特許拒絶査定不服審判
2022-006727
アレルギーの抗原およびそのエピトープ
- 審判番号
- 2022-006727
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-521947
- 請求日
- 2022年05月06日
- 審決日
- 2023年09月05日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】学校法人藤田学園
- 【請求人代理人】山本 修
- 【請求人代理人】宮前 徹
- 【請求人代理人】松尾 淳一
- 【請求人代理人】泉谷 玲子
- 【請求人】ホーユー株式会社
- 【請求人代理人】山本 修
- 【請求人代理人】宮前 徹
- 【請求人代理人】松尾 淳一
- 【請求人代理人】泉谷 玲子
- 審判長/審判官
- 審判長 福井 悟
- 審判官 加々美 一恵
- 審判官 藤井 美穂
- 分類
- P18 .113-Z (C07K) / P18 .575-Z (C07K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-521947「アレルギーの抗原およびそのエピトープ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月 6日国際公開、WO2018/220889〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯の概要
本願は、2017年12月6日(優先権主張 2017年6月2日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 3年 9月 9日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 1月13日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 2月10日付け:拒絶査定
令和 4年 5月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 4年11月30日 :上申書の提出
第2 令和4年5月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年5月6日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について
令和4年5月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項を以下のように補正することを含むものである。
(1)補正前:
「 【請求項1】
アレルギーの診断キットであって、
以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つ、を含む、前記診断キット。
【請求項2】
前記ポリペプチドのアミノ酸残基数が500以下である、請求項1に記載の診断キット。
【請求項3】
アレルギーの診断用組成物であって、
以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つ、を抗原として含む、前記診断用組成物。
【請求項4】
対象のアレルギーを診断するための指標を提供する方法であって、以下の工程:
(i)対象から得られた試料を抗原に接触させる、ここで当該試料はIgE抗体が含まれる溶液である;
(ii)対象から得られた試料中のIgE抗体と当該抗原との結合を検出する;
(iii)対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された場合、対象がアレルギーであることの指標が提供される;
を含み、ここで当該抗原は、以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つである、前記方法。
【請求項5】
以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つ、含む医薬組成物。
【請求項6】
アレルギーを治療するための、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つと結合する抗体を含むことを特徴とする、対象物における抗原の有無を判定するためのテスター。
【請求項8】
以下のいずれかのプライマー:
(a)以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つをコードする核酸の塩基配列の一部及び/またはその相補鎖を含むプライマー;または
(b)配列番号46、58、105、151、236、250または261で示される塩基配列の少なくとも1つの一部であるプライマーおよび/または配列番号46、58、105、151、236、250または261で示される塩基配列の少なくとも1つと相補的な配列の一部であるプライマー;
ここにおいて、前記プライマーの長さは12塩基以上であり、前記(1α)-(4β)のいずれかのポリペプチドの少なくとも一つをコードする核酸を増幅する、
を含むことを特徴とする、対象物における抗原の有無を判定するためのテスター。
【請求項9】
抗原が除去若しくは低減されていることを特徴とする原料又は加工品であって、当該抗原は、以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つである、前記原料又は加工品。
【請求項10】
抗原が除去若しくは低減されている加工品の製造方法であって、当該加工品の製造過程で抗原が除去若しくは低減されていることを確認するステップを有し、ここで当該抗原は、以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つである、前記製造方法。」
(2)補正後(補正箇所は下線部である。)
「 【請求項1】
アレルギーの診断キットであって、
以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~324、326~348、350~385、387、388、390~397、399~492、494~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~528、530、531、533~537、539~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553、555~562、564~566、568~571、573~585、587~613、615~619、621~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つ、を含む、前記診断キット。
【請求項2】
前記ポリペプチドのアミノ酸残基数が500以下である、請求項1に記載の診断キット。
【請求項3】
アレルギーの診断用組成物であって、
以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~324、326~348、350~385、387、388、390~397、399~492、494~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~528、530、531、533~537、539~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553、555~562、564~566、568~571、573~585、587~613、615~619、621~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つ、を抗原として含む、前記診断用組成物。
