2022-007686
直流電源装置、モータ駆動装置、空気調和装置、冷蔵庫およびヒートポンプ給湯装置
- 審判番号
- 2022-007686
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-506910外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年05月23日
- 審決日
- 2022年12月01日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H02M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
本願は、2019年3月19日を国際出願日とする出願であって、令和3年2月19日に手続補正がされ、令和4年1月11日付けで拒絶理由通知がされ、令和4年3月14日に意見書が提出されると同時に手続補正がされたが、令和4年3月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和4年5月23日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和4年6月27日に前置報告がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和4年3月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1、2、4-7
・引用文献等 1
・請求項 3
・引用文献等 1、2
引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2014-007827号公報
2.特開2018-064410号公報
なお、上記前置報告では、特開2017-11903号公報が新たな引用文献として提示されている。
第3 本願発明
本願請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、令和4年5月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項によりそれぞれ特定される発明であり、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】交流電源から出力される交流電圧を整流する整流回路と、複数のリアクタ、複数のスイッチング素子および複数の逆流防止素子を有し、前記整流回路で整流された電圧を昇圧する昇圧回路と、前記昇圧回路から出力される電圧である出力電圧を平滑化する平滑コンデンサと、続きを表示(全27行)前記平滑コンデンサの両端電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部により検出された電圧が前記出力電圧の目標値以上の場合に、前記複数のスイッチング素子のデューティ比を0より大きく閾値以下のあらかじめ定められた値に決定し、決定した前記デューティ比に基づいて前記複数のスイッチング素子を制御する制御部と、前記整流回路と前記昇圧回路との間を流れる電流を検出する一次電流検出回路と、を備え、前記制御部は、前記一次電流検出回路により検出された電流および前記電圧検出部により検出された電圧のうち少なくとも一方が異常範囲であるか否かによって異常を検出し、異常を検出した場合に前記複数のスイッチング素子の動作を停止させる直流電源装置。【請求項2】前記あらかじめ定められた値は、設定可能な最小値である請求項1に記載の直流電源装置。【請求項3】請求項1または2に記載の直流電源装置と、前記直流電源装置から出力される直流電力を交流電力に変換してモータへ出力するインバータと、を備えるモータ駆動装置。【請求項4】モータと、前記モータを駆動する請求項3に記載のモータ駆動装置と、を備える空気調和装置。【請求項5】モータと、前記モータを駆動する請求項3に記載のモータ駆動装置と、を備える冷蔵庫。【請求項6】モータと、前記モータを駆動する請求項3に記載のモータ駆動装置と、を備えるヒートポンプ給湯装置。」
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
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原査定の拒絶の理由に引用された特開2014-7827号公報(以下、これを「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同じ。)
A「【0011】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る電力変換装置の構成例を示す図である。図1において、電力変換装置は、三相交流電源1と、三相整流器2と、昇圧コンバーター3と、平滑コンデンサー7と、整流電圧検出部8と、母線電圧検出部9と、スイッチング制御部10と、を備える。
【0012】
三相整流器2は、6個の整流ダイオード2a~2fをブリッジ接続した構成となっており、三相交流電源1の交流電圧を整流する。昇圧コンバーター3は、昇圧リアクター4と、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のようなスイッチング素子5と、例えばファストリカバリダイオードのような逆流防止素子6と、を備えてチョッパー回路を構成する。平滑コンデンサー7は、昇圧コンバーター3の出力を平滑する。整流電圧検出部8は、三相整流器2が整流した直流電圧を検出する。母線電圧検出部9は、昇圧コンバーター3の出力電圧を平滑コンデンサー7で平滑した電圧である母線電圧を検出し、出力する。スイッチング制御部10は、整流電圧検出部8および母線電圧検出部9からの検出信号に基づいて、スイッチング素子5を動作させる駆動信号を生成する。
【0013】
図2は、本実施の形態に係るスイッチング制御部10の構成例を示す図である。図2において、スイッチング制御部10は、母線電圧制御部21と、オンデューティー制限部22と、駆動パルス生成部23と、を備える。
