において「銅からなる金属膜3」が「ストライクめっきを行って表面のクリーニング及び活性化を行い、次に、充分な電流密度を与える本めっき処理をストライクめっき層の上面に対して行い、本めっき処理はピロリン酸液をめっき液として採用し、ピロリン酸液として銅を含むピロドンコンク(株式会社ムラタ製)を使用して」形成されたものであることは、本願発明の「前記外層がメッキによって形成される」ことに相当する。

(10)上記(1)~(9)のとおりであるから、本願発明と引用発明とは以下の点で一致し相違する。

(一致点)

「中心導体と、該中心導体の周囲を被覆した樹脂材料による絶縁体とからなる絶縁電線であって、
前記中心導体が、銅の外層と鋼の芯材とからなるクラッド線材を複数本撚り合わせた撚り線で形成されており、
前記外層がメッキによって形成される、絶縁電線。」

(相違点1)

本願発明が「前記クラッド線材の電気導電率が20(IACS%)~80(IACS%)の範囲で」あるのに対し、引用発明はそのような限定がされていない点。

(相違点2)

本願発明が「前記クラッド線材の径が、0.02(mm)~0.06(mm)の範囲で」あるのに対し、引用発明はそのような限定がされていない点。

(相違点3)

本願発明が「前記中心導体の導体断面積が0.004(mm2)~0.6(mm2)の範囲で」あるのに対し、引用発明はそのような限定がされていない点。

(相違点4)

本願発明が「前記クラッド線材の撚りピッチが、前記中心導体の径の30倍以下で」あるのに対し、引用発明はそのような限定がされていない点。

(相違点5)

本願発明が「前記芯材の径が、前記クラッド線材の径の60(%)~90(%)の範囲で」あるのに対し、引用発明はそのような限定がされていない点。

2 上記相違点について検討する。

事案に鑑み、相違点2及び5について先に検討する。

(1)引用発明は、「金属膜3の厚さ」が「12.4~29.6μm」であるから、次式(ア)を満たす。

12.4(μm)≦(金属層3の厚さ)≦29.6(μm)・・・(ア)

また、上記1(2)より「銅からなる金属膜3」は「芯材2」の表面にめっきにより形成されたものであり、「単線4」は「金属膜3が形成された芯材2」であるから、引用発明は次式(イ)を満たす。

(単線4の線径)=(芯材2の線径)+(金属膜3の厚さ)×2・・・(イ)

(2)引用発明が相違点5に係る本願発明の構成を備えるためには、上記1(2)の説示を踏まえると、次式(ウ)を満たす必要がある。

0.6≦(芯材2の線径)/(単線4の線径)≦0.9・・・(ウ)

ここで、式(イ)より

(芯材2の線径)=(単線4の線径)-(金属膜3の厚さ)×2・・・(イ)’

であるから、式(イ)’を式(ウ)に代入すると、

0.6≦{(単線4の線径)-(金属膜3の厚さ)×2}/(単線4の線径)≦0.9・・・(エ)

そして、式(ア)の条件の下で式(エ)の中辺が最大となるのは、(金属膜3の厚さ)が最小値、すなわち12.4μmとなる時である。したがって、式(エ)の左辺と中辺の不等式が成立するためには、少なくとも次式(オ)が成立する必要がある。

0.6≦{(単線4の線径)-12.4(μm)×2}/(単線4の線径)・・・(オ)

式(オ)より、

(単線4の線径)≧62(μm)・・・(オ)’

式(オ)’より、引用発明が相違点5に係る本願発明の構成を備えるためには、少なくとも単線4の線径が62μm以上である必要がある。

(3)一方、引用発明が相違点2に係る本願発明の構成を備えるためには、少なくとも単線4の線径は0.06(mm)(60(μm))以下である必要がある。

(4)上記(2)及び(3)より、引用発明が相違点2及び5に係る本願発明の構成を共に備えることはできない。

(5)また、引用発明の「金属膜3の厚さ」は、引用文献1の段落0029に「金属膜3の厚さd1が12.4μm未満では導電率が低下し、曲げに対して弱くなり、耐腐食性に劣る。」と記載されているように、導電率、曲げに対する強度及び耐腐食性の観点から下限が12.4μmに規定されている。したがって、引用発明において金属膜3の厚さを12.4μmより小さくして、芯材2の線径の単線4の線径に対する割合を大きくすることには阻害要因がある。

よって、引用文献2を参酌しても、引用発明を相違点2及び5に係る本願発明の構成を共に備えたものとすることは、当業者といえども容易になし得たことではない。

3 小括

したがって、相違点1、3及び4について判断するまでもなく、本願発明は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものではない。

第7 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明と引用文献2に記載された技術事項とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-008654

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決181件(住友電気工業株式会社)
  • 2025-015814拒絶査定不服審判 / 2026-08-12 / 原査定取消(特許/登録すべき)被覆導線および多芯ケーブル
    同じ当事者: 住友電気工業株式会社
  • 2025-009749拒絶査定不服審判 / 2026-05-29 / 原査定取消(特許/登録すべき)回転工具用の超硬合金素材および回転工具
    同じ当事者: 住友電気工業株式会社
  • 2025-004497拒絶査定不服審判 / 2026-05-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)光ファイバの製造方法
    同じ当事者: 住友電気工業株式会社
  • 2025-009750拒絶査定不服審判 / 2026-04-07 / 原査定取消(特許/登録すべき)切削工具用の超硬合金素材および切削工具
    同じ当事者: 住友電気工業株式会社
  • 2024-005034拒絶査定不服審判 / 2025-12-25 / 請求不成立光コネクタおよび光接続構造
    同じ当事者: 住友電気工業株式会社
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)477件(121・H01B)
  • 2025-013192拒絶査定不服審判 / 2026-06-19 / 原査定取消(特許/登録すべき)超電導線材および超電導コイル
    共通の審決分類: 121・H01B
  • 2025-004792拒絶査定不服審判 / 2026-06-15 / 請求不成立透明導電性フィルム
    共通の審決分類: 121・H01B
  • 2025-008594拒絶査定不服審判 / 2026-05-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)透明導電性フィルム
    共通の審決分類: 121・H01B
  • 2025-005652拒絶査定不服審判 / 2026-02-13 / 原査定取消(特許/登録すべき)通信用電線及びワイヤハーネス
    共通の審決分類: 121・H01B
  • 2025-003234拒絶査定不服審判 / 2025-12-10 / 原査定取消(特許/登録すべき)固体ハイブリッド電解質、その作製方法、およびその使用
    共通の審決分類: 121・H01B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存