特許拒絶査定不服審判
2022-004984
水中ポンプ
- 審判番号
- 2022-004984
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-066194
- 請求日
- 2022年04月04日
- 審決日
- 2023年02月13日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】愛知電機株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人勇智国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 窪田 治彦
- 審判官 関口 哲生
- 審判官 冨永 達朗
- 分類
- P18 .121-WY (F04D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017- 66194「水中ポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月 1日出願公開、特開2018-168736、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月29日の出願であって、令和2年11月20日付けで拒絶理由通知がされ、令和3年1月15日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月31日付けで最後の拒絶理由通知がされ、同年8月3日に意見書が提出され、同年12月21日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和4年4月4日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1及び2に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開平11-75345号公報
2.特開2014-217163号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2013-141410号公報(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、令和4年4月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
駆動部と、ポンプ部と、カバーを備え、
前記駆動部は、容器と、前記容器内に配置された誘導電動機を有し、
前記誘導電動機は、固定子コアおよび前記固定子コアに巻き付けられた固定子巻線を有する固定子と、回転子コアおよび前記回転子コアに取り付けられた回転軸を有する回転子により構成され、
前記容器の上方には第1の支持部材が配置され、下方には第2の支持部材が配置され、
前記回転軸は、前記第1の支持部材に設けられている第1の軸受と、前記第2の支持部材に設けられている第2の軸受によって回転可能に支持され、
前記第1の支持部材には、上下方向に貫通している複数の孔が配置され、
前記ポンプ部は、前記駆動部の下方に配置されているとともに、前記回転軸に連結された羽根車を有し、
前記カバーは、前記誘導電動機の上方に配置され、前記容器とともに、前記誘導電動機を密閉状態で収容する電動機収容容器を形成する水中ポンプであって、
前記固定子コアは、上方に第1のコア端面を有しているとともに、下方に第2のコア端面を有し、
前記カバーおよび前記容器は、アルミニウムにより形成され、
前記固定子コアの外径が、124mm~126mmの範囲内に設定され、
前記固定子コアの軸方向に沿った長さが、23mm~37mmの範囲内に設定され、
前記カバーの内径Mが、119mm~122mmの範囲内に設定され、
前記カバーの内側に形成されるカバー内側空間の高さNが、48mm~54mmの範囲内に設定され、
前記誘導電動機の回転数が、2850rpm~3580rpmの範囲内に設定され、
前記固定子コアの前記第1のコア端面および前記第2のコア端面のうちの少なくとも前記第1のコア端面から飛び出ている、前記固定子巻線の部分の、軸方向に沿った長さHが、24mmと29mmの範囲内に設定されていることを特徴とする水中ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の水中ポンプであって、
前記固定子巻線の占積率が48%と58%の範囲内であることを特徴とする水中ポンプ。」
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様。)。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、モータ部とポンプ部とを一体に備え、例えば工事排水用に使用して最適な水中ポンプに係り、特にステータ巻線や上部軸受を効果的に冷却できるようにした水中モータのモータ部の構造に関するものである。」