【0014】
母線電圧制御部21は、母線電圧検出部9の出力信号である母線電圧と母線電圧の目標値である母線電圧指令値とに基づいて、スイッチング素子5のオンデューティー(図2のduty_preに相当)を演算するオンデューティー演算部である。オンデューティーの演算は、例えば、母線電圧検出部9の出力信号である母線電圧と母線電圧指令値との偏差を比例積分制御して行う。なお、演算方法として比例積分制御を挙げたが、一例であり、これに限定するものではない。例えば、微分項を追加して比例積分微分制御とするなどの方法をとることも可能である。
【0015】
オンデューティー制限部22は、母線電圧制御部21で演算したオンデューティーに対して、整流電圧検出部8の検出値に基づいて算出した制限値で制限をかける。
【0016】
駆動パルス生成部23は、母線電圧制御部21で演算したオンデューティーに対してオンデューティー制限部22で制限をかけた出力値(図2のDonに相当)に基づいて、スイッチング素子5を動作させる駆動パルスを生成する。駆動パルスの生成は、例えば、三角波や鋸歯波のようなキャリア信号とオンデューティーを比較し、キャリア信号よりオンデューティーが大きくなる区間だけ、スイッチング素子5がオンするようにパルス信号を出力する。
・・・中略・・・
【0035】
昇圧コンバーター3動作時の昇圧リアクター4に流れる電流波形を振れ幅が小さく一定の範囲で変化させるため、具体的に、オンデューティー制限部22におけるオンデューティーDonを制限する処理について説明する。オンデューティーDonの制限は、例えば、三相交流電源1の交流電圧が所定の電圧値より増加した場合に必要となる。図7は、オンデューティー制限部22においてオンデューティーDonの制限がないときの各電圧との関係を示す図である。
【0036】
三相交流電源1の交流電圧が増加すると、三相整流器2で整流した電圧である整流電圧Vdsも増加する。また、式(2)から分かるように、母線電圧指令値Vo*が一定であれば、整流電圧Vdsの増加に伴い、オンデューティーDonは0に近づく。ここで、オンデューティーDonは0~1の範囲の値であるので、整流電圧Vdsが母線電圧指令値Vo*以上になると、オンデューティーDonが0となり、昇圧コンバーター3の動作は停止する。
【0037】
このように、昇圧コンバーター3が停止した場合、母線電圧Voについては所望の電圧値を得ることができるが、前述のような力率向上や入力電流の高調波低減の効果を得ることができなくなる。
【0038】
そのため、オンデューティー制限部22においてオンデューティーDonに下限を設け、母線電圧Voの昇圧動作を必要最低限とする制御を行う。これにより、スイッチング制御部10では、力率向上や入力電流の高調波低減といった効果を損なうことなく、昇圧コンバーター3を動作させることができる。図8は、オンデューティー制限部22においてオンデューティーDonを制限したときの各電圧との関係を示す図である。
【0039】
このときのオンデューティーDonの制限値は、例えば、式(2)に基づいて以下の式(5)のように決めることができる。
【0040】
Don>(Vo-Vds)/Vo …(5)
【0041】
ここで、Voには母線電圧指令値Vo*を入れ、その値は整流電圧Vdsを基準として、例えば、1.1倍、1.5倍といった定数倍、または、+10V、+50Vといった一定差分の値とする。すなわち、通常は母線電圧指令値Vo*の値を一定としておき、整流電圧Vdsと母線電圧指令値Vo*との差分が前記の定数倍または一定差分以下となる場合に、母線電圧指令値Vo*の値を整流電圧Vdsの値に基づいて可変する。オンデューティー制限部22は、図示しない母線電圧指令値Vo*の生成部に対して母線電圧指令値Vo*の値を可変する制御を行う。
【0042】
前述のように、式(2)を満たすとき、スイッチング素子5がオンの期間における電流変化量が、オフの期間における電流変化量と等しくなることから、式(5)のような下限値を設けることで、昇圧リアクター4に流れる電流は、少なくとも連続モードとなる。
【0043】
また、オンデューティーDonの制限値は、例えば、三相交流電源1の交流電圧が所定の電圧値より減少した場合に必要となる。図9は、オンデューティー制限部22においてオンデューティーDonの制限がないときの各電圧との関係を示す図である。
【0044】
三相交流電源1の交流電圧が減少すると、三相整流器2で整流した電圧である整流電圧Vdsも減少する。また、図9から分かるように、母線電圧指令値Vo*が一定であれば、整流電圧Vdsの減少に伴い、昇圧比が増加する。このとき、母線電圧Voの昇圧が母線電圧指令値Vo*が一定とした場合の電圧値より低くてよい場合には、必要以上に昇圧することになる。オンデューティー制限部22において、母線電圧Voの昇圧が母線電圧指令値Vo*が一定とした場合の電圧値より低くてよいかどうかを判断する方法としては、例えば、実施の形態2で後述するように、負荷側から取得した交流電圧の指令値などを用いて行うことができる。
【0045】
そのため、オンデューティー制限部22においてオンデューティーDonに上限を設け、母線電圧Voの昇圧動作を必要最低限とする制御を行う。これにより、スイッチング制御部10では、昇圧コンバーター3の昇圧動作に伴う損失を最小限に抑制することができる。図10は、オンデューティー制限部22においてオンデューティーDonを制限したときの各電圧との関係を示す図である。
【0046】
このときのオンデューティーDonの制限値は、例えば、式(2)に基づいて以下の式(6)のように決めることができる。
【0047】
Don<(Vo-Vds)/Vo …(6)
【0048】
ここで、Voには母線電圧指令値Vo*を入れ、その値は整流電圧Vdsを基準として、例えば、1.1倍、1.5倍といった定数倍、または、+10V、+50Vといった一定差分の値とする。すなわち、通常は母線電圧指令値Vo*の値を一定としておき、整流電圧Vdsと母線電圧指令値Vo*との差分が前記の定数倍または一定差分以上となる場合に、母線電圧指令値Vo*の値を整流電圧Vdsの値に基づいて可変する。オンデューティー制限部22は、図示しない母線電圧指令値Vo*の生成部に対して母線電圧指令値Vo*の値を可変する制御を行う。
