2022-006433
電子部品搭載基板および電子機器
- 審判番号
- 2022-006433
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-070644外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年04月27日
- 審決日
- 2023年01月06日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】東洋インキSCホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】家入 健
- 【請求人代理人】秦 恵子
- 分類
- P18 .121-WY (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
本願は、平成31年3月28日(優先権主張 平成30年12月18日)に出願した特願2019-63673号の一部を令和2年4月9日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 原査定の概要
原査定(令和4年1月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-6に係る発明は、以下の引用文献1-2に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2018-129498号公報
2.国際公開第2011/007570号
第3 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、令和4年4月27日提出の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】基板と、前記基板の少なくとも一方の面に搭載された電子部品と、前記電子部品上面から前記基板に亘って被覆され、前記電子部品の搭載によって形成された段差部の側面および前記基板の少なくとも一部を被覆する電磁波シールド部材と、を備え、前記電磁波シールド部材は、バインダー樹脂と導電性フィラーを含む電磁波シールド層を有し、且つ押込み弾性率が1~10GPaであり、マルテンス硬さが114~312N/mm2であり、前記電磁波シールド部材の表層の水接触角が80~100°であり、前記導電性フィラー100質量%中、針状粒子または/およびデンドライト状粒子が0.5~24質量%である電子部品搭載基板。」
また、本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明である。
さらに、本願発明6は、本願発明1-5のいずれかを引用する「電子機器」の発明であり、実質的に、本願発明1を減縮した発明である。
第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
「【発明が解決しようとする課題】【0005】電磁波を遮蔽するために電子部品の表面に金属箔をスパッタする方法、金属缶を嵌合する方法、めっき処理する方法、上記特許文献1のように導電性ペーストを塗布する方法等があるが、これらは汎用性または処理工程の煩雑さにおいて課題がある。また、特許文献2等の電磁波シールド用フィルムにおいては、電子部品の段差部分や凹凸箇所において電磁波遮蔽層の割れが発生しやすく、電磁波シールド性の品質において課題がある。また、凹部の埋め込み性が不足しやすい問題、側面のグランド部への接続性に課題がある。さらに個片化後のICチップを搬送する過程において搬送機等に接触し電磁波遮蔽層に傷がつきやすい問題がある。【0006】本発明は、上記背景に鑑みて成されたものであり、生産性が高く、高品質で被覆性および耐スクラッチ性が高い電磁波遮蔽層を提供できる電磁波遮蔽シートおよび積層体、並びに前記電磁波遮蔽層を有する部品搭載基板、並びに電子機器を提供することを目的とする。」
「【発明の効果】【0008】本発明によれば、高品質で被覆性および耐スクラッチ性が高い電磁波遮蔽層を提供できる電磁波遮蔽シートおよび積層体、並びに前記電磁波遮蔽層を有する部品搭載基板および電子機器を提供できるという優れた効果を奏する。」