イ 「【0002】
【従来の技術】前記水中モータの従来の一般的な構成を図2に示す。同図に示すように、主軸1を駆動するモータ部2と該主軸1の回転によって揚水を行うポンプ部3とが一体に備えられているとともに、ポンプ部3の圧力水がモータ部2側へ漏洩しないように、ポンプ部3とモータ部2の間はメカニカルシール4で軸封されている。
【0003】前記モータ部2には、前記主軸1と一体に回転するロータ5と、ステータ巻線6を巻回したステータ7とがモータ室8内に収納されて備えられ、このモータ室8の上部には、水中ケーブル10の引込口を有し、過電流や欠相運転等によるモータ部の焼損を防止するプロテクタ(過熱保護装置)11やコンデンサ12等の機器を収納するモータ上部室13が配置されている。ここに、前記モータ室8及びモータ上部室13は、上方に開口した略円筒状のモータフレーム14と該モータフレーム14の上端に連結したモータカバー15で水密的に包囲されているとともに、ブラケット16で上下に区画されている。
【0004】そして、前記主軸1は、前記ブラケット16の下面に取付けた上部軸受17と前記モータフレーム14の内周面に取付けた下部軸受18で回転自在に支承され、更に、前記モータカバー15の上面には、湧水現場への吊下げや移動を行なう把手20が設けられている。
【0005】前記ロータ5のモータ上部室13側のエンドリングには、空気撹拌用のロータフィン21がロータ5に固着されており、これにより、ロータ5の回転に伴って、ステータ巻線6を冷却するための風を送るように構成されている。
【0006】一方、前記ポンプ部3には、前記主軸1の先端に連結したボルテックス形羽根車25が備えられ、この羽根車25は、吐出口26aと吸込口26bを有するポンプケーシング26によって取囲まれ、下部から工事現場に於ける湧水等を吸い込んで側面から吐出すようになっている。ここに、前記吐出口26aには、吐出ホース接続用ニップル27が連結されている。」
ウ 「【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来例にあっては、モータ部2のモータ室8とモータ上部室13とがブラケット15によって互いに上下に仕切られているため、ロータフィン21によってモータ室8内の空気を撹拌させてステータ巻線6の冷却を行なっても、空気はモータ室8内だけで循環しているため、この冷却効果に一定の限界があった。例えば、上部軸受17は、モータ室8内の熱せられた空気が集まる最上部に位置しているため、温度上昇が著しくなり、グリースが流出して異音や振動を発することがあるといった問題があった。
【0011】更に、モータ部2は、密閉状態にあって水冷されないので、各部の温度上昇が著しくなり、例えばプロテクタ11が作動と復帰を繰り返して、プロテクタ接点の溶着やステータ巻線6の焼損に繋がることもあった。
【0012】本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、ロータフィンによるモータ部内の空気の循環流路を形成することで、ステータ巻線及び上部軸受の冷却効果を改善して、長寿命化、或いは小形化を図ることができるようにした水中ポンプを提供することを目的とする。」
エ 「【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図1を参照して説明する。なお、前記図2に示す従来例と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0021】この実施の形態において、モータ部2のモータ室8とモータ上部室13とを区画するブラケット16として、やや肉厚のものが使用され、このブラケット16のロータフィン21と対峙する位置より大径側の位置に、モータ室8とモータ上部室13とを連通する空気の循環経路としての通風孔16aが設けられている。
【0022】更に、前記ブラケット16の中央近傍には、モータ上部室13の空気をモータ室8に循環させるための通気孔16bが設けられている。そして、上部軸受17の外径側に位置する部位、即ちブラケット16の円筒部の内周面には、前記通気孔16bを介してモータ室8とモータ上部室13とを連通する通気部としての通気スリット16cが設けられている。更に、上部軸受17の内径側に位置する部位、即ち主軸1の外周面には、前記通気孔16bを介してモータ室8とモータ上部室13とを連通する通気部としての通気スリット1aがそれぞれ設けられている。
【0023】これにより、ロータフィン21の回転に伴って、モータ室8内の空気をブラケット16に設けた通風孔(通気部)16aからモータ上部室13内に、モータ上部室13内の空気を通気孔16b、通気スリット(通気部)1a,16cからモータ室8内に、それぞれ循環させて、ステータ巻線6及び上部軸受17を冷却する内部空気の循環経路が形成される。