【0049】
なお、三相交流電源1の交流電圧が安定しており一定のレベルで推移している場合、すなわち、図7や図9に示す状態に至らない場合、オンデューティー制限部22は、オンデューティーDonを制限する必要はないため、母線電圧制御部21で演算したオンデューティー(duty_pre)をオンデューティーDonとして駆動パルス生成部23へ出力する。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電力変換装置では、昇圧コンバーターのスイッチング素子の動作を制御するスイッチング制御部は、オンディーティーを制御して昇圧コンバーターに流れる電流波形を変化させ、昇圧コンバーターに入力される整流電圧の値に応じてオンディーティーに制限をかける。このとき、昇圧コンバーターに流れる電流波形を一定の振れ幅で推移するようにスイッチング素子の開閉を制御する。また、母線電圧指令値について、整流電圧との関係に応じて可変する制御を行う。これにより、回路性能の向上として、昇圧コンバーターのチョッパー回路における損失を最小限に抑制し、母線電圧を昇圧するだけでなく、力率の向上や、入力電流に含まれる高調波成分の低減が可能となる。」
B 「【0062】実施の形態3.本実施の形態では、電力変換装置において、昇圧コンバーターを並列接続する構成について説明する。実施の形態1と異なる部分について説明する。【0063】続きを表示(全12行)図12は、本実施の形態に係る電力変換装置の構成例を示す図である。図12に示すように、電力変換装置は、昇圧コンバーター3に替えて昇圧コンバーター3´を備え、昇圧コンバーター3´を、昇圧リアクター4aとスイッチング素子5aと逆流防止素子6aとからなる昇圧コンバーター3aと、昇圧リアクター4bとスイッチング素子5bと逆流防止素子6bとからなる昇圧コンバーター3bとを、並列接続する構成とすることも可能である。この場合、電力変換装置では、スイッチング制御部10に替えて2つのスイッチング素子を制御可能なスイッチング制御部10bを備える。【0064】昇圧コンバーター3a、3bのそれぞれにおいて、スイッチング素子5a、5bをオン・オフした場合の挙動は実施の形態1と同様となる。ただし、電源各相の導通区間に現れる電流波形は、昇圧リアクター4aの電流と昇圧リアクター4bの電流との加算となる。図13は、昇圧コンバーター3´内のスイッチング素子5a、5bのオン・オフおよび昇圧リアクター4a、4bの電流の状態を示す図である。図13(a)はスイッチング素子5aのオンデューティーを示し、図13(b)は昇圧リアクター4aの電流波形を示し、図13(c)はスイッチング素子5bのオンデューティーを示し、図13(d)は昇圧リアクター4bの電流波形を示し、図13(e)は昇圧リアクター4a、4bの加算電流波形を示す。【0065】特に、スイッチング素子5a、5bの互いのオンタイミング位相をずらすことで、昇圧リアクター4aの電流と昇圧リアクター4bの電流との加算電流におけるスイッチングリプルは相殺し合い、スイッチング素子5a、5bのスイッチングが同一のオンデューティーで、180度の位相をもってずれた場合に、加算電流のスイッチングリプルが最も小さくなる。また、このときの加算電流の、スイッチングに起因する電流リプルは、スイッチング周期Tswの1/2倍となる。・・・中略・・・【0074】このとき、スイッチング制御部10bを、例えば、図14のように構成することができる。図14は、本実施の形態に係るスイッチング制御部10bの構成例を示す図である。駆動パルス生成部23に替えて駆動パルス生成部23a、23bを備える点が、スイッチング制御部10と異なる。スイッチング制御部10bでは、駆動パルス生成部23a、23bにおいて、オンデューティーと比較する三角波や鋸歯波のキャリア信号を、駆動パルス生成部23aと23bで位相をずらすことで、所定の位相だけずれた、スイッチング素子5a、5bの駆動パルスを生成することができる。なお、同一のキャリア信号に対してオンデューティーをDonと1-Donのようにしてもよい。いずれの場合にもおいても、前述したオンデューティーを制限することによる回路性能向上の効果を得ることができる。」
C 「【0075】また、スイッチング制御部では、さらに母線電流を用いてオンデューティーを得ることも可能である。図15、16は、母線電流検出部を備えた電力変換装置の構成例を示す図である。また、図17、18は、母線電流検出部から検出値を入力するスイッチング制御部の構成例を示す図である。図17において、スイッチング制御部10cは、母線電圧制御部21aと、母線電流制御部42と、オンデューティー制限部22と、駆動パルス生成部23と、を備える。また、図18において、スイッチング制御部10dは、母線電圧制御部21aと、母線電流制御部42と、オンデューティー制限部22と、駆動パルス生成部23a、23bと、を備える。図15、17は昇圧コンバーター3の構成に対応し、図16、18は昇圧コンバーター3´の構成に対応する。【0076】図15、16に示すように、母線電流検出部41は、三相整流器2から昇圧リアクタ4に流れる電流値idcを検出し、スイッチング制御部10cまたはスイッチング制御部10dへ出力する。【0077】図17、18において、母線電圧制御部21aは、母線電圧指令値Vo*と母線電圧検出部9からの検出値(母線電圧Vo)との偏差に基づいて母線電流指令値idc*を算出する。母線電流制御部42は、該母線電流指令値idc*と母線電流検出部41の検出値(母線電流)idcとの偏差を、例えば、比例積分制御などを行うことによって制限前のオンデューティーを得る。オンデューティー制限部22以降の動作は、実施の形態1、2と同様である。【0078】これにより、実施の形態1、2と同様、母線電流制御を行うことができ、力率向上や入力電流の高調波低減といった効果を高めることができる。なお、このような構成においても、同様に、前述したオンデューティーを制限することによる回路性能向上の効果を得ることができる。【0079】なお、本実施の形態では、母線電圧制御部21aと母線電流制御部42とを用いて制限前のオンデューティーを得ているが、これに限定するものではない。例えば、母線電圧制御部において、母線電圧指令値Vo*、母線電圧Vo、および母線電流idcを入力し、制限前のオンデューティーを得るようにしてもよい。」