「【0011】[部品搭載基板]図1に本実施形態に係る部品搭載基板の模式的斜視図を、図2に図1のII-II切断部断面図を示す。部品搭載基板101は、基板20、部品の一例である電子部品30および電磁波遮蔽層1等を有する。【0012】基板20は、電子部品30を搭載可能であり、且つ後述する加熱圧着工程に耐え得る基板であればよく、任意に選択できる。例えば銅箔等からなる導電パターンが表面又は内部に形成されたワークボード、実装モジュール基板、プリント配線板またはビルドアップ法等により形成されたビルドアップ基板が挙げられる。また、フィルムやシート状のフレキシブル基板を用いてもよい。前記導電パターンは、例えば、電子部品30と電気的に接続するための電極・配線パターン(不図示)、電磁波遮蔽層1と電気的に接続するためのグランドパターン22である。基板20内部には、電極・配線パターン、ビア(不図示)等を任意に設けることができる。基板20は、リジッド基板のみならず、フレキシブル基板であってもよい。【0013】電子部品30は、図1の例においては基板20上に5×4個アレイ状に配置されている。そして、基板20および電子部品30の露出面を被覆するように電磁波遮蔽層1が設けられている。即ち、電磁波遮蔽層1は、電子部品30により形成される凹凸に追従するように被覆されている。電磁波遮蔽層1により、電子部品30および/または基板20に内蔵された信号配線等から発生する不要輻射を遮蔽し、また、外部からの磁場や電波による誤動作を防止できる。」
「【0017】<電磁波遮蔽層>電磁波遮蔽層1は、電子部品30が搭載された基板20上に、後述する電磁波遮蔽シートを載置して加熱圧着することにより得られる。電磁波遮蔽層1は、熱硬化性樹脂と硬化性化合物との硬化物、および鱗片状粒子(フレーク状粒子)を含む導電性フィラーを含有する鱗片状粒子含有層を有し、異方導電層を含まない。そして、電子部品30の上面を被覆する電磁波遮蔽層1の厚みをT1,電子部品30の側面を被覆する電磁波遮蔽層1の厚みをT2としたときに、T1/T2が1.1~10であり、且つ電磁波遮蔽層1のマルテンス硬さを3~100N/mm2とする。鱗片状粒子の平均厚さを0.05~2μmの範囲とし、鱗片状粒子含有層の切断部断面の導電性フィラーの専有面積を20~50%とする。導電性フィラーの専有面積は、好ましくは25~45%であり、より好ましくは30~40%である。20~50%の範囲にあることで、ひっかき試験およびグランド接続性を向上させることができる。導電性フィラーは、鱗片状粒子含有層において連続的に接触されており、等方導電性を示す。なお、後述する電磁波遮蔽シートの段階では、等方導電性の有無は問わない。」
「【0024】マルテンス硬さは、耐スクラッチ性の観点から、5N/mm2以上が好ましく、7N/mm2以上がより好ましく、10N/mm2以上が更に好ましい。テープ密着の観点からは、98N/mm2以下が好ましく、90N/mm2以下がより好ましく、80N/mm2以下が更に好ましく、70N/mm2以下が特に好ましい。マルテンス硬さは、導電性フィラーおよびバインダー成分の硬さにより調整できる。バインダー成分の硬さは、主として熱硬化性樹脂と硬化性化合物の硬化物の硬さによる。具体的には、鱗片状粒子はマルテンス硬さが大きくなる傾向にあり、球状、樹枝状粒子はマルテンス硬さが低くなる傾向にある。また、導電性フィラー量が多くなるとマルテンス硬さは大きくなる傾向にある。また、硬化後の樹脂の硬さが高いほど、マルテンス硬さも硬くなる。」
「【0028】導電性フィラーとして、専ら鱗片状粒子を用いてもよいが、鱗片状粒子と他の形状の粒子を併用してもよい。併用する粒子形状は特に限定されないが、樹枝(デンドライト)状粒子、繊維状粒子、針状粒子および球状粒子からなる群から選択される粒子が好ましい。併用する粒子は、単独または混合して用いられる。併用する場合、鱗片状粒子および樹枝状粒子の組み合わせ、鱗片状粒子、樹枝状粒子および球状粒子の組み合わせ、鱗片状粒子および球状粒子の組み合わせが例示できる。これらのうち、電磁波遮蔽層の被覆性を高め、且つシールド性を高める観点から、鱗片状粒子単独または鱗片状粒子と樹枝状粒子との組み合わせがより好ましい。【0029】鱗片状粒子含有層において鱗片状粒子と樹枝状粒子の混合する場合の質量比は、9:1~1:9が好ましく、8:2~2:8がより好ましい。上記の混合質量比とすることで、グランド接続性と段差追従性がより向上する。鱗片状粒子の平均粒子径D50は2~100μmが好ましく、2~80μmがより好ましい。更に好ましくは3~50μmであり、特に好ましくは5~20μmである。樹枝状粒子の平均粒子径D50の好ましい範囲も同様に、2~100μmが好ましく、2~80μmがより好ましい。更に好ましくは3~50μmであり、特に好ましくは5~20μmである。鱗片状粒子と樹枝状粒子を併用することにより、表面光沢度を最適化し、電磁波遮蔽層に文字を直接印刷した場合に、印字視認性を高めることができる。」