【請求項4】
対象のアレルギーを診断するための指標を提供する方法であって、以下の工程:
(i)対象から得られた試料を抗原に接触させる、ここで当該試料はIgE抗体が含まれる溶液である;
(ii)対象から得られた試料中のIgE抗体と当該抗原との結合を検出する;
(iii)対象のIgE抗体と当該抗原との結合が検出された場合、対象がアレルギーであることの指標が提供される;
を含み、ここで当該抗原は、以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~324、326~348、350~385、387、388、390~397、399~492、494~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~528、530、531、533~537、539~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553、555~562、564~566、568~571、573~585、587~613、615~619、621~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つである、前記方法。
【請求項5】
以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~324、326~348、350~385、387、388、390~397、399~492、494~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~528、530、531、533~537、539~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553、555~562、564~566、568~571、573~585、587~613、615~619、621~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つ、含む医薬組成物。
【請求項6】
アレルギーを治療するための、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~324、326~348、350~385、387、388、390~397、399~492、494~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~528、530、531、533~537、539~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553、555~562、564~566、568~571、573~585、587~613、615~619、621~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つと結合する抗体を含むことを特徴とする、対象物における抗原の有無を判定するためのテスター。
【請求項8】
以下のいずれかのプライマー:
(a)以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~324、326~348、350~385、387、388、390~397、399~492、494~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~528、530、531、533~537、539~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553、555~562、564~566、568~571、573~585、587~613、615~619、621~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つをコードする核酸の塩基配列の一部及び/またはその相補鎖を含むプライマー;または
(b)配列番号46、58、105、151、236、250または261で示される塩基配列の少なくとも1つの一部であるプライマーおよび/または配列番号46、58、105、151、236、250または261で示される塩基配列の少なくとも1つと相補的な配列の一部であるプライマー;
ここにおいて、前記プライマーの長さは12塩基以上であり、前記(1β)-(4β)のいずれかのポリペプチドの少なくとも一つをコードする核酸を増幅する、
を含むことを特徴とする、対象物における抗原の有無を判定するためのテスター。
【請求項9】
抗原が除去若しくは低減されていることを特徴とする原料又は加工品であって、当該抗原は、以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~324、326~348、350~385、387、388、390~397、399~492、494~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~528、530、531、533~537、539~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553、555~562、564~566、568~571、573~585、587~613、615~619、621~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つである、前記原料又は加工品。
【請求項10】
抗原が除去若しくは低減されている加工品の製造方法であって、当該加工品の製造過程で抗原が除去若しくは低減されていることを確認するステップを有し、ここで当該抗原は、以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~324、326~348、350~385、387、388、390~397、399~492、494~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~528、530、531、533~537、539~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553、555~562、564~566、568~571、573~585、587~613、615~619、621~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つである、前記製造方法。」
2 補正の適否
(1)補正の目的
本件補正は、請求項1に係るアレルギーの診断キットに含まれるポリペプチドの選択肢の一部を(1β)~(3β)からそれぞれ削除するものであり、同様に、請求項3~5、7~10についても、請求項1で削除したポリペプチドの選択肢に対応する選択肢を削除するものである。
そうすると、本件補正は、補正前の請求項1、3~5、7~10、およびこれら請求項を引用する請求項2、6について、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する。
(2)独立特許要件について
ア 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された、本願の優先日前の2016年に頒布された刊行物である、特開2016-141666号公報(以下、引用文献2という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は合議体が付した。以下同様。)