D 「【図1】[図:0001392987000001.jpg]」
E 「【図2】[図:0001392987000002.jpg]」
F 「【図12】[図:0001392987000003.jpg]」
(当審注:図12において、スイッチング素子5bは昇圧リアクター4aと接続されているが、上記Aの段落【0062】の「昇圧コンバーター3´を、昇圧リアクター4aとスイッチング素子5aと逆流防止素子6aとからなる昇圧コンバーター3aと、昇圧リアクター4bとスイッチング素子5bと逆流防止素子6bとからなる昇圧コンバーター3bとを、並列接続する構成とすることも可能である。」という記載からすると、スイッチング素子5bは昇圧リアクター4bと接続されていることの誤記と認められる。)
G 「【図14】[図:0001392987000004.jpg]」
H 「【図16】[図:0001392987000005.jpg]」
(当審注:図16において、スイッチング素子5bは昇圧リアクター4aと接続されているが、上記Cの段落【0075】に「図16、18は昇圧コンバーター3´の構成に対応する。」と記載されており、そして、「昇圧コンバーター3´の構成」は図12(上記F)のものであるから、図12と同様に、スイッチング素子5bは昇圧リアクター4bと接続されていることの誤記と認められる。)
I 「【図18】[図:0001392987000006.jpg]」
(2)引用発明
ア 引用文献1には、実施の形態が複数記載されているが、引用文献1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)としては、図16(上記(1)H)及び図18(上記I)に係る実施の形態のものを採用することとする。
そして、上記(1)Cの(【0075】)、図16の記載からすると、図16及び図18に係る実施の形態は、実施の形態3の「スイッチング制御部10b」を「スイッチング制御部10d」に置換し、さらに、母線電流検出部41を備えたものであり、上記(1)Bの記載からすると、実施の形態3は、実施の形態1の「昇圧コンバーター3」及び「スイッチング制御部10」の各々を、実施の形態3の「昇圧コンバーター3’」及び「スイッチング制御部10b」に置換したものである。
そうすると、図16及び図18に係る実施の形態は、実施の形態1に係る構成において、「昇圧コンバーター3」を「昇圧コンバーター3’」に置換し、「スイッチング制御部10」を「スイッチング制御部10d」に置換し、さらに、母線電流検出部41を備えたものと理解することができる。
そして、上記(1)Aの段落【0011】には実施の形態1として、“三相交流電源1と、三相整流器2と、昇圧コンバーター3と、平滑コンデンサー7と、整流電圧検出部8と、母線電圧検出部9と、スイッチング制御部10と、を備える電力変換装置”が記載されている。
してみると、引用文献1には図16及び図18の実施の形態として、“三相交流電源1と、三相整流器2と、昇圧コンバーター3´と、平滑コンデンサー7と、整流電圧検出部8と、母線電圧検出部9と、母線電流検出部41と、スイッチング制御部10dと、を備える電力変換装置”が記載されているといえる。
イ 上記(1)Aの段落【0012】には実施の形態1に関して、“三相整流器2は、6個の整流ダイオード2a~2fをブリッジ接続した構成となっており、三相交流電源1の交流電圧を整流するものであってて、平滑コンデンサー7は、昇圧コンバーター3の出力を平滑するものであって、整流電圧検出部8は、三相整流器2が整流した直流電圧を検出するものであって、母線電圧検出部9は、昇圧コンバーター3の出力電圧を平滑コンデンサー7で平滑した電圧である母線電圧を検出し、出力するものであ”ることが記載されている。
してみると、引用文献1には図16及び図18の実施の形態に関して、“三相整流器2は、6個の整流ダイオード2a~2fをブリッジ接続した構成となっており、三相交流電源1の交流電圧を整流するものであって、平滑コンデンサー7は、昇圧コンバーター3´の出力を平滑するものであって、整流電圧検出部8は、三相整流器2が整流した直流電圧を検出するものであって、母線電圧検出部9は、昇圧コンバーター3´の出力電圧を平滑コンデンサー7で平滑した電圧である母線電圧を検出し、出力するものであ”ることが記載されているといえる。
ウ 上記(1)Bの段落【0063】には、“昇圧コンバーター3´は、昇圧リアクター4aとスイッチング素子5aと逆流防止素子6aとからなる昇圧コンバーター3aと、昇圧リアクター4bとスイッチング素子5bと逆流防止素子6bとからなる昇圧コンバーター3bとを、並列接続する構成となって”いることが記載され、さらに、図12(上記(1)F)、図16(上記(1)H)によれば、“昇圧コンバーター3´は、三相整流器2で整流された電圧が入力されるものであ”ることが看取できる。
エ 上記(1)Cの段落【0076】、図16には、図16及び図18の実施の形態に関して、“母線電流検出部41は、三相整流器2から昇圧リアクター4a、4bに流れる電流値idcを検出し、スイッチング制御部10dへ出力するものであ”ることが記載されている。
オ 上記(1)Cの段落【0075】には、図16及び図18の実施の形態に関して、「スイッチング制御部10dは、母線電圧制御部21aと、母線電流制御部42と、オンデューティー制限部22と、駆動パルス生成部23a、23bと、を備え」ることが記載されている。
