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特許拒絶査定不服審判

2022-005562

エネルギー貯蔵システムの充電容量算出装置及び方法

審判番号
2022-005562
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-508444外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年04月13日
審決日
2023年08月17日
公報発行日
2024年02月22日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G01R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-508444号「エネルギー貯蔵システムの充電容量算出装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔令和元年8月29日国際公開、WO2019/164263、令和2年10月29日国内公表、特表2020-530905号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 17項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、2019年(平成31年)2月20日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2018年2月20日、2019年2月19日 いずれも韓国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和2年 2月14日 :翻訳文の提出
令和3年 3月31日付け:拒絶理由通知

同年 7月 2日 :意見書、手続補正書の提出

同年12月 2日付け:拒絶査定

(同月13日 :拒絶査定の謄本の送達)

令和4年 4月13日 :審判請求書、手続補正書の提出
同月19日 :手続補正書(方式)の提出

同年 6月 9日付け:前置報告書

同年 9月27日 :上申書の提出

令和5年 1月20日付け:拒絶理由通知書

同年 4月24日 :電話応対(応対記録参照)

同年 5月23日 :意見書、手続補正書の提出

なお、令和5年1月20日付けで当審において通知した拒絶理由通知を、以下「当審拒絶理由通知」といい、これに対して、令和5年5月23日に請求人から提出された意見書を、以下、単に「意見書」という。

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年5月23日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「 【請求項1】
エネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出する方法であって、
前記エネルギー貯蔵システムに一定の値を有する所定の電流を印加する電流印加ステップと、
前記エネルギー貯蔵システムに一定の値を有する所定の電流が印加される間の前記エネルギー貯蔵システムの電圧を測定する第1の電圧測定ステップと、
続きを表示(全13行)
前記エネルギー貯蔵システムに印加されていた、一定の値を有する所定の電流を切った後、エネルギー貯蔵システムの電圧を測定する第2の電圧測定ステップと、
前記第1の電圧測定ステップにおいて測定されたエネルギー貯蔵システムの電圧、第2の電圧測定ステップにおいて測定されたエネルギー貯蔵システムの電圧、及び前記一定の値を有する所定の電流に基づいて、エネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出する抵抗(R)及びキャパシタンス(C)算出ステップと、
を含んでなり、
前記方法は、
前記抵抗(R)及びキャパシタンス(C)算出ステップにおいて算出された前記エネルギー貯蔵システムの抵抗及びキャパシタンスを用いて、拡張カルマンフィルターの状態変数を算出する状態変数算出ステップと、
前記状態変数を前記拡張カルマンフィルターに代入して、前記エネルギー貯蔵システムの充電容量を算出するエネルギー貯蔵システム充電容量算出ステップと、
をさらに含んでなり、
前記電流印加ステップにおいて印加される一定の値を有する所定の電流は、前記エネルギー貯蔵システムの抵抗及びキャパシタンス値が測定可能な最小の電流値から0.1c-rateまでの電流であり、
前記抵抗(R)及びキャパシタンス(C)算出ステップは、温度別のエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)のルックアップテーブルを形成するために、電圧モデル回路を使用して、前記第1の電圧、前記第2の電圧、及び前記所定の電流に基づいて、前記エネルギー貯蔵システムの温度を変更しながらエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を繰り返し算出することを含むことを特徴とするエネルギー貯蔵システムの充電容量算出方法。」

第3 当審拒絶理由通知で指摘した拒絶の理由の概要

当審拒絶理由通知で指摘した拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。

(進歩性の欠如)請求項1~9に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献6:足立修一、丸田一郎、長村謙介「解説:特集 カルマンフィルタを中心とした状態推定の理論から応用まで カルマンフィルタを用いた二次電池の充電率推定」計測と制御、56巻9号2017年9月号691~694頁、2017年9月20日公開
引用文献1:特開2013-178142号公報
引用文献4:国際公開第2014/128904号(技術常識を示す文献)
引用文献7:馬場厚志「モデルに基づくリチウムイオン二次電池の充電率推定に関する研究」学位論文 博士(工学)2013年度慶應義塾大学大学院理工学研究科(技術常識を示す文献)
引用文献8:福井慶一「カルマンフィルタを用いたバッテリーのSOC推定ロジックの開発」MathWorksJapan、アプリケーションエンジニアリング部制御、2015年(周知技術を示す文献)

第4 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等

1 引用文献6に記載された事項及び引用発明の認定

(1) 引用文献6に記載された事項

当審拒絶理由通知において引用した引用文献6(足立修一ほか「解説:特集 カルマンフィルタを中心とした状態推定の理論から応用まで カルマンフィルタを用いた二次電池の充電率推定」)には、以下の事項が記載されている。なお、後記(2)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。

ア タイトル

「カルマンフィルタを用いた二次電池の充電率推定」

イ 第1節

「1. はじめに
近年,電池を電源とするエレクトロニクス機器が増加しており,安全で高効率な電池管理が求められている.そのためには,充電率と呼ばれる電池残量,すなわち,電池の状態の推定が重要であるが,電流と電圧という測定誤差を含む観測データから推定を行う必要がある.ここにカルマンフィルタを応用することが盛んに行われている.本稿では,電池の充電率推定問題に対して,カルマンフィルタを応用した例について解説する.」

ウ 第2節

「2. 電池の状態推定問題
2.1 電池の状態推定とは
一般に電池残量を直接測ることはできない.このことを図1に示したタンクモデルを用いて説明する.
図1においてタンクの高さが電池の満充電容量であり,液面の高さが電池残量である.このとき,電池残量を表わす量として用いられる充電率 (State Of Charge:SOC) は,
続きを表示(全28行)
[図:0001406166000001.jpg]
と定義される.しかし,電池の場合,実際に観測できるものは,タンクから流れる流量(電流に対応)とその圧力(端子電圧に対応)だけである.そのため,電流と端子電圧を用いて何らかの方法で SOC を推定しなければならない.
[図:0001406166000002.jpg]
2.2 充電率の推定
本節では代表的な SOC 推定法について概説し,カルマンフィルタを用いた SOC 推定法が提案されるに至った背景を述べる.
(1) 端子電圧の測定に基づく SOC 推定
端子電圧と SOC の関係を用いて,測定した端子電圧から SOC を算出する方法である.しかし,端子電圧と SOC の関係は電流の履歴や温度などによって変化する.そのため,さまざまな条件のもとで充放電実験を行い,測定したデータをテーブルの形で用意する必要がある.
(2) OCV の測定に基づく SOC 推定
開回路電圧 (Open Circuit Voltage: OCV) と SOCの関係を用いて SOC を算出する方法である.OCV は端子電流が 0 の状態で長時間放置したときの電極間の電位差である.OCV と SOC の間には,図2に示すような SOC-OCV 特性と呼ばれる非線形な関係がある.SOC-OCV 特性は,電池の劣化などによってほとんど変化しないことが知られているので,これを用いれば OCV から SOC を求めることができる.しかし,OCV を測定するには電池の使用後十分時間が経ち平衡状態になるのを待ってから,端子電圧を測る必要がある.そのため,電池の充放電中に SOC を求めることができない.
[図:0001406166000003.jpg]
(3) 電流積算法による SOC 推定
電流積算法は広く実用化されている SOC 推定法であり,クーロンカウント法とも呼ばれる.この方法では,電流を積算することにより電池に出入りする電荷量を求める.電池の総電荷量,すなわち満充電容量で現在の電荷量を割れば SOC が求められる.時刻 t 秒における SOCは,推定開始時刻を t0 秒として,
[図:0001406166000004.jpg]
と表わされる.ただし,FCC は満充電容量である.
電流積算法は簡単で強力な SOC 推定法であるが,積算に頼った方法であるため,積算の初期値や電流センサの誤差,電池の劣化による満充電容量の誤差,自己放電による誤差などの影響を受けるという問題点がある.
(4) モデルに基づく SOC 推定
電圧の測定に基づく推定法や電流積算法の欠点を解決するために近年盛んに研究・開発されているのが,モデルに基づく推定法 (Model-based Estimation) である.
OCV の測定に基づく方法では,SOC-OCV 特性が電池の劣化などによって変化しないことを利用した.この OCV を電池の使用中にも推定することができれば,SOC-OCV 特性を用いて SOC の推定が可能になる.
OCV 推定のために用いられるモデルの多くは図3のような等価回路モデルを考えて,電池の端子電圧 v(t) を
[図:0001406166000005.jpg]
のように表わす.ただし,η(t) は時刻 t における電池の内部インピーダンス Z による電圧降下であり,過電圧と呼ばれる.内部インピーダンス Z が利用できれば過電圧を計算することができ,回路方程式から OCV が計算できる.内部インピーダンス Z は電流を入力,過電圧 η(t) を出力としたシステムとして記述できるので,モデルに基づく推定を適用することで電流と電圧の両方の測定値を用いた,より高度な推定が可能となる.
このようなモデルに基づく SOC 推定では,内部インピーダンス Z を含む電池の挙動を正確に記述した「電池モデル」を用いることと,その電池モデルを正確に推定する「推定ロジック」を用いることが,推定精度向上につながる.そして,その推定ロジックとして主に採用されるのがカルマンフィルタである.本稿では,電池モデルと推定ロジックについて概説した上で,非線形カルマンフィルタを用いた同時推定法の適用法を示す.
[図:0001406166000006.jpg]
」