「【0107】≪実施例≫以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例中の「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」をそれぞれ表すものとする。また、本発明に記載の値は、以下の方法により求めた。」
「【0109】以下、実施例で使用した材料を示す。導電性フィラー1:「核体に銅、被覆層に銀を使用した鱗片状粒子平均粒子径D50=11.0μm、厚み1.1μm、円形度係数=0.23」(福田金属箔粉工業社製)導電性フィラー2:「核体に銅、被覆層に銀を使用した樹枝状粒子平均粒子径D50=9.0μm、円形度係数=0.12」(福田金属箔粉工業社製)続きを表示(全20行)導電性フィラー3:「核体に銅、被覆層に銀を使用した鱗片状粒子平均粒子径D50=6.0μm、厚み0.8μm、円形度係数=0.19」(福田金属箔粉工業社製)導電性フィラー4:「核体に銅、被覆層に銀を使用した鱗片状粒子平均粒子径D50= 19.0μm、厚み1.0μm、円形度係数=0.24」(福田金属箔粉工業社製)導電性フィラー5:Fe-Si-Cr系鱗片状磁性粒子(平均粒子径D50:9.8μm、厚み0.5μm、円形度係数0.43)導電性フィラー6:Fe-Co系鱗片状磁性粒子(平均粒子径D50:13μm、厚み0.6μm、円形度係数0.69)導電性フィラー7:Mn-Zn系鱗片状磁性粒子(平均粒子径D50:15μm、厚み0.9μm、円形度係数0.56)熱硬化性樹脂:ウレタンウレア樹脂 酸価5[mgKOH/g](トーヨーケム社製)硬化性化合物1:エポキシ樹脂、「JER828」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂 エポキシ当量=189g/eq)三菱化学社製硬化性化合物2:エポキシ樹脂、「デナコールEX212」(2官能エポキシ樹脂 エポキシ当量=151g/eq)ナガセケムテックス社製硬化性化合物3:エポキシ樹脂、「アデカレジンEPR-1415-1」(ゴム変性エポキシ樹脂 エポキシ当量=400g/eq)アデカ社製硬化性化合物4:エポキシ樹脂、「HP-4032D」(ナフタレン型エポキシ樹脂 エポキシ当量=140g/eq)DIC社製離型性基材:表面にシリコン離型剤をコーティングした厚みが50μmのPETフィルム離形性発泡基材A:表面にアルキッド樹脂をコーティングした厚みが50μm発泡密度110kg/m3、比重1.1、25%圧縮応力0.09MPaの発泡PETフィルム離形性発泡基材B:表面にアルキッド樹脂をコーティングした厚みが100μm、発泡密度240kg/m3、比重0.5、25%圧縮応力0.05MPaの発泡ウレタンフィルム離形性発泡基材C:表面にアルキッド樹脂をコーティングした厚みが100μm、発泡密度220kg/m3、比重0.6、25%圧縮応力0.04MPaの発泡ポリプロピレンフィルム柔軟性離形シート:「X-44B」(厚み50μmの単層TPXフィルム)三井化学東セロ社製熱溶融性部材:厚みが80μmの軟質塩化ビニルシート」
「【0123】[実施例1](製法(i))熱硬化性樹脂(固形分)100部と、エポキシ樹脂1を25部と、エポキシ樹脂2を25部と、導電性フィラー1を185部と、導電性フィラー2を185部と、を容器に仕込み、不揮発分濃度が45質量%になるようトルエン:イソプロピルアルコール(質量比2:1)の混合溶剤を加えディスパーで10分攪拌することで樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を乾燥厚みが60μmになるようにドクターブレードを使用して離型性基材に塗工した。そして、100℃で2分間乾燥することで離型性基材と電磁波遮蔽シートとが積層された離型性基材付多層体を得た。係る離型性基材付多層体を10×10cmにカットし、図19に示す試験基板に載置し仮貼付した。その後、離形性基材を剥離し、除去した面に柔軟性離形シートを載置し、さらにその上に熱溶融性部材を8枚重ねて載置することで、熱プレス用のクッション積層体を得た。前記クッション積層体の上方から基板面に対し2MPa、160℃の条件で20分熱プレスした。熱プレス後、柔軟性離形シートと熱溶融性部材を取り除くことで、電磁波遮蔽層が被覆された部品搭載基板を得た。【0124】[実施例2~16、19~21、25~32および比較例1~4]各成分およびその配合量(質量部)、電子部品の搭載間隔、T3の厚みを表1、2に、載置工程プロセス等を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、部品搭載基板を作製した。表1に示す樹脂の配合量は固形分質量である。」