カ 上記(1)Cの段落【0077】には、図16及び図18の実施の形態に関して、「母線電圧制御部21aは、母線電圧指令値Vo*と母線電圧検出部9からの検出値(母線電圧Vo)との偏差に基づいて母線電流指令値idc*を算出する」ことが、さらに、「母線電流制御部42は、該母線電流指令値idc*と母線電流検出部41の検出値(母線電流)idcとの偏差で、比例積分制御などを行うことによって制限前のオンデューティーを得る」ことが記載されている。
キ 上記(1)Cの段落【0077】には図16の実施の形態に関して、「オンデューティー制限部22以降の動作は、実施の形態1、2と同様である」と記載され、そして、上記Aの段落【0015】には実施の形態1に関して、「オンデューティー制限部22は、母線電圧制御部21で演算したオンデューティーに対して、整流電圧検出部8の検出値に基づいて算出した制限値で制限をかける」ものであることが記載されている。
してみると、引用文献1には図16及び図18の実施の形態に関して、“オンデューティー制限部22は、母線電流制御部42で演算したオンデューティーに対して、整流電圧検出部8の検出値に基づいて算出した制限値で制限をかけるものであ”ることが記載されているといえる。
ク 上記(1)Aの段落【0014】には、実施の形態1に関して「駆動パルス生成部23は、母線電圧制御部21で演算したオンデューティーに対してオンデューティー制限部22で制限をかけた出力値(図2のDonに相当)に基づいて、スイッチング素子5を動作させる駆動パルスを生成する」ことが、さらに、上記オを参酌すれば、「スイッチング制御部10d」は「駆動パルス生成部23aと23b」を備えるものであり、当該「駆動パルス生成部23aと23b」に関して、上記(1)Bの段落【0074】には、“駆動パルス生成部23に替えた駆動パルス生成部23a、23bにおいては、オンデューティーと比較する三角波や鋸歯波のキャリア信号を、駆動パルス生成部23aと23bで位相をずらすことで、所定の位相だけずれた、スイッチング素子5a、5bの駆動パルスを生成する”ことが記載されている。
してみると、引用文献1には、“駆動パルス生成部23a、23bは、オンデューティー制限部22で制限をかけたオンデューティーに基づいて、スイッチング素子5a、5bを動作させる駆動パルスを生成するものであって、オンデューティーと比較する三角波や鋸歯波のキャリア信号を、駆動パルス生成部23aと23bで位相をずらすことで、スイッチング素子5a、5bで所定の位相だけずれた、駆動パルスを生成するものであ”ることが記載されている。
ケ 上記(1)Aの段落【0038】には、実施の形態1に関して「オンデューティー制限部22においてオンデューティーDonに下限を設け、母線電圧Voの昇圧動作を必要最低限とする制御を行う」ることが、さらに、段落【0041】には、「すなわち、通常は母線電圧指令値Vo*の値を一定としておき、整流電圧Vdsと母線電圧指令値Vo*との差分が前記の定数倍または一定差分以下となる場合に、母線電圧指令値Vo*の値を整流電圧Vdsの値に基づいて可変する。オンデューティー制限部22は、図示しない母線電圧指令値Vo*の生成部に対して母線電圧指令値Vo*の値を可変する制御を行う」ことが記載されている。
してみると、引用文献1には、“オンデューティー制限部22は、オンデューティーに下限を設け、母線電圧Voの昇圧動作を必要最低限とする制御を行うものであって、通常は母線電圧指令値Vo*の値を一定としておき、整流電圧Vdsと母線電圧指令値Vo*との差分が一定差分以下となる場合に、オンデューティー制限部22は、母線電圧指令値Vo*の生成部に対して母線電圧指令値Vo*の値を可変する制御を行う”ことが記載されている。
コ 以上、上記アないしケにおいて検討した事項から、特に、図16及び図18の実施の形態のものに注目すると、引用文献1には、次の引用発明が記載されているものと認められる。
「三相交流電源1と、三相整流器2と、昇圧コンバーター3´と、平滑コンデンサー7と、整流電圧検出部8と、母線電圧検出部9と、母線電流検出部41と、スイッチング制御部10dと、を備える電力変換装置において、三相整流器2は、6個の整流ダイオード2a~2fをブリッジ接続した構成となっており、三相交流電源1の交流電圧を整流するものであって、昇圧コンバーター3´は、昇圧リアクター4aとスイッチング素子5aと逆流防止素子6aとからなる昇圧コンバーター3aと、昇圧リアクター4bとスイッチング素子5bと逆流防止素子6bとからなる昇圧コンバーター3bとを、並列接続する構成となっており、三相整流器2で整流された電圧が入力されるものであって、平滑コンデンサー7は、昇圧コンバーター3´の出力を平滑するものであって、続きを表示(全14行)整流電圧検出部8は、三相整流器2が整流した直流電圧を検出するものであって、母線電圧検出部9は、昇圧コンバーター3´の出力電圧を平滑コンデンサー7で平滑した電圧である母線電圧を検出し、出力するものであって、母線電流検出部41は、三相整流器2から昇圧リアクター4a、4bに流れる電流値idcを検出し、スイッチング制御部10dへ出力するものであって、スイッチング制御部10dは、母線電圧制御部21aと、母線電流制御部42と、オンデューティー制限部22と、駆動パルス生成部23a、23bと、を備え、母線電圧制御部21aは、母線電圧指令値Vo*と母線電圧検出部9からの検出値(母線電圧Vo)との偏差に基づいて母線電流指令値idc*を算出するものであって、母線電流制御部42は、該母線電流指令値idc*と母線電流検出部41の検出値(母線電流)idcとの偏差で、比例積分制御などを行うことによって制限前のオンデューティーを得るものであって、オンデューティー制限部22は、母線電流制御部42で演算したオンデューティーに対して、整流電圧検出部8の検出値に基づいて算出した制限値で制限をかけるものであって、駆動パルス生成部23a、23bは、オンデューティー制限部22で制限をかけたオンデューティーに基づいて、スイッチング素子5a、5bを動作させる駆動パルスを生成するものであって、オンデューティーと比較する三角波や鋸歯波のキャリア信号を、駆動パルス生成部23aと23bで位相をずらすことで、スイッチング素子5a、5bで所定の位相だけずれた、駆動パルスを生成するものであり、オンデューティー制限部22は、オンデューティーに下限を設け、母線電圧Voの昇圧動作を必要最低限とする制御を行うものであって、通常は母線電圧指令値Vo*の値を一定としておき、整流電圧Vdsと母線電圧指令値Vo*との差分が一定差分以下となる場合に、オンデューティー制限部22は、母線電圧指令値Vo*の生成部に対して母線電圧指令値Vo*の値を可変する制御を行う、電力変換装置。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2018-64410号公報(以下、これを「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
