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特許拒絶査定不服審判

2022-001127

永久磁石電動機

審判番号
2022-001127
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-070433
請求日
2022年01月25日
審決日
2022年10月31日
公報発行日
2022年12月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】愛知電機株式会社
  • 【請求人代理人】特許業務法人勇智国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 佐々木 芳枝
  • 審判官 柿崎 拓
  • 審判官 関口 哲生
分類
P18 .121-WY (H02K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018- 70433「永久磁石電動機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月24日出願公開、特開2019-186973、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年3月30日の出願であって、令和3年1月19日付けの拒絶理由の通知に対し、令和3年3月24日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、令和3年6月9日付けの拒絶理由の通知(いわゆる「最後の拒絶理由通知」)に対し、令和3年8月17日に意見書が提出されたが、令和3年10月20日付けで拒絶査定がされ、これに対して令和4年1月25日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和3年10月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1~2に係る発明は、以下の引用文献1~3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2009-153352号公報 2.特開2007-159197号公報 3.特開2012-100472号公報 第3 本願発明 本願の請求項1~2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明2」という。)は、令和3年3月24日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 固定子と回転子を備え、前記固定子は、周方向に隣接して配置されている複数のティースに巻き付けられている固定子巻線と、固定子内側空間を形成する固定子内周面を有し、前記回転子は、前記固定子内側空間内に回転可能に配置され、周方向に沿って主磁極と補助磁極が交互に配置されているとともに、前記主磁極に磁石挿入孔が形成されており、前記磁石挿入孔に永久磁石が挿入されている永久磁石電動機であって、 前記固定子巻線は、前記複数のティースに分布巻き方式で巻き付けられており、 前記回転子の外周面は、前記主磁極のd軸と交差し、前記回転子の中心を中心点とする半径R1の円弧形状を有する第1外周面部分と、前記補助磁極のq軸と交差し、前記回転子の中心を中心点とする半径R2(<R1)の円弧形状を有する第2外周面部分と、前記第1外周面部分と前記第2外周面部分を接続する接続部分を有し、 前記回転子の直径Dは、[45mm≦D≦90mm]を満足するように設定され、 前記第1外周面部分と前記固定子内周面との間の距離Gは、[0.45mm≦G≦0.65mm]を満足するように設定され、 前記回転子の中心に対する前記第1外周面部分の開角度θ1は、[(76/P)度≦θ1≦(88/P)度](P:回転子の極対数)を満足するように設定され、 前記距離G、前記磁石挿入孔の幅Wおよび前記第1外周面部分と前記第2外周面部分との間のq軸上の距離Hは、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqが、[0.9≦(Lq/Ld)≦1.1]を満足するように設定されていることを特徴とする永久磁石電動機。 【請求項2】 請求項1に記載の永久磁石電動機であって、 前記接続部分は、直線状に延在していることを特徴とする永久磁石電動機。」 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1 (1)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下、同様である。)。 ア 「【0015】 以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。 本発明の第1の実施の形態を図1及び図2に示す。第1の実施の形態は、本発明を、回転子の主磁極部に設けられている磁石収容孔に永久磁石が収容された永久磁石電動機(「永久磁石埋込型電動機」と呼ばれている)として構成したものである。なお、図1は、第1の実施の形態の永久磁石電動機10を軸方向に直交する方向から見た断面図であり、図2は、回転子30を軸方向に直交する方向から見た断面図である。なお、回転子30は、磁極数が4(極対数が2)の場合を示している。 本実施の形態の永久磁石電動機10は、固定子20と回転子30により構成されている。 固定子20は、例えば、電磁鋼板を積層して形成された固定子コアによって構成される。固定子20は、ヨーク部21と、ティース部22を有している。ティース部22によってスロット23が形成されており、スロット23には、分布巻方式あるいは集中巻方式によって固定子巻線が収容される。ティース部22は、図3に示されているように、基部22aと、基部22aの回転方向の両側に設けられているティース端部22bおよび22cを有している。