2022-005936
反射型スクリーン
- 審判番号
- 2022-005936
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-526983外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年04月20日
- 審決日
- 2023年01月23日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (G03B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 16項目
1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
本願は、平成30年6月27日(優先権主張 平成29年6月30日)を国際出願日とする日本語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
(同年 2月 8日 :原査定の謄本の送達)
同年 4月20日 :審判請求書の提出
2 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明は、令和3年10月25日に提出された手続補正書により補正された請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。
以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。
「【請求項1】一方の主表面に凹凸面を有する透明部材と、前記透明部材の前記凹凸面とは反対側の主表面に設けられる光散乱層とを有し、前記透明部材は、少なくともガラス板を含み、続きを表示(全12行)前記透明部材の前記凹凸面は、前記ガラス板の凹凸面であるか、又は前記ガラス板の凹凸面に倣う被覆層の凹凸面であり、前記透明部材の前記凹凸面は、0.0040≦Ra/RSm≦0.010・・・(1)Sku≦3.5・・・(2)Ra:算術平均粗さRSm:粗さ曲線要素の平均長さSku:クルトシスを満たす、反射型スクリーン。」
3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由2(進歩性)の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性の欠如)
本願発明は、本願の優先日前に発行された下記の引用文献2に記載された発明及び引用文献1、3、4に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
4 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
(1) 引用文献2に記載された事項と引用発明の認定
ア 引用文献2の記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2(国際公開第2017/073512号)には、以下の記載がある。下線は合議体によるもので、後記の引用発明の認定において直接用いるところに付してある。以下同様である。
(ア) [0001]~[0011]
「[0001] 本発明は、反射型スクリーンに関する。背景技術[0002] 近年、インクによる書込みとその書込みの消去が行われる凹凸面を前面に有し、凹凸面に対し前方から映像が投映される、反射型スクリーンが開発されている(例えば、特許文献1参照)。投影された映像に対し、インクによる書込みが可能である。[0003] 特許文献1に記載の反射型スクリーンは、ガラス板と、光拡散性塗料または顔料を含む層とを有する。ガラス板は、表面に凹凸面を有し、凹凸面への文字や図形の書込みとその書込みの消去が可能とされている。光拡散性塗料または顔料を含む層は、ガラス板の背面に形成され、ガラス板の表面に入射した光を反射する。続きを表示(全28行)先行技術文献特許文献[0004]特許文献1:日本国特開2003-237295号公報(段落0011、0013、0014)発明の概要発明が解決しようとする課題[0005] 特許文献1に記載の反射型スクリーンは、投影された映像の光の大部分を拡散反射のみによって反射させる。そのため、映像がぼやけやすく、映像視認性が低かった。[0006] また、従来、凹凸面の高低差が大きすぎると凹の内部からインクが除去しにくく、凹凸面の高低差が小さすぎるとホットスポットが生じやすく、書き込みの消去性の向上と、ホットスポットの発生の抑制との両立が困難であった。[0007] ここで、ホットスポットとは、反射型スクリーンに対し映像が投映されたときに反射型スクリーンの中心部などが明るく光って見える現象である。この現象は、反射型スクリーンの前面が入射光を正反射することで生じる。[0008] 本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、映像視認性を向上した、反射型スクリーンの提供を第1の目的とする。また、本発明は、インクによる書込みの消去性を向上すると共にホットスポットの発生を抑制した、反射型スクリーンの提供を第2の目的とする。課題を解決するための手段[0009] 上記第1の目的を達成するため、本発明の第1の態様によれば、インクによる書込みとその書込みの消去が行われる凹凸面を前面に有し、前記凹凸面に対し前方から映像が投映される、反射型スクリーンであって、前記前面から前記前面の反対面である後面に向けて、前記映像の光を透過する透明板、前記透明板を透過した光を散乱する光散乱層、および前記光散乱層からの光を前記光散乱層に向けて反射する光反射層をこの順で有し、前記光散乱層は前記透明板に密着しており、前記光散乱層の内部透過率が21%~70%である、反射型スクリーンが提供される。[0010] 上記第2の目的を達成するため、本発明の第2の態様によれば、インクによる書込みとその書込みの消去が行われる凹凸面を前面に有し、前記凹凸面に対し前方から映像が投映される、反射型スクリーンであって、前記凹凸面は、平面視において前記凹凸面の全面積の20%を占め前記凹凸面の外周縁から一定の幅を有する枠状の外周部と、平面視において前記外周部で囲まれ前記凹凸面の全面積の残りの80%を占める中央部とを有し、前記中央部のうちの、任意の縦50mm、横50mmの正方形の範囲において、下記式(1)、(2)が成立する、反射型スクリーンが提供される。Rcave/RSmave≦0.64・・・(1)Rcave≧1μm・・・(2)Rcave:粗さ曲線要素の平均高さRcの10点平均RSmave:粗さ曲線要素の平均長さRSmの10点平均発明の効果[0011] 本発明の第1の態様によれば、映像視認性を向上した、反射型スクリーンが提供される。また、本発明の第2の態様によれば、インクによる書込みの消去性を向上すると共にホットスポットの発生を抑制した、反射型スクリーンが提供される。」