A 「【0014】(実施例1)図1は、本発明の実施例1に係るスイッチング電源装置の回路構成を示す図である。スイッチング電源装置は、交流電源1、全波整流回路2、PFC(力率改善回路)部4、DC/DCコンバータ5、LED6、制御回路7を備えて構成される。【0015】続きを表示(全17行)全波整流回路2は、交流電源1の交流電圧を全波整流して整流電圧をPFC部4に出力する。PFC部4は、臨界モードで動作し、スイッチング素子Qoを有し、スイッチング素子Qoをオンオフさせることにより全波整流回路2からの整流電圧を直流電圧に変換する。【0016】PFC部4は、全波整流回路2の出力両端にリアクトルLoとスイッチング素子Qoと電流検出抵抗Roとの直列回路と、この直列回路の両端に接続されたダイオードDoとコンデンサCoとの直列回路とを有する。【0017】DC/DCコンバータ5は、降圧チョッパからなり、PFC部4から出力される直流電圧をより低い直流電圧に変換して負荷としてのLED6に電力を供給する。【0018】制御回路7は、PFC部4のスイッチング素子Qoをオンオフさせるとともに、DC/DCコンバータ5内の図示しないスイッチング素子をオンオフ制御させる。制御回路7は、LED6を含むLED照明装置からの調光信号に応じてスイッチング素子Qoの最大発振周波数を設定する最大発振周波数制限回路11を備えている。【0019】図2は、本発明の実施例1に係るスイッチング電源装置における最大周波数制限回路を含む制御回路の構成ブロック図である。制御回路7は、コンデンサCoからの出力電圧をフィードバック電圧として入力するFB端子、エラーアンプEAMの出力端子としてのCOMP端子、スイッチング素子Qoのソースの電圧を入力するCS端子、電源Vcc端子、スイッチング素子Qoのゲートに印加するためのゲート信号を出力するOUT端子、GND端子、補助巻線Lcに流れる電流がゼロになったことを検出するゼロ電流検出信号(ZCD信号)を入力するZCD端子、調光信号を入力する調光信号端子を有する。【0020】エラーアンプEAMは、FB端子からの電圧と基準電圧Vref1との誤差電圧を増幅してコンパレータCP1に出力する。コンパレータCP1は、発振器OSCからの三角波信号とエラーアンプEAMからの誤差電圧VCOMPとを比較することによりパルス信号を生成し、オア回路OR1を介してフリップフロップ回路RS1のリセット端子Rに出力する。フリップフロップ回路RS1は、パルス信号をバッファ回路BF1とOUT端子を介してスイッチング素子Qoのゲートに出力する。これにより、スイッチング素子Qoをオンオフさせることができる。【0021】過電圧保護コンパレータOVPは、FB端子からの電圧が基準電圧Vref3以上になった場合には、Hレベルをオア回路OR1に出力して、スイッチング素子Qoをオフさせることにより、過電圧保護する。低電圧保護コンパレータUVPは、FB端子からの電圧が基準電圧Vref2以下になった場合には、Hレベルをオア回路OR1に出力して、スイッチング素子Qoをオフさせることにより、低電圧保護する。」
B 「【図1】[図:0001392987000007.jpg]」
C 「【図2】[図:0001392987000008.jpg]」
3 引用文献3について
前置報告で引用された特開2017-11903号公報(以下、これを「引用文献3」という。)には、関連する図面とともに次の事項が記載されている。
A 「【0014】〔実施の形態1〕図1は、本実施の形態に係る発光素子駆動制御回路14を備えた照明装置100の構成を示す回路図である。照明装置100は、入力部11と、DC/DCコンバータ制御部12と、降圧型のDC/DCコンバータ13と、発光素子駆動制御回路14と、PWM制御IC(集積回路)15と、発光部16とを備えている。【0015】続きを表示(全19行)入力部11は、照明装置100に対する入力電圧Vinが印加されるものである。入力電圧Vinの値の一例として、60Vが挙げられるが、入力電圧Vinの値はこれに限定されるものではない。【0016】DC/DCコンバータ制御部12は、センス抵抗Rsと、DC/DCコンバータ制御IC121とを有している。DC/DCコンバータ13は、入力コンデンサCinと、MOSFET(Metal-Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)Q1およびQ2と、フリーホイールダイオードDと、チョークコイルLと、出力コンデンサCoutとを有している。【0017】センス抵抗Rsの一端は入力部11と接続されており、センス抵抗Rsの他端はnチャネル型のMOSFETQ1のドレインと接続されている。センス抵抗Rsは、電流の値を電圧に変換するために挿入された抵抗であり、過電流状態をDC/DCコンバータ制御IC121によって検知するために設けられている。【0018】入力コンデンサCinの一端はMOSFETQ1のドレインと接続されており、入力コンデンサCinの他端は接地されている。入力コンデンサCinは、MOSFETQ1が非導通状態である期間に充電され、MOSFETQ1が導通状態である期間に放電される。