【表1】「
[図:0001393877000001.jpg]
」
【表3】「
[図:0001393877000002.jpg]
」
【図1】「
[図:0001393877000003.jpg]
」
【図2】「
[図:0001393877000004.jpg]
」
ここで、引用文献1に記載されている事項について検討する。
ア 上記【0109】の「導電性フィラー1:「核体に銅、被覆層に銀を使用した鱗片状粒子平均粒子径D50=11.0μm、厚み1.1μm、円形度係数=0.23」(福田金属箔粉工業社製)」、「導電性フィラー2:「核体に銅、被覆層に銀を使用した樹枝状粒子平均粒子径D50=9.0μm、円形度係数=0.12」(福田金属箔粉工業社製)」、「熱硬化性樹脂:ウレタンウレア樹脂 酸価5[mgKOH/g](トーヨーケム社製)」、「硬化性化合物1:エポキシ樹脂、「JER828」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂 エポキシ当量=189g/eq)三菱化学社製」、「硬化性化合物2:エポキシ樹脂、「デナコールEX212」(2官能エポキシ樹脂 エポキシ当量=151g/eq)ナガセケムテックス社製」との記載、上記【表1】の記載及び上記【表3】の記載から、引用文献1には、「実施例15として、電磁波遮蔽層は、熱硬化性樹脂のウレタンウレア樹脂100部と、硬化性化合物1のエポキシ樹脂25部と、硬化性化合物2のエポキシ樹脂25部と、導電性フィラー1の鱗片状粒子300部と、導電性フィラー2の樹枝状粒子70部とを含み、マルテンス硬さが15N/mm2である」ことが記載されていると認められる。
イ 上記【0011】の「部品搭載基板101は、基板20、部品の一例である電子部品30および電磁波遮蔽層1等を有する。」との記載、上記【0012】の「基板20は、電子部品30を搭載可能であり」、上記【0013】の「電子部品30は、図1の例においては基板20上に5×4個アレイ状に配置されている。そして、基板20および電子部品30の露出面を被覆するように電磁波遮蔽層1が設けられている。即ち、電磁波遮蔽層1は、電子部品30により形成される凹凸に追従するように被覆されている。」との記載、上記【図1】の記載及び上記【図2】の記載から、引用文献1には、「基板20と、基板20の少なくとも一方の面に搭載された電子部品30と、電子部品30の上面から基板20に亘って被覆され、電子部品30の搭載によって形成された段差部の側面及び基板20の少なくとも一部を被覆する電磁波遮蔽層1と、を備える部品搭載基板101」が記載されていると認められる。
したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「基板と、基板の少なくとも一方の面に搭載された電子部品と、電子部品の上面から基板に亘って被覆され、電子部品の搭載によって形成された段差部の側面及び基板の少なくとも一部を被覆する電磁波遮蔽層と、を備え、電磁波遮蔽層は、熱硬化性樹脂のウレタンウレア樹脂100部と、硬化性化合物1のエポキシ樹脂25部と、硬化性化合物2のエポキシ樹脂25部と、導電性フィラー1の鱗片状粒子300部と、導電性フィラー2の樹枝状粒子70部とを含み、マルテンス硬さが15N/mm2である部品搭載基板。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「発明が解決しようとする課題[0007] しかしながら、上述した補強構造では、フレームの存在により、電子モジュールの薄型化が非常に困難となるとともに、フレームの取り付けスペースの分だけ、電子部品の実装面積が減少する。[0008] よって、電子モジュールの薄型化及び高密度実装が求められている現状では、上述したような補強用のフレームを使用することなく、十分な強度で回路基板と電子部品との接合を補強することが望まれる。[0009] このような要望を実現するためには、より高い弾性率のモールド体を形成することが必要となる。モールド体の弾性率を高くして、モールド体の剛性を大きくすることで、回路基板と電子部品との接合が効果的に補強される。よって、電子モジュールの耐衝撃性が大きくなる。[0010] ところが、電子モジュールの耐衝撃性を向上させるために、モールド体の弾性率を上げたとしても、電子モジュールを薄型化すればするほどに、電子モジュールの反りが大きな問題となる。