【0024】即ち、モータ室8内は、熱源であるステータ巻線6があるため、温度上昇が高いが、モータ上部室13内は、著しい熱発生源がないため温度は低い。このため、この実施の形態によれば、温度の低いモータ上部室13内の空気を通気孔16b、通気スリット16c,1aを介してモータ室8内に流入させて、上部軸受17を冷却すると共に、積極的にモータ室8内の温度低減を図ることができる。」
オ 「【図1】
[図:0001394925000001.jpg]
」
カ 上記イ及び図1の記載から、ステータ巻線6を巻回したステータ7と、主軸1と一体に回転するロータ5によりモータが構成されていることは明らかである。
キ 上記イ及び図1の記載から、ステータ7には、ステータ巻線6が巻き付けられたステータコアが設けられ、ステータコアの上端面及び下端面からステータ巻線6が飛び出ているものであると、また、ロータ5には、主軸1が取り付けられたロータコアが設けられたものであるといえる。
ク 上記イ及びエ並びに図1の記載から、モータカバー15は、前記モータの上方に配置され、モータフレーム14とともに、モータを水密的に包囲する構成を形成したものであるといえ、また、モータフレーム14の下方には、下部軸受18を回転自在に支承するモータフレーム内周面が形成され、配置されているといえる。
(2)引用発明
前記(1)アないしクから、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「モータ部2と、ポンプ部3と、モータカバー15を備え、
前記モータ部2は、モータフレーム14と、前記モータフレーム14内に配置されたモータを有し、
前記モータは、ステータコアおよびステータコアに巻き付けられたステータ巻線6を有するステータ7と、ロータコア及びロータコアに取り付けられた主軸1を有するロータ5により構成され、
前記モータフレーム14の上方にはブラケット16が配置され、下方にはモータフレーム内周面が形成され配置され、
前記主軸1は、前記ブラケット16に設けられている上部軸受17と、前記モータフレーム内周面に設けられている下部軸受18によって回転可能に支持され、
前記ブラケット16には、モータ室8とモータ上部室13とを連通する通風孔16a、16bが配置され、
前記ポンプ部3は、前記モータ部2の下方に配置されているとともに、前記主軸1に連結された羽根車25を有し、
前記モータカバー15は、前記モータの上方に配置され、前記モータフレーム14とともに、前記モータを水密的に包囲する構成を形成する水中ポンプであって、
前記ステータコアは、上方に上端面を有しているとともに、下方に下端面を有し、
前記ステータコアの前記上端面および前記下端面から前記ステータ巻線6が飛び出ている、水中ポンプ。」
2.引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、電動送風機及び電気掃除機に関する。」
イ 「【0007】
しかしながら、上記従来の技術によっても、界磁巻線は依然として中心角の大きい磁極のまわりに巻装されており、磁極の左右両側の間を渡るコイルエンドは外径側に湾曲させて迂回させねばならない。
【0008】
また、コイルエンドの湾曲と整列巻線を両立させるためには、まずはコイルエンドを湾曲させずに整列巻線を実施し、その後コイルエンドだけを湾曲させるよう変形させなければならない。
【0009】
しかしながら、コイルエンドを変形させる際には巻線の並びが崩れ、絶縁皮膜を傷付けるリスクがある。さらには、コイルエンドを変形させた後にはワニスや自己融着線(熱融着する樹脂が予め表面に塗布されたワイヤ)を用いるなどして巻線同士を固着する必要があるため、生産性が低く、コストが高い、という問題があった。
【0010】
また、家庭用の電気掃除機に搭載される電動送風機においては、ステータコアの軸方向高さが磁極の内径に対して約1/3~1/2と短く、コイルエンドの長短が電動送風機の電力効率に大きく影響する。すなわち、コイルエンドを外径側に湾曲させて迂回させると、コイルエンドが長くなり、電力効率が低下する、という問題があった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、低コスト且つ高い生産性で製造することが可能であり、整列された界磁巻線を備える高効率な電動送風機を得ることを目的とする。」