エ 第3節

「3. 電池モデル
モデルに基づく推定法で用いられる電池モデルとして,さまざまなモデルが提案されているが,ここではカルマンフィルタを適用する際に使われることの多い等価回路モデルについて簡単に述べる.
等価回路モデルでは,図3で示したようなテブナンの等価回路モデルを基本として,OCV と内部インピーダンス Z をさまざまな回路で表現する.たとえば,図4のような多数の RC 並列回路で内部インピーダンスを表現した等価回路モデルが代表例である.
次数 n = 3 とした場合の電池の等価回路モデルを考える.時刻 t での状態変数 x ∈ R4 を
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[図:0001406166000007.jpg]
として,入力 u(t) = i(t),出力 y(t) = v(t) とする.ただし,v1(t) ~ v3(t) はそれぞれ添字に対応したコンデンサでの電圧降下,i(t) は回路全体を流れる電流,v(t) は回路全体の電圧降下である.
このとき,この等価回路モデルの状態空間表現は,
[図:0001406166000008.jpg]
となる.ただし,focv(・) は図2で示した SOC-OCV 特性を表わす非線形関数であり,
[図:0001406166000009.jpg]
である.
[図:0001406166000010.jpg]
」

オ 第4節

「4. 推定ロジック
推定ロジックは,電池モデルのパラメータについて,事前に推定した値を用いるものと逐次的に推定した値を用いるものの2つに分けられる.これらをそれぞれ「状態推定法」と「適応推定法」と呼ぶことにする.図5と図6に状態推定法と適応推定法の構成を模式的に表わした.状態推定法では事前に推定したモデルのパラメータが不変であることを仮定しているので,状態推定を行う際にパラメータが大きく変化している場合には使えないが,任意の入力を用いてパラメータを推定することができるのでパラメータ推定の難易度は低い.それに対して,適応推定法では逐次的にモデルのパラメータを推定していくので,パラメータが大きく変化しても状態推定を行うことができるが,一般に入力に制約がかかるのでパラメータ推定の難易度は高い.
電池モデルのパラメータを既知として SOC 推定を行う状態推定法としては,拡張カルマンフィルタ (Extended Kalman Filter, EKF) による SOC 推定や無香料カルマンフィルタ (Unscented Kalman Filter, UKF) による SOC 推定が提案されている.これらの方法は,パラメータが時間とともに変化しない場合に最も効果を発揮する.しかし,たとえば,電気自動車などの車載環境では使用条件が時々刻々と大きく変化し,それによって電池のパラメータも変化してしまうのでこれらの方法を利用できる状況は限定される.また,電池の個体差などによっても推定精度が大きく左右されてしまう.このようにパラメータを既知とする方法は電池の使用条件によっては必ずしも適切ではない.
一方,電池モデルのパラメータを逐次推定して SOC 推定を行う適応推定法として,Plett は 2004 年と 2006 年にそれぞれ EKF と UKF を用いて SOC とパラメータの同時推定を行う方法を提案した.これらは非線形カルマンフィルタを用いた状態とパラメータの同時推定法を電池の SOC 推定に適用した最初の例である.この Plettの研究を契機に電池の SOC 推定の分野で同時推定が精力的に研究されるようになった.これらの同時推定法を用いれば,高次の非線形モデルのパラメータを逐次推定することができ,SOC の推定精度も高い.
[図:0001406166000011.jpg]
[図:0001406166000012.jpg]
」

カ 第5節

「5. UKF を用いた同時推定法
5.1 同時推定の理論
状態とパラメータの同時推定法について簡単に解説する.これは,システムの状態と未知パラメータをまとめた拡大系を構成し,その拡大系をカルマンフィルタを用いて推定することにより,状態と未知パラメータを同時に推定する方法である.このような同時推定の利点は,パラメータを逐次的に推定しながら,それを反映した状態推定ができることにある.
つぎの離散時間非線形システムを考える.
続きを表示(全21行)
[図:0001406166000013.jpg]
ただし,状態変数を x ∈ Rnx ,未知パラメータを θ ∈ Rnθ ,入力を u(k) ∈ Rnu ,出力を y ∈ Rny とした.また,f(・) と h(・) はベクトル値をとる x(k) と θ(k), u(k) に関する非線形関数とする.さらに,システム雑音 v を N(0, Q) に従う正規性白色雑音,観測雑音 wを N(0, R) に従う v と独立な正規性白色雑音とする.
同時推定法で推定する未知パラメータ θ は,システム雑音 n によってランダムウォークすると仮定する.すなわち,
[図:0001406166000014.jpg]
である.ただし,未知パラメータについてのシステム雑音 n を N (0, Qθ) に従う正規性白色雑音とする.状態変数 x にこの未知パラメータ θ を加えて,拡大状態変数を
[図:0001406166000015.jpg]
のように定義すると,(7), (8) 式は,
[図:0001406166000016.jpg]
という拡大系に書き換えられる.この拡大系に対して非線形カルマンフィルタを適用することで,状態と未知パラメータを同時推定することができる.
5.2 電池への同時推定の適用
具体的に UKF を用いて同時推定を行う手順を示す.電池モデルとして,図4に示した等価回路モデルで次数 n = 3 とした場合を用いることにする.この電池モデルにはいくつかの未知パラメータが含まれるが,ここでは簡単のため,直達抵抗 R0 のみを未知パラメータとし,他のパラメータは既知であるとする.(5),(6) 式を拡大系に書き直すと,
[図:0001406166000017.jpg]
となる.ただし,この拡大系の状態変数 z は,
[図:0001406166000018.jpg]
であり,
[図:0001406166000019.jpg]
である.(13),(14) 式を離散化して UKF のアルゴリズムを適用すれば良い.」