[0011] その点を詳しく説明すると、モールド体の弾性率を高くするためには、その材料である樹脂組成物に、より多くのフィラーを含ませる必要性が生じる。ところが、樹脂組成物に大量のフィラーを含ませると、それを材料として形成されるモールド体が脆くなる傾向がある。モールド体が脆くなることを避けるためには、ガラス転移点の高い樹脂を樹脂組成物に使用することが必要となる。ところが、そのような樹脂組成物を使用すると、モールド体を形成するために樹脂組成物を加熱するときに、一般的な樹脂製の回路基板では、回路基板に含まれる樹脂がガラス転移点を超えて加熱されることがある。[0012] この場合には、電子モジュールが、高温の状態から冷却されて、モールド体がガラス状態となった時点では回路基板はゴム状態のままである。そして、さらに回路基板が冷却されてガラス状態となるときに、回路基板が収縮すると、電子モジュールに反りが発生する。[0013] 電子モジュールに反りが発生すると、電子モジュールをマザーボード等に実装(二次実装)するときに、回路基板の下面に配置される各電極と、マザーボードの電極との接合状態が電極の位置によって不安定となり、接合不良が発生しやすくなる。その結果、電子モジュールの実装の信頼性が損なわれてしまう。[0014] さらに、二次実装時には、電子モジュールが加熱されるために、反りが緩和される。電子モジュールの反りが大きいと、反りが緩和されるときに、モールド体と回路基板との接合界面に空隙が生じやすくなる。そのような空隙が生じた状態で、二次実装時の加熱により、電子部品と回路基板とを接合しているはんだが溶融すると、上記空隙に、溶融したはんだがにじみ出す現象(いわゆる、はんだフラッシュ)が発生する。[0015] そこで、本発明は、耐衝撃性が高く、かつ厚さ0.3~1.0mmの薄い回路基板を含むにもかかわらず、反りが抑制された電子モジュールを提供することを目的とする。」
「発明の効果[0018] 本発明によれば、耐衝撃性が高く、かつ厚さ0.3~1.0mmの薄い回路基板を含むにもかかわらず、反りが抑制された電子モジュールを提供することができる。」
「[0030] 以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。(実施形態1)図1に、本発明の実施形態1に係る電子モジュールの概略構成を断面図により示す。[0031] 図示例の電子モジュール10は、例えばプリント配線板からなる、樹脂(第1樹脂)を含む回路基板12と、回路基板12の上面(第1表面)に実装された所定数(図示例では2個)の電子部品14と、回路基板12の上面で電子部品14を封止する、樹脂(第2樹脂)を含むモールド体16と、モールド体16を包み込むように、その表面に形成された、樹脂(第3樹脂)を含むシールド層28とを備える。」
「[0044] シールド層28は、第3樹脂と、導電体のフィラーとの混合物から形成するのが好ましい。第3樹脂は、エポキシ樹脂等とするのが好ましい。シールド層28の250℃における線膨張係数(α2)は、35~40ppm/℃であるのが好ましい。常温での弾性率は、3~7GPaであるのが好ましい。」
【図1】「
[図:0001393877000005.jpg]
」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「基板」及び「電子部品」は、それぞれ、本願発明1の「基板」及び「電子部品」に相当する。また、引用発明の「電磁波遮蔽層」は、電磁波をシールドする部材であるといえるから、本願発明1の「電磁波シールド部材」に相当する。さらに、引用発明の「部品搭載基板」は、電子部品を搭載していることは明らかであるから、本願発明1の「電子部品搭載基板」に相当する。そうすると、本願発明1と引用発明は、「基板と」、「前記基板の少なくとも一方の面に搭載された電子部品と」、「前記電子部品上面から前記基板に亘って被覆され、前記電子部品の搭載によって形成された段差部の側面および前記基板の少なくとも一部を被覆する電磁波シールド部材と、を備え」る「電子部品搭載基板」である点で一致する。