ウ 「【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ロータと、該ロータを囲み、ステータコアに巻装された界磁巻線を備えるステータと、を有する整流子モータを備える電動送風機であって、前記ステータコアは、対向する2つのC字形状部及び対向する2つのコの字形状部(U字形状部)が開放側を内側にして並ぶことで、前記コの字形状部により形成される対向する2つの凸部を有する環状体であり、対向する前記2つのC字形状部の間には空隙を介して前記ロータが配置され、前記2つのコの字形状部により形成される前記2つの凸部のそれぞれは、略平行な2つの直線部と、該2つの直線部を端部で架橋するブリッジと、により構成され、前記2つのコの字形状部のそれぞれと前記ロータとの間に、巻装された前記界磁巻線が配されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低コスト且つ高い生産性で製造することが可能であり、整列された界磁巻線を備える高効率な電動送風機を得ることができるという効果を奏する。」
3.引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、回転電機のステータ及びこれを用いた回転電機に関する。」
イ 「【0005】
回転電機は、小型高出力が求められるため、ステータの熱を素早く放熱する必要がある。しかし、上記従来技術においては、スロットの各々に略U字形状のセグメント導体を挿入する方式のため、例えば軸方向コイルエンド高さの寸法を短くすると熱の放熱性が低下するといった問題があった。
【0006】
本発明は、冷却性の優れた回転電機のステータ、及びこれを用いた回転電機を提供することを目的とする。」
ウ 「【0007】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、回転軸方向に伸びるスロットを周方向に複数形成したステータコアと、スロットに挿入されたコイルとを有する回転電機のステータであって、コイルは平角線であり、コイルの、コイルエンド部におけるスロットから突出した突出部分に、断面が略台形形状の略台形形状部を有し、スロットにおいて、回転電機の回転方向側に第1のコイルの略台形形状部の上底が位置し、当該回転方向側に、当該第1のコイルと径方向に隣接する第2のコイルの略台形形状部の下底が位置する回転電機のステータである。
・・・
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷却性の優れた回転電機のステータ、及びこれを用いた回転電機を提供することができる。」
エ 「【0028】
図4(A)は従来のコイル断面を示す。図4(B)はコイル断面を略台形形状を示す。図4(C)はコイル断面を略台形形状にし、コイルを交互に回転電機の回転方向にずらし構成されている。
【0029】
従来のコイル断面の場合は冷媒RFが隙間28を通りコイルを冷却する。しかし、この場合はコイルの断面と冷媒RFが接触する面積が少なく熱の伝導が効果的に発揮することができない。図4(A),(B)は冷媒RFとコイルの接触する面積が増加しコイルから発生する熱を伝導することができ、冷却効率が高くなる。ここで冷媒RFの吐出口は、図1に示すように当該突出部分に冷媒RFが接触するような位置に設けられている。」
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「モータ部2」は、本願発明1の「駆動部」に相当し、以下同様に、「ポンプ部3」は「ポンプ部」に、「モータカバー15」は「カバー」に、「モータフレーム14」は「容器」に、それぞれ相当する。
また、本願発明1の「誘導電動機」と引用発明の「モータ」とは、「電動機」の点で共通する。
さらに、引用発明の「ステータコア」は、本願発明1の「固定子コア」に相当し、以下同様に、「ステータ巻線6」は「固定子巻線」に、「ステータ7」は「固定子」に、「ロータコア」は「回転子コア」に、「主軸1」は「回転軸」に、「ロータ5」は「回転子」に、「ブラケット16」は「第1の支持部材」に、「上部軸受17」は「第1の軸受」に、「モータフレーム内周面」は「第2の支持部材」に、「下部軸受18」は「第2の軸受」に、それぞれ相当する。
また、引用発明のブラケット16には、複数の通風孔16a、16bが設けられているところ、上記第4の1(1)エ及び図1の記載によれば、これら通風孔は、ブラケット16の、下方にあるモータ室8と上方にあるモータ上部室13を連通するもの、すなわち、ブラケット16を上下方向に貫通しているものであるから、引用発明の「モータ室8とモータ上部室13とを連通する通風孔16a、16b」は、本願発明1の「上下方向に貫通している複数の孔」に相当する。
さらに、引用発明の「羽根車25」は、本願発明1の「羽根車」に相当し、以下同様に、「水密的に包囲する構成」は「密閉状態で収容する電動機収容容器」に、「上端面」は「第1のコア端面」に、「下端面」は「第2のコア端面」に、それぞれ相当する。