そして、基部22aとティース端部22bおよび22cの回転子30と対向する側の面によってティース先端面22dが形成されている。回転子30は、回転子30の外周面と固定子20のティース部22のティース先端面22dとの間隙(ギャップ)がgに設定された状態で回転可能に配置されている。」 イ 「【0017】 回転子コア31(以下では、「回転子30」という)の外周面は、主磁極部a~dに対応する第1の曲線部分(第1の外周部分)30a、30b、30c、30dと補助磁極部ab~daに対応する第2の曲線部分(第2の外周部分)30ab、30bc、30cd、30daが交互に配置されて構成されている。 ・・・(中略)・・・ 第1の曲線部分30a~30dの開角θは、高い効率を得ることができる範囲に設定される。 ・・・(後略)・・・。」 ウ 「【0019】 主磁極部a~dには、第1の磁石収容孔32a~32dと第2の磁石収容孔34a~34dが設けられている。第1の磁石収容孔32a~32dには第1の永久磁石33a~33dが収容され、第2の磁石収容孔34a~34dには第2の永久磁石35a~35dが収容されている。第1の永久磁石33a~33d(第2の永久磁石35a~35d)は、例えば、隙間ばめ方法によって第1の磁石収容孔32a~32d(第2の磁石収容孔34a~34d)に収容される。第1の永久磁石33a~33dおよび第2の永久磁石35a~35dは、周方向に隣接する主磁極部a~dの極性が逆極性となるように磁化されている。図2では、主磁極部aの第1の永久磁石33aおよび第2の永久磁石35a、主磁極部cの第1の永久磁石33cおよび第2の永久磁石35cは、外周面側がN極、中心側がS極となるように磁化され、主磁極aとcに隣接する主磁極部b第1の永久磁石33bおよび第2の永久磁石35b。主磁極部dの第1の永久磁石33dおよび第2の永久磁石35dは、外周面側がS極、中心側がN極となるように磁化されている。 ・・・(後略)・・・。」 エ 「【0032】 回転子の外周面を曲率半径が異なる第1の曲線部分と第2の曲線部分により構成する方法としては、第1および第2の実施の形態の方法に限定されない。以下に、本発明の第3の実施の形態を説明する。 第3の実施の形態は、図1に示されている第1の実施の形態の固定子20と、図8に示す回転子230により構成されている。回転子230は、外周面を構成する方法が第1の実施の形態の回転子30と異なるだけで、他の構成は第1の実施の形態と同様である。 本実施の形態では、回転子230の主磁極部a~dに対応する第1の曲線部分230a~230dは、回転子230(回転子コア231)の中心点Oを中心とする半径[R1]の円弧形状に形成され、補助磁極部ab~daに対応する第2の曲線部分230ab~230daは、回転子230(回転子コア231)の中心点Oを中心とする半径[R2(<R1)]の円弧形状に形成されている。」 オ 図1、図2及び図3には、第1の実施の形態に関し、次の事項が図示されている。 【図1】 [図:0001391793000001.jpg] 【図2】 [図:0001391793000002.jpg] 【図3】 [図:0001391793000003.jpg] カ 図8には、第3の実施の形態に関し、次の事項が図示されている。 【図8】 [図:0001391793000004.jpg] キ 前記エによると、第3の実施の形態の永久磁石電動機10は、図1に示されている第1の実施の形態の固定子20と、図8に示す回転子230により構成されており、第1の実施の形態についての前記アの記載、並びに前記オの図1及び図3の図示内容を踏まえると、第3の実施の形態においても、固定子20の複数のティース部22は、周方向に隣接して配置されており、ティース部22のティース先端面22dは、固定子20の内側の空間を形成しており、回転子230は、前記固定子20の内側の空間内に回転可能に配置されているといえる。また、回転子230の外周面と固定子20のティース部22のティース先端面22dとの間隙がgに設定されているといえる。 同様に、第3の実施の形態における固定子20は、前記アの記載を踏まえると、固定子巻線を有し、該固定子巻線は、複数のティース部22によって形成されたスロット23に分布巻方式によって収容されているといえる。 ク 第1の実施の形態についての前記イ及びウの記載、並びに第3の実施の形態についての前記カの図8の図示内容を踏まえると、第3の実施の形態における回転子230についても、第1の実施の形態の回転子30と同様に、周方向に沿って主磁極部a~dと補助磁極部ab~daが交互に配置されているとともに、主磁極部a~dに第1の磁石収容孔232a~232dと第2の磁石収容孔234a~234dが設けられており、第1の磁石収容孔232a~232dには第1の永久磁石233a~233dが収容され、第2の磁石収容孔234a~234dには第2の永久磁石235a~235dが収容され、第1の永久磁石233a~233dおよび第2の永久磁石235a~235dは、周方向に隣接する主磁極部a~dの極性が逆極性となるように磁化されているといえる。 ケ 前記エの記載及び前記カの図8の図示内容によると、第3の実施の形態における回転子230の外周面は、第1の曲線部分230a~230dと第2の曲線部分230ab~230daを接続する接続部分を有しているといえる。また、第1の実施の形態についての前記イの記載及び前記オの図2の図示内容も踏まえると、回転子230の中心点Oに対する第1の曲線部分230a~230dの開角θは、高い効率を得ることができる範囲に設定されているといえる。 (2)引用発明 したがって、引用文献1の前記ア~ケ及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、第3の実施の形態として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「固定子20と回転子230を備え、前記固定子20は、周方向に隣接して配置されている複数のティース部22によって形成されたスロット23に収容されている固定子巻線と、前記固定子20の内側の空間を形成する前記ティース部22のティース先端面22dを有し、前記回転子230は、前記固定子20の内側の空間内に回転可能に配置され、周方向に沿って主磁極部a~dと補助磁極部ab~daが交互に配置されているとともに、前記主磁極部a~dに第1の磁石収容孔232a~232dと第2の磁石収容孔234a~234dが設けられており、前記第1の磁石収容孔232a~232dには第1の永久磁石233a~233dが収容され、前記第2の磁石収容孔234a~234dには第2の永久磁石235a~235dが収容され、前記第1の永久磁石233a~233dおよび前記第2の永久磁石235a~235dは、周方向に隣接する前記主磁極部a~dの極性が逆極性となるように磁化されている永久磁石電動機10であって、 前記固定子巻線は、前記スロット23に分布巻方式によって収容されており、 前記回転子230の外周面は、前記主磁極部a~dに対応し、前記回転子230の中心点Oを中心とする半径[R1]の円弧形状に形成された第1の曲線部分230a~230dと、前記補助磁極部ab~daに対応し、前記回転子230の中心点Oを中心とする半径[R2(<R1)]の円弧形状に形成された第2の曲線部分230ab~230daと、前記第1の曲線部分230a~230dと前記第2の曲線部分230ab~230daを接続する接続部分を有し、 前記回転子230の外周面と前記固定子20の前記ティース部22の前記ティース先端面22dとの間隙がgに設定され、 前記回転子230の中心点Oに対する前記第1の曲線部分230a~230dの開角θは、高い効率を得ることができる範囲に設定された永久磁石電動機10。」 2 引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0001】 本発明は、永久磁石回転機、特に、回転子に設けられている磁石挿入孔に永久磁石が挿入された永久磁石回転機に関する。 【背景技術】 【0002】 エアコン(空調装置)や冷蔵庫等の圧縮機を駆動する電動機、車両を駆動する電動機や車両に搭載されている車載機器を駆動する電動機として、磁石挿入孔に永久磁石が挿入された回転子を有する永久磁石電動機が用いられている。このような永久磁石電動機は、通常、“永久磁石埋込型電動機(IPMモータ)”と呼ばれている。 永久磁石埋込型電動機では、固定子には、固定子巻線を収容するスロットを形成するティースが設けられている。回転子は、回転子外周面とティース先端面との間に間隙を持たせて、回転可能に配設されている。また、回転子には、主磁極部と補助磁極部が設けられている。主磁極部には、永久磁石を挿入する磁石挿入孔が設けられている。これにより、永久磁石の磁束によるマグネットトルクと、補助磁極部の突極性によるリラクタンストルクの両方を利用することができる。」 (2)「【0021】 [第1の実施の形態] 次に、第1の実施の形態の永久磁石電動機30の構成を図3および図4を用いて詳しく説明する。なお、以下の各実施の形態では、磁極数が4(極対数が2)である回転子が用いられている。図3は、永久磁石電動機30を、軸方向に直角な方向から見た断面図(横断面図)であり、図4は、図3の要部の拡大図である。 また、回転子は、軸方向に直角な断面(横断面図)で見て、主磁極部と補助磁極部が周方向に交互に配置されている。主磁極部には、磁石挿入孔が設けられている。以下では、各主磁極部を主磁極部A~主磁極部Dで表し、各補助磁極部を補助磁極部AB~補助磁極DAで表す。そして、各主磁極部A~Dに設けられている要素の符号には、記号a~dを付し、各補助磁極部AB~DAに設けられている要素の符号には、記号ab~daを付している。また、各主磁極部A~D及び各補助磁極部AB~DAの構成は同じであるため、以下では、主磁極部Aと補助磁極部DA、ABの構成について説明する。 主磁極部A~Dと補助磁極部AB~DAを周方向に交互に配置することにより、磁石挿入孔に挿入される永久磁石の磁束によるマグネットトルクと、補助磁極部AB~DAの突極性によるリラクタンストルクの両方を利用することができる。補助磁極部AB~DAの磁束通路幅を調整することによって、リラクタンストルクを調整することができる。 また、回転子の中心Oと主磁極部の周方向中心とを結ぶ線を「d軸」と表現し、回転子の中心Oと補助磁極部の周方向中心とを結ぶ線を「q軸」と表現する。」 (3)「【0023】 なお、主磁極部50A~50Dの磁石挿入孔51a1、51a4~51d1、51d4に挿入される永久磁石52a1、52a2~52d1、52d2は、隣接する主磁極部同士が異極となるように磁化される。すなわち、周方向にS極とN極が交互に配置されるように磁化される。 例えば、回転子50の回転軸挿入孔59に回転軸60を挿入する。その後、回転子50と対向配置された固定子40の固定子巻線41に着磁用電流を流すことにより、永久磁石を磁化する。」 (4)「【0025】 本実施の形態では、回転子50の外周面を、d軸と交差する、第1の曲線形状を有する外周面50a~50dと、q軸と交差し、第1の曲線形状の曲率半径より大きい曲率半径を有する第2の曲線形状の外周面50ab~50daを交互に接続して構成している。これにより、固定子40のティースに流れる磁束の急激な変化を防止することができ、誘起電圧の波形に含まれる高調波成分を低減することができる。これにより、高調波成分に起因する効率の低下を防止することができる。また、回転子50とティース端部との間の長い間隙がなくなるため、磁束の減少を防止することができる。これにより、固定子巻線の誘起電圧を維持するための固定子巻線の巻数の増加が不要となる。したがって、固定子巻線の銅損の増加を防止することができ、効率の低下を防止することができる。 また、第1の外周面50a~50dと第2の外周面50ab~50daの接続部における磁束量の変化が小さいため、固定子巻線の誘起電圧の波形に含まれる高調波成分を低減することができる。