イ 引用発明の「熱硬化性樹脂のウレタンウレア樹脂」、「硬化性化合物1のエポキシ樹脂」及び「硬化性化合物2のエポキシ樹脂」は、上記第4の1の【0024】の「バインダー成分の硬さは、主として熱硬化性樹脂と硬化性化合物の硬化物の硬さによる。」との記載、及び電子部品技術分野の技術常識に照らすと、本願発明1の「バインダー樹脂」に相当することは明らかである。また、引用発明の「導電性フィラー1の鱗片状粒子」及び「導電性フィラー2の樹枝状粒子」は、本願発明1の「導電性フィラー」に相当する。さらに、引用発明の「電磁波遮蔽層」は、電磁波をシールドする層であるといえるから、「電磁波シールド層」にも相当する。そうすると、引用発明の「電磁波遮蔽層」は、「熱硬化性樹脂のウレタンウレア樹脂100部と、硬化性化合物1のエポキシ樹脂25部と、硬化性化合物2のエポキシ樹脂25部と、導電性フィラー1の鱗片状粒子300部と、導電性フィラー2の樹枝状粒子70部とを含」むから、本願発明1の「バインダー樹脂と導電性フィラーを含む」「電磁波シールド層」に相当する。したがって、上記アを踏まえると、本願発明1と引用発明は、「前記電磁波シールド部材は、バインダー樹脂と導電性フィラーを含む電磁波シールド層を有」する点で一致する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「基板と、前記基板の少なくとも一方の面に搭載された電子部品と、前記電子部品上面から前記基板に亘って被覆され、前記電子部品の搭載によって形成された段差部の側面および前記基板の少なくとも一部を被覆する電磁波シールド部材と、を備え、前記電磁波シールド部材は、バインダー樹脂と導電性フィラーを含む電磁波シールド層を有する電子部品搭載基板。」
(相違点1)
電磁波シールド部材において、本願発明1では、「押込み弾性率が1~10GPa」であるのに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。
(相違点2)
電磁波シールド部材のマルテンス硬さにおいて、本願発明1では、「114~312N/mm2」であるのに対し、引用発明では、「15N/mm2」である点。
(相違点3)
本願発明1では、「電磁波シールド部材の表層の水接触角が80~100°」であるのに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。
(相違点4)
本願発明1では、「前記導電性フィラー100質量%中、針状粒子または/およびデンドライト状粒子が0.5~24質量%である」のに対し、引用発明では、「導電性フィラー1の鱗片状粒子300部と、導電性フィラー2の樹枝状粒子70部とを含」む点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討する。
引用文献2には、上記相違点3に係る本願発明1の構成について記載も示唆もない。
また、上記相違点3に係る本願発明1の構成が、本願の優先日前に周知技術であったとはいえない。
さらに、上記相違点3に係る本願発明1の「電磁波シールド部材の表層の水接触角が80~100°」という構成は、いわゆる数値限定を用いて発明を特定しているものであるから、以下、その点について検討する。
本願発明1の「発明が解決しようとする課題」及び「発明の効果」について、本願明細書【0004】-【0006】、【0008】、【0028】には、以下のとおり記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】【0004】電子部品が搭載された基板に対して、例えば以下の方法により電磁波シールド部材が被覆され、電子部品搭載基板が製造される。まず、図20に示すように、基板120に搭載された複数の電子部品130の天面に、電磁波シールド用部材102と離形性クッション部材103の積層体である電磁波シールド用積層体104を載置する。次いで、図21に示すように、電磁波シールド用積層体104を熱圧着させ、電子部品130および基板120の一部を電磁波シールド部材101により被覆する。その後、図22に示すように離形性クッション部材103を剥離し、続いて図23に示すように、基板120を製品単位に個片化する工程を行う。この個片化工程は、例えば、電磁波シールド部材101をダイシング台141に当接させ、この当接状態を維持しながら基板120側から電子部品130の間隙である溝125に対向する位置に対して切断工具142により、基板120および電磁波シールド部材101を切断することにより行われる。【0005】ところが、個片化工程において、電磁波シールド部材101の切断面を基点とした電磁波シールド部材101の捲れであるバリが発生しやすいという問題がある(図23の部分拡大図(i)参照)。電磁波シールド部材101のバリの主たる原因は、個片化工程のダイシング時の高圧水洗等である。また、製造後の電子部品搭載基板は、高湿熱条件下において電磁波シールド部材101と基板120等との密着性が低下してしまう場合がある。このような電磁波シールド部材101のバリの発生および密着性低下は、電子機器の電磁波シールド性の信頼性低下を招来し、回路基板に実装する際の障害となる。【0006】本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、バリの発生を抑制でき、且つプレッシャークッカーテスト(PCT)耐性に優れる信頼性の高い電磁波シールド部材を有する電子部品搭載基板並びに電子機器を提供することを目的とする。」