(イ) [0014]~[0022]、[図1]、[図2]
「[0014] 図1は、一実施形態による反射型スクリーンの正面図である。図1において、点線は凹凸面13の外周部13aと凹凸面13の中央部13bとの境界線を示す。境界線は、便宜上図示するものであり、実際に目で確認できるものではなくてよい。図2は、一実施形態による反射型スクリーンの上面図である。図2において、Pはプロジェクタ、U1は反射型スクリーン10の中心部正面に臨むユーザ、U2はプロジェクタPから反射型スクリーン10への入射光の入射角と同じ反射角の反射光を観察するユーザを示す。図3は、一実施形態による反射型スクリーンの断面図である。[0015] 反射型スクリーン10は、前面11と、前面11の反対面である後面12とを有し、前面11に凹凸面13を有する。凹凸面13に対しインクによる書込みとその書込みの消去が行われる。インクによる書込みには、専用マーカなどの筆記具、プリンタヘッドなどが用いられる。その書込みの消去には、字消具、溶剤などが用いられる。また、凹凸面13に対し前方から映像が投映される。映像の投映には、プロジェクタPなどが用いられる。[0016] 反射型スクリーン10は、不図示の枠で取り囲まれてもよい。その枠には吊り下げ具や脚が設けられてもよく、脚にはキャスターが取付けられてもよい。反射型スクリーン10は、例えば室内で使用される。尚、反射型スクリーン10の使用場所は、特に限定されない。例えば反射型スクリーンは、乗り物や建物の壁材などに適用されてもよい。[0017] 凹凸面13は、図1~図2では前面11の全面を占めているが、前面11の一部のみを占めていてもよい。後者の場合、前面11の残部は凹凸のない平滑面であってよい。また、凹凸面13の数は複数でもよく、複数の凹凸面13が間隔をおいて配置されてもよい。続きを表示(全14行)[0018] 凹凸面13の形状は、図1では長方形である。凹凸面13の縦寸法L1は、例えば300mm以上である。また、凹凸面13の横寸法L2は、例えば500mm以上である。尚、凹凸面13の形状は、多種多様であってよい。[0019] 凹凸面13は、外周部13aと、中央部13bとを有する。外周部13aは、平面視において、凹凸面13の全面積の20%を占め、凹凸面13の外周縁から一定の幅を有する枠状の部分である。平面視において凹凸面13に占める外周部13aの割合が20%になるように、凹凸面13の形状や寸法に応じて外周部13aの幅が決められる。中央部13bは、平面視において、外周部13aで囲まれ、凹凸面13の全面積の残りの80%を占める部分である。[0020] 凹凸面13の中央部13bのうちの、任意の縦50mm、横50mmの正方形の範囲において、下記式(1)、(2)が成立することが好ましい。Rcave/RSmave≦0.64・・・(1)Rcave≧1μm・・・(2)Rcave:粗さ曲線要素の平均高さRcの10点平均RSmave:粗さ曲線要素の平均長さRSmの10点平均粗さ曲線要素の平均高さRc、粗さ曲線要素の平均長さRSmは、それぞれ、日本工業規格(JIS B0601:2013)に準拠してカットオフ値λc=250μmで測定される。Rcは凹凸の高低差を表し、RSmは凹凸の周期を表す。Rcaveは、縦50mm、横50mmの正方形の範囲内の10点で測定したRcの平均である。また、RSmaveは、縦50mm、横50mmの正方形の範囲内の10点で測定したRSmの平均である。測定点は、無作為に抽出する。[0021] 凹凸面13の中央部13bのうちの、任意の縦50mm、横50mmの正方形の範囲において、上記式(1)が成立すれば、凹凸の高低差よりも凹凸の周期の方が十分に長いので、凹の内部からインクが除去しやすく、インクによる書込みの消去が容易である。Rcave/RSmaveは、例えば式(1)に記載の如く0.64以下、好ましくは0.6以下である。[0022] また、凹凸面13の中央部13bのうちの、任意の縦50mm、横50mmの正方形の範囲において、上記式(2)が成立すれば、凹凸の高低差が十分に大きいので、ホットスポットの発生が抑制できる。ホットスポットとは、反射型スクリーン10に対し映像が投映されたときに反射型スクリーン10の中心部などが明るく光って見える現象である。この現象は、反射型スクリーン10の前面11が入射光を正反射することで生じ、図2に示すユーザU2の位置で観察されうる。本実施形態では、凹凸の高低差が十分に大きいので、反射角が適度にばらつき、ホットスポットの発生が抑制できる。Rcaveは、例えば式(2)に記載の如く1μm以上、好ましくは3μm以上である。」
「[図1]、[図2][図:0001396905000001.jpg][図:0001396905000002.jpg]」
(ウ) [0026]~[0038]、[図3]
「[0026] 反射型スクリーン10は、図3に示すように、前面11から後面12に向けて、ガラス板20、光散乱層30、および光反射層40をこの順で有する。ガラス板20が、特許請求の範囲に記載の透明板に対応する。[0027] ガラス板20は、映像の光を透過する。ガラス板20は、無色透明であるが、有色透明であってもよい。ガラス板20のヘーズ(Haze)値は、50%以下である。ガラス板20のヘーズ値が50%以下であれば、十分な透明度が得られる。尚、ガラス板20のヘーズ値は、通常、1%以下である。・・・(中略)・・・[0032] ガラス板20の前面21は、凹凸面を有する。ガラス板20に凹凸面を形成するガラス板の加工方法としては、一般的な加工方法が用いられ、例えば型押し法、エッチング法、ブラスト法などが単独で、または任意の組合せで用いられる。・・・(中略)・・・[0037] ガラス板20の前面21は、露出していてもよいが、図3に示すように被覆層50によって被覆されていてもよい。被覆層50は、ガラス板20の前面21の少なくとも一部を被覆していればよい。[0038] 被覆層50は、その前面51に、ガラス板20の凹凸面に倣う凹凸面を有する。被覆層50の凹凸面に対し、インクによる書込みやその書込みの消去、映像の投映などがなされる。」