これにより、センサレス制御方式を用いている場合でも、精度よく回転子の位置を検出することができ、最適な制御を行うことができる。したがって、回転子の位置検出精度の低下による効率の低下を防止することができる。 また、q軸と交差する第2の外周面50ab~50daが、外周方向に突状に形成されている曲線形状に形成されているため、第2の外周面50ab~50daとティース先端面T1a~Tnaとの間の距離(間隙)の最大値(例えば、q軸に沿った距離)を従来例に比べて短くすることができる。これにより、リラクタンストルクも有効に利用することができる。」 (5)「【0028】 まず、切欠部50a1、50a2~50d1、50d2の幅Aと効率及びコギングトルクとの関係を図5に示す。 図5は、図3及び図4に示す永久磁石電動機30の回転子50の磁極数が4極(極対数が2)、回転子50の第1の外周面50aの半径R1が29.9mm、回転子50の外周面と固定子40のティースT1~Tnのティース先端面との間の距離(間隙)の最小値(例えば、d軸に沿った距離)gが0.6mm、回転子50の最外周面(例えば、半径R1の仮想外周面)と第2の外周面50da、50abとの間の距離の最大値Dが0.425mm、切欠部50a1、50a2の深さの最小値hが0.2mmである場合のものである。 なお、図5では、切欠部50a1、50a2の幅Aを、回転子50の中心Oに対する開角(機械角)で表している。 図5では、横軸に切欠部50a1、50a2の幅A(開角;機開角)を示し、縦軸に効率(%)及びコギングトルク(g/m)を示している。また、二点差線は、第1の外周面50aの幅θ(開角;機械角)を34度に設定した時のものであり、長い破線は、θを37度に設定した時のものであり、実線は、θを40度に設定した時のものであり、一点鎖線は、θを43度に設定した時のものであり、短い破線は、θを46度に設定した時のものである。なお、第1の外周面50aの幅θは、長さで表すこともできる。 図5から、θを34度、37度、40度、43度、46度のいずれに設定した場合も、切欠部50a1、50a2の幅Aが24度を越えると、効率が、切欠部50a1、50a2が設けられていない場合より低下していることが分かる。これにより、[0<切欠部の幅A(開角;機械角)≦24度]に設定することにより、効率を向上させることができる。 また、図5から、切欠部の幅Aが8度を越えると、コギングトルクが、切欠部50a1、50a2が設けられていない場合より低減されていることがわかる。ここで、θを34度、46度に設定した時のコギングトルクの低減効果は、θを37度、40度、43度に設定した時の低減効果より小さい。 これにより、[37度≦第1の外周面の幅θ(開角;機械角)≦43度]、[8度≦切欠部の幅A(開角;機械角)≦24度]、に設定することにより、コギングトルクを効果的に低減することができる。 なお、第1の外周面50aの曲率半径R1が、22mm~32.5mmの範囲内、回転子の外周面とティース先端面との間の間隙の最小値gが、0.45mm~0.7mmの範囲内、切欠部の深さの最小値hが、0.1mm~0.4mmの範囲内、回転子50の最外周面と第2の外周面50da、50abとの間の距離の最大値Dが、0.3mm~0.7mmの範囲内あれば、切欠部の幅Aと効率及びコギングトルクの関係を示すグラフは、図5に示すグラフと略等しい。 以上のことから、[37度≦第1の外周面の幅θ(開角;機械角)≦43度]、[8度≦切欠部の幅A(開角;機械角)≦24度]を満足するように構成することにより、効率を向上させることができるとともに、コギングトルクを低減することができる。 【0029】 ここで、回転子50の極対数が2の場合の前記条件[37度≦第1の外周面の幅θ(開角;機械角)≦43度]、[8度≦切欠部の幅A(開角;機械角)≦24度]は、回転子50の極対数に応じて変更される。 例えば、回転子50の極対数が1の場合には、極対数が2の場合の条件の2倍、すなわち、[74度≦第1の外周面の幅θ(開角;機械角)≦86度]、[16度≦切欠部の幅A(開角;機械角)≦48度]に対応する。また、回転子50の極対数が3の場合には、極対数が2の場合の条件の2/3倍、すなわち、[(74/3)度≦第1の外周面の幅θ(開角;機械角)≦(86/3)度]、[(16/3)度≦切欠部の幅A(開角;機械角)≦(48/3)度]に対応する。 したがって、回転子50の極対数をPとした場合、第1の外周面50aの幅θ(開角;機械角)が[(74/P)度≦第1の外周面の幅θ(開角;機械角)≦(86/P)度]を満足し、切欠部50a1、50a2の幅A(開角;機械角)が[(16/P)度≦切欠部の幅A(開角;機械角)≦(48/P)度]を満足するように構成することにより、効率を向上させることができるとともに、コギングトルクを低減することができる。」 (6)「【0030】 次に、回転子50の最外周面(第1の外周面50a~50dに対応する、半径R1の仮想外周面)と第2の外周面50ab~50daとの間の距離の最大値D、回転子50の外周面と固定子40のティースT1~Tnのティース先端面との間の距離(間隙)の最小値gと効率及びコギングトルクとの関係を図6に示す。 図6は、前述した、効率を向上させることができるとともに、コギングトルクを低減することができる条件[(74/P)度≦第1の外周面の幅θ(開角;機械角)≦(86/P)度]、[(16/P)度≦切欠部の幅A(開角;機械角)≦(48/P)度]に対して、D/gと効率及びコギングトルクの関係を示している。また、図6は、図3及び図4に示す永久磁石電動機30の回転子50の磁極数が4極(極対数が2)、回転子50の第1の外周面50aの曲率半径R1が29.9mm、切欠部50a1、50a2の深さの最小値hが0.2mm、第1の外周面50aの幅θ(開角;機械角)が41.5度である場合のものである。 図6では、横軸にD/gを示し、縦軸に効率(%)及びコギングトルク(g/m)を示している。