キ 第6節

「6. カルマンフィルタを適用するための工夫
電池内部の物理現象は,非線形な現象であり,数ミリ秒から数千秒といった幅広い時定数のダイナミクスを有している.そのため,モデルも推定精度を確保するために複雑なものとなり,カルマンフィルタを用いる際にしばしば数値計算の精度が問題となる.
たとえば,カルマンフィルタの逐次的な計算過程において,丸め誤差などの数値計算上の誤差に起因して,推定値が発散してしまうという現象が広く知られている.この点に対処するために平方根フィルタを取り入れたカルマンフィルタが古くから提案されている.この平方根フィルタを用いると,倍精度浮動小数点演算を用いた通常のカルマンフィルタと同等の計算精度を単精度浮動小数点演算を用いて得ることができる.EKF や UKF についてもこの平方根フィルタ化がなされており,計算精度を得るためにこれらの利用も考慮すべきである.
また,電池モデルのパラメータのオーダの差が大きいので,同時推定法の場合には桁落ちが発生することが多い.これに対処するために正規化や対数化などを行って,パラメータのオーダを揃える方法も有用である.」

(2) 引用発明の認定

前記(1)において摘記した事項から、引用文献6には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

<引用発明>

「拡張カルマンフィルタ(EKF)を用いた二次電池の充電率(SOC)の推定法であって、(タイトル、2.1、4.)
モデルに基づく推定法 (Model-based Estimation) であり、(2.2(4))
電池モデルとして、後記の図4の多数の RC 並列回路で内部インピーダンスを表現した等価回路モデルを用い、(3.)
ここで開回路電圧(OCV)であり、(2.2(2))
次数n=3とした場合の電池の等価回路モデルを考えるときには、時刻 t での状態変数xを、SOC(t)とコンデンサの電圧降下v1(t)~v3(t)からなるベクトルとするものであり、(3.)
推定ロジックは、電池モデルのパラメータについて事前に推定した値を用いて状態推定を行う「状態推定法」又は電池モデルのパラメータについて逐次的に推定した値を用いて状態推定を行う「適応推定法」によりパラメータの推定を行うものである、(4.、図5、図6)
SOCの推定法。
[図:0001406166000020.jpg]
」

2 引用文献1に記載された事項及び引用文献1技術事項の認定

(1) 引用文献1に記載された事項

当審拒絶理由において引用した引用文献1(特開2013-178142号公報)には、以下の事項が記載されている。

下線は合議体が付した。以下同様である。

ア 【0019】~【0023】、【図1】、【図2】

「【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態におけるモデル定数取得装置の概略構成を示す構成図である。同図において、モデル定数取得装置1は、電流センサ101と、温度センサ103と、電流検出部111と、電圧検出部112と、電池温度検出部113と、データ取得部120と、モデル定数算出部130と、制御部140と、電力印加部150と、波高値テーブル記憶部190と、恒温器200とを具備する。また、モデル定数取得装置1には二次電池900が設置されている。
【0020】
二次電池900は、例えばリチウムイオン電池または鉛電池などの二次電池である。二次電池900は、モデル定数取得対象であり、二次電池900のモデル定数をより正確に取得することで、二次電池900の充電率(State Of Charge;SOC)をより正確に求めることができる。このモデル定数について、図2を参照して説明する。
続きを表示(全12行)
【0021】
図2は、二次電池900を模擬する電池モデルの例を示す説明図である。同図に示す電池モデルは、抵抗903およびキャパシタ(コンデンサ)904が並列に接続された回路(以下、「並列回路部分」と称する)と、抵抗902と、直流電源901とが直列に接続されて構成されている。
直流電源901は、抵抗値を有さない仮想的な電池であり、二次電池900の開放電圧を示す。
【0022】
抵抗902は、二次電池900の内部抵抗のうち、直流電流と交流電流とのいずれにも作用する成分を模擬する。以下では、抵抗902の抵抗値をDCR[Ω(オーム)]と表記する。
抵抗903およびキャパシタ904が並列に接続された回路は、二次電池900の内部抵抗のうち、直流電流と交流電流とで作用の度合いが異なる成分を示す。かかる抵抗成分は、例えば二次電池900の濃度分極現象に起因して生じる。この並列接続回路は、直流電流や比較的周波数の低い電流に対しては比較的大きい抵抗値を示し、比較的周波数の高い電流に対しては比較的小さい抵抗値を示す。以下では、抵抗903の抵抗値をACR[Ω]と表記し、キャパシタ904のキャパシタンスをACC[F(ファラッド)]と表記する。
【0023】
電力印加部150は、制御部140の制御に従って、二次電池900に電力を印加する。特に、電力印加部150は、同じ大きさで正負に変化する電力を二次電池900に印加する。より具体的には、電力印加部150は、二次電池900の応答電力が異なる複数周波数の正弦波交流電流を印加する。」
「【図1】
[図:0001406166000021.jpg]
」
「【図2】
[図:0001406166000022.jpg]
」