「[図3][図:0001396905000003.jpg]」
イ 引用発明の認定
前記アにおいて摘記した事項から、引用文献2には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「前面11と、前面11の反対面である後面12とを有し、前面11に凹凸面13を有する反射型スクリーン10であって、([0015])反射型スクリーン10は、前面11から後面12に向けて、ガラス板20、光散乱層30、および光反射層40をこの順で有し、([0026])ガラス板20は、無色透明であり、([0027])ガラス板20の前面21は、凹凸面を有し、([0032])続きを表示(全14行)ガラス板20の前面21は、露出していてもよいが、被覆層50によって被覆されていてもよく、([0037])被覆層50は、その前面51に、ガラス板20の凹凸面に倣う凹凸面を有しており、([0038])凹凸面13の中央部13bのうちの、任意の縦50mm、横50mmの正方形の範囲において、次の式(1)及び式(2)が成立し、([0020])Rcave/RSmave≦0.64・・・(1)Rcave≧1μm・・・(2)Rcave:粗さ曲線要素の平均高さRcの10点平均RSmave:粗さ曲線要素の平均長さRSmの10点平均上記式(1)が成立することにより、凹凸の高低差よりも凹凸の周期の方が十分に長いので、凹の内部からインクが除去しやすく、インクによる書込みの消去が容易であり、([0021])上記式(2)が成立することにより、凹凸の高低差が十分に大きいので、ホットスポットの発生が抑制できる、([0022])反射型スクリーン。」
(2) 引用文献1及び周知技術1の認定について
ア 引用文献1の記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
原査定の拒絶の理由において引用した引用文献1(特開2013-190523号公報)には、以下の記載がある。
「【0043】スクリーン面としての塗膜層10の表面10aの凹凸形状に関する各計測パラメータは、JIS B 0601:2001に規定されている。前記のような材料構成により表面塗膜層を形成し、さらに、JIS B 0601:2001に規定されている算術平均粗さRaが0.3≦Ra≦4(μm)の範囲にあり、JIS B 0601:2001に規定されている平均山間隔Sm(μm)を、算術平均粗さRaで割った値Sm/Raが、およそ30≦Sm/Ra≦150の範囲にあるような表面凹凸形状とすることにより、マーカーインクの拭き取り性と、ある程度の光拡散反射性を確保することができる。【0044】算術平均粗さRaが0.3(μm)以下になると塗膜層10の表面10aの光沢度が急速に上昇し、その60°鏡面光沢度(後記するJIS Z 8741に基づく)を40以下にすることが困難となる。また、算術平均粗さRaが4以上になると、ペン先がフェルトで構成されたマーカーの磨耗が早くなる。最悪の場合、50回程度の筆記消去でマーカーのペン先が磨耗し、書けなくなる場合がある。また、塗膜層10の表面10aの凹凸が大きくなるので、塗膜層10の表面10aに筆記されたマーカーインクの消去が困難となる。【0045】Sm/Raの値は、70程度が最も望ましい。これに対して、Sm/Raが150以上になると、光拡散反射性が小さくなりすぎ、ホットスポットが生じることにより、映写性が低下する。また、Sm/Raが30以下になると、マーカーインクの消去性が低下する。」
イ 周知技術1の認定
前記アに摘記した引用文献1の記載に例示されるように、次の事項は、本願の優先日前において、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)
[周知技術1]
「スクリーンの凹凸形状をJIS B 0601に規定されている平均山間隔Sm(μm)及び算術平均粗さRaの比を用いて評価し、Sm/Raを所定の値以下とすることでホットスポットを抑制し、所定の値以上とすることでマーカーインクの消去性を確保する技術」
(3) 引用文献3の記載事項及び技術常識1の認定について
折りたたみ中(クリックで表示)
ア 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用した引用文献3(国際公開第01/32440号)には、次の記載がある。
2頁7~24行
「そこで本発明は、反射型スクリーンとしても筆記ボードとしても優れた性能を有する筆記ボ一ド/反射型スクリーン両用シートを提供することを目的とする。即ち、筆記ボードとして用いたときに筆記性および消去性に優れ、また反射型スクリーンとして用いたときに、防眩性に優れ、ホットスポットがない筆記ボード/反射型スクリーン両用シートを提供することを目的とする。発明の開示上記目的を達成する本発明の筆記ボード/反射型スクリーン両用シートは、基材の少なくとも片面に筆記ボード用ペンによって筆記、消去可能な樹脂層を設けてなり、樹脂層はエンボス加工によって凹凸が形成されていることを特徴とする。尚、本発明において、「シート」は、可撓性の有無を問わず、フィルム状のものから薄板状のものまで含むものとして用いる。本発明のシートは、エンボス加工によって凹凸を形成することにより、顔料を用いた場合と異なり、樹脂層内にインクが染み込むことがなく、しかも所望の光拡散性を備えた表面とすることができ、これによって反射型スクリーンとしても筆記ボ一ドとしても優れた性能を備えることができる。またシートの表面に急勾配で深い窪みがある場合には消去性が劣るが、エンボスで形成することにより、このような急勾配で深い窪みをなくすことができる。」
イ 技術常識1の認定
前記アに摘記した引用文献3の記載に例示されるように、次の事項は、本願の優先日前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)
[技術常識1]
「反射型スクリーンシートの表面の凹凸について、急勾配で深い窪みがある場合にはインクの消去性が劣ること。」
(4) 引用文献6の記載事項及び技術常識2の認定について