「【請求項 4】
以下の(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質からなるグループから選択される1または複数のポリペプチドまたはタンパク質を含む卵アレルギー性疾患の診断キット:
(a)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチドまたはタンパク質;
(b)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチドまたはタンパク質。」
「【0007】
発明者らは、鶏卵アレルギーの患者由来の血清を用いて、卵白および卵黄のタンパク質抽出液に対し、ウエスタンブロッティングを行ったところ、分子量約39kDaのタンパク質が血清と反応することを見出した。アミノ酸配列の解析の結果、この分子量約39kDaのタンパク質は、卵黄由来のVitellogenin-2の部分ペプチドである、YGP40であることが分かった。
これまでに、YGP40については、Vitellogenin-2の部分ペプチドであること(非特許文献1)、オイル/水の境界面に選択的に抽出される性質をもつこと(非特許文献2)、血漿に溶解性のタンパク質の構成要素である糖タンパク質として検出されること(非特許文献3)などが報告されているが、アレルゲンコンポーネントとしての性質を有することについては、明らかにされていなかった。
すなわち、卵黄由来のVitellogenin-2の部分ペプチドであるYGP40がアレルゲンコンポーネントであるとの知見は、発明者らにより、初めて見出されたことであり、この知見に基づいて、本発明は完成されるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の(1)~(6)である。
(1)以下の(a)または(b)のポリペプチド:
(a)配列番号1で表されるアミノ酸からなるポリペプチド;
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチド。
(2)以下の(a)または(b)に示すポリペプチドをコードする核酸:
(a)配列番号1に示されるアミノ酸からなるポリペプチド;
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチド。
(3)以下の(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質からなるグループから選択される1または複数のポリペプチドまたはタンパク質を含む卵アレルギー性疾患の治療薬:
(a)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチドまたはタンパク質;
(b)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチドまたはタンパク質。
(4)以下の(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質からなるグループから選択される1または複数のポリペプチドまたはタンパク質を含む卵アレルギー性疾患の診断キット:
(a)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチドまたはタンパク質;
(b)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチドまたはタンパク質。
(5)以下の(a)または(b)に示されるポリペプチドに特異的に結合する抗体:
(a)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチド;
(b)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチド。
(6)以下の(1)および(2)の工程を含む卵アレルギーの発症または発症の可能性の有無を診断する方法:
(1)以下の(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質と被験者由来の免疫グロブリンを含む生体試料とを反応させる工程、
(2)工程(1)の反応後、該生体試料中に(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質と結合するIgEを検出する工程、
(a)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチドまたはタンパク質;
(b)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチドまたはタンパク質。」
「【0014】
本発明の第2の実施形態は、YGP40のエピトープ領域(IgEが結合する部分)を含むポリペプチド、YGP40タンパク質およびVitellogenin-2から選択される1または複数のポリペプチドまたはタンパク質の使用であって、これらのポリペプチドまたはタンパク質を含む卵アレルギー性疾患の診断キット(または、診断薬、検査キット)、または卵アレルギー性疾患の予防薬もしくは治療薬である。
本発明の第2の実施形態をより具体的に記載すると、以下の(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質からなるグループから選択される1または複数のポリペプチドまたはタンパク質の使用であって、これらのポリペプチドまたはタンパク質を含む卵アレルギー性疾患の診断キット(または、診断薬、検査キット)、または、卵アレルギー性疾患の予防薬もしくは治療薬である。
(a)配列番号1、配列番号2または配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチドまたはタンパク質;
(b)配列番号1、配列番号2または配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチドまたはタンパク質。
ここで、卵とは、鳥類の卵など、通常、食物として摂取する機会のある卵のことで、特に、ニワトリ、ウズラなどの卵のことである。
配列番号2は、鶏卵の卵黄由来のYGP40タンパク質のアミノ酸配列である。発明者らは、YGP40が卵アレルギーの患者由来の血清由来のIgEと反応したことから、YGP40が卵アレルギーの原因となる新規なアレルゲンコンポーネントであると同定した。YGP40は、Vitellogenin-2(配列番号3;アミノ酸位置1~15はシグナルペプチド)(Genbankアクセション番号;AAN22959.1)のアミノ酸位置1567~1850に位置する部分ペプチドであることが知られている。従って、YGP40のエピトープ領域を含む配列番号1で表されるアミノ酸からなるポリペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸からなるYGP40および配列番号3で表されるアミノ酸からなるVitellogenin-2は、アレルゲンコンポーネントとして、様々な用途に使用することができる。」
イ 引用発明
上記アより、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチドまたはタンパク質を含む卵アレルギー性疾患の診断キット」