イ 【0069】~【0089】、【図10】

「【0069】
なお、電力印加部150が印加する電力は正弦波交流に限らない。例えば、電力印加部150が、同じ波高値および時間幅を有する正負それぞれのステップ波の電力(以下、「ステップ電力」と称する)を交互に印加するようにしてもよい。
【0070】
図10は、電力印加部150が印加するステップ電力の電流値と、二次電池900の応答電圧値との例を示す説明図である。同図(A)および(B)のグラフの横軸は、基準時刻(電力印加部150がステップ電力を印加したタイミング)からの経過時間にて時刻を示す。また、同図(A)の縦軸は電流値を示し、同図(B)の縦軸は電圧値を示す。
続きを表示(全53行)
【0071】
また、同図(A)は、電力印加部150が印加するステップ電力の電流値を示している。
電力印加部150は、時刻0(基準時刻)以前の時間帯において、電流値0のステップ電力を二次電池900に印加している(すなわち、二次電池900に電力を印加していない)。以下では、この基準時刻以前の時間帯において電力印加部150が印加する電流値0のステップ電力、および、基準時刻以前の時間帯を、いずれもステップ番号N1にて表記する。
【0072】
その後、電力印加部150は、時刻0から時刻t1までの時間帯において、電流値I21のステップ電力を二次電池900に印加している。以下では、この時刻0から時刻t1までの時間帯において電力印加部150が印加する電流値I21のステップ電力、および、時刻0から時刻t1までの時間帯を、いずれもステップ番号N2にて表記する。ステップ番号N2の電力は、電流値Aが正の電力、すなわち充電電力となっている。
【0073】
さらにその後、電力印加部150は、時刻t1以後の時間帯において、電流値0のステップ電力を二次電池900に印加している(すなわち、二次電池900に電力を印加していない)。以下では、この時刻t1以後の時間帯において電力印加部150が印加する電流値0のステップ電力および、時刻t1以後の時間帯を、いずれもステップ番号N3にて表記する。
【0074】
なお、電力印加部150は、ステップ番号N3の時間帯にて二次電池900の応答電圧値が安定した後、ステップ番号N2で印加したのと同じ大きさの電力かつ同じ時間幅で、電流が逆向きの電力を二次電池900に印加する(すなわち、二次電池900を放電させる)。そして、モデル定数算出部130は、放電側についても、以下に説明する充電側の場合と同様にモデル定数を算出し、充電側と放電側とでモデル定数の平均を取る。
【0075】
一方、図10(B)は、二次電池900の応答電圧値を示している。
同図に示すように、電力印加部150が電力を印加すると、印加を開始したタイミングで応答電圧値が上昇し、その後も応答電圧値が上昇した後安定状態に至る。二次電池900のキャパシタ成分(図2のキャパシタ904で模擬される)に電位が蓄えられるためである。
なお、二次電池900の両端電圧値にノイズ(スパイク成分)が含まれている場合、例えば、電圧検出部112がローパスフィルタ(Low Pass Filter)を用いてノイズを除去する。
【0076】
二次電池900の応答電圧値について、より詳細に説明すると、ステップ番号N1では、二次電池900が前回放電を行ってから時間が充分経過しており、二次電池900の応答電圧値(両端電圧値)は電圧値OCV20にて安定している。
その後、電力印加部150がステップ番号N2の電力の印加を開始した時刻0において、二次電池900の応答電圧値は電圧値E21まで上昇し、その後さらに電圧値E22まで上昇して安定する。
【0077】
そして、電力印加部150がステップ番号N2の電力の印加を終了した時刻t1において、二次電池900の応答電圧は、時刻0における電圧上昇分と同じ分だけ降下して電圧値E23となり(すなわち、E21-OCV20=E22-E23)、その後も応答電圧値が降下した後、電圧値E24にて安定している。ここで、電圧値E24は、二次電池900のキャパシタ成分(図2のキャパシタ904で模擬される)に残存する電位の分だけ電圧値OCV20よりも大きくなっている。
これらの電圧値および電流値を用いて、抵抗値DCRは、式(10)のように示される。
【0078】
【数10】
[図:0001406166000023.jpg]
【0079】
そこで、モデル定数算出部130は、電圧検出部112が検出した電圧値OCV20およびE21と、ステップ番号N1における電流値I21とを式(10)に代入して、抵抗値DCRを算出する。
【0080】
また、図10に示す時定数τは、式(1)における並列回路部分の時定数τと同一であり、時間t1から時刻t2までの時間(τ=t2-t1)を示す。ここで、時刻t2は、ステップ番号N3の時間帯における応答電圧の降下分Vp1(Vp1=E23-E24)のうち、1/eに相当する電圧値Vp2の電位が二次電池900のキャパシタ成分に蓄電されている状態となった時刻である。すなわち、時刻t2は、二次電池900の両端電圧値が、E24+Vp1×(1/e)に等しくなった時刻である。ここで、「e」はネイピア数(すなわち、自然対数の底)を示す。
データ取得部120は、電圧検出部112が検出する二次電池900の両端電圧に基づいて、時刻t2を取得(測定)する。
【0081】
また、時定数τを用いて、抵抗903(図2)の抵抗値ACRとキャパシタ904のキャパシタンスACCとの関係は、式(11)のように示される。
【0082】
【数11】
[図:0001406166000024.jpg]
【0083】
また、ステップ番号N3の時間帯における応答電圧の降下分Vp1は、式(12)のように示される。
【0084】
【数12】
[図:0001406166000025.jpg]
【0085】
これら式(11)および(12)に基づいて、抵抗値ACRは、式(13)のように示される。
【0086】
【数13】
[図:0001406166000026.jpg]
【0087】
また、式(11)より、キャパシタンスACCは、式(14)のように示される。
【0088】
【数14】
[図:0001406166000027.jpg]
【0089】
そこで、モデル定数算出部130は、データ取得部120が取得する電圧値E22およびE23に基づいて応答電圧の降下分Vp1を算出し、このVp1と、ステップ番号N2における電流値I12と、ステップ番号N2からN3への切り替わりの時刻t1と、データ取得部120が検出する時刻t2とを、式(13)に代入して抵抗値ACRを算出する。さらに、モデル定数算出部130は、時刻t1およびt2と、算出した抵抗値ACRとを式(14)に代入してキャパシタンスACCを算出する。」
「【図10】
[図:0001406166000028.jpg]
」

(2) 引用文献1技術事項の認定

前記(1)において摘記した事項から、引用文献1には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献1技術事項」という。)。

<引用文献1技術事項>

「リチウムイオン電池または鉛電池などの二次電池900をモデル定数取得対象とし、二次電池900のモデル定数を取得することで、二次電池900の充電率(State Of Charge;SOC)を求める方法であって、(【0020】)
二次電池900を模擬する電池モデルは、抵抗903およびキャパシタ(コンデンサ)904が並列に接続された回路と、抵抗902と、直流電源901とが直列に接続されて構成されており、直流電源901は、抵抗値を有さない仮想的な電池であり、二次電池900の開放電圧を示し、(【0021】)。
抵抗902の抵抗値はDCRであり、抵抗903の抵抗値はACRであり、キャパシタ904のキャパシタンスはACCであり、(【0022】)
同じ波高値および時間幅を有する正負それぞれのステップ波の電力(ステップ電力)を交互に印加する電力印加部150が、(【0069】)
続きを表示(全17行)
時刻0(基準時刻)以前の時間帯において、電流値0のステップ電力を二次電池900に印加し、(【0071】)
時刻0から時刻t1までの時間帯において、電流値I21のステップ電力を二次電池900に印加し、(【0072】)
時刻t1以後の時間帯において、電流値0のステップ電力を二次電池900に印加し、(【0073】)
ステップ番号N1に相当する時刻0(基準時刻)以前の時間帯においては、二次電池900の応答電圧値(両端電圧値)は電圧値OCV20にて安定しており、電力の印加を開始した時刻0において、二次電池900の応答電圧値は電圧値E21まで上昇し、その後さらに電圧値E22まで上昇して安定し、(【0071】、【0076】)
電力の印加を終了した時刻t1において、二次電池900の応答電圧は、時刻0における電圧上昇分と同じ分だけ降下して電圧値E23となり(すなわち、E21-OCV20=E22-E23)、その後も応答電圧値が降下した後、電圧値E24にて安定して、抵抗値DCRは、式(10)で示され、(【0077】~【0078】)
[図:0001406166000029.jpg]
モデル定数算出部130は、電圧検出部112が検出した電圧値OCV20およびE21と、電流値I21とを式(10)に代入して、抵抗値DCRを算出し、(【0079】)
応答電圧の降下分Vp1(Vp1=E23-E24)のうち1/eに相当する電圧値Vp2の電位が二次電池900のキャパシタ成分に蓄電されている状態となった時刻t2では、二次電池900の両端電圧値はE24+Vp1×(1/e)に等しくなっており、データ取得部120は、電圧検出部112が検出する二次電池900の両端電圧に基づいて、時刻t2を取得(測定)し、(【0080】)
抵抗値ACRは、式(13)で示され、(【0085】~【0086】)
[図:0001406166000030.jpg]
キャパシタンスACCは、式(14)で示され、(【0087】~【0088】)
[図:0001406166000031.jpg]
モデル定数算出部130は、データ取得部120が取得する電圧値E22およびE23に基づいて応答電圧の降下分Vp1を算出し、Vp1、電流値I12、時刻t1、データ取得部120が検出する時刻t2を式(13)に代入して抵抗値ACRを算出し、時刻t1、t2と、算出した抵抗値ACRを式(14)に代入してキャパシタンスACCを算出する、方法。(【0089】)」

3 引用文献4に記載された事項及び技術常識1の認定

(1) 引用文献4に記載された事項

当審拒絶理由において引用した引用文献4(国際公開第2014/128904号)には、次の記載がある。

「[0051] (前略)
(リチウムイオン二次電池の抵抗評価)
前記のリチウムイオン二次電池を、0.05Cの定電流/定電位充電で4.6Vまで充電した後、0.05Cの定電流で2.5Vまで放電した。ここで、「充放電レート1C」とは、電池を放電し切った状態から充電する場合において、1時間で100%の充電を完了すること、及び電池を充電し切った状態から放電する場合において、1時間で100%の放電を完了することをいう。すなわち、充電または放電の速さが1時間当たり100%であることをいう。よって、0.05Cとは、充電または放電の速さが1時間当たり5%であることをいう。
[0052] その後、SOCを変えながら25℃において、開回路電圧と0.1Cレート放電時の10秒後の電圧低下量ΔVを測定し、ΔV/電流=抵抗Rを算出した。SOCの変化量は10%ずつとし、SOCを変化させた後、0.1Cレート放電時の10秒後の電圧低下量を測定する前に2時間開回路状態で緩和させた。」