折りたたみ中(クリックで表示)
ア 引用文献6の記載事項
当審において新たに引用され、本願の優先日前に発行された文献である「ISO 25178-2:2012 Geometrical product specifications (GPS)-Surface texture: Areal-Part 2: Terms, definitions and surface texture parameters」、International Organization for Standardization、2012年4月(以下「引用文献6」という。)のセクション4~4.1.3には、次の記載がある。なお、日本語訳は合議体による。
「4 Field parameter definitionsIn the terminological entries below, each term is followed by its parameter (abbreviated term), then its symbol. Whereas abbreviated terms can contain multiple letters, symbols consist only of a single letter with subscripts as needed. Symbols are used in the equations shown in this document. The reason for this differentiation is to avoid misinterpretation of compound letters as an indication of multiplication between quantities in equations. The parameters (abbreviated terms) are used in product documentation, drawings and data sheets.4.1 Height parametersAll height parameters are defined over the definition area.続きを表示(全12行)・・・(中略)・・・4.1.3kurtosis of the scale-limited surfaceSkuSkuquotient of the mean quartic value of the ordinate values and the fourth power of Sq within a definition area (A)[図:0001396905000004.jpg]」
<日本語訳>
「4 領域パラメータの定義以下の用語集において、各用語の次に、そのパラメータ(略語)、そして記号が続いている。略語が複数の文字を含むのに対して、記号は唯一つの文字から成り、必要に応じて添え字を伴う。記号は、この規格に示す等式の中で使用する。この違いの理由は、複合文字を等式中の数量間の乗法表示と誤解することを避けるためである。パラメータ(略語)は、製品文書、図面及びデータシートに使用される。4.1 高さ方向のパラメータ全ての高さ方向のパラメータは、基準領域全体で定義する。続きを表示(全12行)・・・(中略)・・・4.1.3輪郭曲面のクルトシスSkuSkuSqの四乗によって無次元化した、基準領域(A)における、縦座標値の四乗平均。[図:0001396905000005.jpg]」
イ 技術常識2の認定
前記アに摘記した引用文献6の「ISO 25178-2:2012 Geometrical product specifications (GPS)-Surface texture: Areal-Part 2: Terms, definitions and surface texture parameters」にも示されているように、次の事項は、本願の優先日前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識2」という。)。
[技術常識2]
「表面粗さ測定における高さ方向のパラメータとしてのクルトシスSku」
(5) 引用文献7の記載事項及び技術常識3の認定について
折りたたみ中(クリックで表示)
ア 引用文献7の記載事項
当審において新たに引用され、本願の優先日前に発行された文献である「JIS B 0601 : 2013 製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語,定義及び表面性状パラメータ 解説」、日本規格協会、2013年3月21日(以下「引用文献7」という。)の37ページには、次の記載がある。
「クルトシスRkuは,粗さ曲線の確率密度関数のとがり(鋭さ)の度合を示す数値[統計用語では,せん(尖)度]を表す。解説図4a)のように,非常にとがった山及び深い谷が所々にある粗さ曲線では,確率密度関数の分布形は鋭くとがり,Rkuは,3より大きな値を示す。これに対して,解説図4b)のようになだらかな山及び谷からなる粗さ曲線では確率密度関数の分布形はなだらかになり,Rkuは,3より小さくなる。このように,Rkuは確率密度関数のとがり(鋭さ)の度合を表すのに有効である。Rkuが3より大きいほど,異常に高い山及び深い谷が所々に存在することになり,2物体が接触するような場合に考慮したほうがよいパラメータとされている。なお,確率密度関数が正規分布に従うときは,Rku=3である。」
「[図:0001396905000006.jpg]」
イ 技術常識3の認定
前記アに摘記した引用文献7の「JIS B 0601 : 2013」の解説文書にも示されているように、次の事項は、本願の優先日前において、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識3」という。)。
[技術常識3]
「表面のとがった山及び深い谷の存在の度合いに関する表面性状をクルトシスRkuを用いて評価することができ、非常にとがった山及び深い谷が所々にある粗さ曲線ではRkuは3より大きな値を示し、なだらかな山及び谷からなる粗さ曲線ではRkuは3より小さくなること。」
5 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