「【発明の効果】【0008】本発明によれば、バリの発生を抑制でき、且つPCT耐性が優れる信頼性の高い電磁波シールド部材を有する電子部品搭載基板並びに電子機器を提供できるという優れた効果を奏する。」
「【0028】電磁波シールド部材1の表層の水接触角は70~110°とすることが好ましい。この範囲とすることにより、製造工程時の電磁波シールド層の損傷をより効果的に抑制することができる。また、電子部品30のハーフダイシング溝25に形成された溝状の凹部に充填された離形性クッション部材を電磁波シールド部材1から剥がす際にバリの発生を抑制できる。電磁波シールド部材の水接触角のより好ましい範囲は75~105°であり、更に好ましい範囲は80~100°である。電磁波シールド部材の水接触角は、電磁波シールド部材を形成する組成物において表面調整剤の添加量によりその数値を調整することができる。電磁波シールド部材1における表面調整剤の添加量が増えるにつれて水接触角の値が大きくなる傾向にある。」
すなわち、本願発明1の課題は、「個片化工程のダイシング時の高圧水洗等によるバリの発生、及び高湿熱条件下における電磁波シールド部材と基板との密着性の低下」であり、その効果は、「バリの発生を抑制でき、且つプレッシャークッカーテスト(PCT)耐性に優れる信頼性の高い電磁波シールド部材を有する電子部品搭載基板を提供すること」である。そして、上記相違点3に係る本願発明1の構成は、本願発明1において当該効果が得られることに寄与するものと解される。
一方、引用発明の「発明が解決しようとする課題」及び「発明の効果」については、上記第4の1の【0005】-【0006】及び【0008】に記載されているとおりであり、すなわち、引用発明の課題は、「汎用性または処理工程の煩雑さ、電子部品の段差部分や凹凸箇所において電磁波遮蔽層の割れが発生しやすい、という電磁波シールド性の品質の課題、凹部の埋め込み性が不足しやすい問題、側面のグランド部への接続性の問題、及び個片化後のICチップを搬送する過程において搬送機等に接触し電磁波遮蔽層に傷がつきやすい問題」であり、その効果は、「高品質で被覆性および耐スクラッチ性が高い電磁波遮蔽層を提供できる電磁波遮蔽シートおよび積層体、並びに前記電磁波遮蔽層を有する部品搭載基板を提供できること」である。
当該技術分野の技術常識に照らしつつ、両者の課題及び効果を比較すると、課題が異なり、有利な効果が異質であることは明らかであり、また、本願発明1が奏する効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び本願優先日の技術水準から当業者が予測できたものであるとはいえない。したがって、上記相違点3に係る本願発明1の構成とすることが単なる設計的事項であるとはいえない。
なお、本願発明1と引用発明との相違は、数値限定の有無のみで、課題が異なり、有利な効果が異質である場合に該当するから、数値限定に臨界的意義があることは求められない。
したがって、当業者といえども、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項から、上記相違点3に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
よって、上記相違点1、2、4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2-5について
本願発明2-5は、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3 本願発明6について
本願発明6は、本願発明1-5のいずれかを引用する「電子機器」の発明であり、実質的に、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-6は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-006433