(2) 技術常識1の認定

前記(1)において摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)。

<技術常識1>

「リチウムイオン二次電池の抵抗評価する際、0.1Cレート程度の微小電流を流して、開回路電圧の電圧降下量から、抵抗Rを算出すること。」

4 引用文献7に記載された事項及び技術常識2の認定

(1) 引用文献7に記載された事項

当審拒絶理由において引用した引用文献7(馬場厚志「モデルに基づくリチウムイオン二次電池の充電率推定に関する研究」)の16~17頁には、次の記載がある。

「2.3 古典的なSOCと内部インピーダンスの推定法
本節では,リチウムイオン二次電池が実用化された1990年代より前から,ニッケル水素電池やニッカド電池,鉛蓄電池などに対して用いられてきた古典的なSOCやSOH,内部抵抗の推定法について述べる.これらの古典的な推定法は,2000年代初期までのリチウムイオン二次電池に対しても良く用いられてきた方法である.
2.3.1 古典的なSOC推定
SOC推定法については,以下の3種類がある.
(中略)
(b) 開回路電圧の測定に基づくSOC推定
開回路電圧(Open Circuit Voltage,以下ではOCVと略記する)と呼ばれる電圧とSOCの関係を用いてSOCを算出する.OCVは,電池が外部回路から切り離されて十分時間が経ち,電池内部の電気化学反応が平衡状態となったときの正極と負極の電位差として定義される.OCVとSOCの間には,Fig.2.8に示すような非線形な関係(SOC-OCV特性)があり,電池の劣化などによって特性が変化しないことが知られているので,これを用いればOCVからSOCが求まる.しかし,OCVを測定するには電池の使用後十分時間が経ち平衡状態になるのを待ち,端子電圧を測る必要がある.そのためEVやHEVではつぎのような特殊な場合を除いて使われない.
1.電流が大きくない状態が継続している(近似的に平衡状態になっている)場合
2.十分長い時間充放電が行われなかった場合
いずれの場合も,つぎの電流積算法の初期値を算出するための方法として用いられる.」

(2) 技術常識2の認定

前記(1)において摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識2」という。)。

<技術常識2>

「リチウムイオン二次電池において、電流が大きくない状態が継続していると近似的に平衡状態になっており、端子電圧を測ることによりSOCが推定できること。」

5 引用文献8に記載された事項及び技術常識3の認定

(1) 引用文献8に記載された事項

当審拒絶理由において引用した引用文献8(福井慶一「カルマンフィルタを用いたバッテリーのSOC推定ロジックの開発」)の9、10、16及び21頁には、次の記載がある。

ア 9頁

「
[図:0001406166000032.jpg]
」

イ 10頁

「
[図:0001406166000033.jpg]
」

ウ 16頁

「
[図:0001406166000034.jpg]
」

エ 21頁

「
[図:0001406166000035.jpg]
」

(2) 技術常識3の認定

前記(1)において摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識3」という。)。

<技術常識3>

「カルマンフィルタを用いたバッテリーのSOC推定において、バッテリーの等価回路モデルの抵抗やコンデンサ等の回路パラメータが、温度に応じて変わること。」

6 引用文献9に記載された事項及び引用文献9技術事項の認定

(1) 引用文献9に記載された事項

令和5年4月24日の電話応対において提示した、本願の優先日前に日本国内又は外国において発行された国際公開第2016/166555号(以下「引用文献9」という。)には、以下の事項が記載されている。

なお、日本語訳は、引用文献9の日本語ファミリー文献である特表2018-513378号公報の該当記載をそのまま採用して、原文の次に摘記した(参照の便宜に供するため、上記ファミリー文献の段落番号も併せて記載している。)。

図面については、重複を避けるため上記ファミリー文献に記載されたものを摘記した。

ア 16頁17~27行、FIG.3

「 Referring to Figure 3, the apparatus 300 for estimating the state of health of a cell includes a memory 301 to store the cumulative operating conditions that a cell in use has been exposed to, made available to the controller 302. The apparatus 300 is coupled to Lithium Sulfur cell (not shown) in use and is configured to estimate the SOC and SOH thereof. In this embodiment, the apparatus further comprises the cell operational condition measurement means including: a terminal voltage sensing circuit 303; and a current load sensing circuit 304; a cell internal resistance sensing circuit 305 comprising a switching circuit including a balancing resistor; and a temperature sensor 306. These are arranged to measure or calculate and input to the controller 302 the current load on the cell, the terminal voltage on the cell, a measure of the internal resistance of the cell and the temperature of the cell and/or the ambient temperature.」

(日本語訳)

「【0078】
図3を参照すると、セルの健康状態を推定するための装置300は、使用中のセルが曝されている累積動作状態を記憶するためのメモリ301を備え、コントローラ302に利用可能にされる。装置300は、使用中のリチウム硫黄セル(図示せず)に結合され、そのSOCおよびSOHを推定するように構成される。この実施形態では、装置は、セル動作状態測定手段をさらに備え、セル動作状態測定手段は端子電圧感知回路303、および電流負荷感知回路304、平衡抵抗器を含むスイッチング回路を備えるセル内部抵抗感知回路305、および温度センサ306を具備する。これらは、セル上の電流負荷、セル上の端子電圧、セルの内部抵抗の尺度、ならびにセルの温度および/または周囲温度を測定するかまたは計算し、コントローラ302に入力するように配置構成される。」
「【図3】
[図:0001406166000036.jpg]
」

イ 17頁1~27行、FIG.5

「 In accordance with aspects of the invention, as shown in Figure 5, the controller 302 implements an apparatus (i.e. the SOC model 531 in this embodiment) for modelling the state of charge and state of health of a cell (e.g. an LiS cell). Specifically, the Controller 302 comprises processor 521 (which may be provided by one or more processors) for carrying out computer readable instructions, and RAM 522.
The memory 301 stores program logic 511 which when executed by the controller 302 (specifically the processor 521) causes the controller 302 to implement the apparatus for modelling and estimating the SOC/SOH of the cell in accordance with aspects of the invention.
Specifically, the processor 521 instantiates in RAM 522 an SOC model 531 for modelling the state of charge and state of health of the cell 403, by modelling the operational behaviour thereof in its operational range.
This is achieved by the SOC model 531 including a cell model module 532 operable to predict the electrical characteristics of the cell in use based on a model (such as an equivalent circuit network (ECN) or a physics-based cell model) representative of the internal state of the cell that correlates a terminal voltage of the cell to an operational condition of the cell for all states of charge, SOC. The cell model is parameterised, in the example of an ECN model, by the properties of the constituent electrical elements of the equivalent circuit network model. The parameter values for the ECN are provided to the cell model module 532 from a parameter value resource 512 stored in memory 301 configured to be usable to provide to the cell model module values for the parameters of the ECN cell model for the modelled behaviour of the cell at given operational conditions. Thus, for a set of given operational conditions, and an SOC, the parameter values for the ECN can be obtained. To generate the parameter values to create the cell model for the cell 403, the parameter values for the cell model are derived empirically or semi-empirically based on tests of standard cells. The parameter values for the cell model are dependent on the modelled state of charge of the cell. The parameter value resource 512 is optionally a lookup table.」