請求項1における本願発明の特定の順に沿って、本願発明と引用発明を対比する。
ア 「反射型スクリーン」の発明である本願発明と、「反射型スクリーン10」の発明である引用発明は、「反射型スクリーン」の発明である点で一致する。
イ(ア) 引用発明の「無色透明」の「ガラス板20」は、本願発明の「透明部材」に相当する。
(イ) また、引用発明の「ガラス板20の前面21」は、本願発明の「透明部材」の「一方の主表面」に相当する。
(ウ) さらに、引用発明の「ガラス板20の前面21」の「凹凸面」は、本願発明の「透明部材」の「一方の主表面」の「凹凸面」に相当する。
(エ) 前記(ア)から(ウ)の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、「一方の主表面に凹凸面を有する透明部材」を有する点で一致する。
ウ(ア) 引用発明の「光散乱層30」は本願発明の「光散乱層」に相当する。
(イ) 引用発明においては、「反射型スクリーン10は、前面11から後面12に向けて、ガラス板20、光散乱層30、および光反射層40をこの順で有し」ているから、引用発明の「光散乱層」は、ガラス板20の凹凸面が設けられた「前面21」とは反対側に設けられている。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、「前記透明部材の前記凹凸面とは反対側の主表面に設けられる光散乱層」を有する点で一致する。
エ 前記イにおける検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記透明部材は、少なくともガラス板を含[む]」点で一致する。
オ 引用発明においては、「ガラス板20の前面21は、露出していてもよいが、被覆層50によって被覆されていてもよ」く、「被覆層50は、その前面51に、ガラス板20の凹凸面に倣う凹凸面を有して」いることから、引用発明の「ガラス板20の前面21」を「被覆」する「被覆層50」は、本願発明の「前記ガラス板の凹凸面に倣う被覆層」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記透明部材の前記凹凸面は、前記ガラス板の凹凸面であるか、又は前記ガラス板の凹凸面に倣う被覆層の凹凸面であ[る]」点で一致する。
カ 本願発明の式(1)及び式(2)について
(ア) 引用発明のパラメータに関する数値限定とその技術的意義
a 引用発明においては、凹凸面13の中央部13bのうちの、任意の縦50mm、横50mmの正方形の範囲において、次の式(1)及び式(2)が成立することが記載されている。
Rcave/RSmave≦0.64・・・(1)
Rcave≧1μm・・・(2)
b そして、引用発明において、前記式(1)及び式(2)の技術的意義は次の(a)及び(b)のとおりである。
(a) 上記式(1)が成立することにより、凹凸の高低差よりも凹凸の周期の方が十分に長いので、凹の内部からインクが除去しやすく、インクによる書込みの消去が容易である。
(b) 前記式(2)が成立することにより、凹凸の高低差が十分に大きいので、ホットスポットの発生が抑制できる。
(イ) 表面粗さ測定のパラメータについて
a 引用発明の「Rcave」と本願発明の「Ra」について
(a) 引用発明の「Rcave」は粗さ曲線要素の平均高さRcの10点平均であることから、山及び谷の高さに関するパラメータである。
(b) 一方、本願発明の「Ra」は、凹凸面の算術平均粗さを意味し、これは所定距離間における凹凸面の高さの平均を示すものであり、高さに関するパラメータであると認められる。
(c) したがって、本願発明の「Ra」と引用発明の「Rcave」は、「凹凸面の高さに関するパラメータ」である点で共通する。
b 引用発明の「RSmave」と本願発明の「RSm」について
(a) 引用発明の「RSmave」は、粗さ曲線要素の平均長さRSmの10点平均である。
(b) 一方、本願発明の「RSm」は、粗さ曲線要素の平均長さを意味し、明細書の【0023】を参照すると、「倍率50倍で縦0.26mm横0.26mmの長方形の領域をレーザ顕微鏡で撮影し、撮影した画像において無作為に描画される10本の直線のそれぞれに沿って測定され、その測定値の平均値を採用」している。
(c) したがって、本願発明の「RSm」と引用発明の「RSmave」は、具体的な測定手法において相違するものの、「凹凸面の粗さ曲線要素の平均長さを示すパラメータ」である点で共通する。
(ウ) 本願発明における式(1)の右側の不等式について
a 本願発明において、式(1)の右側の不等式において「Ra/RSm」の上限を定めた技術的意義について理解するために本願明細書の【0028】を参照すると、次のとおり記載されている。
「凹凸面23のRa/RSmが0.010以下であると、凹凸の周期に比べて凹凸の高低差が大き過ぎないため、凹凸面23に書き込まれたインクが除去しやすく、高速書き消し試験において離型剤の不足した書き込みを十分に消去できる。」
b 本願発明においては「Ra/RSm≦0.010」を満たし、引用発明においては「Rcave/RSmave≦0.64」を満たすところ、前記(イ)a及びb並びに前記(ア)b及び上記aの点も併せて考慮すると、本願発明と引用発明は次の点で共通している。
「前記透明部材の前記凹凸面に書き込まれたインクが除去しやすくなるという観点から、前記透明部材の凹凸面の高さに関するパラメータとその粗さ曲面要素の平均長さとの比を示すパラメータが所定の上限値以下である」点。
(エ) 本願発明における式(2)の不等式について
a(a) 本願発明のクルトシス「Sku」は、明細書の【0030】~【0032】に記載されるように、凹凸の表面の鋭さの尺度である尖度を意味するパラメータであって表面形状に関するパラメータであると認められる。
(b) 式(2)の不等式の技術的意義について理解するために本願明細書の【0037】を参照すると、次のとおり記載されている。
「凹凸面23のSkuが3.5以下であると、頂点が平らな凸や凹が十分に多いので、インクが除去しやすく、連続書き消し試験において離型剤の膜の形成による色残りを低減できる。凹凸面23のSkuは、好ましくは2.0以上である。」