また、破線は、第1の外周面50aの幅θ(開角;機械角)を37度に設定した時のものであり、実線は、θを40度に設定した時のものであり、一点鎖線は、θを43度に設定した時のものである。なお、第1の外周面50aの幅θは、長さで表すこともできる。 図6から、D/gが1.6を越えると、効率が、第2の外周面50da、50abが設 けられていない場合の効率より低下していることがわかる。これにより、[0<D/g≦1.6]に設定することにより、効率を向上させることができる。 また、図6から、D/gが0.5~1.6の範囲内である場合に、コギングトルクが、第2の外周面50da、50abが設けられていない場合より大幅に低減されていることがわかる。これにより、[0.5≦D/g≦1.6]に設定することにより、コギングトルクを低減することができる。 なお、第1の外周面50a曲率半径R1が、22mm~32.5mmの範囲内、回転子の外周面とティース先端面との間の間隙の最小値gが、0.45mm~0.7mmの範囲内、切欠部の深さの最小値hが、0.1mm~0.4mmの範囲内、回転子50の最外周面と第2の外周面50da、50abとの間の距離の最大値Dが、0.3mm~0.7mmの範囲内あれば、D/gと効率及びコギングトルクの関係を示すグラフは、図6に示すグラフと略等しい。 以上のことから、[(74/P)度≦第1の外周面の幅θ(開角;機械角)≦(86/P)度]、[(16/P)度≦切欠部の幅A(開角;機械角)≦(48/P)度]、[0.5≦D/g≦1.6]という条件を満足するように構成することにより、コギングトルクをより低減することができる。」 (7)「【0031】 次に、切欠部50a1、50a2の深さの最小値hとコギングトルクとの関係を図7に示す。切欠部50a1、50a2の深さの最小値hとしては、例えば、q軸に沿った深さを用いることができる。 図7は、前述した、効率を向上させることができるとともに、コギングトルクを低減することができる条件[(74/P)度≦第1の外周面の幅θ(開角;機械角)≦(86/P)度]、[(16/P)度≦切欠部の幅A(開角;機械角)≦(48/P)度]に対して、hとコギングトルクの関係を示している。また、図7は、図3及び図4に示す永久磁石電動機30の回転子50の磁極数が4極(極対数が2)、回転子50の第1の外周面50aの曲率半径R1が29.9mm、回転子50の外周面とティース先端面との間の距離(間隙)の最小値gが0.6mm、第1の外周面50aの幅θ(開角;機械角)が41.5度である場合のものである。 図7では、横軸にhを示し、縦軸にコギングトルク(g/m)を示している。 図7から、hが、[0.08×(g+D)]と[0.6×(g+D)]の範囲内で、コギングトルクが低減していることがわかる。すなわち、切欠部50a1、50a2の深さが浅い場合には、第2の外周面50da、50abとティース先端面との間の磁気抵抗と、切欠部の底面とティース先端面との間の磁気抵抗との差が殆どない。このため、切欠部50a1、50a2によるコギングトルクの低減効果が低い。また、切欠部50a1、50a2の深さが深い場合には、切欠部50a1、50a2の底面とティース先端面との間の磁気抵抗が大きくなりすぎる。この場合には、第2の外周面50da、50abと切欠部50a1、50a2の境界付近で磁気抵抗が急激に変化することによって、コギングトルクが発生する。 なお、第1の外周面50a曲率半径R1が、22mm~32.5mmの範囲内、回転子の外周面とティース先端面との間の間隙の最小値gが、0.45mm~0.7mmの範囲内、切欠部の深さの最小値hが、0.1mm~0.4mmの範囲内、回転子50の最外周面と第2の外周面50da、50abとの間の距離の最大値Dが、0.3mm~0.7mmの範囲内あれば、hとコギングトルクの関係を示すグラフは、図7に示すグラフと略等しい。 以上のことから、[(74/P)度≦第1の外周面の幅θ(開角;機械角)≦(86/P)度]、[(16/P)度≦切欠部の幅A(開角;機械角)≦(48/P)度]、[0.08×(g+D)≦h≦0.6×(g+D)]という条件を満足するように構成することにより、コギングトルクをより低減することができる、あるいは、[(74/P)度≦第1の外周面の幅θ(開角;機械角)≦(86/P)度]、[(16/P)度≦切欠部の幅A(開角;機械角)≦(48/P)度]、[0.5≦D/g≦1.6]、[0.08×(g+D)≦h≦0.6×(g+D)]という条件を満足するように構成することにより、コギングトルクをさらに低減することができる。」 3 引用文献3 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0001】 本発明は、コンシクエントポール型構造を採用したロータ、及びモータに関するものである。 【背景技術】 【0002】 省資源や低コスト等の観点から、ロータコアの外周面の周方向に一方の磁極のマグネットが複数配置され、他方の磁極を各マグネット間に空隙を以て配置されたロータコアの突極で代用する所謂コンシクエントポール型モータ(ハーフマグネット型モータともいう)が考案されている(例えば特許文献1参照)。」 (2)「【0004】 ところで、コンシクエントポール型モータにおいては、磁束の強制力(誘導)が無い突極を磁極として機能させた影響により、d軸磁路とq軸磁路とにおける磁気抵抗が不均一となる。そのため、全磁極をマグネットで構成した通常構成のロータに比べ、q軸磁路におけるインダクタンスLqの値がd軸磁路におけるインダクタンスLdに対して大きくなる傾向がある。言い換えれば、コンシクエントポール型モータでは、突極比(Ld/Lq)が1より小さくなる傾向にある。従って、コンシクエントポール型モータに対して弱め界磁制御を行ってロータを高速回転させる場合に、所望の回転数増加効果を得ることが困難となる問題がある。 【0005】 本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、突極比の改善を図ることができ、ひいては回転性能の向上を図ることができるロータ、及びモータを提供することにある。」 (3)「【0022】 図1及び図2に示すように、ステータ10の内側に配置されるロータ20は、磁性金属板材を複数枚積層してなり、回転軸21の外周面に圧入孔22aを以て外嵌された略円環状のロータコア22を有する。ロータコア22の外周面には、径方向に突出した凸形状をなすマグネット固定部22bを有し周方向に(等角度間隔に)5つ形成されている。各マグネット固定部22bの径方向内側には、その内側が短辺となる略台形の貫通孔22cが形成され、マグネット固定部22bと同様に周方向に5つ形成されている。その貫通孔22cの外周面側の中央は、マグネット固定部22b側に凸形状に突出して形成されている。 【0023】 各マグネット固定部22bの凸形状の先端部分には、周方向中央部分に当接してN極のマグネット23がそれぞれ(全部で5個)固定されている。マグネット23は、外周面が円弧状、径方向内側面が平面をなす形状をなしている。マグネット固定部22bの周方向の両端部分では、マグネット23との径方向の相互間に溝部22dが形成されている。溝部22dは、マグネット23の背面(平面)に沿うように径方向と直交する方向に延びる長方形状をなし、空隙Xと連通している。そして、この溝部22dには非磁性体からなる接着剤24が充填され、マグネット23がロータコア22に対して接着固着されている。因みに、マグネット固定部22b及びマグネット23は、マグネット固定部22bの周方向中心に対して線対称に構成されている。 【0024】 各マグネット23の周方向の間には、ロータコア22の外周部に設けられた突極22eがそれぞれマグネット23との各境界部に(本実施の形態では軸方向から見て一定面積の)空隙Xを以て配置されている。つまり、各マグネット23及び突極22eは等角度(36°)間隔に交互に配置され、ロータ20は、N極のマグネット23に対して突極22eをS極として機能させる10磁極の所謂コンシクエントポール型にて構成されている。 【0025】 図3の拡大図に示すように、本実施形態のロータ20において、マグネット23の周方向中心位置を通る径方向の直線はd軸中心線、マグネット23と隣り合う突極22eとの境界中央を通る径方向の直線はq軸中心線となっている。その場合に、図5(b)に示すように、マグネット23の周方向中心位置を表面(外周面)から背面(内側面)、マグネット固定部22bを通り、ロータコア22の内部を経由して隣り合う突極22eの周方向中心位置を通る磁路がd軸磁路である。一方、図5(a)に示すように、マグネット23と一方の突極22eとの間の空隙Xからロータコア22の内部、この場合、マグネット23との境界付近を経由して他方側の空隙Xを通る磁路がq軸磁路である。 【0026】 ここで、図5(a)~(d)を用いて、本実施形態と従来例とにおけるロータコア22内部の磁束の状態について説明する。 図5(a)に示すように、本実施形態のロータコア22では、非磁性体からなる接着剤24を含む溝部22dがq軸磁路に対する磁気抵抗部として機能する。このような磁気抵抗部を設けることで、q軸磁路における磁束G1は、接着剤24を含む溝部22dを迂回するようにマグネット23との境界付近よりも若干径方向内側部分のロータコア22内部を通るように規制され、その迂回する分だけq軸磁路における磁気抵抗が高くなる。 【0027】 一方、図5(b)に示す本実施形態のd軸磁路における磁束G2は、透磁率の低いマグネット23による制限を受けるため、マグネット23の背面側の中央部分とマグネット固定部22bとが当接している状態ではその当接部分両側の溝部22d(磁気抵抗部)を設けた影響を受けにくい。 【0028】 これに対し、図5(c)は、前記溝部22dが省略され、マグネット23の背面とマグネット固定部22bとが径方向と直交する方向全体で当接する従来構成を採用したロータコア40である。図5(d)に示すように、従来構成のロータコア40でのd軸磁路における磁束G4は、図5(b)に示した本実施形態の構成での磁束G2と略同様であるものの、図5(c)に示すように、q軸磁路における磁束G3は、マグネット23との境界付近のロータコア40内部を沿うように通るため、q軸磁路の磁気抵抗は低くなる。従って、従来構成ではd,q軸磁路における磁気抵抗が不均一となり、q軸磁路におけるインダクタンスLqの値がd軸磁路におけるインダクタンスLdに比べて大きくなる傾向にある。つまり、突極比(Ld/Lq)が1より小さくなる傾向にある。因みに、図中に示される各磁束G1~G4の線の太さは磁束の量を示す。 【0029】 従って、本実施形態のように溝部22dを設けることで、q軸磁路を迂回させるようにして磁気抵抗を増大させ、d軸磁路とq軸磁路における磁気抵抗の均一化を図るようにしている。つまり、インダクタンスLqの値をインダクタンスLdに対して相対的に小さくして、モータMにおける突極比(Ld/Lq)の値を1に近づけるようにしている。その結果、このように突極比(Ld/Lq)が改善されることで、モータMに対して制御回路30を用いて弱め界磁の制御を行ってロータ20を高速回転させる場合においても、所望の回転数増加効果を得ることが可能となる。」 (4)「【0033】 次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。 (1)ロータ20は、マグネット固定部22bの周方向の両端部分において、q軸磁路に対する磁気抵抗部として機能する溝部22dが設けられている。これにより、q軸磁路おける磁束G1がマグネット23との境界付近よりも径方向内側に迂回させるように規制してq軸磁路の磁気抵抗を高くすることができる。これにより、本実施形態のような1磁極のマグネット23と突極22eとで磁極を構成した所謂コンシクエントポール型ロータにおいて、q軸磁路の磁気抵抗がd軸磁路の磁気抵抗よりも相対的に小さくなりがちであるが、磁気抵抗部として機能する溝部22dを設けたことで、d軸磁路とq軸磁路における磁気抵抗の均一化を図ることができる。