ウ 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「アレルギー性疾患の診断キット」は、本願補正発明の「アレルギーの診断キット」に相当する。
引用文献2の配列表によると、引用発明の配列番号3は、全長1850アミノ酸残基からなる配列であるが、第70番目~79番目に「Leu Lys Val Arg Ser Pro Gln Val Glu Glu」というアミノ酸配列を含むので、
引用発明は、
「Leu Lys Val Arg Ser Pro Gln Val Glu Gluのアミノ酸配列を含む配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチドまたはタンパク質を含む卵アレルギー性疾患の診断キット」
ということができる。
一方、本願の配列表によると、本願補正発明の(1β)における配列番号319は「Leu Lys Val Arg Ser Pro Gln Val Glu Glu」であるので、配列番号319のアミノ酸配列を含むポリペプチドに着目すると、
本願補正発明は、
「アレルギーの診断キットであって、Leu Lys Val Arg Ser Pro Gln Val Glu Gluのアミノ酸配列を含むポリペプチド、を含む、前記診断キット。」
ということができる。
とすると、本願補正発明と引用発明は、共に「アレルギーの診断キット」であって、「Leu Lys Val Arg Ser Pro Gln Val Glu Gluのアミノ酸配列を含むポリペプチド」をキットに含むものであるから、両者に相違点はない。
エ 審判請求書における請求人の主張について
(ア)審判請求書にて、請求人は以下のA、Bの主張をしている。
A 本願発明のエピトープ配列は15アミノ酸残基程度に限定されており、引用文献2に記載されているような長い配列から本願発明のエピトープ配列を特定するのは、当業者の創意工夫が必要であり、決して容易ではない。
B 本出願人と同出願人の特願2019-502442号は、本出願と同様の新規エピトープの発明に関する。当該出願では本願と同様に新規アレルゲン、エピトープを特定することの困難性について主張し、令和4年4月4日付で特許査定されている。その他の例としては、本願発明と同様のエピトープに関する発明が、特許第6568193号として登録されている。また、特願2019-502442号は、本願と同様に「アミノ酸配列を含む」と特許請求の範囲で記載しているが、エピトープを特定していると認定され、特許査定に至った。
(イ)上記請求人の主張に対する合議体の判断
Aについて
本願補正発明は、「アレルギーの診断キット」であって、補正後の請求項1の記載からみて、「(本願補正発明の)配列番号319のアミノ酸配列を含むポリペプチド」「を含む」「診断キット」の発明であり、請求人の主張するような「15アミノ酸残基程度に限定」された「エピトープ」に係る発明ではない。
特に、補正後の請求項2に「前記ポリペプチドのアミノ酸残基数が500以下である、請求項1に記載の診断キット。」の限定が加えられていることに照らすと、本願補正発明は、アミノ酸残基数が500を超えるものを含み得るポリペプチド、すなわち、Leu Lys Val Arg Ser Pro Gln Val Glu Gluのアミノ酸配列とともに他のアミノ酸配列を含み得るポリペプチドを対象にしていることは明らかである。
このため、請求人の主張は、その前提において誤りがあり、長い配列からエピトープ配列を特定することの困難性の有無にかかわらず、上記ウで述べたように、本願補正発明と引用発明との間に相違点はない。
Bについて
特許第6568193号についてみれば、「・・・群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列からなるポリペプチド」と規定されており、「・・・のアミノ酸配列を含むポリペプチド」の表現が、エピトープ(抗原決定基)以外のアミノ酸配列を含まないポリペプチド、例えば、15アミノ酸残基程度に限定されたエピトープを特定するものとして、一般的に当業者に使用されていたとは解されない。
特願2019-502442号(特許第7076713号)の特許査定された請求項1には、確かに「アミノ酸配列を含む」の規定が残されているが、審査経緯をみても、請求項1に係る発明が、エピトープ(抗原決定基)以外のアミノ酸配列を含まないポリペプチド、例えば、15アミノ酸残基程度に限定されたエピトープを対象にするものと認定されて、当該発明が特許査定に至ったかについては、明らかでない。
もっとも、本願補正発明の特許性の判断は、本願とは事情の異なる特許第6568193号や特願2019-502442号により影響を受けるものではない。
よって、上記請求人の主張A、Bは、いずれも採用できない。
なお、請求人は、令和4年11月30日付け上申書で、いくつかの配列を削除した補正書案を提出しているが、配列番号319のアミノ酸配列を含むポリペプチドは、補正書案の請求項1に含まれているので、補正書案に記載された請求項1に係る発明と引用発明との間に相違点はなく、上記の上申書を参酌しても本願に対する拒絶理由は解消しない。
オ 小括
以上のとおりであるから、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年5月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 1(1)」に「補正前」として記載した、令和4年1月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「アレルギーの診断キットであって、
以下:
(1β)配列番号285~287、291~295、319~525(459、467を除く)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2β)配列番号296~303、526~552からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(3β)配列番号304、309~311、553~625からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(4β)配列番号312~318、626~682からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
のポリペプチドの少なくとも一つ、を含む、前記診断キット。」
2 原査定の拒絶の理由の概要
令和4年2月10日付け拒絶査定は、この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものを含むものである。
3 引用文献およびその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2およびその記載事項は、前記第2の2(2)アに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明の診断キットに係るポリペプチドに加え、さらに他の配列番号のアミノ酸配列を含むポリペプチドを選択肢として含むものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を含む本願補正発明が、上記第2の2(2)のとおり、引用文献2に記載された発明であるから、本願発明についても同様に、引用文献2に記載された発明である。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-006727