(c) そして、前記(イ)を踏まえると、引用発明の「Rcave」及び「RSmave」は、少なくとも凹凸の表面形状に関するパラメータであると認められ、本願発明のクルトシス「Sku」は引用発明の「Rcave」及び「RSmave」と、「凹凸面の表面形状に関するパラメータ」である点で共通する。
b 以上を踏まえると、式(2)の「Sku≦3.5」を満たす本願発明と、「Rcave/RSmave≦0.64」を満たす引用発明は、「前記透明部材の前記凹凸面に書き込まれたインクが除去しやすくなるという観点から、前記透明部材の凹凸面の表面形状に関するパラメータが満たすべき範囲を定めた」点で共通する。
(オ) 前記(ウ)及び(エ)の検討結果のまとめ
前記(ウ)及び(エ)をまとめると、本願発明と引用発明は、次の点で共通する。
「前記透明部材の前記凹凸面に書き込まれたインクが除去しやすくなるという観点から、前記透明部材の凹凸面の表面形状に関するパラメータが満たすべき範囲を定めたものであり、少なくとも前記透明部材の凹凸面の高さに関するパラメータとその粗さ曲面要素の平均長さとの比を示すパラメータが所定の上限値以下である」点。
(カ) 本願発明における式(1)の左側の不等式について
a 前記(イ)及び(エ)を踏まえると、引用発明の「Rcave≧1μm」についても「透明部材」の「凹凸面」の「表面形状に関するパラメータ」が所定の数値範囲を満たすことを意味することから、式(1)の不等式の左側である「0.0040≦Ra/RSm」を満たす本願発明と、「Rcave≧1μm」の条件を満たす引用発明は、「前記透明部材の凹凸面の表面形状に関するパラメータが満たすべき範囲を定めた」点で共通する。
b 本願発明の式(1)の左側の不等式の技術的意義について理解するために本願明細書の【0025】を参照すると、次のとおり記載されている。
「凹凸面23のRa/RSmが0.0040以上であると、凹凸の周期に比べて凹凸の高低差が十分に大きいため、凹凸面23において、プロジェクタPからの入射光が拡散反射されやすく、光反射層50からの反射光が拡散透過されやすい。これにより、ホットスポットの発生を抑制できる。」
c 前記a及びb並びに前記(ア)を踏まえると、本願発明と引用発明は、次の点で共通している。
「ホットスポットの発生を抑制する観点から、前記透明部材の凹凸面の表面に関するパラメータが満たすべき範囲を定めた」点。
(2) 一致点及び相違点の認定
前記(1)の対比分析の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次のアの一致点において一致し、後記イの相違点において相違する。
ア 一致点
「 一方の主表面に凹凸面を有する透明部材と、前記透明部材の前記凹凸面とは反対側の主表面に設けられる光散乱層とを有し、前記透明部材は、少なくともガラス板を含み、前記透明部材の前記凹凸面は、前記ガラス板の凹凸面であるか、又は前記ガラス板の凹凸面に倣う被覆層の凹凸面であり、前記透明部材の前記凹凸面に書き込まれたインクが除去しやすくなるという観点から、前記透明部材の凹凸面の表面形状に関するパラメータが満たすべき範囲を定めたものであり、少なくとも前記透明部材の凹凸面の高さに関するパラメータとその粗さ曲面要素の平均長さとの比を示すパラメータが所定の上限値以下であり、ホットスポットの発生を抑制する観点から、前記透明部材の凹凸面の表面形状に関するパラメータが満たすべき範囲を定めたものである、反射型スクリーン。」である点。
イ 相違点
(ア) 相違点1
前記透明部材の前記凹凸面に書き込まれたインクが除去しやすくなるという観点から定めた、前記透明部材の凹凸面の表面形状に関するパラメータが、
本願発明においては、
「Ra/RSm≦0.010」を満たし(以下「部分相違点1A」という。)、かつ、
「Sku≦3.5」を満たす(以下「部分相違点1B」という。)ことであるのに対して、
引用発明においては、
「Rcave/RSmave≦0.64」を満たすことであり、
クルトシス「Sku」については、限定がない点。
(イ) 相違点2
ホットスポットの発生を抑制する観点から定めた、前記透明部材の凹凸面の表面形状に関するパラメータが、
本願発明においては、「0.0040≦Ra/RSm」を満たすことであるのに対して、
引用発明においては、「Rcave≧1μm」を満たすことである点。
6 判断
(1) 本願発明の想到容易性についての判断
ア 相違点について
(ア) 部分相違点1A(本願発明の式(1)の右側の不等式(Ra/RSm≦0.010))について
a 「スクリーンの凹凸形状をJIS B 0601に規定されている平均山間隔Sm(μm)及び算術平均粗さRaの比を用いて評価し、Sm/Raを所定の値以上とすることでマーカーインクの消去性を確保する技術」は、周知技術である(前記4(2)イの「周知技術1」参照)。
ここで、Smは本願発明のRSmと同義であり、また、Sm/Raで評価するか、この値の逆数であるRa/Smを用いて評価するかは、当業者が適宜選択すべき設計上の事項にすぎず、実質的な相違はない。
したがって、逆数であるRa/Smを用いて評価する場合に、前記周知技術1が「Ra/Smを所定の値以下とすることでマーカーインクの消去性を確保する」ことと等価であることは、自明である。
b また、そもそも、引用発明の「Rcave」及び本願発明の「Ra」はいずれもJIS B 0601で定められた評価方法であって、表面の形状を表すのによく使われる指標であるから、引用発明の「Rcave」に代えて「Ra」を採用して、同じ目的の観点から数値範囲を好適化することは、当業者が適宜なすべき設計事項にすぎない。
c したがって、「透明部材の前記凹凸面に書き込まれたインクが除去しやすくなる」という引用発明と目的を共通する周知技術1を参照して、引用発明において、「Rcave」に代えて「Ra」を採用し、平均山間隔RSm(μm)及び算術平均粗さRaの比であるRa/RSmを用いて評価し、かつ、所定の上限値を定めることは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
d なお、こうしたパラメータの好適な値は、使用するインクや被覆層、凹凸が設けられた透明部材の材料にも依存するものであるから、許容範囲をどの程度に定めるかは、これらに合わせて設定すべき設計事項にすぎない。