その結果、モータMにおける突極比(Ld/Lq)を改善でき、モータMの回転性能を向上させることができる。」 (5)図3には、次の事項が図示されている。 [図:0001391793000005.jpg] 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 以下、本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「固定子20」、「回転子230」及び「ティース部22」は、それぞれ本願発明1の「固定子」、「回転子」及び「ティース」に相当する。また、引用発明の「複数のティース部22によって形成されたスロット23に収容されている固定子巻線」は、複数のティース部22に巻き付けられていることが明らかであるから、本願発明1の「複数のティースに巻き付けられている固定子巻線」に相当する。同様に、引用発明の「前記固定子巻線は、前記スロット23に分布巻方式によって収容されて」いるという事項は、本願発明1の「前記固定子巻線は、前記複数のティースに分布巻き方式で巻き付けられて」いるという事項に相当する。 イ 引用発明の「前記固定子20の内側の空間」及び「前記ティース部22のティース先端面22d」は、それぞれ本願発明1の「固定子内側空間」及び「固定子内周面」に相当する。 ウ 引用発明の「主磁極部a~d」及び「補助磁極部ab~da」は、それぞれ本願発明1の「主磁極」及び「補助磁極」に相当する。また、引用発明の「第1の磁石収容孔232a~232d」及び「第2の磁石収容孔234a~234d」は、ともに本願発明1の「磁石挿入孔」に相当し、引用発明の「第1の永久磁石233a~233d」及び「第2の永久磁石235a~235d」は、ともに本願発明1の「永久磁石」に相当する。すると、引用発明の「前記主磁極部a~dに第1の磁石収容孔232a~232dと第2の磁石収容孔234a~234dが設けられており、前記第1の磁石収容孔232a~232dには第1の永久磁石233a~233dが収容され、前記第2の磁石収容孔234a~234dには第2の永久磁石235a~235dが収容され」ているという事項は、本願発明1の「前記主磁極に磁石挿入孔が形成されており、前記磁石挿入孔に永久磁石が挿入されている」という事項に相当する。 エ 引用発明の「永久磁石電動機10」は、本願発明1の「永久磁石電動機」に相当する。 オ 引用発明の「第1の曲線部分230a~230d」及び「第2の曲線部分230ab~230da」は、それぞれ本願発明1の「第1外周面部分」及び「第2外周面部分」に相当する。そして、引用発明の「第1の曲線部分230a~230d」は、引用文献1の図8(前記第4 1(1)カ参照。)の図示内容によると、主磁極部a~dのd軸に交差しているといえるから、引用発明の「前記主磁極部a~dに対応し、前記回転子230の中心点Oを中心とする半径[R1]の円弧形状に形成された第1の曲線部分230a~230d」は、本願発明1の「前記主磁極のd軸と交差し、前記回転子の中心を中心点とする半径R1の円弧形状を有する第1外周面部分」に相当する。同様に、引用発明の「第2の曲線部分230ab~230da」は、補助磁極部ab~daのq軸に交差しているといえるから、引用発明の「前記補助磁極部ab~daに対応し、前記回転子230の中心点Oを中心とする半径[R2(<R1)]の円弧形状に形成された第2の曲線部分230ab~230da」は、本願発明1の「前記補助磁極のq軸と交差し、前記回転子の中心を中心点とする半径R2(<R1)の円弧形状を有する第2外周面部分」に相当する。 カ 引用発明の「前記回転子230の外周面と前記固定子20の前記ティース部22の前記ティース先端面22dとの間隙」である「g」は、引用文献1の第1の実施の形態についての図3(前記第4 1(1)オ参照。)の図示内容も考慮すると、回転子230の第1の曲線部分230a~230dと固定子20のティース部22のティース先端面22dとの間隙を意味すると解されるから、引用発明の「前記回転子230の外周面と前記固定子20の前記ティース部22の前記ティース先端面22dとの間隙がgに設定され」るという事項と、本願発明1の「前記第1外周面部分と前記固定子内周面との間の距離Gは、[0.45mm≦G≦0.65mm]を満足するように設定され」という事項とは、「前記第1外周面部分と前記固定子内周面との間の距離Gが設定され」る点において共通する。 キ 引用発明の「回転子230の中心点O」及び「第1の曲線部分230a~230dの開角θ」は、それぞれ本願発明1の「回転子の中心」及び「第1外周面部分の開角度θ1」に相当し、引用発明の「前記回転子230の中心点Oに対する前記第1の曲線部分230a~230dの開角θは、高い効率を得ることができる範囲に設定され」るという事項と、本願発明1の「前記回転子の中心に対する前記第1外周面部分の開角度θ1は、[(76/P)度≦θ1≦(88/P)度](P:回転子の極対数)を満足するように設定され」るという事項とは、「前記回転子の中心に対する前記第1外周面部分の開角度θ1が設定され」る点において共通する。 したがって、本願発明1と引用発明とは、 「固定子と回転子を備え、前記固定子は、周方向に隣接して配置されている複数のティースに巻き付けられている固定子巻線と、固定子内側空間を形成する固定子内周面を有し、前記回転子は、前記固定子内側空間内に回転可能に配置され、周方向に沿って主磁極と補助磁極が交互に配置されているとともに、前記主磁極に磁石挿入孔が形成されており、前記磁石挿入孔に永久磁石が挿入されている永久磁石電動機であって、 前記固定子巻線は、前記複数のティースに分布巻き方式で巻き付けられており、 前記回転子の外周面は、前記主磁極のd軸と交差し、前記回転子の中心を中心点とする半径R1の円弧形状を有する第1外周面部分と、前記補助磁極のq軸と交差し、前記回転子の中心を中心点とする半径R2(<R1)の円弧形状を有する第2外周面部分と、前記第1外周面部分と前記第2外周面部分を接続する接続部分を有し、 前記第1外周面部分と前記固定子内周面との間の距離Gが設定され、 前記回転子の中心に対する前記第1外周面部分の開角度θ1が設定されている永久磁石電動機。