(日本語訳)

「【0080】
本発明の態様によれば、図5に示されているように、コントローラ302は、セル(たとえば、LiSセル)の充電状態および健康状態をモデル化するための装置(すなわち、この実施形態におけるSOCモデル531)を実装する。特に、コントローラ302は、コンピュータ可読命令を実行するためのプロセッサ521(1つまたは複数のプロセッサによって実現され得る)とRAM522とを備える。
【0081】
メモリ301は、コントローラ302(特にプロセッサ521)によって実行されたときにコントローラ302に本発明の態様によるセルのSOC/SOHをモデル化し、推定するための装置を実施させるプログラム論理511を記憶する。
【0082】
特に、プロセッサ521は、RAM522において、動作挙動をその動作範囲内でモデル化することによって、セル403の充電状態および健康状態をモデル化するためのSOCモデル531をインスタンス化する。
【0083】
これは、セルの端子電圧をすべての充電状態、SOCに対するセルの動作状態に相関させるセルの内部状態を表すモデル(たとえば等価回路ネットワーク(ECN)または物理ベースのセルモデル)に基づき使用中のセルの電気的特性を予測するように動作可能なセルモデルモジュール532を含むSOCモデル531によって達成される。セルモデルは、等価回路ネットワークモデルの構成電気素子の特性によって、ECNモデルの例においてパラメータ化される。ECNに対するパラメータ値は、与えられた動作状態においてセルのモデル化された挙動に対するECNセルモデルのパラメータに対するセルモデルモジュール値に供給するために使用可能となるように構成されているメモリ301に記憶されているパラメータ値リソース512からセルモデルモジュール532に供給される。したがって、一組の与えられた動作状態、およびSOCについて、ECNに対するパラメータ値が取得され得る。パラメータ値を生成してセル403に対するセルモデルを作成するために、セルモデルに対するパラメータ値は、標準セルのテストに基づき経験的にまたは半経験的に導出される。セルモデルに対するパラメータ値は、セルのモデル化された充電状態に依存する。パラメータ値リソース512は、適宜ルックアップテーブルである。」
「【図5】
[図:0001406166000037.jpg]
」

ウ 19頁33行~20頁7行、FIG.7

「 For an equivalent circuit network a model structure is then chosen that provides suitable flexibility to fit the experimental data balancing goodness of fit with computational complexity. An example simple model for the behaviour of an LiS cell is shown in Figure 7a, in which the terminal voltage Vt is produced by the cell providing its open circuit voltage Vocv, in series with an ohmic resistance, R0, and a diffuse resistance provided by one or more RC pair(s) having a resistance, Rp and a capacitance, Cp. , The equivalent of this shown in Figure 7b takes the open circuit voltage as a voltage source, in series with the ohmic resistance, R0, and a diffuse resistances provided by RC pairs, Rn, Cn.
The equivalent circuit network model of the LiS cell is then parameterised by the properties of the constituent electrical elements of the equivalent circuit network model - i.e. the open circuit voltage and the ohmic and diffuse resistances. The parameterisation is performed using, e.g. the observed behaviour in the test data.」

(日本語訳)

「【0095】
次いで、等価回路ネットワークでは、実験データ調整適合度を計算複雑度に適合させる好適な柔軟性をもたらすモデル構造が選択される。LiSセルの挙動に対する例示的な単純モデルが図7aに示されており、端子電圧Vtは、オーム抵抗Roならびに抵抗Rpおよび静電容量Cpを有する1つまたは複数のRCペアによってもたらされる拡散抵抗と直列につながっている開放回路電圧VOCVをもたらすセルによって発生する。図7bに示されているこれの等価回路は、開放回路電圧を、オーム抵抗RoならびにRCペアRn、Cnによってもたらされる拡散抵抗と直列につながる、電圧源とみなす。
【0096】
次いで、LiSセルの等価回路ネットワークモデルは、等価回路ネットワークモデルの構成電気素子の特性-すなわち、開放回路電圧ならびにオームおよび拡散抵抗-によってパラメータ化される。パラメータ化は、たとえば、テストデータにおける観察された挙動を使用して実行される。」
「【図7a】
[図:0001406166000038.jpg]
」
「【図7b】
[図:0001406166000039.jpg]
」

(2) 引用文献9技術事項の認定

前記(1)において摘記した事項から、引用文献9には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献9技術事項」という。)。

<引用文献9技術事項>

「セルの健康状態を推定するための装置300において、
装置300は、使用中のリチウム硫黄セルに結合され、そのSOCおよびSOHを推定するように構成され、セル動作状態測定手段をさらに備え、
セル動作状態測定手段は、端子電圧感知回路303、および電流負荷感知回路304、平衡抵抗器を含むスイッチング回路を備えるセル内部抵抗感知回路305、および温度センサ306を具備するものであり、
これらは、セル上の電流負荷、セル上の端子電圧、セルの内部抵抗の尺度、ならびにセルの温度および/または周囲温度を測定するかまたは計算し、コントローラ302に入力するように配置構成され、(【0078】)
続きを表示(全13行)
コントローラ302は、セル(たとえば、LiSセル)の充電状態および健康状態をモデル化するための装置(SOCモデル531)を実装し、コンピュータ可読命令を実行するためのプロセッサ521とRAM522とを備え、(【0080】)
プロセッサ521は、RAM522において、動作挙動をその動作範囲内でモデル化することによって、セル403の充電状態および健康状態をモデル化するためのSOCモデル531をインスタンス化し、(【0082】)
これは、セルの端子電圧をすべての充電状態、SOCに対するセルの動作状態に相関させるセルの内部状態を表すモデル(たとえば等価回路ネットワーク(ECN)または物理ベースのセルモデル)に基づき、使用中のセルの電気的特性を予測するように動作可能なセルモデルモジュール532を含むSOCモデル531によって達成され、(【0083】)
セルモデルは、等価回路ネットワークモデルの構成電気素子の特性によって、ECNモデルの例においてパラメータ化され、
ECNに対するパラメータ値は、与えられた動作状態においてセルのモデル化された挙動に対するECNセルモデルのパラメータに対するセルモデルモジュール値に供給するために使用可能となるように構成されているメモリ301に記憶されているパラメータ値リソース512からセルモデルモジュール532に供給され、(【0083】)
パラメータ値を生成してセル403に対するセルモデルを作成するために、セルモデルに対するパラメータ値は、標準セルのテストに基づき経験的にまたは半経験的に導出され、(【0083】)
パラメータ値リソース512は、適宜ルックアップテーブルであり、(【0083】)
LiSセルの挙動に対する例示的な単純モデルにおいて、端子電圧Vtは、オーム抵抗R0ならびに抵抗Rpおよび静電容量Cpを有する1つまたは複数のRCペアによってもたらされる拡散抵抗と直列につながっている開放回路電圧VOCVをもたらすセルによって発生し、これの等価回路は、開放回路電圧を、オーム抵抗R0ならびにRCペアRn、Cnによってもたらされる拡散抵抗と直列につながる、電圧源とみなすものであり、(【0095】)
LiSセルの等価回路ネットワークモデルは、等価回路ネットワークモデルの構成電気素子の特性、すなわち、開放回路電圧ならびにオームおよび拡散抵抗によってパラメータ化され、パラメータ化は、たとえば、テストデータにおける観察された挙動を使用して実行されること。(【0096】)」

第5 対比

1 対比分析

本願発明と引用発明を対比する。

(1)ア 本願の明細書の段落【0006】に「エネルギー貯蔵システムの電流、電圧及び温度を測定して、エネルギー貯蔵システムの充電容量(SOC)を正確に算出することにより、エネルギー貯蔵システムの状態を把握することが重要である。」と記載されるように、本願発明の「充電容量」は「SOC」を意味する。