【0019】DC/DCコンバータ制御IC121は、スイッチング制御部122と、保護部123とを有している。【0020】スイッチング制御部122は、MOSFETQ1のゲートおよびソース、ならびにnチャネル型のMOSFETQ2のゲートおよびドレインと接続されている。スイッチング制御部122は、MOSFETQ1およびQ2の導通および非導通を制御するものである。【0021】また、スイッチング制御部122は、DC/DCコンバータ13の出力端13outと接続されており、DC/DCコンバータ13の出力電圧Voutを監視している。出力電圧Voutが降下したとき、スイッチング制御部122は、MOSFETQ1の導通時間を長くすることによって、出力電圧Voutを上昇させる。一方、出力電圧Voutが上昇したとき、スイッチング制御部122は、MOSFETQ1の導通時間を短くすることによって、出力電圧Voutを降下させる。【0022】保護部123は、センス抵抗Rsの両端、および入力コンデンサCinの両端と接続されている(ここでは、センス抵抗Rsの他端への接続と、入力コンデンサCinの一端への接続とは共通となっている)。保護部123は、センス抵抗Rsを流れる電流値、および入力コンデンサCinの両端の電位差のそれぞれに応じて、DC/DCコンバータ13の保護処理を実行させる。DC/DCコンバータ13の保護処理の一例として、スイッチング制御部122に停止信号を供給し、DC/DCコンバータ13による電圧の出力を停止させるように、MOSFETQ1およびQ2の導通および非導通を制御することが挙げられる。」
B 「【図1】[図:0001392987000009.jpg]」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「三相交流電源1」は、本願発明1の「交流電源」に相当する。
そして、引用発明の「三相整流器2」は、「6個の整流ダイオード2a~2fをブリッジ接続した構成となっており、三相交流電源1の交流電圧を整流するものであ」るから、本願発明1の「交流電源から出力される交流電圧を整流する整流回路」に相当する。
イ 引用発明の「昇圧コンバーター3´」は、「昇圧リアクター4aとスイッチング素子5aと逆流防止素子6aとからなる昇圧コンバーター3aと、昇圧リアクター4bとスイッチング素子5bと逆流防止素子6bとからなる昇圧コンバーター3bとを、並列接続する構成であ」り、また、「三相整流器2で整流された電圧が入力される」ものであるから、三相整流器2で整流された電圧を昇圧しているといえる。
してみると、引用発明の「昇圧リアクター4a」及び「昇圧リアクター4b」は、本願発明1の「複数のリアクタ」に相当し、引用発明の「スイッチング素子5a」及び「スイッチング素子5b」は、本願発明1の「複数のスイッチング素子」に相当し、引用発明の「逆流防止素子6a」及び「逆流防止素子6b」は、本願発明1の「複数の逆流防止素子」に相当し、そして、引用発明の「昇圧コンバーター3´」は、本願発明1の「複数のリアクタ、複数のスイッチング素子および複数の逆流防止素子を有し、前記整流回路で整流された電圧を昇圧する昇圧回路」に相当する。
ウ 引用発明の「平滑コンデンサー7」は、「昇圧コンバーター3´の出力を平滑するものであ」るから、本願発明1の「前記昇圧回路から出力される電圧である出力電圧を平滑化する平滑コンデンサ」に相当する。
エ 引用発明の「母線電圧検出部9」は、「昇圧コンバーター3´の出力電圧を平滑コンデンサー7で平滑した電圧である母線電圧を検出し、出力するものであ」るから、本願発明1の「前記平滑コンデンサの両端電圧を検出する電圧検出部」に相当する。
オ 引用発明の「スイッチング制御部10d」は、「母線電圧制御部21aと、母線電流制御部42と、オンデューティー制限部22と、駆動パルス生成部23a、23bと、を備え」るものである。
そして、引用発明は、「母線電圧制御部21aと、母線電流制御部42」が、「母線電圧指令値Vo*」、「母線電圧検出部9からの検出値(母線電圧Vo)」、「母線電流検出部41の検出値(母線電流)idc」からオンデューティーを得て、該オンデューティーに対して「オンデューティー制限部22」が整流電圧検出部8の検出値に基づいて算出した制限値で制限をかけ、「駆動パルス生成部23a、23b」が、「オンデューティー制限部22で制限をかけたオンデューティーに基づいて」、「スイッチング素子5a、5b」を制御するものである。
さらに、引用発明は、「オンデューティー制限部22は、オンデューティーに下限を設け、母線電圧Voの昇圧動作を必要最低限とする制御を行うものであって、通常は母線電圧指令値Vo*の値を一定としておき、整流電圧Vdsと母線電圧指令値Vo*との差分が一定差分以下となる場合、母線電圧指令値Vo*の値を整流電圧Vdsの値に基づいて可変する制御を行う」ものである。ここで、「整流電圧Vds」と「母線電圧指令値Vo*」の差が小さくなると「オンデューティー」も小さくなり0に近づくものであるから、引用発明の「整流電圧Vdsと母線電圧指令値Vo*との差分が一定差分以下となる場合」は、「オンデューティー」が0に近づき「スイッチング素子5a、5b」の動作が停止しそうになる場合といえる。そして、その場合に「オンデューティー制限部22」は、母線電圧指令値Vo*の値を整流電圧Vdsの値に基づいて可変(大きく)とすることで、整流電圧Vdsと母線電圧指令値Vo*との差分が一定差分以下にならないようにする、すなわち、オンデューティーが0より大きい「下限」以上にしているものと認められる。そして、オンデューティーの「下限」は、何らかの閾値以下のあらかじめ定められた値ということができる。
また、本願発明1の「前記電圧検出部により検出された電圧が前記出力電圧の目標値以上の場合」は、通常であれば、スイッチング素子のデューティ比を0とする場合であるから、複数のスイッチング素子の動作が停止しそうになる場合といえる。