e よって、引用発明において、前記透明部材の前記凹凸面に書き込まれたインクが除去しやすくなるという観点から、Ra/RSmのパラメータを選択採用して好適化し、その好適な範囲として上限値を求め、部分相違点1Aに係る構成を導き出すことは、当業者にとっては、通常の創作能力の発揮にすぎない。
(イ) 部分相違点1B(本願発明の式(2))について
a 前記5(1)カ(エ)において検討したとおり、本願発明の式(2)は「前記透明部材の前記凹凸面に書き込まれたインクが除去しやすくなるという観点から定めたものである。
b 「反射型スクリーンシートの表面の凹凸について、急勾配で深い窪みがある場合にはインクの消去性が劣ること」は、技術常識である(前記4(3)イの「技術常識1」参照)。したがって、引用発明において、インクの消去性を向上させるために急勾配の深い窪みが生じないように凹凸を形成すべきことは、当業者には自明である。
c(a) ここで、「表面粗さ測定における高さ方向のパラメータとしてのクルトシスSku」は、技術常識である(前記4(4)イの「技術常識2」参照)。
(b) そして、「表面のとがった山及び深い谷の存在の度合いに関する表面性状をクルトシスRkuを用いて評価することができ、非常にとがった山及び深い谷が所々にある粗さ曲線ではRkuは3より大きな値を示し、なだらかな山及び谷からなる粗さ曲線ではRkuは3より小さくなること」についても、技術常識である(前記4(5)イの「技術常識3」参照)ところ、前記(a)で述べた「クルトシスSku」は、粗さ曲線を評価する二次元パラメータであるRkuを三次元に拡張したパラメータに相当し、Rkuと同様に、「表面のとがった山及び深い谷の存在の度合いに関する表面性状をクルトシスSkuを用いて評価することができ、非常にとがった山及び深い谷が所々にある粗さ曲線ではSkuは大きい値を示し、なだらかな山及び谷からなる粗さ曲線ではSkuは小さくなること」は、当業者には自明である。
d したがって、引用発明において、技術常識1を踏まえて、インクの消去性を向上させる観点から、スクリーンの表面の凹凸について、急勾配の深い窪みが生じないように凹凸を形成するに際して、「表面のとがった山及び深い谷の存在の度合いに関する表面性状」を表す周知の指標値である「クルトシスSku」を用いて評価しつつ好適化し、その好適な範囲として上限値を求め、部分相違点1Bに係る構成を導き出すことは、当業者にとっては、通常の創作能力の発揮にすぎない。
(ウ) 相違点2(本願発明の式(1)の左側の不等式(0.0040≦Ra/RSm))について
a 引用発明においては、式(2)の「Rcave≧1μm」が成立することにより、「凹凸の高低差が十分に大きいので、ホットスポットの発生が抑制できる」ものであるところ、ホットスポットは光の拡散性に起因するものであるから、凹凸の高低差だけでなく、JIS B 0601で定められた評価方法である凹凸間の平均長さ「RSm」も凹凸面による拡散性に影響を与える要素であることは、当業者には自明である。
また、前記(ア)bにおいて説示したとおり、「Rcave」から「Ra」に代えて評価することも、当業者が適宜なし得ることである。
b そして、「スクリーンの凹凸形状をJIS B 0601に規定されている平均山間隔Sm(μm)及び算術平均粗さRaの比を用いて評価し、Sm/Raを所定の値以下とすることでホットスポットを抑制する技術」は、周知技術である(前記4(2)イの「周知技術1」参照)。なお、Sm/Raの逆数で評価することが、周知技術1と等価なことは、前記(ア)aにおいて検討したとおりである。
c そうすると、ホットスポットを抑制するという、引用発明と目的を共通する周知技術1を参照して、引用発明において、「Rcave」に代えて、平均山間隔RSm(μm)及び算術平均粗さRaの比であるRa/RSmを用いて評価し、かつ、所定の下限値を定めることは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
d なお、こうしたパラメータの好適な値は、使用するインクや被覆層、凹凸が設けられた透明部材の材料に依存するものであるから、許容範囲をどの程度に定めるかは、これらに合わせて設定すべき設計事項にすぎない。
e よって、引用発明において、ホットスポットの発生を抑制するという観点から、Ra/RSmのパラメータを選択採用して好適化し、その好適な範囲として下限値を求め、相違点2に係る構成を導き出すことは、当業者にとっては、通常の創作能力の発揮にすぎない。
(エ) 小括
以上検討のとおり、部分相違点1A及び部分相違点1B並びに相違点2に係る構成を導き出すことは、いずれも、当業者にとっては、通常の創作能力の発揮にすぎないものであり、格別のものではない。
イ 総合評価
前記アで検討したとおり、前記相違点に係る構成を導き出すことは当業者にとっては、通常の創作能力の発揮にすぎず、格別なものではない。
また、本願発明の奏する効果としては、引用発明、周知技術1及び技術常識1~3からは当業者が予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることができない。
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術1及び技術常識1~3に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
(2) 請求人の主張について
ア 請求人の主張の内容
折りたたみ中(クリックで表示)
審判請求書において、請求人は、次の(ア)及び(イ)の主張をしている。
(ア) 加工対象の違いに基づく動機付けの欠如
引用文献1、3、4に記載された発明は、引用文献2に記載された発明とは異なり、ガラス板の加工方法ではない。引用文献1には、基材7の上に塗工液を塗布することで、球状微粒子8とマトリックス樹脂9を含む塗膜層10を形成することが記載されている(図2)。引用文献3には、樹脂層の表面に、エンボスロールを加熱・圧接させて、凹凸を形成することが記載されている(実施例1)。引用文献4には、樹脂を含む塗膜の凹凸を、エンボス加工によって形成することが記載されている(請求項1、4)。
引用文献1-4に接した当業者であれば、引用文献2に記載のガラス板の表面に対して、引用文献1に記載の塗工液を塗布するか又は引用文献3、4に記載の樹脂層を形成して樹脂層をエンボス加工することで、「表面をできるだけ平坦にしようとする・・・Ra/RSmの値を好適化」しようとする方が自然である。