以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「駆動部と、ポンプ部と、カバーを備え、
前記駆動部は、容器と、前記容器内に配置された電動機を有し、
前記電動機は、固定子コアおよび前記固定子コアに巻き付けられた固定子巻線を有する固定子と、回転子コアおよび前記回転子コアに取り付けられた回転軸を有する回転子により構成され、
前記容器の上方には第1の支持部材が配置され、下方には第2の支持部材が配置され、
前記回転軸は、前記第1の支持部材に設けられている第1の軸受と、前記第2の支持部材に設けられている第2の軸受によって回転可能に支持され、
前記第1の支持部材には、上下方向に貫通している複数の孔が配置され、
前記ポンプ部は、前記駆動部の下方に配置されているとともに、前記回転軸に連結された羽根車を有し、
前記カバーは、前記電動機の上方に配置され、前記容器とともに、前記電動機を密閉状態で収容する電動機収容容器を形成する水中ポンプであって、
前記固定子コアは、上方に第1のコア端面を有しているとともに、下方に第2のコア端面を有した水中ポンプ。」
[相違点1]
電動機について、本願発明1では「誘導電動機」であるのに対し、引用発明では、モータが誘導電動機であるか不明な点。
[相違点2]
本願発明1では、「前記カバーおよび前記容器は、アルミニウムにより形成され、
前記固定子コアの外径が、124mm~126mmの範囲内に設定され、
前記固定子コアの軸方向に沿った長さが、23mm~37mmの範囲内に設定され、
前記カバーの内径Mが、119mm~122mmの範囲内に設定され、
前記カバーの内側に形成されるカバー内側空間の高さNが、48mm~54mmの範囲内に設定され、
前記誘導電動機の回転数が、2850rpm~3580rpmの範囲内に設定され、
前記固定子コアの前記第1のコア端面および前記第2のコア端面のうちの少なくとも前記第1のコア端面から飛び出ている、前記固定子巻線の部分の、軸方向に沿った長さHが、24mmと29mmの範囲内に設定されている」のに対し、
引用発明では、モータカバー15及びモータフレーム14の材料が特定されておらず、ステータコアの外径や軸方向に沿った長さについても特定されておらず、モータカバー15の内径やモータカバー15の内側空間の高さについても特定されておらず、モータの回転数の範囲についても設定されておらず、ステータコアの上端面から飛び出ているステータ巻線6の部分の、軸方向の沿った長さについても特定されておらず、不明な点。
(2)判断
以下、相違点について検討する。
ア 事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
(ア)まず、本願発明1の相違点2に係る発明特定事項の技術的意義をみる。
本願発明1の課題は、本願明細書の発明の詳細な説明の段落0004に示されるように、「簡単な構成で、電動機の効率の低下を抑制しながら、電動機収容容器内の温度の上昇を抑制することができる水中ポンプを提供すること」である。
そして、本願発明1は、第1の支持部材に形成されている孔によって、第1の支持部材の下方の空間(容器内部内側空間)と上方の空間(カバー内側空間)が連通されていることを前提とした水中ポンプにおいて、上記課題を解決するために、特定の仕様のもと、具体的には、「固定子コアの外径が、124mm~126mmの範囲内に設定され、固定子コアの軸方向に沿った長さが、23mm~37mmの範囲内に設定され、カバーの内径Mが、119mm~122mmの範囲内に設定され、カバーの内側に形成されるカバー内側空間の高さNが、48mm~54mmの範囲内に設定され、誘導電動機の回転数が、2850rpm~3580rpmの範囲内に設定され」て、上方側のコア端面から飛び出ているコイルエンドの巻線高さ、並びに、カバーの材料及び容器の材料に注目し、上方側のコア端面から飛び出ているコイルエンドの巻線高さ、並びに、カバーの材料及び容器の材料を適切に特定することで、放熱特性を向上させると共に、電動機効率の低下を抑制することを、試験により見いだしたものである。
また、試験について、本願明細書の発明の詳細な説明の段落0012-0017及び図面図2-5に示されているところ、これら記載内容から、特定の仕様の水中ポンプにおいて、放熱量の増加割合が変わる巻線高さ、及び、電動機効率の減少割合が変わる巻線高さが存在することが見いだされ、また、カバー及び容器の材料によって、放熱量の増加割合が変わる巻線高さ、及び、電動機効率の減少割合が変わる巻線高さが変化することが見いだされたことが理解できる。
そうすると、本願発明1の相違点2に係る発明特定事項の技術的意義は、上記特定の仕様のもと、試験により見いだされた、上方側のコア端面から飛び出ているコイルエンドの巻線高さ、並びに、カバーの材料及び容器の材料に特定することで、上記課題を解決することにある。