イ また、引用発明における「二次電池」は、本願発明における「エネルギー貯蔵システム」に相当する。

ウ 前記ア及びイを踏まえると、「エネルギー貯蔵システムの充電容量算出方法」である本願発明と、「拡張カルマンフィルタ(EKF)を用いた二次電池の充電率(SOC)の推定法」である引用発明は、「エネルギー貯蔵システムの充電容量算出方法」の発明である点で一致する。

(2)ア 引用発明においては、「電池モデルとして」「図4の多数の RC 並列回路で内部インピーダンスを表現した等価回路モデルを用い」、状態推定を行うにあたり、「電池モデルのパラメータ」は「事前に推定した値」又は「逐次的に推定した値」を用いているから、「電池モデルのパラメータ」を算出するものである。そして、「電池モデルとして」「図4の多数の RC 並列回路で内部インピーダンスを表現した等価回路モデルを用い[る]」のであるから、「電池モデルのパラメータ」は、抵抗R0、R1~Rn、キャパシタンスC1~Cnを推定して算出するものである。

イ そうすると、引用発明は、「二次電池の充電率(SOC)の推定」の前提として、等価回路モデルのパラメータである「抵抗R0、R1~Rn、キャパシタンスC1~Cn」を推定して算出する方法を含むといえるものである。

ウ したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。

「エネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出する方法であって、
エネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出する抵抗(R)及びキャパシタンス(C)算出ステップ、
を含んでなる」点。

(3)ア 引用発明の「拡張カルマンフィルタ(EKF)を用いた二次電池の充電率(SOC)の推定法」は、「時刻 t での状態変数xを、SOC(t)とコンデンサの電圧降下v1(t)~v3(t)からなるベクトルとするものであり」、「推定ロジックは、電池モデルの回路パラメータについて、事前に推定した値を用いて状態推定を行う「状態推定法」又は電池モデルのパラメータについて逐次的に推定した値を用いて状態推定を行う「適応推定法」によりパラメータの推定を行うものである。

イ 前記ア及び前記(2)における検討結果を踏まえると、引用発明は、「状態推定法」又は「適応推定法」によって推定して算出した、二次電池モデルのパラメータである抵抗R0、R1~Rn、キャパシタンスC1~Cnを用いて、拡張カルマンフィルタ(EKF)により状態変数を推定するというプロセスを経て、二次電池の充電率(SOC)の推定を行うものである。

ウ 前記イの検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。

「当該方法は、
前記抵抗(R)及びキャパシタンス(C)算出ステップにおいて算出された前記エネルギー貯蔵システムの抵抗及びキャパシタンスを用いて、拡張カルマンフィルターの状態変数を算出する状態変数算出ステップと、
前記状態変数を前記拡張カルマンフィルターに代入して、前記エネルギー貯蔵システムの充電容量を算出するエネルギー貯蔵システム充電容量算出ステップ」を更に含んでなる点。

2 一致点及び相違点の認定

前記1の対比分析の検討結果を総合すると、本願発明と引用発明は、次の(1)の一致点において一致し、後記(2)の相違点において相違する。

(1) 一致点

「 エネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出する方法であって、
エネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出する抵抗(R)及びキャパシタンス(C)算出ステップ、
を含んでなり、
前記方法は、
前記抵抗(R)及びキャパシタンス(C)算出ステップにおいて算出された前記エネルギー貯蔵システムの抵抗及びキャパシタンスを用いて、拡張カルマンフィルターの状態変数を算出する状態変数算出ステップと、
前記状態変数を前記拡張カルマンフィルターに代入して、前記エネルギー貯蔵システムの充電容量を算出するエネルギー貯蔵システム充電容量算出ステップと、
を更に含んでなる、
エネルギー貯蔵システムの充電容量算出方法」である点。

(2) 相違点

エネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出する抵抗(R)及びキャパシタンス(C)算出ステップが、

本願発明においては、

「 前記エネルギー貯蔵システムに一定の値を有する所定の電流を印加する電流印加ステップと、
前記エネルギー貯蔵システムに一定の値を有する所定の電流が印加される間の前記エネルギー貯蔵システムの電圧を測定する第1の電圧測定ステップと、
前記エネルギー貯蔵システムに印加されていた、一定の値を有する所定の電流を切った後、エネルギー貯蔵システムの電圧を測定する第2の電圧測定ステップと、
前記第1の電圧測定ステップにおいて測定されたエネルギー貯蔵システムの電圧、第2の電圧測定ステップにおいて測定されたエネルギー貯蔵システムの電圧、及び前記一定の値を有する所定の電流に基づいて、エネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出する抵抗(R)及びキャパシタンス(C)算出ステップと、
を含んでなり」(以上を「構成A」という。)、

「前記電流印加ステップにおいて印加される一定の値を有する所定の電流は、前記エネルギー貯蔵システムの抵抗及びキャパシタンス値が測定可能な最小の電流値から0.1c-rateまでの電流であり」(以上を「構成B」という。)、

「温度別のエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)のルックアップテーブルを形成するために、電圧モデル回路を使用して、前記第1の電圧、前記第2の電圧、及び前記所定の電流に基づいて、前記エネルギー貯蔵システムの温度を変更しながらエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を繰り返し算出することを含む」(以上を「構成C」という。)のに対して、

引用発明においては、電池モデルのパラメータが事前に推定した値又は逐次的に推定した値であることは特定されているものの、具体的手法が不明である点。

第6 判断

1 相違点の判断

前記相違点について検討する。

(1) 構成Aについて

ア 引用発明においては、電池モデルのパラメータを推定する具体的手法が不明であるところ、引用発明を具体化するに当たって、電池モデルのパラメータを算出するための技術手段として公知の技術手段の中から選択することは、当業者が適宜なすべき設計事項にすぎないから、引用発明の図4の等価回路における抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出する方法として、引用文献1に記載された技術手段を選択することは、当業者が適宜選択すべき事項である。

イ すなわち、引用発明の電池モデルのパラメータは、抵抗R0、R1~Rn、キャパシタンスC1~Cnであるところ、n=1の場合を想定すると、引用文献1技術事項の電池モデルの回路(【図2】)と同じものとなるから、引用文献1技術事項に開示された「二次電池900を模擬する電池モデル」の「モデル定数」(抵抗値DCR、ACR、キャパシタンスACC)の算出方法を引用発明に適用することにより、以下の(ア)~(オ)に示すとおり、本願発明の構成Aが得られることになる。

(ア) 引用文献1技術事項には、「時刻0から時刻t1までの時間帯において、電流値I21のステップ電力を二次電池900に印加」することが開示されており、引用発明において引用文献1技術事項を採用すると、前記構成Aの「前記エネルギー貯蔵システムに一定の値を有する所定の電流を印加する電流印加ステップ」が得られる。

(イ) 引用文献1技術事項には、「ステップ番号N1に相当する時刻0(基準時刻)以前の時間帯においては、二次電池900の応答電圧値(両端電圧値)は電圧値OCV20にて安定しており、電力の印加を開始した時刻0において、二次電池900の応答電圧値は電圧値E21まで上昇し、その後さらに電圧値E22まで上昇して安定」することが開示されており、時刻0から時刻t1までの時間帯における電圧の変化(電圧値がOCV20→E21→E22と変化すること)を検出することが開示されていると認められるから、引用発明において引用文献1技術事項を採用すると、前記構成Aの「前記エネルギー貯蔵システムに一定の値を有する所定の電流が印加される間の前記エネルギー貯蔵システムの電圧を測定する第1の電圧測定ステップ」が得られる。