してみると、引用発明の「母線電圧制御部21aと、母線電流制御部42と、オンデューティー制限部22と、駆動パルス生成部23a、23bと、を備え」る「スイッチング制御部10d」と、本願発明1の「前記電圧検出部により検出された電圧が前記出力電圧の目標値以上の場合に、前記複数のスイッチング素子のデューティ比を0より大きく閾値以下のあらかじめ定められた値に決定し、決定した前記デューティ比に基づいて前記複数のスイッチング素子を制御する制御部」とは、後記の点で相違するものの、“複数のスイッチング素子の動作が停止しそうになる場合、前記複数のスイッチング素子のデューティ比を0より大きく閾値以下のあらかじめ定められた値に決定し、決定した前記デューティ比に基づいて前記複数のスイッチング素子を制御する制御部”の点では共通する。
カ 引用発明の「母線電流検出部41」は、「三相整流器2から昇圧リアクター4a、4bに流れる電流値idcを検出」するものであるから、本願発明1の「前記整流回路と前記昇圧回路との間を流れる電流を検出する一次電流検出回路」に相当する。
キ 引用発明の「電力変換装置」は、「三相整流器2」、「昇圧コンバーター3´」、「平滑コンデンサー7」、「母線電圧検出部9」、「スイッチング制御部10d」、「母線電流検出部41」を備えるものであるから、本願発明1の「直流電源装置」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
〈一致点〉
「交流電源から出力される交流電圧を整流する整流回路と、複数のリアクタ、複数のスイッチング素子および複数の逆流防止素子を有し、前記整流回路で整流された電圧を昇圧する昇圧回路と、前記昇圧回路から出力される電圧である出力電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサの両端電圧を検出する電圧検出部と、複数のスイッチング素子の動作が停止しそうになる場合に、前記複数のスイッチング素子のデューティ比を0より大きく閾値以下のあらかじめ定められた値に決定し、決定した前記デューティ比に基づいて前記複数のスイッチング素子を制御する制御部と、前記整流回路と前記昇圧回路との間を流れる電流を検出する一次電流検出回路と、を備えた、直流電源装置。」
〈相違点1〉
「複数のスイッチング素子の動作が停止しそうになる場合」が、本願発明1では、「前記電圧検出部により検出された電圧が前記出力電圧の目標値以上の場合」であるのに対して、引用発明では、「整流電圧Vdsと母線電圧指令値Vo*との差分が一定差分以下となる場合」である点。
〈相違点2〉
本願発明1では、「前記制御部は、前記一次電流検出回路により検出された電流および前記電圧検出部により検出された電圧のうち少なくとも一方が異常範囲であるか否かによって異常を検出し、異常を検出した場合に前記複数のスイッチング素子の動作を停止させる」のに対して、引用発明では、その旨の特定がされていない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点2について先に検討する。
上記第4の2及び3の引用文献2、3に記載されるように、電流、電圧が異常範囲の際に、スイッチング素子の動作を停止させることは周知技術と認められる。
しかしながら、引用文献2のものは、PFC部(昇圧回路)の出力電圧が異常の際に、スイッチング素子の動作を停止させるものであって、また、引用文献3のものは、整流回路と降圧回路との間を流れる電流及び降圧回路の入力電圧が異常範囲の際にスイッチング素子の動作を停止さるものであるが、いずれも、複数のスイッチング素子の動作が停止しそうになる場合に、複数のスイッチング素子のデューティ比を0より大きくする電源装置において、整流回路と昇圧回路との間を流れる電流及び昇圧回路の出力電圧のうちの少なくとも一方が異常範囲である際に、スイッチング素子の動作を停止させるものではない。
そして、複数のスイッチング素子の動作が停止しそうになる場合に、複数のスイッチング素子のデューティ比を0より大きくする電源装置において、整流回路と昇圧回路との間を流れる電流及び昇圧回路の出力電圧のうちの少なくとも一方が異常範囲である際に、スイッチング素子の動作を停止させることが本願出願時における周知技術であったとは認められない。
したがって、上記相違点2に係る構成が、引用発明及び引用文献2、3に記載の周知技術に基づき当業者が容易に構成し得たものであるとはいえない。
以上のとおりであるから、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1が引用発明及び引用文献2、3に記載の周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を更に限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者であっても引用発明及び引用文献2、3に記載の周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本願発明3ないし6について
本願発明3は、本願発明1または2の「直流電源装置」が、さらに「インバータ」を備える「モータ駆動装置」として、さらに、本願発明4は、本願発明3の「モータ駆動装置」が、さらに「モータ」を備える「空気調和装置」として、また、本願発明5は、本願発明3の「モータ駆動装置」が、さらに「モータ」を備える「冷蔵庫」として、また、本願発明6は、本願発明3の「モータ駆動装置」が、さらに「モータ」を備える「ヒートポンプ給湯装置」として、それぞれ限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者であっても引用発明及び引用文献2、3に記載の周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし6は上記第3に示したとおりのものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用発明(上記第4の1の引用文献1に記載された発明)及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-007686