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願発明1においては、「前記回転子の直径Dは、[45mm≦D≦90mm]を満足するように設定され」ているのに対し、引用発明においては、回転子230の直径が明らかでない点。 [相違点2] 第1外周面部分と固定子内周面との間の距離Gについて、本願発明1においては、「[0.45mm≦G≦0.65mm]を満足するように」設定されているのに対し、引用発明においては、gの値が明らかでない点。 [相違点3] 第1外周面部分の開角度θ1について、本願発明1においては、「[(76/P)度≦θ1≦(88/P)度](P:回転子の極対数)を満足するように」設定されているのに対し、引用発明においては、第1の曲線部分230a~230dの開角θが、高い効率を得ることができる範囲に設定されるものの、具体的な角度が明らかでない点。 [相違点4] 本願発明1は、「前記距離G、前記磁石挿入孔の幅Wおよび前記第1外周面部分と前記第2外周面部分との間のq軸上の距離Hは、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqが、[0.9≦(Lq/Ld)≦1.1]を満足するように設定されている」のに対し、引用発明は、主磁極部a~d間を流れる磁束に係るインダクタンスと、補助磁極部ab~da間を流れる磁束に係るインダクタンスとの比が明らかでない点。 (2)判断 事案に鑑みて、相違点4から検討する。 前記第4 3(1)~(4)の記載、及び前記第4 3(5)の図示内容によると、引用文献3には、ロータコアの外周面に一方の磁極のマグネットが複数配置され、他方の磁極をロータコアの突極で代用するコンシクエントポール型モータにおいて、突極を磁極として機能させた影響により、q軸磁路におけるインダクタンスLqと、d軸磁路におけるインダクタンスLdに関し、突極比(Ld/Lq)が1より小さくなる傾向にあり、弱め界磁制御を行ってロータを高速回転させる場合に、所望の回転数増加効果を得ることが困難になるという課題を解決するために、ロータコア22にq軸磁路に対する磁気抵抗部として機能する溝部22dを設けて、q軸磁路における磁気抵抗を高くして(インダクタンスLqを小さくして)、突極比(Ld/Lq)を1に近づけるように改善し、モータMの回転性能を向上させるという事項が記載されている。 そして、引用発明と引用文献3に記載された事項とは、ともに回転子に永久磁石を備えた電動機に関するものである点で共通するものの、引用発明は、「前記第1の永久磁石233a~233dおよび前記第2の永久磁石235a~235dは、周方向に隣接する前記主磁極部a~dの極性が逆極性となるように磁化されている永久磁石電動機10」についてのものであるのに対し、引用文献3に記載された事項は、「ロータコアの外周面に一方の磁極のマグネットが複数配置され、他方の磁極をロータコアの突極で代用するコンシクエントポール型モータ」についてのものであるから、この点で両者は異なるものである。 そして、前記した引用文献3に記載された事項は、コンシクエントポール型モータが、突極を磁極として機能させている影響により、突極比(Ld/Lq)が1より小さくなる傾向にあることを前提に、突極比(Ld/Lq)を1に近づけるように改善するものであるから、当業者が、該引用文献3に記載された事項を考慮したとしても、コンシクエントポール型モータについてのものではない引用発明において、突極比(Ld/Lq)を1に近づけるように改善する動機付けは存在しないといえる。すると、当業者といえども、引用発明に引用文献3に記載された事項を適用することが容易に想到し得るものとはいえない。 仮に、引用発明に、引用文献3に記載された事項の適用を試みたとしても、引用発明は、第1の磁石収容孔232a~232d及び第2の磁石収容孔234a~234dに、それぞれ第1の永久磁石233a~233d及び第2の永久磁石235a~235dを収容するものであり、ロータコアの外周面にマグネットが複数配置される引用文献3に記載された事項とは、回転子に対する永久磁石の配置の仕方も異なっているから、引用発明において、引用文献3に記載されたq軸磁路に対する磁気抵抗部として機能する溝部22dを、単純に設けることはできないといえ、この点からも、引用発明に引用文献3に記載された事項を適用することが容易に想到し得るものとはいえない。 また、引用文献2には、前記第4 2(1)~(7)の記載をみても、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqを、[0.9≦(Lq/Ld)≦1.1]を満足するように設定することについて、何等、記載も示唆もされておらず、むしろ、前記第4 2(4)の記載によると、リラクタンストルクを有効に利用することが記載されているから、LqとLdに差を設けることが示唆されており、Ld/Lqを1に近づけることの動機付けは存在しないといえる。 したがって、本願発明1は、相違点1~3について検討するまでもなく、引用発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本願発明2について 請求項2は請求項1を引用するものであり、本願発明2も、本願発明1の前記相違点4に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1~本願発明2(請求項1~2に係る発明)は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-001127

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