(ウ) 引用文献1技術事項には、「時刻t1以後の時間帯において、電流値0のステップ電力を二次電池900に印加」することが開示されており、引用発明において引用文献1技術事項を採用すると、前記構成Aの「前記エネルギー貯蔵システムに印加されていた、一定の値を有する所定の電流を切った」ことが得られる。

(エ) 引用文献1技術事項には、時刻t1以後の時間帯における電圧の変化(電圧値がE22→E23→E24と変化すること)を検出することが開示されているから、引用発明において引用文献1技術事項を採用すると、前記構成Aの「前記エネルギー貯蔵システムに印加されていた、一定の値を有する所定の電流を切った後、エネルギー貯蔵システムの電圧を測定する第2の電圧測定ステップ」が得られる。

(オ) 引用文献1技術事項には、電圧値OCV20及びE21と、電流値I21に基づいて、抵抗値DCRを算出し、電圧値E22及びE23に基づいて応答電圧の降下分Vp1を算出し、Vp1、電流値I12、時刻t1、t2に基づいて抵抗値ACRを算出し、時刻t1、t2と、抵抗値ACRに基づいてキャパシタンスACCを算出することが開示されており、引用発明において引用文献1技術事項を採用すると、前記構成Aの「前記第1の電圧測定ステップにおいて測定されたエネルギー貯蔵システムの電圧、第2の電圧測定ステップにおいて測定されたエネルギー貯蔵システムの電圧、及び前記一定の値を有する所定の電流に基づいて、エネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を算出する抵抗(R)及びキャパシタンス(C)算出ステップ」が得られる。

(2) 構成Bについて

ア 「リチウムイオン二次電池の抵抗評価する際、0.1Cレート程度の微小電流を流して、開回路電圧の電圧降下量から、抵抗Rを算出すること」は、技術常識であり(前記技術常識1を参照)、また、「リチウムイオン二次電池において、電流が大きくない状態が継続していると近似的に平衡状態になっており、端子電圧を測ることによりSOCが推定できること」も、技術常識である(前記技術常識2を参照)。

イ これらの技術常識に鑑みると、引用発明に引用文献1技術事項に開示された「二次電池900を模擬する電池モデル」の「モデル定数」(抵抗値DCR、ACR、キャパシタンスACC)の算出方法を適用する際に、二次電池に印加する電流値I21を0.1Cレート程度の微小電流とすれば、近似的に平衡状態となり、SOCの推定に好都合であるのは自明である。

したがって、構成Bの「前記電流印加ステップにおいて印加される一定の値を有する所定の電流は、前記エネルギー貯蔵システムの抵抗及びキャパシタンス値が測定可能な最小の電流値から0.1c-rateまでの電流である」ことは、拡張カルマンフィルタ(EKF)を用いて二次電池の充電率(SOC)の推定を行うための好適な条件を設定したものであって、当業者にとって自明な設計事項にすぎないというべきである。

(3) 構成Cについて

ア 引用文献9技術事項には、「使用中のリチウム硫黄セルに結合され、そのSOCおよびSOHを推定するように構成され」た「装置300」において、「セルの内部状態を表すモデル(たとえば等価回路ネットワーク(ECN)または物理ベースのセルモデル)に基づき、使用中のセルの電気的特性を予測する」にあたり、「LiSセルの等価回路ネットワークモデルは、等価回路ネットワークモデルの構成電気素子の特性、すなわち、開放回路電圧ならびにオームおよび拡散抵抗によってパラメータ化され、パラメータ化は、たとえば、テストデータにおける観察された挙動を使用して実行され」、「ECNに対するパラメータ値」は、「パラメータ値リソース512」において「ルックアップテーブル」とされていることが開示されている。

イ ここで、引用文献9技術事項に開示された「LiSセルの等価回路ネットワークモデル」において、「端子電圧Vtは、オーム抵抗R0ならびに抵抗Rpおよび静電容量Cpを有する1つまたは複数のRCペアによってもたらされる拡散抵抗と直列につながっている開放回路電圧VOCVをもたらすセルによって発生し、これの等価回路は、開放回路電圧を、オーム抵抗R0ならびにRCペアRn、Cnによってもたらされる拡散抵抗と直列につながる、電圧源とみなすもの」であるから、引用文献9技術事項の「LiSセルの等価回路ネットワークモデル」は引用発明の「等価回路モデル」のn=1の場合を想定したものと同じである。

したがって、引用発明の「等価回路モデルの回路パラメータ」(抵抗R0、R1、キャパシタンスC1)について、引用文献9技術事項に開示された、等価回路のパラメータをテストデータにおける観察された挙動を使用してルックアップテーブルとして算出する技術を選択することは、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。

ウ なお、その際、「カルマンフィルタを用いたバッテリーのSOC推定において、バッテリーの等価回路モデルの抵抗やコンデンサ等の回路パラメータが、温度に応じて変わること」は、当業者にとって技術常識であるから(前記技術常識3を参照)、引用発明の「等価回路モデルの回路パラメータ」を温度別のルックアップテーブルとすることは、当業者にとって自明な設計事項にすぎない。そして、温度別のパラメータを得るために温度を変更しながら繰り返し算出することは、当然のことである。

したがって、構成Cは、格別のものではなく、当業者が適宜選択すべき設計事項の域を出るものではない。

(4) 小括

前記(1)~(3)において検討したとおり、構成Aから構成Cは、いずれも当業者が適宜選択すべき設計事項にすぎず、格別のものではなく、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、構成Aから構成Cの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。

よって、本願発明は、引用発明、引用文献1技術事項、引用文献9技術事項及び技術常識1~3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 請求人の主張について

(1) 請求人の主張の概要

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請求人は、意見書において、概略次の主張をしている。

引用文献1、4、6及び7には、本願請求項1に係る発明の「前記抵抗(R)及びキャパシタンス(C)算出ステップは、温度別のエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)のルックアップテーブルを形成するために、電圧モデル回路を使用して、前記第1の電圧、前記第2の電圧、及び前記所定の電流に基づいて、前記エネルギー貯蔵システムの温度を変更しながらエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を繰り返し算出することを含む」との構成が開示されていない。

引用文献8の21ページには、温度とSOC別の電圧に関するルックアップテーブルらしきものが開示されているが、本願請求項1に係る発明のルックアップテーブルは、「エネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)のルックアップテーブル」であり、引用文献8には、上記構成は開示されていない。

引用文献9(国際公開第2016/166555)には、パラメータ値がルックアップテーブルに記憶される点が開示されているものの、温度別のエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)のルックアップテーブルについて開示されておらず、前記第1の電圧、前記第2の電圧、及び測定可能な最小の電流値から0.1c-rateまでの前記所定の電流に基づいて、前記エネルギー貯蔵システムの温度を変更しながらエネルギー貯蔵システムの抵抗(R)及びキャパシタンス(C)を繰り返し算出する点も開示されていない。

本願請求項1に係る発明の構成により、外部誤差(電流センサーによる誤差)を含む場合であっても、より正確なSOC値を算出することができる(本願明細書の段落〔0095〕及び〔0096〕を参照)。

たとえ引用文献6、1、4、7、8、9を組み合わせたとしても、本願請求項1に係る発明に想到することはできない。

(2) 請求人の主張に対する当審の判断

前記1(3)において説示したとおり、構成Cは、当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎないものである。したがって、請求人の主張は、前記1(4)の結論を左右するものではない。

第7 むすび

以上検討のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1技術事項、引用文献9技術事項及び技術常識1~3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

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2022-005562

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