「引用文献1に記載の塗工液を塗布するか又は引用文献3、4に記載の樹脂層を形成して樹脂層をエンボス加工する」ことと、「表面をできるだけ平坦にしようとする・・・Ra/RSmの値を好適化」しようとすることと、は一体不可分である。そのため、引用文献1、3、4の「表面をできるだけ平坦にしようとする・・・Ra/RSmの値を好適化」しようとすることだけを取り出して、引用文献2に適応する動機付けはない。
したがって、本願発明は、引用文献1-4に記載された発明から当業者が容易に想到し得るものではない。
(イ) パラメータ達成の困難性について
仮に引用文献1-4に接した当業者が、引用文献2に記載のガラス板の「表面をできるだけ平坦にしようとする・・・Ra/RSmの値を好適化」しようとすることを考えたとしても、引用文献2の実施例の欄(段落[0089]~[0097])に記載のブラスト処理で「0.0040≦Ra/RSm≦0.010」と「Sku≦3.5」の両方を達成することは困難である。
本願発明の実施例の欄によれば、ガラス板の凹凸をブラスト処理により形成する場合、本願発明の「0.0040≦Ra/RSm≦0.010」と「Sku≦3.5」の両方を達成することは困難である(段落[0123]~[0128]及び[0146])。
この点について、審査官は、『引用文献2の段落[0032]には「ガラス板の加工方法としては、一般的な加工方法が用いられ、例えば型押し法、エッチング法、ブラスト法などが単独で、または任意の組合せで用いられる。」と記載されており、ガラス板の処理方法がブラスト処理に限定されていない』と述べられている。
しかしながら、引用文献2の段落[0032]には、「ガラス板の加工方法」として一般的な加工方法が列挙されているにすぎず、ブラスト法よりもエッチング法の方がガラス板の「表面をできるだけ平坦にしようとする・・・Ra/RSmの値を好適化する」課題に適している旨の記載も示唆もない。
引用文献2の実施例ではブラスト法が採用されているので、引用文献1-4に接した当業者であれば、ガラス板の「表面をできるだけ平坦にしようとする・・・Ra/RSmの値を好適化」しようとするのにブラスト法を採用しようと考えると思う。そして、ブラスト法で、「0.0040≦Ra/RSm≦0.010」と「Sku≦3.5」の両方を達成することは困難である。
したがって、本願発明は、引用文献1-5に記載された発明から当業者が容易に想到し得るものではなく、進歩性を有している。
イ 請求人の主張の検討
折りたたみ中(クリックで表示)
(ア) 主張(ア)について
請求人は、「引用文献1-4に接した当業者であれば、引用文献2に記載のガラス板の表面に対して、引用文献1に記載の塗工液を塗布するか又は引用文献3、4に記載の樹脂層を形成して樹脂層をエンボス加工することで、「表面をできるだけ平坦にしようとする・・・Ra/RSmの値を好適化」しようとする方が自然である。」と主張しているところ、引用文献2の[0032]には、「ガラス板の加工方法としては、一般的な加工方法が用いられ、例えば型押し法、エッチング法、ブラスト法などが単独で、または任意の組合せで用いられる。」と記載されており、凹凸形状の製造方法については限定されておらず、当該主張は採用できない。
また、引用発明は、凹凸面の製造方法とはなんら関係なく、「Rcave/RSmave≦0.64・・・(1)」及び「Rcave≧1μm・・・(2)」が成立することでインクによる書込みの消去及びホットスポットの発生の抑制が実現できる発明であって([0020]~[0022]参照)、こうしたパラメータの好適化と製造方法が一体不可分であるとは認められない。
引用文献1の【0043】~【0045】においても、表面形状のパラメータを調整することでホットスポットの抑制、マーカーインクの消去性を達成できることが記載されており、この点は製造方法とは関係なく、パラメータの好適化と製造方法が一体不可分であるとは認められない。
したがって、請求人の「「引用文献1に記載の塗工液を塗布するか又は引用文献3、4に記載の樹脂層を形成して樹脂層をエンボス加工する」ことと、「表面をできるだけ平坦にしようとする・・・Ra/RSmの値を好適化」しようとすることと、は一体不可分である。」という主張は採用できない。
そして、請求人は上記主張を前提として「引用文献1、3、4の「表面をできるだけ平坦にしようとする・・・Ra/RSmの値を好適化」しようとすることだけを取り出して、引用文献2に適応する動機付けはない。」と主張するものの、前述したとおり、前提となる主張は採用できず、また、前記6(1)ア(ア)及び(ウ)で説示したとおり、引用発明に周知技術1を採用する動機付けは十分存在することから、請求人の主張(ア)は採用できない。
(イ) 主張(イ)について
請求人は、「引用文献2の段落[0032]には、「ガラス板の加工方法」として一般的な加工方法が列挙されているにすぎず、ブラスト法よりもエッチング法の方がガラス板の「表面をできるだけ平坦にしようとする・・・Ra/RSmの値を好適化する」課題に適している旨の記載も示唆もない。」と主張しているところ、前記(ア)で説示したとおり、引用発明においてパラメータの好適化と製造方法が一体不可分であるとは認められず、引用発明の課題を達成するために製造方法を限定する必要がないことは明らかである。
そして、引用文献2の[0032]には、「ガラス板の加工方法としては、一般的な加工方法が用いられ、例えば型押し法、エッチング法、ブラスト法などが単独で、または任意の組合せで用いられる。」と記載されており、実施例がブラスト法を用いるものであっても、ガラス板の凹凸の加工方法はブラスト法に限定されるものではないため、請求人の上記主張は採用できない。
また、請求人は「ブラスト法で、「0.0040≦Ra/RSm≦0.010」と「Sku≦3.5」の両方を達成することは困難である。」と主張するが、前記のとおり、引用発明においては凹凸の加工方法をブラスト法に限定するものではなく、また、ブラスト法では表面形状に関するパラメータの条件を達成することが困難であることは、本願発明の進歩性の判断に影響を与えるものではない。
したがって、請求人の前記主張(イ)は採用できない。
7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2022-005936