一方、引用文献1には、本願発明1の上記相違点2に係る発明特定事項の数値範囲について、何ら記載されていない。また、上記第4の1(1)ウによれば、引用文献1に示される水中ポンプは、「ステータ巻線及び上部軸受の冷却効果を改善して、長寿命化、或いは小形化を図ることができるようにした水中ポンプを提供すること」を課題とするものであるところ、引用文献1には、冷却効果の改善と電動機の効率の両者のバランスを取るための数値限定、材料限定について示されておらず、また、水中ポンプの小形化を課題とするため、上方側のコア端面から飛び出ているコイルエンドの巻線長さを長くするという発想は生じ難い。
以上によれば、モータカバー15及びモータフレーム14の材料並びにステータコアの上端面から飛び出ているステータ巻線6の部分の、軸方向の沿った長さに注目することは、引用文献1には記載も示唆もされておらず、また、引用発明において、本願発明1の上記相違点2に係る発明特定事項の数値範囲を採用する積極的な動機はない。
(イ)ところで、引用文献2の段落0010に「ステータコアの軸方向高さが磁極の内径に対して約1/3~1/2と短く、コイルエンドの長短が電動送風機の電力効率に大きく影響する。すなわち、コイルエンドを外径側に湾曲させて迂回させると、コイルエンドが長くなり、電力効率が低下する、という問題があった。」(上記第4の2(1)イを参照。)と記載され、また、引用文献3の段落0005に「回転電機は、小型高出力が求められるため、ステータの熱を素早く放熱する必要がある。しかし、上記従来技術においては、スロットの各々に略U字形状のセグメント導体を挿入する方式のため、例えば軸方向コイルエンド高さの寸法を短くすると熱の放熱性が低下するといった問題があった。」(上記第4の3(1)イを参照。)と記載され、これらの文献から、電動機のコイルエンドの軸方向の長さについて、長いと電力効率が低下し、短いと放熱性が低下することが、理解される。
しかし、引用文献2及び3のいずれの文献にも、水中ポンプについて、「電動機の効率の低下を抑制しながら、電動機収容容器内の温度の上昇を抑制する」ために、特定の仕様のもと、上方側のコア端面から飛び出ているコイルエンドの巻線高さ、並びに、カバーの材料及び容器の材料に注目し、コイルエンドの巻線高さ、並びに、カバーの材料及び容器の材料を適切に特定することは、記載も示唆もされていない。
以上によれば、電動機のコイルエンドの軸方向の長さについて、長いと電力効率が低下し、短いと放熱性が低下することが、当業者にとって従来周知の技術事項(以下、「周知技術」という。)であったとしても、引用発明において、上記周知技術を適用する動機付けはない。
また、仮に、引用発明において、上記周知技術を適用し得たとしても、具体的な数値範囲について何ら開示がないところから、本願発明1の上記相違点2に係る発明特定事項で特定される数値範囲を選択する動機はなく、そのような数値範囲を導くことはできない。
さらに、本願発明1の上記相違点2に係る発明特定事項で特定される数値範囲とすることで、「簡単な構成で、効率の低下を防止しながら、電動機収容容器内の温度上昇を抑制することができる。」といった、顕著な効果を得ることができたものであり、そのような数値範囲が単なる設計事項であるともいえない。
イ 上記のとおり、当業者が本願発明1の上記相違点2に係る発明特定事項を容易に想到し得たとはいえないから、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2.本願発明2について
本願発明2は、本願発明1と同一の発明特定事項を備え、さらに限定されたものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 原査定について
上記第5で示したように、引用文献1ないし3には、いずれも、上記本願発明1の相違点2に係る発明特定事項の数値範囲について、何ら記載がなく、また、「電動機の効率の低下を抑制しながら、電動機収容容器内の温度の上昇を抑制する」といった課題も存在せず、更に、上記本願発明1の相違点2に係る発明特定事項の上記特定の仕様も含む数値範囲が、単なる設計事項ともいえないから、引用発明に、引用文献2、3に示される周知技術を適用し得たとしても、本願発明1には至らない。本願発明2についても同様である。
したがって、本願発明1、2は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1ないし3に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。よって、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1、2は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-004984